東京大学院卒エンジニアで原子力研究者のベンチャーキャピタリスト?|スタートアップ投資TV

○澤山陽平 株式会社Coral Capital-創業パートナー
Twitter▶︎  / yohei_sawayama  
公式HP▶︎https://coralcap.co/
YouTube(Coral Capital)▶︎   / @coralcapital  
2015年より500 Startups Japan マネージングパートナー。
シードステージ企業へ60社以上に投資し、総額約150億円を運用。
500以前は、野村證券の未上場企業調査部門である野村リサーチ・アンド・アドバイザリー(NR&A)にて IT セクターの未上場企業の調査/評価/支援業務に従事し多くのテックIPOを手がけた。
さらに以前はJ.P. Morganの投資銀行部門でTMTセクターをカバレッジし、大規模なクロスボーダーM&Aのアドバイザリーなどに携わった。
東京大学大学院 工学系研究科 原子力国際専攻修了。修士(工学) 。

現在でも継続的にコーディングを行っており、おそらく国内で唯一ハッカソンで優勝した実績を持つベンチャーキャピタリスト。 個人として TechCrunch Tokyo Hackathon に参加し、2014 年は TOP5入賞、2015年はIBM賞を受賞したほか、大学時代の友人とMaker Faire Tokyoに4年連続出展するなど幅広く活動。

ゴリゴリのエンジニアが金融業界に飛び込んだ理由

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回改めて、株式会社Coral Capitalの澤山さんにご出演をいただきまして、いろいろと根掘り葉掘りお話を伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

澤山:
よろしくお願いいたします。

石橋:
澤山さんがYouTubeでも情報発信されていらっしゃるかと思うんですが、むちゃくちゃ分かりやすくいろんな情報を解説されていらっしゃるなと思うので、改めて今回はご経歴とかも拝見していたんですけど、元々大学院時代に原子力とかの研究をされていらっしゃったんですよね?

澤山:
そうですね。ずいぶんいつの間にか遠いところまで来たんですけど、元々は結構ゴリゴリのエンジニアだったんですよ。

今も実はちょこちょこコードを書いてたり、最近はGoogle Apps Scriptでいろんなことをやっているんですけど、元々はゴリゴリのエンジニアで、高校時代からそういう人間だったんですね。

大学時代にコンピュータシミュレーションとかエンジニアリングを実際に活かせる場所を探していたら、いろいろ流れに流れて最後は原子力に行き着いていたというのが元々ですね。

石橋:
大学時代は研究以外に何かされていたことはあるんですか?

澤山:
ほとんど研究と、あとバイト。バイトは飲食店のキッチンなのでまた全然別です。

石橋:
普通にバイトをしていたんですね。

澤山:
よく学生時代からベンチャーに関わっていたみたいな人が多いじゃないですか。実はそういうのは全然関わってなくて。

学生時代はエンジニアとして、それでバイト、受託っぽいやつですけど、採用管理システムを作るとか、そういうバイトとかはやっていたんですけど、あまりベンチャーとは本当に全然縁なく、ひたすら新宿の駅ビルのイタリアンレストランのキッチンで鍋を振っていたみたいな、そんな感じでした。

日給1万円のインターンが人生を変えた

石橋:
原子力と飲食店の学生生活だったと思うんですけど、その中で金融系の会社に最初は就職されていると思うんですけど、どういう流れだったんですか?

澤山:
今になってみると笑い話なんですけど、大学院1年の夏のときに同じクラスの友達から外資系投資銀行でインターンをやっていると。

日給1万円貰えると聞いて、「行く!」となって。そのタイミングは2007年とかなので、外資系投資銀行が話題になり始めたタイミングで、ちょっと興味はあったんですね。

日給1万円というのと、ちょっと面白そうだから覗いてみるかぐらいのノリで行ってみた。そんなきっかけでした。

石橋:
最初はインターンがきっかけで、そのままJPモルガン証券株式会社さんに就職したんですか?

