【起業家必見】せっかく作ったサービスが水の泡!? 法規制への正しい対処法を解説【スタートアップ法律相談所 vol.13】
◯我有 隆司 アソシエイト弁護士(第一東京弁護士会所属)
プロフィール▶https://www.azx.co.jp/members/law/ryu…
2013年 東京大学法学部 卒業
2015年 東京大学法科大学院 卒業
2016年 司法試験合格 司法研修所 入所
2018年 AZX Professionals Group 入所
2022年 デジタル庁(デジタル臨時行政調査会事務局、デジタル法制推進担当) 出向
(2022年11月~2024年3月)
・デジタル規制改革推進の一括法の制定に従事
・法制事務デジタル化・法令等データ利活用促進に従事
法規制はスタートアップの競争力の原資になる
近藤:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ法律相談所、Gazelle Capital株式会社の近藤です。
今回は、スタートアップ企業が法律のグレーゾーンを攻める方法について、お伺いをしたいと思っております。
ぜひヘルスケア・モビリティ・フィンテック・クライメートテックの皆さん、先ほどのワードにビビッと来た方は最後まで見ていただけると嬉しいです。
今回教えていただくのは、AZX総合法律事務所の我有先生になります。改めて、どうぞよろしくお願いします。
我有:
改めまして、AZX総合法律事務所でスタートアップ専門の弁護士をやっております。

我有:
弁護士になってからずっとAZX総合法律事務所にいるんですけれども、途中にデジタル庁の出向も経ておりまして、今日はお話できるのを楽しみにしてきました。どうぞよろしくお願いします。
近藤:
ありがとうございます。
法規制は、事業アイデアを考える際に、どのように影響していくものなんでしょうか?
我有:
法規制からビジネスを考えることの重要度は高くなっていると思っていて、スタートアップビジネスも自分たちでルールを作っていくところも視野に入れるような形で、法規制に対してどういうふうに挑んでいくか、そこのノウハウがどう培われているか、そういったところもスタートアップにとっての競争力の原資になってきていると。そういう競争のフェーズになっているというのが私の感覚です。
近藤:
法規制で考慮するべき領域や業界の方々は、どういった方になるんですか?
我有:
法規制が一切関係ないビジネスは存在しないんですけれども、法規制と密接不可分と言えるような領域としては、フィンテック・モビリティ・ヘルスケアが挙げられます。

我有:
例えば、今の法規制の中のオンライン診療のあり方はどうなっているんだろう、だったらオンライン診療のサービスでここまでできるよね、といったようにですね。

我有:
ヘルスケアのビジネスは、単純に法規制の問題だけじゃなくて、保険診療の点数の制度はどうなっているんだろうかとか、今の社会ルールはどうなっているんだろうかというところを踏まえて、皆さんビジネスを作っていくし、必要に応じて自分たちが業界団体を作って、そして行政や政府に対して働きかけを行っていく、そういったところも取り組まれているところが多いなと思います。
法規制のことだけではなくて、政府や行政の動きとともにビジネスを作っていくという意味では、例えばクライメートテック系のビジネスが最近多くありますけれども、そういったところも政府は今どう動いているんだろうかというところに感度高くあるべきですし、そういったところでビジネスを作っていくという発想は1つあるのかなと思っております。
近藤:
日々いろいろな改革が行われている中で、そこをキャッチアップされつつ、アップデートしていかないといけないですね。
法規制対応で最も大切なことは「攻めないこと」
近藤:
そういった積極的なといいますか、改革やアップデートの流れの中で、スタートアップの企業の皆さんがどのように法規制の変容にチャレンジをしていったら良いんでしょうか?
我有:
自分たちが実現していきたいビジネスに対して、単純に法規制で縛られて、これがもうできないと諦めるのではなくて、その次の一歩を踏み出すための検討をするということは非常に重要だなと思っています。
近藤:
スタートアップの皆さんは、まさにそういった穴をじゃないですけど、法制度の改革を狙って攻めるべきなんですか?
我有:
法規制を攻めるという姿勢は非常に大事なんですけれども、私の意見として、法規制対応で一番大切なことは、「攻めないこと」だと思っております。
近藤:
攻めないことですか?
我有:
「法規制」対応とは、「攻めないこと」と見つけたり。
これです。
近藤:
それはなぜですか?

