シリーズB以降の資金調達を控え、「次の調達でバリュエーションが下がるのではないか」「ダウンラウンドを回避する方法はないのか」といった不安を抱えるCEO・CFOは少なくありません。
市場環境の変化や事業計画の未達により、ダウンラウンドは成長企業でも十分に起こり得ます。実際、2022年以降の金利上昇局面では、IPO企業の3割超がダウンラウンドを経験しています※1。
ここでは、ダウンラウンドの発生原因から経営への影響、希薄化の防止条項の仕組み、回避策と発生後の対処法まで解説します。

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ダウンラウンドとは「前回より低い評価額での資金調達」のこと

ダウンラウンドとは、前回の資金調達時より低い企業価値の評価額で株式を発行する資金調達のことです。
たとえばシリーズAで10億円のバリュエーションを獲得した企業が、シリーズBで8億円の評価額となった場合がダウンラウンドに該当します。
ダウンラウンドを正しく理解するために、以下の2点を押さえておきましょう。
- 投資ラウンドの流れとバリュエーションの関係
- アップラウンド・フラットラウンドとの違い
それぞれの基本を確認していきましょう。
投資ラウンドの流れとバリュエーションの関係
スタートアップの資金調達は、「ラウンド」と呼ばれる段階を踏みながら進みます。
一般的に、ラウンドが進むにつれて事業の実績や成長性が積み上がり、それに伴ってバリュエーションも上昇していく構造です。
未上場企業におけるバリュエーションは、株価と発行済株式数をもとに算出されますが、上場企業のように市場価格が存在するわけではありません。そのため、スタートアップでは投資家との交渉によって株価が決まり、結果として企業価値(バリュエーション)が形成されます。
| ラウンド | 事業フェーズ | 調達規模の目安 | バリュエーションの傾向 |
|---|---|---|---|
| プレシード | アイデア〜試作品 | 数百万〜2,000万円 | 低い(実績なし) |
| シード | 初期プロダクト〜ユーザー獲得 | 2,000万〜1億円 | 徐々に形成 |
| プレシリーズA | PMFへの手応えあり | 5,000万〜2億円 | 事業牽引力で評価 |
| シリーズA | PMF達成・成長投資フェーズ | 2〜10億円 | 本格的に上昇 |
| シリーズB | スケールアップ段階 | 数億〜30億円 | 引き続き上昇 |
バリュエーションを理解するうえで欠かせないのが「プレマネー」と「ポストマネー」の概念です。
- プレマネー・バリュエーション:今回の出資を受ける「前」の企業価値
- ポストマネー・バリュエーション:出資後の企業価値(=プレマネー+調達額)
たとえばプレマネー4億円の企業が1億円を調達した場合、ポストマネーは5億円となり、投資家の持分比率は20%(1億÷5億)になります。
また、ダウンラウンドとは、バリュエーションの上昇が途切れ、今回のプレマネーが前回のポストマネーを下回る状態を指します。
この関係を正しく理解しておくことで、持株比率や希薄化の影響を把握できるようになります。
エクイティファイナンスの種類や株式による資金調達の基本については、以下の動画でも解説しています。
アップラウンド・フラットラウンドとの違い
資金調達のラウンドは、前回のバリュエーションとの比較によって3つに分類されます。
| 種類 | 定義 | 市場へのシグナル |
|---|---|---|
| アップラウンド | 前回より高い評価額で調達 | 成長期待が継続し、信用・採用力が向上 |
| フラットラウンド | 前回と同じ評価額で調達 | 成長鈍化の懸念、投資家の慎重姿勢を示唆 |
| ダウンラウンド | 前回より低い評価額で調達 | 企業価値の毀損、経営への不信感が表面化 |
スタートアップの成長は、事業の実態だけでなく「市場からどう評価されているか」の影響も受けます。
フラットラウンドやダウンラウンドの可能性が高まると、顧客や社員、投資家の見方が変化し、信頼低下につながるケースもあります。
ただし、ダウンラウンドは必ずしも事業の失敗を意味するものではありません。
重要なのは、その影響を正しく理解し、事前の対策と発生後の対応を適切に行うことです。
ダウンラウンドが起きる主な4つの原因
ダウンラウンドは単一の要因ではなく、外部環境と内部要因が重なって発生します。原因を把握しておくことで、事前の予防や交渉戦略の精度を高めることができます。
ダウンラウンドが起きる主な原因は、以下の4つです。
