【基礎編】社員のモチベーション維持にも繋がる”ストックオプション”を完全解説|メリットや仕組み活用法をわかりやすく教えます!【法律相談所 vol.17】

◯平井 宏典 AZX Professionals Group パートナー
プロフィール▶︎ https://www.azx.co.jp/members/law/kos…
2012年中央大学法学部法律学科 卒業
2014年慶應義塾大学法科大学院 卒業
司法試験合格 司法研修所 入所
2016年AZX Professionals Group 入所
2019年株式会社ジャフコ(現 ジャフコ グループ株式会社) 出向(2019年2月~2020年1月)
2022年AZX Professionals Group パートナー 就任

ストックオプションとは何か?将来の成功に賭ける仕組み

近藤:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ法律相談所、Gazelle Capital株式会社の近藤です。

今回は、この動画を最初から最後まで見ていただくことでストックオプション(SO)の全てがわかります。

まずは基礎編と題して、そもそもSOとは何かについてお話をさせていただき、発展編の動画ではより行使条件についてお話しできればと思っております。

今回、ゲストとして平井先生に来ていただきました。よろしくお願いいたします。

平井:
よろしくお願いいたします。

近藤:
改めて、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

平井:
私は、2016年にAZX総合法律事務所に入所いたしましたので、約10年ほどスタートアップ業界でスタートアップ法務ということで、スタートアップのサポートをずっとやっている弁護士になります。どうぞよろしくお願いいたします。

近藤:
よろしくお願いいたします。

早速、題材となっているSOとは何ですか?

平井:
SOというのは、いわゆるストックオプションということなんですけれども、このストックオプションというのは、株式会社に対して行使をすることによって、その株式会社の株式を将来取得することができる。そういった権利になります。

平井:
スタートアップでは、いわゆる少数精鋭で新しいことにどんどんチャレンジしていくので、優秀な人材を確保することが特に重要です。とはいえ、スタートアップにとって採用は大変ですよね。

近藤:
そうですね。

平井:
高い報酬を提示すれば人が寄ってくると言っても、スタートアップは資金的に余裕があまりなかったりもしますよね。

近藤:
おっしゃる通りです。

平井:
現金で高い報酬を提示するというのは難しい。そこで、スタートアップが人を採用するにあたって、「この会社が成功したらすごい利益を手に入れるよ」というような、将来の成功に賭けてもらうような仕組みを作って、それをモチベーションとして維持することが大切なんですけれども、そのモチベーション維持に使われる仕組みとしてSOというものがあります。

具体例で理解する!権利行使価格5万円が120万円になる仕組み

近藤:
早速なんですけど、SOの仕組みはどういった形になっているんですか?

平井:
先ほどSOとは「この会社が成功したらすごい利益を手に入れるよ」ということだと説明したんですけれども、具体的にどういうことかというと、会社の価値が上がって株式の価値が上がった場合でも、SOを保有していれば、その時点の株価に関係なく権利行使価格で株式を取得できて、取得した株式を第三者に売却をすれば、売却時点での株価と権利行使価格の差額分を金銭的な利益で得ることができる。

平井:
例えば、あるスタートアップの従業員のAさんという人がいたとします。AさんがSOを取得した時点で、権利行使価格が1株当たり5万円のSOを1個無償で取得したとします。

平井:
その後、スタートアップのビジネスが順調にうまくいって、無事に上場も果たして、スタートアップの株価が例えば100万円になったとします。

そうすると、Aさんは100万円の時価になった株式を手に入れるためにSOの権利を行使します。そうすると、5万円の権利行使価格を会社に払い込むことによって、100万円の価値のある株式を手に入れることができるんですね。

この時点で100万円の価値がある株式を5万円で手に入れることができたということになるので、それだけでも利益になっているとは思うんですが、さらにその会社が例えば成長していたとしますね。株価が120万円になりましたと。

平井:
120万円になった時点で、株式を市場で売却するということになったら、簡単にいうと、120万円の価値のある株式を5万円で取得できたということになりますよね。

近藤:
そうですね。

平井:
後ほど税金の話をさせていただくので、税金等は発生するんですけれども、一旦わかりやすく税金の話を置いておくと、120万円から5万円を差し引いた115万円が利益になるということで、これがSOの仕組みということになります。

近藤:
めちゃめちゃ魅力的ですね。やはり初期にコミットするような恩恵が受けられるというところですかね。

平井:
そういうことですね。

近藤:
理解しました。

最大55%の税負担!通常のSOにかかる税金の実態

近藤:
先ほど税金は一旦置いておいてというお話をされたと思うんですけど、税金は何か考えないといけない部分になるんですか?

