【100億円ファンド】投資家も起業家も救うセカンダリーファンド最前線の戦略とは【ケップルグループ 堂前 泰志 vol.01】
◯堂前 泰志 株式会社ケップルグループ General Partner
公式HP▶︎https://kepple-group.com/investments/
2002年、日本アジア投資でベンチャーキャピタリストとしてキャリアをスタート。
ITベンチャーでの経営企画・新規事業を経て、2013年より三菱UFJキャピタルでFintechを中心としたスタートアップへの投資を担当。
スタートアップエコシステムのさらなる発展への貢献を目指し、2021年にケップルへ参画。
セカンダリー取引とは──既存株を買うファンドの仕組み
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回は、Kepple Liquidity Fundのジェネラルパートナーの堂前さんに来ていただいておりますので、堂前さん、今回からよろしくお願いいたします。
堂前:
よろしくお願いします。
石橋:
この1本さえ見ればケップルさんが運営しているセカンダリーファンドというものが全て分かるような1本に仕上げていきたいと思っておりますので、色々と突っ込んで、玄人向けのコンテンツになるかもしれませんが、お伺いをしていければと思いますので、よろしくお願いします。
簡単に堂前さんの自己紹介をサクッといただければと思いますが、お願いしてよろしいですか。
堂前:
Kepple Liquidity Fundのジェネラルパートナーである堂前と申します。私自身、株式会社ケップルに入社して5年目なんですけれども、このファンドを立ち上げてかれこれ5年経っています。ただ、ファンドとしては3年過ぎたところで、ようやく目処がついたかなというところです。
今は1号ファンドのファーストクローズを終えて、2号ファンドのレイズも引き続きやっているという状況です。
石橋:
ありがとうございます。足元の2号ファンドはどのぐらいのサイズでやっていかれるんでしたっけ?
堂前:
ファーストクローズで約60億円で出来ていて、目標は150億円以上の規模感で、1号ファンドが100億円だったので、それ以上の規模を目指してレイズしているところです。
石橋:
今はセカンダリーファンドのレイズも結構難しいんですか?
堂前:
以前よりは「セカンダリーとは何ですか?」みたいな話ではなくなったとはいえ、引き続き環境的にはそんなに楽ではないなという感じですね。
石橋:
セカンダリーとはそもそも何なのかを簡単にご説明いただいても大丈夫ですか?
堂前:
セカンダリーファンドというのは、特にスタートアップ・ベンチャーファンドの世界でいうと、既存の株を買うファンドです。なので、起業をしてベンチャーキャピタル(VC)に割り当てている発行済みの株を買ってくるファンドです。
石橋:
例えば、弊社のGazelle CapitalみたいなVCがスタートアップの方に出資をしていて、僕らが持っている株式を堂前さんたちに投資していただいて、買っていただくみたいな感じなんですかね。
起業家が株を売るタイミング──ライフステージの変化と経営からの引退
石橋:
極端にいうと、起業家さんはあまり関係ないんですか?
堂前:
我々は1号ファンドで23社投資をしていて、23社のうちいくつかを起業家から直接株を買っているケースというのもあります。
石橋:
どういう時に起業家さんに売ったりしていらっしゃるんですか?
堂前:
起業家さんのライフステージが変わったりとか。
石橋:
お金が必要になってくる時ですね。
堂前:
お金が必要になる場面は増えてくるなと。5〜10年経営をしてきて、簡単にお金を借りられるかというと、なかなかスタートアップの起業家は難しいので、一部の株を現金にすることで、ストレスな状況から早く抜け出せるというメリットがあるんじゃないかなというふうには思いますね。
レアケースですけれども、すでに経営からは一線を引かれた創業者・創業メンバー、そういった方々が複数の株が散らばっているケースとかもあるので、それを集約しようというような目的で我々が出てくる場面というのもあります。
石橋:
VC・CVCの方もたくさん見ていただいていると思うので、イメージでいうと、セカンダリーファンドさんはそっちのお付き合いが多そうなイメージはあったんですけど、起業家の方もご相談はウェルカムなんですね。
堂前:
だいぶウェルカムです。
石橋:
理解です。僕の投資先でもまさに堂前さんがおっしゃっていたように、役員報酬は投資を受けながらやっているので、なかなか額を上げられないし、一部はセカンダリーで数千万円規模のご相談をする方もいらっしゃるので、そういうところも当たり前にというか、その方が健康的だよねという文化はスタートアップ業界に根付いても良いのかもしれないですね。
堂前:
そうですね。頑張っている人が報われてほしいなと思うので、お金のストレスが事業にネガティブに影響してしまうこともあるので、それは既存株主も含めて誰も望まないはずなので、そういったストレスを解消するというのは1つですね。
ファンド立ち上げの背景──CVC投資1兆円の受け皿として
石橋:
そもそも、なぜ堂前さんがKepple Liquidity Fund、セカンダリーファンドを創業することにしたというか、その経緯とか元々の狙いは何だったんですか?
堂前:
7〜8年前に、まだ当時の前職のVCにいた頃ですね。CVCがすごく活発になってきた時期があるんです。
石橋:
オープンイノベーションという名のもとにめちゃめちゃ増えましたよね。
堂前:
2016〜2017年ですかね。その頃に非常に多くのお金が入ってくるんですが、事業シナジーを狙った投資オープンイノベーションがすごく増えてきていると。
一方、オープンイノベーションのプロジェクト全てが上手くいくわけではないので、いずれかのタイミングで見直しが始まるだろうというふうに考えていました。
ベンチャーファンドの場合、一般的に10年のサイクルで投資を積み上げて回収して、10年でファンドを閉めるということになるんですけど、オープンイノベーションのサイクルはもうちょっと短そうだなと。
石橋:
確かめるのに10年はいらなそうですね。
堂前:
結果が出るのが結構早かったりとか、そもそも中期経営計画は3年計画で立てているので、3年経ったら見直そうというような、なんとなく暗黙の了解みたいなのもあったりとか。
オープンイノベーションをやろうと言った役員の人が4~5年経つといなくなるので、そうすると「これってなんだっけ?」みたいなことが起こり得て、その時に投資したものの受け皿ですね。これはニーズが出てくるんじゃないかというのが1つ目のきっかけであります。
もう少し遡って原体験的な話でいうと、実は新規株式公開(IPO)ブームはリーマン・ショック前の2006〜2007年にも起こっていて、その時も結構CVCが立ち上がったんですよ。
石橋:
そうなんですね。堂前さんのキャリアはいつからなんでしたっけ?
