東電からVC業界への参入!?大企業のCVCから独立系VCへ!|スタートアップ投資TV

○山口浩一 株式会社環境エネルギー投資-マネージング・ディレクター
HP▶︎https://ee-investment.jp/
2018年に環境エネルギー投資に参画。
電力業界で長年培った経験およびネットワークを生かし、主に海外業務を統括。
東京電力にて、主に企画畑を歩んだ後、新規事業開発、海外ベンチャー投資業務等を担当。
2013年経営企画本部次長、2015年国際部長、2016年新成長タスクフォース事務局長を務める。
再生可能エネルギー事業会社ユーラスエナジーの取締役、
電力小売ベンチャーTRENDEの代表取締役社長等、関連会社の経営にも携わる。

1987年入社、大企業一筋から始まったキャリア

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回は、株式会社環境エネルギー投資さんからマネージング・ディレクターの山口さんにご出演いただきまして、いろいろとお話を伺ってまいりますので、山口さん、改めてよろしくお願いいたします。

山口:
よろしくお願いいたします。

石橋:
今回の配信では、山口さんがどういう経緯で環境エネルギー投資さんに入っていらっしゃるのかみたいな、そもそものご経歴からいろいろとお伺いをしていきたいと思っているんですけれども。

山口さんは僕が知り得る限りでいうと、前職が東京電力ホールディングス株式会社のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の東京電力ベンチャーズ株式会社さんの立ち上げからやられていらっしゃると思うんですけど、新卒から東京電力さんにいらっしゃるんですか?

どういうご経歴でベンチャーキャピタル(VC)業界へ来られたんでしょうか?

山口:
相当前になりますけど、1987年に。

石橋:
僕の生まれる前ですね。

山口:
太古の昔に大学を卒業しまして、東京電力という会社に入社したんですよね。

石橋:
入社した当時はVCになるとか、CVCをやるというのを夢にも思っていないですよね?

山口:
全く思ってなかったですね。当時はベンチャーもあったんでしょうけど、当然大企業に行くのが当たり前という時代でしたからね。

石橋:
その中で一番最初はどういうお仕事を東京電力で始めたんですか?

山口:
一番最初は東京電力の現場の仕事ですね。現場の営業所というのがありまして、そこで電気の受付を、多分イメージ湧かないと思いますけど、そういう仕事がありまして。

そこから始めたんですけども、3年くらい現場でそういういろんな電話を取ったり、お客様からの電話を受け付けしたり、電気料金の計算をしたり、そういうことをやっていました。

それから3年経って、平成元年ぐらいに東京電力の本店の企画部に行きまして、それ以降は企画部門が長いんですよね。

企画部門で10~20年。電力会社の戦略を描く

山口:
電力会社の企画で何をするかという説明が難しいんですが、その頃は電気の需要が右肩上がりでどんどん伸びていました。

電気の需要想定というんですけど、電気がどれくらい伸びていくかというのを計画したり、それに基づいていろんな社内の計画を作るとか、設備投資計画とか。そういう堅いインフラ企業の仕事をやったりしていましたね。

あとは会社全体の戦略というと、ちょっとかっこいいですけど。

石橋:
経営企画的な?

山口:
経営企画的な戦略作りみたいな仕事とか、経済産業省さんとかの役所といろんな調整だとか、なかなか言いづらいところもあるんですけど、そういうのをやっていましたね。

それを10~20年ぐらいやっていまして、そういう中でだんだん時代が変わってきまして、新規事業をやっていこうというような流れになりまして。

電気の伸びが鈍化してきたと。成長がなかなか見込めなくなったということで、それが2000年くらいかな。20年くらい前ですかね。その頃から新規事業を企画したり立ち上げたり、あるいは出資したり。

20年前から始めていた、VC投資への関心

石橋:
その頃からも出資はやられていたんですか?

山口:
そうですね。他の会社に出資したり、実は20年前にVCにリミテッドパートナー(LP)投資をしたりですね。その頃から始めたんですね。

石橋:
業界的に見てもかなり早い時期ですよね?

山口:
そうですね。20年前にアメリカのVCに出資をして、いろんな情報を集めたりしていましたね。

石橋:
それも山口さんが社内で担当されていらっしゃったんですか?