平井:
そうなんですよね。そのことについてお話しさせていただければと思います。

通常のSOといいますか、先ほどの利益が得られるというところはその通りなんですけれども、利益に対しては、どうしても税金がかかってくるということになります。

どういう形で課税がされるのかということなんですけれども、先ほどの例でいうと、権利行使価格は5万円というお話をしました。

平井:
5万円を払い込むことによって、株式を取得する時点で100万円の価値のある株式を取得できる場合には、まず100万円と5万円の差額が一種の利益になるわけですよね。

近藤:
そうですね。95万円分が今回の利益ですもんね。

平井:
そういうことです。まず、権利行使時の株を取得した時点で、その95万円に税金がかかります。基本的には給与所得として課税されるという形です。

近藤:
給与所得で入ってくるのは、なかなか厳しいですよね。

平井:
おっしゃる通りですね。給与所得の場合ですと、所得税と住民税があって、累進課税が適用されるので、最大55%ということなので、非常に税率が高くなるという形になってきますね。

その次に、100万円の株式を取得した後に、会社の価値が上がっていって、120万円になりました。そこで、株式を第三者に売却したら、売却益という形で、また20万円の利益が出ますよね。

そうすると、20万円にも税金がかかってくる。20万円については、株式を譲渡した時にかかる譲渡所得として税金がかかるという形になってきて、譲渡所得については一律約20%かかってくるという形になるので、いずれにしても税金がかかってくるという形になっています。

近藤:
すごい税金がかかるんですね。半分ぐらいが税で持っていかれるということですもんね。

平井:
そういうことになります。税金はやっぱり抑えたいじゃないですか。

近藤:
おっしゃる通りです。

税制適格ストックオプションなら税率20%!課税繰り延べの大きなメリット

平井:
せっかく金銭的な利益が得られたとしても、半分ぐらい税金で持っていかれるというのは「ちょっとね……」という感じだと思うので、やっぱりモチベーション維持ですとか、インセンティブとしては、この税金のところをどうにかしたいと。

そこは国もわかっていて、税制上の優遇措置を受けられるSOというのが実はあるんですね。

近藤:
そうなんですね。ちょっと安心というか、よかったです。

平井:
先ほどの話は通常の原則形態の課税関係になるんですけれども、この「税制適格ストックオプション」と言われるものを発行すると、どういうふうに課税関係が変わるのかということをお話しさせていただきたいんですが、図のAの部分でかかっている課税がありましたよね。株式を取得した時点で発生した税金、ここは給与所得として高いというところです。

近藤:
先ほどの95万円というところですね。

平井:
そうです。ここの何が大変かというと、株式を取得した時点で、権利行使価格を払い込んで、株式は取得したわけですけれども、現金は手に入っていないですよね。

近藤:
そうですね。

平井:
だけれども、税金は発生するということなので、現金収入がないタイミングで課税だけが発生してしまう。しかも55%。

近藤:
普通の社員の方にとっては、非常に苦しいシチュエーションですもんね。

平井:
貯金とかがあればそこから出すんでしょうけど、基本は難しかったりですとか、大変なことになると。ですが、税制適格ストックオプションというものを発行すると、まず課税時期の繰り延べというものが行われます。

平井:
権利行使の時点で、現金収入がないにもかかわらず、発生してしまった課税のタイミングを、株式の売却時に繰り延べすることができるんですよ。

かつ、先ほどは譲渡所得の約20%の税率のところについては、売却時の時価と、権利行使時の時価の差額分、先ほどの例で20万円の部分だけに譲渡所得として取り扱うという話だったんですけど、そうではなくて、売却時の時価の120万円と5万円、この差額の115万円全部が給与所得じゃなくて、譲渡所得として対応できます。

近藤:
先ほどの55%は撤廃といいますか、あとは個人のキャッシュフロー的にも問題ない?