堂前:
僕は2002年からVCをやっています。なので、当時のCVCブームの頃も僕らはキャピタリストだったんですけど、リセッションが起こると見事に全員撤退するんですよ。
石橋:
リーマン・ショックでCVCが全撤退みたいになったんですね。
堂前:
当時はまだスタートアップ・エコシステムそのものが小さかったので、「全撤退します」と言っても、なんとかポートフォリオで受け止めきれたと。色々な人が株を売ったり買ったりすることができたんですけど、今はそうでもないんですね。
2017~2018年以降、CVCの投資額は年間2000億円ぐらいあるんですよ。
石橋:
結構な規模になってきていますね。
堂前:
その2000億円の規模が5〜6年積み上がっているんですよ。
石橋:
1兆円分ぐらいはスタートアップ企業に投資している事業会社さんのお金が流通しているということですね。
堂前:
これが全撤退となると、それはやばいねと。そうなる前にある程度回転するような、投資したものを合併・買収(M&A)でもIPOでもなく、ちゃんと回収できる、現金化できる受け皿を作っておくと、エコシステムがちゃんと流通していくというか、そういう役割を担えるんじゃないかというような思惑ですね。
石橋:
なるほどですね。そうなると150億では全然足りないというか。
堂前:
あるかもしれないですね。ただ全部は買えないし、全部買う必要はないので。
1号ファンド23社投資の実績──認知拡大で増えた相談
石橋:
1号ファンドは23社の方々に投資されているとお話を伺いましたけど、プレスリリースだけ拝見すると、最後の1号ファンドのファイナルクローズが1年ぐらい前に出ていらっしゃって。
さらに2号ファンドを目標150億程度で組成開始されていらっしゃるとなると、めっちゃ短期間でめっちゃ投資したのかなと思ったんですよ。
それだけ強い起業家さん側とか、オープンイノベーションの文脈で2016~2017年から、歩留まっていた売り物は多かったんですか?
堂前:
そうですね。おかげさまでこのチャンネルに出させていただいて、皆さんにセカンダリーファンドというのがあると気づいてもらえたこともあって、すごく問い合わせとか相談とかをたくさんいただいていて。
その中で、当時ファンドレイズしながらファイナルクローズに向けて2年ぐらいかけてやっていたんですけど、調達しながら投資しながらという感じでやっていました。
ある程度僕らが認知されたり、売り手の皆さんから見て「相談したいな」と思われるようになったのは、セカンドクロージングした時です。
石橋:
1号ファンドの2度目の締め切りですね。
堂前:
1号ファンドのセカンドクロージングで60億円を超えたぐらいから、セカンダリーでも1億円以上のサイズの株式が僕らも買えるようになってきたので、この辺りから雰囲気が変わりましたね。
石橋:
そのくらいの規模を買ってくれるんだったら売りたいという方が増えたという感じですね。
堂前:
そうですね。
2号ファンドの投資戦略──1社4〜5億円、プレIPO特化
石橋:
2号ファンドについてもう少しブレイクダウンしてお伺いしていきたいんですけど、150億円を仮にターゲット通り集まった場合は、1社のスタートアップに1億円ぐらいを出資されていくんですか?
堂前:
もうちょっと大きいです。1号ファンドの1社あたり平均投資額が約3億円。
石橋:
結構大きいですね。
堂前:
2号ファンドはもう少しサイズアップしますね。3億円の1.5~2倍ぐらいです。
石橋:
4億円くらいはチケットとして1社に張っていく。ターゲットの社数はあまり変わらないということですか?
堂前:
20〜30社程度で、あまり変えない想定ですね。
石橋:
起業家の方にとっても大事な質問だと思うのが、どのぐらいの事業ステージのスタートアップが対象ですか?
創業しました、1~2年前に創業してシードVCからお金が入っています、もう売りたいみたいな方々も全然ウェルカムなのか、どのぐらいの方がスイートスポットですか?
堂前:
ほぼプレIPOと言って良いと思います。上場のN−2期以降の会社をターゲットにしていますね。
石橋:
明確に証券会社・監査法人がついていて、ショートレビューは終わっている?
堂前:
ショートレビューは終わっていて、できれば監査契約も結んでいてほしいですね。
石橋:
その方々に先ほどの金額感のイメージで、2号ファンドからは4〜5億円ぐらいを1社に投資をしていくと。
取引の検討プロセス──1〜3ヶ月の検討期間と株主間契約の壁
石橋:
実際にそういう起業家さん、ないしはVCさんからご相談が来た時は、どのぐらいの検討スケジュールで実際に売買されたりとか、どんな感じになるんですか?
堂前:
会社側視点だと増資のタイミングに合わせたいですね。投資家対応する手間もかかりますし、デューデリジェンスの手間もかかるので、そこに合わせるのが合理的な気がしますね。
一方、売り手視点でいうと売りたい時ですね。ベンチャーファンドの皆さんの残りの期間が延長できるかできないかというのが、8年目ぐらいにポートフォリオ全体を見て、IPOスケジュールに間に合うのか棚卸しすると思います。
そうすると、良い感じだけど今はN−2期に入っていない状態というか、まだ監査契約が結べていないというのは、1つのターゲットになると思います。
石橋:
ご相談いただいてから、とはいえN期に入っていると、諸々数字も分かりやすく出ていらっしゃるとは思うんですけど、検討スケジュールはどのぐらいかかるんですか?
堂前:
早ければ1~1ヶ月半とか。かかっても2~3ヶ月ぐらいですかね。ただ、セカンダリーの場合、決まってからトランザクションを完了するまで時間がかかってしまうので。
石橋:
それはなぜですか?
堂前:
先買権の行使をする権利を既存の株主さんが持っている。株主間契約ごとにバラバラなんですね。権利を持っている人がいつまでに判断をすれば良いかという期間ですね。この辺りの既存株主さんの動きをどうコントロールしていくかというのも、スムーズに完了させるTipsですね。
石橋:
結構そわそわする期間ですね。
堂前:
そうなんです。なので、発行会社の皆さんと売り手の皆さんと我々3社でスケジュールを立てて、目線を合わせてというようなことをしていかないと、共同売却権というのがあって。
「うちも売りたいです」というのが出てくる可能性があると、2億用意していたのに売り出し株式が4億分になってしまうみたいなことがあるので、それはそれで手間がかかるので、なるべくスムーズな取引を完了させるためには、なるべく早い段階で色々な人を巻き込んでいく方が良いだろうと。
株価の決め方──事業計画と期待リターン1.5〜2倍から逆算
石橋:
なるほどですね。検討プロセスはそういう流れで、実際に完了するまでのところのハードルもあるというようなお話でしたけど、まさに共同売却権とか、既存の他の株主も売りたがるかどうかは、値段のところもすごく大きい変数になっていると思いますし、VC・CVCの人の方が無茶苦茶気になると思います。
もし売り手として起業家さんご本人が売却するケースとかでも、株価をいくらで買ってくれるのかみたいなところがすごい気になるだろうし、国内のマーケットで一番データを持っているのは堂前さんなんじゃないかなと忖度なしに思います。
最近の値ごろ感は何をベンチマークにセカンダリーの売買が決まるんですか?