澤山:
そこはまた別であるんですけど、インターンで行ったのはゴールドマン・サックス証券株式会社なんですよ。

ゴールドマン・サックスのインターンに行って、そのときはテクノロジー部門を受けたんですよ。テクノロジー部門なら見ても面白いかなと思って。トレーディングのシステムとかいろんなところを見せてもらって、面白いインターンでした。

それで結構衝撃を受けたのが、大学に残って研究者になるつもり満々だったんですけど、それはすごい時間軸が長いんですよね。

あの世界は何年もかけて大きなことを見つけていくことになるので、すごい長い世界なんですけど、ゴールドマン・サックスの世界に行ったら、全てがものすごい勢いでどんどん動いていくという、金融だったりとかビジネスの速さに驚いて。

若いうちはそういうところの方が面白いんじゃないかなと思って、「じゃあ就活してみるか」ということで、それをきっかけにいろいろ、いわゆる外資系コンサルだったり金融だったり、いろんなのを受けて。

テクノロジーだけじゃなくて、本当にいわゆるフロントの投資銀行部門だったり、そういうのもいろいろ受けて、最終的にJPモルガンの投資銀行部門という合併と買収(M&A)とかをやる部門と、ゴールドマン・サックスのテクノロジー部門と両方内定をもらって、すごい悩んで。

どうせ新卒でチャレンジできるタイミングじゃないですか。しかもポテンシャルで採ってくれるというので、じゃあよく分からないほうに飛び込もうと思って、金融に関して何も分からなかったんですけど、JPモルガンの金融の投資銀行部門に入ってみようと飛び込んだみたいな。

リーマン・ショック後の入社、そして突然の「クビなう」

石橋:
トータルすると、JPモルガンはどのくらいお勤めになられたんですか?

澤山:
JPモルガンは3年弱ですね。

石橋:
なんで3年目で転職されようと思われたんですか?

澤山:
ぶっちゃけて言うと、僕は2009年4月入社なんですよ。いわゆるリーマン・ショックの前に内定をもらって、リーマン・ショックの後に入社してるので、入ってみたら「あれ?聞いてた話と違う」みたいなのは結構あるんですけど。

とはいえ、すごく楽しく朝から朝まで働くみたいな感じではあったんですけど。ただ残念ながら、定期的にチームがスパーンとクビを切られるんですよね。

僕のいたチームも結構スパーンとやられて、それが僕のところに来たのが2011年の終わりくらい。

石橋:
そういうことなんですね。

澤山:
一言で言うとクビです。

いきなり人事部から電話がかかってくるので、人事部とのやり取りは基本ないので、電話がかかってきたら「これはデスク戻れないな」ということで、周りのみんなに「お疲れ」と言って。

石橋:
そんな感じだったんですね。

澤山:
投資銀行はインサイダー情報も扱っているので、もう戻れないんですよ。

そのまま人事部のところに行って、今でも覚えていますけど、さすがにショックではあったので、人事部の説明を受けながら、ひたすらTwitterで「クビなう」とかつぶやいたりとか。

金融とITの両方が分かる人材として野村證券へ

石橋:
元々エンジニア畑にいらっしゃって、別の会社に転職をしていくことになると思うんですけど、改めてエクイティマーケットに進んで行こうと思われたのは、その3年間がきっかけなのか、どういった背景で選ばれたんですか?

澤山:
僕はM&Aで特に超大企業の何千億円の買収とか、そういうのをやる仕事だったので、それはそれでいろんなことを学ぶことがありました。

ただ、基本的には超大企業のシニアの方を相手にする仕事だったんです。もうちょっと若い人たちと関わる仕事とかないかなというところだったり。

2011年の終わりぐらいなので、ベンチャーがまた盛り上がり始めていたタイミングだったので、当時の僕の頭にあったベンチャーは、エムスリー株式会社とかクックパッド株式会社とかなんですけど、そういう会社も面白いなと思って調べていたときに、ヘッドハンターから「野村證券株式会社で金融とITが分かる人を探しているよ」と言われたんですね。

元々僕はすごくITが分かっていて、JPモルガンのときに結構な激務で金融についてもある程度叩き込んでもらえたので。

石橋:
朝から朝までですね。

澤山:
そうです。そこを両方分かるというところと、しかも面白そうで、その仕事はベンチャー専門のリサーチャーだったんですよ。少し前にスタートアップ投資TVに出ていたSTRIVE株式会社の根岸さんと実は全く同じ職場です。

要は金融とITの僕のバックグラウンドが活きて、なおかつベンチャーに関われるといういろんな将来が広がりそうじゃないですか。なのでそこに飛び込んでみました。

IPO急増期に100社を担当、そして500 Startups Japan立ち上げへ

石橋:
その後、最終的に澤山さんが野村證券を出ていくきっかけは何かあったんですか?

