ブック事業部からCVCファンドの代表へ!?旺文社ベンチャーズ設立の経緯!|スタートアップ投資TV

○粂川秀樹 株式会社旺文社ベンチャーズ-マネージングパートナー
HP▶︎https://www.obunsha-v.co.jp/
1998年 青山学院大学 法学部卒業。
卒業後、旺文社に入社。2005年から社長室にて中期経営計画策定に従事。
2010年から営業戦略マネジャーとして毎年約200点の書籍の企画に関わる。
2015年より執行役員に就任し、出版部門を統括。
創業当初からある出版部門を率いる一方、新規事業開発を推進し、
学習アプリや学校向け学習Webサービスを展開。2016年に取締役に就任(現任)。
2018年4月から旺文社ベンチャーズ取締役、2020年12月から代表取締役に就任(現任)

編集者志望から教育出版社へ。新卒入社20年超のキャリア

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回からですね、株式会社旺文社ベンチャーズのマネージングパートナーの粂川さんにご出演をいただきまして、全3回にわたりまして配信していきたいと思っておりますので、改めて粂川さん、よろしくお願いいたします。

粂川:
よろしくお願いします。

石橋:
実はこんな時期というのもありますので、今までオンラインでしか僕自身粂川さんとお話をしたことなくて、正直まだまだ知らないところが多いのかなと思っておりますので、自己紹介というか、そもそもどんな方なんだっけというところをいろいろとお伺いしていきたいなと思っているんですけれども。

粂川さんはもともと学生時代であるとか、一番最初のキャリアはどういうふうに歩み始めていらっしゃるんですか?

粂川:
もともと編集者になりたくて出版社を就活で受けていまして、最終的に決まったのが学習参考書とか辞書とか、そういったものを扱う株式会社旺文社に1998年に入社しました。

石橋:
新卒で勤め始められてから20年?

粂川:
はい、ずっと旺文社に勤めています。

石橋:
旺文社さんの中ではそういう方は多いですか?

粂川:
うちの会社は多いですね。ほとんどが新卒で、中途はそんなにいないです。辞める人もかなり少ないですね。

石橋:
そんな環境の中で新卒で入られたあとに、粂川さんご自身はどういう社内での変遷といいますか、どういうキャリアを歩まれていますか?

偏差値を生んだ旺文社模試。廃止を新聞で知った衝撃

粂川:
最初入ったときは、旺文社模試というものがありまして、模擬試験ですね。

これも旺文社の一つのイノベーションなんですけど、最初に偏差値というのを模擬試験に導入したというのがあって、旺文社模試で初めて偏差値という概念を入れたんです。

石橋:
昔、めっちゃ参考にしていました。

粂川:
ありがとうございます。入社してすぐに車で、ずっと会社に行かずに、茨城・栃木を2年間ぐらい営業するというのをやっていました。

石橋:
営業でいうと、どういう方々を対象に営業されていたんですか?

粂川:
高等学校に行って、進路指導の先生に会って模擬試験を勧めるという、そういう営業ですね。

石橋:
2~3年はそういった地域に入り込んで、toB向けの方に営業されていらっしゃった後はどういうふうな変遷を辿られているんですか?

粂川:
2年後に栃木のホテルで朝に新聞を読んでいたら、「旺文社模試 廃止」という。

石橋:
新聞で知った?

粂川:
新聞で知って、会社に電話するじゃないですか。「そういうことなんだよ」というふうに言われ、採用していただいた高校にお詫びの行脚みたいなのをやって戻ってきたら、事業部自体がなくなって、一緒に働いていた大先輩たちがリストラにあって、本当に人が変わったようになってしまって。

そのときに本当に感じたのが、事業の継続性というか、こういうことが本当に起こってはいけないんだなというのをすごい強く感じましたね。

その後が塾の営業で、OEM(Original Equipment Manufacturing)みたいな感じですけど、塾に行って情報誌とか塾の教材を旺文社が受託して作りますよみたいな。

商品はないんですけども、何でも提案したら売り上げが上がってくるみたいな、そんな事業をやっていました。

創業90周年の教育出版社。三つの事業の柱とは

石橋:
旺文社という出版社をまだまだ知らない方もいらっしゃると思うので、改めて旺文社さんはどういう特徴を持った出版社さんでいらっしゃるんでしょうか?

