【起業家必見】投資家が見たスタートアップの成功と失敗|企業の危機を救ったVCのリアル【XTech Ventures 手嶋 浩己 vol.01】
◯手嶋 浩己 XTech Ventures株式会社 代表パートナー
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1976年生まれ。
1999年一橋大学商学部卒業後、博報堂に入社し、戦略プランナーとして6年間勤務。
2006年インタースパイア(現ユナイテッド)入社、取締役に就任。
その後、2度の経営統合を行い、2012年ユナイテッド取締役に就任、新規事業立ち上げや創業期メルカリへの投資実行等を担当。
2018年同社退任した後、Gunosy社外取締役を経て、LayerX取締役に就任(現任)。
平行してXTech Venturesを創業し、代表パートナーに就任(現任)。
3号ファンド120億円で「現状維持」を選んだ理由
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回は、XTech Ventures株式会社代表パートナーの手嶋さんにご参加いただいておりますので、手嶋さん、よろしくお願いいたします。
手嶋:
よろしくお願いします。
石橋:
実は手嶋さんたちとは、この後に部分的に触れるかもしれないんですけれども、協調投資先がいて定期的にオンラインとかでは顔合わせをさせていただいています。
僕自身も協調投資先の定例会を通じて手嶋さんたちがどういうふうに起業家さんと向き合っていらっしゃるのかというのは部分的には知っているつもりなんですけど、今後XTech Venturesさんに面談を希望している起業家さんが、この1本を見ればXTech Venturesさんの全てが分かるぐらい、手嶋さんに色々突っ込んで聞いていきたいと思っております。
答えにくいところもぜひ教えていただきたいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
XTech Venturesさんの3号ファンドが無事組成されて投資開始されたというニュースも出てきたかと思いますが、改めて3号ファンドはどのぐらいのサイズでどういうコンセプトでやっていかれるんでしょうか?
手嶋:
1号が50億円ぐらいで、2号が120億円ぐらいだったんですけど、3号を組成開始する前にどれぐらいのサイズにすべきなのかという議論を意外と慎重に行いました。
拡大すべきなのか、縮小すべきなのかという議論も、大きければ良いという考え方をまず持っていないので、どういう方針でどういうサイズが良いのかと。
我々の価値観や美意識でどうすべきなのかを議論した結果、現状維持で2号と同等のサイズを目指そうということで組成を開始して、ほぼ目論見通り着地かなという感じですね。
石橋:
おめでとうございます。そうなるとベースの投資戦略は2号からの踏襲になってくるというイメージになるんでしょうか?
手嶋:
踏襲なんですけど、2号は我々の投資方針や実力値からすると、投資するのに結構パワーが必要なサイズだったんですね。120億円投資するのは結構大変だなという感覚です。
石橋:
トータルで2号は何社ぐらい投資したんですか?
手嶋:
2号は60社ぐらいですけど、コロナバブルの時に2号を組成したので、「追加投資をバンバンしますよ」とおっしゃっているファンドの方が多くて、実際はそんなことないじゃないですか。
「バンバンしますよ」と言っているファンドの方ほどそれはケースバイケースで、事業が進捗しなければびた一文出しませんみたいな態度になってしまうので、それは宣伝メッセージだなということが後から気づくわけですけど、少しムードに煽られていた面がありますよね。
我々も最初は100億円目指そうという感じだったんですけど、120億円いけそうだと。出資したいというリミテッドパートナー(LP)さんは幸い結構いたんですよね。いわゆるオーバーサブスクリプションという状態ですね。それを受け入れたんです。それで120億円。
それが当時の僕らの身の丈や方針からすると、少し多かったなという感覚はあったんですね。
追加投資の難しさと120億円の「身の丈」
手嶋:
我々はシードやプレシリーズAから入ることが多いですけど、そこでリードを取るというのが基本的なパターンですね。当然うまくいっている会社ほど次のラウンドも適切なバリュエーションでリードをもう1回取りたいと思うわけじゃないですか。
起業家側からすると、できたら次のラウンドはめちゃくちゃ高いバリュエーションで、別のもっと大きいファンドにリードを取ってほしいということになるわけですね。追加投資はコントロールがなかなかしにくいなという学びがありました。
2号ファンドは自分たちで空想していたよりは、投資するということに汗をかいたし、パワーが一定必要だったなという感じでした。
3号はその時より体制もかなり拡充していたので、同じサイズなんだけど自分たちの余力や学習がだいぶ変わったので、もう少し余裕を持って投資活動に向かえるんじゃないかなというのと、できるだけ大きいサイズのファンドから出資を受けたい時があるじゃないですか。
サイズがパワーになるという時も120億円ぐらいあれば、そこで比較されても特にシードやシリーズAラウンドの時にはあまりネックにならないという感じで、あとはシードで例えばシリアルアントレプレナーが思い切って起業する時も出せるサイズですし。
一方で、増やす時に200億円や250億円に頑張ってするかと、いわゆるファンドレイズという文脈だけで行くと、ある程度1号・2号ファンドで結果を出せていたので、可能性はあったと思うんですよ。
石橋:
すでに新規株式公開(IPO)事例や合併・買収(M&A)事例、ホームページだけを拝見してもめちゃめちゃありますよね。
手嶋:
はい、イグジット自体はかなり出ています。
石橋:
合計何社ぐらいイグジットされていらっしゃるんでしょうか?
手嶋:
1号は39社に投資して半分ぐらいイグジットしているかもしれないですね。2号では5社ぐらい(※2025年9月収録時点)です。
やっぱり200億円や250億円まで増やすと、パワーはあるんですけど、より無理をして、自分たちでこういう投資をしようというもの以外も触れなければいけないなと思うし、120億円と250億円となると、やっぱりリターンを出すという時に、少し感覚は変わるなというのがあったので。
そこは他のチャレンジしているファンドさんにはリスペクトしながらも、あまりそこに引っ張られないで自分たちらしいファンドサイズにしようとして現状維持かなという感じですね。
投資戦略:創業ラウンドから平均1億〜1億5000万円で10〜15%取得
石橋:
変わらずメインラウンドはプレAやアーリーになるんですかね?
手嶋:
実態は、創業ラウンドや初のベンチャーキャピタル(VC)出資ラウンドがおそらく3分の1ぐらいはあります。プレAと言われるのが3分の1ぐらい、残りが3分の1ぐらいという感じですかね。
石橋:
メディアなどで手嶋さんがアクションしているのを拝見して印象的なのは、横浜バニラ株式会社さん。あれはまさに創業投資ですよね?
そういう事例とか、これから起業するというところも3分の1ぐらいは投資もしていく?
手嶋:
そうですね。
石橋:
基本的にチケットサイズは、120億円から逆算すると何となく見えてくるような気もするんですけど、だいたい初手でいくらぐらい投資されるケースが多いでしょうか?
手嶋:
最低で3000万円ぐらいですかね。多くて5億円という感じです。
平均的は1億~1億5000万円くらい出して、10~15%ぐらいのシェアでリードインベスターをやらせていただくというのがスタンダードかもしれないですね。
石橋:
5億~10億円ぐらいのレンジが株価的には頃合いというか、分かりやすいということですね。
手嶋さんと、同じく代表パートナーの西條さんで2億円ぐらいまで投資するプログラムもありますよね?
手嶋:
そうですね。2号で投資を結構パワーをかけてやらなければいけないという時にひねり出したイベントなんですよ。
僕らのスタンダードは1億円ぐらいなんですけど、2億円ぐらいをロットで投資できるような案件を獲得しようという時に、VCがやる「即投資します」というイベントは、シードVCが「2000万円出します」みたいなのがあると思うんですけど、2億円ぐらいでやると結構インパクトがあるんじゃないかと。
意外と結果が出たので、年に1回ぐらいやろうということでやっています。
石橋:
投資先は実際いらっしゃるんですか?
手嶋:
1回やると1社出てきますね。
石橋:
すごい。
X-Gateと東京駅前オフィスが生む差別化
石橋:
他にも投資力を底上げするという意味で、先ほどのプログラムもあるし、X-Gateというアクセラレーションプログラムもその一環という感じなんですか?
