東京海上CVCの投資基準とは/時代の変化に適応し続けるその戦略を徹底解説【東京海上ホールディングス 鈴木さん vol.1】
◯鈴木祐介 東京海上ホールディングス インベストメント・ディレクター
東京海上ホールディングス HP▶︎https://www.tokiomarinehd.com/ facebook▶︎https://www.facebook.com/yusuke.suzuki.10420
新卒で外務省に入所して外交官として活躍。
通訳担当者として、フランスの大統領が来日した際に安倍総理の通訳を担当。
10年間勤務した後、マッキンゼーに転職。超大型顧客へのコンサルタント業務に従事。
4年半の勤務を経て、2019年3月にGlobal Brainに転職。さまざまな企業への投資を経験。
その後、東京海上ホールディングスのインベストメント・ディレクターとして参画。
石橋
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。
今回からですね、新しく、東京海上ホールディングス、インベストメント・ディレクターの鈴木さんにご出演を頂きますので、改めて鈴木さん、今日からよろしくお願いします。
鈴木
よろしくお願いします。
石橋
僕自身素直に言うとですね、1コンシューマーとして保険というもののに入ったことがないんですよ。
ちょうど30歳を超えてそろそろ入らないといけないなと思いしつつ、どうやらなんか調べる所によると、東京海上ホールディングスが国内のなかでは最大の損害保険会社なんですね。
鈴木
そうですよね。はい。
石橋
東京海上ホールディングスとは何ぞやみたいなところを、簡単に、ご説明を頂いていきたいと思うんですけど、お願いしてもよろしいでしょうか?
鈴木
はい、もちろんです。保険をやっている損害保険の会社としては東京海上日動火災保険株式会社という会社なんですけど、実はグループの中であの、損害保険だけじゃなくてあんしん生命っていう、生命保険の会社も国内で運営してます。
元を辿ると、1879年に日本で初めての損害保険会社として設立、それを作ったのが渋沢栄一さんです。
三菱とはどこにも書いてないですが、あのグループとしては、三菱系の会社です。
石橋
保険に入っていない僕ですら知ってる会社。純利益でも約1兆円ぐらい年度で出ていらっしゃるなかで、スタートアップ投資なんてなくても本業をやてれば十二分に儲かってる東京海上さんがなんでCVCを始めたのかというところをぜひお伺いしたいんですが、お願いしてもよろしいでしょうか?
鈴木
はい、もちろんです。CVCを始める経緯の前に、そもそもあの、保険業界のあの流れみたいなところなんですけど、そもそもが1990年くらいまで保険って全部一緒だったんですね。
それまで保険の中身・価格全てどこの会社が提供しても一緒で、すごい規制でガチガチに守られてたという産業らしいんですね。それがビッグバンである規制改革によって「金額・中身を変更して自由に競争しましょう」という流れになって、そこから保険業界どんどん変わり始めていますと。
そういうところなんですが、保険ってそもそも皆さんがやっているいろんな事業だったりとか、日々の生活、そこから発生するリスクをカバーする商品になるわけですが、当然そこで行われている経済活動、日常生活の規模そのものが我々のマーケットの規模になってしまうので、国内の人口・GDPが減っていくという場合に、我々の市場って、確実にGDPに連動してシュリンクしていく業界なんだと思うんですよね。
これをどうやったら座して待つだけではなくヘッジしていけるかと、いうことで90年代に我々その生命保険会社をゼロから立ち上げて、今、何とかオペレーション色々回ってそれなりの規模の会社に成長することができた。
2000年代に入ってから、海外のM&A特に保険会社ですがどんどん進めていったことで2002年には売上規模が数千億円なかったような状況からですね、2024年の直近は2兆〜3兆円それぐらいの規模まで今海外の売上があの増えてるということで、
まずは生命保険による事業の複合化、それによるジオグラフィーの拡大っていう形で少しずつこう我々変化をしてきてるという感じなんですけれども、色々この世の中の技術が変わっていく中で、例えばですけれども、少し前、2010年代後半とかですかね、Amazonが、あの保険を販売し始めるんじゃないかとか、色々なプラットフォーマーがどんどん保険業界に出てきて、我々のこの代理店さんを中としたような保険販売のチャネル自体がディスラプトされていくんじゃないかみたいな、こうそういう危機感が結構湧いてきたりして。
あとはそもそもその保険のすごくアナログな業務が行われているところをDXをしていこうというような、スタートアップがかなり出て来たりとかですね。
そういったところを取り入れながら我々いかにしてこの売上を日本国内だけではなくて広げていけるのかというところと、そういったこの我々自身の変革およびディスラプターへの対応ということで7年ぐらい前にこのCVC活動を開始したというところですね。
石橋
そうなると海外へのジオグラフィーの拡張みたいなものはスーパー大成功している20年間だったって言う。
鈴木
そうですね、はい。これまでは。
石橋
これからある意味、7年前に着手されたCVCも、そういうところのスケールを目指して取り組みとしてやられてる。
鈴木
そうですね、
始めた時はまさにあのM&A、JV(合弁企業)みたいなところを視野に入れながら技術なりビジネスモデルなりを取り込んでいくというような発想で始めてるというところです。
石橋
そうなるとどういう規模感、どういうラウンドの方々で、どういう狙いでとか、どういうチケットサイズでやってるみたいなところも具体的なところをお伺いしてもよろしいでしょうか?
鈴木
はい、もちろんです。そこはですね、私が入る前と入った後っていうので分けると、私あのまだ東京海上入って実はあの1年と8ヶ月ぐらいなんですけれども、今この7年ぐらいやってきてるうちの大体6年弱ぐらいはですね、基本的に事業をやってる各事業部がいるんですけれども、事業部の戦略に対して各事業部とうまくシナジーを生み出せるような会社に限定して投資をしてきました。
事業部の皆さんが連携しやすいとやっぱりどうしても「サービスがちゃんと確立している」「売上がある程度ある」、「お客さんがついている」というところからやっぱりシリーズA以前というよりはやっぱりシリーズB・Cとか、それぐらいのフェーズの会社が多くなるので、必然的にチケットサイズも億円単位には当然なりますと。
事業部の戦略に応じて、相当取るシェアと投資する金額ってのはだいぶ変わっているというか、バリューションが大きいと言うようなところです。
それだけじゃやっぱり事業部の目標、例えば3年間の中期経営計画の単位でやっぱり我々物事を考えていく傾向があるので、で、スタートアップ投資って3年で何かね、成果を出して対応していくような物じゃないじゃないですか。
もう少しこの長期視点で物事を考えて事業部が考えているような世界とは違う目線、時間軸で考えていかないと行けないんじゃないでしょうかと言うような話を、入社後にした上で、この事業部が足元でできなくても将来成長する可能性が大きい会社に対しては投資ができるようにして、ただそうするとやっぱりフェーズが早くなる、したがって、チケットサイズもちょっと抑えめという形で、シリーズA場合によってはシード、シリーズAよりも前、プレシリーズAからそういった段階からあの投資ができるように少しプログラムを変えて、投資に取り組んでいるという感じです。
石橋
今まで取り組みで既にインパクトしてる事例とか、投資活動としては成功してるみたいな事例とかってあるんですか?