粂川:
旺文社は基本は教育系の出版社になりまして、学習参考書、辞典、あとは雑誌、英検とかTOEICとか、資格試験に対応する参考書を出しているという出版社ですね。

メインは高校生対象が結構多くて、高校学参だったりとか、辞典も英検書とかも高校生が使う。螢雪時代という、1931年の創業当初からある雑誌で、そこがメインの事業です。それが出版事業というものになっています。

それ以外に、そのコンテンツを外部の会社に提供するライセンスアウトの事業がありまして、それがデジタル事業です。

カシオ計算機株式会社さんとかシャープ株式会社さんとか、電子辞書に対してコンテンツを提供したりとか、アプリとかにライセンスを提供するみたいな事業をやっています。

あとは広告事業みたいな形で、螢雪時代をWeb化した「大学受験パスナビ」というものがありまして、その螢雪時代と大学受験パスナビに大学とかから広告を取ってくる。そういう事業が、この三つが大きな事業となっています。

石橋:
一番最初のところの転属になった上では、高校向けの営業をまたやられていたということですか?

粂川:
塾向けですね。塾向けは今はほとんど少なくなっているんですけども、そのときは塾に向けて、高校だったり小学だったり中学だったりの教材を、塾だけだと作りにくいものを、旺文社の編集力を売るみたいな形だったりとか。

雑誌もやっていますので、その雑誌の内容を塾向けにアレンジして、塾専用の情報誌を作るみたいな、そういう事業をやっていました。

スタートアップとの出会いが変えた視点。CVC構想の芽生え

石橋:
そこまでのキャリアから今に至るところが全く想像できないといいますか。最終的に旺文社ベンチャーズに繋がっているところでいうと、旺文社さん自体も創業から約100年近いですよね。

粂川:
今年の10月で90周年です。

石橋:
そのぐらい重みのある会社さんが、確か出版業界でコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドをやられているのは業界内で初だったと思うんですけど。

そもそもどういう背景でCVCをやっていこうみたいなところが始まって、そこになぜ粂川さんがアサインされたというか、どういう社内で経歴を踏んでいたからこそ粂川さんだったのかみたいなのをぜひ教えていただきたいんですけど、どんな感じだったんでしょうか?

粂川:
紆余曲折あって、一番会社の中でも古いブック事業部という書籍の部門に配属になったのが2008年でした。

そこからしばらくして2012年にジェネラルマネージャーで責任者になって、そのときから紙の本だけでは今後シュリンクしていくのでまずいだろうということで、新規事業を始めたというのがあります。

新規事業を始めるにあたって、いろんなところと組みながらやっていくにあたって、スタートアップ界隈の人たちと知り合いになりまして。

自社の新規事業もそれなりにうまくはいくんですけども、スタートアップの人たちの話を聞いていると、一点集中で人もお金も投入して、めちゃめちゃ情熱をかけてやっていると。

会社の中の事業を、一つはできても、何個も何個も立ち上げていったので、スタートアップの人たちと完全に競い合うのは難しいという思いが、そのときからずっと心の中にはあったんですよ。

その中で、スタートアップの人からも「旺文社さん、CVCやらないんですか?」みたいな。そのとき私は「CVCって何ですか?」と、全く知らなかったんですよね。

CVCを調べて、「面白いな、旺文社はキャッシュもあるし、こういう使い方もあるんだろうな」と。

出版市場2.7兆円から右肩下がり。社外取締役の一言が転機に

粂川:
2017年の年末ぐらいに社外取締役から、全然僕がCVCを調べているのとは別の文脈で、「旺文社もCVCとか始めたら良いんじゃないか?」みたいなそういう話が出て。

ちょうど調べていたので、「やります」「じゃあ、やろう」みたいな形になって、2018年5月ですかね。

石橋:
ちなみに社外取締役の方は、なんで旺文社さんに「やったほうが良い」というふうに、社外から提案をしてくれたんですか?

