プロの「スキル」をタダで使い倒せ! リードを取らない“フォロー特化型VC”の独自投資戦略【クレストスキルパートナーズ 南 章行 vol.01】
◯南 章行 株式会社クレストスキルパートナーズ 代表取締役
X(Twitter)▶︎https://x.com/ak_oxford
公式HP▶︎https://cspfund.jp/
慶応義塾大学卒、英国オックスフォード大学経営大学院修了。
三井住友銀行でのアナリスト業務を経て、2004年より企業買収ファンドのパイオニアであるアドバンテッジパートナーズにて企業買収を担当、5件の投資・経営に関わる。
MBA修了後、複数のNPO法人の立ち上げを経て、2012年1月、自ら代表として株式会社ウェルセルフ(現株式会社ココナラ)を設立。
2022年1月より株式会社ココナラスキルパートナーズ(現株式会社クレストスキルパートナーズ)代表取締役(現任)。
住友銀行からPEファンド、そしてココナラ創業へ
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回から株式会社クレストスキルパートナーズの代表パートナーの南さんにご出演いただきますので、よろしくお願いいたします。
南:
よろしくお願いします。
石橋:
前回も約3~4年前ですかね。
南:
そうですね。ファンドの立ち上げ直後に呼んでいただいて、まだ何も投資していない時期に「これからこんな感じでやっていきます」というのを話させていただいたのが4年近く前だと思いますね。
石橋:
そうですね。前回はどういう会社に投資したのかはあまりお話が出てきていなかったので、この1本さえ見ていただければクレストスキルパートナーズさんから出資を受けたい起業家が全部分かるという動画に仕上げていければなと思っています。
色々と根掘り葉掘り、答えられる範囲で教えていただければと思うんですが、そもそもこの金髪の人は誰なんだろう?と思う人もいると思うので。
南:
前回に出た時は金髪じゃなかったですね。
石橋:
だいぶビジュアルもアップデートされていらっしゃると思うので、改めて簡単にご経歴から教えていただいて大丈夫ですか?
南:
はい、分かりました。改めましてクレストスキルパートナーズの南です。キャリアでいくと、最初に株式会社住友銀行(現:株式会社三井住友銀行)に入って、5年ほど企業調査部というところで大企業の調査をしていました。
元々銀行に入ったのも企業再生をやりたかったという目的があって、とりあえず銀行に入ったんですけど、当時日本で最初のプライベート・エクイティ(PE)ファンドの株式会社アドバンテッジパートナーズという会社が登場して、その存在を知った時にPEファンドが日本でいよいよできると。
そこに入りたいということで銀行を辞めてアドバンテッジパートナーズに入社して、そこで7年半企業買収をやっていましたね。その後に2011年に会社を辞めて、2012年から株式会社ココナラという会社を創業して今に至ります。
ずっと金融業界だったのが、何も分からないIT業界に突然やってきて、ココナラを作って、おかげさまで振り返ってみれば上手くいって、2021年に上場しました。
上場した翌年にベンチャーキャピタル(VC)を始めて、今のファンドの前身である当時の株式会社ココナラスキルパートナーズでVCを始め、1年ぐらい前にココナラを辞めて、子会社のVCを僕が個人で買い取る形でマネジメント・バイアウト(MBO)をして、社名をクレストスキルパートナーズという名前に変えて今に至るということなので、ファンド自体は始めて大体4年ぐらいという形になります。
石橋:
前回の動画はココナラスキルパートナーズさん時代にご出演いただいて、MBOされてはいると思うんですけど。
元々なぜココナラスキルパートナーズ時代はVCとして始めていこうというか、PE出身で上場企業経営者でもいらっしゃった南さんが、割と他のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)が多いじゃないですか。創業者の人がCVC側にがっつりコミットしているケースは、南さん以外あまり心当たりがない。
南:
上場企業でCVCを作ることはいっぱいあるし、アドバイザー的に社長が出てきてというのはいっぱいあると思うんですけど、フロントに立ってやっているというのはだいぶレアだし、当時CVCと言いながらリミテッド・パートナー(LP)を全部外部から集めていたので、ほぼ独立系に近い運営をしていたと思うんですよね。
個人的な理由と会社目線の理由が2つあるんですけど、個人的なところでいくと、自分がPEファンドにいて、元々投資家だった。その後に起業して、幸いなことに上手くいったというところで。自分らしい価値を世の中に還元していきたいなと思った時にVCというのは、投資も一応やってきたし起業も分かる。
日本のVCは金融コンサル出身の方がマジョリティじゃないですか。投資家としての専門性は一定あるんですけど、一方で事業を作るとか、組織を作るところの実地が分かっている人がそんなにいるわけではないので、そういったものをお世話になった業界に還元したいなというのが個人的な思いですね。
当時ココナラとしてなぜこれをやるかというところでいくと、ココナラはスキルマーケットで始めて、ピラミッドの一番下からスタートしているんですよ。主婦の副業500円みたいな、流通させるスキルとしては一番安いところですよね。
そこからどんどんピラミッドを登っていって、今では能力が高い人が高額なものを売れるマーケットになってきたんですけど、今度は一番頂点からやりたいなと思ったんですね。
圧倒的な日本トップクラスのスキルを持っている人たちが、今度はスタートアップを支援するという形で流通させる。スキル・知識・経験を流通させるのにピカピカの人たちをココナラという名前の傘の下で動いていただくと、会社としても長い目で見た時に日本中のスキルや知識が流動化していくなと。必要な人に届くなという思いがあってやっていたというのがもう1つですかね。
もちろん何か新規事業をやるためのリサーチとか、一般的なCVCの目的もあるんですけど、思いとしてはそんなところでしたね。
あとは合併・買収(M&A)もやりたかったりとか、どちらかというと僕が当時社長を早めに変わって会長になったのも、当時としてはココナラがM&Aとか、新規投資とかに強い会社にしていきたいという思いがあったので、そういうトランスフォーメーションも含めて自分が先頭に立とうというところでVCを始めたところがありましたね。
2024〜2026年は「絶好の仕込み時期」
石橋:
PE出身でもあり、起業家出身でもある南さんからすると、最近VC界隈もPEに投資した方がリターンが出るんじゃないかとか、VC業界自体が若干不健全なんじゃないかみたいなことをX上でも匿名のアカウントを中心に言われていたり。
純粋に数字で見るとたしかにそういう側面があったりすることがあると思うんですけど、南さんからすると最近のVC界隈はどういうふうに変わってきているなとか、どうしていかないとまずいんじゃないかとか、起業家とPEをどっちらも経験している立場からするとどう見ていらっしゃいますか?
