「自己資金が少ない状態でも融資を受けられるのだろうか」

「出資と融資のどちらを優先すべきか判断できない」

「自社に適した融資制度が分からない」

創業期の資金調達では、こうした悩みを抱える経営者も少なくありません。

資金調達の方法は、その後の経営方針や成長スピードにも影響するため、慎重に検討したいと考えるのは自然なことです。

実際、近年はスタートアップ向けの融資制度が拡充されています。

例えば、日本政策金融公庫の創業融資では自己資金要件が緩和されており、制度によっては経営者保証なしで利用できるケースもあります。

この記事では、公庫融資や制度融資、資本性ローン、ベンチャーデットといった主要制度の特徴を整理しながら、事業フェーズに応じた選び方や、申込前に準備しておきたいポイント、よくある失敗例まで解説します。

「自社に合う資金調達方法がわからない」「そもそも誰に相談すればいいのかわからない」とお悩みではありませんか。 Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」では、御社のステージに合った調達プランをご提案しています。

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目次

スタートアップの融資とは?他の資金調達方法との違い

スタートアップの融資とは?他の資金調達方法との違い

スタートアップの資金調達は、融資・出資・補助金の3つに大別され、それぞれ返済義務や株式への影響が異なります。自社のステージや事業特性に合った手段を選ぶために、基本的な違いを理解しておきましょう。

融資と他の資金調達方法の違いは、以下の2つの面から整理できます。

  • 返済義務がある「融資」と返済不要の「出資・補助金」
  • スタートアップが融資を選ぶべきケースの例

自身の状況に当てはめながら、確認してみてください。

返済義務がある「融資」と返済不要の「出資・補助金」

3つの手段は「お金の返し方」と「経営権への影響」で大きく性質が異なります

融資は金融機関から資金を借り入れる方法で、元本と利息の返済義務があります。出資はVCやエンジェル投資家が株式を取得する形で資金を提供するため返済は不要です。ただし持株比率が下がり、経営判断への影響力が薄まる可能性があります。

補助金は国や自治体から事業費の一部が支給される仕組みです。原則として返済不要で、株式譲渡の必要もありません。

比較軸融資出資補助金
返済義務あり(元本+利息)なし原則なし
株式希薄化なしありなし
審査の主な観点返済能力・事業計画成長性・市場規模事業性・公益性
調達スピード数週間〜2か月交渉・DDで長期化公募〜交付決定まで数か月
資金の性質負債(デット)資本(エクイティ)給付金

審査観点の違いは手段選びの判断材料として見逃せません。融資では返済能力と計画の実現性、出資では将来の成長ポテンシャル、補助金では事業の社会的意義や計画の具体性が問われます。

融資と補助金を組み合わせた資金調達の戦略については以下の動画でも解説しています。

スタートアップが融資を選ぶべきケースの例

融資が自社に合う手段かどうかは、事業ステージと資金の使い道から判断できます。代表的なケースは以下のとおりです。

  • 株式の希薄化を避けたい創業初期:経営の自由度を保ちたいシード期には融資が有力
  • 設備投資など返済原資が見通せる用途:内装工事や機器購入など、投資後の売上から返済計画を組みやすいケース
  • 売上が立つ前の運転資金を確保したい場面:プロダクト開発中でも、政府系の創業融資なら申し込み可能
  • 将来のエクイティラウンドまでのつなぎ資金:バリュエーションが固まるまでの期間を融資でつなぐ設計

複数当てはまる場合や判断に迷う場合は、資金調達の全体設計を第三者と一緒に整理してみるとよいでしょう。自分だけで考え続けると視野が狭まり、見落としに気づきにくくなります

関連記事 エクイティファイナンス・デットファイナンスの違いと選び方

【一覧】スタートアップが利用できる主な融資の種類5つ

【一覧】スタートアップが利用できる主な融資の種類5つ

スタートアップが利用できる融資制度は、政府系金融機関や自治体、信用保証協会など提供主体によって条件が大きく異なります。自己資金の状況や事業フェーズに合った制度を選ぶことで、審査通過率や調達額が変わります。

