300億運用VCが挑む「外貨を稼ぐ」世界戦略|海外資本を呼び込む支援の全貌【DG Daiwa Ventures 渡辺 大和 vol.01】

◯渡辺 大和 株式会社DG Daiwa Ventures 投資部長 / マネージングディレクター X(Twitter)▶︎https://x.com/yamato_dgdv
公式HP▶︎https://dg-daiwa-v.com/
大学在学中に共同創業した会社を売却後、電通入社。
メディア関連の新規事業開発や、内閣府でのサイバーセキュリティ関連業務に従事。
以後、経営企画局にて経営戦略やCVC・電通ベンチャーズでの投資業務を担当。
国内外のスタートアップのソーシングや成長戦略、IPOに関わる。
シリコンバレー駐在、海外投資先の日本進出支援、投資先取締役、㈱電通グループ・マネージャーを経て、2020年9月よりDG Daiwa Venturesに参画。
過去の投資先に、Robloxに買収されたLoomAI、TripleLiftに買収された1plusX、Paypalに買収されたCurv、プライバシーテックのAcompany、Edtechのコノセル、フィジカルAIのSkild AIなど。
Y Combinatorには22年以降全バッチに参加。
第6期JAXA宇宙飛行士選抜試験 セミファイナリスト。
EY Japan 女性起業家支援Entre Generatorメンター。
グローバルスタートアップ投資推進協議会の代表理事として、Global Founders Summit※を主宰。
※Global Founders Summitの詳細はこちら:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000…

運用総額300億円、3号ファンド100億円超でファイナルクローズ

丹下:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の丹下です。

この1本をご覧いただければ、DG Daiwa Ventures株式会社の全てが分かる。なんと今回は、4年ぶりにご出演のDG Daiwa Venturesマネージングディレクターの渡辺さんをお招きしております。よろしくお願いいたします。

渡辺:
よろしくお願いいたします。

丹下:
1本目では、まずはDG Daiwa Venturesさんのことを色々お伺いしつつ、後編の2本目で渡辺さんのお話だったりとか、あとは出資先のお話を色々お伺いして、お時間があればおまけ編も作っていきたいなと思っております。

では早速1本目なんですけれども、まずDG Daiwa Venturesさんについて色々お話をお伺いしてまいりたいなと思います。

渡辺:
国内と海外のリミテッド・パートナー(LP)さんからお支えをいただいていまして、大企業さんであったりとか、金融機関さんが10社以上入られて、今の運用総額は300億円ぐらい。

直近の3号ファンドを今年に立ち上げさせていただいたんですけれども、それは100億円超でようやくファイナルクローズをしたという形になります。

丹下:
素晴らしいです。ファンドとしては今何号まで立ち上がっている形なんですか?

渡辺:
今は3号ファンドまで来ております。

丹下:
そうすると投資のステージとしてはシリーズA以降みたいな形なんでしょうか?

渡辺:
大企業の名前がついているのでシードをやらないと思われがちなんですけれども、結構ガンガンやっています。

例えば、今年の初めに投資させていただいた株式会社レンズさんという会社があるんですけれども、委託先の管理システムで日本の開発現場に革命を起こそうという会社なんですけれども、こちらは最初のベンチャーキャピタル(VC)ラウンドで投資をさせていただきました。

それ以外にも今年発表しているだけでもキャッシュフロー管理システムの株式会社Kanagleeさんとか、警備業界向けSaaSの株式会社strayaさんという会社もシードラウンドで出させていただいています。

国内外合計約140社に投資、海外Tier1 VCとの共同投資実績

丹下:
出資件数としては1・2・3号を合わせて何社ぐらいありますか?

渡辺:
1・2・3号を合わせますと、これまで国内に約70社、海外にも約70社ということで、合計約140社に投資をしております。

丹下:
すごいですね。その中で渡辺さんがご出資を判断されたのは何社ぐらいありますか?

渡辺:
マネージングディレクターになってからは全ての投資判断に携わるんですけれども、自分でソーシングから実行までするのは、4年前に出演させていただいた頃のほうがやっていまして、今はチームみんなでソーシングをして判断をしていくと。

私自身は2号ファンドからジョインしているので、1号に関してはバリューアップであったり、イグジットのところに関わらせていただいている状況です。

丹下:
4年前の動画の時には、まだキャピタリストになって日が浅い状態と動画でおっしゃっていたんですけれども、前職の株式会社電通から転職されていらっしゃって、4年前の時点でキャピタリスト歴はどれぐらいだったんですか?

渡辺:
電通ベンチャーズという大企業のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)でスタートアップ投資という仕事に初めて就かせていただいて、電通の経営企画局と電通ベンチャーズをダブルハットでやるような肩書だったんですけれども、特に貴重だったのはその後シリコンバレーで現地の独立系のVCに行かせていただいたということです。

現地でどういうふうに投資判断が行われていて、海外のTier1のVCたちがどういう動きをしているのかを学びまして、しばらく電通に戻って、大企業の経営企画業務や戦略投資の動きにも関わらせていただいていたんですけれども、やはり独立系というところでDG Daiwa Venturesにジョインさせていただいたのが2020年になります。

丹下:
4年前からどう変わりましたか?

渡辺:
海外を半分やっていますということで、海外投資においては、日本人である我々がTier1のVCたちと一緒に投資していくことは、言うのは簡単なんですけれども、やることは非常に難しいなというふうに思っています。

Sequoia Capitalさん・Accelさん・General Catalystさん・SV Angelさんとの共同投資の実績がこれまでに作れてきてはいるんですけれども。

そこに対して現場でどう判断して、スピード投資ができるようなスキームをちゃんと形成して、足の速いインナーサークルの案件にも積極的に入っていけるように、投資の判断の仕方とか、投資のフローのあり方であったりとか、そういったところの整備をさせていただいたのが最初で、結果的にそういった実績につながったというところですね。

資金調達支援が最大の強み、海外資本を日本に引き込む

丹下:
素晴らしいですね。DG Daiwa Venturesさんは出資した後に出資先とはどういう関わり方をされていくんですか?