南:
金融業界が長い立場から言うとすると、今はめちゃくちゃチャンスだと思っていて。結局マーケットはシクリカルなんですよ。ほぼそれに尽きる。
サイクルが上がって下がってという時で、絶好調という時の案件は上手くいっているかというと、その後マーケットが下がって、結局売る時のマーケットが悪ければ高く売れないんですよね。
逆にリーマン・ショック直後とか、何か悪いことがあってマーケットが沈んだ時に投資したものは結果リターンが出るんですよ。
みんなが悲観に暮れている時は安く買えるんですよね。もちろんVCの場合はトピックもあるじゃないですか。過去10年で黄金期だったのは、スマートフォンが出てきて、その流れに乗ってというのはもちろんあるとは思います。
だけど今は新しくAIが出てきて、これがどうなるかもよく分からないわけですよ。一方でマーケットは非常に苦しいと。こんなに仕込み時な時期はないですよ。例えば、僕がココナラを起業したのは2012年だし、VC目線で一番成功したビンテージは2012年ですよね。
あれがどういう時期かというと、VCの投資額が一番少ない年なんですよ。2023年で1兆円ぐらい行きましたけど、2012年は600億円ぐらいで。リーマン・ショックがあって、東日本大震災があって、もうボロボロですよ。
石橋:
投資家さんからすると、一番安く買える時期でもある。
南:
一番投資したくないし、金も集まらないし、一番苦しい時に僕も起業しているし、金融のサイクルを3~5年の短いスパンで見ていると見誤ると思っていて、見るべきは10年単位ぐらいだと思っています。
史上最悪のリターンだった年が1999年なんですよね。ITバブルの、ものすごいバブルだったわけですよ。僕もその時点で金融マンなので、あの頃の熱狂を覚えていますけど、1999年に組成したファンドは世界中で99%ぐらいのファンドが元本割れしているんですよ。
その後にITバブルが弾けたらどうやってもイグジットできない。だけど弾けた後にスタートしている人たちは結果上手くいっているわけなので、僕は今めちゃくちゃチャンスだと思っていて、マーケットは結局低い時に買って高い時に売ることでしかないので、今投資余力がある人は絶対にチャンス。
石橋:
そういう意味でいくと、今回伺っていく2号ファンドは新規投資期間中ですよね?
南:
そうですね。ファンドレイズしながら投資を進めていますけど、ものすごい手応えです。
2024〜2026年頃は10年後に振り返ると「めっちゃ良いビンテージだったね」と言うに決まっているんですよ。「あの時はAI元年だったね」「あの時がすごく安かったね」と振り返ればしたり顔で言うんですよ。「マーケットが悪くて安かったから良い案件投資できたよね」と。だけど今はみんな暗いわけですよ。
LPさんが絞る、だからVCも絞るじゃないですか。スタートアップも若干資金調達が苦しいんですよ。なので3年~5年とかじゃなくて、10年単位の大きな流れで見られるかというところが、投資ファンドの事業の本質だと思っています。
PEの時に僕が初めてリーマン・ショックを経験したわけですよ。絶望な気分じゃないですか。ちょうどリーマン・ショックが起きた時にイギリスのオックスフォード大学に留学していたんですよね。ちょうどそこでPEの授業があったんですよ。
その仕事を30年近くやっているベテランのマネージングディレクターの方に向こうでお会いしたことがあって、その方はリーマン・ショックの1年前に投資ポートフォリオを全部売ったと言っていましたね。だから今は仕込み時だと。
今僕が言われたことと同じことをその時に教わって、「こういうのは下がっている時に買うものだから、そろそろかなと思って、2007年ぐらいにポートフォリオはほぼ売ったんだよね」「リーマン・ショックが起きたので今仕込んでいるんだよ」「安い時に買うのがPEだからね」と。なるほど!と思って。
アドバンテッジパートナーズもまだ始めて10年経たないぐらいで、絶好調でしたけど、まだ落ちるというサイクルが1回目だったんですよ。その後に僕が経験できたので、結局マーケットはシクリカルなんだなというのが原体験なので、今VCはすごいチャンスだと思います。
石橋:
良いですね。めちゃめちゃ心強い。
ディープテックとエンタメに軸足、核融合にも投資
石橋:
もうちょっと2号ファンドについてブレイクダウンをしていきたいんですけど、クレストスキルパートナーズという名前だけ聞くと、どういう領域やどういうラウンドに投資しているんだろうと良い意味で全然想像がつかないです。
改めてどういうラウンド感でとか、どういうチケットサイズでとか、領域とかセグメントを絞っているみたいなところはあったりするんですか?