堂前:
いくつか要素はあります。ベースは会社が上場していくまでの間の事業計画。それしかないと言っても良いですね。これがどういう達成度合いで進捗していくのか。事業計画が達成された時にいくらでマーケットの評価をされるのか。
そこを我々なりに試算をして、この値段で売れるだろう、これ以上で評価される可能性が高いだろう、というところからファンドとしてほしい倍率で戻してくるみたいなことを僕らはよくやっています。
石橋:
一般的にセカンダリーファンドさんの場合は、逆算した時に何倍ぐらいのリターンを見込めると投資許容できる株価だったりするんですか?
堂前:
ステージを特にレイターに絞っているので、いわゆるグロースインベスターとかだと、1.5〜2倍くらいでも検討できるんじゃないかなと思います。
石橋:
逆算をして予実も達成されていれば、そのぐらいの逆算した時の株価では交渉はできるかもみたいな感じなんですね。
堂前:
僕らもN−2期・N-1期だといっても、スケジュールがズレるリスクはやっぱりあるんですね。そこも加味するので一概には言えないですが、この会社は来年に上場と言っているけど、僕らは3年待てるので、「もうちょっと倍率が高い方が良いね」という目線で売り手さんと交渉したりとか。
ファンド期間7年設計──1号ファンドの出口状況
石橋:
1号ファンドとして投資を始められて約3年は経たれているのかなと思いますけど、理論上のターゲットとなるのはN期に入っているとなると、投資先の全てが順調にイグジットしていると、もう少し出口を迎えている投資先の方がいてもおかしくないタイミングになるかなと思ったりするんですけど。
堂前:
まずまずというぐらいですね。もうちょっと早めに出てくれるかなと思っていたのもありますけど、全然許容範囲ですね。
石橋:
セカンダリーファンド側の満期は何年くらいが一般的なんですか?
堂前:
ベンチャーファンドとほぼ変わらないと思います。10年くらいで設計しているファンドが多いんじゃないかなと思いますが、我々は短くて7年です。
石橋:
基本的には短くできるぐらいのサイクルで投資開始をしていく思想で、特にレイターとなると、やっぱりそのぐらいが適切という感じなんですね。
アンチポートフォリオ事例──インフキュリオンのスイングバイIPO
石橋:
オファーを出したけど、実際に成約するまでに期間がちょっと空いていたりとか、上場直前とはいえお見送りをした案件とかもあるのかなと思うんですけど、その中で想定より綺麗に上場してイグジットされていらっしゃったり、いわゆるセカンダリーファンド目線でのアンチポートフォリオは、堂前さん的にどんな会社さんですか?
堂前:
僕の前職の投資先でもあるんですけど、株式会社インフキュリオン。すごく面白くて、セカンダリーで創業者の方が売られているんです。さらにそれをSMBCグループが出資もしていて、そのままスイングバイ型IPOをしました。
石橋:
スイングバイなんですね。
堂前:
そうです。
石橋:
堂前さんはなぜ見送ったんですか?
堂前:
見送ったというより、なんとなくフェードアウトしてしまった感じです。
石橋:
結構規模も大きい上場ですよね?
堂前:
そうですね。300億円ぐらいだったと思います。
石橋:
しかも直近の記事で、毎年決済高を50%伸ばしていくみたいなことを書かれていて、良い意味で強気で伸ばされていくんだなと横目で見ていて感じました。
堂前:
すごく思い出深い案件で、前職時代に担当した投資持分はリターンが出たので、最低限は良かったと思います。
ケップルの強み──グループ機能を活かした付加価値提供
石橋:
少し整理をしていくと、改めてKepple Liquidity Fundは、僕の知る限りそこまでセカンダリー投資をされている方はあまりいらっしゃらないのかなと思うんですけど、とはいえ、起業家さんとか売り手の方々からすると、ケップルさんを選ぶ理由とか、その強みや特徴みたいなところは、どんなところに整理されるんですか?
堂前:
私たちはセカンダリーに特化しているので、会社にお金が入らないんです。なので、会社として受け入れるメリットは原則ないです。
石橋:
お金が入ってこないし、株主が入れ替わるだけですよね。
堂前:
その中でどう我々が存在意義を出していくかということを念頭に置いています。幸いなことにケップルのグループの中にいくつか起業家・スタートアップ向けのサービス機能があって、そういったところのリソースをまず活用できます。
具体例でいうと、ケップルの子会社の中に人材紹介のビジネスをやっているチームがあるんですが、そこの求職者を人材紹介した場合、紹介の成功報酬は我々のファンドが負担します。
石橋:
そんなこともしてくれるんですね。
堂前:
もう1つは、ケップルのグループの中に大手監査法人でIPOチームにいたり、M&Aのアドバイザーをやっていたチームがあるんですね。
彼らがIPOコンサルまで深く入るかどうかは分かりませんが、アドバイザーとか相談相手とか、スポットでコンサル的なものをファンドのコストで負担して提供する。
石橋:
グループで色々な事業をやっていらっしゃるからこそのサポート体制というのが、うまく活かされているということですね。
堂前:
そうですね。やっぱりヒト・モノ・カネの3要素の中で、カネのことを解決できない中で、ヒトの部分やその他のところでサポートできないかというふうにやっていますね。
石橋:
ありがとうございます。
第2弾の動画では、もうちょっと具体的な投資先の事例になぜ投資されたのか、第3弾では幅広くというか、足元でいうと東証100億円問題とかもよく言われるようになった中で、M&Aであるとか、そもそもどのぐらいの規模感のIPOを目指しているような方々とかだと、セカンダリーをこういうふうに活用できるのではないかというのを、色々と突っ込んでお伺いしていければと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。
堂前:
よろしくお願いします。
石橋:
それでは次回もお会いしましょう。さようなら。
【IPO】時価総額400億超のクラシルに投資できた理由とは?第二の株主”セカンダリー”だから繋がった本命3社【ケップルグループ 堂前泰志 vol.02】
投資から1年でIPO達成、宇宙衛星ベンチャーに6.8億円投資
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回もKepple Liquidity Fundのジェネラルパートナーの堂前さんにご出演していただいておりますので、堂前さんよろしくお願いいたします。
堂前:
よろしくお願いいたします。
石橋:
前回の1話ではKepple Liquidity Fundの2号ファンドについてお話をいただいて、ざっくりとしたセカンダリーのお話も聞きました。
改めてどんな会社になぜその時に投資したのか、1本目のお話を聞いた範囲では、いわゆるプレIPOラウンド、要は上場とかイグジットに近い会社さんを投資のターゲットにしていらっしゃるという話だったので、結構生々しいお話も聞けるんじゃないかなとは思うんですけれども。
早速、なぜこの会社に投資したみたいなところの1社目は、どちらの会社からお話ししていきましょう?