渡辺:
得意としているのは資金調達のサポートになります。

丹下:
次のラウンドに向かう資金調達のサポートということですね。

渡辺:
おっしゃる通りで、グローバルのファンドから出資を集めるスタートアップさんが増えてきているかなと思うんですけれども、弊社だけでできること、できるサイズ感というのが限られているケースでも、海外の大きな投資家さんからお金を日本に引っ張ってこられる。そういった事例を作ってきているところが強みになります。

丹下:
そうするとポートフォリオの中で日本の企業と海外の企業で半分半分くらいではありますけれども、海外で上場を目指す方も結構いらっしゃるみたいな感じなんですか?

渡辺:
海外のファンドさんも日本に興味はあるけれども、情報がまだ少ないところで、日常的に情報交換をさせていただいていて、「こういう会社があって、海外でもこういう投資仮説でユニコーン企業になっている会社があるよね」みたいなところで盛り上がって、「うちの投資先はどう?」みたいな形で、まずは日本のマーケット自体をプレゼンして、その中で個社のご紹介みたいな形でつながることが多いかなと思います。

丹下:
つなぐ役割を担われている形なんですね。

渡辺:
非常に通過率が低い、1%以下と言われているY Combinatorであったり、Alchemist AcceleratorというBtoBでNo.1のアクセラレーターへのアプライをお手伝いさせていただいたりしています。

丹下:
通過しますか?

渡辺:
Y Combinatorは上位10%までいったケースはあるんですけれども、まだ。通過例を作りたいなと。

丹下:
楽しみにしています。すごいですね。

グッドパッチIPO、M&A多数のイグジット実績

丹下:
ちなみにDG Daiwa Venturesさんの中で、ポートフォリオの中でもすでにイグジットされた方もいらっしゃるんですか?

渡辺:
新規株式公開(IPO)した会社ですと、株式会社グッドパッチさんが投資先であったり、合併と買収(M&A)は海外の投資を半分やっているところが多くて、色々なパターンを我々は見させていただいているので、最近日本で大企業さんによるM&Aが活発化しているというような話もありますけれども。

そういった中で「こういうパターンとこういうパターンがあるから、組み合わせでこういう行動はどうですか?」みたいなご提案をM&Aに関してファウンダーさん側に、もちろん利益相反もあるので、我々があくまで投資家として情報をご提供するということをさせていただいています。

丹下:
素晴らしいですね。

タイミー、ispaceを見逃した教訓から学んだこと

丹下:
渡辺さん個人の話を聞きたいんですけど、個人的にアンチポートフォリオはありますか?

渡辺:
日本の案件で株式会社タイミーさんですね。投資仮説が思いつかなかったんですよ。

タイミーさんが電通ベンチャーズにきた時には、バリュエーションもそこそこ引かれていたというところで二の足を踏んでしまって見逃した。それよりも全然上の株価にいっているので、それ以来自分としても起業家の見方は少しアップデートをしまして、そこは見逃さないようにしたいなということを失敗から学んでいます。

タイミーさんだけじゃなくて株式会社ispaceさんも2016年頃に案件として来ていて、子供の頃から宇宙の領域がすごく好きなので、好きすぎるが故に、これはできるけどこれはできないんじゃないかみたいな、そういう現実的な目で見てしまいまして。

丹下:
解像度が高いが故にですね。

渡辺:
解像度が高かったのかは分からないんですけれども、最終的には株価のところで諦めてしまったんですが、上場してからその上をいっているので、自分を過信してたかをくくってはいけないという、ある意味アンラーンも必要だったりするところは学びとして日本のポートフォリオがあります。

NEDO審査通過率100%、堅い仕事をサポートできる強み

丹下:
DG Daiwa Venturesさんの他社とは異なる強みだったり、特徴があれば簡潔にお伺いできればと思うんですが?

渡辺:
スタートアップさんが苦手になりがちな、いわゆる堅い仕事であったりとか、例えば国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)さんのディープテック向けの補助金の審査があると思うんですよ。

最近はリード投資家も一緒にプレゼンをするような建て付けになっていると思っていて、そこのピッチはリードしている場合にはやらせていただいているんですけれども、NEDOの今の審査の通過率でいうと100%になっています。

国の補助金であったりとか、融資であったりとか、ファイナンスもレイターになってくると堅い仕事がスタートアップの中でも増えてくると思うんですよ。そういったところでサポートできるメンバー、お堅い会社で鍛えられたメンバーが多いので。

丹下:
非常に力強いですね。素晴らしいです。

10億円規模の資金調達が崩壊、総力戦で十数億円に盛り返す

丹下:
ポートフォリオの中でも結構ですし、渡辺さんの印象の中でも結構なんですけれども、「こういうハードシングスを乗り越えていて、こういう出資先です」みたいなのをぜひお伺いしたいです。

渡辺:
資金調達関連のハードシングスで、大口の投資家さんからリードするという言質も実際にいただいていて、それを当てにして事業プランを組んでいたんですけれども、結局最後の最後で落ちまして。

色々なステークホルダーさんがいるファンドさんなので、最終の最終で入らなくなりましたと。それも10億円規模のファイナンスが一旦崩れたんですね。

気合と根性でDG Daiwa Venturesの総力を上げて、海外投資家の方々に声をかけまくりまして、結局十数億円規模の資金調達に盛り返しました。

丹下:
「DG Daiwa Venturesの総力」を上げての、総力について知りたいです。何をしたんですか?

渡辺:
我々がつながっているレイターの投資家さん・企業系のVCさん・海外の投資家さん、全て関係ありそうなところはご連絡をさせていただいて、ご興味があればおつなぎをするというようなことで。

丹下:
総当たり戦ですね。

渡辺:
はい。前提としてその会社がすごく良い会社だと思って、思っているからこそリードしてきたというのがあるので。

丹下:
そのファイナンスをクリアした後、泣いちゃうと思うんですけど。

渡辺:
起業家のほうがもっと大変だと思うんですよ。

我々は結局リード投資家であり、もちろん責任はあるという中ではあるんですけれども、私自身も起業していたことがあるんですけれども、そこでキャッシュがどんどんなくなっていく恐怖は、自分だけじゃなく従業員がいて、従業員の家族がいてみたいなことを考えると、本当に気が気じゃないと思うので、そこは起業家の頑張りであったり、忍耐力は尊敬すべきものだなというふうに思っています。

丹下:
影の立役者というか、素晴らしいですね。

XやDMで気軽にコンタクト可能、お問い合わせフォームも全件チェック

丹下:
どうやったら起業家の皆さんはDG Daiwa Venturesさんに会えるんですか?