山口:
そうですね。担当していましたね。どういう分野の新規事業をやっていくか、どういうところに投資をするか、というようなこともやっていた記憶がありますね。

2011年、福島第一原発事故がすべてを変えた

石橋:
そこから改めて、CVCとして切り分けでと言いますか、東京電力ベンチャーズになっていった経緯でいうとどういったところだったんですか?

山口:
そこにたどり着くまでに、実はいろいろなストーリーがありまして。

ご承知の通り、2011年に東日本大震災があったじゃないですか。そのときに原子力発電所の事故があって、そこでガラッと状況が変わりまして。

当然それまでやってきた新規事業もストップして、全て事故の対応になりまして。それで国が入ってきて経営も変わり、大変革の状況で。そこだけで話が1日くらいかかるんですけど。

震災以降新しい体制になって、東電改革をしていこうということで、原子力の事故があった福島の復興の仕事がメインになるんですけども、やはり成長をしなければいけないということで、もう1回成長するために新規事業戦略を考えていこうという流れになりました。

ちょうど世界的にも原子力の事故を契機にしまして、世界的に、エネルギーの業界に変革の波が押し寄せてきまして、再生可能エネルギーがどんどん入ってくると。

それからデジタル化ということでどんどん入ってくる再生可能エネルギーを制御したり、蓄電池を組み合わせたりと。そういう変革の波が世界的に押し寄せてきて、日本にも当然押し寄せてくるということで。

そこで新しくイノベーションみたいなことをやっていかなければいけない、という状況が2015年ぐらいですかね。その頃に当時CVCを立ち上げて、という流れになったんですね。それをたまたま私が担当していたということですね。

日本初、エネルギー業界でのCVC立ち上げ

石橋:
長く経営企画の畑にいらっしゃったからそこで任された、みたいな流れだったんですか?

山口:
そうですね。長く企画部門にいて、海外のエネルギーの状況も勉強したり調査したりしていまして、日本の規制緩和というか、電力自由化の状況も何となくわかっていました。

世界の状況とか日本の状況を見ながらこういうイノベーションをやっていく必要があるという、そんなアイデアも持っていたんだと思うんですよ。当時の日本のエネルギー業界では、そういうCVCがなかったんですよね。

海外ではいろんな大手エネルギー会社がCVCを作って、ベンチャー投資を積極化して、ベンチャーに取り組もうという動きが始まっていたんです。それにキャッチアップをしなければいけないという危機感があったんですね。

大企業CVCの壁、そして限界

石橋:
そこからCVCを通じてVC業界・スタートアップ業界に山口さんご自身も入ってくることになると思うんですけど、CVCを立ち上げたときに苦労されたこととか、大変だったことは何かありますか?

山口:
それはいろいろありますね。全く新しいことは、当然やらなくちゃいけないと会社としても思っているんですけど。

やっぱり大企業はどこでもそうなんですけど、新しいことをやるといろんなことを言う人がいたり、いろんな軋轢が生じたり、変化への抵抗があったり、そう簡単にはいかないんですけども。

そういう中で、いろいろ取り組んでベンチャー投資も5~6件海外ベンチャーに投資をいたしまして、当時は日本の中でエネルギーのベンチャーが少なかったんですよね。

アメリカとかヨーロッパでベンチャーがどんどん出てきていて、ベンチャーがエネルギー業界を変えていくようなうねりが出てきていたので。

そういうベンチャーに投資をして、技術なのかノウハウなのか、あるいはビジネスモデルを学んで吸収して、それを日本に持ってこなければという気持ちでやったんですよね。

石橋:
結果的に山口さんご自身は環境エネルギー投資さんに転職をされていらっしゃると思うんですけれども。

そこでCVCの創業期からやっていらっしゃった上で、独立系のVCに移動されているというのはどういった背景だったんですか?

山口:
これもいろいろありまして、なかなか正確に説明するのが難しいんですけど、簡単にいうと大企業の中にCVCは難しい面がかなりありまして。

大企業だとなかなかスピードも遅いし、判断も時間がかかるということもありますし、ベンチャーに投資をしてそのノウハウを吸収するといっても、うまく吸収するためにはいろんな社内調整をしたりだとか。

石橋:
CVCあるあるみたいな。

山口:
そういう関係する部門と調整したり繋いだり、パイロットとか概念実証(PoC)をやったりするんですが、なかなか上手くいかなかったりしまして、結構限界を感じたんですよね。これは一筋縄じゃいかないなということですね。

50代での転職、「まだ元気なうちに飛び出す」決断

石橋:
そこのタイミングで新卒からずっといらっしゃった東電グループから転職するというところに至るのは、VC業界にどういう魅力を感じていたんですか?