澤山:
それでいうと、野村證券の中でその仕事をしていて、ひたすらいろんなベンチャーに会って、あとタイミングが良かったんですね。

2012年に入ったので、ちょうどベンチャーが一気に増えていくタイミング。新規株式公開(IPO)とかでいうと、年間20件ぐらいから一気に100件ぐらいまで増えるタイミングで、相当いろんなIPOを、弁護士ドットコム株式会社だったり株式会社Gunosyだったり、いろんな会社を担当させてもらえて学べたんですよね。

元々外資にいたというのもあるんですけど、3~4年すると、そろそろ次は何しようと考え始めて、「起業しようかな」とかいろいろ考えていたときに、2011~2012年ぐらいからの友達だったジェームズに「500 Startups Japanをやらないか」と誘われて。

最初はただの相談だと思ったんですね。ジェームズとは定期的に飲みに行って、「500 Startupsからやらないかと誘われてるんだよね」と言って、「いいじゃん、絶対やった方がいいよ」みたいな感じで言っていたら、「一緒にやろうよ」と言われて。

「⁉」となって30秒くらい考えて、確かに僕とジェームズ以外でやるなんてありえないなというくらい最高の組み合わせだなと思ったので、すぐその場で「やろう」と言って。

3年でCoral Capitalへ独立、LPの後押しを受けて

石橋:
そこから500 Startups Japanさんを何年間くらいやって、Coral Capitalさんになるんでしょうか?

澤山:
500 Startups Japanが2015年の終わりぐらいですかね。立ち上げたのが9月で、Coral Capitalになったのは2019年3月で3年ちょっとぐらいですかね。

これは純粋にファンドの期間です。500 Startups JapanとしてVCファンドを立ち上げて、大体3年ぐらいで投資して、次のファンドを作るじゃないですか。

次のファンドを作るときに、ファンドに出資してくれているLP投資家の方々といろいろ話していたら、「500 Startups Japanの2号ファンドでも、別に新しいファンドを立ち上げても、どっちでも応援するよ」と言ってくれたので、じゃあここでチャレンジするべきだろうと立ち上げたという感じです。

Connecting the Dots──今振り返れば美しく繋がるキャリア

石橋:
ストーリーが美しいですね。僕自身まだ3~4年間ぐらいしか業界にいないので、リーマン・ショックの話の流れとか、すごい綺麗だなと思いますね。

澤山:
今振り返ってこういうふうに話すと綺麗ですけど、当時は「どうしよう……」みたいになっていましたし、「次に何しよう」というのも全然で、野村證券に入ったときも特に考えていたわけじゃなくて、いろんなことを模索していました。

今振り返ってみて、スティーブ・ジョブズのスピーチ(Connecting the Dots)に例えると、エンジニアリングやって、JPモルガンで大企業相手の仕事をやって、野村證券でIPOとか上場直前をやって、それでVCと。今でこそ、すごい綺麗に繋がった感じに思いますけどね。

実際今はすごい天職だなと思って毎日楽しくやっています。

石橋:
ありがとうございます。次回は、澤山さんがやられているCoral Capitalさんのファンドとしての投資方針ですとか、どういった起業家の方に投資をしていらっしゃって、普段どういうふうにコミュニケーションを取っていらっしゃったり、サポートしていらっしゃるのかというのを具体的にお伺いしていきたいと思っておりますので、ぜひ次回もよろしくお願いいたします。

澤山:
楽しみにしています。

石橋:
ありがとうございます。

【Coral Capital】〇〇になる会社だったら何でも投資します!「ハンズイフ」というサポートスタイル?|スタートアップ投資TV

60億円ファンドで挑む、シードステージ投資の最前線

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

前回は澤山さんから自己紹介をいただきまして、Coral Capitalを今やられていらっしゃるわけですけれども、概況といいますか、どういったファンドをやられているのか教えていただいてもよろしいでしょうか?