粂川:
出版業界は1996年がピークで、出版社・取次・書店さん合わせて2.7兆円なんですね。

そこからずっと右肩下がりで、毎年3ポイントずつぐらい下がっていて、このままいくとまずいよねと。子どもの人口も減っていますと。

今は旺文社としては売り上げが伸びているけども、いつか急激に落ちるということがあるので、今あるキャッシュをうまく使っていこうと。

CVCになって、新規事業の領域を自社だけだと拡大できないじゃないですか。CVCをやることによって領域を拡大、その情報も取れるみたいな、そういうことをやった方が良いんじゃないかと。

何年か前から海外のEdTechファンドにリミテッドパートナー(LP)投資をしていたというのもあります。

石橋:
徐々に業界も変わってきているし、情報という文脈で海外のEdTech領域のファンドに投資をされていらっしゃって、ソーシングがあったりというところから、ちょうど社外の人たちと接点があって、スタートアップに接点があった粂川さんがドンピシャで手を挙げて作ったみたいな感じなんですね。

粂川:
そうですね。

4人体制でスタート。出版業界初のCVCファンド誕生

石橋:
最初はどういう体制で立ち上げましたか?

粂川:
最初は私の同期入社で、外に出て関連会社を作っていた人間がいて、私とその人間の2人で立ち上げました。

あとは旺文社から1人出向しました。提言してくれた社外取締役の会社のところから出向で、4人の体制で始めました。

石橋:
今回はどういう背景で、そもそも粂川さんはどういう方で、どういう流れで旺文社ベンチャーズさんができたのかというところをお話いただいたわけですけれども、次回の配信では出版業界初のCVCファンドがどういうファンドなのかというところをお伺いしてまいりたいと思っておりますので、また引き続きよろしくお願いいたします。

粂川:
よろしくお願いします。ありがとうございました。

【旺文社ベンチャーズ】大手出版社がベンチャー投資!EdTech領域で社会の問題解決を目指す|スタートアップ投資TV

M&Aをゴールにしない、フォロー投資が基本スタンス

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回もですね、前回に引き続きまして、旺文社ベンチャーズさんの出演回第2弾ということで、引き続き粂川さんにご出演をいただいております。粂川さん、今回もよろしくお願いいたします。

粂川:
よろしくお願いします。

石橋:
前回は粂川さんの方から、そもそも粂川さんって何者?みたいなところのお話と、どういう流れで創業約90年の旺文社さんが、それこそ出版社業界で初めてCVCファンドを始めるところまでの流れをお話しいただいたわけなんですけれども。その旺文社ベンチャーズさんがどういうVCなのかというところを、いろいろお伺いをしていきたいと思います。

まず大上段で、やっぱりCVCあるあるとしては、事業会社さんがスタートアップを合併と買収(M&A)をしていくみたいな戦略に則って出資活動されているケースというのは、やはり業界内でよくあるなというふうに感じるところではあるんですが、旺文社さんとしては、そのM&Aとスタートアップへのマイノリティ出資の活動というのはどういうふうに考えを持っていらっしゃるんでしょうか?

粂川:
基本、旺文社ベンチャーズとしては、M&Aはゴールにしていません。投資のスタンスとしても基本フォローで投資するみたいな感じで。

石橋:
旺文社本体もあまりM&Aはそんなに考えていないという感じなんですか?

粂川:
考えていないです。今までM&Aをしたことはないです。

石橋:
基本的に自社の新規事業と、外部はリターンとシナジーどっち目的でどっち主眼が強いですか?