手嶋:
そうですね。X-Gateは、1号ファンドを私と西條の2人だけでやっていたんですね。
2号から少しずつ人が増えてきて、今はだいぶ組織化が進んでいるんですけど、やっぱり最初は創業時からの案件を自分で獲得するというのは大変なので、投資をして創業から一緒に並走させてもらわないとキャピタリストも成長しない。
組織的に獲得しながらキャピタリストを並走して育てるという時にどうしたら良いかということで、創業支援をするアクセラレーションプログラムのX-Gateを始めたという感じです。
石橋:
なるほどですね。他に投資力というか、2号ファンドの頃ぐらいから始めた特筆すべき取り組みやプログラムはあったりするんですか?
手嶋:
xBridge-Yaesuというシェアオフィスを持っています。あれはLPに東京建物株式会社さんがいて用意していただいていて、比較的八重洲エリアでは力のあるデベロッパーさんなので、東京駅前1分ぐらいのところにオフィスを持っています。
石橋:
そうですよね。何回か実際に足を運んだこともありますけど、アクセスはめっちゃ良いですよね。
手嶋:
そうですね。あそこを無料で貸し出していたりとか。
石橋:
投資先にですか?
手嶋:
そうです。そういうシェアオフィスがあるおかげで、アクセラレーションプログラムの応募が促進されていたりしていて。というのは、シェアオフィスは六本木や渋谷方面なんですよ。
大人な起業家の人たちは「渋谷とか六本木という感じじゃなかったんですよね」「僕らはちょうど東京駅前だったので応募しました」とか言って、投資していた会社がFacebookを見るとアメリカの小売りのロボットプログラムで優勝しましたと言っていて。
株式会社MUSEという会社で、結構今注目されつつある会社なんですけど、そういうのはいきなり来てくれたりとかするので、それだけでも回収できているなという感じですよ。
弊社のアクセラレーションプログラムは、結構出来上がっている人がいきなり応募してくれるという側面は結構あるかもしれないですね。
石橋:
結果論かもしれないですけど、物理的なアクセスで同じコワーキングでも差別化が図られているという、起業家さんからするとそういう感じになるんですね。
手嶋:
そうですね。やっていることはVCは均質化してくるし、管理報酬の使い道が近づいてくるんですけど、それを複合的に見たときに少し個性が浮き立ってくるという感じなのかなとは思っています。
手嶋浩己のキャリア:博報堂からメルカリ投資まで
石橋:
改めて簡単に手嶋さんはどんな経歴で、なぜXTech Venturesを作ったのか聞いても大丈夫ですか?
手嶋:
1976年生まれでいわゆる76世代ですね。グリーホールディングス株式会社の田中さんとか、株式会社メルカリの山田さんが同年代という感じです。
その辺りの人たちは、大学生の時にインターネットに触れていましたとか、Windows 95が出てきましたとか、第一次ネットインパクト世代という感じなんですけど、私自身は全くそういうのに触れずに大学生活を過ごし、普通に株式会社博報堂に就職しました。
6年ぐらい勤めて辞めるんですけど、同僚に株式会社エニグモの創業メンバーがいて、今上場企業ですけど。
石橋:
須田さんですかね?
手嶋:
そうです。彼らが仲良かったので、ある時急に「起業するんだ」というので少し影響を受けたのと、当時堀江さんが「近鉄を買います」みたいなことを言っていたところで、それであっち側に自分もいったほうが良いなというので辞めて。
株式会社サイバーエージェントを辞めた早川さんと会って、今のユナイテッド株式会社の前身の会社を創業期に参画して、副社長として参画させてもらって。
後から出てくるんですけど、その時に社員としていたのがカバー株式会社の谷郷さん。
石橋:
そうなんですね。
手嶋:
カバーの谷郷さんとはその時からの繋がりです。そういう感じでユナイテッドを12年やっている中で、ある時にスマホのアプリで1発当てて、世界で5000万ダウンロードされるぐらいのアプリが作れたんですね。
石橋:
日本では誰も知らない人はいないやつですよね?
手嶋:
はい、CocoPPaというサービスですね。
初投資がメルカリ。3億円が数百億円に
手嶋:
そのCocoPPaを見て山田進太郎さんが連絡をくれて、「メルカリも世界で通用するアプリを作りたいんですけど、どうしたらいいですか?」と言われて。
僕はかなりサービスの作り方が詳しかったので、こうしたら良いんじゃないかというので、創業期にメルカリに投資することになって、それがVC業界の10~20年の中では最大級に当たった投資です。ビギナーズラックですよね。3億円出して数百億円になったという感じなので、それが初のベンチャー投資です。
石橋:
1社目の1号事例がメルカリ?
手嶋:
そうです。メルカリで初めてVCの知り合いができた感じですね。
松山太河さんや高宮さんとか、一流のベンチャーキャピタリストが集う場にメルカリがなっていたので、こういう仕事があるんだということとか。あとは、紹介してくれるようになったんですよね。クラシル株式会社の堀江さんとか、そういうところにあたって、こっちも向いているのかもしれないなという感覚になって。
メルカリが上場するときにユナイテッドを辞めることにして。偶然、西條も株式会社WiLを退任して、彼的には色々やっていこうと思っていると。
VC業も立ち上げようと思っていて、事業と経営の感覚が合う人のほうが良いかなと思っていて、「一緒にやりませんか?」ということになって。僕は何も考えずに辞めることだけ決めていたんですけど、それはありかもなと思ってその話に乗った感じですかね。それが2018年です。
LayerX非常勤取締役の経緯と「利益相反」の構造
石橋:
その後に、手嶋さんの事業家や起業家の側面があるからこそ、今だと株式会社LayerXさんの非常勤取締役をやっていらっしゃいますよね?
手嶋:
そうですね。そっちのほうが先に走っていたんですよね。ユナイテッドを辞めると発表した時に一番先に連絡をくれたのが、当時株式会社Gunosyの社長だった福島さんで。
今は一緒に仕事しているのでそこまでべったりという感じでもないんですけど、当時は全く仕事していなかったので、仲の良い友達という感じだったんですね。月に1回くらい飲みに行っていたんですよ。
そういう関係が2~3年続いていて、彼は12歳下ぐらいなんですけど、結構馬が合って仲良かったんですよね。真っ先に連絡をくれて「Gunosyの取締役をやってくれないか」と言われて、「いいよ」という形で、先にやったのはGunosyの取締役業なんですよね。
石橋:
そこはキャッチアップできていなかったです。Gunosyさんから始まっているんですね。
手嶋:
そうです。Gunosyから始まって、その過程でLayerXができてGunosyグループに行きました。
LayerXはマネジメント・バイアウト(MBO)をしていく流れになってくるんですけど、その流れの中でMBOをした後も一緒にやってほしいという話があり、そのままやっているのがLayerXで、体制ができるまでは正直常勤っぽくやっていましたね。
石橋:
そうなんですね。
手嶋:
ブロックチェーンからバクラクへの事業転換ぐらいまではかなりやっていたんですけど、やっぱりフルコミットではないので、徐々に組織が大きくなるにつれて少しずつ引いていったほうが良いかなという感じの中で、今は非常勤の取締役になっている感じで、いわゆる執行部分の経営に関わる会議は全部出ている感じですかね。
ファンドからは出資できないというか、契約上の手続きを踏めば投資はできるんですけど、要するにLPから許諾を得るとかすればできるんですけど、僕は先に取締役になっているという観点で、利益相反の関係なので、ファンドからは出資していないんですけど、利益相反の取締役も兼務しているという感じですね。
LayerXは最大級の「アンチポートフォリオ」
石橋:
ある意味手嶋さんからすると、LayerXは構造上できなかったが、いわゆるアンチポートフォリオっぽくもなってきているんですか?
最近、150億円のめちゃめちゃ巨大なファイナンスもされていらっしゃると思うんですけど。
手嶋:
比較的頭を切り替えて仕事をするようにしているので、そういう意味で事業と投資も並走できていたというのもあるので、あまりそういう目で見てはないんですけど、結果論としてはアンチポートフォリオになりましたね。
結果論としてはそうですけど、LayerXはやっぱり常に最大級の背伸びをしながら資金調達をしてきている会社なので、なかなかチャレンジングな資金調達を繰り返している会社ではあるという感じですよね。
石橋:
逆にLayerXさん以外の他のアンチポートフォリオは、どういうところが事例として上がってくるんですか?
