【倒産の正しい対処法】倒産は“終わり”じゃない。再チャレンジのための破産手続とは【法律相談所 vol.18】

◯青木 孝頼 AZX Professionals Group パートナー
プロフィール▶︎https://www.azx.co.jp/members/law/tak…
2006年 慶應義塾大学経済学部 卒業
2009年 一橋大学法科大学院 卒業
司法試験合格 司法研修所 入所
2011年 ときわ法律事務所 入所
2015年 株式会社地域経済活性化支援機構 入社
2017年 AZX Professionals Group 入所
2025年 AZX Professionals Group パートナー 就任

倒産件数は3年連続増加、ゼロゼロ融資終了が影響

近藤:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ法律相談所、Gazelle Capital株式会社の近藤です。

今回の動画テーマは「倒産」になります。自分の企業が資金難に陥って、倒産を考えざるを得なくなったらどうされますか?

最近、スタートアップ含め企業の倒産が増えてきているとお伺いをしておりますので、ぜひ実際の倒産の手段からどのような選択肢をとるべきか、ぜひ最後まで見ていただけると嬉しいです。

今回、動画に出ていただいておりますのは青木先生でございます。本日はよろしくお願いいたします。

青木:
よろしくお願いいたします。

近藤:
よろしければ簡単に自己紹介をお願いします。

青木:
2017年からAZX総合法律事務所に参加しておりまして、その前に弁護士登録をしたのは2010年からになります。それまでは都内の倒産系の法律事務所と、地域経済活性化支援機構という再生支援を行っている半官半民の組織に所属をしておりました。

ややスタートアップ関係の弁護士としては異例の経歴を持っております。

近藤:
いろいろな企業の倒産の事案も見てこられたのかなと思いますが、まずは細かくお話をいただく前に、今は倒産が増えていると動画を回す前に聞いていたんですけれども。

青木:
約3年間ほど前年同月比で倒産件数が増えているという傾向が続いています。やはりコロナでのゼロゼロ融資が終了したということもあって、全体としては倒産件数が高止まりの状況にあります。

近藤:
事例として起こり得るじゃないですけれども、数としても増えてきているような、そんな状況にあるんですね。

法的整理と私的整理、2つの倒産手続の違い

近藤:
早速ですけれども、そもそも自社が倒産する場合、どういう選択肢があるんですか?

青木:
まず倒産は何ですかということなんですけれども、事業がなかなかうまくいかなくなって、債務を負担しているけれども払えなくなってしまったと。そうなった時にどうするかという話です。

その際に取れる手段は大きく分けると2つありまして、法的整理というものと私的整理という2種類があります。

青木:
法的整理というのは、例えば破産法であったり、民事再生法であったり、裁判所が関わって法律に基づいて債務を免除したり、リスケジュールをしてもらったり、そういった対応を取ることで債務を整理していくような手続になります。

一方で私的整理は、裁判所を通さずに当事者間の交渉で債権をカットしてもらったりする手続となります。

近藤:
メインは法的整理であることが多いんですよね?

青木:
私的整理の場合は、通常金融機関であったり、あるいはリース債権者であったり、いわゆる金融債権者との間で交渉をして債権をカットしてもらうことがメインになります。

スタートアップの場合は、あまり金融機関から借り入れているケースが多くないので、どちらかというと法的整理が選ばれる傾向にあるかなと思います。

再建型と清算型、事業継続の可否で選択が分かれる

近藤:
法的整理の中でもいくつか種類はあるんですか?

青木:
大きく分けると、再建型の手続と清算型の手続があります。

青木:
再建型手続というのは、金融機関あるいは債権者から債権をカットしてもらって、カットしてもらった残りの部分を少しずつ弁済をしていく、そして事業を再生していくようなイメージになります。なので、再建型の手続の場合は、事業を残していくというようなイメージですね。

近藤:
事業を立て直す意向が前提にあって、整理・清算をしないといけないという状況に陥ったスタートアップさんが選ばれる1つの手段ということですかね。

青木:
そうですね。事業自体はうまくいっているけれども、例えば借入れが多すぎてどうにもならないとか、そういった場合のイメージですね。一方で、清算型の手続がより分かりやすいかもしれないです。いわゆる一般的な破産・倒産のイメージですね。

事業を終わらせて、残った財産を債権者に対して弁済をする。そして事業を終了させる。そのようなイメージが典型的です。

近藤:
まさにそのイメージでした。

破産手続は債権者の同意不要、最終手段として機能

青木:
まずは、清算型の手続の中でも破産手続ですね。

青木:
裁判所に破産を申し立てた後、裁判所が選任する破産管財人という人がイニシアチブを持って、債権の調査をして、債権者を確定して、債権者に残った財産を弁済していくという手続になります。

近藤:
この中で、気をつけないといけないことや論点になるポイントはどこですか?