粂川:
そこは結構聞かれる質問で、両方考えるんですけども、合わせ技一本みたいな感じでバランスは考えつつやっていますね。

ファンドサイズ10億円、1社あたり平均3,000万円の投資実績

石橋:
ちなみに旺文社ベンチャーズさんのファンドサイズでいうとどのくらいのサイズ感で、どういう金額のバジェットを1社あたり投資することが多かったりするんですか?

粂川:
もともと10億円のファンドで、今までの実績だと1社あたり1,000万~5,000万円。平均すると3,000万円という感じですね。

石橋:
株式の取得比率もそこまでは気にされず?

粂川:
そうですね。あまり気にしないですね。

石橋:
リード・フォローでいうとフォローの立場が多い?

粂川:
基本はリードはやらないというポリシーですね。

投資検討は平均2〜3ヶ月、アドバイザリーボードを経て投資委員会で決定

石橋:
逆にそういうような体制でやられている中で、検討プロセスといいますか、それこそいろんなスタートアップの方々からご連絡をいただくと思うんですけども、投資に至るところまででいうと、最初にコンタクトしてからどういうプロセスを経て、どのぐらい時間がかかるものなんでしょうか?

粂川:
だいたい平均すると2〜3ヶ月くらいになります。最初は紹介だったりとか、ホームページに連絡があったりとか、基本紹介が多いですね。

メンバーの中で一回揉んで、そこでOKが出たらデューデリジェンスをして、うちの場合アドバイザリーボードという決定権のない組織があります。

そこに旺文社の社長とか、スタートアップ業界に詳しい人間が入っていたりとか、そこでいろいろ議論して、そこで100%ダメだとちょっと厳しいんですけれども、そこで反対が出ても、その後旺文社ベンチャーズのメンバーで投資委員会をやりますので、そこで通すという感じですね。

石橋:
外部意見をアドバイザリーボードから聞いて、最終的には旺文社ベンチャーズの方々で判断しているという感じなんですね。

粂川:
そういう形になりますね。

石橋:
約3年間のファンド活動の中で、何社ぐらいすでに投資実行されていらっしゃるんでしょうか?

粂川:
全体で12社ですね。そのうち1社がEdTechファンドへのLPです。純投資は11社という形ですね。

出版社の強みを活かした支援事例:ハグカムとの協業

石橋:
具体的にいうと、11社の方々は事業会社に出資されていると思うんですけども、それこそCVCさんでリターンとシナジーの合わせ技でやっていらっしゃるということで、何かしら旺文社さんのリソースを活かしながら支援活動もされていらっしゃるのかなと思うんですけども。

例えばこんな投資先はこういうふうな支援活動であるとか、こういう事例があるよみたいなところは何かあったりするんですか?

粂川:
一番最初に出資させていただいたのが株式会社ハグカムさんという子ども向けのオンライン英会話で、講師が全員バイリンガルという会社なんですけども、そこは本当にプレスリリースを出した瞬間、代表の道村さんが知り合い経由で声をかけていただいたという思い出のある会社でもあるんですけど。

石橋:
ハグカムさん目線でいうと「ここだ!」と思ったのかもしれないですね。

粂川:
そうですね。チャットですぐに連絡が来ましたね。

石橋:
ハグカムさんとはどういう取り組みといいますか、どういうふうにご支援されていらっしゃるんですか?

粂川:
まずはコンテンツを提供して、それはビジネスなんですけども、英検のコンテンツを提供したりとかいうのがまず一つ目ですね。

二つ目は一緒に本を作るみたいな形で、子ども向けの英語の本を作って、その本にはハグカムさんのバイリンガルの講師の授業が受けられますよというようなサービスを付けています。

それはプロモーションにもなっていて、そこで何回か受けて、その後はハグカムさんの方にお金を払って続けてくださいねという。

石橋:
本を使ったマーケティング活動みたいなものを、出版社であるという特徴も活かしていらっしゃるんですね。

粂川:
そうですね。一回本を出せば日本全国すべての書店さんに本が配本されますので、良いプロモーションになるのかなと思ってやっております。

石橋:
やっぱり本経由での会員流入とか認知度はすごく上がるものなんですか?