南:
投資の基準としてはオールラウンド・マルチステージです。ジャンルは問わないし、上場直前の案件も入れたこともあります。なので何でも見ます。
何でも見ますが、メインはシード・アーリーが中心ですね。稀にレイターを一部やる。これもご縁があって、レイターで縁があって割安で入れそうだなとか、向こうから依頼されることも多くて。
それは僕が新規株式公開(IPO)を経験しているので、IPOをしていく上で寄り添ってほしいという話が一定の頻度で来るので、その中でバリュエーション的にシード・アーリー中心のVCとしても許容できるというのが期待できるところにはレイターでも入れますが、基本はシード・アーリーです。
1号ファンドなのでオールジャンルで幅が広かったんですけど、2号になってから少しマーケット環境も変わってきているので、若干の軸足は寄せているところがあって。何に寄せているかというと、ディープテックとエンタメですね。
石橋:
ディープテックとエンタメなんですね。なんか分かりやすい気もする。
南:
どうしてもIPOマーケットが今は厳しいので、なかなか一般的なB向けSaaSが簡単に上場できる時代ではないし、日本のマーケットがこれからシュリンクしていくのが明確なので、海外に出ていける可能性があるものじゃないとなかなか跳ねないかもしれない。
国境を超えられそうなディープテックとか、当たった時に爆発的に伸びるエンタメとか、テーマ的にもIPOとの相性が良いので、全部そこに寄せるというわけじゃないですけど、少し比率を意識したところを増やしていますね。
石橋:
ディープテックも触っていくんですね。
南:
そうですね。例えば2号ファンドでいくと、一番でかいところが株式会社Helical Fusionの核融合ですね。
僕らはスキルパートナーという専門家が投資先を支援するというパッケージを用意してやっているので、例えばHelical Fusionは投資した週にはすでに元株式会社電通のコピーライターをつけて、これから作ろうとしている発電のための炉の名前とか、ビジョンとかを全部コピーライターと一緒に作って、翌月には記者会見をやっていたりします。
言葉をしっかり整えた方が圧倒的にマーケティングも採用もしやすくなるので、僕らが投資先に対して最初にやるのがコピーライターをつけることが一番多いんですけど、Helical Fusionについてもそんな動きをしていますね。
電通エースのコピーライターが無償支援
石橋:
スキルパートナーという方々がいらっしゃるのは、クレストスキルパートナーズさんの大きい特徴の1つだと思うんですけど、投資先がスキルパートナーをつけるにはいくらかかりますか?
南:
投資先は無料です。コピーライターを電通さんに頼んだらとんでもない金額がかかる。クレストスキルパートナーズの投資先は電通のエースだったコピーライターの方が無料でコピーを作ってくれる。
僕らはリードを取らないんですよ。リードを取ろうとすると、どうしても苦しい時も追加でお金を出したみたいな責任も一定出てきたりするじゃないですか。僕らはお金がそんなにないので、ファンドサイズが小さいので、お金の面で責任が取れないんですよね。
僕はしゃしゃり出てリードを取らずに、自分でソーシングした案件も必ず誰かにパスしてリードをやってもらうようにしています。その代わりフォローで投資します。フォローなのにめちゃくちゃ手厚いんですよ。
コピーライターが出てきて言葉を整えるじゃないですか。言葉を整えた後に、営業が大事な会社だったら営業コンサルをつけるし、採用が大事だったら採用コンサルをつけるし、PRが大事だったらPRコンサルをつけるし、UXが大事だったらUXデザイナーをつける。
これが各業界のトップオブトップが出てくるので、普通に頼むと時給30〜40万円取るようなクラスの人たちも混じっています。この方々が無償で支援するので、投資先の社長が何て言っているかというと、「株主になってもらえるならば、絶対になってもらえない理由がないファンドである」と。
石橋:
すごい。めちゃめちゃポジティブ。
南:
リードじゃないので、ここまで投資先の経営を意味ある形でサポートしているファンドは、少なくとも日本では僕ら以外にないと自負しています。
石橋:
株式会社HANOWAさんという投資先で、実際南さんたちとご一緒させていただいている中で、南さんの立ち振る舞いと言うべきか分からないですけど、やっぱりプロなんだなというのを、HANOWAの新井さんと話している様子を見ながら感じました。
そこは僕らとしてもすごく心強いですし、他の株主としても心強いですけど、起業家さんが何よりありがたい存在なんだろうなというのは傍で見ていてもすごく感じるぐらいなので。
1号・2号ファンドとどんどん投資先が増えれば増えるほど、信用残高じゃないですけど、リファレンスがどんどん貯まっていって、選ばれるVCになっていくための資産がどんどん積まれている感じですよね。
南:
それが戦略なんですよ。リードを取らないというのもそれで、リードを取るとなると資金が大きいところが良いとか、色々な議論があるんですけど、フォローだったらシナジーがあるところが良いじゃないですか。
オンリーワンのものを持っているので、投資先の社長がものすごく宣伝をしてくれるんですよ。「絶対クレストスキルパートナーズが良いよ」と。「南さんのところに行って相談に乗ってもらいなよ」「投資してもらえなくても壁打ちだけでも価値あるよ」と言ってくれるので、僕は家から一歩も出なくても案件が毎日何件も来る。
「好奇心がない」からこそ生まれた独自戦略
南:
僕はVCとしては致命的な欠陥があると思っていて、新しいものへの好奇心があまりないんですよね。
VCは本来、マーケットがこうなって、こんなに新しい技術が出る、それにワクワクするというもので。その最先端の会社がどこかを探しに行って、見つけて投資するじゃないですか。キャピタリストにとっての一番大事なアセットは好奇心だと思っているんですよ。
ですけど、僕はそれが欠けているんですよ。なので普通のVCだと勝てないんですよ。一方で、僕の強みが謎なレベルでおせっかいだったり、相談に乗ってしまったり、対人のところはものすごく支援したがりなんですよね。
そうすると口コミで案件が勝手に入ってくる。来たものはできるんですけど、自ら探しに行く行動を伴う好奇心がちょっと欠落している。これはココナラ時代から一緒なんですけど、人間は得意を伸ばして苦手は誰かに任せるというのが一番幸せな生き方だと思っているので。
僕は自分の得意と苦手を冷静に考え、それを上手く実現できるようなファンドのあり方を発明してやっているという感じですかね。
証券・会計士・起業家、全方位からIPOを支援
石橋:
スキルパートナーさんの活用は分かりやすいし、ファンドのお名前の通りでもあるんですけど、他のところの差別化戦略は、起業家の方にとっても知っておくべきクレストスキルパートナーズさんのポイントはありますか?
南:
経験豊富な僕がやっているということが1つと、スキルパートナーが2つなんですけど、この2つは表でいつも言ってることです。
もう1つあるとすると、IPOに強いですかね。パートナーも梅田華衣というジェネラルパートナーがいるんですけど。
石橋:
SMBC日興証券株式会社さん出身ですよね?