青木:
基本的には管財人が手続を進めることになりますので、申し立てた後に大きな手続があるわけではないんですけれども、債務を支払えなくなってしまったので、債権者の方が押しかけてきた。なので、その人だけに払ってしまったと。

そういうことになると、いわゆる偏頗弁済(へんぱべんさい)という形になって、破産手続の支障もきたしますし、場合によっては刑事罰の対象になることもあります。そういったことはしないようにする必要があるかなと思います。

近藤:
破産手続を選ばれるスタートアップの特徴は、どういったところになるんでしょうか?

青木:
破産手続は、事業を清算してしまうということになるので、事業自体がうまくいっていないケースが多いです。

後ほどお話ししますが、特別清算等と違って、破産手続の場合だと債権者の方の同意なく清算が進められるということになりますので、債権者に同意が得られないケースでも破産手続を選ぶことができる。なので、最終的にはそこに至るケースも多いですね。

特別清算は債権者の同意が前提、小規模企業向け

近藤:
清算型の手続の中で、先ほどお話いただいていた破産手続の部分があると思うんですが、もう1つあるのが特別清算でしたっけ?

青木:
そうですね。

近藤:
特別清算はどういったものになるんでしょうか?

青木:
特別清算は、会社法に基づく会社の整理の方法でして、解散をした後に債務超過になって債務を全部払えないという場合に、会社法上の手続に従って申し立てることができます。

青木:
こちらは先ほど申し上げた破産手続とは違って、管財人ではなく会社が選任をした清算人が手続を進めることになります。

基本的には債権者との合意、あるいは債権者協定と言うんですけれども、協定が成立をしなければ終了しないという手続になります。ですので、債権者の同意が得られることが前提の手続です。

近藤:
こういった特別清算とかも、スタートアップではよく使われる手段になるんですか?

青木:
特別清算の手続で行うケースもあります。ただ、特別清算にいかないように、できる限り債権を返して、残る部分については債権をあらかじめ放棄してもらう。

その上で解散をすれば、解散の時点では債務超過にはならないので、事実上は特別清算ではなく、通常の清算手続で会社を終了させるというケースも多いです。

近藤:
今のお話を聞いていると、できるのは小規模のスタートアップで、利害関係者とコミュニケーションが取れるような方々というところに限られてくるということですよね?

青木:
そうですね。おっしゃる通り、コミュニケーションが取れることが大前提ですね。

民事再生と会社更生、担保権の扱いに違い

近藤:
少し話を戻しまして、清算型の対比で再建型とお話いただきましたが、再建型についてより詳しく聞きたいんですけど、どういった手段があるんでしょうか?

青木:
再建型にも2つありまして、民事再生という手続と会社更生という手続があります。

青木:
民事再生手続というのは、債権者との間の再建計画を作って、一部の債権を放棄してもらったり、支払い条件を変更して、残りの部分だけを弁済して、一部の債権をカットしてもらう。その上で事業の再生をしていくという手続になります。

近藤:
清算型ではなく再建型、民事再生を選ばれるような方々は、どういった属性の方々、どういった企業の方々になるんですか?

青木:
基本的には事業を再生していくことが前提になりますので、事業自体に価値があるようなケースが中心になります。

会社更生も基本的には同様でして、事業の再生のために債権の一部をカットしてもらって、事業の再建を進めていくということになります。

民事再生とどこが違うんですかという話ですけれども、民事再生の場合は会社自身、つまり再生債務者が主体となって手続を進めます。一方で、会社更生手続の場合は、裁判所が選任をする更生管財人が主体となって進めます。というような主体の違いがあります。

あとは、会社更生法の場合、いわゆる担保権がついている債権、例えば抵当権があったりとか、そういったものも手続の中に組み込まれることになります。例えば、工場や機械などの会社の運営に重要な資産があって、それに担保がついているようなケースで選ばれることが多いと思います。

近藤:
ありがとうございます。

判断基準は債権者の同意と事業の存続可能性

近藤:
改めて、倒産手続には清算型と再建型があり、それぞれの分岐としては、事業を残すかどうか、そのまま会社として全て畳んでしまうのか、事業だけを残していくのかという手段の選択肢がありますと。

あとは担保の部分と、債権者とコミュニケーションが取れるかどうかというところが、大きく変数として生まれてくるんですね。

青木:
そうですね。

近藤:
ありがとうございます。

具体的に判断基準としては、1つは事業が存続可能かどうかというところだと思うんですけど、その他にスタートアップの方々が選択をする上で見ておくべき要点、基準等はありますか?