粂川:
本は当たる当たらないがあるので。

石橋:
どのぐらい売れるかというのもありますしね。

粂川:
そうですね。そこによりますね。

石橋:
なるほど。

粂川:
これ出したら全てOKかというと、そこまでではないですね。

石橋:
出した上でどのぐらいユーザーさんが手に取って転換するかということですもんね。

学びエイドとの三社共同出版プロジェクト

石橋:
本の出版みたいな切り口の支援でいうと、他の投資先でもあったりはするんですか?

粂川:
株式会社学びエイドさんという中学高校の塾向けに動画を提供されている会社さんなんですけども、共同で本を作るというプロジェクトをやりました。

武田塾さんと学びエイドさんと旺文社で一緒に本を作りましょうという、こちらの本です。

石橋:
『古典文法 スピード・インプット』。

粂川:
武田塾一冊逆転プロジェクトというシリーズになります。

石橋:
どういうふうにして学びエイドさんの利があるような本というか、組み方になっているんですか?

粂川:
こちらは武田塾さんと学びエイドさんから「旺文社さん、こういうのやるけどやらない?」と言われたので、「面白そうなのでやりましょう」という形になったんですけども。

武田塾さんが「こういう参考書が欲しい」というのがあって、そこに学びエイドさんが本をサポートする動画を付けますと。

旺文社はその本の部分を作るという形で、学びエイドさんにとってはプロモーションにもなりますし、その動画を見ることによって学びエイドさん本体のサービスにもリーチしてもらえると。

ここもプロモーションの意味でも役に立ったかなと思っています。

スタートアップからの声掛けを待つ、押し付けないシナジー創出

石橋:
今の学びエイドさんの事例でいうと、武田塾さんと学びエイドさんから旺文社さんにお声かけをという流れだと思うんですけど、普段の支援活動でいうとどういうスタイルでやられているというか、結構積極的にご提案型で関与していくようなスタンスでいらっしゃるのか、別の方法でやっていらっしゃるのか、どういう感じなんでしょうか?

粂川:
旺文社ベンチャーズのポリシーとしては、スタートアップさんからお声掛けいただくのを待ってコラボするなり協業するなり、ということを考えています。

シナジーありきでスタートアップさんを困らせるということはやりたくないというのがあるので、お話いただいたらそれを社内でどこの部署でやったら良いのかみたいなところとか、社内だけじゃなくても関連会社ですとか、あとポリシーとしては競合でも紹介するという。

例えば出版社はいろいろあるので、旺文社で提供できないようなコンテンツがあればその会社も紹介しますよと言っております。

石橋:
出版業界でのネットワークは、旺文社さんはスタートアップの会社に負けるわけないですもんね。絶対横の繋がりがめちゃくちゃありますもんね。

粂川:
意外に出版業界は競合でありながら横の繋がりが長いので、競争しつつ仲良かったりするんですよね。

出版業界では「色が付く」を気にしない投資姿勢

石橋:
別の業界とかの例え話でいうと、この会社が出資しているならば同じ業界の会社は出資しないとか、場合によっては買収もしないし事業提携もしないみたいなことも聞くことがあると思うんですが、出版業界だと色が付くみたいなことはほぼないんですかね?

粂川:
旺文社ベンチャーズと旺文社はそこは気にしていないという形で、ワンダーラボ株式会社(現:ワンダーファイ株式会社)さんというSTEAM教育とか非認知系のThink!Think!とかワンダーボックスというサービスをやっている会社は、株式会社小学館さんが出資されていて、旺文社もその後で入りましたけれども。

そこは、旺文社は気にしていません。多分OKだったので、小学館さんも大丈夫だったと思います。

アーリーからミドルが中心、プレシードからレイターまで柔軟に対応

石橋:
改めてそういうシナジーとリターン目的で投資をされているということは、一社平均3,000万円ぐらいということだと思いますが、だいたいスタートアップ側のラウンドといいますか、事業進捗でいうと、どういうタイミングの方々に出資をしているケースが多いんですか?