手嶋:
最大はやっぱりカバー株式会社じゃないですか。
石橋:
カバーはユナイテッドさんとして投資していなかったんですか?
手嶋:
ユナイテッド時代に1~2回見逃していますし、ファンドを作ってからは明確に1回見逃していますね。谷郷さんはさっき言ったような関係からだったので。
石橋:
めちゃめちゃ早い頃からということですよね。
手嶋:
谷郷さんは多分、一時期僕のことを嫌いだったと思うんですよ。
突然インターネット業界の経験もない年下の私が副社長として入ってきたわけで、いきなり上司みたいになって、「何も分かってないじゃん」みたいな感じで。
僕からすると谷郷さんは、今思うと本物だったんだと思うんですけど、当時の僕からすると、当然普通の会社から突然そういうところに行った人なので、当時からめちゃくちゃ目線高い発言を連発していたんですね。
目線が高いと今だから言えますけど、当時からすると「何言ってんのこいつ」みたいな。僕からするとビッグマウスし続けるみたいな人だったんですよ。
石橋:
手嶋さんから見てもそういう印象だったんですね。
手嶋:
そうです。谷郷さんはその後に辞められて、起業されて、最初の起業はあまりうまくいかなかったんですけど、その頃ぐらいに途中からイベントとかで会ったんですね。
その後たまに会うようになって、僕もその後ずっと頑張って一定の結果を出したりとかしていたので、谷郷さんも認めてくれて、「あの時はどういう人なのか分からなかったけど、結構長く頑張っていますよね」みたいな感じになって。
VR卓球ゲームから始まったカバーとの接点
手嶋:
ある時にユナイテッド時代に呼ばれたのが、カバーが渋谷のシェアオフィスに入って創業したての頃に、谷郷さんと一緒にVRの卓球ゲームをしたのが最初ですね。
谷郷さんとしては多分半々だったと思うんですけど、サービス作りもやっぱりやれるので、純粋に感想を聞きたいという気持ちと、投資も始めていた時期なので、将来的な可能性として接触してきたという感じだと思うんですけど。
カバーの創業事業は、VRの卓球ゲームですよ? 僕の当時の感覚としては、「いや、はい、面白いと思います」みたいなので、できるだけ投資の話にならないように友達としてのやり取りに集中しようみたいな感じで帰っていったんです。
石橋:
それが1回目の見逃しという感じですね。
手嶋:
2回目は、ユナイテッドを辞めるということは決まっていたけど、発表されていないぐらいの時期にInfinity Ventures Summit(IVS)に行きまして、私はIVS LAUNCHPADで準優勝の経験があるんですね。ユナイテッドの新規事業のCocoPPaで実は準優勝しているんですよ。
当時の1位はフリー株式会社、3位が株式会社ココナラ、4位が株式会社マネーフォワードです。
石橋:
すごいな。
手嶋:
だからピッチをすごい練ったりしたんですよ。そういうのも谷郷さんは「どうやって準優勝したんですか?」と聞いてきて。「谷郷さんは例の卓球ゲームで出るんですか?」とか言ったら「いや、違うんですよ」と。
「実はこの美少女キャラがいて、今夜初めて17LIVEでライブ配信してみて、課金されたら出そうと思っているんですよ」とか言って。だから、VTuberを今夜始めるというタイミングですよ。それの相談を受けるという。
翌日に谷郷さんは「昨日の夜、僕が美少女キャラに扮して17LIVEに出たら、7万円ぐらい課金されたんです」みたいなプレゼンで、僕はそれを見ながら「ついに谷郷さんがとち狂ったか」みたいな。
石橋:
当時の感覚でいうと、裏側は男性で美少女キャラになっているんですよね。
手嶋:
VRのツールでライブ配信やったら課金されたっていうプレゼンをしていて、準優勝をしたんですよ。
石橋:
そうなんですね。
手嶋:
そこで投資したのがSTRIVE株式会社や千葉道場株式会社だったと思うんですけど、そこも自分ががっつけば行けたと思うんですよ。
ときのそら月商1億円で3回目の見逃し
手嶋:
3回目は明確に谷郷さんから来たんですよ。
石橋:
ちゃんと相談されたんですね。
手嶋:
ファンドを立ち上げたというのが発表されたので、「手嶋さん、見ましたよ」と言って。要するにユナイテッド時代は純粋な投資家でもないから曖昧なポジションを作れたわけですよ。今回は仕事という感じで発表しているから、「来ました」と言って。
「なんと、ときのそらちゃんが月商1億円いったんです!」と言われて、びっくりしてしまって。谷郷さんが「シリーズAラウンドの調達を待っているんですけど、ちょっと芳しくなくて」「こういうのを分かってくれる人は限られていると思うんですよ」と言われて。「そうかもしれないですね」「ちゃんと聞きます」とか言って。真剣に検討しましたね。
石橋:
月商1億ですもんね?
手嶋:
はい、それで僕は2つ過ちを犯していて。1つは相対評価をしてしまったことなんですよ。
石橋:
何かと比べたってことなんですね。
手嶋:
直前にVTuberの会社にシードで投資していたんですよ。株式会社Pictoriaという会社に出していて、それはそれでうまくいっているので良いんですけど、AITuberというのがあるんですけど、それはシードで出しているので、バリュエーションはほんと低いんですよ。
あとは、「俺はVTuberという領域に振っているわけではないよな」という自分が出てきてしまったんですよね。そんなの連発する?みたいな。それはあまり意味がない思考なんですよ。バイアスがかかっているから。
僕は常にニュートラルに見なければという学習をその時にしたわけですけど。あとは、絶対評価で見誤ったのは、「1億円はすごいけど、アッパーじゃない?」という感じで見てしまったんですよね。あまり深く考えずに。
ただそのラウンドを後から聞いたらやっぱり集まらなくて、やっぱりみんなユニコーンと言うんですけど、本当に大きくなったやつはみんなが見逃しているものなんですよね。
カバーはそんな感じで僕も断ってしまったし、他のファンドも軒並み断りましたというような状態の中で、結局STRIVEは2回連続投資して、かなりのシェアを持って上場したという感じですよね。
今思うと一番良いラウンドですよ。売上も立っているんですよ。実証されていますよね。40億は全然そこから10~20倍いけたという感じなので、単なる評論で僕の実力不足ですけど、そういう壮大なストーリーの中で見逃したアンチポートフォリオですね。
石橋:
ありがとうございます。
1億5000万円投資の翌月に1億円が消失──修羅場からの大逆転劇
石橋:
そのアンチポートフォリオから学ばれたというお話もありましたけど、実際に投資をしている先で、投資した後に逆転して、手嶋さんがその投資先との大逆転を通じて学びになっているケースもあるんですか?
