「エンジェル投資家とVCは何が違うのか」「自社のステージに合う調達先はどちらか」「株式を渡しすぎて後悔しないか」
初めて資金調達に臨む際、こうした疑問を抱く起業家は少なくありません。
エンジェル投資家とVCは、投資主体や意思決定のスピード、求めるリターンが根本的に異なります。選択を誤ると、資本政策や経営の自由度に大きな影響が及ぶ可能性もあります。
本記事では、エンジェル投資家とVCの違いを7つの軸で整理し、フェーズごとの適切な選び方、事前準備、そして陥りやすい失敗と対策までを解説します。

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「エンジェル投資家」「VC(ベンチャーキャピタル)」とは?それぞれの強みと注意点
エンジェル投資家とVCは、いずれも株式と引き換えに資金を提供しますが、「誰の資金で投資しているか」が異なります。
それぞれの特徴は、以下のとおりです。
- エンジェル投資家は”個人資産で投資する”個人投資家
- VCは”ファンドの資金で投資する”投資会社
両者の違いを理解し、自社のステージに合った資金調達先を見極めましょう。
エンジェル投資家は”個人資産で投資する”個人投資家
エンジェル投資家は、創業初期の企業に自己資金から出資する個人投資家です。
エクイティ調達のため返済義務がなく、プレシード期でも資金を得やすいのが特徴です。
投資判断は個人の裁量で完結し、起業家のビジョンへの共感が決め手になることも少なくありません。初回面談から1〜2週間で着金するスピード感は、VCにはない強みです。
営業先の紹介や採用支援など実務面の後押し、業界人脈の共有を受けられるメリットもあります。
STARTUP DB Mediaの調査によると、出資件数の多いエンジェル投資家の上位には起業家出身者が15名と多く、自らの経営経験を元に出資を決めるケースが少なくありません※1。
注意すべきリスクは以下のとおりです。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 持分設計のリスク | 株式比率を渡しすぎると後続ラウンドで主導権を失う恐れがある |
| 経営干渉の可能性 | 個人資産のため、事業方針への干渉が強まるケースがある |
| 反社チェックの必要性 | 素性の確認が甘くなりやすく、事前の身元調査が必要 |
これらのリスクを考慮し、自社の初期パートナーとして適切かを確認してください。
VCは”ファンドの資金で投資する”投資会社
VC(ベンチャーキャピタル)は、出資者(LP)から集めたファンド資金を運用する投資会社です。
組織的な資金を扱うため、数千万円から数億円規模の大型調達が可能です。
採用戦略や組織設計のアドバイス、次ラウンドの投資家紹介など、手厚いハンズオン支援が期待できます。スタートアップのブランド力向上につながる点も強みでしょう。
ファンドには一般的に10年の満期があり、LPへの資金返還義務があります。
PEファンドやVCファンドは外部出資者の資金を運用する構造です。ファンド運営者(GP)はLPへの受託者責任を果たすための体制整備が求められます。
この構造から、以下の制約が生じます。
| 制約 | 詳細 |
|---|---|
| 意思決定の時間 | デューデリジェンスを要し、着金まで数ヶ月かかることが多い |
| EXITを見据えた成長 | IPOやM&AといったEXITを見据えた高い成長を要する |
| ガバナンス関与 | 取締役派遣など、経営へのガバナンス関与が伴う場合がある |
資金と支援を得る分、経営判断の一部に株主の意向が反映されます。
ビジョンが一致していれば強力なパートナーになりますが、方向性にズレがあると経営の負担になりやすい点には注意が必要です。
VCがスタートアップをどのように支援するかについては以下の動画でも紹介しています。
エンジェル投資家とVC(ベンチャーキャピタル)の7つの違い