創業期から成長期まで活用できる主な融資制度は、以下の5つです。

  • 新規開業・スタートアップ支援資金|政府系金融機関が提供する創業者向けの基本融資
  • 自治体の制度融資(保証協会による保証付き)|都道府県や市区町村が窓口となる低金利融資
  • スタートアップ創出の促進保証制度|経営者保証なしで利用できる信用保証制度
  • 挑戦支援による資本強化特別貸付|資本性ローンとして財務基盤を強化できる融資
  • ベンチャーデット|成長フェーズ向けの民間金融機関による融資手法

それぞれの限度額や金利、対象条件を確認してみてください。

1. 新規開業・スタートアップ支援資金

政府系金融機関の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、2024年に旧の制度が廃止・統合されて誕生し、2025年3月に現在の名称へ変更されました。従来の自己資金要件は撤廃され、原則として担保・保証人も不要です。中小企業事業に関するFAQでも、民間金融機関からは安定的に借り入れがしにくい最長20年の長期資金を調達できる点がメリットです※1。

項目内容
対象新たに事業を始める方/開業後おおむね7年以内
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金20年以内/運転資金10年以内(据置最大5年)
担保・保証人原則不要

金利は適用条件や融資期間によって変動するため、申込前に公式サイトで最新の利率を確認しておきましょう。創業期のスタートアップにとって、無担保・無保証人で数千万円規模の資金調達ができる制度は限られています。融資の第一候補として、まず条件を照らし合わせてみてください。

政府系金融機関の創業融資制度については以下の動画でも解説しています。

2. 自治体の制度融資(保証協会による保証付き)

制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者連携で成り立つ仕組みです。信用保証協会が債務の保証人となり、万一返済できない場合は金融機関へ立替払いをします。

この保証があるからこそ、創業間もない企業でも民間金融機関から融資を受けやすくなります。自治体が利子補給や保証料を補助することで、通常の融資より低い金利負担で調達できるケースもあります

公庫融資が全国一律の条件であるのに対し、制度融資は本社所在地によって利用できる制度・条件が異なります。例えば東京都では都と保証協会、指定金融機関の三者協調による創業融資があり、大阪府にも創業時の資金需要に対応する制度が用意されています。公庫融資と制度融資は併用も可能なので、本社所在地の自治体窓口で創業者向け制度の有無を確認しましょう。

東京都の制度融資の具体的な活用方法については以下の動画でも紹介しています。

3. スタートアップ創出の促進保証制度

2023年3月に始まった創出促進の保証制度は、経営者保証なしで最大3,500万円の融資を受けられる仕組みです。本制度は創業を予定している人または創業5年未満の法人が対象で、個人財産を担保に入れるリスクを避けたい起業家にとって有力な手段です。保証期間は10年以内、据置期間は原則1年以内(条件により最大3年)です※2。

経営者保証が不要な代わりに、以下の条件があります。

  • 税務申告1期未終了の場合、創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要
  • 会社設立3年目・5年目に活性化協議会によるガバナンス体制の確認
  • 保証料率は通常の創業関連保証より0.2%上乗せ

すでにVCから出資を受けているスタートアップにとっても、追加の運転資金や設備資金を経営者保証なしで調達できる点は実務的なメリットがあります。

経営者保証なしで融資を受けるための条件や注意点については以下の動画でも解説しています。

4. 挑戦支援による資本強化特別貸付(資本性ローン)

通称「資本性ローン」と呼ばれるこの制度は、融資でありながら金融検査上は自己資本とみなされる特殊な資金調達手段です。国民生活事業での融資限度額は7,200万円、返済期間は5年1ヵ月以上20年以内で、元本は期限一括償還となります。金利は業績連動型で、赤字期には年0.50%まで下がる設計です※3。毎月の返済負担が利息のみに抑えられるため、成長投資にキャッシュを集中させやすいでしょう

VCから出資を受けているスタートアップにとっての魅力は、株式の希薄化を起こさずに資本を厚くできる点です。支援事例には、人工ダイヤモンド単結晶を開発するイーディーピーや、マイクロ波を活用した化学品製造に取り組むマイクロ波化学といった大学発スタートアップがあります※4。

これらの企業は、資本性ローンと新株予約権の付いた融資を同時に活用して無担保で資金調達を実現しました。自己資本が増えることで財務指標が改善し、民間金融機関からの追加融資も受けやすくなります。一方、審査ハードルは高く、事業計画書の提出に加え四半期ごとの経営状況報告が求められます。