手嶋:
とある会社に投資しました。結果1億5000万円を投資しているんですけど、元々1億円コミットするか5000万円を他でという感じだったんですけど、他が集まらないみたいな苦しいラウンドだったと思うんですよ。
でも、僕はその社長も良いなと思ったので投資をしました。「残りの5000万円も出すよ」「その代わり一緒に頑張っていきましょう」ということで、1億5000万円出しました。
僕らのデューデリジェンス不足と言われればそうかもしれないんですけど、その翌月に1億5000万円投資したはずのお金がもう5000万円なくなっていたんですよ。
中身を見たら結構びっくりで、予見できたかというとできた部分とできない部分が混ざっているんですけど、とにかくあまり見たことのない感じだったので。
翌月も3000〜4000万円減ったわけです。1億5000万円出資したはずが、2ヶ月後には半分ぐらいの7000万円ぐらいになっているわけですね。このまま行くと3ヶ月~4ヶ月後に資金がショートしますという。
石橋:
たしかに3000万円ぐらいのペースだと行ってしまいますね。
「社長、日本に住んでもらえますか」
手嶋:
そこでさすがに話そうということで、後ろがない時間の夜に1時間だけ、しんみりとオフラインで話したいんだと聞いたら、弊社のメンバーが青ざめて報告してきて、「その会社の社長は日本に住んでいませんでした」という報告が来たんですね。
石橋:
ギリギリ投資詐欺にはならないレベルなんじゃないかぐらいの話に聞こえてしまいますね。
手嶋:
それを知っていたら投資していないですよね。契約上の住所は日本なんですよ。だから言われない限り絶対分からないですね。一応オフラインでプレゼンは来ていたし、来ようと思えば来られるじゃないですか。それは何を伝えるべきかという問題だと思っていて。
なので、もう来られませんと。そこでスイッチが入ってしまって、来られる日を教えてくれというので、翌週末の4時ぐらいに来ていただいて、まずそこの点についてですよね。そこはさすがに不誠実なんじゃないですかと。
石橋:
住んでいる場所を言っていなかったということですね。
手嶋:
遠隔操作でやっていますみたいな。ベテランのすごい実績のある経営者とか、すごい成長している会社だったら良いんですけど、はっきり言って会社がボロボロなわけですよ。さすがに許容できないという話をして、まず日本に移住してもらうことを決断してもらいました。それにそこそこ時間がかかりました。
石橋:
起業家のご本人からしたら結構でかい意思決定ですよね。
freeeの明細を全部見てコストカット計画を立案
手嶋:
最後までやりきらないと説明責任が果たせないという感じだったので、そういうつもりで向き合っていたんですけど、それで移住してくれて、「freeeの明細とかも全部見せてくれ」と言って、全部見始めたんですよ。
こちら側でコストカットの計画を立てて、こうやったら生き残れるんじゃないかみたいなことを細かく全部洗い出して、半年~9ヶ月ぐらいは持つようにしたんですよ。その上で、「これは事業を伸ばさなければいけないですよね」と言って。その時のSaaSの売上が200万円ぐらいですね。
1億5000万円のリスクを負ってそれなりのバリュエーションで出しているわけですよ。そういう投資家ってあまりいなくないですか?
石橋:
あまりいないと思います。
手嶋:
自分で考えても気前が良い投資家の部類かなと思っています。
石橋:
せめてもうちょっと規模があって、リスクが抑えられていないと1億5000万円は入れないですよね。
手嶋:
ただ、縮小しかけている既存事業で一応キャッシュカウがあったので、「それも含めてこれぐらいだったら良いですよ」みたいな感じだったんですけど、僭越な言い方ですけど大目に見ていたので、それでそんなことが起きて。
追加調達なしで純増月次経常収益200万円を達成
手嶋:
そこからブリッジラウンドだけ1回やって、それも3000万円ぐらいかな。ある会社が理解してくれて。でも相当コンディション良くなった後ですからね。
そこからその調達だけで、純増月次経常収益(MRR)が毎月200万円になるところまで追加調達なしで来ているので、結構すごいことかなというふうに思っていますね。
石橋:
当時の売上高を毎月純増できるというのを、その以降に追加調達せずにできるようになってきているという。
手嶋:
そうです。僕らは自分たちが投資先の成長の触媒や変数になれることを是としている。ハンズオンという言葉は使わないようにしているんですけど、変数や触媒になったほうがやりがいもあるし、やる意味があるよねと思っているんですけど、確実になれたなという。
多分、私じゃなかったら今頃海外で左団扇の状態で資金ショートしていたなという感じがあるので、まだ今からですけど達成感がありました。でも良い形でシリーズAの調達はできるかなという感じだと思うので、そこは結構良い経験になりました。
新たなデューデリジェンス項目「本当はどこに住んでいるか」
手嶋:
あとは社内で言ったのが、経営株主の人に「本当はどこに住んでいるかを絶対聞け」という社内ルールが生まれましたね。
石橋:
投資委員会に追加条項ができたんですね。
手嶋:
契約書上の住所は理解しましたと。本当はどこにお住まいなんですか?というデューデリジェンス項目が新たにできました。
不思議そうな顔で見られるんですけど、「一応教えてください」と言ったら「ここに本当に住んでいます」みたいな。そういうのをやっています。
起業家へのメッセージ──パッションと行動力がある人を後押ししたい
石橋:
だいぶ突っ込んで1号・2号ファンドのお話、足元でこれからの3号ファンドの話を聞いていきましたが、手嶋さんとして、1号・2号・3号ときているわけですけれども、起業家さんに向けてこういう起業家と会いたいとか、XTech Venturesを通じてこういうことをしたいと思っているとか、ぜひメッセージをいただければと思いますが、最後にお願いしてもよろしいでしょうか?
手嶋:
これから創業しようと迷っている人の背中を押して、かつ創業時は不安だと思うんですよね。僕らは何かしら変数になることはできると思っているので、後押しと事業案自体も一緒にブラッシュアップできたりしますので、悩みながらもパッションや行動力はめちゃくちゃあるみたいな人は、ぜひ連絡いただければなと思っています。
石橋:
ありがとうございます。
ぜひ2本目・3本目の動画もお付き合いいただければと思っております。それでは次回もお会いしましょう。さようなら。
【なぜ投資した?】ライバル社との経営統合を実現|45分面談で惚れた起業家の魅力とは【XTech Ventures 手嶋 浩己 vol.02】
フードデリバリーSaaS「tacoms」──同業ライバルとの経営統合を実現した起業家の視座
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回もXTech Ventures代表パートナーの手嶋さんにご出演をいただきまして、「なんで投資したのシリーズ」と題して、色々なVCの方々に過去の投資先にどういう仮説でどんな見立てで投資をしてきたのかをお聞きしております。
先ほど1本目の動画の方で、アンチポートフォリオとしてカバーさんの名前を出していただいて、手嶋さんたちがカバーさんに投資できなかったというエピソードをお伺いしましたけど、逆になんでこの投資先にどのような仮説でそのタイミングで数億円単位で投資できたのかみたいな話をお伺いしていきたいと思います。
早速1社、分かりやすいところから投資先を取り上げていただきたいんですが、どこからいきましょうか?
手嶋:
去年に少し話題になった株式会社tacoms。
石橋:
宮本さんですね。
手嶋:
基本的には外食チェーン向けに色々なSaaSを作っている会社なんですけど、コアとなっている事業はフードデリバリーを一元化するソリューションを提供していて。
Uber Eatsだけではなくて色々なフードデリバリーと契約する店舗が多いと思うんですけど、色々なツールを使いこなさなければいけないのは大変なので、それをバンドル化してこれだけ使えば良いという、バンドル化ソリューションみたいなCamelというサービスを提供しているのがtacomsですね。
石橋:
今、手嶋さんが去年話題になったというふうに触れていただきまして、僕もプレスリリースで何となく拝見したんですけれども。オフレコ対談を手嶋さんたちのPodcastでも去年に配信されていると思いますけど、他のスタートアップと統合したということなんですか?
手嶋:
株式会社Mobile Order Labという、同業で一番のライバルだった会社と経営統合しました。
石橋:
経営統合先も、他に株主がいるようなスタートアップだったんですか?
手嶋:
スタートアップで、LAUNCHPADに出ているような会社なんですけど、ただVCから調達していなかったですね。
石橋:
絶妙な感じですね。
消耗戦を止めた経営統合──モノカブでの経験が活きた
手嶋:
個人投資家がいたという感じの状態で、ライバルが統合するというケースというのは、逆の立場で結構手がけたことがあって。
株式会社モノカブという会社が過去にスニーカーダンク(株式会社SODA)と統合しているんですけど、あれはモノカブ側が投資されて、統合される側だったんですけど。
あの時もモノカブは株式構成が複雑でたくさん散らばっているような感じだったので、リードインベスターが不在みたいな感じだったんですけど、かなり入って積極的に動いたんですよね。これはもう統合したほうが良いんじゃないですかと。
要するに消耗戦になっていたんですよね。資金調達をしてはそこに費やしてお互い赤字を出していくという競争になっていたから、同業同士で消耗しているよりは統合したほうが良いと。
基本的にスニーカーダンクが海外からの資金も呼び込めていたので、統合される側になってしまうけど、やったほうが良いんじゃないかというので、当時スニーカーダンクの投資家だった韓国の投資会社と一緒に話したりとかもしたんですよね。
なので、その辺りの経験は活きたという感じですね。同業のライバル同士が統合することがどういうことかというのはもう経験済みであったという感じですよね。
45分の面談で見抜いた「視座の高さ」と「その場での学習能力」
石橋:
それが、今度は受け手としてということですね。今回の経営統合は手嶋さんたちが仕掛けたと言うのは言い過ぎなんですか?