粂川:
アーリーからミドルというのがもともと最初に立てた戦略だったんですけども、基本そうなっていますが、どシードとレイターも入っていますね。

石橋:
どシードもいるんですね。逆にCVCさんだとどシードはやりにくいのかなというイメージがあったんですけど、投資委員会はどういう観点で決めたりしていたんですか?

粂川:
投資領域も教育、EdTechといって、結構いつも悩んでいるんですけども、教育と広く捉えるのか狭く捉えるのかとか、周辺領域のHRTechはどうなのかとか。

石橋:
社員教育みたいなところですね。

粂川:
そうですね。どう考えるのかとか、AIはどうなんだとかいろいろあるんですけども、どシードも含めて教育領域、周辺領域も言い訳できればOKだと思っています。

説明しきれれば「関係しているんです」と。どシードでも「こういう感じで伸びそうです」とか、「旺文社の事業に結構良い影響を与えそうです」みたいな。

紹介経由かホームページから、どシードでも気軽に相談を

石橋:
そういう方々が、さっきのハグカムさんの事例だと紹介でチャットで来たんでしたっけ?

粂川:
はい。

石橋:
見ていただいている皆さんが粂川さんとか旺文社ベンチャーズさんに検討してもらいたいな、お話聞いてもらいたいなというときは、どういうチャンネルからご連絡するのが一番良さそうですか?

粂川:
一番良いのは紹介かなと思っていますけれども、旺文社ベンチャーズのホームページからも普通にどんどん来ていただければと思います。

石橋:
ありがとうございます。この動画の概要欄の方に旺文社ベンチャーズさんのホームページも掲載させていただきますが、直接コンタクトしづらいなという場合は僕らの方にもお問い合わせいただければ、僕らの方で面談等とかお話を聞かせていただいた上で、粂川さんにもご紹介をさせていただければと思っております。

ぜひお気軽に、場合によってはどシードと呼ばれる事業がまだこれからですよみたいなところからでもお話を聞いていただけるかなと思っておりますので、ぜひご連絡いただければと思っております。

それでは粂川さん、今回もご出演いただきましてありがとうございました。

粂川:
ありがとうございました。

EdTech領域参入の際のポイント!スタートアップだからこその強みを活かす?|スタートアップ投資TV

アオイゼミのM&Aが象徴する国内EdTechの変遷

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

過去2回にわたって、旺文社ベンチャーズの粂川さんにご出演いただいているわけですけれども、その粂川さんから改めて、今回はテーマトークっぽくですね、いろいろEdTech周りについてお話をいただければと思っております。

国内だと資金調達がしにくいんじゃないかとか、オワコン気味なんじゃないかみたいなことを言われがちなマーケットかなと思いますので、そもそも国内で本当にオワコンなマーケットなのか、そもそも国内外でいうとどういうふうにマーケットは今動いているのかみたいなところを、一つテーマとして粂川さんにいろいろとお話を伺ってまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

粂川:
よろしくお願いします。

石橋:
粂川さんがEdTech周りのスタートアップの方と関わるようになったのは2010年とか2012年頃なんでしたっけ?

粂川:
2013~2014年くらいです。

石橋:
その頃から今に渡るまでの国内のEdTechスタートアップみたいな人たちは、どういうプレイヤーの方々がどういう変遷を辿っていらっしゃるみたいなところは、粂川さんとしてはどういうふうに観察していらっしゃったりするんでしょうか?