渡辺:
Xをやっていて、イベントとかも地味にやっています。

丹下:
DG Daiwa Venturesさんのイベントはどうやったら感知できるんですか?

渡辺:
ポストをするようにしています。

丹下:
ご覧いただいている皆さんは渡辺さんのXをフォローいただければ、DG Daiwa Venturesさんがやっているイベントも気づけると。

渡辺:
あとは、お問い合わせフォームを全件見ています。

丹下:
XにDMをしても良いし、DG Daiwa Venturesさんのお問い合わせフォームで「面談してくれませんか?」とお願いをして、拾ってもらえる可能性が高いということですね。

渡辺:
全部返信ができていなくて大変恐縮ではあるんですけれども、ただ全部情報としては見させていただいていて、我々はチームワークでやっているファンドなので、投資を進めたい強い意見があった時に、「会ってみましょう」というようなことは、お問い合わせフォームでも普通にやっています。

Outlier TeamとWhy Now?、投資判断の2つの軸

丹下:
数あるお問い合わせの中からどうやったら皆さんの目に留まりますか?

渡辺:
ベタなんですけれども、Outlier TeamとWhy Now? と言っていて。

Outlier Teamに関しては、卓越したチームかどうか。チームの肩書とかだけじゃなくて、ドメインに関する専門知識であったりとか、お会いした後は忍耐力や成長力など色々なところを多角的に見させていただいて、これはOutlierであるというチームに対して投資をさせていただきたいなと思っています。

2つ目のWhy Now? は、社会と規制の変化や市場の変化によって、業界のコスト構造が変わるタイミングは各業界にあると思っていて、テクノロジーによってやらなくて良いことが増えて、かかるコストがゼロに近づいていくみたいな。

そんな時にスピードの速い会社に勝ち目が出てくると思うので、そこを狙っているなみたいな会社があると、すぐに連絡させていただいたりとか、我々からドアノックさせていただいています。

AI一段落後の次の波、海洋・核融合・ロボット領域に注目

丹下:
具体的に業界、例えば技術とかサービス、これだったらより可能性を高く気にして見ているのはあったりしますか?

渡辺:
AIの波が一段落してきているかなと思っていて、海外だとシード・アーリーが集まりづらくなってきているというようなところでいうと、その次を見ています。AIを応用した次でも良いですし、まだ新しい、領域の名前もついていないような次でも良いです。

具体的にいうと、例えば海洋とか核融合とかロボットとかは、ハードが絡むのですごく足は長いんですけれども、一方でセカンダリー市場が発展している海外ですと、シードから入って、途中で役割のある投資家さんにお渡ししていくということもあるので、しっかりとイグジットを確保できる可能性があるというところは、すごくアンビシャスな業界も含めて見ています。

それこそ宇宙とか、マイクロリアクターとか、色々な領域があると思うんですけれども、我々も必死にキャッチアップをして、そういったところには投資をしたいなと思っています。

外貨獲得できる企業を支援し、日本の国際競争力再生へ

丹下:
ものすごく勉強になります。まだまだ聞きたいんですけど、前編の最後として、ぜひ今後DG Daiwa Venturesさんとして成し遂げたいことや達成していきたいことをぜひお伺いしたいです。

渡辺:
最近感じていることは、何のためにこれをやっているのかという。後編でお話しする宇宙飛行士の試験を受けた時もすごく悩んでいた時期なんですけれども。

なぜこの仕事をしているのかみたいな話でいうと、日本は名目GDPで今年にインドに抜かれて世界5位になるだろうと言われています。国際競争力という意味でどんどん転落してきている。

日本がこの停滞から立ち上がって、転落に歯止めをかけるために何をすれば良いかというところでいうと、外貨を稼ぐしかないと思うんですよね。我々の使命は、将来外貨を稼げる日本経済の成長を牽引できる企業がスタートアップの時から支援することかなと思っているんですね。

なので、投資先のポテンシャルを引き出して、1つ目としてはその事業をグローバルに向けて展開する。2つ目はその会社が国外の投資家から巨大な資本を募ることができる。その2つを円滑にできるように支援をしていきたいなと思っています。

モルス:信州大学発シルク由来の素材でシンガポール市場へ

渡辺:
我々の投資先だとモルス株式会社さんというシルク由来の新タンパク質素材を作っているディープテックの会社なんですけれども。

そちらの最高経営責任者(CEO)にすごく強いリーダーシップがあって、まさに事業をグローバルに向けて展開するところを体現してきていて、信州大学発の日本初のバイオ原料をシンガポールの市場に向けて展開をしているんですよね。

規制環境とかに関しても自ら働きかけて、変革をして外貨を取りに行くというそのスタイル自体もすごく尊敬していますし、我々もそこに共感して投資をさせていただいています。

Jamm:AtoA決済で海外ユニコーン事例を日本で再現

渡辺:
あとは海外の投資家から集めるという意味だと、海外の投資家から集めやすい事業と集めにくい事業はあると思っています。集めやすいでいうと、海外ですでにユニコーンの事例があるというのは分かりやすい、集めやすい特徴かなと思っています。

最近我々が投資した株式会社Jammさんという、銀行口座から直接決済サービスができるサービスをやっている会社があるんですけれども、AtoAの領域ではすでに海外でユニコーンが生まれているんですね。なので、ご紹介する時に1行で済むんですよね。

「あの人たちのような会社の日本版です」と言えるので、今後海外資本を含む難易度の高いファイナンスではあると思うんですけれども、CEOのポテンシャルも含めて乗りこなせるだろうなと思って投資をさせていただいたんですけれども、そこはすごく期待している部分です。

丹下:
終始かっこいいですね。非常に憧れます。

渡辺:
もっと知っていただきたいなというふうに思っています。

丹下:
ぜひ渡辺さんのXをフォローいただいて、色々なイベントもご覧いただけたらなと思います。

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。それでは、次回の動画でお会いしましょう。さようなら。

【逆張り・成長力評価・仮説先行】3つの異なる投資判断手法で選んだ注目スタートアップ【DG Daiwa Ventures 渡辺大和 vol.02】

AI前提の個別指導塾「コノ塾」が切り拓く教育DXの新潮流

丹下:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の丹下です。

本日はDG Daiwa Venturesマネージングディレクターの渡辺さんをお招きした2本目です。ポートフォリオの中からイケている3社のお話をお伺いしたいと思います。今回も渡辺さん、よろしくお願いします。

渡辺:
よろしくお願いいたします。

丹下:
DG Daiwa Venturesさんは何者?みたいなところは前編で詳しくお話ししているのと、4年前も実は動画を撮らせていただいているので、概要欄からぜひご覧ください。

今おすすめの3社はどういったところになりますでしょうか?