堂前:
一番新しいIPOからいきましょうか。株式会社アクセルスペースホールディングス。
石橋:
宇宙ですね。
堂前:
宇宙衛星の会社です。小型衛星というものを開発していますね。大きさとしてはワンルームマンションにある冷蔵庫みたいな、それよりもうちょっと大きいぐらいのサイズの衛星を打ち上げています。
積んでいるものは光学衛星と言ってカメラを積んでいます。そのカメラで地球のいろんなものを撮って画像を送ってくるんですが、特徴的なのはそれを複数台同時に上げて複数台協調制御するんですね。宇宙って単純に遠いじゃないですか。
石橋:
遠いですね。
堂前:
電波でそのデータを飛ばしてくるわけなんですけど、上り下りの通信が重くなっちゃうわけなんですよ。複数台の衛星を協調で制御することによって、データの送受信のスピードを上げることができる。
リアルタイム性をもって高精細な画像を地球に送ってくることができて、そのデータをいろんな分野で防衛だとか、防御だとか、その他の分野で活用しているという会社です。
石橋:
どういう領域に強い起業家さんがそんなことを始めたんですか?
堂前:
もともと中村さん(アクセルスペースホールディングス 代表取締役CEO)は衛星の研究をやっていた方で、研究室の先生の後押しもあって起業されたみたいなことを伺っていますね。
産業革新機構からのセカンダリー取得、投資額は最大の6.8億円
石橋:
投資したのは大体いつぐらいなんですか?
堂前:
2024年の7月です。
石橋:
撮影時点からすると1年と3ヶ月ほど前?
堂前:
上場したのが今年の8月ですね。
石橋:
上場まで1年間ということですよね。めちゃめちゃイグジットするまで高速ですよね。
それは目論見通りだったんですか?
堂前:
目論見通りですね。
石橋:
ちなみに宇宙系じゃないですか。堂前さんはどちらかというと今までのご経歴だとFinTech系とかに投資をされているケースが多かったのかなとプロフィールを拝見していても思うんですけど、なんで投資したんですか?
堂前:
まず面白いじゃないですか。難しいんですが、先行して株式会社Synspectiveだとか株式会社QPS研究所だとか、ちょっと違った衛星を打ち上げているスタートアップが上場していってくれたので、彼らがどういう前提条件をクリアして上場したのかなというのをちょっとスタディをしました。
石橋:
それと比較すると、当時の投資先の方はステータスとしてはシグナルは良さそうみたいな感じだったんですね。
堂前:
そうですね。大まかに言うと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)だとか経済産業省だとか防衛省だとか、そういったところからの助成金とか政府関連の受注みたいなものが積み上がっていくところを、1つのエクイティシナリオの柱に据えていて。
彼らはどういう助成金を取っているのか、どういうプログラムに採択されているのか、みたいなところを事業面では見ながらですね。
石橋:
投資した理由の外観は少し分かってきたんですが、セカンダリーファンドだからこそお伺いしたいと思っているのが、どういう経緯で投資することになったんですか?
堂前:
売り手である株式会社産業革新機構(INCJ)さんとの会話の中で、INCJさんが解散を前にして売却するポートフォリオをいくつかお持ちで、その中でいくつかご相談いただいたうちの1つですね。
石橋:
Kepple Liquidity Fundとしては大体いくらぐらい出資されたんですか?
堂前:
6.8億円。最大ポートフォリオですね。
石橋:
すごい。それで1年後にちゃんとイグジットしているんですね。
撮影時点ではまだロックアップ期間中?
堂前:
期間中ですね。価格はクリアしています。
石橋:
見立てとしては、投資額は何倍ぐらいになるんですか?
堂前:
できるならば3倍以上になってほしいなというふうには思っています。
石橋:
20億円強ぐらいで回収したいということですね。6.8億円投資して1年後に20億円になって帰ってきたら最高ですね。
堂前:
そうなったらいいですよね。
そういう意味では、上場する蓋然性を評価した時点で、上場する可能性は高いなというのはかなり我々も信じられた状態ではあったんですね。
石橋:
だからこそ踏み込んだ金額を投資されているということですもんね。100億円に対して6.8億円だから、ファンド全体の7%ぐらいは出資されているということですもんね。
ユニークブラウザ5000万超、クラシルに6.2億円投資
石橋:
1社目が宇宙から始まったので、だいぶ幅広だなと想像してくるんですけど、2社目の事例を挙げるとどんなところになるんでしょうか?
堂前:
2つ目の大型のIPOで言うと、クラシル株式会社(旧:dely株式会社)です。レシピ動画サービスクラシルを軸にした会社ですね。レシピ動画の中では圧倒的なトップランナーです。
石橋:
圧倒的なんですね。
堂前:
圧倒的ですね。ユニークブラウザが5000万を超えると。
石橋:
そんなに見てるんだ。
堂前:
その圧倒的な存在のあるユーザーさんたちを背景にしたマーケティングの会社ですね。スーパーマーケットや食品メーカー、その他のメーカーさんのマーケティングをサポートするというような会社です。
石橋:
いろいろメディアにも出ていらっしゃるので、クラシル代表の堀江さんは割と有名なのかなと思うんですけど、どんな方なんでしたっけ?
堂前:
堀江さん自体はすごく優秀な方ですよね。
石橋:
最初はお弁当を売っていたんでしたっけ?
堂前:
はい。dely株式会社のdelyはデリバリーのデリーですね。そこからピボットされて動画レシピの分野に入られたんですけど、僕らも出会ったのはN期ぐらいだったので、経営者としてもかなり成熟されていて。
印象としてもそうですし、実力としてもそうですけど、非常に素晴らしいなと思っているのは、M&Aが上手なチームなんですよ。
古くは同業の会社をM&Aした経緯もあったりするんですが、異業種のWebのキュレーションメディアを買収したりとか、そういったことをしてきっちり育てて利益貢献させていって成長させているというすごいチームですね。
ジャフコの18%保有株をセカンダリー取得、流通株式問題を解決
石橋:
こちらはいわゆるスイングバイIPO事例としても有名で、Zホールディングス株式会社の傘下になった上で、傘下といっても51%とかでしたっけ?