粂川:
印象的だったのは、アオイゼミ(株式会社葵の学習サービス)さんがずっと成長されていて、株式会社Z会さんにM&Aされたというところが結構印象的に残っていますね。

石橋:
しかも結果としてアオイゼミさんの石井さんが、売却された上で千葉道場ファンドを今やられていて、パートナーになられていて、また同じ界隈にいらっしゃるというのは面白いかもしれないですね。

粂川:
あとは上場されたところでいうと、株式会社レアジョブさんはオンライン英会話をやられていて、そういう意味ではそこも興味深く外から見ていましたね。

「成長が遅い」と言われる理由:学年区切りの特殊性

石橋:
それでいうと、それこそ上場事例であったりとか、M&A事例がある中で、僕自身EdTechはすごくファイナンスがしにくいみたいなことを又聞きで聞いたりもするんですけれども。

旺文社ベンチャーズさんはもちろんそこをメインで投資をされているとは言えど、既存投資先が他のVCさんを回っているときに「EdTechはな……」みたいなコメントがついたりですとか、そういう場面は実際あったりするんですか?

粂川:
「成長が遅い」的なことを言われることは結構ありますね。他のスタートアップと比べると、EdTech系は成長が遅いと。

私なりの解釈ですけれども、教育系は学年で分かれる部分が多いので、今でいうと高校生だったら1学年100万人しかいなくて、高校生全員に対するサービスだったとしても300万人しかいない。

大学も同じで400万人くらいしかいないというのがあって、定着するまですごい時間がかかるんですよね。

でもEdTechもしくは教育業界の良いところは、毎年100万人の新しい人たちが入ってきて、定番になったサービスを使っていくというのがあるので、定着してしまえば新しい人が入ってくるので安定するという、そういう業界かなと私は思っています。

石橋:
なるほどですね。今お話を聞いていて僕自身違和感があったのが、入れ替わるということはある意味新規参入とかもしやすかったりですとか、定着するということとは逆なんじゃないかなと思った部分があったんですけど。

学年が変わって人が入れ替わるのに、一回定着すると定着し続けるというのは、どういう背景があったりするという感じなんですかね?

粂川:
これはスタートアップでどうかわからないですけど、教育業界でいうと、例えば書籍とかアプリとかでもそうなんですけども、一回定着すると次の学年にも受け継がれるというのは、何か使うときに周りの声を聞くんですよね。

先生の声だったり先輩の声だったりを聞くので、それで結構受け継がれていくというのがあるんじゃないかなと思っています。

レガシー企業が強い市場でスタートアップが勝つ方法

石橋:
一回定着されているということは、いろんな出版社の方とか教育系の歴史ある事業会社の方々がおそらくマーケットを占めていると思うんですけど、その中でスタートアップをやっていくというのは確かに切り込みにくいというか、定着しているところに入っていくと思うんですけど。

EdTechはそういうところの難しさなのか、逆にいうと可能性なのか、スタートアップだからこそこういう突破方法があるんじゃないかみたいなところはありますか?

粂川:
確かにレガシーな企業が学校は学校でいて、塾とか予備校業界にはレガシーなところがいてというのがあるので、なかなか入り込みづらい部分はあると思います。

ただ入り込み方はいくつかあって、うちも出資させていただいているスタディプラス株式会社さんとかは、今までなかったものを提供しているので結構浸透していますし、高校3年生の2人に1人とか、3人に1人とかそのぐらいが使っていて、定番のアプリになっていて。

おそらく高校生が入ったら「これ使ったほうが良いよ」とみんなから勧められて使うみたいな形になっていると思うんですよね。

あとはatama plus株式会社さんとかは、レガシーな塾業界とか予備校業界に一緒に入り込んで成長しているという形なので、そういう入り方があるのかなと思いますね。

石橋:
それだけ聞くと全然オワコン感はないようにも思うんですけど、そう言われがちなのは、日本国内だけでいうと子どもの人口がそもそも減っていたりとか、そういうマーケット全体の雰囲気みたいなものがあるんですかね?