鈴木
そうですね、まファイナンシャルと、CVCなのでストラテジックリターンみたいな物も追いかけてるわけですが、ファイナンシャルの方で言うと海外の事例がいくつかあるんですけれども、M&Aをされたらすぐにあのその会社がIPOをしたとか、そういうケースがいくつかあります。
国内だとまだないんですけれども、6、7年前から投資をして、今いくつかあのとても大きくなってるような会社。例えばあのSmartHRさん、だいぶ前ですね、もう6年ぐらい前に投資をしていたというようなこともあったりとか。
最近で言うとLUUPさんとかですね、まさにこの新しいモビリティってかなり我々相性良くて、たとえば新しい移動手段が出てくれば当然そこに何かしら新しい保険が必要になってくるので、ただこれ我々そのLUUPさんに提供する保険を獲得するためだけに投資するってなると営業目的の投資みたいになってしまうので、そうでなくて新しいモビリティであったとか、新しく登場した何かって当たりまえですけどそこに新しいリスクが伴うわけじゃないですか。
そのリスクをいかにしてヘッジすることによって社会に受容されるというこの動きを促進していけるのかっていうのが我々あの取り組みたいミッションだと思っていて、もともと自動車保険、これも我々何十年、100年前とかだと思うんですけど、まだ世の中に自動車が数十〜数百台走ってるかどうかというタイミングで自動車保険を作った国内の最初の会社なんですけど、新しい何かが生まれた時にその社会重要性を高めていくというような、そういった観点で投資というか、保険の機能を考えていくことがやっぱり我々のミッションだと思っていて、そこに貢献するような会社に投資するというのは心がけているところです。すみません、話が逸れちゃって。
石橋
とんでもないです。
今、お名前上がった、例えばSmartHRさんもそうかもしれませんし、LUUPさんも優秀な、で、かつキラキラしてるスタートアップの方だなって中で、もちろん他の損害保険会社や保険系のCVCがいるなかでCVCとしてこんなところが強みとしてあるよねとか、特に強い特徴とそういう強みみたいな物があればあの鈴木さん目線で教えて頂きたいんですけど、いかがでしょう?
鈴木
はい、ありがとうございます。保険事業そのものって観点で言うと、「どうせ3社〜4社ぐらいしかないし、何かどこも一緒じゃない?」と認識をお持ちだと思いますし、多かれ少なかれ多分そういうところはあんだとは思います。で、事業連携っていう観点で言うと、外から入ってきてすごく感じるのはすごく皆さんあの真面目ですと。
で、我々のミッションってまさにこの新たに生まれるリスクをカバーしていく事業ですよねと。そのミッションに対する意識が多分すごく高い。
で、したがって新しく生まれてくるサービス、新しく生まれるスタートアップさんに対する感度がすごい高いんですね、皆さん。
石橋
なんか意外ですよね。
鈴木
はい。私も入って見て結構びっくりして、前職でキャピタリストをやってたので、そのキャピタリストとして培ったネットワークを使って、「いくらでも紹介してやるわ!」と腕まくりしながら行くわけですよ。で、いっぱい紹介しようかなと思ったら、「知ってます」みたいな、「面談してます」みたいな会社ばかりで。結構シードの会社さんでも、「もう何度かお話しして社内にも呼んで社内で講演もしてもらいました」とか言うことを言われたりして。
石橋
すごくオープンなんですね。
鈴木
そうなんですよ、はい。すごくそこは意外に感じたのと、そういった新しい技術、ビジネスモデル、新しい会社さんともう分け隔てなくというか、普通に議論をして良さそうな物であれば、新しい商品を開発しましょう一緒にと言う話をかなりフランクにできる関係を築きやすいのかなと思っていて、
例えば新しく生まれるものという観点で言うと、newmoさん、既にライドシェアの事業を開始されてる。
石橋
めちゃくちゃ大きい調達・買収をされていますよね。
鈴木
はい。で、ライドシェアの事業も開始されていらっしゃいますけど、ライドシェアの保険って実はライドシェアに最適化された形で存在してないんですね。
石橋
国内で言うと今までなかったですもんね。
鈴木
はい。で、タクシーの保険を適用してるんですけど、もしくはそれを1日単位の保険みたいな形でいわゆる自動車保険の「ちょい乗り保険」みたいな。
あれは1日単位で売れたりするんですけど、せいぜい1日単位だったんですね。でもライドシェアの皆さんって、一日やるわけじゃないじゃないですか。
例えば今日4時間だけ隙間時間やろうとか、2時間隙間時間やろうとか、そうすると2時間の為に24時間の保険を払うって、コスパ悪いじゃないですか。
で、そうするとやっぱりライドシェア事業そのものが成り立つのかどうか経済性エコノミックスが良くない可能性が高いので、であれば時間単位の保険を開発してそれを提供したらnewmoやライドシェアの会社が全体的に、もっとこう効率に回せるんじゃないかと。
石橋
まさにTimeeとかギグワークみたいなところでもそのスポットのもしかしたら労務周りの保険ですか、何かそういう小分けのやつが増えそうですよね。
鈴木
そうですよね。はい。何かそこをこうフラットに議論していける関係を築きやすいっていうのは少なくとも私がなかに入って今見ている特徴としてはすごく感じるところです。
アコギな話をすると、我々としては1日単位の保険の方が儲かるんですよね。
石橋
普通に考えればそうですよね。
鈴木
でも新しいモビリティ・移動手段が世にどんどん出ていくタイミングで、やっぱりそれを後押ししていくことがそれが社会課題の解決にもなるわけで。
我々としてはその社会課題を解決していくっていうことをちゃんと真に後押しする為に何が必要があるのかっていうのがその裏側にある考え方なので、それはあの一見すると損をするかもしれない。けれどもこのライドシェアっていうサービスがまたこう世の中にこう広がっていけば、あの長い目で見れば市場も広がるし。
我々としてもあの望ましい結果になるかもしれないしと。
石橋
それこそ自動車保険っていう概念を一番最初に作ったのも東京海上さんだし。
鈴木
そうですね、はい。一番最初に国内で始めたのが。
石橋
それこそライドシェアであれLUUPさんのようなマイクロモビリティみたいなところも含めてどんどん新しい物に対応していくという感じがですね。
鈴木
そうですよね。と言うのが事業サイドの話ですかね。