平井:
株式を売却したタイミングなので、お金が入ってきたタイミングで税金がかかります。

近藤:
それはありがたいですね。

平井:
非常にメリットがあるんですね。なので、こういったものを国としてもちゃんと用意してもらっているので、税制適格ストックオプションを発行する企業が多いです。

税制適格の要件①:無償発行・対象者・大口株主の制限

近藤:
ちなみに、税制適格ストックオプションの要件はあるんですか?

平井:
基本的にスタートアップが発行するSOというのは、税制上のメリットが受けられる、税制適格ストックオプションで発行することがほとんどなんですけれども、条件は何かということなんですが、まず対象となるSOについては、「無償で発行されるものに限る」というものがあります。

SOは、取得する時にも会社法上の建て付けですと、払い込み金額という形でSOを手に入れるために、取得するために、お金を払い込むという建て付けもできるんですけれども、税制適格ストックオプションについては、払い込み金額が0円、無償で取得できるというところが要件です。

次に重要なのが、対象者ということなんですけれども、SOを付与する相手方、基本的にはスタートアップの取締役か従業員、このいずれかに限られるということです。なので、いわゆる業務委託社員の方は含まれないということになります。

平井:
あと重要なのは、いわゆる大口株主と言われる方も対象外になっていまして、大口株主というのは、発行済みの株式数の3分の1超を保有されている方には、税制適格ストックオプションは発行できない。

わかりやすい例でいうと、社長ですね。例えば、社長は3分の1超持っているじゃないですか。社長に税制適格ストックオプションを発行するということは、株式比率が3分の1超であれば、できないという形になります。

税制適格の要件②:2024年改正で行使期間15年・上限3,600万円に拡大

近藤:
その他に要件で縛りがあるものはないんですか?

平井:
まだあります。

契約書上、SOを取得する契約書の中で、定めなければいけないいくつかの要件がありまして、これがちょっとややこしい話になってきます。

1つ目が、権利行使をするタイミングがSOの付与決議、その日から2年を経過した日から10年を経過する日までの間に行われなければならないということがあります。

それを契約書にちゃんと書かなければいけないということなんですけれども、実は行使期間の制限なんですけれども、2024年に改正がございまして、少し緩和されたんですね。

具体的には、設立5年未満の会社の場合には、2年を経過した日から15年を経過する日まで。5年伸びたみたいなイメージですね。

もう1つが、権利行使価格の総額が年間1,200万円を超えないことというものがあります。

平井:
例えば、権利行使価格が5万円のSOを100個持っていたとします。

100個を1年の間に行使したら、権利行使価格の総額は5万円×100個なので、500万円になりますよね。なので、年間の権利行使価格の総額は500万円なので、1,200万円の中で収まっていると。これはOKなんですけれども、そういった上限があるという形になっています。

権利行使価格の総額が年間1,200万円を超えるということはあまりないんですけれども、それでもそういったケースはありまして、せっかくもらったSOを行使できないということにもなりますし。

行使期間について先ほどお話ししましたけれども、この期間までに行使しなければいけないから、行使していないSOがたくさんあると、一気に行使したいけれども、この上限の制限があるから行使できないということにもなりかねないので、そういった意味では制限になるという形なんですが、ここも緩和されました。

平井:
2024年4月の税制改正で、設立5年未満の会社がSOを発行する場合は、年間2,400万円に枠が拡大しまして、設立5年以上で20年未満の会社で、上場していない会社、もしくは上場後5年未満の会社がSOを発行する場合は、年間3,600万円までと枠が拡大されたんですね。