我有:
法規制対応で攻めると今言っているのは、例えばあるビジネスモデルがあって、これを適法だと説明するような理由が十分にはないと。
もしかしたら違法と見られてしまうかもしれないという状況でも「自分たちは良いことをやっているんだから」とか、あるいは「こういう解釈すればギリギリ行けるんじゃない?」とか、もっとよくある声だと「周りもやっているからいいでしょ」とか、そういったところで「きっと社会がそのうち認めてくれる」というのでドンと進めてしまうところ。
そういう姿勢が法規制を攻めていくという典型的な姿勢かなと思うんですけれども。ただ、スタートアップが目標にしているのは具体的なイグジットであり、新規株式公開(IPO)であり、合併と買収(M&A)であり、IPOの時には当然審査があるし、M&Aの時には厳しいデューデリジェンスもあると。
その時になって、自分たちのビジネスモデルは適法であると、きちんと相手を説得しきれますか?という視線を持つべきだと思っています。
近藤:
先のリスクを考えるべきということですね。
IPO審査を見据えた「保守的な判断のドミノ倒し」
我有:
先のリスクというところは、すごく良い指摘なんですけれども。
実際にはIPO審査で問題になるかもしれないと、それを証券会社は気にするかもしれないと、今投資を行うベンチャーキャピタリストは気にするかもしれないと、顧問弁護士は気にするかも、みたいな形で、まさに保守的な判断のドミノ倒しがワーッと繋がってきて、実は起業したばかりの起業家の足元まで、そのドミノ倒しは来ているかもしれません、というところは思っております。
近藤:
ちなみにワーストケースになるとどうなるんですか?
我有:
それこそ、やってきたものが突然IPO審査になって通らなくなってしまうというのが、最も残念なケースだけれども、実際にこうなるケースというのはなくて。
先ほど言った通り、そこに至る過程でいろんな人たちがいろんな保守的な判断を下していくので、そのままストンということはなかなかないんですけれども、実際にビジネスが「これできっといけるよね」と思っていたところが、途中で「やっぱりダメらしい」というふうになってしまって、積み上げたものが一旦崩れてしまうという事例は過去にもあったかなと思います。
近藤:
そういう話をお伺いすると、法的リスクを負うことが正しいのかどうかと一瞬思ってしまうんですけど、そこはどういうふうに解釈をするべきなんでしょうか?
我有:
まず行うべきは論点整理をきちんとして、ここは問題というリスクを洗い出した上で、ビジネスの方法を調整することによって、ビジネスで実現したい本質的な価値までは変えずとも、「ここの方法をちょっと変えれば、この法規制に関しては突破できるよね」という細かい調整をきちんと積み上げていって、それでもどうしても残る論点があると思うんですよね。
その時に初めて、今は明確に適法とは言えないけれども、IPOまでを目指して、これをどういうふうに解決していこうかというところの、ある意味慎重な攻めの姿勢が求められるのかなと思います。
なので結論としては、法的リスクは極力負うべきではない、というのはあるかなと思います。
近藤:
正しくどういうリスクがあるのかというのを分析して、その中でそのリスクを負うべきかどうかという判断を下さないといけないということなんですね。
我有:
そうですね。
ルールメイキングは「奥の手」ではない
我有:
ルールメイキングという言葉は、私の方でも機会があればお話ししたいなと思っているんですけれども、非常に活発になってきていて、多くのスタートアップが実際に自分たちで業界団体を立ち上げて、政治家であったり、あるいは霞ヶ関の役人であったり、そういったところに働きかけを行っていくという試みはたくさん行われていますし、それが実際に成果を上げているところもたくさんあるんですね。
一方で、個別の会社単位で見たときには、一般論としては、奥の手とは言わないものの、それに至る、そこをやろうとするまでのステップがあって、それは今申し上げたような論点をきちんと整理して、ビジネス側で調整できるところがあるんじゃないかなと。
いきなりバーニングしていかないと。そういうところが大事かなと思っております。
近藤:
おっしゃる通りですね。先ほど投資家がどう見るかみたいな話もありましたけど、今後の事業成長において、少なくともリスクを負う中で、そもそもの法的リスクも負うべきかどうかみたいな。
我有:
そこはすごく難しいテーマですよね。投資家の目線からは、スタートアップビジネスそのものが不確実性極まりない、マーケットにフィットするかわからないという状況でビジネスをやっているように見えます。
そこに掛け算で法規制、適法になるかわからないという不確実性、しかもこの不確実性というのは意外と自助努力ではどうにもならないというか、極めて政治的に左右されてしまうようなところに不確実性を抱え込むというのは、今の感覚でも納得しにくい投資家の方々が多いかもしれないんですけれども。
ここはある意味、1つ1つの成果の積み重ねの中で、例えばフィンテック・モビリティ、そういったところで意外とスタートアップの働きかけでビジネスを実現するために法規制を変えていくとか、そういったこともできるよねと。
そこにリソースを割いていくというところも十分あるし、それをやってこそスタートアップがどんどん生まれていくというふうに、ちょっとずつ価値観をアップデートしていくと。
そのための一歩一歩をやっていくしかないかなと思っています。
コンプガチャ規制とNFT──法規制リスクの具体例
近藤:
ありがとうございます。
具体的に事業運営が困難になった事例とかはあったりするんですか?
我有:
あまりフレッシュな事例はお話ししにくい部分もあるんですけれども、ちょっと時代を遡ると、例えば「コンプガチャ」というものがかつて多くありまして。
これはソーシャルゲームとかで、有料で手に入るアイテムを複数集めていって、全部コンプリートすると何かイベントが起こったりとか、より良いアイテムが手に入るみたいなもののことです。
これは景品表示法と言って、サービスや商品を提供する時のおまけを付けたりするじゃないですか。
おまけの付け方についてルールは定まっているんですけれども、カード合わせというものは禁止というルールがあったんですね。
近藤:
そういうルールがあるんですね。