投資部門の話で言うと、外部からのキャピタリスト経験者が実は一気に、現状で言うと4人、中にいるんですけど、外から採用をしていわゆるこのプロパーの社員、東京海上の叩き上げの人間が3人。
石橋
外部の人の方が今は多いんですね。
鈴木
そうなんです、外部の人間のほうが比率が高くなっていて、なので普通にこの事業会社さんの投資部門の方々ほどは事業に詳しくないところはもちろんあると思うんですけれども、ただ業界のスタートアップ投資の経験をしてきた人間ではあるので、お作法というか、そういったところには通じていると思うので、多分お話ししやすいと思って頂けるような、メンバーにはなってるんじゃないかなとは思います。
ただ、やっぱりこの外から来た人間だけでCVCを回すってなかなか難しいじゃないですか。
石橋
最終的に事業部とマッチングしないですもんね。
鈴木
今は何かそれこそその足元で事業部と連携しなくても投資ができるという形にしてますけど、とはいえ、どっかのタイミングでやっぱり事業に繋いでいかないと。
CVCとしては何をやってるんだっけ?って話になってしまうので、そこはやっぱりこの繋がりができる関係、繋がりができる機能っていうのがこの投資部門の中に絶対必要だと思っています。
なので外から取ったこの投資の目線が強い人間と中のリレーションをちゃんと持って事業部に繋いでこれるこの機能っていう意味での東京海上社員。ここがちゃんと融合して一体となって運営していくというのが多分すごく大事なんだと思っています。
投資とこの事業連携の部分と、あと特に最近私が意識してやってるのは経営とアラインして行くっていうこの戦略の部分ですね。
CVCあるあるですけど、多分あのCVCやってた人やってる人皆さん多分納得されると思うんですけど、経営の方針によってなんかこうグラグラこう「何かやってんだ」「もっとシナジーの連携を頑張れ」とか、「パフォーマンスが上がってないじゃないか」とか、あっち行ったりこっち行ったりしますよねと。で、やっぱりそれって仕方のない側面だと思いますし、世の中の真理だと思うんですよね。
やっぱり何かに寄れば反対の方に寄りたがるっていう、グラグラして何がやってるのか分からなくならないようにしっかりこの戦略を定めて、ピン留めをしていく機能が必要だと思っていて。
いろいろ模索しながらではあるんですけれども、とはいえピン留めをしていくという機能も果たしながら投資と事業連携を進めていくっていう。
石橋
僕自身勝手にイメージしてた、オールドで固くてハードルが高い会社なのかと思ってたんですけど、外部からの人たちが多く登用されていらっしゃったりとか、そもそも内部にそもそもいらっしゃる方たちっていうのもオープンマインドで積極的にスタートアップに、前向きな提案をしてくれるとかっていうのはいい意味でイメージギャップがすごく強かったんで非常に伺えて良かったなと思うんですが、
今までお伺いしてきたところでどうしても保険色が強かったので東京海上ホールディングスのCVCとしてどういう領域に特にこれから注目しているとか可能性を感じている技術要件でもいいですし、マーケットとかでも構わないんですけれども、鈴木さんとしてはどう考えるのかというところぜひお伺いできればと思いますがお伺いしてもよろしいでしょうか?
鈴木
はい、もちろんです。保険を介して接触している産業って別に保険業界だけではないので、世の中のありとあらゆるすべての産業、業界が関わってくるので、そういう意味で言うと関係のない産業がないっていうところが多分大前提にあると思います。
なのであの、CVCの投資対象としても何かしら将来保険に繋がればっていう観点・切り口で考えていっても多分全産業全業界が多分対象になっていて、ただそのなかでもその保険以外で、自社で新規事業を立ち上げようというような動きもしていて、モビリティ・ヘルスケアとか我々のちょっと隣接領域っぽいところではありますけど、いくつか事業を立ち上げようとは社内のインハウスの取り組みとしてやってます。
で、こういったところが当然この投資対象の一つにはなってきますし、そこから離れてCVCとして何が出来るかという観点で言うと、やっぱりまずこの生成AIを中心としたこの新しい技術、ここにどう我々として取り組んでいくのかっていうのは常に注目はしております。その観点で、また大企業がこぞって出資したところですけど、Sakana AIにも我々は今回のラウンドで出資をしていろいろお話をしているところで。
別にいわゆる基盤モデルとか基盤の会社さんだけではなくて、アプリケーション・ラグ・ファインチューニングだったり、そこのあの真ん中の部分をやってるような会社だったりとか。ちょっと幅広く日本に限らず海外も見に行っているところも一つ。
あとはチームメンバーともっと色々掘って見ようってかなり研究しているのがカーボンクレジットで、これもまた今更感あると思うんですけれども、カーボンクレジットのデベロッパーいわゆるこのクレジットを作る人たち。そういう観点で言うと我々フェイガーさんっていうあの、国内の水田中干しっていう手法を通じてカーボンクレジットを生成する会社さんですけど。水田中干しは水田で稲作をした間のこの休耕のタイミングで中干しっていう乾燥させる期間を延長させるとメタンガスの発生が抑えられると。そういう特徴があるらしく、その手法をとることによって、このメタンの生成を抑え、その差分をカーボンクレジットとして蘇生する。そういうったかたちでカーボンクレジットを作る会社です。
ここ(フェイガー)に投資をする機会をいただいて、プレシリーズAで参画してるんですけども。
石橋
結構早いラウンドからですね。
鈴木
はい、早いラウンドから入ったケースですね。で、カーボンクレジット自体は別にどっかの事業部で担当してなんかやってるかっていうとやってるわけではないので。
石橋
あんまりパッとイメージも湧かないですね。
鈴木
はい。そういうったかたちで入りつつですね、ただデベロッパーだけではなくて、いろんな会社がどんどん出てきてるので。
我々としてはこのクレジットの質が高いのかっていうところが、将来的にはたぶん保険にすごく関わってくるんじゃないかと。
いろんなバリューチェーンの中で何か、我々が手をだしたら面白そうなところってどこなんだろうっていうのを考えながら国内外いろんな会社さんを見ていると。そういうようなこともしたりはしています。
石橋
今後の東京海上ホールディングスのCVCとして、どういうところを成し遂げていこうと思われてるとか、こういうことを考えているっていうところをぜひ、これから起業されていこうとしてる方、起業されてる方にぜひメッセージをしていただければと思います。