手嶋:
それは言い過ぎですね。
tacomsの宮本さんはすごくて、僕が宮本さんになぜ投資したかというと、株式会社Pittaという投資先があって、カジュアル面談を募集するサービスなんですけど、そこで投資先を募集しますというのをコロナの時期に出したんですよね。外出やイベントがない時期だったので、起業家の人が来てくれるかなと思って。
そこで来てくれたのが宮本さんです。オンラインで45分くらい面談したら、若手起業家の中で、話していることや返ってくることが全然違うなという感じだったんですよ。視座の高さと言うんですかね。その場で学習していく感じ。
よくあるのが、頑なに自分の主張をしてこられるパターンがあるんですよ。要するにその場で学習が起きていないんですよ。ただ宮本さんの場合は「そういうことなんですね」「だったらこうします」みたいな感じだったんですよ。
それがすごいなという感じで、馬が合いそうだなと思ったんですね。速攻翌週ぐらいにオフィスに行って、いわゆるシリーズAのリードを取った感じでしたね。
石橋:
当時は何年ぐらいの時ですか?
手嶋:
2021年で、いわゆるコロナバブル真っ只中です。
石橋:
モバイルオーダー勃興期みたいな感じなんですかね?
手嶋:
勃興期という感じですね。
常に経営統合を考え続けた起業家──4年越しで実現した「大技」
手嶋:
そこから付き合いが長いんですけど、宮本さんが経営統合を仕掛けたのは初めてじゃないんですよ。常にそういうのをやっていて、実現したのが今回というだけで、常に色々なことを考えているんですよね。
この会社と統合したらどうかとか、むしろこの会社と合併されたらどうなんだとか。とにかくでかい事業、でかい会社を作ることにコミットしているので、じわじわオーガニックへ伸ばすということ以外のことを、ワンチャンを常に考えているんですよね。
2021年に投資して、4年経ってようやく初めて実現した大きい技という感じで、いきなりやってもできないということですよね。
常にそういうことを考えている人だから、競合の社長と雑談する時に「ワンチャンあるんじゃない?」という時に突っ込んだら意外といけそうだからという感じで実現に向かって、その辺りから相談を受けて、他の株主の人に聞いても「どうせ実現しないでしょ」「同業の統合は難しいよ」みたいな感じですね。
石橋:
サプライズではなかったんですね。
手嶋:
その動き自体はサプライズだったけど、実現しないだろうなと最初は思っていました。
統合される側もプライドがあるじゃないですか。ただ、Mobile Order Labの社長の肥田さんという方がクレバーで、今のマーケットや自社を取り巻く環境を客観視できていましたね。
自分の会社や、どっちが主導権かにこだわってしまうとやっぱり成立しないんですけど、それはモノカブの濱田さんも偉かったんですよ。そういうことにこだわるというよりは、消耗合戦はやめたほうが良いという中で、自我を少し薄めた上で判断できた。
あとは宮本さんのビジョンが大きくてシェアが高いので、肥田さんも納得できたというのがあったと思うんですよね。最初のオンラインのミーティングをしたときの印象はやっぱり間違っていなかったという感じですよね。そうじゃないと若い経営者も統合できないですよね。
肥田さんがベテランの経営者なので、なかなか一緒にやっていこうと思わないですよね。自分が副社長になって支えていこうという感じでやってくれているので。
石橋:
僕は経営統合のリリースを見て、宮本さんと最後に連絡していたFacebookのメッセンジャーを遡ったら、一番最初のラウンドの時に株価交渉して株価が折り合わなくて投資できていなかったので、大きい偉大な会社になったら、いつかアンチポートフォリオとして「あんな時にあんな株価の差分でごちゃごちゃ言わなければ良かったのに」というのはあるかもしれないですね。
昨年でいうと象徴的な出来事だったのかなと思っていたので、お伺いできてよかったです。
手嶋:
あのようなことは増えていくべきだと思っていますね。
石橋:
それは間違いないですよね。
生成AI×アニメ制作「Creatorʼs X」──創業と同時に投資、複数社のM&Aを実現
石橋:
2社目の投資先についてお伺いしていきたいんですけど、2社目はどんな会社になるでしょうか?
手嶋:
株式会社Creatorʼs Xという会社です。
石橋:
いつ頃投資されたんですか?
手嶋:
前回の配信回でもお伝えした、我々のアクセラレーションプログラム。X-Gateというプログラムをやっていまして、基本的には3ヶ月~半年ぐらいのプログラムで、毎回ちょっとずつ変えているんですけど、2023年の夏の回に参加してくれたのがCreatorʼs Xですね。
U-NEXT出身の優秀な2人に「起業を勧めた」理由
石橋:
今はどんな事業をされていて、X-Gateのアクセラレーションプログラムに参加した時からずっとお話いただけるような事業をやっていたという感じなんですか?
手嶋:
そこは少し変遷がありまして、参加した時には株式会社U-NEXT HOLDINGSのCEO室に勤めている2人でした。
石橋:
優秀そうですね。
手嶋:
めちゃくちゃ優秀です。アニメ業界で生成AIで役立つようなツールを作っているような状態で、起業しようか迷っているという感じだったんですよね。
色々話してみて、これは成功できる人たちだなと思ったので、起業を勧めたというのが1つと。とはいえ、アニメ制作のツールは腐るほど出てくるわけですよ。やっぱりアニメ業界の方の抵抗感も想像はできたので、これを導入するのは相当大変だなというのは思いました。
「自分たちが制作会社をやるしかない」──覚悟を問うた投資判断
手嶋:
あとはアニメ制作会社は何社あるのか、仮にSaaSビジネスだとした時に、どれぐらいの規模になるのかを考えて議論した結果、起業はしようと思うということで、提案したのは自分たちが制作会社で作るしかない。そこで使うしかない。
自分たちだったら使えるし、確実に価値が出せるのであればやったほうが良いと。ただ、「俺自身はやりたくない事業だよ」と。というのは、アニメ制作会社の下請け構造をよく分かっているので。最近は下請法がちゃんと遵守されているので、昔ほどじゃないらしいんですけど、制作現場は相当大変な事業だと思うんですよね。
そういうのをマネージするというのは相当大変だから、やりたくないというか、自分には不向きであると。でもビジネスチャンスとしてはあると思うから、そこに覚悟を決められるんだったらやったほうが良いと。そこは言いましたね。「あまり気軽にやらないほうが良いよ」と。
その中で制作事業をやりながら、自分たちで少しずつアニメ業界に普及していくと。そういう生産性が上がるようなソリューションをやっていくのは良いんじゃないと言って。あとは、M&Aもあり得ると当初から話して、創業でほぼ弊社が全額出したんですが、一部寺田倉庫株式会社さんがサポートしてくれて、ありがたいですね。
創業から1年半で3社M&A──グループ従業員100名規模のアニメスタジオへ
石橋:
2024年に資金調達を1億1000万円、まさにXTech Venturesさんと寺田倉庫さんからというところを拝見したと同時に、M&Aをしたという株式会社K&Kデザインさんはらんま1/2を手掛けていらっしゃったりとか、すごい歴史のあるところなんだなと思ったんですけど。M&Aは決まる前からですか?
手嶋:
全然決まっていなかったです。投資したのは2024年9月ぐらいで、それから3ヶ月で決めてきたんですよね。だからすごい実行力ですね。今はもう複数社を傘下に収めていて、グループで従業員数約100名いる会社になっています。
なので、日本有数のアニメスタジオになる可能性が出てきているのと、生成AI×アニメはある種キーワードなので、たくさんのスタートアップが生まれていると思うんですけど。
自分たちで作ってTikTokに出してみましたというのは否定しないんですけど、そういう中から当たる会社も出てくるかもしれないんですけど、世界観が全然違うじゃないですか。
彼らは本丸の制作で「このプロジェクトにも入れてんの?」というのがやっぱりあるんですよ。M&Aさせてもらった会社にすごい会社が結構いるので。その現場に使われていて革命的なことらしくて。
やっぱりアニメ業界と相性が良いようで悪いので、心理的に抵抗がやっぱりあるんですよね。自分の仕事が奪われるという可能性があるので、その中でコンセンサスを得ながら使っていくという。ただ、アニメ業界的には、今受注しているものが世の中に出てくるのは相当先なんですよ。
石橋:
起業家の方のピッチで、2〜3年がかりのプロジェクトみたいな話を聞いたことはあります。
手嶋:
なので、かなり先進的なプロジェクトがアニメーターの第一線の人たちを作れているので、僕は結構すごい会社になるんじゃないかと思っていますね。
創業投資の決め手は「優秀さ」と「土地勘」
石橋:
逆にM&Aが決まる前のタイミングで創業投資されたとなると、手嶋さんとしては何が決め手だったんですか?