山口:
もともと2000年頃にベンチャーファンドに投資をした頃からVCに関心を持っていたんですよね。

VCというのは面白そうだなとその頃から思っていまして、VCの仕事を自分でもやってみたいというふうにずっと思っていました。

実際、東京電力の中でも実現したんですけども、いろんな壁にぶつかって、なかなか自由にできなかったり結構大変で。

CVCは不安定なんですよね。トップとか役員のスポンサーが大事で、役員の方針に左右されますし、しっかりトップが理解をして、失敗して良いんだという器を持ってくれないと、なかなか難しい面があるんですよね。世界中どこでもCVCは不安定なんですよ。

石橋:
僕自身も前職がクルーズ株式会社という会社のもとで、CROOZ VENTURES株式会社というCVCを創業していまして、母体の規模が全然違うと思うんですけど、今の山口さんがおっしゃっていただいている内容というか、理解も想像もしやすいですし、確かにそういう軋轢というか難しさはめちゃくちゃありますよね。

山口:
あるんですよ。転職といってももう50歳過ぎていましたからね。定年みたいなものなんですよ。

定年には早かったんですけど、この機会に、元気なうちに飛び出した方が良いかなという経緯ですね。

ファンドレイジングから投資、そして起業支援まで

石橋:
今は移られてからどのくらい時間は経ったんですか?

山口:
2年半くらい経ちますね。

石橋:
何社くらい山口さんとして投資されていたんですか?

山口:
私が投資というより、チームでやっているものですから。最初私がVCに入った後はファンドレイジング、資金調達のほうをメインで担当していまして、特に海外の投資家さんを担当しておりまして、資金調達が落ち着いてから投資先の発掘・ソーシングをやったりですね。

実は投資というよりもゼロから会社を立ち上げるということをやっておりまして、その立ち上げもやったりしまして。ちょっと私は典型的なベンチャーキャピタリストではないんですけども、数社のエネルギー関係の投資に関わって来ておりますね。

石橋:
承知しました。ありがとうございます。

改めて次の配信では、そんな山口さんが今おっしゃっていただきつつあった、環境エネルギー投資さんについていろいろとお伺いをしていきたいと思っておりますので、ぜひ皆さん次回の配信もご覧になっていただけるとありがたいなと思っております。

【環境エネルギー投資】大変革の時代へ!大企業とベンチャーを繋げる支援|スタートアップ投資TV

日本唯一、環境エネルギー特化型VCの全貌

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回は、前回に引き続きまして、環境エネルギー投資からマネージング・ディレクターの山口さんにご出演をいただいておりますので、改めて山口さん、よろしくお願いいたします。

山口:
よろしくお願いいたします。

石橋:
今回は、前回の山口さんがそういったご経歴を経て転職をされていらっしゃる、環境エネルギー投資さんのファンドの概要等からいろいろと深掘ってお話を伺っていきたいんですけれども。

改めて現状の環境エネルギー投資さんのどういったファンドの規模で、どういったところに投資されているのかお話を伺ってもよろしいでしょうか?

山口:
環境エネルギー投資と名前がベタな名前なんですね。環境エネルギーを投資分野にしているという会社でして、環境エネルギー投資分野に特化している日本で唯一のVCではないかなと。

結構ユニークなVCだと思っていまして、特にエネルギー分野はさっき申しましたけども、世界的に大変革の時代で、変革の波が押し寄せているということでして。

変革があるということはベンチャーの活躍するチャンスが多いということでございまして、新しいベンチャーがどんどん出てきていると。

特に海外、アメリカやヨーロッパの方が変革の波がすごいので、ベンチャーも多いんですけども。日本でも世界同時進行で脱炭素化、再生可能エネルギー、デジタル化とかですね。分散化と言いまして、再生可能エネルギーがあちこちに分散して今できてきておりましてね。

そういう分散している再生可能エネルギーを集めて制御するデジタルテクノロジーみたいな。そういうのを組み合わせて、そういう変化が起きてきていると。その分野を対象にベンチャーに投資をしているファンドです。

30億円から150億円へ、4号ファンドの投資戦略

石橋:
規模感でいうとどのくらいの規模感のファンドをやっていらっしゃって、どういう規模でスタートアップの投資を実際にされていらっしゃるんですか?

