【スタートアップ向け】サービスにおける決済の法的リスクと回避方法をビジネスモデルごとに解説【スタートアップ法律相談所 vol.12】

◯原 悠弥 アソシエイト弁護士(第一東京弁護士会所属)
Twitter▶https://x.com/ja_y2hr
プロフィール▶https://www.azx.co.jp/members/law/yuy…
2014年 成蹊大学法学部法律学科卒業
2016年 中央大学法科大学院卒業
    司法試験合格 司法研修所 入所
2019年 AZX Professionals Group 入所

なぜ「決済」がサービスの肝なのか

近藤:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ法律相談所、Gazelle Capital株式会社の近藤です。

今回は原先生という新しい先生に来ていただきまして、お話を進めていければと思っております。改めて原先生、よろしくお願いいたします。

原:
よろしくお願いします。

近藤:
よろしければ皆さんに簡単に自己紹介いただけますでしょうか?

原:
AZX総合法律事務所の弁護士の原悠弥と申します。私は普段、資金調達や合併と買収(M&A)をよくサポートしているんですけれども、金融庁と交渉したり、利用規約などの適法に成り立つようにビジネスモデルを構築していることが多いです。

近藤:
今回は、何について教えていただけるんでしょうか?

原:
サービスの肝は決済というところがありますので、ビジネスモデルを作る時にお金の流れが問題になるので、お金の流れを説明した上で、まずは図を描けるような形で説明できればなと思っています。

近藤:
先ほど「サービスの肝は決済」とおっしゃっておられたと思うんですが、なぜ決済が重要なんですか?

原:
決済と言うとC向けに聞こえてしまうかもしれないんですけれども、結局どのサービスもお客さんからお金を取って自分の売り上げにするので、法律の規制が絡んでくると厄介ですので、そこをパズルみたいな形で組み合わせていくと法規制を守れるかなと思っています。

決済で押さえるべき3つのポイント

近藤:
実際にどういった法規制があるんですかね。

原:
ここは大きく分けて3つ考えるポイントがあって、1つ目がお金の払われるタイミングの問題ですね。2つ目が支払い手段の種類というところ、3つ目がサービスの相手方を考えるというところが非常に重要になってくるかなと思います。

お金の払われるタイミング

近藤:
先払いがサービスの利用前に払うような手段になってくるのかなと思うんですが、どういった種類がありましたっけ?

原:
おっしゃっていただいた通り、先払いという払い方もありますし、後払い・立替払い・分割払いという払い方があります。

特に後払い・立替払い・分割払いについては、割賦販売法という法律がございますし、貸金業法みたいな法律もあって、実は立替払いしているのは信用を与えていることと一緒なので、貸金業法の規制がかかってくることもあります。

近藤:
先払いのほうに注視する規制があるわけではないんですかね?

原:
そうとも限らず、実は先払いもお金の払い方という面ではそんなに規制がないように思われるんですけれども、お金を先に消費者さんからもらうことは、その後にサービスが提供されることになるので、そうすると持ち逃げみたいなことが起きてしまうので、基本的には特定商取引法とか、消費者を保護するような形で先払いについても規制されているものがあります。

支払手段の種類

近藤:
先ほどお話いただいていた2つ目は、支払手段の種類でしたっけ?

原:
そうですね。支払手段の種類というところで、例えば現金払い・クレジットカード払い・電子マネー・ポイント、場合によっては暗号資産とか、そういうものも支払手段の種類としてはあるかなと思います。

近藤:
そこにおいても気をつけないといけない法律はあったりするんですか?

原:
例えばAmazonギフトカードやSuicaは皆さん馴染みがあるかもしれないですけれども、ああいう形でポイントを発行しようとすると、いわゆる資金決済法上の前払式支払手段というものに該当するので、その規制を受けたりとか、暗号資産は結構めんどくさいので、さらに複雑な規制がかかってくるものもあります。

サービスの相手方を考える

近藤:
最後がサービスの相手方を考えるでしたっけ?