青木:
私的整理か法的整理かという段階では、私的整理の場合は、基本的に銀行等の金融債権者のみを対象としますので、そこの方々だけが同意をしてもらって事業が進められるのかどうか、あるいはそれ以外の取引先も巻き込まないとどうしても事業がうまくいかないのか、そこが1つの判断基準になります。

次に再建型か清算型かというところにつきましては、事業を再生するだけの利益が出て、事業が今後進められるのかどうかというところが一番大きくなります。

仮にどうしても再生が難しい場合、特別清算なのか破産なのかというところについては、やはり債権者の同意が得られるのかどうかが基準になります。

破産手続を選んだとしても、連帯保証等がついていなければ経営者の方に責任が飛んでくるわけではありませんので、破産手続というのも1つの選択肢ではあると思います。

近藤:
ありがとうございます。

連帯保証の有無が経営者個人の責任を左右

近藤:
連帯保証がついているかどうかの決め手とか、経営者個人に責任がくるかどうかというのは一番気になっておられるところだと思うんですけど、責任についてはどういう理解をしておくのが正しいでしょうか?

青木:
基本的には、経営者個人で保証債務を負っていない場合、会社さんのほうで倒産手続に移行したとしても、個人の責任が追及されるというわけではありません。

ただ、例えば銀行からの借入れの連帯保証人になってしまったというケースだと、会社が倒産をすると保証債務を支払わなければいけないことになります。

近藤:
どういう形で調達をされているのか、というところが大きく関与してくるということですね。

再チャレンジ支援融資など、国も再起を後押し

近藤:
最近倒産をした方々とか、破産をされたような方々でも、再チャレンジをするという風潮は出てきていますよね?

青木:
そうですね、ご認識の通りだと思います。そもそも破産をしたとしても、再チャレンジしてはいけないということは全然ないですし、それまでに事業で経験を得られたことを含めて、どんどん再チャレンジ、次の事業を起こしていただきたいと思っています。

それについて、例えば日本政策金融公庫等でも再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)という制度もありまして、国全体としても再チャレンジができる社会を目指していこうという中ですので、破産も逆に前向きに捉えていただきたいと思っています。

近藤:
ありがとうございます。

私も関与しているところでいいますと、東京都のTOKYO Re:STARTERというイベントがありまして、再チャレンジをするような方々が講演をしたりとか、そういった方々を集めてベンチャーキャピタル(VC)にアタックをするようなコミュニティもあったりするので、そういった機運というのは徐々に高まっているといいますか、そういう選択肢を選ばれるような方々も増えてきているなとはすごく思っています。

破産手続は申し立てから債権者集会まで約3ヶ月

近藤:
ちなみに、倒産が決定した時の実務上の手続の流れは、具体的にどういった形になるんでしょうか?

青木:
倒産の前の段階で資金繰りがまずいという段階があると思います。そこで早めに今後どうするかを検討していただいて、それでもどうにもならないとなると、裁判所に対して破産手続の申し立てをします。そうすると、裁判所の方で管財人の候補者を決定して、破産手続の開始決定になります。

その後、債権調査期日というのがありまして、債権者から債権の届出をしていただいて、債権の額を確定する。それと並行して管財人が、どういった財産が残っているのかを調査します。そこで、資産と負債を確定した上で、債権者集会を開いて、財産の状況について報告する。

財産があるのであれば、確定した資産負債状況を前提として、債権者に対して分配を行っていく。どうしても分配の原資もないということであれば、手続廃止ということで手続を終了するというような流れになっていきます。

近藤:
ちなみに、個社ごとでいろいろあるかなと思いますけど、破産手続を開始してから終わるまでは、どれくらいの期間が必要なものになるんですか?

青木:
資産の換価に長時間を要するようなものがあまりないケース、事実上小規模な事業であったりとか、もうすでに事業がなくなってしまっているようなケースは、申し立てをしてから債権者集会まで通常3ヶ月程度と言われています。

近藤:
あとは企業さんの資産状況といいますか、債権状況によっては長引いたりするということなんですね。

取引先の倒産、回収は数パーセント程度が実態

近藤:
今までの話は自社の倒産というテーマだったと思いますが、取引先が倒産するケースもあると思うんですよ。そういったケースは備えをする方法があるのか、ぜひその対応を含めてお伺いしたいんですけれども、いかがですか?