南:
そうなんです。SMBC日興証券でずっとIPO担当をしていて、それこそIPO黄金期だったので、彼女自身が相当数の会社を自分で担当して上場させてきていますし、その前に彼女はVCにもいたんですけど、IPOを証券会社でずっとやっていました。
なので証券会社の目線とか東証の目線をめちゃくちゃ分かるし、僕がIPOをしているので、起業家目線、あるいは対VCと何を話して、どうやっていくかという視点もすごく分かる。
もう1人ファンドディレクターで佐藤というのがいるんですけど、有限責任監査法人トーマツ出身の公認会計士なんですよ。ココナラでも実は経理とか色々やっていたので、いわゆる会計士目線でのIPOも分かる。
なのでクレストスキルパートナーズに相談してもらうと、IPOがフルセットで分かるんですね。早い段階で東証に聞いたりとか、あるいは上場準備に入った時にどういうふうに準備していけば良いのかを全方面から指導できるので、IPOを目指しているスタートアップは僕らから出資を受けるとめちゃくちゃ良いですね。
石橋:
分かりやすい。
南:
IPOはすごく難しくて、証券会社と機関投資家とVC、全員の利害がずれるんですよ。出資してから伸びている間はみんな頑張るんですけど、いざ上場となった瞬間に証券のスタンスとVCのスタンスと機関投資家のスタンスが全部ずれるんですよ。
これを放っておくと悪い方向に力学が働くので、起業家が全体を取り仕切らない限りIPOはコントロールできないんですよ。すごい難しい。
なので僕らのチームはあらゆる目線で総合的に加味しながら、「こうやって振る舞っていくのが良いIPOになるよ」というアドバイスができて、超経験豊富なリード投資家さんがいれば一定分かりますけど、大体キャピタリストも10年やって何件IPOが出るの?という話じゃないですか。
石橋:
恥ずかしながらそうですね。
南:
20年やっている人は色々経験しているかもしれないけど、そういう意味でいくと、IPOを目指してる人はクレストスキルパートナーズはおすすめです。
機関投資家の視点を知らずにIPOは語れない
石橋:
最近その文脈もあって、投資先以外の方にも合宿や勉強会を積極的にやっているイメージもあるんですけど、あれもその一環ですか?
南:
クレストスキルパートナーズは投資先だけの勉強会、投資先だけの合宿もやっていますし、オープンな勉強会も結構な頻度でやっていて。
今の文脈でいくと、2025年6月に機関投資家の方を招いたオープンな勉強会をやりましたね。スタートアップもVCの方も、IPOを目指している割にはIPOが何かと言ったら機関投資家に買ってもらう作業なわけですよ。
石橋:
そうですね。売る側ですよね。
南:
機関投資家がどういう会社を買いたいかとか、どういうふうに値付けをしているかとか、全く知らないままIPOを語っているのはおかしくないですかという話なんですね。
例えば、機関投資家は流動性がない案件を買わないんです。バリュエーションとかの話じゃないんですよ。1日あたりいくら取引されているか。一般的な若い人だと、機関投資家がいくら運用しているかと言ったら100億運用していますと。
何社持っていますかと言ったらざっくり100社なんですよ。これはイメージです。もちろん人によって全然違うけど、100億持っていて100社自分で投資するとなったら、1社1億じゃないですか。1億投資したい時に、上場後に日々の商いが1000万しかないところは投資できないんですよ。
なぜなら流通高の10%ぐらいしか買えないので、1億買うのに何日かかるんだと。1日の商いが1億でギリギリ下限、できれば3億ほしいとなった時に、VCの方が「何パーセント売ろうかな」と、ちょっと売り出しは抑えて、いつか上場後にちょっとずつ売っていこうとかするんですけど、そこで売り出しを抑えてしまったがゆえに日々の商いがつかない。だから機関投資家は絶対に買わない。絶対に買わないんです。
買わない時にどうやってイグジットするんですかとなったら、VCも困りますよね?起業家も困りますよね?みたいな手触り感のある話をVCもスタートアップも知らないんですよ。
これはちゃんと僕は分かるので啓蒙しなければいけないということで、機関投資家の方に来ていただいて、「どうやってスクリーニングしているんですか?」とか、「流動性はどういうふうに見ているんですか?」とか、そういうのを話してもらう勉強会をやりましたね。
石橋:
ありがとうございます。
おそらく日々投資先の方とか起業家の方が相対するIPOマーケットも変化はしていると思うので、なおさらIPOに詳しいプロの方々に、今のタイミングだったらどう向き合っていくべきなんだっけ?とか、今のその会社の資本構成だとこうするべきだよねというのは当然変わってくると思うので。
そういうところの詳しい人が株主にいる、しかもさまざまな知見を持っているというのはめちゃめちゃ心強くて分かりやすいし、他のVCにはあまりそういう経験を持っている人はいないですね。
リードではないからこそ、客観的なアドバイスができる
南:
先ほども言った通り、VCとは売り出しの方針とかで利害関係がずれることがあるので、僕はリードではないので、基本的にはリードの方針には従うことになるんでしょうと。
ただ起業家へのアドバイスは裏でできるので、そこは比較的客観的に、もちろん僕らも投資はしているので、100%起業家の味方とは言わないまでも、「一番みんなが幸せになるバランスはこういうことだよ」というのは多分サポートしてあげられるかなと思いますね。
石橋:
ありがとうございます。
第2弾の動画の方では、もうちょっとクレストスキルパートナーズさんが、先ほど最近傾向としてエンタメとディープテックを気にかけているとおっしゃっていましたけど、改めてどんなところになんで投資したいのかというのを突っ込んでお伺いしていきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。
南:
よろしくお願いします。
石橋:
それでは次回もお会いしましょう。さようなら。
【規格外】営業マンすら口説く”圧倒的採用力”|ココナラ創業者が惚れ抜いたユニークな起業家たち【クレストスキルパートナーズ 南 章行 vol.02】
平均年齢65歳の業界に切り込む、丸投げオンライン会計事務所
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。今回もクレストスキルパートナーズの南さんにご出演いただきますので、よろしくお願いします。
南:
よろしくお願いします。
石橋:
早速なんですけれども、「なんで投資したのシリーズ」ということで、色々なVCさんにネット上に公開されていない話など、調べても出てこない話を聞いていきたいと思っていますので、ぜひ起業家の皆さんは参考にしていただければなと思います。
合計3~4社のお話をしていただきたいなと思っているんですけど、1社目は何という会社でどのような起業家の方がやっている会社ですか?