原:
そうですね。サービスの相手方は皆さん重要かなとは思っているんですけれども、相手方によって認識のレベルが違うという面があるので、例えば事業者目的だったら事業者なんだからそんなに保護する必要はないという一方で、消費者さんだったら分かっていないところも多いので、より保護してあげようということですね。

消費者向けのサービスだと、消費者契約法や先ほど申し上げた特定商取引法などが適用されるので、サービスを提供する側にとっては守るべき法律が増えるところは大きな点なのかなと思っています。

CtoCマーケットプレイスは「為替取引」に注意

近藤:
実際に法規制について詳しくお話しいただいたと思うんですが、まだ起業家の皆さんはどれに該当しているのかとか、何に気をつけないといけないのか分かっていない状況だと思うんですが、最近見ているビジネスモデルごとに改めて整理いただいてもよろしいでしょうか?

原:
まずはCtoCマーケットプレイスが皆さん一般的に取られることが多いんじゃないかなと思っているので、そこから説明させていただきます。

図にあるのが、プラットフォーム事業者がスタートアップという形にしていて、売り主と買い主をマッチングして、売り主と買い主の売買契約をセットする契約ですね。

原:
これは、実は買い主から売り主へお金が流れていく過程で、プラットフォーム事業者を仲介しているわけなんですけれども、人のお金を右から左に移動させる点は銀行にも似たようなところがあるので、為替取引に該当しないかが法的な論点になります。

これは一般的に収納代行スキームと呼ばれているスキームを取ることが多くて、要は最低限これを守っていれば為替取引には該当しないのではないかというところがあるので、そこを利用規約でセットしていって、為替取引に該当しないように制御するというのが一般的です。

近藤:
そのような課題を回避するにはどういった方法があるんですか?

原:
主に2点ありまして、まず1点目が正攻法に法律の規制のライセンスを取りに行くという方法と、もう1つはライセンスを取らない形でビジネスモデルを組み直すというところがあります。

具体的にはライセンスを取りに行くというのは、金融庁や関東財務局の手続きに従って、何ヶ月かかけてライセンスを取りに行くという方法があるんですけど、時間的にも人的なリソース的にも、規制のライセンスを取りに行くというのは、すごく大きくなれば取りに行けるところもあるんですけれども、なかなか難しいというところがあります。

なので、よくあるスキームとしては収納代行スキームという形で、ライセンスがいらない形でスキームを組み直すことが多いと思っています。

具体的には、法律上に定められた要件に従って代理受領権の授与とかで、売り主と買い主が売買契約で成立している債務があるんですけれども、それをプラットフォーマーがお金を受けた瞬間に債務が消滅することを利用規約に書くことで、為替取引の該当性を回避するというのは1つの手段としてあります。

スキマバイト系は「労働契約」と「立替払い」がカギ

近藤:
最近私が起業家の皆さんとの面談の中で見るのが、株式会社タイミーの上場からなんですけれども、スキマバイト系のビジネスモデルとか、タイミーの業界特化バージョンをよく見るんですけど、ああいうモデルにも気をつけないといけない法制度というか、法律はあったりされるんですか?

原:
まさに同じようにプラットフォーム型のビジネスだと思われるので、お金をどう払うかがすごく重要なものになります。

特にスキマバイト系のものですと、例えば瞬時にお金が出てくるというところが労働契約関係に立っているので、労働契約関係の法律も適用されるというところが大きな特徴です。

それにプラスして、即時にお金が払われるというところで、プラットフォーマーが一時的にユーザーに対して立替払いをしている構造にもなるので、そこの観点で、先ほど申し上げた一時的に立替払いをしていることは信用を与えているということになるので、貸金に該当しないかというところをケアする必要があると思っています。

配信系プラットフォームは「業務委託報酬」で整理

近藤:
あと1つほど、よく見ておられる事例をお伺いできればと思うんですが、いかがでしょうか?