エンジェル投資家とVCは、投資主体・資金規模・関与スタイルなど根本的な構造が異なります。どちらから調達するかは、その後の経営の自由度や次回ラウンドの難易度にまで影響します。違いを正確に理解したうえで判断しましょう。
両者の違いを整理すると、以下の7つの観点に分類できます。
- 投資主体|個人か組織かで意思決定の仕組みが変わる
- 投資額の相場|調達可能な金額レンジが大きく異なる
- 投資フェーズ|対象とするステージに明確な差がある
- 意思決定スピード|出資までのリードタイムが違う
- 事業への関与度|ハンズオンの深さに差が出る
- 出口戦略への期待値|求めるリターンや回収期間が異なる
- 次回ラウンドへの影響|株主構成がその後の調達に影響する
自社のフェーズや成長戦略と照らし合わせながら、それぞれの違いを確認してみてください。
1. 投資主体
最も根本的な違いは、誰のお金で投資するかという投資主体の構造です。
エンジェル投資家は自己資産から出資します。
個人の価値観が判断基準となるため、確信があれば数日で投資が決まることもあります。
VCは外部出資者(LP)のファンド資金を運用する組織です。
運用義務があるため、市場規模の精査や投資委員会の承認を経て投資が実行されます。このリスク管理体制により、意思決定には数週間から数カ月を要します。
資金の出どころを理解し、両者との適切な交渉スタンスを構築してください。
2. 投資額の相場
エンジェル投資家とVCでは、1回あたりの投資額に大きな開きがあります。
エンジェル投資家は100万〜1,000万円程度が一般的で、平均は約500万円です。
VCは数千万〜数十億円のレンジで投資します。シード期で100万〜3,000万円、アーリー期には数千万〜数億円規模へ拡大する傾向にあります。
財務省の資料によると、我が国におけるVC投資は株式市況により左右されるものの、2022年には年間総額9,000億円を超える資金調達が実施され、1社当たりの資金調達額についても大型化の動きがみられます※2。
必要資金から逆算すれば、アプローチすべき投資家はおのずと絞られるでしょう。
例えば、プロトタイプ開発の500万円ならエンジェル投資家が適しています。全国展開に向けた1億円以上が必要なら、複数VCの協調投資を視野に入れましょう。
金額のミスマッチを防ぎ、効率的な調達活動を進めてください。
3. 投資フェーズ
エンジェル投資家はプレシードからシード初期、VCはシード後半以降が主な領域です。
シード期の一部では両者の守備範囲が重なる点に注目してください。
複数のエンジェル投資家とシード特化VCが同ラウンドに参加する例も多いです。
調達先を判断するには、以下の観点で自社の現在地を把握しましょう。
| 観点 | 確認項目 |
|---|---|
| プロダクトの完成度 | アイデア段階かMVPが動いているか |
| ユーザー検証の進捗 | 仮説段階か初期ユーザーの反応を得ているか |
| チーム体制 | 創業者一人か、コアメンバーが揃っているか |
MVP開発中ならエンジェル投資家が現実的な候補です。
トラクションが見え始めた段階では、シード特化VCも視野に入ります。
4. 意思決定スピード
エンジェル投資家は個人の裁量で判断するため、数日〜2週間程度で投資判断が下ります。面談から着金までの期間も短く、資金を早急に確保したいケースに適しています。
一方、VCは1〜3か月、長い場合は半年ほどかかることもあります。デューデリジェンスや社内での合議が必要となるため、一定の時間を要します。
この違いは調達戦略に直結します。資金が急ぎで必要な場合はエンジェル投資家のスピードが強みになりますが、時間に余裕がある場合は、VCの審査プロセスを通じて事業計画をブラッシュアップする機会にもなります。
シード期では、エンジェルで資金を確保しながら、並行してVCとの関係構築を進める方法が現実的です。
5. 事業への関与度
エンジェル投資家の関与度は、個人によって大きく異なります。
積極的なメンタリングをする方もいれば、ハンズオフ型の方もいます。