手嶋:
まず話していて明らかに優秀でしたよ。あとはU-NEXT HOLDINGSの人たちなので、土地勘もありましたね。いわゆる何も分かっていないから語れることがあるじゃないですか。特に利権のものはそうですよね。「そうはいかないよ」「業界に1回入ってみな」というのはあるじゃないですか。
そういうのを分かった上でこうやれるんじゃないかというのがあったので、アップサイドは正直分からなかったんですけど、何も生まれないということにはならないだろうなと。創業当初は登記と同時に投資しているものなので、そういう感じの見立てでしたね。あとは、当然マーケットチャンスは絶対あるわけじゃないですか。
アクセラレーションプログラムは各社やってはいるけど苦戦している印象だと思うんですね。弊社はCreatorʼs X級の会社が何社か出てきているので、かなり成果が出ているアクセラレーションプログラムかなと思っています。
石橋:
1本目のMUSEさんもそうですよね。
手嶋:
MUSEさんもそうですね。
石橋:
あれはどんな頻度でやっているんですか?
手嶋:
年に2回ですね。
石橋:
だいたいスケジュールも決まっていらっしゃいますか?
手嶋:
だいたい春~夏、秋~冬みたいな形です。
石橋:
この動画を見ていただいている起業家さんの立場で言うと……。
手嶋:
春の募集を待っていただきたいですね。
石橋:
了解です。ぜひチェックしていただいて、春時期になったら出てくるかと思うので、手嶋さんのXをフォローしておけば大丈夫ですかね?
手嶋:
そうですね。
石橋:
了解です。
新決済サービス「Jamm」──48歳でVCキャリアを始めた藤本氏の初投資案件
石橋:
2社目がまさにCreatorʼs XさんでX-Gate出身の投資先だったわけですけど、3社目の投資先の例もぜひ挙げていただければと思いますが、どこにしましょう?
手嶋:
3号ファンドの投資先でして。
石橋:
直近ですね。
手嶋:
はい、直近で株式会社Jammという会社がありまして。
何のために取り上げたかというと、弊社の藤本という、経歴だけ見るとエリートで、スタンフォード大学MBA取得、プライベートエクイティ(PE)ファンドのカーライル・グループに参画、その後にストリートアカデミー株式会社を起業して、10年ぐらい四苦八苦してイグジットして、VCとして働きたいという相談を受けて、受け入れて入っていただいたのが2025年3月で、彼の初投資案件だったんですよ。
Pittaがハブに──カジュアル面談から始まった関係
石橋:
藤本さんは、元々ストリートアカデミー時代から手嶋さんとお知り合いですか?
手嶋:
そこまで深くはなくて、実は先ほど言ったPittaにカジュアル面談の募集をたまに出しているんですけど。
石橋:
Pittaがハブになっていますね。中村さんのところですよね?
手嶋:
そうです。Pittaに「何でも雑談します」みたいなのを1回出したことがあって。
そこに藤本が応募してきて、ストリートアカデミーのイグジットを思案していると。困ってもいるという流れの中で、利害関係がないVCに話を聞きたいみたいな。M&Aを結構やっている印象もあったので雑談したというのが最初ですかね。
石橋:
結果イグジットされることになり、VCをやりたいと連絡が来たんですね。
手嶋:
「VCをやりたいんですけど、余地はありますか?」ということだったので、「やってみましょうか」ということで、48歳でVCを開始しました。なかなかPEファンドを起業してというような、起業家の人は正直VCが向いている人と向いていない人がいると思っていて。
起業経験があるからVCができるということでもないと思っているんですけど、藤本に関してはPEファンドの投資家の経験もあったので、それは大丈夫かなと思って受け入れた感じですね。
AtoA決済という新しい波──「現金で買いたい」若者たち
石橋:
藤本さんのご経歴だけ聞くと、Jammさんの事業はストリートアカデミーさん的なセグメントの事業なんですか?
手嶋:
それは少しあって、ストリートアカデミーでのインサイトをかなり熱弁していましたね。ストリートアカデミーということ自体はオンラインでサービスECをやるみたいなサイトなので、決済が紐付いてくるという形で、Jammというのは新しい決済を提供するAtoAという、日本ではあまり普及していないサービスをコンシューマー向けに展開している会社なんですね。
基本的には銀行振り込みを仕組み化する形になっていまして、若い人たちを中心に、自分の信用で物を買いたくない、ちゃんと現金で物を買いたいということですね。
要するにクレジットカードは将来にある自分の信用を消費に変えてしまう行為じゃないですか。自分が払えるという信用をもとに買っているということに不安な人たちは結構いますと。
手元にある現金だけが確実なもので、将来の自分の信用は当てにならないと思っているわけですよね。なのでクレカを使いたくないという人がかなり増えてきているわけですね。
そういう人はどういうことを起こすかというと、例えばプリペイドのチャージのカードを使ったりとか。
石橋:
まさにバンドルカードがそうですね。
手嶋:
そうですね。バンドルカードが捉えたのはそういう波ですね。
あとは未だにコンビニ振り込みってめちゃくちゃ多いわけですよ。コンビニに行って振り込むのは面倒くさいじゃないですか。
石橋:
絶対やらないですね。
手嶋:
でもめちゃくちゃ使われているわけですよ。ストリートアカデミーの経験でいくと、銀行振り込みしたいというニーズもかなりあると。銀行振り込みでやり取りするのは結構めんどくさいらしいですね。
石橋:
どっちもめんどくさいんですね。
手嶋:
めんどくさいです。ただユーザーからすると、銀行引き落としで、かつポイントビジネスにはならないので、払った瞬間に割引されているというサービスなんですね。要するにポイントはつかないけど安く買えますと。
藤本氏の熱弁が覆した投資判断──「やんわり断った」のに
手嶋:
比較的海外では普及している事例がいくつかあって、かなり難しい領域にチャレンジしようとしているマッキンゼー出身の社長がいて。私と西條だけだと、もしかしたら見逃していたか、お断りしていた感じがあるんですね。
そこは難しさもよく分かっているし、フィンテックということに対して、比較的慎重にやっているというメンバーでもあるんですね。
ただ、藤本が相当熱弁して「1回ちゃんと考えません?」と言って、やんわり断ったりしているのに何回も持ってきたので、たしかにこういうアングルだったらというのと、社長も連れてきていただいて、優秀な方だったので、やってみようかということで。
ハイリスク・ハイリターンな投資だとは思うんですけど、大きくなったらすごい大きくなるビジネスなので。藤本が満を持して48歳になって、ちょこちょこバントしていてもしょうがないので、取れるリスクなのでやれば良いんじゃないですかということでやった投資ですね。
「誰と最初に面談するか」が投資の成否を分ける
石橋:
その話を聞いてしまうと、やっぱり誰と1・2回目の面談をするのかは重要なんですね。
手嶋:
重要だと思いますよ。私や西條に来れば良いということでもなくて、やっぱり人によって過大評価するポイントと過小評価するところは結構ありますよね。難しいですけど、偉い人に行けば良いという感じではないですよね。
藤本がベンチャーキャピタリストとしてハングリーなのは間違いないです。実績を積まなければいけないんですよ。
石橋:
今は良い新規投資先を探しているということですね。
Jammの起業家さんはどんな人がやっているんですか?
手嶋:
帰国子女みたいな、アメリカ人みたいな方ですね。
日本のマッキンゼーに就職して、株式会社estieに一瞬いました。
石橋:
不動産スタートアップですか?
手嶋:
不動産スタートアップで、外目ではうまくいっている。僕は全く分からないのでそういう言い方になっているんですけど、資金調達も含めてうまくいかれているのかなという会社さんに勤めていて、ビジネスデベロップメントをやられていて、それで起業という感じですね。
石橋:
ご年齢は若いからご自身も知っていたという感じなんですかね?