山口:
ファンドは、今4つ目のファンドを立ち上げて運営していまして、4つ目のファンドが2018年夏ぐらいに立ち上げたファンドがあります。これの規模が150億円のファンドですね。

その過去のファンドは1つ目が30億円ぐらい、2つ目が60億円、3つ目が90億円、4つ目が150億円規模のファンドを今運用しておりまして、投資期間の真っ只中で、今まさに投資が佳境を迎えているというところです。

基本的には国内のベンチャーを中心に投資をしていますけれども、一部は海外の北米、ヨーロッパのベンチャーにも投資はしています。7~8割ぐらいが日本のベンチャーですかね。

石橋:
金額感とか、どういったラウンドのタイミングのスタートアップに投資されるケースが多いんですか?

山口:
シード・アーリーからレイターまで、あらゆるステージに投資をしているんですが、数でいうとアーリーが多いと思いますね。シリーズAとかが多いと思いますけども、シードもやっていますし、レイターもたまにやることがあるので。

石橋:
逆にメインのアーリーからシリーズAぐらいだと、リード投資をするのかフォロー投資するのか、どのぐらいの金額のバジェットで投資活動されていらっしゃるんですか?

山口:
いろいろケースはあるんですけども、エネルギーのど真ん中の分野であれば、我々がリードをすることが多いですね。

エネルギーの周辺の分野の投資もやっていまして、例えばeモビリティの分野。最近エネルギーとモビリティが融合してきていますので、モビリティ分野だとか、スマートシティとか、その分野はエネルギーに関係があるので。

そういうエネルギーの周辺の分野は、リードを取らずにフォローするというような例が多いんですけども、エネルギーのど真ん中であれば我々はよく知っているというか、知見があったりしますので、一応なるべくリードを取るようにしていますね。

投資の金額も1億~3億円ぐらいですかね。投資をしてその後またフォロー投資をしていくというそういうパターンですね。

大企業ネットワークを活かしたハンズオン支援

石橋:
投資先の方々と、どういうふうにコミュニケーションとか支援活動されているケースが多かったりするんですか?

山口:
これもケースバイケースで、エネルギー分野のど真ん中のベンチャーで、我々がリードを取っているようなところはかなり密にやってますね。エネルギー業界はどんどん変わっていきますし、戦略的なアドバイスとかパートナー候補の紹介、これは大企業だったりしますけど、私ども環境エネルギー投資の特徴の1つは大企業とのネットワークを結構持っているんですよね。

石橋:
ファンドの出資者の皆さんも大企業の方が多いですか?

山口:
LP投資家の皆さんも大企業の方々に入っていただいておりまして、それこそ大手の電力会社、大手の石油会社、メーカー、あと機関投資家にも入ってもらっていますけども、投資家の方以外にも私自身もエネルギー業界が長いものですから、いろんな大手のエネルギー事業者さんと、一応ネットワークがあったりしますので。

我々で特徴的なのは、大手のエネルギー業者とベンチャーの間に入って繋いだり、コラボレーションをプロデュースしたりするというのを特徴にしているものですから、支援の方法としてはそういう大企業をご紹介してベンチャーと一緒にパイロットをやってもらうとか、そういうようなことをやっています。

VPP Japan、スーパーの屋根が発電所に

石橋:
メインであるエネルギー領域系で、シリーズAでしっかりハンズオンして投資している具体的な事例でいうと、例えばどういった会社さんがあるんでしょうか?