- 金利上昇や景気後退など外部の市場環境が悪化した
- 事業の成長が計画どおりに進まなかった
- 前回の評価額が実態より高すぎた
- 主要メンバーの離脱や大口顧客の喪失が発生した
このうち、外部環境や過去の評価はコントロールが難しい一方で、事業の進捗や組織体制は改善できる余地があります。
1. 金利上昇や景気後退など外部の市場環境が悪化した
ダウンラウンドは、金利上昇や景気後退などマクロ環境の変化でも発生します。
2022年以降の利上げにより長期金利が上昇し、成長企業のバリュエーションは大きく圧縮される傾向にあります。
財務省財務総合政策研究所の分析によると、1990年代以降の世界的な長期金利低下の主たる要因は潜在成長率と予想インフレ率の低下です※2。日本では政府債務の累増による金利上昇圧力が認められるものの、非伝統的な金融政策によって抑え込まれてきました。
金融政策が転換すれば金利上昇圧力は一変する可能性があり、名目成長率が名目長期金利を上回る状況は恒常的な現象ではないと指摘されています。
流動性の低い未上場株は、投資家がリスク回避に動く局面で真っ先にディスカウントされます。
事業が順調でも、市場環境次第で評価額が下がることは十分あり得るでしょう。
株式以外の資金調達手段を確保しておく備えが重要です。
2. 事業の成長が計画どおりに進まなかった
投資家は次ラウンドの評価額決定時、前回提示した事業計画と実績の乖離を最も注視します。
- PMF(製品が市場に受け入れられた状態)を確認できず、リテンション率が低迷している
- MRR・ARR(月次・年次の経常収益)の成長カーブが計画を大幅に下回っている
- CAC(顧客獲得コスト)が悪化し採算ラインを割り込んでいる
これらのKPI未達は評価額の引き下げ要因です。
売上の絶対額が伸びていても、成長速度の鈍化自体が評価を押し下げます。
計画値と実績のギャップがどう影響するかを把握しましょう。
3. 前回の評価額が実態より高すぎた
投資環境が過熱している局面では、競争の激化により高い評価額でも資金調達が成立しやすくなります。
ただし、その評価額は次回調達の基準となるため、実態を伴っていない場合は後続ラウンドで大きな負担となります。
市場環境が冷え込むと、過去の評価とのギャップが顕在化し、ダウンラウンドに直結するケースも少なくありません。
高すぎる評価額は一時的には有利に見えても、将来のハードルを引き上げるリスクとなる点に注意が必要です。
4. 主要メンバーの離脱や大口顧客の喪失が発生した
キーパーソンの離脱は、投資家にとって経営体制の不安要因となり、評価の引き下げにつながる可能性があります。
特に技術系スタートアップでは、個人に依存したノウハウや知的資産が事業価値に直結するため、影響はより大きくなります。
また、大口顧客の解約も収益基盤の不安定さを示すシグナルです。特定の顧客への依存度が高い場合、売上の変動リスクが評価に反映されやすくなります。
人材や顧客への依存度が高い事業ほど、リテンション施策や分散化の取り組みが重要です。

資金調達の際、調達手法の選定や条件の検討など、様々な場面で専門的な知識が求められます。十分な知識がないまま進めると、自社に最適な調達条件や進め方を見極めるのが難しいこともあるでしょう。
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ダウンラウンドが経営に与える3つの影響

ダウンラウンドは単なるバリュエーション低下にとどまらず、資金調達後の経営体制や対外交渉力、組織の安定性にまで影響が及びます。
ダウンラウンドが経営に与える主な影響は、以下の3つです。
- 創業者の持分比率が大幅に低下する
- 次の資金調達や提携の交渉で不利になる
- 人材流出リスクが高まる
自社の状況に照らし合わせながら、それぞれの影響を確認してみてください。
1. 創業者の持分比率が大幅に低下する
ダウンラウンドで新株が発行されると、既存投資家の希薄化防止条項が発動し、創業者の持分比率は大きく低下する可能性があります。
この希薄化は、経営のコントロール権やEXIT時のリターンに直接影響します。実務では、持分が30%から20%前後まで低下するケースも珍しくありません。
さらに、過半数を下回ると取締役選任の主導権を失い、3分の1未満になると重要事項への拒否権も行使できなくなります。
こうした事態を防ぐためには、早い段階から資本政策を設計し、希薄化を前提としたシミュレーションを行っておくことが重要です。
2. 次の資金調達や提携の交渉で不利になる
VCは投資判断の際に、直近ラウンドの評価額を1つの基準とします。