鈴木
端的言ってやはりこの社会をよりよくしていく、社会のいろんな課題を解決していく。そこに我々が、ご一緒したいという思いが1番強いですね。
我々自身が事業を作っていくっていう取り組みの中でCVCを運営しているところではありますけど。
とはいえ、矢印・ベクトルがこの内向きになってしまうとすごく独りよがりな活動になってしまうと思いますし。
我々保険っていう機能をすぐに、レバレッジしながら協調するっていうことはできると思いますし、保険に限らず、ブランドみたいなものも含めた、我々自身が持ってるアセットを提供することによって、共に大きくなってけるようなスタートアップさんと一緒に歩んでいって、いかにこの日本経済がシュリンクしていくのを防ぎながら、我々が将来世代にも渡ってより幸せに暮らしていけるかっていう、そういうことにチャレンジしていけるような会社さんと一緒に取り組んでいければなっていうふうに思っているところです。
石橋
二本目の動画では改めて鈴木さんのプロフィールを聞いたりとか。
第3弾ではVC業界のキャリアパス問題みたいなところを問題提起しながら鈴木さんにCVCに転職することの意味とか意義とか価値とかお伺いしていければと思ってるんですが、第2弾、第3弾の動画も皆さん、お見逃しのないようにしていただけれればと思っております。
それでは、次回の動画でお会いしましょう。さようなら。
10年勤務した外交官から国内トップ保険会社のCVCへ/驚きのキャリアを徹底解剖!【東京海上ホールディングス 鈴木さん vol.2】
石橋
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。
今回はですね、前回に引き続き、東京海上ホールディングス株式会社、インベストメント・ディレクターの鈴木さんにご出演いただいているのでよろしくお願いします。
鈴木
よろしくお願いします。
石橋
1本目の動画ではですね、鈴木さんからそもそも東京海上ホールディングスさんが、どういうCVC活動をしてきているのか、それこそ利益規模だけで言っても1兆円規模で日本最大規模の損害保険会社さんが、まあどういう活動をしているのかっていうところを伺いをしてきたので、今回はですね、改めて「鈴木さんって誰なんだ」っていうところを、自己紹介的なところも含めお伺いしていきたいと思ってるんですけれども。最初のキャリアの出発点はどういう系からだったんですか?
鈴木
そうですね、新卒で外務省に入省して、国家公務員をしていました。
石橋
すごい。
海外に駐在とかする人達ですか?
鈴木
そうですね、いわゆる外交官として、はい。
石橋
外交官になろうと思ってたっていうことなんですか?
鈴木
途中で思ったっていう感じですね。
遡ると私、一番最初は国際法の研究者になりたかったんです。もともと。大学でいろいろ勉強、国際関係を勉強してた時に、国と国の関係、特にその歴史を勉強していくと、いろんな大きな戦争が起こったりするじゃないですか。
なんでこういう戦争が起こってしまったんだろうかっていうような、分析の中でケミストリーが合う合わないによって戦争が起こったみたいな、そういう分析をする人もいるんですよ。
でもそれってわからないじゃないですか、その指導者同士がどういう風に関係を築いて、なぜそこでどういう話をして、その結果うまくいったのかいかなかったとか、自分がそこの指導者になるか、その指導者と一緒にそこにいるかとか、だからそうでない限りそのケミストリーは見えないですよね。
そういうのを研究しようと思った時に、現実を知らないと机上の空論で勉強しててもなんか真実にたどり着けないかもしれないなと思った時に、外交官になればもしかしたらそういう現場に携われるかもしれないなと思って。で、外交官を目指しました。
国同士の関係がどうやって決まっているのかを知りたいなって思って外交官になったっていう。
石橋
保険の保の字もなければベンチャー・スタートアップとは全く逆の世界線ですよね。
鈴木
全く逆の世界線ですね。
石橋
そこからどういうVC(ベンチャーキャピタル)とかスタートアップにつながっていくんですか?ちなみに外務省はどのくらいいらっしゃったんですか?
鈴木
10年いました。
石橋
おお、もう10年、結構どっぷりいらっしゃったんですね。
鈴木
どっぷりでしたね。10年間を一つのタームで考えていたところがあったのと、あとはその国同士の関係みたいなところで言うと、さっきの自分がリーダーになるのか、もしくはリーダーと一緒にすぐそばにいるかで、やっぱりそのケミストリーの合う合わないが見れないよねっていうところで言うと、通訳になればいいんじゃないかって思ったわけです。
国家元首とか総理大臣とかが1対1で会う場に居れるのは通訳しかないじゃないですか。だから「そういう場の通訳になればいいな」と思って頑張って、私フランス語担当だったんですけど、フランスの大統領が日本に来た時の安倍(元)総理との飲み会の通訳をやらせてもらって、まさにそこには総理とフランスの大統領と私みたいな夢が一つかなったのもあってですね、ちょっと満足しちゃったっていうのもあって、もともと「国の動き方を知りたい」みたいな個人的な欲求から入ってますけど、結婚して家族ができる、守りたいものができるじゃないですか。
子供ができればよりこの国の将来とか世界の将来を考えていくので、後からこの自分の中で国とか社会の問題をどんどん解決していきたいっていう欲求がすごく芽生えてきて、
石橋
政治家になりそうな話が始まってますけど、外務省を辞めて参議院議員とかになったわけじゃないですよね。
鈴木
では無いですね。
石橋
でも今の流れは完全にそのラインに入りつつありました。
鈴木
すみません、あの期待させてる言い方ですけど。
で、企業に行きたいなと思って、結局、日本の国力を上げたいと思った時に、外務省からできることって結構限りが有るんじゃないかなと思って、もっと企業が世界に進出して、いろんな国の成長を取り込んでくるみたいなことを考えようと思っても、企業の方がその戦略を立てられないと、かつ実行できないと、「絵に描いた餅になる」じゃ無いですけど。
であれば企業がどう言う考えで戦略を作り、それを実行していくのかと言うのを考えられる人間になって、むしろ各企業から具体的な経済活動に貢献していく方が、自分のやりたいことに近づくかもしれないと思って。
なので、一回民間企業に出てコンサルに転職しました。
石橋
どちらに行かれたんですか?