山口:
会社名でいうと、例えば株式会社VPP Japanという会社がありまして、これも名前がベタなんですけど、VPPというのはバーチャル・パワー・プラントと言いましてね。

仮想発電所という言葉なんですけど、太陽光などで最近あちこちで増えていますよね。屋根の上に乗ったり、そういうのを束ねると言いますか、デジタル技術を使って制御しまして、あたかも1つの発電所のように制御するというのがVPPということなんですけど、そのVPPを目指しているベンチャーがこのVPP Japanというすごいベタな名前なんですけど。

この会社は何をやっているかと言いますと、スーパーマーケットの屋根に太陽光パネルを設置しているんですね。スーパーマーケットをターゲットにしていまして、屋根に太陽光を乗せて、その太陽光が発電する電気をスーパーマーケットのお客様が自ら消費するというモデルなんですね。自家消費と言いまして。

なぜそういうことをするかというと、太陽光のパネルの値段がかなり下がってきているんですね。普通電気というのは電力会社から買いますけれども、電力会社から買うよりも安いんですね。

自分のところの屋根に太陽光を置いてそれを自分で消費する、自家消費する方が電気料金が安いという現象が3~4年前から起きていまして、そこにチャンスがあるということで、今急成長していまして、全国のスーパーマーケットの屋根にどんどん太陽光パネルを乗せて、今はスーパーマーケットが自家消費をすると。

次のステップでその太陽光を繋いで束ねまして、少し大きめの太陽光パネルを乗せて、余剰が出たらそれを売電する。あるいはお互いに売買する。そういうトレーディングみたいな展開をしていこうということで、エネルギー業界の変革を象徴するような、そういうビジネスを今やっている会社なんですね。

石橋:
そういうところであれば、さっきおっしゃっていただいたように、中に入り込んでしっかり伴走しながら、大企業のネットワークも活かしつつサポートされているというところなんですね。

山口:
そうです。まさにそういう会社は我々のネットワークを使って、いろんな大企業とのパートナーシップをプロデュースしたり、余剰の電気を売電すると言いましたけど、いろいろ新しく電気の市場を政府が設計していまして、その市場が出てきていますので、そういう市場のいろんな情報を提供したり、こういうモデルが良いんじゃないかとか、そういう戦略的なディスカッションをしながら支援しているという感じですね。

Nature、30万台から電力事業へ進化

石橋:
エネルギー分野以外のスマートシティであったりとかモビリティ系のところでいうと、例えばこういうところの投資をしていて、こういうサポートとかこういう大企業とのマッチングの事例あるよみたいなところは、何か事例とかはお持ちでしょうか?

山口:
例えばホームの分野でいうと、Nature株式会社というベンチャーがありまして、最近かなり有名になってきていまして、Nature Remoというスマートリモコンを使って、いろんな家電を制御するというベンチャーがありまして。

家電だけではく蓄電池だとか、電気自動車を制御するような仕組みを作って、かなりデバイスの販売が増えてきていまして、今30万台ぐらい売っているんですけども。

この会社は実はすごいビジョンを持っていまして、最初はそういうハードを販売して家電を制御してもらうというところから始めているんですけども、そこから電気事業に展開していくと。

家電を制御すると消費量が変動しますよね。専門用語でフレキシビリティと言うんですけど、あたかも家が電池のようになるんですね。電気が増えたり減ったり。

それをビジネスにするためにあえて電気事業に進出して、余った電気をどこかに売る、あるいは買うとか、そういう自由に電気の売買ができるような事業を目指していまして。そういう事業展開を我々がアドバイスしていると。「こういうふうにやれば良いんじゃないでしょうか」「電力会社にこうやって売れば良いんですよ」とか。

そういうような支援をしているということで、基本的に我々の知見が活かせるところは、アドバイスをしたり、大企業を紹介したり、マッチングをしたりですね。そういうことをやっていますね。

石橋:
改めて環境エネルギー投資さんの全体像が分かったのかなと思うので、視聴者の皆さんも、動画の概要欄に環境エネルギー投資さんのホームページのURLも掲載をさせていただいておりますので、もし投資の検討をしてもらいたいとか、壁打ちに乗ってもらいたいみたいな場合は、ホームページの問い合わせフォーム等からご連絡いただければと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【大企業とスタートアップの連動】スタートアップが初期に大企業と連携してしまうとあんまりよくない!?|スタートアップ投資TV

大企業の新規事業が実行で躓く理由

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回も前回に引き続き、環境エネルギー投資のマネージング・ディレクターの山口さんにご出演いただいておりますので、改めてよろしくお願いいたします。