権利行使価格というのは、低く抑えられるようになってきましたので、この要件が問題となるケースは今後少なくはなるかなと思います。

税制適格の要件③:権利行使価格は時価以上・2023年国税庁見解で低く設定可能に

平井:
3つ目なんですけれども、これが非常に重要な要件になっていまして、権利行使価格というのは、SOを取得する契約を締結した時の時価以上でなければならないと。「権利行使価格(権利行使価額)」というものなんですけれども。

平井:
その価格を設定するにあたっては、SOを取得する時に会社との間で、割当契約書というのを締結するんですけれども、その契約を締結した時の会社の時価以上に設定しないといけませんという話なんですね。

この時価というのが何なのかというところが重要になってくるじゃないですか。従来は、スタートアップなどの上場していない非公開会社の場合ですと、時価算定が必ずしも容易ではない。

なので、実務的には、今後の資金調達の予定も考慮しつつ、直近の株式による資金調達の単価をベースに行使価格を定める例ですとか、あとは直近の株式による資金調達が優先株式による場合には、高い価格が行使価格になることを避けるために、普通株式の公正価格を別途第三者の方に算定をお願いして、算定してもらうということが実務上は行われていました。

ただ、2023年に国税庁から時価について、権利行使価格は、付与契約締結時点の時価以上でなければならないということは変わらないんですね。

だけれども、その時価というのが曖昧だったので、皆さんは安全なところにいっていたんですけれども、この時価について、純資産価額(会社の資産-負債の価値)をベースに算定することで良いということに、国税庁から明確に言われたので、基本的には行使価格を低く抑えられるようになったという形になっています。

ファイナンス前の駆け込み発行は不要に!時価算定の新ルール

平井:
今は時価の話をさせていただいていますけれども、時価ということは、どの時点の時価かということなので、SOを発行するタイミングが非常に重要になってくるんですね。それによって時価も変わり得る。

このSOの発行のタイミングについてなんですけれども、資金調達を予定しているスタートアップから、ファイナンスが決まる前にSOを発行したいという相談に来られるケースが従前に多かったんですね。

どういうことかというと、ファイナンスはスタートアップにおいては、ほとんどが株式発行による資金調達になります。この場合には、発行されるスタートアップの株式の価値というのは、株式を引き受ける投資家によって評価をされて、それによって時価が決まるという形になるので、投資家の評価で時価が上がるんですね。

設立時の時価総額が数百万円程度だったスタートアップが、プロダクトをリリースすることによって投資家からの評価が高まって、数億円規模のバリュエーションがつくことも珍しいことではないと思うんですね。

この高いバリュエーションがつくこと自体は、スタートアップの企業価値が高く評価されることになるので、それ自体は喜ばしいことかもしれないんですけれども、問題となるのは、SOとの関係では、権利行使価格は付与契約締結時の時価以上でなければならないというところなので、時価が上がっていないのかというところが問題になります。

基本的に権利行使価格というのは、先ほどお伝えした通り、後の株式を売却するときの差額が利益になるので、権利行使価格が低いほうが利益が大きくなりますよね。つまり、低く抑えたいんですよね。

それにあわせて、スタートアップが優先株式を発行している場合には、純資産価額から優先株式を優先的に分配される、純資産価額を控除して計算してよいとされていて、この方式に従って計算すると、税制適格ストックオプションとの関係では、VCからの優先株式での資金調達額が時価に大きな影響を受けないことになったんですね。

優先株式の優先分配を控除可能!純資産200万円でも時価250円に

平井:
まず前提として、どういった会社におけるケースかといいますと、普通株式が1,000株発行されていて、1株あたりの発行額は1,000円です。優先株式も1,000株発行されていて、こちらは1株あたりの発行価格は1,500円という形になっていて、全体に2,000株発行されている会社だと思ってください。

平井:
そういった会社がSOを発行する時に行使価格を決めなければいけないので、時価をどうするかというところなんですけれども、基本は右側に出ている純資産の価格をベースに決めることになるので、例えば純資産の価格が200万円だったとします。

200万円を単純に発行の株式数で割るかというと、そうしなくてよいということになっていて、優先株式が発行されている場合には、優先株式というのは基本的に優先分配を受けられる権利がついています。

まず優先分配を考慮して良いということになっていて、優先株式の保有者であるVCなどに、例えば1倍で分配するとすると、150万円分優先分配されて、残りの50万円を、参加型の場合には発行済み株式数に応じて均等分配されるという形になるので、50万円を2,000株で割った価格、つまり250円なんですけれども、この250円が時価ということで扱って良いということになりました。

ポイントは、純資産価額から優先株式に分配される純資産価額を控除することができるということです。そうすると低く抑えられるということですね。

近藤:
それは恩恵として非常に大きいですよね?

