スタートアップ起業家を守る”経営者保証なし”の融資制度を徹底解説【融資相談室】
◯若林 哲平 株式会社INQ-代表取締役CEO(行政書士法人INQ代表)
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1980年東京都清瀬市生まれ、神奈川県相模原市出身。青山学院大学経営学部卒。
融資サポートを中心に、様々な領域のスタートアップのシード期の資金調達を支援。
年間130件超、10億以上の調達を支援するチームの統括責任者。行政書士/認定支援機関。
複数のスタートアップの社外CFOも務め、業界への理解が深く
デットだけでなくエクイティ両面の調達に明るい。
経営者保証ガイドラインの活用実績が倍増
近藤:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ融資相談室、Gazelle Capital株式会社の近藤です。
今回は、前回に引き続き、経営者保証についてのお話になると思うんですけれども。
若林:
前回は、金融庁から経営者保証ガイドラインというものを活用して、連帯保証を付けない融資をどれくらい活用されたかという実績報告がありました。そのことを踏まえて、経営者保証についてお話をさせていただきました。
経営者保証ガイドラインを活用した融資が約30%から約60%に倍増(2020年度から2024年度)したというところに加えて、どの金融機関が経営者保証ガイドラインを外すことで積極的なのかみたいなことも含めて発表されたというところで、そこに注目して経営者保証が付かないようにスタートアップが融資を受けていくにはどうすればいいんだっけ?という話をさせていただきました。
近藤:
今回は、まさにそういった経営者保証が付かない融資制度を順にお伺いできるんですよね?
若林:
そうですね。大きく分けると、日本政策金融公庫さんの融資と保証協会付きの融資、これらのうち連帯保証が付かないものを選びましょうという話なんです。
日本政策金融公庫の経営者保証なし融資制度
近藤:
まずは公庫さんからの融資のお話をお伺いできればと思うんですけど、一番は何なのでしょう?
若林:
皆さん創業して融資を受ける際というのは、だいたい新規開業・スタートアップ支援資金という制度を使うんですけど、これは基本的には連帯保証なしをベースとしているというものになります。
加えて、新規開業資金の適用にならなかった場合であっても、経営者保証免除特例制度というものがありまして、これが幅広く適用できるものになるんですけれども。
基本的には前回でお話したような経営者保証ガイドラインの要件に近いといいますか、一定の要件を満たすと連帯保証なしで公庫の融資を受けられるという条件を定めた制度になっていまして、これはあらゆる制度に適用して経営者保証を外すということになってくるかと思います。
その他にも、例えばスタートアップがよく活用する資本性ローンというものですとか、商工会議所を窓口にして、公庫のお財布から融資するマル経融資という制度。これらは基本的には経営者保証が付かないというふうになっているので、こういった制度を積極的に活用いただくというのがいいのかなと思います。
2023年3月から変わった保証協会付融資の仕組み
近藤:
続いては保証協会が出しておられるような、まさに融資制度ですね。
若林:
これは保証協会付融資というものなんですけれども、スタートアップが金融機関から融資を受けようと思ったときに、各都道府県にある信用保証協会の保証を付けることによって、もしスタートアップが返せなくなってしまっても、銀行への返済を保証協会が肩代わりしてくれる制度なんです。
保証があることによって、銀行からスタートアップは借りやすくなるというような仕組みなんですけども、これは2023年3月より前は、基本的には連帯保証が付くのがデフォルトだったんですよ。
近藤:
それが当たり前だったんですね。
若林:
ところが、これからお話する制度が徐々に出てきまして、連帯保証を付けなくても信用保証協会の保証を活用した融資が受けられる制度が走っています。
スタートアップ創出促進保証(SSS保証)とは
若林:
1つ目がスタートアップ創出促進保証。
近藤:
どういったものになるんですか?
若林:
これはスタートアップの創出を促進していくということで、頭文字を取ってSSS保証と呼ばれるんですけど、これは簡単に言うと創業5期未満のスタートアップなどが融資を受ける際に保証をしますと。
そこの保証に対しては連帯保証が付かないというような仕組みになっています。
事業者選択型経営者保証非提供制度の仕組み
若林:
もう1つが長いんですけど、事業者選択型経営者保証非提供制度というものでして、これを分けると中でいくつかあるんですけど、基本的には事業者側が信用保証料というものを上乗せすることによって、経営者保証を外す、提供しないということを選択できるという制度になっています。
近藤:
信用保証料をですか?