山口:
よろしくお願いいたします。

石橋:
今回は、今まで過去2回の配信で、山口さんご自身のお話ですとか、ファンドのお話はいただいてきたので、その2つの内容を踏まえてテーマトークで、大企業×スタートアップという大テーマで、いろいろとお話を伺っていきたいと思っています。

前職の東京電力CVC時代に多く見てきていらっしゃるであろう、大企業からスピンアウトしてスタートアップとしてやられていく起業家の方々、場合によってはマネジメント・バイアウト(MBO)されて出てこられるような方々について、いろいろとご意見いただければなと思っているんですけれども。

そういうスピンアウトして起業していくときに気をつけるべきことであったりとか、配慮するべきことみたいなところで、山口さんのご意見とか問題視しているところとか、何かお持ちだったりしますか?

山口:
このテーマは非常に大きなテーマで、深いテーマなんですよね。

大企業とスタートアップの違いに関する認識というか意見なんですけど、一番大きいのは大企業は新規事業をやっていますよね。私も東京電力時代に新規事業をやっていましたけども。

大企業は新しい事業の計画、コンセプトを作って、事業計画を作るというところまでは得意というか、完璧な計画を作るんですよね。

これは自ら作る場合もあるし、コンサルを使ったりするケースもあるけど、完璧な計画を作って社内承認を取るというところまではグッドなんですよ。

問題はそこから次のステップで、実行のフェーズになると、大企業は不得意なところでして、これは文化の問題だと思うんですけど、実行するということはリスクを取ることになるじゃないですか。

なかなか大企業の社員はリスクを取りたがらない。これは文化の問題。

失敗を認めてくれれば良いんですけど、失敗から学べるから良いじゃないか、というふうに温かく見てくれれば良いんですけど、失敗するとバッテンがついちゃって、自分のキャリアに傷がつくというのがありますよね。

本来は失敗すると、「お前はよく失敗した」と「何を学んだのか」というところに本当はフォーカスすべきなんですけど、なかなかできないんですよね。

だから、なかなか大企業の中で新規事業をやるというのは、そういう問題があるんですよね。

外部起業家を招いても失敗する理由

山口:
次にそれを踏まえてどういうパターンがあるかというと、大企業が事業をスピンアウトすると。

そのときに誰が経営するかというのが次の問題で、大企業の社員が経営する場合もあるんですけども、社員だとなかなかリスクが取れない、スピードも遅いということもあって、外から起業家を招いて、その人に起業してもらうというのが次の選択肢なんですね。

そのパターンで私も昔やったことがあるんですけれども、私が起業家を外から探してきて、一緒に事業計画を作って、「東京電力がお金を出すからこれをやってくれ」というのをやっちゃったんです。

そうしたら大変なことになりまして。まず外から起業家を連れてくるのは「なんてことをするんだ」となっちゃうんですよね。

これの背景には、大企業はどこでもそういう面があると思うんですけど、事業はしっかり管理をしたがるんですよね。ガバナンスを効かせるというか、自分が資本を入れている限りは、当然グループ経営で管理をしなくちゃいけないという、そういう文化がありまして。これはろくなことにならないんですよね。

本当は起業家か経営者に「自由にやれ」と、「自由にやって良いから」「失敗しても良いから」という、そういう温かい目で自由にやらせるのが一番良いんですけども、それがなかなかできない。

「今どうなんだ、報告しろ」「こういうフォーマットで報告しろ」と定期的にミーティングをやって報告させて、大企業からいろいろ言うわけですよ。これが一番良くない。

自由にできない、スピードが落ちる。これが本当に大変で、よっぽど覚悟があって腹の据わった大企業側の経営者がいないと、自由に経営できないので。

もちろん自由にしたからといって失敗することは当然あるんですけれども、大企業が管理するよりは成功の確率が高いと思うんですよね。

新しいビジネスモデルは、大企業の外でなければできないというのを自分たちは思っているので、外で何かトライさせるというのが大事なんですよね。

ジョイントベンチャーをおすすめしない理由

石橋:
スタートアップ目線であるとか大企業目線だとしても、結果、実行をやっていくために外部から経営者や起業家を招いていてもうまくいかなかった、もしくはうまくいきにくいという環境下の中で。

スタートアップと大企業を連携するときに、業務提携であったりとか、場合によっては資本業務提携、それこそジョイントベンチャーを創業していくみたいな人たちも最近であれば出てきているのかなと思うんですけど。

そういった方法論で、スタートアップと大企業が連動していく、連携していくみたいなところでいうと、どういった失敗事例があったりとか、こういうのは避けた方が良いみたいなご意見はありますか?