手嶋:
どちらかというとアメリカ人みたいな人なので、海外のトレンドを追っている感じだと思います。
石橋:
そこから日本でこれから来るトレンドを捉えてという感じですね。
手嶋:
タイムマシン的な発想はあるんじゃないかな。エンジニアも外国籍の人が多いですね。
「商売っ気」がある起業家は直接DMを
石橋:
藤本さんのお話を最後にいただきましたけど、「俺を指したいならこれ系を探しているから来てくれ」みたいなテーマでもカテゴリーでもビジネスでも良いんですけど、手嶋さんを指すならどういう系の人は「俺に来い」という感じですか?
手嶋:
比較的オールマイティーに対応できるほうだと思いますけど、商売っ気があるほうが僕は刺さるかもしれないですね。ジャンルとかではなくて、商売っ気がありますという感じの人は来てもらえればなというふうに思います。
石橋:
了解です。ぜひ「我こそは商売人だ!」という方は、かなり積極的に使われていると思うので、手嶋さんのXに。DMでも良いんですか?
手嶋:
大丈夫ですね。
石橋:
DMでも良いそうなので、商売人っぽくないなという方はぜひ問い合わせフォームとか、XTech Venturesのキャピタリストの方は結構SNSをやられている認識なので、そちらのほうからコンタクトを取られるのもありなんじゃないかなと思っております。
改めて、第2弾もご出演ありがとうございます。
手嶋:
ありがとうございました。
石橋:
それでは次回もお会いしましょう。さようなら。
【無理ならやるな】ポッドキャスト歴4年のVCが語る起業家・投資家の発信適性とは【XTech Ventures 手嶋 浩己 vol.03】
ベンチャーキャピタルが埋もれないために始めたPodcast
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回もXTech Ventures代表パートナーの手嶋さんにご出演をいただきまして、テーマトークをしていきたいと思っております。
今回は、「起業家こそビジネスインフルエンサーであれ」ということで、私たち自身もニッチなビジネスYouTubeをやっているんですけれども、手嶋さんもニッチなスタートアップ業界で、スタートアップオフレコ対談というPodcastをされていますよね。
Podcastの人気ランキングを見ても常に上位にいらっしゃいますが、始められてどのくらい経つんでしょうか?
手嶋:
丸4年くらいですね。
石橋:
そんなにやっているんですね。
なんでそれをやっているのかとか、一番大事なのはビジネス的な商談がほしいとか、認知度がほしいとか、自分達がSNSをもっと活用するべきなのかとか、ビジネスインフルエンサー力を付けるべきなのかというお話をしていただければと思います。
手嶋さんたちはなぜPodcastを4年前に始めたんですか?
手嶋:
根本的にはVCはやっていることがほぼ同じなんですよ。独自性を出してやろうと思っても同じことをやっている。イベントをやろうとか、オフィスを持とうという流れの中で、何もやらないと単純に埋もれそうだなというのと、VCもメディアパワーをある程度持ったほうが良いなという直感がありました。
社内で年2回の社内合宿をやっていまして、その時にテーマに上がって、あまり深く考えずに行動したほうが良いので始めようみたいになって。
その時に見ていたのは、株式会社Coral Capitalがテキストで500 Startups Japanからずっとやっていたので、彼らはすごい偉いなと思っていたんですよね。情報発信自体が役に立っているし、それで彼らがのし上がってきたという感じもあったので。
何が偉いかというと、継続している。逆に継続していないケースをかなり見てきたわけですよ。
例えばCoral Capitalっぽいことを始めたけど、3回で終わったみたいな。僕はかなり見ているので、とにかく継続できることを決めました。
継続できる媒体を選ぶことが最重要
手嶋:
テキストはやるとしたらCoral Capitalを上回る、もしくは全く違うことをやらなければと当時は思っていたので、劣化版を作ってもしょうがないという感覚があったので、ではYouTubeかというのをその時は考えたんですけど、大変じゃないですか。
石橋:
大変です。
手嶋:
セット作ってとか、先ほども髪のセットをやっていましたけど、VC業の片手間でやるということでいくと、もう少しカジュアルにできることが良いなというのが当時の感覚で、結構喋るのは自信があったんですね。
元々博報堂の時から消費者インタビューが得意だったんですよ。本音を引き出すこととか、グループインタビューを仕切るみたいな。
その手前でいくと、大学生の時に学生プロレスをやっていて、プロレスの実況がめっちゃ上手かったんですよ。だいたいみんな上手くなるんですけど、プロレスの実況は結構大変なわけですよ。それで自信があったので、Podcastを始めようと。
2021年に調べた時にはPodcastで強いのがそんなになかったんですよ。今もやっていて尊敬していたのが、「前田ヒロ Startup Podcast」というのがあって、前田ヒロさんが結構ずっとやっていたんですけど、目につくのはそれぐらいでした。
とにかく再生されなくてもめげずに続けようと。スタートアップ投資TVも継続が力なりのところがあるわけじゃないですか。
石橋:
間違いないです。
手嶋:
苦労せずに続けられる得意なことをメディアの分野に選ぼうということで、Podcastを開始したらよく聞かれるようになりましたよね。なので、そこで波に乗れたかなというのはありましたね。
LP投資家とのコミュニケーションにも効果
石橋:
VCという事業体としての目線で構わないんですけど、実際メディアを始めてみて、ビジネス面でもポジティブだったからこそ丸4年間継続できたんですか?
手嶋:
そうですね。苦労対効果はあっていますよね。めちゃくちゃ省エネで運用しているので、そういう意味だと見合っているぐらいの効果は得ているという感じで。
例えばLPとのコミュニケーションですね。既存のLPもやっぱり結構聞いてくれる。色々な意味で聞きますよね。ちゃんと仕事しているかなというのも気になっていると思いますし、そういうのが日常的に、こういう人たちとこういうやり取りをしているんだというのが分かるじゃないですか。
新しいLP開拓と言っても「聞いていますよ」というのも実はあるので、そういう効果も一定あるかなということ。
石橋:
ファンが付いてきているんですね。
手嶋:
周りの起業家が「Podcastを聞きました」と連絡をくれることもありますね。1回だけ若手起業家予備軍みたいな人から出待ちを受けたことがあります。「手嶋さんですよね?」「いつも聞いています」「僕も起業したくて」と言われて。
石橋:
オフィスの前とかですか?
手嶋:
そうです。「連絡ください」とか、ちょっと戸惑ってしまって、今思うと30分くらい話を聞いてあげても良かったかなと思っていて、ちょっと急いでいたのもあったので、慣れていなくて戸惑ってしまいました。
あと潜在的に起業家面談で「初めましてですよね?」と言うと「実は聞いているんです」と。「聞いているんです」というのはプラスかマイナスかで言うと確実にプラスだとは思うので、そんなにめちゃくちゃすごい効果を求めているわけでもない。そんなに負荷を掛けていないので、十分見合っているのかなという感じですかね。
石橋:
ちなみにLPさんも見ていますとおっしゃっていましたけど、配信音声を送っているんですか?
手嶋:
送っていますね。月に1回レターを送っているんですよ。LPさんに活動報告をメールで送っていて、私と西條とメンバーの誰かのコメント付きで、毎月コメントを考えるのが大変なんですけど、その中に貼り付けていますね。
石橋:
なおさら聞いている人は増えているという感じなんですね。
起業家への3つのアドバイス──労力・リスク・キャラ
石橋:
改めて、XTech VenturesさんがなんでPodcastを始めて継続しているのかがだいぶ理解はできたんですけれども。
4年間続けている手嶋さんだからこそ思う、例えば投資先から同じような相談というか、徐々に類似競合も出てきている中で、REAL VALUEとか令和の虎とかに出て、もっとPRしてパブリシティを増やして、採用とか、お客さんのリードを増やしたほうが良いと思うんだけれども、実際にそれをやっている手嶋さんからすると「どうなんですか?」みたいな相談をされた場合にですね。
手嶋さんはそういった発信をすることについて、どうアドバイスされるんですか?