ダウンラウンドが発生すると、「期待通りに成長していない」と受け取られ、次回の資金調達条件が厳しくなる傾向があります。
また、提携交渉や融資審査においても評価が下がり、フォローオン投資が成立しにくくなるリスクがあります。
顧客や取引先からの信頼にも影響が及ぶことで、資金調達だけでなく事業機会にも波及する点に注意が必要です。
3. 人材流出リスクが高まる
株価が下がると、従業員のストックオプション(SO)が「アウト・オブ・ザ・マネー」(行使価格が株価を上回り、権利行使しても利益が出ない)状態に陥ります。
権利を行使する経済的メリットが消滅し、優秀層の離職リスクが高まります。
キーパーソンが抜ければプロダクト開発が遅延し、次の資金調達を困難にする悪循環を招く恐れがあります。
結果として、優秀な人材の離職リスクが高まり、プロダクト開発や事業推進に影響を及ぼす可能性があります。
ダウンラウンド時に発動する”希薄化の防止条項”の仕組み
ダウンラウンドが発生すると、希薄化防止条項(アンチダイリューション)が発動し、既存の優先株式の転換価額が引き下げられます。
これにより、既存投資家の持分は保護される一方で、創業者や経営陣の持分は相対的に低下します。
条項の設計によって希薄化の影響度は大きく異なるため、契約締結前に仕組みを理解しておくことが重要です。
代表的な方式は、次の2つです。
- フルラチェット方式|創業者の持分への影響が大きい
- 加重平均方式|発行株数に応じて調整幅が変わる
自社の契約内容や交渉状況に照らし合わせながら、それぞれの特徴を確認してみてください。
創業者の持分への影響が大きい「フルラチェット方式」
フルラチェット方式は、新株の発行価格をそのまま既存優先株の転換価額に反映する仕組みです。
発行株数に関係なく全面的に価格が引き下げられるため、少額の増資でも既存投資家の持分が大きく増加し、創業者の持分は急激に希薄化します。
その影響は大きく、経営の安定性や次回ラウンドの調達にも悪影響を及ぼす可能性があります。実務では採用されるケースは限定的です。
発行株数に応じて調整幅が変わる「加重平均方式」
加重平均方式は、新株発行数と既存株数のバランスを踏まえて転換価額を調整する方法です。
発行規模が小さい場合は調整幅も限定されるため、創業者への希薄化の影響を一定程度抑えることができます。
主に以下の2種類があります。
| 方式 | 分母に含める株式 | 調整幅の特徴 |
|---|---|---|
| ブロードベース | 潜在株式を含む全株数 | 最も穏やか |
| ナローベース | 普通・優先株式のみ | 投資家に有利 |
一般的に、フルラチェット → ナローベース → ブロードベースの順で、創業者への影響は小さくなります。
日本の実務では、バランスの取れたブロードベース方式が採用されるケースが多く見られます。
ダウンラウンドを回避するためにできる5つの対策
ダウンラウンドは不可避ではなく、資金調達の設計や交渉次第で回避できる可能性があります。
重要なのは、株式の希薄化を抑えながら、必要な資金をどう確保するかを事前に検討しておくことです。
主な対策は、次の5つです。
- デットファイナンスで株式の希薄化を避ける
- ブリッジファイナンスで評価額の確定を先送りする
- 既存投資家からの追加出資を交渉する
- コスト削減でランウェイを確保する
- 適切なバリュエーションで初回調達する
ランウェイに余裕がない場合は、まずコスト削減で時間を確保し、そのうえで他の選択肢を検討するのが現実的です。
1. デットファイナンスで株式の希薄化を避ける
デットファイナンスは、株式を発行せずに資金を調達できるため、既存株主の持分比率を維持できる点がメリットです。
特に、PMFを達成し一定の売上やキャッシュフローが見込める段階では有効です。
一方で、一般的な融資では担保や信用力が求められるため、創業初期のスタートアップにはハードルが高いケースも少なくありません。
その場合は、日本政策金融公庫の創業融資のような無担保・無保証人の制度を起点に検討し、事業の成長に応じてベンチャーデットや民間銀行融資へと広げていくのが現実的です。
ベンチャーデットの種類や選定の考え方については以下の動画でも解説しています。
2. ブリッジファイナンスで評価額の確定を先送りする
ブリッジファイナンスは、次の資金調達ラウンドまでの”つなぎ”として活用される手法です。
調達時点ではバリュエーションを確定せず、将来のラウンドで株式に転換される仕組みが特徴です。
日本ではJ-KISS、海外ではSAFEが代表的で、返済義務のないエクイティ型の資金調達として広く利用されています。