堂前:
そうです。
石橋:
マジョリティはZホールディングスで、株式会社ZOZOとかLINEヤフー株式会社とか諸々やっているZホールディングスが取得された上で子会社上場されていらっしゃるところかなと思いますけど。どのタイミングでなんで投資できたんですか?
堂前:
これも売り手のジャフコグループ株式会社さんからのご相談です。
石橋:
ファンドの満期ですか?
堂前:
満期ではなく、彼らは上場まで持っていったんですけど、ジャフコの持っているシェアが結構大きくて、上場後の売り方が難しいのと、大きすぎて流通株式にカウントされない可能性があるという話がありました。
石橋:
何%ぐらい持っていたんですか?
堂前:
18%とかですね。上場基準で流通株式比率が20%以上という形式基準があるので、そこにVCであるジャフコの持ち分がカウントされないとなると、結構大きい希薄化をしないといけなくなってしまうので、その資本政策という事情ですね。
石橋:
そんなテクニカルなケースがあるんだ。しかも全然満期でもないしという格好だったんですね。堂前さんたち的に言うと、めっちゃ運が良かった案件みたいな感じですかね?
堂前:
そうですね。これは結構時価総額が大きくなっていたんですよ。結構な額を出せるということを知られていないと声が掛からないんですね。
石橋:
当時はいくらぐらいの株価で投資されたんですか?
堂前:
株価は時価総額で言うと400億円ちょっとで、僕らの取得が6.2億円。
石橋:
でかいな。
堂前:
これも1.5%ぐらいしか買えなかったんですね。本当はもうちょっと買いたかったんですけど、当時のファンドのサイズで上限規定があって、6.2億円しか出せなかったという。
石橋:
当時はお伺いしている範囲だと、ファンドサイズの10%ぐらいがマックス値となると、要はざっくり60億円強ぐらいのファンドサイズの時にdelyさんのディールが来て?
堂前:
フルスイングした。
石橋:
すごい。delyさんに投資したのはいつなんでしたっけ?
堂前:
2024年2月です。
石橋:
これも2024年なんだ。
堂前:
上場したのは2024年12月。
石橋:
これも多分ロックアップ期間中、上場はされているけどまだ株式が売れない期間だと思うんですけど、見立てとしては今の時価総額とか株価形成推移を見ていると、6.2億円投資したお金が何倍ぐらいになりそうなんですか?
堂前:
2倍超にはなってほしいなという感じ。今まだもう少しなんですけど。
利益10億円超、M&A戦略が決め手でフルスイング投資
石橋:
うちは普段シード投資をしているVCなので、スケジュールの違いと倍率とか設計は全然違うと思うんですけど、やっぱりインパクトがいいですね。
堂前:
特に今の例に挙げた2つは、僕らから見て上場確度がかなり高そうだという状況と、調べる中でもその確信が持てたので、結構踏み込んだ金額を投資できたケースですね。
石橋:
1社目のケースでは他社さんを参考にして重要業績評価指標(KPI)とか事業進捗で見極めたみたいなお話はありましたけど、delyさんについて今まさに堂前さんがお話しいただいたように、しかも当時のフルマックスで投資したのは、当時何が決め手だったんですか?
堂前:
利益額が圧倒的だったんですよね。10億円超の利益を出していて、かつそれが年間成長率で20%以上毎年伸ばしていて、既存事業の伸びに加えて新規事業の仕込みと、あとM&A案件も僕らの投資の直前にもう1件仕込んでいて、これが花開くとかなり安定感が出てくるのと利益の厚みが出てくるだろうというところで。
上場した時にはそんなに高い倍率は狙えなかろうが、その後の企業価値の成長、株価の成長に期待できるというシナリオでしたね。
石橋:
ちなみにKepple Liquidity Fundとしての売却のタイミングは、多くの一般的なVCファンドさんだと上場後の株価推移とかのリスクが取れないから、売れるタイミングでできるだけ早く売ってしまう人が多いような気はするんですけど、Kepple Liquidity Fundの場合はどういう設計になっていらっしゃるんですか?
堂前:
明確な規定をしているわけではないんですが、ポーションが大きい場合も多くて、そんなに急いで売らない方針ですね。
石橋:
満期7年間の中でしっかりタイミングを見極めながら売却していくみたいな感じなんですね。すでにイグジットしてIPOを迎えているところが、実質最大投資先に近いということですね。
堂前:
そうですね。
石橋:
それはめちゃめちゃ綺麗ですね。
投資10ヶ月でPayPayが買収、クレジットエンジンの2倍リターン
石橋:
もう1社さんの今回取り上げていただく事例はホームページを拝見するとIPOではなく、M&Aでイグジットしている先だと思うんですけど、3社目についてもお話ししていただいてよろしいですか?
堂前:
クレジットエンジン株式会社という会社です。Banking as a Service(BaaS)という言葉はもしかしたら聞いたことある人もいると思うんですが、銀行業務の一部の仕組みをサービスとして、SaaS的に提供するというプラットフォームを運営している会社で。
もともとはオンラインレンディングで、貸し出しの業務をSaaSで提供しますと。例えばデータを預かるとか、審査をスムーズにするとか、そういったものですね。
石橋:
お金を貸していた金融機関さんとか向けにサービス提供していたということなんですね。
堂前:
メガバンクだったり、大手地銀だったりとか、あと変わったところで言うと信用保証協会も彼らのシステムを採用していたり。
石橋:
めちゃめちゃ大手というか、スタートアップの人からするとよく話を聞く人たちですよね。
堂前:
貸し出し業務だけではなくて、回収のほうもやっていて。債権回収業、サービサーと言うんですけど、そのライセンスを取って、回収業務でお金を返してくれない人に電話や手紙を送ってお金を返してもらう督促業務があるんですが、それをデジタル化したり自動化している。チャットボット的なものをオートコールに乗せてコールしているとか。
石橋:
お世話にはなりたくないですね。
堂前:
そうですね。ただ自動で回収業務、督促業務をやってくれるので、後払い決済(BNPL)みたいな小口の債権の回収に結構活用されているという会社です。
前職からの投資先、創業者からセカンダリー取得
石橋:
クレジットエンジンさんはいつぐらいに出資されたんですか?