手嶋:
まず、そういう影響力を持ったほうが良いのか、持たないほうが良いのかでは、確実に持ったほうが良いですよね。ただ、苦労対効果の世界だと思っていて、労力がめちゃくちゃかかるというのと、リスクもあるというのは当然思うわけですよ。
悪意がないにしろスタートアップは色々なことが起きますと。起きたときの反響が大きくなってしまうのも含めてリスクですよね。そこに至るまでの過程の大変さを無視すれば、持ったほうが良いか持たないほうが良いかでは持ったほうが良いと。
ただ、やっぱりその人のキャラがありますね。キャラとやっているビジネスのドメイン次第で、その労力に見合うかどうかをよく考えればということですね。
石橋:
例えばどういうキャラで、どういうカテゴリーだったら良いという感じなんですか?
手嶋:
まずは嫌々やらないということですよね。発信が苦痛だったら、絶対やらないほうが良い。
石橋:
先ほども手嶋さんが言っていましたよね。自分にフィットしているやつで選んだと。
手嶋:
続けるのが苦痛だったら他のことを頑張ったほうが良いよと。影響力は持たなくても別に事業を成長させることはできるんですよ。持ったほうが良いけど、持たなくても全然大丈夫。
石橋:
マストでは絶対ないですね。
C向け事業ほどYouTubeの効果は大きい
手嶋:
なので苦痛だったら辞めたほうが良いということと、あとはC向けビジネスのほうがやる意味はより大きいですよね。
石橋:
BじゃなくてCなんですね。
手嶋:
Cのほうが、特にYouTubeコミュニケーションでいくと大きいかなという気がしますよね。Podcastぐらいであれば全然リスクも苦労もそんなにないし、やれば良いというのはありますけど、聞かれるのは大変というだけですね。
採用効果はあるんじゃないですか。特にPodcastでいくと、受けに来た人に聞いてもらう意味があると思います。こういう会社なんだなというのは伝わりやすくなる。
石橋:
たしかにファンになってもらうとか、内側を知ってもらうにはすごく良いということなんですね。
手嶋:
内定承諾が出やすくなるとか、それぐらいの効果を見込んでPodcastをやり続ける。それぐらいの労力でというのはあると思いますけど、もっと本格的にYouTubeでやりたい場合は、C向けビジネスじゃないと見合わないんじゃないですか。
あとは、YouTubeでやるならかなり振り切ったほうが良いと思っているので、一番上手くやっているのは株式会社yutoriじゃないですか。
石橋:
そうですね。yutoriの社長はめっちゃやっている。
手嶋:
自然体でやり続けるのは苦労しないし、それが業績にも株価にも反映している感じがするので。
石橋:
たしかにyutoriさんのインベスター・リレーションズ(IR)でYouTubeのことがたくさんスライドに出てきますよね。
手嶋:
あれはかなり効果があると思いますし、それは彼のキャラもあるし、やっている商売にしても合っていると思うんですよね。
ニッチ市場ならPodcastで十分
石橋:
株式会社RENDEZ-VOUSさんはPodcastと相性が良かったりするんですかね?
手嶋:
そうですね。RENDEZ-VOUSはかなりマニアックなカーコミュニティに対してやっているので、Podcastは頑張っていて、あまり不特定多数に聞かれなくても良いというのでやっているので、彼らは少数の本当に車好きの人たちを相手にしているので良いかもしれないですね。
石橋:
高級車の分散保有プラットフォームみたいなサービスだからこそ、コアなファンを捕まえるためにコンテンツを自分たちで出していくというのが適切なんですかね。
手嶋:
YouTubeじゃなくても良いという感じですね。
世界観に飲み込まれない起業家なら出演OK
手嶋:
あとは1社、株式会社Yondemyという会社がREAL VALUEに出ました。
石橋:
どんな会社なんですか?
手嶋:
子供たちが読書力をつけるための、本を読む促進ツールのヨンデミー。月額課金の新しい習い事としてラインナップしていこうみたいな感じの会社で、かなり哲学や世界観がある事業と経営者なんですよね。僕はREAL VALUEに出るというのは後から知ったんですけど、Yondemyだったら大丈夫かなと思って。
別に出演も、目的が明確だったら全然良いと思っているんですよ。VCによってもしかしたら考え方は違うのかもしれないですけど、良いと思っていて。
基本的には彼はC向けビジネスで、無料で宣伝できる機会があるので出たほうが良いんじゃないかという考え方ですね。ただ、世界観に飲み込まれてしまいそうな人は出ないほうが良いかなと思っていて。
石橋:
飲み込まれるというのは、メディア側の世界観にということですよね?
手嶋:
そうですね。やっぱり自分の世界観を強く持っていて、逆にうまく活用してやるぐらいのキャラの場合は、やっぱり出演者を見ても、世界観やパワーがない起業家や経営者の場合は飲み込まれてしまうと思うんですよ。
石橋:
強い人がいっぱいご出演されていらっしゃいますしね。
手嶋:
でも笹沼さんが出ていて、やっぱり全然飲み込まれていなかったし、自分の姿勢を崩さなかったし、結果、事業の成果にも少し繋がっているので、あのような場に出てくるのは目的さえあれば良いんじゃないかなと思います。ただ人によっては向いていないですよ。
石橋:
その判断は難しいですね。
手嶋:
晒し者にされて終わってしまうみたいな、番組側に飲み込まれるみたいな。それはREAL VALUEだけじゃなくて、テレビ番組の出演とかと同じだと思うんですよね。出れば良いというものでもない。
石橋:
妙な切り取られ方をしたりしていますよね。
yutoriに学ぶ──個人投資家を掴む努力
手嶋:
なので人によるかなという感じですけど、やっぱり一番すごいなと思うのはyutoriですよね。
最近、東京証券取引所からいわゆる東証改革のグロース市場の「100億円の壁」問題のレポートが出た時に、いくつかQ&Aが出ているわけですよね。
「100億になるまで全然機関投資家が寄ってくれません」みたいなので、雑に言うと東証が「そんなの当たり前ですよ」みたいなのが書いてあって、「個人投資家を掴む努力しなさいよ」みたいなことが書いてあって、ごもっともだなと思って。
個人投資家だって色々見ているし、「投資しますよ」と書いてあるんですよ。それを一番うまくやっているのはyutoriじゃないですかね。株価もついてきているし、ファンがついてきている感じですよね。あれは片石さんが全然嫌々でやっていないと思うんですよね。
石橋:
すごいナチュラルにやっていらっしゃいますし、弊社のYouTubeでも1回出ていただいて、僕も視聴者として片石さんがいろんな番組に出ていたのを拝見したりはしていますけど、実際にお会いした時の雰囲気も全然変わらないですし、本当にナチュラルにやっていらっしゃるので、手嶋さんの言う通りな気がしますね。
媒体は起業家の特性に合わせて選ぶべき
石橋:
総論として、手嶋さんとしては「影響力はつけたほうが良い」という感じなんですか?
手嶋:
つけたほうが良い。
例えばLayerXの福島さんとかは、彼のキャラでいくと全然noteのほうが良いわけですよ。やっぱり書くことに凄みがあるので、今どういう状況なのか、今後はどういう方針なのかをLayerXの取締役会や経営会議で議論しているじゃないですか。
議論している時は少しふんわりとしている。会話はふんわりするじゃないですか。でもnoteは彼の思考が凝縮されるから、「あの時言っていたことはこういうことだったのか」とか、一緒に仕事していても気づきがあるわけですね。だから彼の場合はnoteのほうが全然良いですね。
石橋:
起業家さんの特性や事業に応じて、適切な媒体を選んだ上で、無理なく安定的に続けていくことが大事ということですね。
手嶋:
発信が苦痛ならやらなくて良いと思います。
石橋:
そうですね。発信しないと成功できないわけでは絶対ないですもんね。
手嶋:
ないです。単なる手段なので。
石橋:
ありがとうございます。
ぜひ自分たちでメディアの立ち上げを検討されている方だとか、最近ビジネスコンテンツを発信するメディアの場が増えてきているかと思いますので、一段考えてみていただいた上でそういったところに着手していただくのが良いのかなと思っております。
それでは手嶋さん、第3弾にわたりましてありがとうございます。
手嶋:
ありがとうございました。
石橋:
それでは次回もお会いしましょう。さよなら。
