国内トップクラスの投資・支援実績を誇る企業が語る体制や支援の方法とは?|スタートアップ投資TV

◯上田 宏介 ニッセイ・キャピタル株式会社 代表取締役社長
ニッセイ・キャピタル 
HP▶︎ https://www.nissay-cap.co.jp/
Facebook▶︎ / ueda.kosuke.7
2000年に日本生命に入社。
資産運用や上場株式投資などを担当した後、
2022年4月にニッセイ・キャピタル代表取締役社長に就任。
「From Seeds to Exits」をコーポレートスローガンに掲げ、
シード・アーリーステージから積極的に取組むとともに、幅広いステージで投資を行う。
創業前または創業間もないスタートアップ企業を発掘・育成する

32年の歴史を持つ日本生命100%子会社のVC

石橋:
皆さん、こんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。

今回は、ニッセイ・キャピタルの上田さんにご出演をいただいております。上田さんのそもそものご経歴ですとか、ニッセイ・キャピタルがどういう歴史・背景を持って創業され、どのような投資事例があるのかというところもいろいろお話を伺っておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

石橋:
僕自身ですね、実は上田さんとはガッツリ初対面なので、根掘り葉掘りと言いますか、そもそもどんな方なのか、もちろんニッセイ・キャピタルさんについてもお伺いをしていきたいと思っているんですけれども。さっき簡単な事前の打ち合わせで「知らなかったのかよ」って話ではあるんですけども、ニッセイ・キャピタルさんは1991年から始めていらっしゃって、もう丸32年目、33年目となるんですか?

上田:
そうですね。ニッセイ・キャピタルというのは日本生命の100%子会社なんですけれども、設立が1991年で、当時はベンチャー投資と呼ばれていた頃から取り組んでいたと思いますけれども、歴史自体は30年超という形になっています。

石橋:
僕自身がまさに1991年1月生まれなので、ちょっと勝手ながら謎の親近感を持ちつつ、これだけの人生でずっとVCをやり続けている方々なんだなというところを感じるところなんですけれども、その中で上田さんで言うと、もうどのぐらいニッセイ・キャピタルさんにいらっしゃって、そもそもどういう遍歴を経て今ニッセイ・キャピタルさんの代表をやっていらっしゃるんでしょうか?

上田:
先ほどガッツリ初対面というお話でしたけれども、我々ニッセイ・キャピタルという会社自体は30年超スタートアップとしてやってるんですけども、私自身は、2022年の4月に着任をしております。2000年に日本生命に入社をしまして、日本生命でずっと仕事をしてきました。

23年目ということですね。日本生命本体の方で資産運用関係の仕事を長くやっていて、こちらに来る直前は親会社で上場株式投資の担当をしていたんですね。そこから昨年の4月にニッセイ・キャピタルに着任してスタートアップ投資に携わって1年ちょっとというところです。

プロパーと出向者が融合する独自の組織体制

石橋:
ちなみに日本生命さんはそういうふうに上場株をやられたりとか、基本的に会社内でずっとぐるぐるローテーションをして入れ替わりっていう感じなんですか?

上田:
基本的には大手の会社のジョブローテーションという形ですので、3〜4年に一度異動があって担当が変わって、ということを経験してやっています。

一方で、日本生命の子会社としてニッセイ・キャピタルは別の組織になっています。私のように日本生命から人事異動という形で移動してくる人間と、特に投資担当の人間はニッセイ・キャピタルから直接採用して、長期在籍をしてやってもらっているという形になってます。

石橋:
なるほどですね。じゃあ本当に日本生命さん本体の経験がちゃんとあられる方々と、投資のために来ていらっしゃる人たち、それぞれのいいところが分かれていらっしゃるわけですね。

上田:
そうですね。それを融合して組織運用をしているという感じです。

約10兆円の上場株ポートフォリオを持つ日本生命の投資戦略

石橋:
ちなみに、当たり前だと思うんですけれども、ニッセイ・キャピタルさんも、ある意味親会社の日本生命さんを聞いたことない人は間違いなくいないと思うんですけど、そもそも何でじゃあVCをやってるの、みたいな話をいただくために、日本生命さんのお話を簡単にご説明いただければなと思うんですけれども、お願いしてもよろしいでしょうか。

上田:
日本生命は生命保険会社で、日本の中でも規模では一、二を争う保険会社だと思います。生命保険会社ですので、保険の契約者様からお預かりした保険料を資産運用の形で運用していくという形ですけれども、生命保険会社の運用の基本はALMと言いまして、アセット・ライアビリティ・マネジメントという、その負債に合わせて資産を構築するという形です。

要は債券への投資がメインなんですけども、要は債券だったり融資だったり金融商品がメインなんですけれども、日本生命は昔から厳格なリスク管理のもとでリスクバッファーの範囲内でリスク性資産にも積極的に投資をするというのを投資方針としてやっていまして、上場株式も日本の中でも有数の株主として、今だと時価10兆円くらいのポートフォリオを取り入れていますし、冒頭ありましたようにスタートアップ投資にも10年超取り組んでいる。

それは上場株に投資をしているので、その手前の未公開株にも投資をして、そこからIPO上場をすればそのまま継続して株主として持ち続けるというような一体の運用の意味もありますし、やはり大きな金融機関として社会的な意義というか役割というか、スタートアップにもしっかりリスクマネーを提供していかなきゃいけないという、そういう意味合いもあって長年取り組んでいるというふうに理解しています。

石橋:
逆に30年前に、もちろんニッセイ・キャピタルさんとして始まっていらっしゃるわけですけれども、一部重複する部分もあるかもしれませんが、ニッセイ・キャピタルとしてわざわざ子会社化していらっしゃってVC部門を作られた背景と狙いとか、場合によっては、日本生命さんがいる中でCVCと認識されることもなくはないと思うんですけども、そこら辺でどういう風な狙いとか意図を持って始まったみたいな背景ってどんな感じなんでしょうか。