渡辺:
悩んだんですけれども、株式会社コノセルさんという会社でして、教育×テクノロジーの会社です。具体的にやっているビジネスとしては、コノ塾という個別指導塾をやっています。

このコノ塾がすごく広がっていて、ものすごく成長してきているんですけれども、我々は2021年に投資をさせていただいておりまして、僕がDG Daiwa Venturesに入ってから初めての投資案件はこれです。

丹下:
思い入れはひとしおですね。

渡辺:
思い入れはすごくあって、チームとしては代表も含めてQuipper Limited.という会社の創業メンバーたちが起業しています。

その後は株式会社リクルートホールディングスに買収をされまして、リクルートの中でスタディサプリという事業の原型となったチームが創業して、スタディサプリとかQuipper Limited.そのものも成功していると思うんですけれども、チームと教育業界というところのフィットもすごく強いメンバーになります。

丹下:
普通の個別指導塾とは何が具体的に違うんですか?

渡辺:
教材がAIを前提として作られているところがあります。

通常の業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)でいうと、AIが得意とか、SaaSを作ったテクノロジーが得意な会社さんが、業界の大企業から順番にアプローチして売っていくということが通常とられるDXのやり方だと思うんですけれども、コノ塾自体がDX・AI前提で作られている個別指導塾です。

先生の負担を減らすAI活用の仕組み

渡辺:
僕自身、個別指導塾のアルバイトをしていたことがあるんですけど、先生はやっぱり大変で、何が大変かというと、教えることじゃなくて、生徒を座らせて机に向かわせるところがすごく大変です。そこは今も人間しかできないと思います。

ただ、教えながら頭を切り替えて、心の知能指数(EQ)を高く保つのを2~3人まとめてやるんですよね。これがめっちゃ大変なんですよ。

コノ塾がやっているのは、教えるところは分からないところを中心にAIを前提としたサービスで教えてくれます。座らせたりとか相談事とかも色々あるわけですよ。人間でしか受けられないところを先生が受けていくというようなところで、そうすると先生も余裕を持って接することができるんです。

SaaS全盛期に「箱で広げる」戦略を選んだ理由

丹下:
自分がコノ塾さんに出会った時に投資判断ができるかと言われたら、個別指導塾に出資をするというのはすごく難しい気がします。

渡辺:
当時は2021年なのでSaaS全盛期です。投資委員会も「なんで?」みたいな話になると思うんですよ。

学習塾業界がどうなっているかというと、都道府県ごとのフラグメントな市場が広がっていて、そうすると大口顧客としてキャッシュをDXだったり、AI化に対して拠出できる大手企業は他の業界みたいにいっぱいいるわけじゃないと。

仮に通常のバーティカルSaaSと同じようなアプローチをとってしまうと、都道府県ごとの無数の中小塾に全部営業をかけなければいけないというのは会社が疲弊してしまうじゃないですか。そうではなくて、競合として並び立って自分たちも塾をやると言っているのがコノ塾です。

結果的にうまくいっているのはSaaSアプローチではなくて、こういう箱で広げていくアプローチというところが、もちろんこれからも広がっていくと思います。

丹下:
その知識があっても、チーム力の強さを感じますね。色々な角度で出資の判断をされて、可能性を見出して判断に至ったということですよね?

渡辺:
おっしゃる通りです。

丹下:
出資判断のスピードはどれぐらいかかるんですか?

渡辺:
デューデリジェンスを始めて1ヶ月ぐらいで判断をすることが多いです。

丹下:
まさか個別指導塾が出てくると思いませんでした。

渡辺:
コノ塾はお子さんがいる方におすすめです。

ブロックチェーンからピボット、AIガバナンスで世界へ挑む「Acompany」

丹下:
おすすめの2社目をお伺いさせてください。

渡辺:
株式会社Acompanyさんという会社になります。

サードパーティーのAIに自社のデータを入れる時に、どうしてもセキュリティの問題が気になるという中で、プライバシーとかガバナンスの専門性を彼らは持っていて、AIにデータを入れる時の安全性を担保するということができる会社になります。

丹下:
いわゆる何でもかんでも会社の大事な機密情報をChatGPTでやってしまうみたいなところの安全性を担保してくれるということですね。

渡辺:
まさにそうですね。AIガバナンスと言われるような領域です。

丹下:
たしかに問題視されて注力されていますよね。

秘密計算からAIガバナンスへの転換

渡辺:
最初は何をやっていたかというと、僕が投資する前はブロックチェーンの会社だったんですよね。ブロックチェーンの会社からピボットしたタイミングで、何にピボットしたかというと、秘密計算というところで。

丹下:
Multi Party Computation(MPC)みたいなものですか?

渡辺:
お詳しいですね。DG Daiwa Venturesのポートフォリオの中ではその秘密計算、MPCのところをすでに投資先があって、秘密計算ということで意気投合しました。

AIみたいに技術としてはMPCも秘密計算も民主化はされていなかったと。技術的に極めてハードルが高いので、まだ限られたエンジニアしか触っていない状態の時だったんですね。

ブロックチェーンからピボットをするタイミングなので、当然その事業リスクはあると。ただ、ユースケースの可能性はすごく大きいなと思っていて、1つ目のユースケースとしてすぐ思いつくのは、複数社間でデータを連携する時に、データをA社からB社に開示できないじゃないですか。

なので、安全性を持ってできたらめちゃくちゃニーズがあるということで、わざわざデータを触ることを目的にしてジョイント・ベンチャー(JV)を作るとか、そういう重い動きになってしまうんですよね。

それが秘密計算を使うとクイックにできるということで、一般データ保護規則(GDPR)周りの規制というのもありますけれども、そこにも対応ができるというところがすごく大きいなと思いました。

丹下:
私の好きな領域なので、すごく面白いですね。

毎回驚かされる高橋社長の成長力

丹下:
もともと出会いは何だったんですか?