原:
5~6年前くらいから配信系プラットフォームみたいなものがありまして、そのお金の流れについても結構問題になることが多いと思っています。

具体的には、ビューを稼いだ配信者さんに関してはいっぱいお金をあげて、そうでない方に関してはそんなにあげないという調整をすると思うんですけれども。

結局お金が流れていくのはプラットフォーマーなので、そうすると先ほど申し上げた為替取引のところにもヒットしそうなので、業務委託報酬みたいな形で、プラットフォーマーと配信者との間の契約関係を作り、ユーザーはあくまでデジタルコンテンツを買っているという形にした上で整理していることが多いかなと思います。

toBビジネスでも「分割払い」は貸金業法に注意

近藤:
今まではtoC側のビジネスモデルについてお話いただいたと思うんですけど、toBにも考慮しないといけない観点はあったりされますか?

原:
toB側にも気をつけないといけないポイントがあります。

例えば最近だと広告費の分割払いみたいなサービスも流行っている中で、分割払いは先ほどから何度も言っているんですけれども、立替払いみたいなところがあるので、そこは貸金業法との規制の関係で気をつけなければいけないポイントがあります。

この回避方法としても、ビジネスモデル的に貸金業法に当たる可能性が高いので、基本的には貸金業法のライセンスを取っている方が多くいらっしゃるかなと思っていて、あとは頑張って貸金業法がいらないスキームを考えるというのもあるんですけれども、ややグレーになったりするので、当局に一緒に持って行って確認するケースはあります。

レベニューシェアは契約書で「お金の流れ」を明確に

近藤:
その他によく見る事例はありますでしょうか?

原:
レベニューシェアは皆さん結構好きなので、レベニューシェアをしたがるスタートアップの起業家さんは多いのかなと思っているんですけれども。

「レベニューシェアで」と言ってしまえば結構簡単なようにも聞こえるんですけれども、誰と誰のお金で、何の対価を預かっているのかを整理しないと、お金が流れているようにも見えるので、そこは契約書などで綺麗にしています。

原:
例えばレベニューシェアの一形態として、ユーザーがスタートアップにお金を払っているというところは「そうだよね」という話で、レベニューシェアの何パーセントという払い出し方をどうするかというと、例えば業務提携契約書や業務委託契約書で決めて、協業会社のある業務の対価として残りのシェア分を払うみたいなことを整理したりしています。

近藤:
今お話をいただいた5つのビジネスモデルの事例だけでも、皆さん結構該当するところが多そうですよね?

原:
そうですね。そこに大体は該当するんじゃないかなと思っているんですけれども、悩まれたらちゃんと図を描いて、どういうふうにお金が流れているのかを整理すると良いのかなと思っています。

迷ったら専門家に相談を──グレーゾーンは当局と連携

近藤:
ちなみにスタートアップの皆さんは、先ほどおっしゃられたように革新的なビジネスを作っていかれる中で、今の動画を見て心配になった方もいるのかなと思うんですが、そういった時は原先生やAZX総合法律事務所の皆さんにご相談しても良いんでしょうか?

原:
ぜひお待ちしております。我々は日常的にいろんなサービスのビジネスモデルを法的な観点から分析や検討をしているので、初期の方にはもちろん、ちょっと進んできたフェーズの方にもサポートできると思います。

またグレーなところは当局と密に連携をとったりとかもするので、そういうところがあればぜひお声がけください。

近藤:
ぜひ関心を持った皆さんは概要欄にURLを置いておりますので、そこから相談をしてみていただければと思います。

最後に見ていただいている起業家の皆さんやスタートアップ界隈の皆さんに一言いただけると嬉しいです。

原:
肝は決済というところで、やはりサービスを作っていくためにはどういうお金の流れがあるのかというところは、一度図解をしてみるとビジネスの解像度が上がったりとかするので、ぜひチャレンジしてみてください。

近藤:
ありがとうございます。

質問やご相談については、概要欄のURLからご連絡いただければと思っております。原先生、ありがとうございました。

原:
ありがとうございました。

近藤:
それでは皆さん次の動画で、さよなら。