上田:
30年前は私自身も入社していなかったので、別会社として作った意図というところは正確には把握はしていないんですけども、少なくとも現状においてはやはりスタートアップへの投資、スピード感だったりとか意思決定の部分というところでは、やはり別会社で切り出されていることのメリットがあるんじゃないかなというふうには思います。

あとはやはりローテーションがある出向者とプロパーのバランスという形、勤務形態・就労形態を考えても、本体ですと、なかなか直接採用して同じ仕事をずっとやり続けるというのは難しい面がありますので、そこは別会社になってることのメリットかなと。

累計約1000億円、3つのファンドで展開する投資戦略

石橋:
一歩踏み込んでニッセイ・キャピタルさん自体のお話を改めて伺っていければと思うんですけども、上場株で言うとすでに約10兆円のポートフォリオあられるという桁外れだなという話が出てきたんですけれも、今で言うと未上場株、スタートアップへの投資の総額というのはどのくらいの規模感で、かつ足元で言うとどういう規模のファンドをやっていらっしゃったりするんでしょうか。

上田:
足元ではですね、運用総額の累計がちょうど約1000億円くらい。我々は運用しているのは全てシングルLPとして日本生命からのお金を預かって運用している、いわゆる二人組合ですので、外部からの調達はしていないんですけれども。

直近その投資活動中のファンドは3つありまして、2023年1月に設立をした13号ファンドの100億円規模のファンド、こちらは旗艦ファンドというかですね、継続的に設立をしているファンドなんですけども、今は13号まで設立をしています。その旗艦ファンド自体は、今5号から最新の13号が今存続している形で、投資活動中という形になります。

それ以外にですね、1つはEXファンドという、既存の投資先のIPOラウンドに限って大きな追加出資ができるような、いわゆるグロースキャピタルというか、大きな調達が必要な終盤のラウンド専用のファンドを数年前に立ち上げて、こちらの100億円規模で立ち上げたものが今も継続しているというのと、

直近の5月にですね、これニッセイ・キャピタル初めてのところなんですけれども、サステナビリティ課題解決ファンドというテーマファンドというか、その最近のクライメートテックだけではないんですけど、サステナビリティ課題と呼ばれるような領域に取り組んでいるスタートアップさんに集中的に投資をする。

これが新しい初めてだと思うんですけれども、テーマ型ファンドが初めてなんですけれども、こちらを立ち上げて、メインファンド、EXファンド、サステナビリティファンドの3つが運用活動中という形になっています。

オールステージ・オールジャンル、親会社シナジー不問の投資方針

石橋:
おそらく今回の視聴者の方で言うと、旗艦ファンドでご縁をいただく人が一番多いと思うので、そちらの方を深掘りしながらお伺いしていけたらと思うんですけれども、100億円のサイズでやっぱり一つのファンドでやられていると、例えばどのぐらいのチケットサイズでどのくらいのラウンド感、この辺りが一番スイートスポットだと言うところは、どういうイメージになっているんですか?

上田:
結論から言うとですね、オールステージ、オールジャンルという形になっています。何でもできる形にはしているんですけども。

石橋:
そもそも日本生命さんとのシナジーだとか、この領域はダメだとかって全くないんですか?

上田:
そうですね。我々の投資方針の特徴的なところはですね、組織としては金融系VCの属性があるんですけども、金融系VCっぽくない投資方針を持っている。CVCとしての属性があるんですけれども、CVCっぽくない投資方針を持っているところかなというふうに我々自身としては理解をしていまして。

といいますのは、我々オールステージ、オールジャンルと申し上げたんですけれども、基本的にはシードだったりアーリーだったりという比較的早いステージから入っていって、事業進捗があれば積極的にフォローをしていって、期待を持てそうなところに大きく投資をして、うまくいけば回収ができるという形。

例えば後ろのステージからフォローだけでやりますという形ではなく、早いステージから入ることを基本的には志向していますし、積極的にリードもさせていただくスタイルでやっています。

CVC的ではあるんですけれども、先ほど申し上げたように運用しているお金は日本生命だけなんですけれども、親会社とのシナジーは投資の上では一切というかですね、考慮せずにリターン目的で投資をするという形でやっています。

石橋:
そこまでCVCっぽくない投資家としていらっしゃる中で、ニッセイ・キャピタルさんのプロパーの人の比率と、日本生命さん本体から来ていらっしゃる人の比率って何対何ぐらいなんですか?

上田:
人数的には大体6対4ぐらいでプロパーになっているんですけれども、その中でも特にその投資担当のフロントのキャピタリストは、基本的にはプロパーの採用でプロパーの担当をさせていまして。といいますのは、そのジョブローテーションを前提とした日本生命からの出向者が投資をするには、先方にもご迷惑がかかってしまうし、育成には時間がかかってしまいます。

そもそもこのVC業界、スタートアップ業界で仕事をしていく上で、やっぱり長く活動していくことによってできる経験だったりネットワークだったり、非常に重要だなという認識ですので。

我々としても投資活動は基本的にはプロパーのキャピタリストに担当してもらって、組織的にそれを支援している。私も含めた出向者は基本的にはマネジメントの方をメインでやっているという感じです。

ハンズオン支援とキャピタリスト主導の投資判断

石橋:
ちなみに、オールステージ・オールジャンル、かなり可変的なのかなと思う中で、しかも追加投資もやっていて本当に幅広いと思うんですけれども、途中でリード投資も積極的にとお話もありましたけど、リード投資とフォロー投資、いろんなタイプの投資先の方々いらっしゃると思うんですけれども、投資の支援とかサポートみたいなのっていうのは、どういう風に動かれたとか、こういうことやってますみたいなのってあるんでしょうか。

上田:
基本的にハンズオンというスタイルをとっているので、それぞれのキャピタリストが投資先に張り付いて、もしく入り込んでやらせていただいているんですけれども、結論から申し上げますと、組織としてこれは必ずやりますですとか、もしくは組織的にこういう、例えばエンジニアの部隊がいたりですとか、例えば人材の専門的な採用の人間がいたりというのを置いているわけではありませんので。

それぞれの担当キャピタリストが投資先と相談をさせていただきながら、それぞれの局面に応じて困ったことを支援させていただくような形かなとは思います。

アクセラレーションプログラム「50M」でシード投資を強化

石橋:
第3話でメインでお話ししていただく予定なんですけども、50Mという、いわゆるニッセイ・キャピタルさんが取り組んでいるアクセラレータープログラムっていうんですかね、やってらっしゃると思うんですけども、元々やっぱりシード時期から投資はしていたけど、それを強化するみたいな文脈だったんですか?