資本性ローンで高額融資を実現するための戦略については以下の動画でも解説しています。

5. ベンチャーデット

ベンチャーデットは、新株予約権や転換権などエクイティ要素を組み合わせた融資商品の総称です。無担保・低金利の融資に新株予約権を付すことで、貸し手側の信用リスクを補完する構造が一般的でしょう。経営者にとっての魅力は、株式の希薄化を抑えながらランウェイを延長できる点にあります。

従来はシリーズA以降が主な対象でしたが、近年はメガバンクの商品に加え、地銀・信用金庫のワラント付融資やデットファンドなど提供主体が広がっています。経済産業省「スタートアップ・ファイナンス研究会」でも新株予約権の付いた融資を含む資金調達類型が整理されており、国の政策としても注目度の高い領域です。

ベンチャーデットの仕組みや特徴についてはこちらの動画でも解説しています。

ステージ別|スタートアップに最適な融資の選び方

ステージ別|スタートアップに最適な融資の選び方

スタートアップの融資は、事業ステージによって使える制度や調達相場が大きく異なります。組み合わせを見誤ると、返済負担で成長投資に回せるキャッシュが減ったり、想定より多くの株式を手放すことになったりするため、自社の成長段階に合った手段を選ぶことが大切です。

事業フェーズ別の融資の選び方は、以下のとおりです。

  • 創業前〜プレシード期|公庫の新規開業・スタートアップ支援資金が中心
  • シード期|公庫融資+エンジェル投資・コンバーティブル投資の併用
  • プレシリーズA以降|資本性ローン・ベンチャーデットで希薄化を抑止

自身の事業フェーズに該当する項目から確認してみてください。

創業前〜プレシード期|公庫の新規開業・スタートアップ支援資金が中心

売上実績がまだない段階では、民間銀行からの融資はほぼ期待できません。実績がないからこそ資金が必要という矛盾を解消できるのが、政府系金融機関の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。

融資限度額7,200万円・据置期間最長5年と、創業期の資金繰りへ配慮された設計になっています。本制度は新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした公的融資です。

制度上、公庫の創業融資に自己資金要件は設けられていません。ただし要件と審査の実態は別物で、実務では自己資金の3倍程度が融資額の目安とされており、手元資金ゼロで満額が通るケースはまれです※1

審査で最も重視されるのは創業計画書の精度です。事業内容・資金計画・売上見込み・返済原資の整合性が問われ、計画の説得力がそのまま融資額に直結します。経営者保証に抵抗がある場合は、創出促進の保証制度の活用も併せて検討しましょう。

シード期|公庫融資+エンジェル投資・コンバーティブル投資の併用

シード期に必要な資金は数千万円規模が一般的です。しかし公庫融資だけで賄うのは現実的ではありません。融資で運転資金を確保しつつ、プロダクト開発や初期採用といった成長投資はエンジェル投資家やシード特化VCからのエクイティ調達で補うのが実務上の定石です

エンジェル投資家は数百万〜数千万円を迅速に出資できる機動力が強みで、シード特化VCであれば1,000万〜1億円規模の出資も可能です。

ここで課題になるのが、シード期はバリュエーションが定まりにくい点です。この問題を解消する手段として広く使われているのが、J-KISS(日本版コンバーティブルエクイティの標準契約書)などのコンバーティブル投資です。新株予約権の形式で資金を受け入れ、次回の資金調達ラウンド時に株式へ転換される設計のため、バリュエーション確定を先送りできます。

シード期の資金調達に関する起業家のよくある疑問についてはこちらの動画でも回答しています。

関連記事 シードラウンドとは?起業の第一歩となる資金調達の全貌を徹底解説

プレシリーズA以降|資本性ローン・ベンチャーデットで希薄化を抑止

PMF(製品が市場に受け入れられた状態)の手応えをつかんだプレシリーズA以降は、バリュエーションを意識した資金調達が必要です。安易なエクイティ発行は既存株主の持株比率を下げ、次回ラウンドの交渉力にも影響するため、ここで方法として入るのが資本性ローンとベンチャーデットです。

資本性ローンは期限一括返済で月々の元金負担がなく、借入金を自己資本とみなせる点が最大の特徴です。VC出資実績がある企業は事業の将来性を第三者が評価済みとみなされ、公庫の審査でもプラスに働く可能性があります