一方、VCは投資契約に基づいて組織的に関与するのが一般的です。取締役の派遣や定期的な報告など、継続的な関係が前提となります。契約内容によっては、情報開示義務や重要な経営判断への同意権が含まれることもあります。
金融庁のベンチャーキャピタルに関する有識者会議資料では、広く機関投資家から資金調達を目指すVCについて、国際水準を踏まえた投資先評価や受託者責任を果たす体制等の確立を推進する方針が示されています※3。
実務で起きやすいのは、関与度に対する認識のズレです。エンジェル投資家に対しては、出資前に「どの程度関わるのか」を具体的に確認しておくことが重要です。
VCについては、投資契約書のガバナンス条項を理解したうえで判断する必要があります。
6. 出口戦略への期待値
エンジェル投資家は償還期限がなく、長期保有を前提とするケースも少なくありません。個人資産で投資しているため柔軟性があり、時間をかけて事業を育てる姿勢の投資家もいます。
一方、VCはファンド構造上、EXITを前提とした投資主体です。通常は7〜10年の運用期間の中で、IPOやM&Aによってリターンを確定させます。そのため、満期が近づくにつれてEXITを求める圧力が強まることがあります。
この違いは、経営者が描く成長戦略に大きく影響します。長期的に会社を育てたい場合でも、ファンドの期限によって意思決定が左右される可能性があります。
創業時に思い描いた事業の方向性と、投資家のEXIT期待がずれると、重要な判断のたびに摩擦が生じます。永続的な企業を目指す場合は、この点を特に意識する必要があります。
シード段階のうちに、EXITの方向性を投資家とすり合わせておくことが重要です。
M&AによるEXITを見据えた事前準備については以下の動画でも解説しています。
ユニコーン企業を目指すために押さえておくべきポイントについてはこちらの記事も合わせてご覧ください。
7. 次回ラウンドへの影響
初期の調達条件は、その後の資金調達に大きく影響します。
シード期のバリュエーションや持分比率は、シリーズAの評価額の基準になりやすく、一度受け入れた条件を後から修正するのは簡単ではありません。
また、著名なVCがリード投資家として入ることにはシグナル効果があります。その実績が、シリーズB以降の調達を進めるうえで信頼材料になります。
調達先の選定は、その場限りではなく、今後の調達全体を左右する判断です。初期投資家の質やネットワークまで含めて検討する必要があります。
株式条件やバリュエーションの基本は、事前に理解しておきましょう。
自社に合うのはエンジェル投資家?VC?フェーズ別の考え方

自社の調達フェーズによって、選ぶべき相手は変わります。プレシード期ではエンジェル投資家を中心に進め、シード期以降では徐々にVCの比重を高めるのが一般的な流れです。
フェーズ別の調達先の考え方は、以下の3段階で整理できます。
- プレシード期(調達額〜2,000万円)はエンジェル投資家が主戦場
- シード期(2,000万円〜1億円)はシード特化VCとの併用が現実的
- プレシリーズA以降はVC中心の調達設計へ移行
自社の現在地と照らし合わせながら、各フェーズの特徴を確認してみてください。
プレシード期(調達額〜2,000万円)はエンジェル投資家が主戦場
プレシード期はプロトタイプ開発の初期段階で、調達額は数百万円〜2,000万円程度が目安です。この段階では、VCが想定する投資規模と合わないため、参画は難しいケースが一般的です。
現実的な調達先は、エンジェル投資家やアクセラレーターになります。エンジェル投資家は、事業計画やビジョンへの共感を重視し、意思決定も早い傾向があります。加えて、経営経験に基づくアドバイスや人脈の提供など、非資金面の支援も大きな価値を持ちます。
一方で注意すべきなのは、少額調達でも株式を渡しすぎないことです。この段階で持分を大きく手放すと、シリーズA以降での希薄化が進み、経営権に影響が出る可能性があります。