上田:
いくつかあるんですけども、一つは今おっしゃっていただいた通り、広いステージで投資をしていこうと。その中でも少し前はいわゆるシリーズAといいますか、ぐらいのところで入って、その後ろもフォローしていく。

むしろシードステージはシードに特化されたようなVCさんが他にいらっしゃいますので、そこで立ち上がった事業に対してサポートさせていただくような形でやっていたんですけれども、やはりそこでの競争環境がプレイヤーが増えてきて厳しくもなってきたので、一方で我々は独自でシードの案件をソーシングしようと思っても、なかなか普通にソーシングをしただけでは難しいということもあって。

アクセラレーションプログラムの50Mというものを立ち上げて、そこでまさに創業直前の起業家さんも含めて、そこからまさにゼロから事業を立ち上げるような方も採択させていただいて、そこにキャピタリストが張り付いて支援をさせていただくと。

そこでシードのソーシングだったり、シードもやってるというブランディングだったりというのをやるとともに、我々のキャピタリストにとっても、そういうその0→1のステージの起業家の方をずっと一緒に働きながら事業の立ち上げを経験するというところで、最初のこのステージの企業に対して何が必要かというところの経験をしっかり積んでいくところもプログラムの意義があると思います。

石橋:
細かい詳細や狙いは第3話でお伺いしていけると思っているんですが、少し50Mのシードの話からぐるっと変わってきまして、今まで13個のファンドをやられている中で、過去でいうとどういったところに投資ってされてきていらっしゃったんですか?

上田:
直近で言うとですね、オールステージ、オールジャンルと言いつつも、バイオ領域も積極的に投資していまして、直近はなのでITサービス8割、バイオ2割ぐらい。結果、ジャンルは問わないというか、オールジャンルという形になっているんですけども、バイオも含めて積極的に投資しています。

どの領域に注力しているというのは実はあまりないんですけれども、むしろ先ほどから申し上げている通り、私も含めた出向者はマネジメントに特化をして、それぞれのキャピタリストに投資の活動を任せている。

その結果としてある程度自然に分散されているというかですね、特にこの領域だけは絶対やるなというのを決めていないので、それぞれのキャピタリストがもちろん市場環境なりを踏まえながら、この案件がいいというものをソーシングしてきて、それを社内の投資委員会に付議して、その投資可否を最終的に私が決定していくという形でやっているんですけれども。

結果的にやはりそれぞれのキャピタリストの中では得意な案件とか得意な領域だったりというのがだんだん色分けされていくんですが、組織の中でもこういう案件は誰が得意そうだとか経験があるとかという形で分散されていくので、逆に組織全体ではあんまり強い色だったり、ここに特化しているというのはないんですけれども。

そういった形でそれぞれいろんなところに強いキャピタリストが分散している状況になっているので、調達を考える方がいらっしゃれば、一旦どこかに相談をいただければ、そういう領域に強い経験を持ったキャピタリストというのがどこかしらにいるような組織にできてきているんじゃないかなと。

「ワクワクする会社」に投資したい、上田氏が語る投資哲学

石橋:
ちなみにそう言う場合は、公式HPの方でお問合せから連絡をすれば大丈夫ですか?概要欄の方にニッセイ・キャピタルさんのHPのURLを記載をさしていただいておりますので、そちらをご覧いただければなと思います。

最後に上田さん、もちろんマネジメントの方に注力されているというお話ではありましたけれども、上田さん目線だと、こういう会社にやっぱり投資していきたいとか、こういう起業家を応援していきたいみたいなところだと、どういう人にやっぱり会いたいなみたいな目線ってあられるんですか?

上田:
非常に抽象的になってしまうんですが、最近社内でも言っているのが、ワクワクする会社に投資したい。特にこれは私の個人的な思いではあるんですけども、今、日本生命という大きな組織・大きな経営期間で20年くらい経ってきて、去年スタートアップの世界に来て、全然違う世界で非常にびっくりした点と。

自分のアイディア、自分の技術、自分の発想で世の中をこんなに良くしていくんだという、本当にピュアな情熱を持った方々がたくさんいるので、本当に話を聞いているだけでもワクワクしますし、明るくて活気のある業界だなと、着任してから感じているところです。

ですので、ワクワクさせてくれる人をご支援させていただきたいなと。で、何を持ってという意味では、やっぱりその日本経済にそれほど影響を与えられるような、大きくなれるポテンシャルがあるような企業ですとか。

逆に最近その始めたような、そのクライメートテックやサステナビリティ課題というような領域では、その日本だけにとどまらず、広くグローバルに共通な課題を解決するようなスタートアップを日本から生み出していく、そういったことが少しでもできればなと思いますし。

個別の投資というだけではないんですけども、今国もスタートアップ支援に全面的に取り組んでいる、そういった環境に私が着任をしていただいたんですね。ニッセイ・キャピタルとしても、良い投資をするだけでなく、業界全体が盛り上がっていくような活気を持っていける取り組みも何かできたらと考えています。

石橋:
なかなかIPOって距離のある話ではシードからするとあるとは言えど、示唆のある話だったなと思いますし、ぜひこれ見ていただいている方の中にも、改めてこれから起業を志している方ですとか、もちろんもう既にシリーズAだとかB超えている方々もいらっしゃるかと思います。