鈴木
私はマッキンゼーに転職しました。はい。
石橋
ピカピカですね。外務省行かれてマッキンゼーに入って。マッキンゼーでは別にそういうスタートアップ投資関連の部署にいらっしゃったわけじゃないんですか?
鈴木
全くないですね。いわゆるJTC(伝統的な日本企業)という日本の大企業さんの担当でした。
石橋
それこそ東京海上さんみたいな超大規模顧客をコンサルティングでサポートしていたっていう感じなんですね。
鈴木
4年半いたんですが、コンサルティングでいろんな世界を見ることができましたし、いわゆる戦略を作るってどんなのかなとか、実行するってどういう苦労があるのかなっていうのをいろいろ見れたところはありますけど、やっぱりコンサルって外からの仕事じゃないですか。企業の中でやるものでもないし。
あとは私としてはコストダウンとかのお仕事をすることが、割と多かったのもあって、コストダウンもちろんすごい大事ですし、コストダウンをしたうえで初めてこう余資が生まれるので、それで投資活動しましょうっていう話になると思うんですけど。
とはいえこの日本の将来、それこそGDPをちゃんと右肩上がり基調にまた戻していくってなった時に、それを成し遂げられるのはコストダウンの活動じゃなくて、よりこのトップラインを伸ばしていくような、そういう活動じゃないですか。ってなった時に新しい技術であったり新しいビジネス、そういうものが盛り上がってくることをサポートしていかないと。
石橋
ようやくVC(ベンチャーキャピタル)が見え始めましたね。
鈴木
はい、すみません。だいぶ遠回りしましたけど。
石橋
それで「VC(ベンチャーキャピタル)業界に転職しよう」ってなるんですか?それとも「スタートアップに転職だ」みたいな感じだったんですか?
鈴木
その時はスタートアップを考えてなくて、どっちかっていうとバイアウトファンド、いわゆるPE(プライベート・エクイティ)。PE(プライベート・エクイティ)がVC(ベンチャーキャピタル)かっていうので迷ってたっていう感じですね。
で、PEの方がなんとなく連続性があるような気がしてて、ただやっぱりまずはコストダウンから入っていって利益を出すために。
石橋
そのイメージめっちゃあります。
鈴木
そうですよね。VC(ベンチャーキャピタル)の方がまだ見ない何かになんかどんどん触れられるなと思って。かつ新しい産業が起こっていくことによって、GDPが刺激されていくっていうような世界が見れるかもしれない。そこに自分が関わってたらすごい面白いなと思って、それがVCに来たきっかけですかね。
石橋
それがじゃあ直近のキャリアでもいらっしゃるGlobal Brainさんでパートナーにっていうのがまさにそこから始まったと言う感じなんですね。
鈴木
そうですね。
石橋
Global Brainは何年からなんでしたっけ?
鈴木
始めたのが2019年の3月ですね。そこから4年間いましたね。
石橋
Global Brainさん時代は、どういう会社にそれこそ投資されたんですか?
鈴木
そうですね、例えばですけど、最近上場されたROXXさんであったりとか、あとは当時一緒に仕事したGPと一緒に行った案件ですけど、令和トラベルさんだったり、カウシェさんだったり、ドクターメイトっていう介護×医療みたいなことやってる会社であったりとか、そういうところにあの投資をしていました。
石橋
なるほどですね。
2019年からであれば5年ほど前に業界に入って来られて、その後はパートナーにも就任されていらっしゃいますもんね。
鈴木
そうですね。
石橋
パートナーになったうえで今はもちろん東京海上さんにいらっしゃるっていうところで、なんか最終的にはなんでだったんだろうというか。
しかもGlobal Brainさんって、あのいわゆる二人組合っていう手法で、めちゃくちゃいっぱいCVCファンドやってらっしゃるじゃないですか。
場合によっては東京海上ホールディングスはWiLと二人組を一つやっていらっしゃると思いますけど、そういうパートナーになってもおかしくないってなると、「Global Brainさんに行って別にできたんじゃないか説」みたいなものって、なきにしもあらずなのかなって外から見ると思ったりするんですけど、最終的に今回事業会社サイドのCVCっていうところにいこうと思ったのはなんか独立系VC(ベンチャーキャピタル)にいらっしゃったうえで、どういう背景だったんですか?
鈴木
そうですね、なんか主に二つあるんですけど、
一つが私もCVCの責任者をしていました。農林中央金庫さんのファンドをお預かりして、その運営の責任者をやっていたんですけれども。
投資者先との事業連携であるとか、そもそもCVCファンドとして出資されているLP会社の方が何を目指していくのかっていう戦略自体に自分が、ああだこうだ言うものでもないじゃないですか。事業会社さんの戦略に影響を与えていく、一緒に作り上げていくっていうところに対する影響力ってやっぱり限定的だなって感じるのがまず一つ。
もう一つは延長線上みたいな話なんですけど、やっぱり世の中にインパクトを出す、日本のGDP向上を考えていった時に、VC(ベンチャーキャピタル)がスタートアップさんとだけ何かをやっていくって限界があるなと思っていて、
例えがいいかどうかは別として、よく私は日本経済をショートケーキに例えるんですけど、スタートアップってショートケーキのイチゴみたいなものだと思っていて。
石橋
華やかっていうイメージですか?