KPIの改善途中で無理に評価額を確定させる必要がないため、事業の進捗を待ってから適正な条件で調達できる点がメリットです。
評価を急がず、時間を確保するための戦略的な選択肢として活用しましょう。
3. 既存投資家からの追加出資を交渉する
既存投資家からのフォローオン投資は、ダウンラウンド回避において有効な手段の一つです。
既に事業への理解があるため、意思決定が早く、条件面でも柔軟に対応してもらえる可能性があります。
交渉では、次のポイントを意識しましょう。
| 交渉で意識したい項目 | 具体的なアクション |
|---|---|
| 事業進捗の透明な共有 | 定期的な報告で信頼を構築 |
| 次ラウンドへの見通し提示 | 企業価値向上のシナリオを共有 |
| 投資家の利益保護との両立 | ペイトゥプレイ条項(次ラウンドに参加しない投資家の権利を制限する仕組み)などの検討 |
ファンドの投資余力によっては追加出資が難しい場合もありますが、新たな投資家の紹介につながるケースもあります。
また、既存株主からのセカンダリー取引を活用し、資本構成を調整する方法も検討に値します。
投資家との効果的なコミュニケーション方法については、こちらの動画でも解説しています。
4. コスト削減でランウェイを確保する
コスト削減は、低い評価額での調達を避けるために時間を生み出す施策です。
スタートアップでは、最低でも12か月程度のランウェイを確保することが望ましいとされています。
主な取り組みは次のとおりです。
| 施策 | 具体例 |
|---|---|
| 固定費の圧縮 | オフィス縮小や外注費の見直し |
| 優先度の低い施策の停止 | マーケティングや開発の一時凍結 |
| 業務効率化 | AI活用などによる少人数体制の構築 |
バーンレートを抑えて数か月の余裕を生み出せば、事業KPIを改善し評価額を守る時間を確保できます。
判断に迷う際は専門家への相談も検討してください。
成長段階に応じた融資の活用方法については、こちらの動画でも紹介しています。
5. 適切なバリュエーションで初回調達する
初回のバリュエーション設定は、その後の資金調達に影響します。
シード期に実力以上の評価額で調達すると、次ラウンドで成長が追いつかず、ダウンラウンドに陥るリスクが高まります。
スタートアップの資金調達は複数ラウンドを前提に進むため、各ラウンドで評価を積み上げていける設計が重要です。
そのためには、マイルストーン(中間目標)を基準に、次回ラウンドで評価を引き上げられるタイミングで調達を行う必要があります。
短期的な評価額の高さではなく、持続的に成長できる水準でバリュエーションを設定しましょう。
創業者持分の保護も含め、早い段階で専門家とすり合わせておくことが重要です。

資金調達は、早い段階でプロに相談するほど選択肢が広がります。自社の状況を客観的に整理でき、タイミングを逃さず最適な手法を選びやすくなります。
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ダウンラウンドが起きてしまった場合の対処法

ダウンラウンドが発生した場合は、ステークホルダーとの関係維持と事業継続の両面から迅速に対処しましょう。初動の遅れが投資家や従業員の信頼低下を招き、次回調達やリテンションに悪影響を及ぼします。
ダウンラウンド発生後に優先すべき対処法は、以下の4つです。
- 投資家への説明で信頼を維持する
- 従業員向けSOの行使価格を見直す
- 事業計画とバーンレートを再設定する
- 資本政策の専門家へ早期に相談する
自社の状況に合わせて、具体的なアクションに着手してみてください。
投資家への説明で信頼を維持する
ダウンラウンド後は、情報開示のスピードと透明性が信頼維持に関わります。
- バリュエーション低下の背景をデータとともに伝える
- 希薄化の防止条項の適用方法を個別に事前協議する
- 次ラウンドに向けた具体的な成長シナリオを提示する
条項の解釈にズレがあるとトラブルに発展する可能性があるため、専門家を交えたシミュレーションが重要です。具体的な数値と計画を示すことで、次の資金調達に向けた信頼関係を維持しやすくなります。
従業員向けSOの行使価格を見直す
株価の下落によりストックオプション(SO)が実質的に価値を持たなくなると、従業員のインセンティブが低下し、人材流出のリスクが高まります。
その対策として、行使価格を現在の水準に合わせて見直す「リプライシング」が効果的です。
実行には、対象者の同意や株主総会での承認が必要となり、税制適格要件や会計処理の要件もあります。