株の持ち替えをしていただけるっていう可能性が選択肢であるっていうところも非常に魅力的なお話なのかなとは思いますので、ぜひ概要欄の方のですね、ニッセイ・キャピタルさんのURLからご関心のある方はお問い合わせいただければよいのかなと思っております。上田さん、今回はご出演ありがとうございます。

新卒VCが語る、20代起業家への投資戦略と自走を促すハンズオン支援の極意【ニッセイ・キャピタル 伊藤佑将 vol.02】

飛行機研究者からVCへ、ドラマがきっかけの異色キャリア

石橋:
今回もですね、前回に引き続きまして、ニッセイ・キャピタル株式会社キャピタリストの伊藤さんにご出演をいただいておりますので、伊藤さん今回からよろしくお願いいたします。

伊藤:
お願いします。

石橋:
前回、第1話では代表取締役社長の上田さんにご出演いただいておりましたが、その上田さんのパートの中でも、日本生命さんから来ていただいているマネジメント層の方々と、一方でフロントマンのキャピタリストの方々はニッセイ・キャピタル社として雇用されている方が多い、というお話をいただいております。

今回はまさにそのフロントで投資業務にメインに当たられている伊藤さんにご出演いただいているわけですけれども、改めて、そもそもなんでニッセイ・キャピタルさんにいらっしゃるのか、自己紹介も含めてお伺いしていければと思います。元々いつぐらいからVC業界に来ようとかあったんですか?

伊藤:
前職はなくて、私は新卒でニッセイ・キャピタルに入社しています。これが1社目の会社です。

石橋:
新卒でVCになられて4年目ってなると、ちょっと珍しい方だったのかなと思ったりするんですが。

伊藤:
正確には2019年から大学院に通いながら、フルコミットでインターンを今うちの会社で1年間ほどしておりまして。その後そのまま2020年に新卒入社した経緯になってます。ですので当時で言うと、多分新卒でガッツリ採用してるのはJAFCOさんぐらいしかいらっしゃらなかったかなと。

石橋:
逆になんか大学院時代からとか、学生時代からスタートアップとか投資系とか、そういう研究とかされていた感じなんですか?

伊藤:
いや、私は元々飛行機の研究をしていて。

石橋:
全然違うじゃないですか!何がどうなってそうなるんですか?飛行機の研究?どういう流れなんですか?

伊藤:
私になりに軸はあるんだろうなと思っていて、やはり新しいこと好きなので、当時飛行機やっていたんですけども、航空系だったりとか宇宙領域みたいなそういった研究をしておりまして、飛行機のエンジンとかロケットエンジンみたいな研究をしてました。そういった中で、すごく大学院で研究するにも面白い研究ではあったんですけども、じゃあそのままメーカーで研究職に入るとなると、要素研究って言われる、これ40年間やるってなるとちょっと長いなっていうのはあって。

石橋:
少しどころかかなり長いです。40年ですか。

伊藤:
大学院の時にちょっと幅広くいろんな業種を見ようというところである意味狭いコミュニティではあったので、ちょっと視野を広げてみた中で、たまたまベンチャーキャピタル業界っていうものを知って。

石橋:
どうやって知ったんですか?

伊藤:
アメリカの「シリコンバレー」というドラマを見てたら、どうやらVCという面白そうな仕事があるぞ、みたいな。なんかそれぐらいの感覚でした。日本にも同じようなうちの会社ではない別のVCさんを見つけて、そこにDMをしてみたら、「学生だけどちょっとおいでよ」って言われて、3ヶ月ぐらいそこでインターンして、そのまま新卒で入りたいなと思っていて。そこはたまたま募集していなかったので、ちょうど間口の空いてたうちに、そんな経緯になってます。

石橋:
逆に1年インターンとして関わる中で、新卒からVCでやっていこうって迷いなくやっぱ思われてたんですか?

伊藤:
そうですね、はい。もうそこはむしろ行きたかったので。

石橋:
改めてそういうお話聞くと、エンタメコンテンツとかで、まさに日本のドラマとかでスタートアップ界隈を取り扱っていただいたりとかしてますけど、そういうところでその裾野が広がっていくと、やっぱり伊藤さんみたいに違う元々業界にいる方々がもっとこの界隈に入ってきてくれて、結果的にシステム的にも成り立つっていうのは、確かにそういう事例なのかもしれないですね。Netflixでスタートアップのやつ見て、って感じですね。

伊藤:
だいぶ珍しいと思う。業界的にはいいことだと思っています。

オールステージ・オールジャンルの中で見つけた3つの投資テーマ

石橋:
逆に新卒で飛び込んできている伊藤さんが、前回の上田さんのお話から振り返ってもですね、ニッセイ・キャピタルさんのオールステージ・オールジャンルで投資されている中で、キャピタリストの方々が一定数は色合いというかそれぞれがテーマを持って投資されてるからこそ、まあ何でしょう、会社全体としてはオールステージ・オールジャンルだよというお話を伺ってきたかなと思っているんですけれども。

伊藤さん個人のそのキャピタリストとしては、この4年間足元で言うと、3年間で言うと、改めて今まではこういう風な戦略でとか、こういう風なところに投資していたよとか、足元で言うとこういうところ見ていますよみたいなところですとどんなイメージなんでしょうか。

伊藤:
ありがとうございます。1年目から最近までの動き方でちょっと変わってるなと思っておりまして。初期はそれこそ新卒で入っているので、社会人初めてですみたいな状態ではあるので、何もかもわからないみたいな状態であったので。早くキャッチアップしなきゃというところで、あんまりその業種だったりとかあえて絞らずに、シード・アーリー・ミドル・レイターでそれぞれ全部やるっていうところでやってました。

これがやっぱりうちの会社の強みだなと思ってまして。例えばVCの方であれば、シードに投資をしていって、その投資先が成長していって、アーリー・ミドル・レイターの姿を観れるのに対して、我々は一方でその前のことがそこまでわからないと言うのもありますけれども、4社例えば投資したらそれぞれ短期間で見れるっていうのが強みだなと思ったので、ある業種もステージも分散して投資してました。

石橋:
逆に、当時で言うとご自身としてはその中でどういう風にして変遷を辿って、徐々にフォーカスをしていく感じになるんですか?