南:
1社目に紹介するのが株式会社SoVaですね。ヤマケンと呼んでいますけど、山本健太郎君という社長がやっています。
石橋:
SoVaさんは何をやっている会社ですか?
南:
一言で言うと、丸投げのオンライン会計事務所ですね。
例えばfreeeやマネーフォワードなどのソフトは使っているけど、結果としてそれを記帳するとか、税理士さんに設立登記の話を相談するとか、給与の話とか、色々と税理士・会計士に頼む仕事がいっぱいあるじゃないですか。それをオンラインで全部お任せできるという丸投げオンライン会計事務所がSoVaですね。
石橋:
出資した当時はどういう事業ステータスというか、どのぐらいのタイミングだったんですか?
南:
最初に出会ったのが、前身のプロダクトのリリース直後で、まだリリースして3〜4ヶ月とか。
石橋:
プレシードかエンジェルぐらいですか?
南:
エンジェルラウンドが終わったぐらいの時に出会っていて、その頃はもう少しプロダクトとしては小さかったというか、役所への届け出がオンラインで簡単にできるみたいなところだったんですけど、社長が会計士なんですよね。
大学3年で会計士に受かって、最年少で会計士予備校TACの講師になりました。教えるのがめちゃくちゃ上手いという、ちょっと変わったタイプの経歴で、一見真面目な感じです。
石橋:
一見真面目な?
南:
真面目なんですけど、中身は割とユニークです。一見真面目なすごく良い人なんですけど、そこのオンライン会計事務所に投資をしましたね。
地方の税理士不足という構造的課題
石橋:
会計事務所はオンラインとはいえ、全国に唸るほどあるじゃないですか。シード・アーリーの会計事務所で、オンラインだから良いというシンプルな話でもないような気がするんですけど、なぜ投資したんですか?
南:
投資した市場や投資仮説の話でいくと、本当に唸るほどあります。ただし、平均年齢が65歳なんです。すごいシンプルで、東京都にいたらあまり感じないです。
実は企業数と税理士の比率は東京が一番潤沢なんです。だけど、地方に行けば行くほどスモールビジネスをやっていたら、地元に税理士がいないんですよ。しかも平均年齢65歳なので、引退していったら頼みたくても頼めないという時代が目の前になっているというところが、圧倒的に大きな市場仮説の1つですね。
圧倒的なシステムと「息を吸うように採用する男」
石橋:
とはいえ、そのトレンドがあるからといって、ポンと投資するわけでもない気はするんですけど。
南:
やっぱり人が減っていく。リアルよりは効率が良いとはいえ、オンラインでも人が必要なわけですよ。ここにもう1つのイノベーションがない限りは投資ができないと思うんですけど、ここは2つぐらいあると思っていて。
元々丸投げにする前は、ツールとして提供していたんですよ。会計の処理が自由にできるという、最初はツール売りを始めていたんですよね。だけど、ユーザーが使いこなせない。SaaSのあるあるじゃないですか。
なので、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)的になるというのは、ここ数年のトレンドだと思うんですけど、ここもご多分に漏れずに丸投げで全てやるように変えようということで、そこから爆伸びしているということなんですけど。
元々ツールを作っていたぐらいなので、システムの精度がめちゃくちゃ高いんですよ。ありとあらゆる会計に関わるシステムがものすごく精緻に作られている。極端な話、素人でも1つ1つ覚えていけばその処理ができるようになっていくんです。
経理経験がある人じゃなくても、順番にやっていけばできるようになるし、全部を覚えた暁には会計士レベルになれるぐらいよくできているんですよね。
そうすると、例えば税理士さんが1人当たり10〜20社担当できるという時に、SoVaだったらその10倍を担当できるみたいなことになるので、圧倒的に生産性が高いです。
もう1つ、これがSoVaの一番の投資理由の1つになってくるんですけど、採用力です。ものすごいです。エージェントとかを一切使わずにいくらでも採用できる。このご時世において採用に全く困らない会社。
石橋:
山本さんの採用力がすごいんですか?
南:
ヤマケンがすごいです。「息を吸うように採用する男だ」というので僕は投資したんですよ。
生命保険の飛び込み営業すら口説き落とす
南:
どれくらいかというと、めちゃくちゃ面白いエピソードがあるんですけど。一度オフィスに尋ねる用事があって行ったんですね。
会議室で待っていたらヤマケンが部屋に入ってきて、「今○○生命から飛び込みで営業が来たので、一応生命保険の飛び込みの話を聞いていたんですよ」「どうなったと思います?」「ウチを受けることになりました」と言って。
会う人をナチュラルに口説くし、口説くレベルが高いです。例えば当時エンジニアがほしいとなったら、Xで色々なエンジニアをフォローするんですよね。よくそこでDMを送るというのがあるじゃないですか。そういうレベルじゃないんですよ。
毎日チェックして、その人のバイオリズムというか、仕事が上手くいっているか、いっていないかを見定めながら、今ネガティブを言っている、今なら辞めるかもという時に送るとか。その精度で1人1人を見ている。
あるいは「○○の競合はどうなの?」と言ったら、「大丈夫です」「そこの競合のキーマン採用しちゃったので」みたいな。そういうこともできてしまう。とにかく彼にかかると、手伝わざるを得ない気持ちにさせるような圧倒的な力があるんですよね。
オンライン会計事務所はどうしても人がいるビジネスなんだけど、圧倒的に効率的なシステムと、そこにどれだけでも採用できるという採用力だったり、入りたくなるような会社の企業文化。
「会計士になりたいならうちにおいで」という感じで、会計士の卵も仕事しながら勉強していて、今年もSoVaからも何人か会計士が生まれているんですよ。
彼は未だにTACの講師もやっているので、予備校の段階で全国のトップレベルの会計士の卵を、大手事務所に行かずにSoVaに入らせているんですよ。他方面で口説ける。これがSoVaの見えない一番の強みですね。
発達障害児向けオンライン運動レッスン──9割が待機する市場
石橋:
1社目は起業家さんの魅力も含めてよく分かったんですけど、ぜひ2社目も取り扱っていただきたいんですけど、どんなところですか?