プレシード期の持分配分は、その後の資本政策の土台になります。目先の資金確保だけでなく、将来の資本構成まで見据えて判断することが重要です。
シード期(2,000万円〜1億円)はシード特化VCとの併用が現実的
シード期はPMFの検証段階にあたり、調達額は2,000万円〜1億円が目安です。この規模になると、シード特化VCがラウンドの中心を担うケースが一般的です。
シード特化VCは、チームや市場の将来性を重視して判断し、数週間〜1か月程度で投資可否を決めます。プレシードに比べると審査は増えますが、シリーズAほど長期化しない点が特徴です。
ここで押さえておきたいのが、リード投資家とフォロー投資家の役割です。リード投資家はバリュエーションや契約条件の交渉、デューデリジェンスを主導します。一方、フォロー投資家はその条件に沿って出資に参加します。
実務では、シード特化VCがリードを務め、エンジェル投資家がフォローとして資金を積み増す形が現実的です。両者を組み合わせることで、資金と支援のバランスを取りやすくなります。

「資金調達の窓口」では、シード特化VCの視点から持株比率の設計や投資家との交渉方針まで支援しています。ぜひご活用ください。
シードラウンドでの資金調達を成功させるポイントについてはこちらの記事も合わせてご覧ください。
PMFを達成するための具体的なステップについてはこちらの記事も合わせてご覧ください。
プレシリーズA以降はVC中心の調達設計へ移行
PMFの手応えが見え始めるプレシリーズAでは、調達額は数千万円〜数億円規模へと広がります。
この段階からは、VCが調達の中心を担います。リード投資家となるVCを軸に、複数のVCが参加する形が一般的です。
バリュエーションを適切に設定するためには、精度の高いピッチと事業数値の準備が欠かせません。実績や成長指標が、そのまま評価に反映されます。
一方で、「自社が本当にプレシリーズAの段階にあるのか」で迷うケースも多く見られます。フェーズを見誤ると、調達先の選定そのものがずれてしまいます。
この段階では、第三者の視点で現在地を確認することも重要です。資金調達の専門家に相談することで、適切な戦略を立てやすくなります。
エンジェル投資家・VCからの調達前に整えるべき4つの準備

エンジェル投資家やVCからの資金調達を成功させるには、投資家へ接触する前の準備が成否を左右します。準備不足のままアプローチすると、信用回復が難しくなり、交渉で不利な条件を受け入れざるを得なくなるリスクが高まります。
投資家との交渉前に整えるべき準備は、以下の4つです。
- ピッチデック(投資家向けプレゼン資料)を用意する
- エクイティストーリーを一貫した形に整える
- 資本政策の初期設計を創業前後に固める
- 投資契約に関する知識を持つ
自社の現在地を踏まえ、優先度の高い項目から確認してみてください。
1. ピッチデック(投資家向けプレゼン資料)を用意する
ピッチデックは、初回面談で使う10〜15枚程度のプレゼン資料です。
内容は、課題・解決策・市場規模・ビジネスモデル・トラクション・競合優位性・チーム・調達計画で構成します。要点を絞り、短時間で全体像が伝わる設計が重要です。
意識すべきなのは、投資家によって見るポイントが異なることです。エンジェル投資家は、創業者の原体験やチームの熱量など「人」に重きを置きます。一方、VCは市場規模の根拠や競合との差別化といった「数値とロジック」を重視します。
デザインは作り込みすぎる必要はありません。プレシード〜シード初期であれば、内製レベルで十分です。見た目よりも、情報が整理されているかどうかが評価に直結します。
2. エクイティストーリーを一貫した形に整える
エクイティストーリーは、「なぜ今、自社に投資すべきか」を論理的に語る背骨です。
ピッチデック作成前に、この骨格を確固たるものにしましょう。
基本構成は「市場課題→解決策→成長見込み→投資リターン」の4要素です。この流れが明快であれば、資料と口頭説明に一貫性が生まれ、投資家からの信頼を得られます。