伊藤:
結論、フォーカスはしていないです。ただ大きいテーマとしてどういった会社が、これは個人の思いも含めてどういう会社を投資させていただきたいみたいな思いはあるんですけども、細かい業種とか業態とかっていうのではあんまり絞らないようにむしろしてます。

石橋:
例えば伊藤さんの投資先だと、こういう投資仮説でこういうところに投資してますみたいな事例であるとか、実際にその後にこういう風に成長しているんですみたいなケースとかをご共有いただけるところってあるんでしょうか?

伊藤:
例えばですね、私、元々このVCとして何がやりたいかみたいなところで言うと、日本の国力向上みたいなところのテーマはちょっと恥ずかしながら結構本気で思っていて。そうなった時に、分解していくと何をすればいいんだろうみたいな考えた時に、まずはしっかり外貨を獲得してこなきゃいけないというところで、外貨獲得できる会社なのかっていう部分がテーマの一つ目としてあります。

もう一つは、いわゆるよく言われることですね、生産性向上みたいなことで、しっかりその今ある外貨獲得の方に回すリソースが新たに生まれるみたいな文脈もあって、生産性向上っていうテーマが2つ目。3つ目がエンタメっていうところで、ちょっと突飛なんですけども、じゃあ結果その「外貨獲得します」「生産性向上します」ってなった世の中で何が必要かっていうこと、エンタメコンテンツというものは重要なコンテンツなんだろうなと思っているんで。それが3つ目のテーマとしてあります。

で、そういったのも最初から思っていたわけではなく、いろいろ投資していく中で考えているところでこれまた今後変わっていくかもしれないんですけど、今思ってるところで、そういった文脈で一番最近投資した会社だったら、ソラジマっていうWebtoonを手掛けるすごく伸びてる会社があるんですけども、彼らはまさにそういうことを思ってる中でドンピシャのエンタメコンテンツで投資させていただきました。

石橋:
今まさにエンタメのところ、ソラジマさんの事例あげていただきましたけれども、生産性向上であるとか他の投資先の事例とかとあられるんでしょうか。

伊藤:
ありがとうございます。これは私が一番最初に投資した会社になるんですけども、クロスビットというSaasの会社がございまして、やってることとしては、非正規雇用者をメインとしたアルバイトの方々のシフトを管理するツールを提供している会社です。

アナログで管理されてるシフト業務をデジタル化しますというサービスだけではなくて、アナログでやってるからこそ非効率が発生したり、例えば社内にリソースがあるのに無駄にその派遣を大量に活用してしまうだったり、そういったものを解消しますというプロダクトではあって、そういったところはそのテーマで投資させていただきましたし、今、追加のファイナンスというところで投資させていただこうと思っている会社です。

投資先の8割が20代起業家、若手に賭ける理由

石橋:
ちなみに今、何歳ですか?

伊藤:
私、今27歳です。

石橋:
27歳っていうと、結果的にそういう若手の投資とかっていうのもなんか意識されたりとかするんですか?それともまあそこも含めてあえて意識してなかったりとか、どんな方針でやってらっしゃるんですか?

伊藤:
ありがとうございます。そこは結構意識するようにはしておりまして。実際私の投資先で8割ぐらいが投資時点で20代の起業家で、一応ここも私なりの仮説がありまして、いわゆる30代中盤とかのキラキラと言われるようなキャリアを経験した人たちが人気あるっていうのはもちろん理解できるかなと思う一方で、20代の起業家の中にはそういうキャリアは進まなかっただけで早めに起業しましたっていうところで。

同じようなポテンシャルを抱えてる人っていうのはそこにいるんだろうなっていうふうに思っています。そういった方ってまさにその20代がその人としての成長時期だと思うので、投資後にえげつなく伸びるみたいなことがありまして、なのでそういったものを成長する直前に投資するっていうのも、まあVCベンチャーキャピタリストとして醍醐味だなと、やってるような背景はあります。

石橋:
それがきれいにハマったケースとか、この人本当にえげつないくらい伸びたなとか、人物に期待して投資したなみたいなそういうところとあったりするんですか?

伊藤:
ありがとうございます。これはありまして、1年ぐらい前に投資した会社で、ACROVEという会社があるんですけども。ここの社長の新井さんは私の年齢一つ下の社長になるんですけど。

石橋:
今26歳と言うことですね。

伊藤:
そうだと思います、はい。彼自身は学生起業家でして、かなり初期の方から起業していたんですけれども、学生起業家だからこそむしろ自分は社会人経験がないというところで、上場企業の社長も含め先輩起業家の話をすごく誰よりもちゃんと聞きますし、またその何よりもがむしゃらに働きます。

あとは時には大人をしっかり巻き込んでいく必要があるということももちろん理解しているので、直近でも実際に投資後に会社における重要なポジションの採用にも成功していて、今だと思うかなり盤石な組織を作れてるっていう所で、やっぱりあんまり年齢ってのは関係ないんだというふうに思った事例の一つではあります。

新卒VCが実践する「自走を促す」ハンズオン支援

石橋:
なるほどです。若手に投資される背景というのも先ほどちょっとコメントいただいていたかなと思うんですけれども。逆になんかあえて意地悪な質問というか界隈のTwitterとかで今、Xになっちゃいましたけど、議論が安定的になってる「新卒VC役に立つんだ問題」みたいなあるじゃないですか。

一方でさっき第1話の方で上田さんからハンズオンの支援を基本的にニッセイさんやっていらっしゃって、それもやっぱりキャピタリストの方々がやっていらっしゃる中で、この伊藤さんってもうすでに今トータル20社ぐらいでした?