制度設計や税務対応が複雑なため、実施前に専門家へ相談しながら進めることが重要です。
事業計画とバーンレートを再設定する
ダウンラウンド後は、まず手元資金からランウェイを正確に把握することが重要です。
そのうえで、不採算プロジェクトの停止やリソース配分の見直しを行い、固定費を圧縮します。あわせて、自社の成長フェーズを再確認し、優先すべき課題に沿った事業計画へ再設計しましょう。
組織のスリム化は意思決定のスピードを高め、結果として成長の立て直しにつながる可能性があります。
メリハリのある事業戦略は、次の資金調達においても評価されやすくなります。判断に迷う場合は、CFO的な視点を持つ専門家の支援を活用しましょう。
資本政策の専門家へ早期に相談する
ダウンラウンド対応では、資本政策・契約・税務など複数の専門領域が関係します。
判断を誤ると影響が長期化するため、投資家への説明や交渉に入る前に専門家へ相談しておくことが重要です。
事前に論点や選択肢を整理しておくことで、交渉の方向性を明確にしやすくなります。
ダウンラウンドに関するよくある質問
ダウンラウンドに関して実務の現場で寄せられやすい疑問をFAQ形式で整理します。
ダウンラウンドIPOや希薄化の防止条項の適用範囲について確認しましょう。
Q.「ダウンラウンドIPO」とは?
ダウンラウンドIPOとは、上場時の公募価格が直前の調達評価額を下回る形でIPOすることです。
2022年以降、金利上昇による市場全体の評価見直しを背景に増加しています。
投資リターンの毀損や、従業員のストックオプションがアンダーウォーター状態(行使価格が株価を上回り、権利行使の意味がなくなる状態)になるリスクがあります。
例えばFacebookやSquareも上場直後は公募価格を割り込みましたが、その後に急成長を遂げています。
状況を正しく理解し、冷静に対応策を検討しましょう。
Q. 希薄化の防止条項はすべての投資契約に含まれる?
希薄化防止条項(アンチダイリューション)は、すべての投資契約に含まれるわけではありません。
この条項は、将来の資金調達で株価が下がった場合に、既存投資家の持分価値を守るための仕組みです。
優先株式での調達では、投資家保護の観点から設定されることが一般的です。一方で、エンジェル投資や初期シード段階の普通株式による調達では、設定されないケースも多く見られます。
希薄化防止条項には主に2つの方式があります。
- フルラチェット方式:新しい株価に合わせて全面的に調整されるため、創業者の持分が大きく低下しやすい
- 加重平均方式:発行株数などを加味して調整されるため、希薄化の影響が比較的抑えられる
条項の内容によって影響が異なるため、過去の投資契約書を確認し、不明点があれば専門家へ相談しましょう。
Q. ダウンラウンドを経験しても成長できた企業の事例はある?
ダウンラウンドを経験後に成長を遂げた代表例がSquare(現Block)です。
バリュエーション調整後、決済サービスにリソースを集中してプロダクトを磨き直し、2015年にIPOを達成しています※3。
| 成功要因 | 具体的なアクション |
|---|---|
| 事業焦点の再定義 | 収益性の低い領域を整理 |
| チームの結束強化 | ビジョン共有で離脱を防止 |
| 投資家との信頼構築 | 現実的な事業計画の提示 |
危機を受け止め事業と組織を立て直すことで、再成長は十分に可能です。
まとめ
ダウンラウンドの原因やリスク、回避策と対処法を解説しました。
資本政策の判断に迷いを感じたら、専門家へ早めに相談することが最善です。
「何から着手すべきか、自社に合ったプランへ落とし込みたい」そんな方は、プロと一緒に整理するのも方法のひとつです。

「自社に合う資金調達方法がわからない」「そもそも誰に相談すればいいのかわからない」とお悩みではありませんか。Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」では、御社のステージに合った調達プランをご提案しています。
融資先・投資家の紹介から補助金・助成金の申請サポートまで幅広く対応しており、事業計画書がない段階でも無料でご相談いただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考文献
※1 株式会社ユーザベース(Japan Startup Finance 2022)
※2 財務省財務総合政策研究所(政府債務の累増にもかかわらずなぜ金利が上がらないのか)
※3 Square(【米国発】新規株式公開の発行手続き完了(クロージング)と、引受会社による株式追加購入オプションの行使完了のお知らせ)