平井:
そうですね。

近藤:
多くのスタートアップが、アーリー期ぐらいから種類株式や優先株式を使って調達をされていると思うので、そこが加味されるのは非常に大きいことかなと思いました。

赤字スタートアップなら権利行使価格1円も可能!ただし注意点も

平井:
優先株式で資金調達しているスタートアップも多いですけれども、スタートアップは赤字のことも多いじゃないですか。そうすると、時価というのが赤字で事実上1円になります。

近藤:
純資産が200万円であることも稀といいますか、多くのスタートアップ、特にアーリー期だとなおさら、なかなか見ないから1円になる。

平井:
そうですね。0円ということになると思うんですけれども、備忘価格で1円ということで、権利行使価格を1円にしてSOを発行する。

なので、国税庁の考え方によると、ファイナンスの前に急いでSOを発行しなければならないということはなくなったということになります。

とはいえ、一応注意点をお伝えしておきますと、あくまで税制適格ストックオプションとの関係で用いられる時価に対する優先株式によるファイナンスの影響が低いということなので、例えば黒字が続いている会社で、純資産価額が大きくなっている会社ですとか、普通株式でのみ調達している会社においては、時価に影響がありますので注意が必要です。

近藤:
この変更は結構大きいですね。

平井:
そうですね。非常に大きいところだと思います。

近藤:
ありがとうございます。

その他の形式要件は比較的クリアしやすい

近藤:
その他の要件もいくつか残っていましたよね?

平井:
そうですね。権利行使に伴う新株の発行または株式の移転が会社法上の決議事項に反しないことというのがあるんですけれども、これは形式的な話でして、そのまま記載すればOKなので、これはあまり考えなくて良いです。

もう1つは、新株予約権の譲渡ができないことということで、基本的にSOは他の人に譲渡することはできない形になっていて、これもそんなに重たい要件じゃないかなと思っています。

M&A時の行使も可能に!上場前行使の要件が緩和

平井:
最後に改正があったところがあるので、お話しさせていただきます。

新株予約権の行使により取得する株式については、会社と金融商品取引業者等との間であらかじめ締結される取り決めに従って、取得後直ちに振替口座簿への記載・記録・保管委託または管理等信託がされることというのがあって、ちょっとわかりにくいと思うんですけれども。

今の要件はもともとあった要件ではあるんですが、上場後においては、振替口座簿への記載は通常行われるものですので、あまり考えなくて良いので、上場後にSOを行使するのであれば基本問題ないです。

ただ、上場前においてもSOを行使したい、例えば合併と買収(M&A)の時に行使するとか、そういった場合にこの要件が問題となってきまして。

発行会社と証券会社や金融機関との間で、管理等信託契約を締結して、個人の方が株式を取得した後に証券会社とかで保管してもらったりとか、管理等信託がされることというのがなかなか難しい。

上場前にそういったことを取り扱ってくれる証券会社さんがなかなかいらっしゃらない。かつコストが高いので、上場後にSOを行使するということは、税制適格ストックオプションとの関係で要件ではないんですけど、事実上この要件があるがために、上場前の行使がなかなか難しいということがあったんですね。

あったんですけれども、ここが2024年4月の税制改正によって、この要件は維持されつつも、これだけじゃなくて、会社において、要はスタートアップ側において管理するという形でも良いと認められたんですよ。

近藤:
それはすごくスタートアップライクになりましたね。

平井:
そうなんです。これによって、M&Aが起きた時にもSOを行使することが事実上できるようになったので、設計の幅が広がったという形になっています。

近藤:
それぞれ要件はいくつかありますし、ちゃんと理解をしておくべき要件もありましたけれども、直近の2024年の改正でよりスタートアップライクに変更されているところは非常に実感しました。