伊藤:
20社強、担当させていただいてます。

石橋:
ある意味その選ばれる投資家としてもキャピタリストとしてすでに十分活躍もされていらっしゃる中で、その新卒VCではあれ、どういうハンズオンを心がけてるとか、スタンスとか姿勢の話でも全然大丈夫ですし。

ないしは同じように多分最近は新卒VCも累乗的に増えてきてるのかなと思う中で、こういうところやっぱり気をつけないと新卒VCとしては選ばれ続けるキャピタリストになれないよね、みたいな目線がちょっとそれぞれ教えていただければなと思うんですけど、前段のどういうハンズオンを支援してるんだろうけど、伊藤さんはどんな感じで活動されてらっしゃるんですか?

伊藤:
ありがとうございます。大きく3つやっておりまして、1つが自走に向けたご支援、これは何でも屋みたいな感じで。2つ目が人的ネットワーク支援というか、その時々必要な人をつなぎます。またもう何かあった時にいつでも話聞きますという相談相手みたいな、その大きく3つをやってます。

で、この1個目が自走に向けたポイントなんですけれども、1年目2年目は僕が僕がという形で何でもやろうとして、むしろなんか手を動かしてガンガンやろうとしていたんですけれども。やっているとやってる会社ほどあんまり伸びてないとみたいな部分に気づいていて。

これ冷静に考えると、起業家からすると365日24時間この事業のことを考えてる一方で、我々って週に1回ミーティングするとかそれぐらいの関係性ではあるので、こういった関わり方で行動がすごく事業にヒットする重要なことっていうのが、むしろやばいんじゃないかというふうに自覚するようになって。

まだすごい大人な社長だとまともに付き合ってくれたりしてるんですけど、これって何かもしかしたら迷惑なんじゃないかという風なのを一定自覚するようになったっていうところで。とはいえシードだったりすごい早い企業だと、ただただ人が足りないみたいなところもあるので、彼らは自走できるように「できることは何でもやります」というところで関わりを主にやってますすね。

新卒VCへのメッセージ「まずは3ヶ月、ガムシャラに」

石橋:
なるほどですね。逆に、なんかそれもおそらく3年間4年間の動きでなんか変化する中で、今となっては振り返ると、撮影時点が7月なので3ヶ月前くらいから新卒でVCになりましたみたいな人には、あった方がいいよねみたいなメッセージというのはどんな感じだったりしますか?

伊藤:
何でもやった方がいいと思います。結論、私も1年目入った時には、当時今はもう独立してしまった師匠みたいな人がいまして、その人の投資先のミーティングに全部出るとか、あとその夜の会食にも全部出るっていう所謂鞄持ちみたいなことをしている1年間があって、その時は会話にもついていけないとかもあったので、録音して後から聞きまくるとか、単語帳作るみたいなそういうこともやってたんですけども。

まずキャッチアップしなきゃ新卒だとやらなきゃいけないことがかなり多いので、とりあえずはもうがむしゃらに3ヶ月半年ぐらいは動くっていうのがいいかなと思って、その中では必要あることないことっていうのが見えてくるので、一番最初はがむしゃらに動くというだけだと思います。

石橋:
ありがとうございます。改めてですね、これ見ていただいてる方の中には先ほど伊藤さんと今1人のキャピタリストとして注力している領域のお話もそうですし、わかりやすいところで言うと20代若手の起業家の方々にフォーカスをしているという話もありましたので、あの見ていただいてる方の中でですね、ぜひ一度伊藤さんの話聞してみたいとか、壁打ちしてみたいなという方は、概要欄の方に伊藤さんのFacebookのURLも掲載させていただいておりますので、ぜひDMをですね。

それこそ伊藤さんが一番最初インターンを獲得した時もDMで普通にはアポイントメント取ったみたいな話いただいておりましたので、いい意味で遠慮せずにご連絡をしてみていただくのが良いのかなと思っております。

それでは第3弾では、第1弾の上田さんから頂きました「50M」というニッセイ・キャピタルさんがやっていらっしゃるアクセラレータープログラムのお話を深堀ってお話を伺っていきたいと思っておりますので。伊藤さんまた次回もよろしくお願いします。

伊藤:
お願いします。

最大5,000万円を出資!日清キャピタルのアクセラレータープログラム「50M」の全貌【ニッセイ・キャピタル 伊藤佑将 vol.03】

最大5,000万円を出資するアクセラレータープログラム「50M」とは

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。今回はですね、引き続きニッセイ・キャピタルのキャピタリスト、伊藤さんにご出演をいただいておりまして、ニッセイ社が誇るアクセラレータープログラム「50M」というプログラムについてご解説をいただいております。

具体的に50Mはどのような、これから起業される方にとって魅力的なプログラムなのかというところをお話をいただいておりますので、ぜひ最後まで見ていただけると、これから起業されようという方々の非常にチャレンジしやすいきっかけになるかなと思っておりますので、ぜひご覧ください。

今回もですね、前回に引き続きましてニッセイ・キャピタル株式会社、キャピタリストの伊藤さんにご出演をいただいておりますので、伊藤さん、今回もよろしくお願い致します。

伊藤:
お願いします。

石橋:
前回は伊藤さんにですね、そもそも伊藤さんがどういうご経歴で新卒としてVC業界入ってきていらっしゃる中で、どういう思いとかどういう戦略でどういうところの投資先に投資してるのかお話を伺ってまいりました。

今回、第3話目では、そもそもニッセイ・キャピタルさんとしてシード投資枠っていうんですかね、そういうプログラムとして取り組んでいらっしゃる50Mというアクセラレータープログラムについて、ちょっといろいろとお伺いをしていきたいと思っておりますが、そもそもその50Mってどんなプログラムなんですかね?どんなアクセラレータなんですかね?大枠のご質問からちょっと振らせていただいてもよろしいでしょうか。

伊藤:
ありがとうございます。基本的には創業前、もしくは創業間もない企業を対象とした、しっかりシリーズSまで伴走していってプログラム中に最大5000万円まで出資するというプログラムになっております。

石橋:
シリーズSって何ですか?