渡辺:
最初にお会いした時はオンラインで、その後対面でお会いしていく中で、高橋社長の成長力がすごくて、毎回アップデートがすごいんですよ。

丹下:
ピボットを見届けているんですよね。

渡辺:
量も質も半端なくて、本当に尊敬する人としての成長力みたいなところがあって。あとは投資してからの強みになるんですけれども、競技プログラミングというのがあるじゃないですか。

エンジニアの採用をどんどん競技プログラミングから取れていて、競技プログラミングに出るエンジニアの方はクオリティが高いエンジニアの方が多いと思うんですけど、その方々から見てAcompanyの会社のカルチャーだったりとか、技術的な専門性であったりとかが相当魅力的だと思うんですよね。

近い存在でいらっしゃったエンジニアの方も、いつの間にかAcompanyさんに転職をされていたりして。

丹下:
エンジニアが入りたい会社なんですね。

渡辺:
そうですね。

Y Combinatorへの挑戦が生んだ副次効果

渡辺:
あともう1つエピソードを話して良いですか?

丹下:
もちろんです。聞きたいです。

渡辺:
1つ目の動画でY Combinatorのことをお話しさせていただいたと思うんですけれども、Y Combinatorは世界で2万社ぐらいが応募して、最終的に百数十社が選ばれるという、率で言ったら1%以下の大変難しい狭き門。

世界で最も有名であり最も優れているアクセラレーターと言われているもので、Acompanyはいけるんじゃないかなと思ったんですよね。いってほしいなみたいなことを高橋さんとも話していて、高橋さんもすごくY Combinatorにご興味をいただいていて、実際にアプライをしました。

そのアプライをする資料も20問ぐらいで大変で、しかも英語で書かなければいけないということで、高橋さんたちがすごく丁寧に対応して、結局面談まで残れたんですよね。

丹下:
すごいことですよね。

渡辺:
それ自体も素晴らしいなと思いましたし、副次的ではあるんですけれども、Y Combinatorのアプライを埋めていく中で、単に技術を提供していくことはレベル高くできていたんですけれども、それをビジネスにしていった時に、海外でいうと似ている会社があるというのが、調べていく中で鮮明になっていったんですよ。

それが今のAIガバナンスとか、AutoPrivacy DataCleanRoomとか、実際のプロダクトを作るところにつながっていって、その一助としてY Combinatorのアプライがきっかけになっていたら大変ありがたいなというふうには思っています。

丹下:
全てのきっかけを逃さないんですね。ご出資されて、ご一緒されたのがいつ頃なんですか?

渡辺:
2021年に投資をさせていただきました。

丹下:
そこから3~4年経った今も成長されていますか?

渡辺:
そうですね。我々よりももっと大きなファンドさんがリードしていただきました。

丹下:
次のステージに行かれたんですね。

Startup World Cupでトップ10入り、日本唯一の快挙

渡辺:
最近でいうとAcompanyさんが海外のStartup World Cupに参加しまして、見に行きました。めっちゃかっこよかったです。英語のプレゼンがめちゃくちゃ様になっていて。

丹下:
高橋さんはもともと英語が堪能だったんですか?

渡辺:
堪能ではなく純日本人なんですけれども、キャッチアップされて、やっぱりそこも成長力がすごくて、常に驚かせてくれる起業家だなというふうにすごく尊敬しています。

丹下:
すごいですね。ちなみにプレゼンの結果はどうだったんですか?

渡辺:
日本予選は優勝していまして、そこから海外のスタートアップも含めて約130社がサンフランシスコに集まって、僕もそのタイミングでサンフランシスコに行って、準決勝で130社の中から10社に選ばれたんですね。

日本からは唯一のトップ10だと思うんですけれども、優勝はできなかったです。すごく悔しがっていらっしゃいましたが、一方で海外のカンファレンス、人数も数千人規模の参加者がいらっしゃったんじゃないかなと思うんですけれども、そこに確実に爪痕は残されたなというふうに思います。

3週間で有料顧客300社、Y Combinator採択の「Relixir」

丹下:
そんな素晴らしいAcompanyさんが2社目ということで、ぜひ3社目も教えてください。

渡辺:
最近投資したスタートアップについてもぜひご紹介できればと思っていて、Y Combinator出身なのでアメリカのサンフランシスコの会社になります。Relixir, Inc.という会社です。

一言でいうと、AIがどのように情報を引用するかを逆手にとって、AIに引用してもらいやすくすることをお助けする会社になります。

丹下:
AI版検索エンジン最適化(SEO)ということですか?

渡辺:
まさにGoogleに対してSEOをやるように、ChatGPTやPerplexityに対して、彼らは生成エンジン最適化(GEO)と言っているんですけれども、GEOという考え方を打ち立てています。

GoogleからAIへ、検索の主戦場が移る

渡辺:
Relixirの経営者はもともと起業家でもあり、数学の専門家でもあるという方なんですね。数学オリンピックのアメリカ代表の方なんですけれども。企業のマーケティングも今すごく大きく変わっていて、Googleの検索のシェアが20年ぶりに9割を切ったらしいんですよ。

これが何かというと、AIで検索しています。2024年の時点でそうなので、2025年のデータが出たらおそらく驚く結果が出るんじゃないかなとは思うんですけれども、やっぱり皆さんも日常的に情報を探すときにChatGPTに聞くことが増えてきていますよね。

丹下:
私はそうなりました。

渡辺:
そうですよね。そうなると、検索に出るということからAIの回答に引用されるということにブランドの目的も変わってくるかなというふうに思っています。

Relixirがやっている技術というのは、AIがどんな文章や構造を好んで引用するかというのを数理モデルで逆解析をしていると。そこからAIが引用しやすい構造に合わせて、企業のWebサイトだったりとか、コンテンツ記事であったりとかを自動でリライトして最適化してくれるというものになります。

14歳で3億円売上、天才創業者との出会い

丹下:
どう出会っていつ頃出資されたんですか?