我有:
カード合わせというのは、ポテトチップスに付いてくるようなカードが1から10まであって、それが揃うと新しいグッズが手に入るというものです。別に良いじゃないかと思うかもしれないんですけれども、これは確率論的に、1から10まで揃うのに、1枚目は簡単に揃うんですよ。
だけど単純に期待値計算でいくと、10枚目は10回買わないと手に入らないんですよね。

我有:
消費者心理としては「ここまで順調に揃ったから簡単に手に入るはず」みたいな感じでいっぱい買ってしまうみたいな。それはちょっとかわいそうだから、カード合わせはだめだというふうに言っていて。
コンプガチャとカード合わせというのは、禁止されているのかどうなのかというので、これは当時の時点でも客観的に見れば、「結構リスク高いよね」と、「カード合わせだよね」というふうに判断されそうだったんですけれども、結構多くのソーシャルゲームを提供している会社は、そういった仕様でゲームを作っているというところがあって。
2012年に消費者庁の方が明確に「コンプガチャはカード合わせだよ」と、「だめだよ」ということを宣言して、そこでやり方を改めなければいけなくなったというところ。これが事例として分かりやすいんじゃないかなという気がします。
近藤:
そういった事例があったんですね。
もう1つぐらい教えてもらっても良いですか?
我有:
この事例というよりは、今後もよく出てくるようなところで、「賭博」があるじゃないですか。
賭博はお金をお互いに出し合って、何か偶然性が絡むような勝負事とかをして、その勝敗に応じて出し合ったお金を取り合いましょうと。それが賭博なんですけれども。