伊藤:
いわゆる初めてのVCファイナンスというような位置づけになっています。

石橋:
若手の投資先多いっておっしゃってましたけど、そういう起業家の方がエントリールートも割と多いんですかね?

伊藤:
正確に測定したことはないんですけども、若手の方は結構多くはなっておりまして、過去でも半分くらいは20代もしくは30代前半くらいになってると思います。

半年から1年の長期伴走型プログラムの実態

石橋:
なるほどです。ちなみに50Mさん、もちろんホームページとか拝見していくといろいろ書いてはあるんですけれども、実際採択をされるとどういう内容のプログラムがあって、アクセラレータープログラム、界隈にもちょっと増えてまいりましたが出資を伴っているプログラムと出資を伴っていないプログラム、いろんな種類があるかなと思ってまして、50Mさんの場合はどういう内容になっていてどういう座組になっているという感じなんでしょうか?

伊藤:
ありがとうございます。全体感で言うと、大体半年から1年くらいのプログラムになっています。

石橋:
すげー、めちゃ長いんですね。

伊藤:
そうですね。というのも、我々しっかりそのビジネスがないような企業さんを採択させていただいて、どのビジネスをやろうっていうところでそれを検証して、これでやるかやらないかみたいなところまでやっていくので、一定時間がかかっているので長期間プログラムになってます。

そうなってくると、やっぱりその活動資金がないと彼らが事業に打ち込めないっていうところで、採択時にもこれは全社に対して500万円の転換社債という形で出資をさせていただいております。

石橋:
転換社債500万円で、で1年伴走して、ポジティブに変化していくと、じゃあ事業が出来上がり、で、そこがじゃあシリーズS っていう表現になるんですかね、転換社債を除くと、1回目のファイナンスでニッセイ・キャピタルさんが投資をしてくれる感じですか?

伊藤:
そうですね、もちろん進捗に応じてではあるんですけども、一定の進捗に応じて追加出資をできるだろうとなれば、我々から追加で4,500万円を株式投資させていただくというところで、その際に先ほどの500万円の転換社債はそれと同じ条件で転換をするというところで合わせて5,000万円で50M。

石橋:
めちゃめちゃわかりやすいですね。

プレマネー4億円という破格の条件設定の背景

石橋:
累計で5,000万円投資するときの、いわゆるバリュエーションと呼ばれる株価とかで言うと、何かレギュレーションとか決まっていらっしゃるんですか?

伊藤:
ありがとうございます。基本的には原則プレ4億円というふうに設定しておりまして、そのCBもプレ4億円で転換するというところになっておりますので、ダイリューションで言うと10%超みたいなところになると思います。

石橋:
理解です。先ほど事前の打ち合わせで2017年頃から、第1期の採択企業は2018年に出ているっていうような話を伺ってまいりましたが、僕自身業界に入ってきたのって2016年かな、2016年から2018年にかけてやっていたんですけど、当時のことを振り返ってもプレ4億円でシードのスタートアップを評価してくれるVCさんはまあ少なかったなみたいなイメージがあるんですけど。

やっぱり意見が分かれるところだと思うんですけど、どんな反応が多いとか、実際やっぱ結構しっかり高めに評価してくださるというところではあると思うんですけど、1年間伴走して見極めをしているからこそそういう評価もできるよねっていうようなイメージになるんですかね。

伊藤:
ありがとうございます。理由はいくつかあるんですけれども、一番大きいところで言うと、まずなんで50Mっていうプログラムを始めたかというところではあるんですけれども。

我々は「From Seed to Exists」というミッションを掲げているのですが、ただ一方でシードの投資っていうところに限ると、それ以外の投資と同じようなソーシングだったりとか投資後の関わり方っていうのをやってると、まあなかなか立ち行かないところもありまして、じゃあシードに関してはプログラムとして独立させて力を入れていこうという側面はありました。

そうなった時にじゃあ我々は創業前後の起業家に対するネットワークがすごく十分にあるかと言われるとそういうわけではなかったので当時で言うと破格というかあまりないような条件で打ち出すというところでポジションを取ろうという形ではじめました。

石橋:
なるほど。結構だから戦略的にちゃんと分析された上で、その上で何だかんだ5年間ぐらいやられてるわけですもんね。

事業がない段階で「人」を見極める投資判断

石橋:
ちなみにその採択のタイミングでは本当に事業がある、ない、みたいなレベルだみたいな話もいただきましたけど、だとするとどういうふうに見極めていらっしゃったりとか、そういうふうな破格な条件で募集されると結構な数の起業家の方のエントリーあるんじゃないかなと思うんですけど、採択企業さんでいうと、例えばこういうところの見極めで結果的にはこういうふうに花開いてますみたいなケースとか、どういう事例があったりするんでしょうか。

伊藤:
ありがとうございます。おっしゃる通り事業がない状態ではあるので、いわゆる数値で測るとかそういうことはできないですし、何をやるかっていうのもまだピッチデックベースでもないです、みたいなケースもあったりするので、基本的には経営者でしか見てないです。

これはそれぞれの担当によって見るポイントは違うと思うんですけど、私自身社長となると今まで事業に関わらず何をやってきたのかをすごく重視してましてこれは私の仮説ではあるんですけども、プロフェッショナルなら、何においてもプロフェッショナルだろうという仮説がありまして、

例えば私が3期で採択させていただいている方が、もともと音楽家であって音楽の道でプロになりましたみたいな人で、ただ事業はこれからです、とかっていう人もいますし。

第4期で採択させていただいた方はもともと研究者でアメリカでも研究やっていて、ただ事業はこれからです、みたいなところであって、そこで極められたのであれば、彼ら二人とも若い社長ではあるので、事業に関しても本気で向き合えば成功するんじゃないかというもと私はやっています。