ベンチャーデットは融資に新株予約権などを組み合わせた仕組みで、次回ラウンドまでのランウェイを6〜12か月延ばし、KPIを積み上げてからエクイティ調達に臨む設計が、結果としてより高いバリュエーションでの調達につながるでしょう。

ステージごとの最適な組み合わせは事業内容や既存の資本構成によって異なります。整理に迷う場合は、融資と出資の両面を俯瞰できる専門家への相談も検討してみましょう。

資金調達の際、調達手法の選定や条件の検討など、様々な場面で専門的な知識が求められます。十分な知識がないまま進めると、自社に最適な調達条件や進め方を見極めるのが難しいこともあるでしょう。

Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」は、年間1,000社以上の面談実績を持つ、あらゆる調達手法をサポートするサービスです。調達手法の選定などご相談いただけますので、ぜひご活用ください。

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大手銀行によるベンチャーデット支援の実例についてはこちらの動画で詳しく紹介しています。

関連記事 PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?スタートアップ成功の鍵を定義から達成方法まで徹底解説

スタートアップが融資を受けるために必要な準備・手続き

スタートアップが融資を受けるために必要な準備・手続き

スタートアップが融資を受けるには、申し込み前の準備が審査通過を左右します。金融機関は「返済能力」と「事業の実現性」を重視するため、資金計画や根拠資料を事前に整えておくと安心です。

融資申し込みに必要な準備は、以下の4つの段階で進めます。

  • 必要資金額と使途を明確にする
  • 自己資金を準備し、根拠資料を揃える
  • 創業計画書を作成する
  • 金融機関へ申し込み、面談に臨む

それぞれの要点を押さえて、審査に備えましょう。

1. 必要資金額と使途を明確にする

融資の申請額に説得力を持たせるには、設備資金と運転資金を分けて積み上げることが出発点です。業種別の典型的な使途は以下のとおりです。

  • SaaS系:設備資金としてプロダクト開発費・サーバー構築費/運転資金として人件費・外注費・広告費
  • 製造業:設備資金として機械装置・工場改装費/運転資金として原材料費・仕入費
  • 小売業:設備資金として店舗取得・内装・什器/運転資金として商品在庫・家賃・人件費

運転資金は「ランウェイ逆算」が現実的です。損益分岐点や次回ラウンドまでに何か月かかるかを見積もり、月次固定費に掛け合わせて算出します。例えば月次固定費80万円で12か月のランウェイなら、運転資金は約960万円です。実務上、融資限度額は自己資金の3倍程度が1つの目安とされており、「借りられる額」ではなく「返せる額」から逆算する視点を大切にしてください

2. 自己資金を準備し、根拠資料を揃える

2024年4月の制度改正で公庫の自己資金要件は撤廃されました。しかし実務上、自己資金は依然として審査の重要な判断材料です。経営者がどれだけ計画的に資金を積み上げてきたかは、事業への本気度を測る指標として注目されます。

融資額の目安は自己資金の3倍程度です。自己資金200万円なら600万円前後が1つの目線です。

根拠資料の準備では、以下を押さえてください。

資料確認内容
預金通帳直近6か月〜1年分の入出金履歴。コツコツ貯蓄してきた事実が最も説得力を持つ
贈与資金贈与契約書を作成し、資金の出どころを明確にする
親族借入との区別借入金は自己資金に含まれないため、契約書上で明確に分ける

審査官が確認したいのは「この人は返済できるか」という一点です。資金の出所と蓄積の流れを示すことが、融資額の上限を引き上げる最大の武器になります

3. 創業計画書を作成する

公庫が公開している創業計画書テンプレートを活用すれば、審査で求められる項目を漏れなくカバーできます。記入例も公開されているため、初めての方でも取り組みやすいでしょう。

審査担当者さまざまな点に注目しますが、客観的な根拠が重要です。「月商〇〇万円を見込んでいます」だけでは不十分で、客単価×顧客数×営業日数のように分解し、積み上げ式で示すことが大切です。テスト販売の実績データや顧客との契約書面・見積書など、推測ではなく事実に基づく数字を添えましょう

収支計画は月平均の売上・経費・利益を記載し、楽観・標準・悲観の3パターンを併記すると信頼性が高まります。

創業計画書の具体的な書き方や数値設定の工夫は、別記事『スタートアップ向け創業計画書の書き方』で紹介しています。

4. 金融機関へ申し込み、面談に臨む

申込から融資実行までの目安は約1〜1.5か月です。事業開始の2〜3か月前には動き出しておきましょう。申込後1〜2週間で面談が設定され、約1時間かけて創業計画書の内容を中心に確認が進みます。