堂前:
これも2024年2月です。
石橋:
先ほどのdelyさんと同じタイミングですね。当時はM&Aされると思っていたんですか?
堂前:
IPOシナリオだったんです。IPOシナリオでN-1期に入ったぐらいかな。
石橋:
では結構規模も出ていたんですね。
堂前:
そうですね。
石橋:
最終的にM&Aされたのはいつでしたっけ?
堂前:
2024年11月です。
石橋:
投資して半年強で買われたんですね。Kepple Liquidity Fundとしてはリターンは出たんですか?
堂前:
出ました。
石橋:
その短期間でリターンが出るんですね。どちらに買われて、最終的に何でそういう出口に向かわれたんですか?
堂前:
買ったのはPayPay株式会社ですね。PayPayさんが法人向けの金融取引をグループで強化したいみたいな思惑があって、その1つの武器になるだろうというシナリオだと聞いています。
石橋:
確か調べても買収金額は非公表で書かれていたのかなと思いますけど、そのぐらいの時期でIPOではなくM&Aに振っていくとなると、そこそこの規模感ではあったという感じなんですかね?
堂前:
そうですね。IPOして公募の初値で結構似たような金額になりそうでした。
石橋:
ほぼイグジットストーリーというか、もともとケップルさんとしてもこのぐらいはいくんじゃなかろうかというところぐらいの金額ではイグジットはしていらっしゃるという感じですか?
堂前:
ベストではないにせよ、このぐらいの金額感でのIPOは十分あり得るし、そうなった後に時間をかけてリターンを積み上げていくのか、瞬間で売却しきってしまうかという判断でしたね。
石橋:
ちなみにクレジットエンジンさんで言うと、まさにご前職からよく見られていたFinTechの銘柄だと思うんですけど、投資を決められた当時の理由というのは何だったんですか?
堂前:
実はクレジットエンジンも前職の投資先だったんですよ。
石橋:
もともとよく知っている会社さんだったんですね。
堂前:
内山さん(クレジットエンジン株式会社 代表取締役CEO)は創業時から何回か喋っていて、当時いたキャピタルで投資をしたのも、バンキングのサービスがメガバンクに採用されて、というのと。
あとはサービサーですね。お金を貸すのはできるんだけど、回収するのはやっぱり大変なので、ここの両輪を揃えてほしいなと思っていたところで、当時銀行系のキャピタルにいた僕が投資をしたんですけど、それを踏まえて、そこから狙っていたものがあったんです。
いろんないきさつがあるんですが、内山さんの持ち株をセカンダリーで売らなければいけない事情が当時あって、僕がセカンダリーファンドを作ったという時に、それを「そのうち買いに行きます」みたいな話はしていました。
石橋:
特定のVCさんから買ったのではなく、創業者の方からセカンダリーで取得されたということですね。
堂前:
そうですね。その時に古くから彼らがサポートしていたVCの一部のシェアも買うことになりました。
石橋:
これはざっくり何倍ぐらいになったんですか?
堂前:
10ヶ月で2倍くらいですね。
石橋:
すごいな。
宇宙・料理・金融、領域を問わないセカンダリー投資戦略
石橋:
だいぶ具体的な倍率とかを含め、IPOしていて公開情報になっているので分かりやすいというのはあると思うんですけれども、いろいろとお話を伺えてよかったです。
ちなみに今お話伺った中でも宇宙だったり、料理だったり、金融だったり、領域の縛りは何もないんですか?
堂前:
何もないです。なので1号ファンドのポートフォリオの中には再生医療もありますし、創薬もあります。半導体関連もあります。
石橋:
そうなんですね。本当に何でも触れるんですね。
セカンダリーというテーマに特化しているという感じなんですね。
堂前:
そうですね。テーマとステージですね。
ステージをN-2期以降、上場の確度が高いものをだいぶ絞っているので、そこでセクターまで絞ってしまうと案件がなかなか出てこないんじゃないかなというのが、ちょっとビビりながら設定していて、蓋を開けてみるとたくさん投資機会があるんですけど、だからといって領域を狭める必要もないので。
石橋:
ぜひ気になる方はお問い合わせもいただければなと思っております。
それでは堂前さん、第3弾の動画でもお話をお願いできればと思いますので、皆さんもお見逃しのないようにお願いいたします。それでは次回の動画でもお会いしましょう。さようなら。
【100億の壁】IPO・M&A・資本政策を変える“セカンダリー市場”の未来|起業家の“時間を確保できる”新たな選択肢【ケップルグループ 堂前 泰志 vol.03】
東証グロース「100億円の壁」とは何か
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回もKepple Liquidity Fundのジェネラルパートナーの堂前さんにご出演していただいておりますので、堂前さんよろしくお願いいたします。
堂前:
よろしくお願いいたします。
石橋:
今回はテーマトーク、セカンダリーファンドを運用されている堂前さんだからこそお伺いをしていきたいと思っているテーマなんですけれども、まず大きいところの質問からすると、東証グロースの上場維持基準の変更、いわゆる「100億円の壁」と言われていますけれども、100億円の壁の発生によって今後国内のセカンダリーマーケットはどうなるんですか?
堂前:
セカンダリーマーケットは爆伸び確定ですね。
石橋:
ポジショントークもゴリゴリ入っているかもしれないですけど、多分爆伸びしますよね?
堂前:
そう思います。スモールIPOが業界の課題になって久しいので、証券会社の皆さんも小さいサイズのIPOを新規で引き受けにくくなっている中での東証のメッセージなので。
明確にスケジュールを後ろに倒すとか、サイズが多くなるのを少し待つとかが起こっている中で、VCの満期は待ってくれませんし、オープンイノベーションの結果の見直しスケジュールも待ってくれないので、そのタイミングでのイグジットを誰が受け皿になるかという話です。
当然、創業者もキャピタルゲインを確定するタイミングを後ろに倒すわけですので、その方々のライフステージの変化というのも待ってはくれないわけですね。
石橋:
諸々の待ったなしで爆伸びしていくと。
堂前:
そう思いますね。少なくとも売りたい人は爆伸びすると思います。
石橋:
ありがとうございます。
冒頭で100億円の壁と言ってしまいましたけど、改めて簡単にマーケット観をいくつかご質問させていただいた上で、なぜセカンダリーマーケットが爆伸びするのかをもう少し体系的に理解をしていきたいなと思うんですけど。
そもそも東証グロースの100億円の壁と言われているのは、改めて簡単に何でしたっけ?