鈴木
そうですね。まず目が行く目立つじゃ無いですか。でもなんかあの全体ケーキをケーキたらしめているのって、クリームでありスポンジじゃないですか。クリームでありスポンジが多分大企業であり中小企業みたいなものだって思ってて、やっぱり依然として経済全体を支えているのはそういうこの大企業中小企業の企業群じゃないですか。
ここが地盤沈下を起こしてぐちゃってなったら、ショートケーキ全体が終ってしまい、どんなにこのイチゴが綺麗で美味しくてもやっぱりケーキ全体としての価値って失われちゃうと思うんですよね。
なのでこのやっぱりイチゴと、ちゃんとそれ以外スポンジとクリームがハーモニーを形成していくっていうのがすごく大事だと思っていて、なのでこのイチゴだけではなくて、このスポンジ・クリームの部分とちゃんと連携をして共にこの日本経済全体をよくしていくっていう動きをしていくことが、自分がやりたい日本経済全体を底上げしていきたいとかいう夢により近づいていくんじゃないかなと思って。
事業会社サイドからのスタートアップを見てみたいって思ったっていう感じですね。
GPサイドからだけだと中々関与しれないってことで。
石橋
そうするとある意味コンサルタントとしての仕事のあり方とVC(ベンチャーキャピタル)投資を通じて何か起こせる社会インパクトのちょうど間ぐらいにいるっていう感じになるんですよね。
鈴木
そうですね。はい。
そんな感じだと思います。ちょっとやや余談ですけど、なんで外務省から来てるんですか?とよく言われますし、役所の人とかの転職相談とかたまに受けるわけですよ。じゃあなんか役所で培った何かって果たしてその後民間で活きるのかみたいな話がありますけど、実は私全てが今生きていると思っていて、これ前職時代もそうなんですけど。
石橋
安倍総理の通訳も活きていると。
鈴木
活きてますね。例えばスタートアップって最近で言うとそうでもないですけど、やっぱりこの規制の隙間みたいなところで事業を起こすって結構あるじゃないですか。
石橋
ありますね。
鈴木
ってなった時に、その規制自体が望ましい方向で変わっていく、もしくは規制の隙間じゃなくて、スタートアップがよりこの活躍していくためにはもっとこの規制こういう風に変えて自由化した方が絶対いいのにっていうようなこといっぱいあると思うんですよ。
ってなった時にじゃあどうやったら政府にアクセスできるのか、政府の人達とどういう言語を使って会話したらいいのかってわからないじゃないですか。そこは私の場合は外務省なのでダイレクトにその規制改革のところで繋げられるわけじゃないにせよ、いろんな役所に知り合いがいますし、こういう発想で動いてるからこういう風に話をしてみると面白いかもっていうようなアドバイスはできたりすると思うんですよね。
当然、コンサル時代の経験って戦略をどういう風に作っていくか、それどういう体制で実行していくか、あとは「こういう業界ってこういう感じでうまくいった会社があって、それをパラレルで考えるこう言う感じになるんじゃないか」とか、いろいろこの応用可能性みたいなところを使えるところがあると思うので。
そういうところがすごく生きてるんじゃないかなって信じたい。
石橋
でも絶対ありますよね。実態は本当かわからないですけど、超直近だとアメリカ大統領選挙でイーロンマスクさんがあれだけコミットした結果、今日の撮影時点で別に今後じゃあイーロンマスクさんが何をやっていくとかどういう配置で政府機関のなかで置かれるのかとかわからないですけど、
彼らがやろうとしてる新しいチャレンジとかの規制緩和とか規制改革っていうところの結果、政治側からも変えていくみたいなところってなかなかやれる人も知ってる人もいないって考えると、まさに鈴木さんのようなご経歴の人じゃないと、さっきも投資先のループさんの名前も出てきましたし、ニューモさんの名前も出てきましたけど、規制を変えないとああいうのは日本でちゃんと社会実装されないでしょうし、
結果的にそこが変わって社会実装される今度は並行した保険どうするのかとか、何か事故った時どうするのかって話に今多分なってきててどうこうっていうことを考えるとなかなかおっしゃってたように、まあ繋がってるようにも思いますし、むしろそういう経歴の人が少ない分希少性もすごく高いですよね。
鈴木
そうですね。自分一人でできることなんてまあ当然限界があるので、
最近だと例えばあの核融合でもJ-Fusionっていう団体が立ち上がって、まあ政府の方々と交えてこれから核融合を社会に実装させていくためには、どういうルール作りが必要なのかみたいなことを議論される場ができあがっています。
なので別に私が動こうしなくても、「政府のスタートアップ育成5か年計画」もあり、政府の方が主体的にスタートアップとどんどん連携しようという動きは起きてきてるんで、別にあえて私が出ていくこともないかなって思う場面もいっぱいあるんですけど、それでもそういう産業・会社が全てではないと思ってますんで、何かお手伝いできることもあると信じています。
石橋
ありがとうございます。
ちなみにこれを見ていただいた方だと鈴木さんにぜひ壁打ちをお願いしたいなとか思う方もいると思うんですけど、場合によっては検討してほしいなっていう方もいると思うんですけど。Facebookが一番早いんですか?