南:
2社目はPAPAMO株式会社を紹介しようかなと思っています。
石橋:
PASMOみたいでかわいい名前ですね。どういう系の会社なんですか?
南:
発達障害の子ども向けの、特に運動の領域ですね。いわゆる運動療育が必要な子ども達、あるいは運動が苦手な子ども達向けのオンラインの運動レッスンです。運動でオンラインと聞くと「え?」という感じがするじゃないですか。
石橋:
コロナの時になんとなくオンラインでフィットネスとかが流行っていたという印象はありますけど、その後はフィットネス系でいうと落ち着いたイメージもあります。
理学療法士×ゲーミフィケーションの設計
石橋:
PAPAMOさんに出資した時はどういうタイミングで、コロナの後はどんな感じになっているんですか?
南:
リリースして1年前後のまだ初期の段階だったと思います。ここも投資して3年経っていますけど、ものすごく伸びていますね。
運動療育なので、基本的に発達障害の幼稚園とか小学生低学年ぐらいの子どもがターゲットになります。やっぱり運動が苦手なので、運動しているところを人に見られたいわけじゃないですし、部屋の中でちょうど良いんですよ。
理学療法士とか作業療法士をトレーナーにして、オンラインで画面越しに「○○してみよう」という指示を出して運動させるんですけど、ちゃんとしたロジックに基づいたもので、かつゲーミフィケーションをすごく入れて。
例えば、画面に何か表示させて、「恐竜が出てきたぞ!ジャンプして倒してみよう」と言って、一斉にジャンプするとポイントが上がって「倒したぞ!」みたいな。小さい子が喜ぶようなものを入れながら、子どもに必要な運動をさせるということをやっていくので。
もちろん理学療法士や作業療法士がいるということは元々売りにしていたんですけど、ここのシステムがすごく考えられているので、極端な話、誰でもできるレベルまで到達しています。
石橋:
供給の不安もないんですね。
「障害」という定義が生んだ新市場
南:
子ども向けのビジネスは「子どもが減っているけど、大丈夫なの?」みたいなのが一般的なVCの捉え方ですよね。
石橋:
大きいトレンドでいうと、間違いなくそうなってしまいますよね。
南:
発達障害は我々が子どもの頃にいたかというと、いたはずだけどそういう定義がなかったわけです。昔は発達障害という言葉がなかったわけですよ。クラスに運動や学習が苦手な人がいたとか、発達障害の子が普通にクラスにいたじゃないですか。
石橋:
いましたね。
南:
今は障害という定義が生まれているんです。昔は「障害だよ」と言われなかった子が、3歳児健診や小学校の就学前健診とかで、「発達障害ですね」「運動障害ですね」と言われるんですよ。
石橋:
バッチがついてしまうんですね。
南:
ついてしまいます。ただ、小さい頃にしっかりと、特に運動の領域についてはちゃんと訓練すれば、問題なく人並みには動けるようにはできるんですよ。
放っておくと良くないので、そういう施設があれば入れたいと親御さんが思うじゃないですか。もちろんそういう施設はあります。あるけれど待機児童が多くて、9割が待機状態です。半年待っても入れないとか。
石橋:
子どもは減っているはずなのに、新しく生まれた定義によってニーズがあるんですね。
南:
発達障害と言われる人がものすごく増えていて、外で遊ぶ子が減っているじゃないですか。遊べなくなっているじゃないですか。今の子どもの運動能力は、我々が子どもの頃に比べて劇的に落ちているし、外で遊ぶ量も3分の1とかになっているんですよね。
発達障害じゃないけれども、運動が苦手な子もすごくいるんです。マーケットとしてここは増えているんですよ。
親からすると何とかしてあげたいと思うので、公的なものじゃなかったとしても、やってくれるならぜひということでオンラインでやる。実際に目に見えて成果が出るんですよね。
ツー・サイド・プラットフォームの構造的優位性
南:
僕が投資に至ったのは、「障害」という新しいジャンルが人為的に作られているのに、施設が追いついていない。なので、何十万人と待機している人がいるという状態。
理学療法士や作業療法士も10万人単位でいるんですけど、比較的新しい資格なんですよ。食べていけるかと言われると、ちょっと収入的には弱い。その人たちが副業的にやれる設計になっている。
僕はこういうツー・サイド・プラットフォームは、元々ココナラでやっていたので好きなんですけど、こういうものが構造的にいけるなと踏んだら投資するという感じなので、投資したらちゃんとしっかり伸びているというところですね。
大学生時代から知る橋本という起業家
石橋:
1社目のSoVaさんではヤマケンさんのストーリーが印象的でしたけど、創業者の橋本さんはどんな方なんですか?
南:
最初に会ったのが12~13年前の大学生の頃。僕が呼ばれて登壇したイベントがあったんですけど、そこの主催側のインターンでスタッフで働いていたんですよ。
石橋:
当時の南さんはココナラが始まった頃ですか?