澤山:
はい、分かりました。よろしくお願いします。

石橋:
よろしくお願いいたします。

澤山:
Coral Capitalは、一言で言うとシードステージの独立系のVCです。

実は500 Startups Japanとして立ち上げたときから、方針だったりとかやり方は変わっていないので、粛々と今までと同じことをやっている感じですね。

外形的なところからお話しすると、ファンドとしては今60億円のファンド、Coral Capital 2号ファンドというところから今投資をしていて、トータルでは150億円ぐらいを運用しているというところで、シードステージでそこそこの規模になってきたかなというところです。

投資方針は何にでも投資するというふうにしていて、シリーズAより手前だったら何にでも出します。

ただし、本当に大きくなる会社にしか出しません。ユニコーンだったり、それ以上、数千億円規模になるポテンシャルがあるような会社。そういう本当に大きなことをできるような人であれば出していく。そういうスタンスですね。

創業者1人では投資しない理由

石橋:
プロダクトがある・ないですとか、事業計画書がある・ないみたいなレベル感のシードでいうと、どういったところが一番早くて出資していたりするんでしょうか?

澤山:
本当に早い場合は、別に事業計画というものがなくても、すでにお話をしているとかプロトタイプがあるみたいなケースが多いですけれども、最低でもチームが2人以上いれば。確かにあまりやらないのは、「創業者1人だけです」という会社には出していないですね。

これは別のトピックになっちゃいますけど、やっぱり社長の仕事は人を集めることとか、優秀な人をどんどん捕まえてくることだと思うんですけど、1人だけだとそこがどうなるか分からないので、せめて2人以上共同創業者がいるところにしています。

あともう1つの理由は、僕とジェームズが2人でやっていてよかったなと思うことがすごく多くて、僕もジェームズも結構性格が違うし、バックグラウンドとか得意なことも違うので、2人以上いたほうが大変なことに取り組むときにやっぱりいいなと思っていて。

その後はプロダクトができていないとか、会社を作る前にコミットしたこともあれば、もうすでにプロダクトができていて、ある程度トラクションが出てきていて、それをさらに加速するプレシリーズAぐらいのときに投資することもあります。

「ハンズイフ」──定例ミーティングよりSlackを重視する理由

石橋:
Coral Capitalさんとしてはどういったサポートをされていらっしゃるんですか?

澤山:
僕らは支援のスタイルをハンズイフという言い方をしているんですよ。

ハンズオンというじっくり中に入って一緒にやっていくというスタイルと、ハンズオフというお金だけ出して「後は任せたよ」みたいなスタイルがあると思うんですけど、その中間にしています。

ハンズイフの「イフ」というのは、「何かあったらガッツリサポートするよ」というスタンスなんですよ。

例えば、投資をした後に僕らは定例ミーティングをあまりやらないんですよ。スタートアップの初期は定例ミーティングも重荷になっているんじゃないかなと思っていて、それよりもSlackだったりとかMessengerとかで軽いメッセージのやり取りの方がよっぽどいいなと思っていて。もちろん、全く音沙汰なかったときには「大丈夫?」みたいなやり取りはするんですけど。

そうでないときは細かいやり取りにして、いざ例えば「プレスリリースを出そうと思っているのでPRの相談をしたいんですけど」とか、「最近採用を強化しようと思っているので」とか、もしくは「次の資金調達を始めようと思っています」とか、そういうのが出てきたタイミングで、「じゃあ、ガッツリいろいろ動こうか」みたいな感じでサポートしていくというスタンスですね。

石橋:
なるほど。Coral Capitalさんは投資先に対してのバックアップの体制がすごく分厚いなというふうに勝手ながら感じていたので、ハンズイフというよりかは、結構ゴリゴリに関わっていくスタンスなのかなというふうに思っていました。