渡辺:
2025年のY Combinatorのバッチがあるんですけれども、そこで出資をさせていただきました。Seanという創業者なんですけれども、14歳でアフィリエイト事業を立ち上げて、約3億円の売上を出しました。

丹下:
14歳で、ですか?

渡辺:
そうなんですよ。天才というか、やっぱりすごい方が多いですね。Y Combinatorは1%以下の採択率なので、半端なく優秀な方が多いんですけど、そのうちの1人です。

丹下:
そういう優秀な起業家さんが立ち上げた企業に日本の資本が入っているというのは純粋に嬉しいです。

渡辺:
我々としてもできることは日本のお客さんをご紹介したりとか、そういったこともできるかなと思っていて、かなり競争率が高いラウンドになるので。

丹下:
そんなに採択されていて、みんなも知っているからみんな出資したいんですね。

渡辺:
そうですね。その時ももうトラクションもわずか3週間なんですけれども、有料顧客300社というのが出ていて、これは結構足が速いなというのが分かっていたので。

日曜に面談、月曜に投資決定の超高速判断

丹下:
競争率が高いラウンドを勝ち抜いたわけじゃないですか。何をされたんですか?

渡辺:
Y Combinatorに我々はずっと投資をしてきていて、この4年間は毎バッチに投資をさせていただいているという中で、Y Combinatorの中に投資家をスコアリングするダッシュボードみたいのがあるらしいんですよ。

それを起業家が見ることができるらしくて、なんとなくこの投資家がどういう評価なのかはリファレンスが取れる状況になっているんですよね。

なので、我々も最初はコールドコールで、「すいません、ちょっとミーティングさせてください」みたいな感じで行ったんですけれども、そこを受け入れてくれて、日曜日に喋って、月曜日には決定を取りに行くみたいな、そういうすごいタイムラインでやっています。

ただ、その早い動きをするためには出会ったばかりで判断できないといけないので、SEOの次にこれがくるなみたいなのはなんとなくチーム内で議論していたというのがあって、それがあったのですぐ動けたというのもあるんですけれども。

約1万件のリードを自力で生み出す成長力

丹下:
海外に出資をした時、定例も月1回やられる形なんですか?

渡辺:
Y Combinatorの場合は、インベスター向けのアップデートがすごく型化されていて、それがすごく分かりやすいんですよね。AI検索経由で彼ら自身もそれを使ってリードを生み出したりもしているので、1万件ぐらいのリードが生み出されていて。

今のところは我々としてご紹介はもちろんしているんですけれども、それぐらいに留まっているという感じで、自力ですごいなという感じです。

丹下:
ここからの成長がすごく楽しみですね。

渡辺:
おっしゃる通りで、このチームならではの数学的な強みを活かして、AIをどう動かすか側の立場に立てているので、すごく興味深い会社になります。

丹下:
もっと聞きたいんですけど、それはカメラが止まった後に色々教えてください。

渡辺:
はい、分かりました。

視聴者とのコミュニケーションを大切に

丹下:
ありがとうございます。ということで今日も渡辺さんにお話をお伺いいたしました。

皆さん、最後までご覧いただきましたけど、私ももっと聞きたいと思っていますし、もしかしたら皆さんもその気持ちがあるかもしれないので、追加のご質問とか、分からないことがあったらコメントしていただければ、渡辺さんがお返事をくれると思うので、そこでコミュニケーションを取ってみてください。

渡辺:
「スタートアップ投資TVを見ました」と言っていただくとありがたいです。

丹下:
皆さんぜひコメント欄でご感想やご質問などいただければなと思います。それでは渡辺さん、今日もありがとうございました。

渡辺:
ありがとうございました。

丹下:
皆様も最後までご覧いただきましてありがとうございました。次の動画でまたお会いしましょう。それではさようなら。

【高市政権】戦略17分野でスタートアップの成長力を活かす「攻略法」|海外先進事例とともに「デュアルユース」モデルを解説【DG Daiwa Ventures 渡辺 大和 vol.03】

高市政権の17項目から見えるスタートアップの未来

丹下:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の丹下です。今回は、DG Daiwa Venturesのおまけ編になります。

なんと渡辺さんが書かれているnoteの中で「高市政権が掲げる『日本成長戦略』の重点17項目と、スタートアップにできることを考えてみた」というnoteがありまして、その中からおすすめの2つの領域について深掘りしてお話を聞いていきたいなと思っております。

今日も3本目なんですけど、渡辺さん引き続きよろしくお願いします。

渡辺:
よろしくお願いいたします。

丹下:
今日は、17の項目の中で挙げていただいている「5. 航空・宇宙」と「15. 防衛産業」についてぜひ聞かせていただきたいなと思っております。

今日は2つしか取り上げられないんですけど、17の項目については概要欄に書いてあるnoteに詳しく書いていますので、よかったら皆さんにご覧いただきつつ、17の項目をまず書かれていますけど、これはどんな背景で書かれているんですか?