ストーリー完成後、以下でセルフチェックを行ってください。
- 提示した課題と解決策が論理的に結びついているか
- 想定市場規模と調達希望額のスケール感が釣り合っているか
- 成長シナリオの根拠となるトラクションが存在するか
VCはストーリーの論理的な連続性を厳格に評価します。
誰に話しても一貫した説明ができる状態を作ることが大切です。
3. 資本政策の初期設計を創業前後に固める
株式は一度渡すと原則として取り戻せないため、資本政策の初期設計は創業前後に固めましょう。
押さえるべき要素は以下の3つです。
| 要素 | 考え方 |
|---|---|
| 創業チームの持株比率 | シリーズA以降の希薄化を見越し、過半数を維持できる水準を保つ |
| 共同創業者間の配分ルール | 貢献度やベスティングの条件を書面で合意する |
| ストックオプションプールの確保 | 将来の採用に備え、発行済株式の10〜15%を目安に設定する |
シード期に外部へ20%を渡し、シリーズAで20%が希薄化すると、創業者の保有率は40%を下回ります。
大口のエンジェル投資家へ安易に株式を渡し、経営権を失うケースも存在します。
調達前に、スタートアップ法務に強い専門家の助言を受けてください。
共同創業者間の株式配分ルールや創業の株主間契約については以下の動画でも解説しています。
4. 投資契約に関する知識を持つ
投資契約の全条文を理解する必要はありませんが、頻出用語の意味と自社への影響は押さえてください。
知っておくべき主要用語は以下の5つです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| タームシート | 投資条件の概要をまとめた非拘束的文書。交渉の出発点となる |
| 優先株式 | 配当や清算で優先権を持つ株式。VC投資で標準的に使用される |
| 残余財産の分配優先権 | 清算やM&A時に投資家へ優先的に資金を返す仕組み |
| 反希薄化条項 | ダウンラウンド時に既存投資家の持株比率低下を補正する条項 |
| 株主間契約 | 株主同士の権利義務や意思決定ルールを定める契約 |
「この条項が経営権にどう影響するか」を質問できる知識を持ちましょう。
用語の意味を知っているだけで、専門家との協議の質は格段に上がるでしょう。
優先株式を含む投資契約書の具体的な注意点については以下の動画でも解説しています。
エンジェル投資家・VCからの調達でよくある失敗とその対策

初めての資金調達では何が正解かわからない状況で意思決定を迫られ、経験不足から重要なリスクを見落としやすくなります。エンジェル投資家やVCからの資金調達においては、契約後に取り返しのつかない失敗も発生します。結果として、経営の自由度や次回ラウンドの成否に影響を及ぼします。
創業期に陥りやすい失敗パターンと対策は、以下の5つです。
- エンジェル投資家の経営干渉・反社リスクを見抜けない
- VCの投資方針・ステージとのミスマッチで成長が停滞する
- 初期の株式の渡しすぎで後続ラウンドが組めなくなる
- バリュエーションを高くしすぎて次回調達が難航する
- 投資契約の条件を十分に理解せず署名してしまう
契約前の段階で、それぞれのリスクと対策を確認しておきましょう。
1. エンジェル投資家の経営干渉・反社リスクを見抜けない
組織的な審査の流れがないため、エンジェル投資家の場合は素性や反社会勢力との接点を確認しにくい傾向があります。
契約後に問題が発覚するリスクも存在するでしょう。
株主構成にコンプライアンス上の懸念があると、IPO審査や大型調達で致命的な障害になります。
契約前に以下の3点を確認してください。
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 紹介経路の信頼性 | 紹介者がその投資家と実際の取引経験を持つか確かめる |
| 過去の投資先への関与スタイル | 経営への口出しの頻度を、既存の投資先に直接ヒアリングする |