南:
始まって1年ぐらいの頃で、新しく出てきた起業家を呼ぶ勉強会的なイベントで会って、Facebookでは十数年前から繋がっていたんですね。その間すごくやりとりがあったかというと、別になかったんですけど、昔から知っていて、とにかく昔と変わらずに元気いっぱいな前向きな女の子なんですよ。
女の子と言うと立派な大人なので怒られるかもしれないですけど、僕からすると大学生時代から知っているので、元気な女の子という感じでずっとニコニコしているんですけど。
一方で最初にコンサルに就職して、働きながらいつか起業しようと粛々とやっていた感じなので、ニコニコしているようなんですけど、内実のところは絶対に起業してやるみたいなマインドセットが強かったりとか、数値へのこだわりが強かったりとか。
よく本人の前でもいじっているんですけど、「実はサイコパスだよね」とか言っていて。割と真面目にやるぐらいの一生懸命めちゃくちゃ働くワーカホリックな感じ。だけど、いつ見てもニコニコ笑顔みたいなタイプの子ですかね。
石橋:
一周回ってサイコと言われているんですね。
南:
褒めていますけどね。起業家はそういうサイコみがないとしがみついていけないじゃないですか。そういうのを時々違う角度から解きほぐしながらやっている感じですかね。
石橋:
橋本さんはクレストスキルパートナーズさんを使いこなしているんですか?
南:
定期的に使っていますね。
石橋:
相性が良さそうですよね。
南:
そうですね。彼女も同じようにすごく勉強熱心なので、勉強会とか合宿の出席率はすごく高いほうですね。すぐ食らいついて質問してきて、話すとすぐメモるみたいな。言ったことを素直にやって、ちゃんと成果に繋げるタイプですね。
45歳以上向けキャリアスクール──氷河期世代の再挑戦を支える
石橋:
ココナラさんっぽいというか、南さんが得意そうなイメージがあるPAPAMOさんでしたけど、3社目はどういうところですか?
南:
ここもココナラっぽいと言われるかもしれないですけど、株式会社ライフシフトラボ。ここは45歳以上向けのキャリアスクールをやっているんですね。
石橋:
渋いですね。
南:
ミドル・シニア層向けの転職用のスクールですね。
石橋:
それだけ聞くと、SHE株式会社をやっている福田さんとかは、キラキラと言うのが良いか分からないですけど。
南:
スクール事業というだけを見たら大きく捉えれば近くて、ライフシフトラボは45歳以上とかなので、シビアな現実を見てきた氷河期世代が中心なんですよね。なのでそんなにキラキラしてないです。
マインドセットとスキルのアジャスト
石橋:
何を学ぶ人が多いですか?45歳以上で他の特徴はありますか?
南:
ミドル・シニアになってくると、転職するといっても新しい会社にアジャストするのが難しかったりする。1回も転職したことがない人がいきなりマーケットに出てきた時に、多少はITのことを知っていた方が良いので、カリキュラムの中にSlackを使ってみるとか。
こういうのがちょっとできるかできないかで、入った時の馴染み方が違うじゃないですか。
石橋:
たしかに「Slackって何?」と言われるとしんどいですよね。
南:
それ以上にマインドセットのところが大きくて。転職とは何かとか、自分のキャリアとは何かとか。やっぱり色々な方が転職されるので人それぞれだと思うんですけど、僕が50歳なのでイメージが湧くんですけど、やっぱり自分がもし大企業にいて、転職しようかなと。
自分の会社の中でなんとなくキャリアのゴールも見えたけど、何かチャレンジしたいとなる気持ちはよく分かる。有名企業にいた人が中小企業に行くと、ものすごく活躍の場があるんですよ。大企業でやってきた人はすごいので。
例えば、こっちに行ったら活躍できるけど、知らない会社というのをプライドが許さなかったりする。こういうところに行って、こういう立場であなたは活躍できるみたいなマインドの部分の矯正が大事になってくるので。
いきなり転職といっても、マインドの面でどうか、スキルの面でどうか、抜本的に変える必要はないんだけど、ミドルシニアの転職はアジャストがいると思っているんですよ。そこのアジャストをやるためのスクール。
石橋:
話を聞いていると、どんどん父親に紹介しようかなという気持ちになってくるんですけど。
ココナラで30分5,000円の相談から始まった縁
石橋:
なぜ45歳以上のリスキリングスクール事業という、一見すると風変わりな事業で起業しているのか、どういう人がそれで起業しているの?というのが素直に気になっています。
南:
社長ですか?
石橋:
はい。
南:
これもまた面白いんですけど、出会いがすごいユニークで。ココナラにいた時のマーケットプレイスの中で、僕が起業の相談に乗るサービスを売っていたんですよ。
石橋:
南さんがそういうスキルを売っていたんですね。
南:
そうですね。自分のプロダクトを社長自ら使わなければと思っていて、僕は新規事業の相談というサービスを30分5,000円で出していたんですよ。そうしたらいきなり2枠買ってきた人がいて、それが代表の都築君で、まだ社会人1年目ぐらいだったと思います。5年ぐらい前です。
彼は元々開成高等学校、東京大学、ソニー株式会社のエンジニアで、学力的にはピカピカのところで、ソニーに新卒で入っているんですけれども、その頃から起業しようとしていて。最初にオンラインで相談に乗った時から、キャリアの事業をやりたいと。当時はもっと若手向けだったんですよね。就職・転職したい若手と経験者をマッチングさせるみたいな、ありがちな発想なもので。
オンラインで話しながら、「それは成り立たないよ」と言って。「マッチングというのはね」とか「マネタイズっていうのはね」みたいなことを言いながら何度かやり取りをしていて。
僕は昔、企業準備中の社会人1年目の子にオンラインで教えていたんですよね。そこから何年か経って、Infinity Ventures Summit(IVS)のIVS2021 NASUでバッタリ会って、「覚えていますか?オンラインで相談した僕です」みたいな。
「覚えてるよ。あのキャリア系のをやっていた子だよね?」みたいな感じで再会し、「また相談に乗ってください」「また買います」と。
「リアルで会ったからもう買わなくていいよ」「僕はVCを始めることになったから、相談に乗るのが仕事になったから普通に連絡しておいで」と言って、相談に乗っているうちにピボットしたというのが今の話で「めっちゃいいじゃん」「投資するわ」となったのが経緯ですかね。
氷河期世代という巨大市場
石橋:
当時のマーケットでいうと、スクールやリスキリングはその頃ぐらいがトレンドで、NASUで優勝したのはSHEで、伸びていたトレンドなのかなとも思いますけど、45歳以上というセグメントが空いていたんですか?