堂前:
東証グロース市場の上場維持基準が、「上場10年経過後に時価総額40億円以上」から「上場5年経過後に100億円以上」を目指して欲しいという基準の変化ですね。
石橋:
10年が5年になり、40億円が100億円になる。ざっくり倍の倍で4倍ぐらいハードルが高くなってしまったということですね。
堂前:
なので上場を引き受ける、後押しする証券会社の人たちは、はなから100億円を超えるようなものでないと5年後100億円になっていない可能性が高いので、スモールIPOは減る方向ということが言われていますね。
なぜセカンダリーマーケットが「爆伸び」するのか
石橋:
スモールIPOが減っていくとなると、今後の100億円の壁の発生によってスタートアップ投資マーケットは堂前さんとしては足元がもう変化しているなとか、今後の5年10年だとこんな感じで変化していくよなとか、投資環境の変化はどのように考察されていますか?
堂前:
環境的にはすごくポジティブで、このセカンダリーファンドを作った理由の1つでもあって、スモールIPOが問題であると。時価総額が大きくなるためには利益の額が大きくならなければいけないわけなので、その利益の額を大きくする時間を作るために、売らなければいけない人から株を買うという仕事を僕らはしているんですね。
つまり、時間を提供するみたいなことをやっています。なので、我々がやっているファンドのコンセプトに合致した制度変更とも言えますね。
投資指標はPERが主力、PSRはレアケースに
石橋:
改めてそういう100億円の壁が出てきたわけですけれども、その上で足元と今後は堂前さんからみてスタートアップの市況感はどのように変化していくとお考えですか?
堂前:
スタートアップの市況感で言うと、なかなかしんどい局面もあるんだとは思うんですが、成長していく限りはあまり変わらないんだろうなと思っています。
もちろん出口が遠くなったように見えるんですけれども、一方でM&Aも活発化してきていますし、我々のようなセカンダリーのプレイヤーもいろんな形で出てきているので、投資家のマネーは入ってくるだろうなというふうに思います。
ただ簡単な資金調達とか、少しモードチェンジは必要なんでしょうね。
石橋:
モードチェンジはどんな感じのイメージですか?
堂前:
例えば赤字を掘りながらトップラインだけを伸ばしていくようなスタイルの事業展開とかは難しくなるだろうしというところですかね。
石橋:
赤字上場がなかなか株価形成的にも許容されなくなってきているということですね。
とはいえ、赤字上場が許容されたり、株価売上高倍率(PSR)が重視されたり、株価収益率(PER)が重視されたりすると思いますけど、堂前さんの見立てとしては今後は変わらずにPERが株価形成する上では大事という目線感ですかね?
堂前:
そこが主力で、どちらかというとPSRライクな、例えば年間経常収益(ARR)マルチプルみたいな指標はレアケースですね。
PSRマルチプルが用いられて流行ったのはITバブルの時代なので、20年以上前なんですよ。なので、本当にレアな局面でしか使われないものだと思います。
VCファンドの満期延長とLPセカンダリーの可能性
石橋:
2本目の動画でdelyさんへの投資時点でめちゃめちゃ分厚い利益が出ていたというところもクリティカルな理由だったとお伺いしていたので、やっぱりそういう目線感でもあるんですね。
そうなると、より大きくしていくために結果的には時間がかかる、時間をかけて大きくしていく方々も増えるのかなと思うと、セカンダリーの売買の機会とか重要度とかは、スタートアップ投資環境の中でどう変化していくと思われているんですか?
堂前:
時間をかけなければならないので、時間軸が合わない既存の株主に対して出口を作っていってあげる必要があるというのは1つの変化だと思います。もう1つの時間を買うアプローチとしては、規模感を大きくするためのM&Aみたいな話というのも出てくるでしょうねというふうに思っています。
石橋:
シンプルにファンドの満期をいじる人達も出てき得るんじゃないかなと思うんですが、その動きが顕在化するのであれば、セカンダリーファンドをやっているケップルさんからすると逆行する動きにもなったりするという。
VCファンドの方々でも、例えば僕らも大体10年ぐらいの満期なんですけど、当然より長い時間をかけて大きく売上利益を積んでから出口を迎えようとすると、スケジュールが合わないからケップルさんから時間を買っていただくために次の担い手のためにバトンをパスするというのは構造的に起きるものの、満期を伸ばすようなプレイヤーも出てくるんですかね?
堂前:
結局、満期を伸ばせるかどうかは出資者であるリミテッドパートナー(LP)が許すかどうかにかかるんですよね。満期を10年のファンドを15年にしてリターンが3倍になるのか、という問いにクリアに答えられるかどうかだと思います。
誰も実証した人はいない。ケースとして唯一あるのはフェムトパートナーズ株式会社さんが継続ファンドを作られて、そのパフォーマンスは1つの注目するポイントになりますよね。
石橋:
結果、株式会社プレイドさんとかnote株式会社さんとかで、フェムトパートナーズさんは投資倍率がめちゃめちゃいいですもんね。そういうところのケースが増えていくと、もしかしたら満期を伸ばす人も増えてくる?
堂前:
ただ、あれは器を入れ替えていますよね。つまり待ちきれないLPさんの分はそこで清算して違うビークルに移しているので、単純に伸ばすという話は難しいかもしれないですね。
石橋:
僕の知り得る限りだと、例えば株式会社Coral Capitalとかベータ・ベンチャーキャピタル株式会社さんとかが存続期間を12年のファンドに伸ばすみたいな、そういうプレイヤーが出てきているなというところを感じているんですけども。
僕もある意味Gazelle Capitalとしてお金を集める立場として、今堂前さんがおっしゃっていただいたように「12年に伸ばしてどうなるの?」ということを蓋然的に説明できるかと言われるとよく分からないんですよね。
堂前:
なので、これが期待できるんですというポートフォリオがある場合で、かつそれを難しいというLPさんに対して適切な出口を提示できるジェネラルパートナー(GP)であれば伸ばせると思います。適切な出口が何かというと、これもまたセカンダリーファンドなんですよ。LP持ち分を買うセカンダリーファンド。
ここのオポチュニティは今後非常に大きくなるんじゃないかというマーケット観としては見ていますね。
ダイレクトセカンダリーとLPセカンダリーの違い
石橋:
分かりにくいお話だと思うので、ケップルさんが基本的にやっているのは、いわゆるダイレクトセカンダリーと呼ばれる起業家さんの株を直接買う行為で。
今お話しいただいたのは、ダイレクトセカンダリーと対をなすというところで、何と呼ばれている行為なんですか?