面談で審査担当者が掘り下げるのは、次の3つの論点です。

  • 資金使途の根拠と妥当性:見積書や市場データで裏付ける
  • 返済原資の説明:売上・利益の見通しを積み上げ式で示す
  • 事業の独自性・競争力:競合との違い、経営者の経験・スキルがどう活きるかを具体的に語る

いずれも創業計画書に書いた内容を、自分の言葉でスムーズに説明できることが重要です。Gazelle Capital運営のスタートアップ投資TVでは融資面談の実例を動画で紹介しており、事前に視聴しておくと質問の温度感や回答の組み立て方がイメージしやすくなるでしょう。

融資審査で失敗しないための個人信用情報の注意点についてはこちらの動画でも解説しています。

スタートアップの融資で避けたい3つの失敗と回避策

スタートアップの融資で避けたい3つの失敗と回避策

スタートアップの融資では、申込時の判断ミスが審査落ちや将来の資金調達に悪影響を及ぼすケースが少なくありません。準備が整っていても、タイミングや申請内容の誤りで機会を逃す創業者は多いです。

創業期に陥りやすい失敗パターンと回避策は、以下の3つです。

  • 出資との順序を考えずに融資を先行させる
  • 自己資金ゼロで限度額いっぱいを申し込む
  • 創業計画書を融資用と出資用で使い回す

自身の状況に当てはまるものがないか、順番に確認してみてください。

1. 出資との順序を考えずに融資を先行させる

資金が必要になったタイミングで、融資と出資の順番を深く考えずに申し込んでしまうことがあります。これは将来のVC調達を見据えるスタートアップほど影響が大きい判断ミスです。

融資を先行させると負債比率が高い状態でVCのデューデリジェンス(投資前の詳細調査)を受けることになります。借入が膨らんだバランスシートは投資判断にマイナスへ働きやすく、バリュエーションの引き下げや調達額の縮小につながるケースがあります。

シード〜アーリー期では、出資で資本を厚くしてから融資を組むのが原則です。自己資本が積み上がった状態であれば金融機関側も返済余力を評価しやすく、融資条件も有利になります。資本政策は一度組むとやり直しが利きにくい領域のため、融資の申込前に将来のエクイティ調達まで含めた全体像を描いておきましょう。

2. 自己資金ゼロで限度額いっぱいを申し込む

2024年4月の制度改正で自己資金要件は撤廃されましたが、制度上の「申込条件」と審査で「満額が通る」ことは別の話です。自己資金の有無は事業への本気度と返済能力を測る大切な指標として評価され、手元資金ゼロで限度額に近い金額を希望すれば「返済の裏付けが乏しい」と判断され、大幅な減額や否決につながりやすいでしょう。実務上、融資額の目安は自己資金の3〜4倍程度とされており、これを大きく超える申込は慎重に見られやすくなります

焦って一度に大きな金額を狙うより、段階的なアプローチを検討しましょう。例えば自己資金100万円でまず300〜400万円の融資を受けて実績を作り、半年〜1年後に追加融資や自治体の制度融資を併用する方法です。返済実績が積み上がれば信用力が高まり、次回はより大きな金額が通りやすくなります。

3. 創業計画書を融資用と出資用で使い回す

融資と出資では評価者が見ている視点がまったく異なります。融資審査で重視されるのは堅実な収支計画や返済可能性、事業の継続性です。一方、VCやエンジェル投資家は市場規模・スケーラビリティ・競争優位性といった成長ポテンシャルに注目します。

この違いを踏まえずに同じ創業計画書を使い回すと、融資先には「堅実さが足りない」、出資先には「成長の未来が見えない」と映るリスクがあります。融資用では月次の収支シミュレーションや返済原資の根拠を厚くし、出資用ではTAM/SAM(獲得可能な市場規模)の試算や顧客1人あたりの収益性の改善見通しを前面に出すなど、強調箇所の切り替えが大切です