渡辺:
高市総理の政権は言うことが具体的で、具体的に言ったらやる可能性が高いなというふうに思っているのが1つと、過去10年くらいVCとして投資活動していく中で、政策が市場の成長スピードとかビジネスのコスト構造を転換していくようなムーブメントは結構あったかなと思っていて。

その中でスタートアップが政策と連動しながらできることが何なんだろうなというところと、スタートアップにとってどう影響してくるんだろうみたいなのはすごい気になっていたんですね。

高市さんは総裁選に出られた時点から結構政策が好きな方なので、『国力研究』という著書を自分で出されているんですよ。それを読んで、大体こんなことを考えていらっしゃるんだなというのを見ていて、結局総理になられた時に、『国力研究』で触れられていた内容、その中にはフュージョンとかAIもそうですし、コンテンツとかも触れられているんですけれども。

そこで触れられていた内容が、成長戦略会議ができる前の所信表明とか、総裁選の出馬会見とかでも言われていたので、領域を具体的に示してくれる人なんだなというのをずっとアンテナを張っていて、これをまとめようと思ったのがきっかけです。

丹下:
高市総理の脳内というか、分かりやすくなってくるかもしれないですね。

渡辺:
すごく再現しているつもりなんですけど、もちろんこの奥には色々と語られていないことがあると思うので、あくまで公開情報ではあるんですけれども。

準天頂衛星から広がる商業宇宙産業の可能性

丹下:
特に今回の1つ目の航空・宇宙に関しては、選挙の演説の中でも、他国に依存しない測位情報・衛星情報を使ってみたいなところも話されていらっしゃいましたし、今回の渡辺さんが書き出されたところもぜひお伺いしていきたいなと思っています。

渡辺:
著書の中でも、会見とかでも準天頂衛星「みちびき」の話はされていましたし、明確にスタートアップの技術活用は言及されている分野かなというふうに思います。

有名な例でいうと株式会社アストロスケールさんであったりとか、アメリカの宇宙軍に向けてサービス提供ができているというところで、外貨を宇宙産業で取りにいくこともできているという事例だし、政府主導の宇宙安全保障というところと、商業宇宙産業の両面で成長余地が大きいと見られているんだなと思っています。

宇宙のために作った技術というのが、アポロ計画の時もそうですけれども、民間に対して転用されていくじゃないですか。すごくクオリティの高い技術が民間に広がっていくというところが、結果的に国民の生活を豊かにする技術につながっていくというところが、すごく宇宙産業のもう1つの良いところなのかなと思っています。

デュアルユース技術が切り拓く防衛スタートアップの未来

丹下:
宇宙から派生していくような形なんですけど、今回は防衛も高市さんは力を入れていかれると。

渡辺:
日本の安全保障を守っていくというところで、重要な技術の活用というところも含めて重要だということで、特に触れられている内容として、デュアルユースできる技術の育成と、防衛から民間へのスピンアウトを推進していくというような内容があるんですけれども、これは日本だけがやっていることではなくて、アメリカに先行事例もあるんですよね。

アメリカのスタートアップの業界で先行している事例としては、Andreessen HorowitzというアメリカのVCが提唱しているアメリカン・ダイナミズムというのがあります。

もともと西海岸のVCの方々はどちらかというと業界的にリベラルの価値観の方が多かったんですけれども、ここ数年で今の政権と親和性の高い勢力が現れて、その中核にあるのが民生と防衛の垣根を取り払ってスタートアップ主導で再構築しよう、競争力をつけていこうというような、それがアメリカン・ダイナミズムです。

その文脈で生まれた典型的なスタートアップで、Anduril Industries, Inc.というPalmer LuckeyさんというVRのOculus Riftというヘッドセットを開発した方で知られていますけれども、彼が率いている会社はAIとセンサー、それから無人機を連携させて、戦場とか国境とかを自律的に監視できる。

危険を冒して人間が今までやっていたところを、危険を冒さずにできるというようなことをやっていて、国境警備とか公安の警備とか、インフラの監視だったりとか、そういったところにも使える。

あとは災害時の捜索とかですね。そういったところにも転用できる技術になっていくので、公共とか商用の現場に、防衛で培った技術を還元していくモデルができている例かなというふうに思っています。

丹下:
それこそ他国に守ってもらうのではなくて、自衛できる国にこれから強くなっていこうみたいな意思表明でもあるんですかね。

イスラエル8200部隊に学ぶサイバーセキュリティ人材育成

渡辺:
物理的な攻撃だけじゃなくて、サイバーセキュリティのところはすごく大事だなと思っていて。

丹下:
今もアスクル株式会社さんだったりとか、アサヒビール株式会社さんも困ってらっしゃいますよね。

渡辺:
大企業さんがそこで困られていらっしゃると。能動的にそこを防御していく取り組みというのは必要になってくるかなと思っていて。

これも他国の事例にはなるんですけれども、例えばイスラエルは、日常的に妨害を受けたりとか、合戦が繰り返されているような国だと思うんですけれども、イスラエルの中でいうと、イスラエル諜報特務庁(モサド)というインテリジェンス機関がサイバー戦争対策の部門を有していまして、サイバー攻撃という意味でいうと、防御の精鋭部隊として8200部隊と言われるようなものが機関としてあります。

この機関は軍の機関なんですけれども、そこから国家防衛の最前線でサイバーセキュリティとか暗号とかAIのエンジニアリングとかをやっているチームなので、ものすごく優秀なんですよね。その彼らがいわゆる除隊、軍隊を卒業した後に、Wiz, Inc.というGoogleが大型買収したセキュリティの会社を設立したり。

丹下:
何兆円でしたっけ?すごい金額ですよね。

渡辺:
超大型の買収と言われていますけれども、Check Point Software Technologies Ltd.という時価総額約3兆3527億円になっている世界的なセキュリティ企業を立ち上げているんですよね。

そこのコミュニティというのはスタートアップに直接優秀な人材を還元していて、DG Daiwa Venturesが以前投資したCurv Inc.という会社も、8200部隊の出身の方が経営陣に名を連ねていて、結局大型買収されたというような形になるので。

現時点の日本ではそういったものはあまりないというふうに認識しているんですけれども、今後は世界的な水準で評価をされるセキュリティのスタートアップが育っていくうえで、官民連携というのを加速していくことは必ず必要になってくるんじゃないかなと。

これは僕が言っているわけじゃなくて、高市さんが言っているという話ですね。

丹下:
宇宙もそうですけど、防衛・セキュリティの守りを固めていくというのは、私も小さな力ながら漠然と日本を守りたいとずっと思っていて、そういったところが私たちの所属するベンチャーという界隈から、それに手を添えてくれるような仲間たちが出てきてくれたら非常に嬉しいですね。

4歳の夢から始まった宇宙飛行士への挑戦

丹下:
渡辺さん、宇宙飛行士の試験を受けたことがあるというのは本当ですか?

渡辺:
4歳の時にSTS-47というスペースシャトルがあるんですけど、スペースシャトルからの宇宙授業というのを見ていたことがあって。

丹下:
宇宙から配信される授業ということですか?