青木:
取引先が倒産したというケースは、当事務所でも最近徐々に増えてきています。正直、倒産してから何らかの対応をするというのは、なかなか難しいというのが実情です。

近藤:
そうですよね。事前にリスクが分かっておければ良いですけど、限りはありますし、倒産したところからお金を回収するのは、特にスタートアップではなかなか難しいんでしょうね。

青木:
おっしゃる通りなかなか難しいんですけれども、その中でできることが何かあるのかという観点で少しご説明したいと思っています。

実際に倒産した、破産したとなると、どれくらい回収できるかということですけれども、大半のケースでは回収できたとしても全体の債権額の数パーセント程度というケースが多いかなと思います。

債権者集会で債権者に対して質問をすることはできるんですけれども、とはいえ、それで回収が増えるかというと、そういうわけではないというのが実態ですね。

相殺権と動産売買先取特権、限定的な救済手段

青木:
その中でも何ができるかということですね。1つは、相殺権という権利があります。これは破産をした債務者に対して自分が債権を持っているけれども、相手も債権を持っているというケースにおいて、それは対等額で消滅させるということは認められています。

もう1つは、動産売買先取特権という権利があります。いわゆる物を販売している場合に、売った代金だけは優先的に回収ができるという権利になります。

近藤:
今教えていただいた2つの手段については、スタートアップではよく使われるものになるんですか?

青木:
正直、なかなか難しいところがあります。

近藤:
それはコスト面ということですか?

青木:
相殺権に関しては、破産した人に対して債権を持っている一方で、逆に破産した人も会社に対して債権を持っているという状況でなければならないので、実態としてそこまで多いわけではないと認識しています。

動産売買の先取特権は、特に契約等に規定しなかったとしても発生する権利ではあるんですけれども、そもそも動産の売買じゃないと使えません。なので、例えばSaaSであったりとか、物を売っていない会社さんだと使えないということになります。

あとは、物を売っていたとしても、本当に自分が販売した商品なのかというところが確実でないといけないんですね。例えば、量販品を販売して購入したというケースだと、なかなか使いづらいことがあり得ます。

近藤:
ありがとうございます。

事前の担保設定と与信管理がリスク回避の鍵

近藤:
今教えていただいたのは、事象として発生した後の備えといいますか、対応策なのかなと思うんですが、スタートアップが取れる事前のリスク回避の方法はあるんですか?

青木:
倒産手続においては、いわゆる担保ですね。抵当権であったりとか、譲渡担保権であったりとか、所有権留保であったり、そういった権利は、原則として他の債権よりも優先して担保権を行使して回収をすることができるということになっています。

ですので、担保をあらかじめ取っておくことができれば、回収をすることができる。あとは、代表者の個人の保証責任ですね。連帯保証を取ることができれば、そこからはいけますね。

近藤:
あとは、手軽にできるという観点でいうと、そもそも1社の取引先に依存しない仕組みを作っていくというところなんですかね?

青木:
おっしゃる通りですね。場合によっては、多額の取引を行うという時には、与信調査をしっかりするという事前の備え、一般的な話になってしまうんですけど、そういったところが必要かなと思います。

倒産は次へのステップ、きれいな整理が再起の鍵

近藤:
この動画で、自社が倒産をした時と取引先が倒産をした時、それぞれについてお話をいただきましたが、皆様ご理解いただけましたでしょうか?

よろしければ、この動画の最後に、見ていただいている視聴者の皆さんに、青木先生からメッセージをいただければと思いますが、お願いしてもよろしいですか?

青木:
はい。皆さんは倒産手続というと、何か恐ろしいことであったり、今後悪いことが起きるんじゃないかというように思われることが多いと思います。

ただ、倒産手続というのは、今まで事業をやってきた中で発生した最後の整理の手続です。そこをきれいにした上で、次の事業に邁進していただきたいと思っています。

どれくらいきれいに整理をできたかによって、次の再チャレンジもどれだけうまくいくかということに影響してくると思っています。

必要以上に倒産というものを恐れずに、次に向かうステップの1つと考えていただいて、どんどん進めていただければと思っています。

近藤:
最後までこの動画を見ていただきまして、ありがとうございました。

それでは次の動画で、さようなら。