| 複数人での面談と外部チェック | 顧問弁護士を交え、商業登記や訴訟歴を事前に調べる |
信頼できる第三者の目を入れ、多角的にリスクを評価しましょう。
投資家との情報共有で起業家が注意すべき内容については以下の動画でも解説しています。
2. VCの投資方針・ステージとのミスマッチで成長が停滞する
自社のフェーズと合わないVCから調達すると、期待した支援が得られず、成長の足かせになる可能性があります。たとえば、シード期の企業がレイター向けの大手VCにアプローチしても、投資基準に合わず時間を浪費しやすくなります。
また、VC側にシード期の支援ノウハウがなければ、次ラウンドへの橋渡しもスムーズに進まない場合があります。
こうしたミスマッチを防ぐにも、面談で踏み込んだ質問を行うことが重要です。
- 同ステージ・同領域の企業にどのような支援をした実績があるか
- リード投資家として参画する意向か、フォロー参加が中心か
- 事業が難航したポートフォリオ企業に対し、どのように関与したか
事前調査を徹底し、自社の成長を後押しできるパートナーを選定しましょう。
3. 初期の株式の渡しすぎで後続ラウンドが組めなくなる
初期段階で株式を渡しすぎると、創業者の持株比率は一気に下がります。
シリーズAを検討するVCは、創業者の持株比率が25%を下回る案件を敬遠する傾向があります。インセンティブが弱くなり、経営へのコミットが続かないと判断されるためです。
これを防ぐには、将来の希薄化を見越した設計が欠かせません。シリーズB以降までを想定し、持株比率がどう変化するかを事前にシミュレーションしておきましょう。
シード前に30%以上を手放すと、シリーズA後には過半数を維持できなくなる可能性があります。早い段階で数字を可視化しておくことで、判断の精度が上がります。
資本政策は後から修正しにくい領域です。初期の段階で専門家に相談し、無理のない設計にしておくことが重要です。
4. バリュエーションを高くしすぎて次回調達が難航する
シード期に過度なバリュエーションを設定すると、次回調達のハードルを自ら上げる結果になります。
実績が評価額に見合わなければ、新規投資家から敬遠されやすくなります。
結果的にダウンラウンド(前回より低い評価額での調達)を迫られるケースも生じるでしょう。ダウンラウンドは既存投資家の持分価値を下げ、新規投資家を一層慎重にさせます。
バリュエーションは「希望」ではなく「相場」から逆算しましょう。
同ステージの直近の調達事例を集め、客観指標と照らし合わせて妥当水準を確認してください。
スタートアップ投資に精通した専門家への相談も、適正値の裏付けとして現実的です。
5. 投資契約の条件を十分に理解せず署名してしまう
投資契約書の内容を十分に確認せず、そのまま署名してしまうケースは少なくありません。
まず前提として、契約条項には交渉の余地があると理解しておくことが重要です。提示された条件をそのまま受け入れる必要はありません。
契約書には、優先清算権や反希薄化条項、議決権など、将来に大きく影響する内容が含まれます。これらを理解しないまま署名すると、次ラウンドでの資金調達や経営判断に制約が生じる可能性があります。
場合によっては、M&Aの交渉段階で株主間の利害が対立し、ディールが進まなくなるリスクもあります。
署名前には、スタートアップ法務に詳しい弁護士のレビューを必ず受けましょう。論点を整理したうえで、修正が必要な箇所を明確にし、交渉に臨むことが重要です。
M&Aを成功させるために必要な準備については以下の動画でも解説しています。
エンジェル投資家・VC(ベンチャーキャピタル)に関するよくある質問

エンジェル投資家とVCの違いを踏まえ、実務上の疑問をQ&A形式で解説します。
- CVC(事業会社系VC)はエンジェル投資家・独立系VCと何が違う?
- エンジェル投資家との接点を作る方法は?
- VC出資と銀行融資は併用できる?
- エンジェル税制はVCからの出資でも使える?