石橋:
それはある意味、人に投資をするって言ってるはずのシードVCよりも人に投資してる可能性高いですよね。そうなってくると。

だってなかなかそこまで振り切って人のところで判断していこうというのは、なかなかやっぱ難しいところもあるような気もしますし、だからそれでまあしっかり伴走して初期の活動資金も投資された上で、それでまあ一定数何かが見えてきたら追加で4,500万円入ってきて結果的に5,000万円まとまるよねっていうのは、確かにこれから起業される方とか、チャレンジとかまだ模索されている方にとってはすごくいい機会なのかもしれないですよね。

伊藤:
そうですね。ただ一方で我々が課題として感じていることは、そこで良い条件でやるというところが我々としてしっかりそこまで事業を持っていいかないといけないという部分の責任は伴ってくるとは思っているのでそこはかなり意識しながら運営をしているところになります。

卒業生の累計調達額110億円、うち40億円強を日清が追加投資

石橋:
卒業をされている方々は今まで多数いらっしゃると思うんですけど、例えばどういう成長を遂げていらっしゃるだとか、どういう企業さんが出てきているというところで言うと全体感も含めてどんなイメージでしょうか?

伊藤:
ありがとうございます。全体感で申し上げますと、ちょっと古い情報かもしれないんですが、だいたい我々の卒業生が今までに累計で調達した金額が110億円程度になっております。

石橋:
ちなみにその中で言うと、先ほどニッセイ・キャピタルさんに追加投資、要はオールステージだしっていうところをお話で、なんでしたっけ?「From Seeds to Exits」要は本当に日本語っぽく言うとゆりかごから墓場まで、墓場ではないですけど、みたいなイメージなのかなってなると、その中の110億円っていうのはニッセイ・キャピタルさんからの追加投資も含まれる金額なんですか?含まれないんですか?

伊藤:
我々も含めてですね。我々からの出資金額は大体40億円強くらいになっています。

石橋:
じゃあやっぱり本当に50Mに採択されると、一番初期の投資だけじゃなくてもちろん成長ありきだとは思いますけど、ちゃんと事業が伸びていくとニッセイさんではずっと追加投資して並走してくれるっていう、やっぱりそういうプログラムになってるんですね。

伊藤:
そうですね。我々のアクセラレーションプログラム卒業後はいわゆる我々の通常の投資先と同じような扱いになりますので、通常の投資と同様にその後のフォローっていうものをやっていく形です。

石橋:
なるほどですね。ありがとうございます。

アクセラレーター増加の中で「ゼロイチ」に特化する戦略

石橋:
当時で言うと強烈なインパクトを出すためにプレ4億円みたいなベンチマークもあったという話でしたが、最近この4年間5年間くらいでも他のVCさんのアクセラレータープログラム、なんならこの1年とかむちゃんこ増えてるじゃないですか。

ここら辺て50Mをやられているニッセイ・キャピタルさんとして、ないしは伊藤さんとしてどういうふうに見てらっしゃるのかとか、どういうふうに観察していらっしゃって、場合によってはこういうふうに50Mを打ち出していこうとか、もうちょっとこういう戦略やっていこうみたいな戦い方みたいなところだと、マクロでどう見てるというご意見と、今後こういう改善とか変化が必要だよねみたいなところ、個人として思われてるところって何かありますか?

伊藤:
ありがとうございます。全体感に関する感想になりますけども、国策でもスタートアップを増やそうと言っている中で、そういった背景もあってアクセラレーターは増えているんだろうなというふうには思っておりまして、我々としてはシード出資だけをやるわけではないVCですので、全体的にはすごいポジティブだなとは思っております。

で、じゃあそうなった時にこの50Mをどうやって戦っていくかっていう部分に関しては、私個人としては、やっぱりその創業前後、まだ事業があるかないか分からないみたいな人たちと一緒に作り上げていくっていう部分になっていく。

いわゆるゼロサムではなくゼロイチを一緒に作っていくっていうようなポジションになっていくので、こうなってくるとポテンシャル層はかなり多くいるので、あんまりその競合しにくいんじゃないかなと思っておりますし、ここを突き詰めることが大事だろうなというふうに思っています。

石橋:
なるほどですね、ありがとうございます。

僕ら自身もいわゆるシードVCをやらせていただいている立場なので、アクセラプログラムとかやるかなやらないかなとか迷いつつ、それこそ50Mさんとかと、でも僕らがやると条件面で劣後するだろうし、一方で本当にいろんなプレイヤーの方々が今入ってきているので、確かになんかマクロで見ると起業家の人が増えるのめちゃめちゃ大事なんで、ある意味この番組自体もそういう目的を持って情報配信してるんですけど、なかなか難しいですよね。

そうですね。じゃあそこにどこまでリソースを割くんだみたいな謎の考えとか、いろいろぐるぐる回ってまだ結局着手できていないので。

なので結果的に、もちろん僕ら自身は当然アクセラとかはないですし、もちろんニッセイさんだけではもちろんないとは思いますが、これ見ていただいている方の中にはですね、これからまさに起業しようとしている、場合によってはそれこそプロフェッショナル力を持たれている方、ないしはそうじゃない方でも強い思いを持たれていらっしゃる方とかもいらっしゃるかなと思います。

その場合はおそらくこの動画が公開されている前後には50Mさんの第5期の募集がですね、開始されているか否やぐらいの時期のはずで、URLも公開されているかどうかみたいなタイミングですので、おそらく撮影が7月なので9月、10月には多分出てるんじゃないかなと思いますし、でていればこの概要欄にURL記載させていただいておりますので、ぜひチェックしてみていただいて、まずは一歩踏み出してチャレンジしていただくのがとてもいいことなんじゃないかなと思います。

この番組的にもですね、これから起業される方を増やそうと思ってやらせていただいているところでもございますので、ぜひチェックしてみていただければなと思います。それでは伊藤さん、今回も最後までありがとうございました。

伊藤:
ありがとうございました。