渡辺:
そうです。当時に毛利衛さんが宇宙飛行士として授業をやられていたのを見て、ずっとそれが心に残っていたんですよね。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の前の宇宙開発事業団(NASDA)のコズミックカレッジという、宇宙飛行士を目指す子供、中高生が集まって星を見るような会があって、そのゲストでサプライズで毛利衛さんが実際にいらっしゃって、めちゃくちゃ嬉しかったんですけれども。

その時に写真撮影をして、「宇宙飛行士になりたいんです」みたいなことを言った時にお返しいただいた言葉が「夢は思い続ければ叶うよ」みたいなことを言ってくれて、それが働いている間もずっと残っていて。

VCの仕事は10年続けているんですけど、その途中でずっとやる仕事なのかというのを悩んでいた時期が実はありまして。宇宙への思いがありながら、民間人として行く方もいっぱいいらっしゃいますし、どうやったら行けるかなみたいなことをふわっと考えていた時にちょうど宇宙飛行士の公募が始まって、しかも理系文系問わずになっていたんですよ。

なのでこれはやるしかないと。2021年の暮れから約1年がかりで宇宙飛行士選抜試験というのに挑戦をしました。

文系VCが挑んだSTEM試験とクマ歩き

丹下:
試験内容は今までの経験にないことばかりでしたか?

渡辺:
文系出身の自分にとってはSTEM試験と言われる、科学・技術・工学・数学の試験があるんですけど。

丹下:
全部違うじゃないですか。

渡辺:
そうです。そこが鬼門になっていて、ゴールデンウィーク返上で勉強をして、青チャートから取り出して3ヶ月ぐらい。もちろん仕事はしていたんですよ。1日2時間は机に向かうという目標を立てて勉強して、そこはなんとか無事に突破をできましたと。

その後も面白い選考の連続で、漫画の『宇宙兄弟』の最初を読まれていたら、あれ通りですね。筑波にいきなり集められてバスに乗せられ、体力試験とか月面に行くことを想定したミッションを4名グループに分かれてやるとか、そういうすごくエキサイティングな試験が面白かったんですよね。

丹下:
一番辛かったことと、一番面白かったことを教えてください。

渡辺:
一番つらかったのはクマ歩きです。クマ歩きは分かりますか?

丹下:
四つん這い?

渡辺:
四つん這いで歩くみたいなのがあって、僕は全然できなかったのでつらかったです。

丹下:
クマ歩きを山道でやれとかそういうことじゃなくて?

渡辺:
体育館とかでやるんですけど。

丹下:
それは運動神経の問題ですか?

渡辺:
それだけめちゃめちゃ下手でした。

丹下:
でもなんとかそこは乗り越えたということですね。

渡辺:
あとは大腸内視鏡検査もめっちゃ辛くて。

丹下:
それは色々な意味で辛いですね。健康チェックの一環ということですか?

渡辺:
そうですね。一緒に大腸内視鏡検査を受けているメンバーの4人の内1人が、今回の諏訪さんという宇宙飛行士になられた方です。結果的には現役宇宙飛行士と絆を深める機会になったので、良かったなと思っています。

1万人から50名へ、NHK密着取材の舞台裏

丹下:
一番楽しかったことはなんですか?

渡辺:
月面のミッションも楽しかったです。

丹下:
無重力を感じるんですか?無重力の設備みたいなのはあったりしないんですか?

渡辺:
あるのかなと期待したんですけどそれはなくて、月の砂を敷き詰めた場所に行ったりとか、そういう試験はあったんですけれども。楽しかったという意味だと、そういうグループワークは全部楽しくて。

グループじゃないんですけど、折り紙を折りながら試験も解くみたいなマルチタスク的なものもあって、それもすごく面白かったなと思っています。

丹下:
多面的な能力を試されていくんですね。

渡辺:
そうですね。

丹下:
試験の発表はどんな感じなんですか?

渡辺:
発表はWebサイトで行われます。その発表の瞬間をNHKさんが「撮っていいですか?」というのでいらっしゃって。

丹下:
密着されていたんですか?

渡辺:
そうなんですよ。エントリー自体は1万人ぐらいいらっしゃったんですけれども、そこから50名まで残ったんですね。その中で取材に答えてくれそうな人をNHKさんがピックアップしていて、それでNHKさんが家に来たという。

丹下:
もし受かっていたら、キャピタリストじゃなくて今宇宙飛行士だったということですか?

渡辺:
そうですね。その時は本気でVCをやめざるを得ないかなという覚悟もありました。50名まで残った段階で会社にも言いました。

丹下:
そこからお休みが入られた形なんですか?

渡辺:
「1週間携帯がつながらなくなります」というのがあって言わざるを得ないというのと。ですが結局、最終の第3次医学検査というのがあるんですけれども、それで落ちまして。

丹下:
医学検査で?

渡辺:
超精密な人間ドックみたいなのがあるんですけど、結局そこがネックで落ちています。なのでベンチャーキャピタリストとして引き続き、その時点でやっていこうと。

丹下:
それは、スタートアップエコシステム的には良かったと思っています。もう1回宇宙飛行士の公募があれば受けますか?

渡辺:
僕の医学検査のネックが解消されているかどうかを確認しますね。

丹下:
自力で解決できる項目なのかどうか分からないということですよね。

渡辺:
そうですね。

おわりに

丹下:
ありがとうございます。本当はもっと聞きたいんですけれども、17項目あるので全部はお伺いできず、今回は注目の2つの項目を聞いてみました。

渡辺:
ありがとうございます。

丹下:
もっと続きの話を聞きたいという方はコメントを残していただいたりですとか、渡辺さんはXもやっていらっしゃるのでそちらでコメントをいただいたり、お問い合わせフォームのご連絡も見ていらっしゃるということなので、ぜひご連絡いただいたりしていただけたら嬉しいなと思います。

今日はすごく楽しかったです。3本お付き合いいただきまして、ありがとうございました。

渡辺:
こちらこそ、ありがとうございました。

丹下:
それでは皆さん、最後までご視聴いただきましてありがとうございました。また次の動画でお会いしましょう。それでは、さようなら。