我有:
これは古くからある法律なんですけど、刑法で定まっているものがずっと今に至るまであって、新しいビジネスが出てくるたびにこれが姿を変えて論点として現れてくるというところがあります。
例えば、最近だと非代替性トークン(NFT)、何が出てくるか分からないタイプのNFTを買うという場合、「これは賭博に当たるんじゃないか」というのは1つ論点になりました。
回避する方法も議論されているんですけれども、そういったところも論点になってきていますし、賭博の論点は今後もまだ見ぬ新しいビジネスの時にも姿を変えて論点として現れてくるんだろうなというようなところがあります。
法規制を活かして参入障壁を作る戦略
近藤:
先ほど「グレーゾーンは攻めるな」みたいな話をいただいたと思うんですけど、その中でも法規制を活かした戦い方は何かあったりするんですか?
我有:
グレーな状態、これが適法かどうかわからない状態で、「自分たちのビジネスは適法なんだ」というところを固めていって、さらにそこでビジネスモデル特許をかませるなどしたら、それはある意味、参入障壁を自分たちで作ることができるから、そういったところは1つの直接的な競争力の原資になるんじゃないかなと思いますね。
それはちょっと積極的なアプローチですけれども、それ以外にも、そもそも先ほど言ったような論点をきちんと整理してビジネスモデルを調整するということは、将来どこかでビジネスが進んでいったところで、逆に窮地に立ってしまうというリスクを避けるという意味で非常に大事だと思っております。
近藤:
今の話を聞いておられる皆さんの中で、「ちょっと私たち見ておいた方がいいかも」とか、「こういった法規制関連の準備してないぞ」とか、「リスクがわからないぞ」とか、そういった方々がおそらくおられるかなと思うんですけど、それはAZX総合法律事務所さんに相談できたりするんですか?
我有:
もちろんです。AZX総合法律事務所の場合だと、多くのスタートアップビジネスに対してアドバイスをしてきたという経験値があるので、ここの強みは「かつて見たあのビジネスとこの話は一緒だよな」という、そういうビジネスモデル間の連携というか、裏側で関連付けというのが私たちの方でできるというのが最大の強みなんじゃないかなと思っていて。
なので、突飛なビジネスアイデアであっても、私たちの方に相談いただければ、「それはここの法的な論点があるよね」というところを比較的スムーズにご提供できるんじゃないかなと思っています。
その先にある官公庁や行政・政府に対するアプローチというところも、私自身がAZX総合法律事務所内でガバメントリレーションズ部というのを1人で立ち上げていて、その活動の一環として皆様にサポートすることができるんじゃないかなと思っております。
近藤:
ありがとうございます。
この番組の概要欄に、AZX総合法律事務所さんに相談するときの窓口のURLがございますので、ぜひ関心を持った方はそこからお問い合わせに行ってみてください。
法的論点の整理こそが、スタートアップの第一歩
近藤:
よろしければ最後に、視聴者の皆さんに一言いただけると嬉しいです。
我有:
今日は法規制対応というところで、法律のグレーを攻めるというところでお話しさせていただいたんですけれども、実際にはこのスタートアップにとって、法規制に対して挑んでいく、自分たちでルールを作っていくというところの可能性も広がっています。
一方でやるべきことというのは、もしかしたら当たり前の法的論点の整理であったり、それを踏まえてビジネスをどうやって作っていくかというところなのかなと思っております。
私自身もそこのところをこれから全力でサポートしていければと思っておりますので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。
近藤:
ありがとうございます。
ぜひ次回は具体的にグレーゾーン解消制度やサンドボックス制度も含めてお話いただくと思うんですが、スキマバイト系のサービスでしたり、電動キックボード系のサービスなど、具体事例も含めてお話いただけるということでしたので、次回の動画も楽しみにお待ちいただければと思っております。
次回の動画もどうぞよろしくお願いします。
我有:
どうぞよろしくお願いします。
近藤:
それでは皆さん次の動画で、さよなら。