堂前:
LPセカンダリーという手法で、ベンチャーファンド・プライベートエクイティ(PE)ファンドのLP持ち分を買うものです。
石橋:
例えば僕らのファンドに投資をしている事業会社さんの、僕らのファンドの持ち分をセカンダリーで買っている。
堂前:
そうです。つまり今みたいなケースですね。ファンドの期間を伸ばしたいが、賛成してくれる人もいるし、賛成してくれない人もいると。反対する人にはここで売っていただいて、そのタイミングの現金をお返しするけれども、現金をお返しすることはできないので、似たような額の価値でセカンダリーファンドに持ち分を買ってもらう。
石橋:
国内だとWMパートナーズ株式会社さんとかがそういうニーズですかね。まだまだダイレクトセカンダリーもあまりプレイヤーもいないし、LPセカンダリーもまだいないけど、おそらく先ほどの堂前さんのお話だとマーケットが爆伸びするならばプレイヤーは増えていくんですね。
堂前:
はい、増えていくと思います。
石橋:
結構その兆しとかもすでに感じていらっしゃるんですか?
堂前:
感じていますね。先ほど石橋さんが例に挙げていたいくつかのファンドだけではなくて、ファンドの満期を延長しているファンドのGPからも、一部LPについてはセカンダリーで買ってもらって、時間を伸ばせるLPさんと、「あと数年戦います」みたいな話は伺っていますね。
石橋:
ありがとうございます。
セカンダリー投資に向いている起業家の特徴
石橋:
だいぶ投資家向けのお話になってしまったので、方向性をちょっと変えまして。
セカンダリー向きの、こういうことをしたい起業家さんとか、こういう考え方を持っている方はセカンダリー投資を受けたほうがいいとか、セカンダリーとして相談したほうがいいみたいな、向き不向きみたいなところを対起業家向けに堂前さんのご意見をいただければと思うんですけど、起業家さん目線で言うとどういう人が向いているとか、相談するべきなんですかね?
堂前:
ともかく上場をするのを、株価等を問わずに急ぐ人はあまり向かない気がします。
石橋:
時間を早く終わらせたいというか、早めに出口を迎えたい方ですね。
堂前:
上場した後のほうが事業成長をさせるのに有利であるという条件の事業だったりしますよね。知名度が必要だったりとか、そういった事業であればあまりセカンダリーファンドには向いていないだろうと。条件が整えば早く出ればいいと、株価は後で考えるというスタイルですね。
石橋:
逆に言うと、シンプルに長くしたい人とか、規模を追いかけたいとかですかね。
堂前:
そうですね。規模を追いかけるべきとか、より大きいインパクト。それは時価総額もそうですし、ファイナンスもそうかもしれませんし、それをテコにした事業のサイズをインパクトに与えたいとか。
上場後も資金調達が必要な事業は時価総額が重要
石橋:
堂前さんからすると、こういう事業なのかマーケットなのか分からないですけど、こういう起業家さん、要は大きくしてからイグジットするべきだよね、みたいな属性の人はいるんですかね?
堂前:
事業的には上場した後も資金調達をしなければいけないとか、した方がいい事業ですね。それは研究開発なのか、そういう投資が必要で、マーケットをうまく資金調達する場としても活用したいとなると、時価総額のサイズが必要なんですよね。
石橋:
時価総額が高くないと、それだけ何回も上場後に調達する時にも放出する株式の比率が上がり続けてしまうということですよね。
堂前:
大口の投資家のスコープに入っていなければいけないので、そうすると時価総額が大きいのを維持できるとか、大きくしていなければいけない。
アーリーフェーズからの相談もウェルカム
石橋:
まさに投資先の宇宙系も、最たるものかもしれないですね。実際株価形成を見ていても期待を込めてとか、マーケットでも宇宙系のスタートアップの方を高く評価されがちですよね?
堂前:
そうですね。市況感で言うと、地政学の問題や安全保障の問題の重要度が増しているというところと、政府勾配がメインになってくるので、そうなってくると海外の指南を買いにくい分野でもあるわけですね。そこは太いお客さんが近くにいるというのはビジネス機会も大きいという期待感もあります。
石橋:
ここまでテクニカルになってくるというか、玄人ウケしていくということは、より複雑性が資本政策、資金調達を増していくのかなと思うんですけども。
ケップルさんの場合は、プレIPO期に入ってから投資がターゲットだというお話でしたが、これを見ている方々は多分アーリーフェーズの方が多いんですよね。そういう方はケップルさんに相談できたりとか、問い合わせしていいものなんですか?
堂前:
全然ウェルカムですね。
石橋:
結構カジュアルに資本政策の考え方とか、セカンダリーについての向き合い方みたいなディスカッションもさせていただけるという感じですか?
堂前:
もちろんです。僕らは利害関係がないので好き勝手に言いますし、どの当事者のバイアスもかからないので、一般論で言うとこうじゃないですかということもお伝えできると思いますし、ゆくゆく我々の投資スコープに入る頃にまたセカンダリーの本業の話ができればいいので。
どういうことができそうかとか、どういうふうにコミュニケーションしたらいいか、起業家の皆さんもそうですし、売り手の皆さんもそうで。
例えが適切かどうか分かりませんが、要は「別れ話の切り出し方」みたいな話なんですよね。どちらからどう言うとか、どうだったらすんなり進むのかみたいな話って、勘どころとか経験値みたいなものを一定僕らは持っているので、こういうふうに言ってハレーションが起きないかなとか、いくつか経験はしているので、そういったお話もできると思います。
なので、一旦利害関係のない僕らに「どう思いますか?」というのは聞いていただければと思います。
石橋:
ありがとうございます。ぜひ起業家の方はもちろんですけど、おそらくVC・CVCの方でも、そもそもスタートアップマーケットはまだ未成熟というか、そんなに出来上がってきて時間も経っていないとなると、売る経験を積んでいる方は投資家さん含めてあまりいらっしゃらないと思います。
その実態を知っていらっしゃる堂前さんにご相談をするというのは、めちゃめちゃありなのかなとは思います。
堂前:
そうですね。いつでも時間の許す限り話はしますので。
石橋:
ありがとうございます。ぜひご連絡・お問い合わせもしてみていただければなと思います。それでは堂前さん、全3話にわたりましてご出演ありがとうございます。
堂前:
ありがとうございました。
石橋:
また来年・再来年ぐらいにはKepple Liquidity Fundのイグジット事例がまたどんどん増えていくのかなと個人的にも楽しみにしておりますので、またお付き合いいただければと思っております。
堂前:
ありがとうございます。
石橋:
それでは次回もお会いしましょう。さよなら。