山口:
スタートアップと大企業の連携は非常に深いテーマなんですけど、もともと文化が全く違う企業がどううまく連携するのかというのは難しい面が非常に多いんです。

一方で、大企業は最近イノベーションをしなきゃいけないというので、ベンチャーの力を借りて新しい商品、新しいサービスを作っていかなきゃいけないというふうにも思っているので、大企業はベンチャーと連携したがっている面はあります。

だから最近はいろいろな連携が出てきているんですけども、一番難しいのがジョイントベンチャーなんですよね。

大企業とベンチャーがジョイントベンチャーを作って、「一緒にやっていきましょう」というのが、これがなかなか難しいと思っていまして、なかなか成功しない。同床異夢というのもありますし、スピード感も違うし。

大企業の意図というのはいっぱいあるんですけど、自分たちが持っていないベンチャーの技術だったり、ノウハウだったり、そういうのを取り込もうとするんですよね。

石橋:
大きく言うとそれが目的だったりもしますもんね。

山口:
それが目的なんですよ。

それの獲得が目的なので、どうしても取りにいこうとすると、ベンチャーサイドからすると「えっ!?」となっちゃうんですよね。「それ取られちゃうの?」となってしまうと、そこで軋轢が生じるというケースが結構多いんですよ。

あらかじめそういうことを避けるように契約で盛り込んでおくとか、しっかり決めておく必要があるんですけど、最初はやっぱり力関係もあるし、なかなかそういうのを最初に決めておくのは難しいんですよ。

だからジョイントベンチャーは個人的にはあまりおすすめしないというか、むしろ大企業をお客さんにするという方がまだやりやすいと思いますよ。

その場合は本当にシンプルで、大企業をお客さんにして、一緒に新しい商品サービスを提供していきましょうと。一緒に組んで、その場合ライセンスなのか何なのかをベンチャーが大企業に提供して、それが分かりやすくて。

石橋:
相手先ブランド製造(OEM)的にシステム提供して、大企業の商品としてクライアントに売ってもらうということですよね。

山口:
ただ、それもそう簡単ではなくて、大企業はすごく慎重なんですよ。

詰めて詰めて商品を作り込んで、それをパイロット(PoC)で試して、試すのにすごく時間をかけるんですよ。「パイロットで実験をするんだ」と。「それをしないと社内で通らない」ということで、実験に時間をかけるんですね。

気がついたら実験はできたと、次のステップでコマーシャルに展開する段になると、そこで腰が引けるケースが多くてですね。実験だけやったけど次のステップになかなかいかないじゃないか、というケースが多いんですね。

石橋:
そこにヤキモキして、結局ジョイントベンチャーにしたりとか、もうちょっと資本を厚く持ってもらったりとか、いろんなケースがあるのかもしれないですね。

成功の鍵は「第3の方法」にあり

山口:
なので、私がおすすめするのは第3の方法がありまして。今言ったジョイントベンチャーでもなく、OEM的にシステム提供とかでもなく。

第3の方法は、まずベンチャーは最初は大企業のことを考えずに、むしろ大企業の既存の事業を破壊というと言葉はちょっとあれですけど、大企業とは全く違うことを最初にまずやるんですよ。

大企業は外で新しいモデル・サービスを作って、先にお客さんを獲得し始めると。そうすると大企業は、「本当は自分たちがやりたかったようなことを、あの会社がやっているじゃないか」というふうになるんですよね。

そうなると占めたもので、ベンチャーがだんだんと売上を伸ばしてきてお客さんがついてくると、余計に大企業が「あれはなんだ!」と、あれが欲しいとなるんですよね。

ある程度スタートアップが成長した段階で、大企業から頭を下げてきて、「ぜひうちも参画させてくれ」というふうに持っていくのが、私の個人的な一番の正解だと思いますね。

石橋:
スタートアップ側が優位に立てるぐらいまでは、しっかり自分たちのポジションを作っていってから、大企業側からお願いされた上でしっかり協力関係を作っていくと。そうすると交渉もしやすいですよね。