Q. CVC(事業会社系VC)はエンジェル投資家・独立系VCと何が違う?
CVCは、事業会社が自社の戦略目的で運営する投資部門です。
独立系VCが財務リターンを重視するのに対し、CVCは親会社との事業シナジーを重視します。自社の技術や販路がグループとどう結びつくかが、重要な判断軸になります。
また、CVCは特定の事業会社などの資金を背景に運営されるため、本業との相乗効果を前提とした意思決定が行われます。ガバナンスも一般的なVCとは異なり、親会社の意向が強く反映されやすい点が特徴です。
| 比較軸 | エンジェル | 独立系VC | CVC |
|---|---|---|---|
| 投資目的 | 共感 | リターン | 事業の相乗効果 |
| 意思決定 | 個人裁量で迅速 | 投資の委員会承認 | 親会社承認が必要で時間がかかりやすい |
| 出口戦略 | 長期保有も許容 | IPO・M&Aでの回収 | グループ統合を視野に入れた長期保有の傾向 |
CVC親会社の戦略と自社の方向性が合致するかを判断しましょう。
Q. エンジェル投資家との接点を作る方法は?
エンジェル投資家との接点づくりには、ピッチイベントやスタートアップカンファレンスへの参加、投資家マッチングサービスの活用などがあります。
最も信頼度が高いのは、既知の起業家や支援者からの推薦です。
紹介者の信用がフィルターとなり、交渉もスムーズに進みやすくなります。
SNSでの直接メッセージなど、面識のない相手からの勧誘には注意が必要です。間に信頼できる第三者が介在しているかを安全性の判断基準にしましょう。
Q. VC出資と銀行融資は併用できる?
VC出資と銀行融資は併用可能です。戦略的に組み合わせることで、資金調達の安定性を高められます。
VC出資によって自己資本が厚くなると、財務の信頼性が上がり、銀行融資の審査にも通りやすくなります。エクイティとデットを分けて考えるのではなく、一体の資本政策として設計することが重要です。
資金調達は大きく、株式発行によるエクイティファイナンス、銀行などからの借入であるデットファイナンス、そしてその中間に位置するベンチャーデット(新株予約権付融資)の3つに分けられます。
成長初期にVC出資で基盤を整え、その後に銀行融資を組み合わせていく流れが一般的です。
Q. エンジェル税制はVCからの出資でも使える?
エンジェル税制は、個人投資家による出資のみが対象です。
VCなどの法人からの出資には適用されない仕組みです。
令和2年度の税制改正を経て、2020年4月からエンジェル税制の施行により、個人投資家のスタートアップへの出資に対する税制上の優遇措置がなされました※4。
エンジェル投資家には税制優遇を訴求し、VCからは大きな金額を調達する設計が現実的でしょう。この組み合わせで、投資家のメリットと調達額を同時に最大化できます。
適用要件は細かく定められているため、実際の申請は税理士などの専門家に相談してください。
まとめ
ここでは、エンジェル投資家とVCの違いから、フェーズごとの選び方、注意点まで整理しました。
重要なのは、自社のステージと必要な資金規模を正確に把握し、それに合った調達先を選ぶことです。判断を誤ると、その後の成長や資本構成に大きな影響が出ます。
資本政策は一度進めるとやり直しが難しい領域です。初期の段階から前提を理解し、慎重に設計していきましょう。
「自社の現在地に合う調達先がわからない」「資本政策を第三者にチェックしてほしい」と感じた場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

「何から着手すべきか、自社に合ったプランへ落とし込みたい」そんな方は、プロと一緒に整理するのも1つの方法です。
「資金調達の窓口」では、御社のステージや事業モデルに応じた調達プランを無料でご提案しています。ぜひご相談ください。
参考文献
※1 STARTUP DB Media「過去1年間で、出資件数の多い個人投資家18名【2019年10月~2020年9月】」
※2 財務省「我が国スタートアップ企業の資金調達動向について」
※3 金融庁「ベンチャーキャピタルに関する有識者会議(第1回)」
※4 経済産業省「エンジェル税制」