鈴木
そうですね。私の名前は同姓同名がめちゃくちゃ多いんで、なかなか見つけづらいっていうね。
石橋
概要欄の方にあの鈴木さんのFacebookのURL掲載させていただいておりますので、ぜひそちらの方からコンタクト取ってみていただければと思いますし、鈴木さんだけじゃなくてもう少し広くようなあのご要望ある場合は「資金調達の窓口」っていうサービスで弊社にお問い合わせいただくのも全然いいかなと思っております。
それでは改めて第2弾もご参加ありがとうございました。
第3弾はCVCに転職することのありなしみたいなところを踏み込んでお話を伺っていきたいと思っておりますので、またぜひご覧いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【VC必見】VCからCVCに”敢えて”転職した理由/VC出身者から見たCVC特有の難しさと面白さとは【東京海上ホールディングス 鈴木さん vol.3】
石橋
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。今回もですね、前回までに引き続きまして、東京海上ホールディングス、インベストメント・ディレクターの鈴木さんにご出演いただいておりますので、改めてよろしくお願いします。
鈴木
よろしくお願いします。
石橋
最近やっぱり、僕よりも若い世代ですとか、VC業界に転職してくださる方、まさに何かいい意味でVC(ベンチャーキャピタル)ファンドが増えて人が必要になってきてるので、いろいろとVCになる方法・求人が出ていると思います。いろんな業界からいろんな人が入ってきてくれてるものの、この業界って何か先輩がやめないじゃないですか。
10年、20年も経験している先輩だともうすでに投資が成功してる実績もあるわけで、評判もすごく高くて、そうするとよりファンドにお金も集まりやすいような。
あとはその人が投資するとすごく成功しやすいとかあると、じゃあ起業家の方も問い合わせがいっぱい来るとか。もちろん僕らみたいな人もいろんな企業をご紹介するみたいなところ。要は強者が強者になりやすいマーケットなので、辞めるインセンティブとか辞めるべきものでもない。
からこそキャリアパスがあんまり空かない。結局は若手とか新しく入って来た方々が、なんかでどうキャリアを作っていくのか、特にVC業界の中で。
そこで鈴木さんはGlobal Brainでパートナーを務めながらご転職されて東京海上ホールディングスさんのCVCに今いらっしゃるということで。
というところから、お話をぜひ始めたいと思ってまして、なぜパートナーっていうクラスに居ながらCVCに転職しようという意思決定をされたのか。
で、この時実際こういうところで迷ったとか、全然ウェットなところでも大歓迎なんですけど、まずはそこからお伺いできればと思います。
鈴木
はい、もちろんです。上が詰まってる問題ありますよね。
石橋
Global Brainさんのパートナーの部屋はすごく増えてますよね。
鈴木
増えてますね。ただGlobal Brainさんは面白いなって思ってるし、自分もいて本当そうだなと思ってたのが、どんどんポストが増えていくというか、GPの数が増えてるんですよ。ファンドとして拡大してるからっていうのもあると思うんですけど、あの、CVCもいっぱいできてますし。
なのであんまり上が詰まってる問題ってない。
石橋
そうなんですか。
鈴木
無い気がする。多分。
ま、なのですごくあのチャレンジをした時に、上が広がりやすい環境なのかなとは思ってはいるんですけど、お世話になった会社の宣伝も終わったところで。
はい。私自身は、CVCでやっぱりやりたいことがあったというか、日本経済を下支えしていくというか、復調貴重に戻していくことを成し遂げるにはやっぱりスタートアップの皆さんに投資するだけじゃなくて、事業会社と一緒にになってよりこの大きな規模の事業を動かしていくっていう動きが必要なんじゃないかなと思って、それがやりやすいと思われる事業会社に転職してきたという感じですけども。
これはまあ一つのパスとして、ありえると私は思ってるんですけど。
一方で、周りの人に「東京海上ホールディングスに来たんですよね」と言うと「なぜVCからCVCに行ってるんですか?」「逆は見ますけどそんな人あんまりいないですよね」って言われたりする事もあるって。
石橋
バイネームでいってもまだ少ないですね。
鈴木
少ないですね。でもMUIP(三菱UFJイノベーションパートナーズ)さんの代表の鈴木さんだったり投資部長の佐野さん、すみませんお名前出しちゃいましたけど。
2人とも元Global Brainなんです。そういう方々もいらっしゃるので、事例がないわけでは全くないと思いますし、個人的にもすごく参考にさせていただいてるというか。
でもやっぱりVCとは全然違うので、VCだとフィナンシャルに成功していくかどうかっていうところが結局突き詰めると、そこにいきつくと思うんですけど。
やっぱりCVCの場合は変数が多いので。で、かつあの意思決定の仕組みだったりとか何かいろんなものが、、
石橋
整ってるわけでもなかったりしますよね。
鈴木
で、何かやろうとしても「ちょっと待って」とか、「俺は聞いてない」とか、「そういうことすると、こっちとのハレーションが〜コンフリクトが〜」とかね、まあいろんなものがバーッとこう起きてくるので。
全然違う業態なんだろうなってのは、何となく入る前から想像はしてましたし、入って見てやっぱそうだなって思うので。
VCからCVCに転職して来るというのは相応の覚悟が必要だなって私は思ってはいて。
石橋
誰でもできるわけじゃない、全くなさそうですよね。
鈴木
そうですね。覚悟の問題かなとは思います。
純投資で投資活動をそのまま続けていきたいのであれば、別にあのVCを出る必要はないと思いますし、CVCに来たから上が詰まってる問題が解消されて投資が自由にできるかっていうとそうじゃないので。
それはまた違う制約が出てくるので。そこはちゃんと覚悟を持った上で、事業を作っていくっていうのを主軸に据えられるのか。ファイナンシャルに成功するっていうところを主軸にするのかっていう、VCとCVCの大きな違いで考える。
そこが入り口として間違えないようにしたほうがいいっていう感じなのかなとは思います。
石橋
やっぱりまだサンプル数は少ないまでも、先ほどの名前が上がった方々を筆頭に、まさにそのVC業界出身でCVCのそれこそマネジメントクラスにご転職されるケースって出てきてるなと思ってまして。
他方でちゃんと割と辞めていらっしゃるなってのも何か感じるところであって。
あれは鈴木さんから観察するとどう見えてるというか、僕個人としては元々CVCにいたというのもあるんですけど、そういう鈴木さん達みたいなキャリアのあり方ってもっと増えた方がVC側のロジックもわかってくださってる方々が各CVCのマネジメントに入ることによってより投資先への検討とかもやりやすくなったりとか、その方々がハブになってくれてまさに外部の方がいるからこそできる投資とか、社内との調整って絶対あると思ってるので。
まあそういうポジションの方が増えればいいなと思ってるものの、定着しきっているのか・いないのかで言うと、まあまだ分かりきらないっていうところで、「なぜVC業界の人だとCVC定着しにくいのか」、鈴木さん目線ではどう観察してらっしゃるんですか?
鈴木
そうですね。でもやっぱりしがらみが多いですからね、色々な制約はありますし。
あとはこれ入って見てすごく結構実感するんですけど、VC時代にはあんまり面談しなかったような会社さんと面談する機会が多かったり。
石橋
どういう会社さんなんですか?
鈴木
まあ端的に言うとVCが出資してないような会社さんってたまにあるじゃ無いですか。それですごく大きく成功して成長してる会社もいれば「それはVC出資しないでしょう」、「個々の判断があって出資されたんだろうな」っていう事業会社の名前が入ってるような会社さんだったりとか。
そういった会社との面談にすごい時間が割かれるとかはありますね。
石橋
鈴木さんから見て先ほどご自身が話していただいたような観点以外の、CVCに転職するメリットとかって何か別の観点とかあるんですか?