若林:
そうなんですよ。都道府県とか一部の政令指定都市にある信用保証協会に、保証してくれる対価としてスタートアップ側が保証料を払っています。
金融機関が保証してもらうんだから金融機関が払うのかなと思いきや、スタートアップ側が払う。
近藤:
「これでお願いします」みたいな感じですね。
若林:
「保証を付けてください」とお願いをして付けてもらうことによって借りやすくなるという仕組みになっています。
この保証料を上乗せするから代わりに連帯保証なしにしてねという仕組みが始まったという形ですね。これが2024年3月から出てきてというような形ですね。
その他にも、プロパー融資借換特別保証制度というものがあって、連帯保証を付けたプロパー融資がある場合に、保証協会付きかつ連帯保証なしのもので借り換えられる制度があったりとかして、こういう制度を活用することによって、連帯保証を外すことができるということなんですよね。
近藤:
結構私が思っていたよりも数多くありました。
若林:
そうですね。スタートアップ育成5か年計画に沿って、もともと大胆な事業展開の足枷になっていた連帯保証を外すことによって、よりイノベーションを加速していこうというところで、政府としても力を入れてやっているところの1つですね。
東京都限定の「女性・若者・シニア創業サポート2.0」
若林:
もう1つが、これは東京都の方限定になってしまうんですけど、「女性・若者・シニア創業サポート2.0」という、小池都知事肝入りとも言われている制度がありまして。
この制度は連帯保証を付けるパターン・付けないパターンがあるんですけど、基本的には付けないパターンに集約されるような形になっていて、代表者の連帯保証というのはなしで借りる制度と言っていいと思います。
近藤:
まさに連帯保証が外せる経営者保証がないものは、やはり人気なんでしょうね。
スタートアップ創出促進保証もお伺いしたことがありますし、まさにこういったところを意識的に選びつつ、初期のハードルを下げて融資をうまく引いていくというのが一番いいのでしょうか?
若林:
これは各都道府県の信用保証協会だったり、自治体の制度融資・融資あっせん制度で、私も全国を見切れているわけではないので、自治体によってはオリジナルで連帯保証がいらない制度があるかもしれないので、ぜひ自治体のWebとかも確認していただくといいかなと思います。
近藤:
ありがとうございます。
融資申請時に自ら制度を選択する重要性
近藤:
ちなみに普通に融資を申請すると、経営者保証が付かないようなところで通るものなんですか?
若林:
これは金融機関の担当者によるという側面もあるかと思います。
場合によっては、自ら積極的に「経営者保証が付かない制度を使いたいです」とか「スタートアップ創出促進保証を使いたいです」というふうに言わないと、その制度が選択されない可能性というのもあるので、あくまでも自分からお願いをして、スタートアップ創出促進保証などの適用をお願いするということは念のためやっておいたほうがいいと思います。
近藤:
「スタートアップだからこうしてあげよう」となっているわけではない?
若林:
必ずしもなるとは限らない。保証協会付きの融資はメニューがたくさんあって、担当の方がやり慣れている制度があるかもしれないですよね。そのほうが工数が少なくて済むので、スルッと進む可能性があるわけですけど。
ただスタートアップ創出促進保証は、始まって1~2年しか経っていない制度なので、そういった意味では自分からお願いしないと漏れてしまうことがある。そこだけ気を付けてください。
近藤:
ぜひ起業家の皆さんはこの融資制度を知っていただいて、意識的に選択をしてもらえるような環境づくりをしていただければと思っております。
経営者保証を外すために準備すべきこと
近藤:
ちなみに複数ある融資制度をうまく利活用して、見ていただいている皆さんは融資を引いていきたいと思うんですけれども、注目するべき観点というか、融資を通すために必要な項目とかはあったりするんですか?
若林:
先ほどご案内したスタートアップ創出促進保証ですとか、公庫さんの経営者保証免除特例制度、こういったものを活用するのに、ある程度、経営者保証ガイドラインの内容に沿って、一貫性を持って要件というのは定められているので、次回は経営者保証を外すためにスタートアップが準備できることをお伝えできればなと思います。
近藤:
ありがとうございます。
ぜひ先ほど挙げた融資の中で、チャレンジしてみたい、皆さんが引き出してみたいというところがあれば、次回も見ていただければと思っております。それでは次の動画で、さよなら。