資料の作り分けに迷う場合は、両方の評価基準を熟知したプロの伴走を受けることで、それぞれの審査に合わせた資料を効率よく仕上げられます。

スタートアップの融資・資金調達に関するよくある質問

スタートアップの融資・資金調達に関するよくある質問

申し込み準備を進めるうえで判断材料となる、特に問い合わせの多い質問に回答します。

Q. スタートアップは自己資金なしでも融資を受けられる?

制度上は自己資金ゼロでも申し込めます。2024年4月の改正で公庫の自己資金要件が撤廃されたためです。

ただし「申込条件」と「審査に通る」は別の話で、手元資金がない状態では融資額が大幅に減額されたり審査が厳しくなったりする可能性が高いでしょう。親族からの贈与・小規模補助金の先行活用・段階的な少額融資など、資金以外のアピール材料を整理したうえで臨むことが大切です。

Q. 資本金300万円のスタートアップはいくら借りられる?

融資審査で参照されるのは「資本金」ではなく「自己資金」です。自己資金300万円を用意できている場合、創業融資の現実的な目安はその2〜3倍にあたる600万〜900万円程度です。制度上の限度額は7,200万円と大きいものの、事業実績のない創業期に満額が通ることはほぼありません。事業計画の精度や経営者の業界経験で増減するため、正確な見積もりには事業計画書を持参のうえ専門家へ相談しましょう。

Q. 融資と補助金は併用できる?

制度上まったく別の仕組みのため、併用は問題ありません。押さえておきたいのは補助金の入金タイミングで、ものづくり補助金・IT導入補助金・持続化補助金などはいずれも精算払い(後払い)が原則です。

交付決定から入金までの数か月間を融資で立て替える「つなぎ融資」の活用が実務的な設計でしょう。なお、同一経費への二重計上は補助金返還の対象となるため、対象経費を正確に切り分けておくと安心です。

Q. VCから出資を受けた後でも融資は受けられる?

問題なく受けられます。注目したいのが政府系金融機関の資本性ローン(挑戦支援による資本強化貸付)です。赤字や債務超過の状態でも利用でき、業績連動型の低金利が適用されます。返済順位が劣後するため金融機関の審査上は自己資本とみなされ、追加の銀行融資も受けやすくなります。

出資だけで資金を賄うとラウンドごとに持分が希薄化していくため、融資を組み合わせて株式の放出を抑える設計が一般的な考え方です。

Q. 有形資産がないスタートアップでも担保融資を受けられる?

2024年6月に公布された「事業性融資の推進等に関する法律」により、有形資産に乏しいスタートアップでも担保融資を受けやすくなる制度整備が進んでいます※5

企業価値による担保権では無形資産(ノウハウ・顧客基盤等)を含む事業全体を担保として認識できます。そのため、不動産担保や経営者保証に頼らず事業の実態や将来性に着目した融資を受けやすくなります。

同制度を活用する場合は原則として経営者保証の利用が制限されるため、個人財産を担保に入れるリスクを避けたい起業家にとっても選択肢になります。

なお、財政融資資金についてはこれまで貸倒れや政府保証の履行が発生した実績はなく、投融資の対象事業の財務の健全性は確保されています※6。

まとめ

まとめ

ここでは、スタートアップが活用できる融資制度の種類から、ステージ別の選び方、準備手順、よくある失敗パターンまでを解説しました。自社に合った調達手法は、事業フェーズや財務状況、資本政策の方針によって変わります。最適な資金調達戦略を描くには、融資・出資・補助金を横断的に捉え、金融機関や投資家と適切に交渉を進めるための知見が必要です。

何から着手すべきか、自社に合ったプランへ落とし込みたいと考える方は、プロと一緒に整理するのも1つの方法です。

資金調達は、早い段階でプロに相談するほど選択肢が広がります。自社の状況を客観的に整理でき、タイミングを逃さず最適な手法を選びやすくなります。

資金調達の窓口では、融資・補助金・エクイティの中から御社のステージに合った手法の相談などを無料で対応。事業計画書がない段階からでもご利用いただけますので、まずはお気軽にご相談ください。

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参考文献

※1 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
※2 中小企業庁「経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度(スタートアップ創出促進保証)を開始します。」
※3 日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」
※4 日本政策金融公庫「公庫の新事業・スタートアップ支援事例」
※5 e-GOV法令検索「事業性融資の推進等に関する法律」
※6 財務省「これまでに財政融資資金の貸倒れや政府保証の履行はなかったのでしょうか」


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