山口:
スタートアップが初期に大企業と連携しちゃうと、あまり良くないんですよ。なぜなら、さっき言ったみたいに、大企業の目的はノウハウ獲得なんだから、最初から大企業からいろいろ言われちゃって、そっちの対応で追われちゃうわけですよ。まだアーリーステージのスタートアップがね。そうなると、せっかくのスタートアップの良さが活かせないんですよね。

だから初期の段階は、大企業はとりあえずあまり考えないで、PoCもしない。とにかくお客様のことだけを考えて、そのサービスを徹底的に作り込むというのを徹底してやるのが良いんですよ。

石橋:
スタートアップは極端な話、アーリーだけじゃなくて、なんなら上場するまで見ないでも良いのかもしれないですね。マザーズぐらいだったらそのぐらいの規模感までしっかり足元を固めた上で、大企業さんと協業してやっていく。

山口:
それからですよ。じゃないと死んじゃいますから。

石橋:
協業するのにもPoCから始めて広げていくフェーズは、めちゃくちゃ時間かかりますもんね。

山口:
時間がかかって大変ですよ。

石橋:
エクイティファイナンスをしているスタートアップが息継ぎで時間が間に合うのかというと、時間軸がずれていますよね。

山口:
だからベンチャーの資金調達戦略というのは、最初はエンジェル投資家、それからVCの方から投資をもらわないとダメなんですよ。

初めから大企業から投資をもらっちゃうと、あまり良くないと個人的に思いますよ。

石橋:
事業会社含めCVCとかからお金を受けるというのも、メリット・デメリットは明確にありますよね。

山口:
あります。そこをよく考えて資金調達をしないと、後から本当に後悔することになっちゃうので。

ドイツsonnenに学ぶ、理想的な連携モデル

石橋:
グッドケースは例えばどんなのがありますか?

もちろん東京電力さんじゃなくても構わないですし、環境エネルギー投資さんじゃなくても構わないんですけど、「これはめちゃくちゃ良いじゃん」みたいな感じの大企業とスタートアップの連動で、もちろんご自身の手掛けていた案件とかでも構わないんですけど、「これ良いよね」みたいな事例は何かありますか?

山口:
今思いつくのは、日本国内じゃなくて海外になっちゃうんですけど、海外はさっき言ったみたいに、ヨーロッパとかアメリカは、新しいエネルギーを変革するベンチャーがどんどん出てきていまして。

ドイツのsonnen GmbHという会社がありまして、それはドイツで家庭向けに蓄電池とか太陽光を販売して、デジタル技術で制御して、新しいエネルギーシステムを作っている会社があるんですけど。

そこは初めから大企業と提携したわけじゃなくて、最初はVCから資金調達を受けまして、どんどん成長していきまして、成長して軌道に乗った段階で、Royal Dutch Shell plc(現:Shell plc)が買収したというケースがありまして。

それが両方にとってWin-Win、ShellにとってもベンチャーにとってもWin-Winなんですよね。そういうケースが良いんじゃないかと思います。

石橋:
正直そうなると国内でいうと、そういう買収の金額という話ではないのかもしれないですけど、そういう本当の意味で大きい資本を持っている大企業さんが、大きくスタートアップとかベンチャー企業を買収して、きちんとポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)して成長している事例はあまりないですよね。

山口:
日本はまだ少ないですよ。海外はそれが多いんですけど、日本はまだこれからですね。

M&A単価10~20倍、日本の課題と可能性

石橋:
間違いないですね。最近VC界隈でも、特にアメリカでも起業家のスタートアップのイグジットの90%ぐらいがM&Aで行われていて、日本との単価感も10~20倍平気で単価が違うと考えると、結果的にそれでイグジットしている人がM&Aでのイグジット事例が少ないと、やっぱりそれもスタートアップのエコシステムとかに影響していって、日本の課題感でもあるというふうに言われますもんね。

山口:
そうですね。これからエネルギー業界でそういうM&Aが出てくると思うんですよね。

それがどんどん出てきたほうがベンチャーのエコシステムにとっても良いし、それがエネルギーの構造変革をどんどんドライブするような、そういうふうな流れになっていくと思うので、個人的にそれに期待しています。

石橋:
ありがとうございます。