「すごく大変そう」という印象が話を聞いてる限りは受けてしまうんですけど。
鈴木さんの場合は若干モチベーションが一般化しにくい要件なのかと思ってしまうっていうのはやっぱコンサルタントとかそういうのを経験されていただとか、だからこそ、そういう見方で、CVCの事を捉えられるタイプの方なのかなとも思ったりするんですけど。こういうことがまあインセンティブ・モチベーションに「CVCに転職する理由になり得る」みたいな観点ってポジティブ面で何かありますか?
鈴木
そうですね。会社によりますけど、資金面の不安がどのレイヤーにいるかによるんですけどね。VCさんでファンドレイズを責任を持ってやらなきゃいけない立場だったりすると、大変じゃないですか。経営会議を通すだとか。それがCVCに来ると一本で済むっていうのはあると思います。
あとはどう見るかですけど、会社によってはネームを使いやすいっていうのはありますね。会社の看板背負って。誰でも知ってるような会社さんであれば、それを活かして特定領域のソーシングがすごくしやすくなるとか。
あとは捉え方次第ですけど、大企業の中で揉まれるって大変ですけど。これはこれで楽しいと私は思いますね。そもそも中々できないじゃないですか。
石橋
いやできない。経験としては価値ありますよね。ちなみに鈴木さんがご転職される時ってCVCのそういうマネジメントクラスの求人がよくあったんですか?
鈴木
たまに見かけました。
私は面談はしてないんですけど、「〇〇ベンチャーズ(CVC)のマネジメントディレクターのポジションです」っていうのを実際、お話をいただくこともあったり。
あとはまあ海外の事業会社が「日本で何か始めます」っていう時の代表みたいなポジションで、いわゆるMD(Managing Director)みたいな話も聞きましたし。
石橋
じゃあ今からこれ見ていただいてる、今後もしかしたらVC業界の会社の人もそういうまあ長期的な選択肢っていうのは意外に、転がってるものだよっていうのは認識してもいいのかもしれないですけど。
一旦ちょっとまあ今日第3弾の最後に下世話なご質問もできればと思ってまして。実際、給料とかって下がったんですか?上がったんですか?
鈴木
私の場合は上がりました。
石橋
CVCすごいですね。
鈴木
そういうケースもあるという感じですね。
石橋
なんか一般論で言うとCVCってやっぱりお給料・キャリーとかのインセンティブ設計がしにくいからこそCVCで経験を積んだパートナークラスの方がまあ結局独立してしまっていうのがよく聞く話でもあったので、てっきりやっぱ下がられたのかなと思っちゃってたんですけど、そういうVC業界での経験を評価してくれる事業会社が増えてきてるんですかね?
鈴木
おそらくそういうところもあると思います。やっぱりこのキャリーが設計しにくいってその通りで。うちの会社もそうなんですけど、その分やっぱりキャリーがなくなるので、結局VCで働いてると、そこが大きいわけじゃないですか。
それがないのであれば一定平準化しないと人を採れないんじゃないって思ってる会社さんは多分そういう設計をされると思うし、キャリーができないからその分あのランニングでっていう話になるんでしょうし。
そこがやっぱりなかなか社内の制度上難しいっていう会社は、このモデレートな水準でっていう事になるんでしょうね。
石橋
モデルレートじゃなかなか難しいんでしょうね。VC業界も給料どんどん高くなってきてる気もするので。
鈴木
それだけで優秀な方がVC界隈に入ってきてますからね。
個人的に最後1個思うのは、事業会社のCVCやってる人達ってやっぱいつかはM&Aとか思うわけじゃないですか。でもその先にPMIって確実に発生するって、そこのカルチャーの融合どうすんのみたいな話あるじゃないですか。
石橋
あります。
鈴木
でも外部のキャピタリスト1人をインテグレートできなくて「PMIができるわけなくね?」と思ったりするわけですよ。
石橋
確かに。その人も筆頭の部署の人達ですから。
鈴木
そこはちゃんと頑張ろうよって思う。
石橋
むしろそこで「給与体系がどうこうで調整ができなくてキャリーが…」とか言うぐらいなら、そもそもじゃあ買収先のスタートアップがインセンティブ構造すら違うだろうとか。
鈴木
そうなんですよね。そこはね、頑張りどころな気がしますよね。
石橋
一番ちゃんとやっておくべき部署の人たちという感じなのかもしれないですよね。
鈴木
まあ必ずしも給料がどうしても難しいっていうところだとしても、せめて働き方・カルチャーだったりとか、そこは互いにね、外部から入って来る人も。
「そこでM&Aにつなげたい」って思って投資活動したりするわけじゃないですか。
でもやっぱり自分が主体になった時にその投資した先をグループインする時にやっぱり一定程度「こっちのカルチャーも理解してよ」っていうことを多分言うと思うんですよ。
それは自分にも跳ね返ってくる話なので、採る方も「頑張ろうよ」だし、採られる方も「ちょっとは我慢しようよ」という、やっぱりこの歩み寄りって絶対ね、双方大事ですよね。
石橋
歩み寄らなかったら入ったあとに絶対ハレーション起きてめちゃくちゃやりにくくなるだけですもんね。それ含めて大企業とかのCVCに行くこと経験を積むことはいいことなのかもしれない。
鈴木
そうですね。それがきっとあのM&Aを促進していく道の一つのきっかけなんじゃないかって思ったりはしてます。
石橋
ありがとうございます。
第3弾は短めのショートコンテンツだったんですけど、ぜひこれ見ていただいてるVCの方々はこういうキャリアのあり方っていうのも一つかとはもちろん思いますし。事業会社の方は場合によっては鈴木さんみたいなご経歴というか、そういう優秀なキャピタリストをチームに招き入れるっていうのは僕個人としてはめちゃくちゃよりCVCを前に進めるためにはすごい重要なピースというかソリューションの一角なのかなとは認識してますので。
給料を上げていただいて、もしくはキャリーを設計していただいてですね、ぜひVC業界とCVC業界の流動性を高めていければなと思っておりますので。また何か迷ってる方とかは鈴木さんにもアドバイスをいただきながら、設計もしていただいていいのかなとは思っております。それでは改めて第3弾まで鈴木さんご出演ありがとうございました。
鈴木
ありがとうございました。
石橋
皆さんも最後までご覧いただきありがとうございました。