平井:
そうなんです。非常に変わってきました。

税務署への届け出は翌年1月末まで!年末発行は要注意

平井:
最後に1つだけ要件がありまして、これは昔からなんですけれども、税務上のメリットを受けられるSOということなので、ちゃんと税務署にも届け出をしなければいけないことになっています。

この届け出のスケジュールがタイトになる可能性がありまして、SOを発行した年の翌年の1月末までに税務署に届け出なければいけないので、例えば年末とかに発行したりしても1月末なんです。

1月は、皆さん年末年始の休暇があったりとか、年始は忙しいじゃないですか。バタバタしているとあっという間に1月末が来るので、これは注意が必要です。

近藤:
わかりました。

ストックオプション発行の実務フロー

近藤:
ちなみに、今までSOの仕組みであったりですとか、要件についてお話しいただきましたけれども、実際に発行していく時には、どういった手順で進めるべきなんですか?

平井:
SOを発行する時は、まず内容の設計ということで、どんなSOを発行するのかを決めるわけですよね。

平井:
その内容はどういうことかというと、例えばSOの目的である株式の種類とか数ですね。それからSOを行使する際の払込金、要は行使価格、先ほどからお話しさせていただいているものですね。

それから行使期間ですとか、あとは行使条件、どういった条件が満たされればSOを行使できるのかとか、取得事由、スタートアップがSOを権利者から取得して消滅させることができる事由を定めることができて、例えばスタートアップを辞めたら取得できるという設定もあり得るので、そういった設計をしなければいけない。

この設計がインセンティブとか、SOをどういった目的で付与するかという目的との関係で非常に重要なので、ここについてはまた別の動画で詳しくお話しさせていただきたいと思います。

近藤:
ぜひ発展編のほうも後々撮って参りますので、待っていただけると嬉しいなと思います。

株主総会決議から登記まで、専門家の活用も検討を

平井:
そういった内容の設計をした後に、SOを発行するにあたっては、SOの内容を株主総会で決議する必要があります。

それから、SOの付与契約書・割当契約書というものを発行会社のスタートアップとSOを付与される対象者の方との間で契約を締結するので、その契約書も準備する必要があります。そういう一連の手続きが必要なんですね。

決議したらそれで終わりかというと、そうではなくて、SOというのは登記をしなければいけない。

株主総会で決議したSOの内容を、法務局にこういったSOを発行しましたという届け出をしなければいけなくて、登記というのはSOの内容、いろんな行使条件を書いたりですとか、取得事由もあったりして複雑になるので、なかなか会社さんだけで対応するのは難しいかなと思いますので、この辺は司法書士や弁護士のほうに対応を依頼されるのが良いのかなと思っています。

登記の時には登録免許税もかかって、SOを発行する場合には、1回あたり9万円かかります。この1回というのは、SOを付与する対象者の方が何人でも、同じタイミングで発行するのであれば9万円です。

近藤:
ありがとうございます。今回の動画で改めてSOについての大枠のところ、基礎のところを非常に理解できました。

起業家へのメッセージ:正しい理解が適切な設計に繋がる

近藤:
改めて、平井先生から起業家の皆さんに一言いただければと思うんですが、お願いしてもよろしいですか?

平井:
SOというのは、スタートアップにとって非常に重要なものだと思いますので、だからこそいろんな情報が溢れているわけですけれども、きちんと情報を整理して、SOというがそもそもどういったものなのかということをまずはきちんと理解して、内容も設計していくということが非常に重要です。

今回は基礎の部分をお伝えさせていただきましたので、その辺を改めて復習というか、基礎を理解していただく手助けになれば良いかなと思っています。

近藤:
ありがとうございます。ぜひ概要欄にAZXさん、平井先生のお問い合わせのURLを置いておりますので、不安になった起業家さんでしたり、今後設計を考えていかれるような方はご相談いただけると嬉しいなと思っております。

それでは次回の動画で、さようなら。