南:
45歳以上の転職のニーズはたしかに高いです。氷河期世代なので、良い就職をそもそもできていない。
石橋:
ちょっと納得していない感じですね。
南:
納得していなかったり、実力以上の仕事をもらえなかった世代なので、外で活躍したいとか。ずっと会社が面倒を見てくれる時代じゃないから、何とか手に職をつけなければとか色々な思いを持っているので、転職したいというのはあるんだが、ご存知の通り昔は35歳限界説と言われていまして、年を取ると転職できないと言われていたじゃないですか。
ライフシフトラボがやろうとしているところは、実はスクールは入り口なんですよ。そこがポイントで、スクールがあって転職できるとなったら、やっぱりかなり来るんですね。だけど、ここは転職のスクールだけで終わっていないんですね。
今何をやっているかというと、転職スクールの卒業生に転職の斡旋もやっているんです。前のデータで最近の数字じゃないんですけど、前に僕が聞いた時は600人卒業生が出て、9割が転職に成功しているんです。
40代・50代がこのスクールに来たら9割転職できるんですよ。この実績があるからまた人を呼べるじゃないですか。でもこれを回しているだけだと、どこまで行っても単なるスクールなんですよね。学校事業でIPOできるの?と思うじゃないですか。
一般的にスクール系はそんなに良いバリュエーションがつかないので。
スクールの先にある「シニアのビズリーチ」構想
南:
だけど、ライフシフトラボが狙っているのはそこじゃないんですよ。その1つ先があって。
何かというと、なぜ転職できないかの根本的な話なんですけど、雇わないからじゃないんです。40代・50代でも雇いたい会社はめちゃくちゃあるんです。転職したい人もめっちゃいるんです。出会えていないだけなんです。
なぜ出会えないかというと、転職マーケットで一番売れるのは30歳前後なので、どこの転職サイトも求人の数は30歳が圧倒的だし、転職するのも30代が圧倒的だし、やればすぐ決まるから人材のプラットフォームや人材紹介エージェントが相手にしないんですよ。
50歳の人が履歴書を出したら、書類が通るのは5%なんですよ。30代なら8割通るかもしれないのが、50代だと5~10%しか通らないんですよ。書類や面談までは行けるかもしれないけど、それくらい少ない。
絶対数でいうとめっちゃあるけど、どうしても30代と比べると効率が悪いから、完全にホワイトスペースで放置されてきたというのが歴史。ここをゼロから掘り起こしてやろうということなんだけど、単に「シニア向けのサイトです」だけだと弱いんですよね。
石橋:
入ってこないんですね。
南:
入ってこないです。なので、まずスクールをやりますと。スクールをやるというと、転職の希望者がいっぱいいるから紹介できると思うじゃないですか。それもあるけど違うんです。
今は自分たちがそういうプラットフォームを持っていないので、他の媒体を使いながら「ここに入れるんじゃないですか?」と、あくまでもサービスの一環として転職支援をやっている。それで9割上手くいっている。ここに何のデータが貯まっているかというと、50歳を採用した企業リストなんです。
600人が転職したということは、600社のデータがあるんですよ。このデータの会社は実績として40代・50代を積極的に取っているという会社なんです。
40代・50代は履歴書を死ぬほど送るわけじゃないですか。50代は目をつぶってとにかく100通送るしかないんですけど、面談まで行けたのはこの会社というのが、このデータはそれの何倍もあるじゃないですか。
ライフシフトラボは、今時点でもこの会社は40代・50代を積極的に取るというデータがすでにだいぶできています。
例えば、これが数千社まで行った時を想像してくださいと。この人たちを全部自分たちのクライアントとして、「40代・50代向けの転職サイトです」とやったら、これは本当に転職できるサイトになるんです。
石橋:
企業側の掘り起こしも、そもそも埋もれているわけですよね。どこの会社が40代・50代もOKしてくれるのかもよく分かっていないところを篩にかけているんですね。
南:
まずは転職したい人をスクールで炙り出して、成果が出ているから回り始める。今度は40代・50代を積極的に取る人たちを炙り出している。両方がいけるとやっと勝手に伸びるフェーズが将来に待っていると。というのが僕の投資の時の仮説でした。
石橋:
それなら投資するのは納得できます。
南:
今みたいな説明だったら、ちょっと面白いかもと思いません?
石橋:
そうですね。スクール系のジレンマは、ほぼ株価売上高倍率(PSR)がつかないところに収斂されている気はしていたんですけど、ちょっと色合いが違いそうですね。
南:
「シニアのビズリーチです」と言ったら、全然見え方が違うじゃないですか。
石橋:
そうですね。
C向け投資で高い成功確率を実現する理由
南:
やっぱりチーム系をやっていたので、クレストスキルパートナーズのVCは投資の成功確率はBよりCの方が高いかもしれないですね。Cは普通打率が低いじゃないですか。
石橋:
そうですね。見極められるキャピタリストも少ないですし、成功するケースもBよりかは少ない気はしますよね。
南:
Bの方が分かりやすいですからね。Cの方が立ち上がった時に独占できたりとか、カルチャーが新しく変わっていくこともあるので。あるいは救われる人の顔が見えやすいとか、僕はCとかスモールビジネスが好きなんですよね。
石橋:
2号ファンドはディープテックとかエンタメへの意識は強くなってはいるが、オールステージ・オールラウンドでやっていらっしゃるとのことですので、ぜひ起業家の方は南さんとか梅田さんとかにコンタクトを取ってみていただくと良いのかなと思っております。
改めて南さん、色々と細かくウェットのところまでご協力いただきましてありがとうございます。ぜひ3号・4号ファンドの頃にまたお話を聞ければと思っておりますので、引き続きよろしくお願いします。
南:
よろしくお願いします。
石橋:
それでは次回もお会いしましょう。さようなら。