粂川:
子どもの数が減っているのは、それは相当インパクトがあるかなと。旺文社でいうと、旺文社の書籍に対しても今後かなりボディブローのように効いてくるかなと思っています。

大学生からHRTechへ:注目する「抜けている領域」

石橋:
そんな中で、中高生とかお子さん向けのEdTechもあると思うんですけど、先ほど社員教育みたいなところも広義でいうとEdTechと捉えられるみたいなお話があったように、これから粂川さんが注目しているEdTechマーケットという広い中で、ここはまだ可能性あるんじゃないか、こういうところをもっと投資していきたいよね、みたいなスイートスポットはありますか?

粂川:
それは日本の中でということですか?

石橋:
そうです。海外でも全然構わないんですけど。

粂川:
日本の中で考えると、私どもの悩みとしては、高校生までは結構強いんですけども、大学に入ってしまうと弱くなってしまうと。

新規事業とかでアプリとかを作っているんですけども、「ターゲットの友」という大学受験用の単語帳のアプリがあるんですけども、結構月間アクティブユーザー(MAU)数が30万人くらいに使っていただいて、ただ大学受験が終わるとそこで離脱してしまうんですよ。

なのでそういったものを次に渡せるようなスタートアップさんですとか、その先にHRTechとかがあると思うんですけど、ちょうど抜けているところがあるなと。

非認知能力の測定と育成:次の成長領域

粂川:
あとは私がということなんですけども、EdTechを見るときに、勉強を効率的にやりましょうという軸と、モチベーションとか継続させるためにはどうすればいいのかみたいな。

スタディプラスさんとかはどちらかというと継続みたいな、さっき出たatama plusさんとかは効率的に、みたいな。

継続とかモチベーションを維持するところは少ないなと思っているので、この部分は興味を持って見ています。

あともう一つ言わせていただくと、今後日本でも来るだろうと思っているのが、非認知能力の測定と育成だと思っていて、例えば外向性とか協調性とか主体性とかそういったものを、日本だとそれを測定するようなテストとかがないんですけど、海外とかではもうすでにサービスとして提供されていて、それをこういうふうに育成しましょうね、みたいな。

育成できるかどうかは、いろんな議論があるんですけども。そこら辺は興味を持っていて、ワンダーラボさんはどちらかというとそっちに近いかなみたいな形で、私たちは見ております。

エコシステム形成が鍵:レガシーとスタートアップの融合

石橋:
それこそ国外にもファンド出資であるとか、直接出資もされていらっしゃると思うんですけど、海外と比較しても国内のEdTechマーケットは、総論すると粂川さんでいうとどういう可能性があるといいますか、どういうマーケットだというふうに捉えていらっしゃいますか?

粂川:
このままだと厳しいんですが、それこそさっき出てきたレガシーというか、もともとある教育の出版社だったり塾予備校だったりとかがありますので、そういったところとスタートアップがうまく交わってエコシステムのようなものができてくると良いのかなと思っていて。

それこそさっき出たアオイゼミさんがZ会さんに買われたとか、そういう事例が出てくるとEdTechのスタートアップにも飛び込みやすくなりますし。

あとは、大学のコミュニティとかも日本はそこまでないのかなと思っていて。アメリカだとスタンフォード大学とか、そこのアクセラレータープログラムとかで選ばれると、結構その後も約束されていたりとか。

あとは旺文社も協賛してやっているんですけども、世界のEdTechピッチイベントみたいなものがありまして、そこの日本大会の協賛をしているんですけども、そこら辺がもっと盛り上がっていくと良いのかなと思っていますね。

石橋:
ありがとうございます。改めて今回は、ちょっと大きなテーマで国内でのEdTechマーケットについて、それこそ第一線で投資も含め、事業面でも旺文社という立場から関わっていらっしゃる粂川さんにお話を伺ってまいりました。改めてありがとうございます。

粂川:
ありがとうございました。