澤山:
サポートはやるときはガッツリやるんですけど、僕らの思っているのはファウンダーファーストというか、結局僕らVCはたくさん出すじゃないですか。

いくらその会社を見ている、その事業のことを考えていると言っても、やっぱりかなり薄くなっていると思うんですよ。

それに対してファウンダーは24時間365日その事業をずっと考えていて、お客さんにも常に向き合っているじゃないですか。

その人たちが事業をドライブしていくべきだし、その人たちが自分で決めていくべきで、困ったときとか迷ったときにサポートするというふうに僕らは自分たちを位置付けているという感じです。

「45日もかかっちゃいました!」──衝撃的だった justInCase との出会い

石橋:
本当に多くの会社さんに対して投資していらっしゃると思うんですけど、今まで投資活動されている中で、すごく印象的な投資先ですとか、印象的な出会いみたいな起業家の方はあったりするんですか?

澤山:
衝撃的な出会いとして面白かったのが株式会社justInCaseさんとか。

justInCaseの畑さん自体が衝撃的な人というか、印象に残る人ではあるんですけど、畑さんとはTechCrunchのSPEED DATINGで出会ったんですよね。

TechCrunchで事前登録しておくとお互いマッチングしてくれるやつで、「今アクチュアリーとして保険会社に勤めていて、新しい保険×ITで新しい事業をやりたいと思っているんですけど、相談に乗ってくれませんか?」というのが来て、TechCrunchの会場で15分くらいフィードバックしたというのが最初の出会いです。

当時は彼もまだ会社員で、TechCrunchの会場でちょっと会っただけなので、「面白い人だな」と。確かに優秀そうな人だし、面白いことをやろうとしているので、「いつか起業したらいいな」ぐらいのつもりでその日はそのまま終わったんですけど。それが11月ぐらいです。

1月ぐらいになったときに、畑さんからまた連絡があって、「もう1回会いたいです」と言うので、会ってみたらミーティングのときに開口一番に彼が、「すみません!45日もかかっちゃいました!」と言ったんですよ。結構それが衝撃的で。

11月のときには何もなくてまだアイデアベースだったのに、彼はその次に会ったときには事業計画もあり、プロトタイプもできていて、そのプロトタイプをしかも友達に使ってもらっている。

「スマホ保険」といって、アプリを入れるといろんなデータを取って保険の点数を変えるというやつなんですけど、それのプロトタイプを友達のスマホに入れてもらって動かしていて、「いけそうな気がします」と。しかもそれを「45日も」と言うので、「なんだこのすごい人は」と思ってですね。

やっぱりそういうスピード感のある人とか行動力のある人はすごく大事だと思っていて、すぐに投資を決めたというのがありましたね。

石橋:
もう退職までされて?

澤山:
そうなんです。これは実は完全に例外で、僕らもそれ以外にはやっていないんですけれど、これは言っていいのかな?

当時畑さんは全然会社員で在職中だったんですけど、これだけの行動力があって、保険×ITをやる上で彼はアクチュアリーという専門資格を持っていて、こんなにファウンダーマーケットフィットしてる人はいないなと思ったので、超特例的に出しちゃいましたね。

Twitterから始まった縁──原価計算×ITのKOSKA

石橋:
他にもたくさんいらっしゃる中で、印象的な投資先とかは澤山さんの中でお持ちですか?

澤山:
ちょっと面白い出会いだったところでいうと、株式会社KOSKAという会社なんですけれど、社長の曽根くん、通称「ソネケン」と言うんですけど、彼との最初の出会いはTwitterですね。僕がエンジニアなので、エンジニアリングと金融の組み合わせのリサーチみたいなのをやっていたんですよ。

そのときのプロジェクトをやろうとしたのは、IPOした会社の目論見書を取ってきて、役員が何%株を持ってきているのかをバーっとまとめていこうみたいなのをやろうとして。「興味があるエンジニアはいませんか?」とTwitterで募集したら、連絡してきてくれたのがソネケンでしたね。

ソネケンが一橋大学の原価計算学会のゼミにいる大学院生で、バリバリ経済系なんですけど、結構エンジニアリングを趣味でやっているというか、それもかなりしっかりやれる人で。しばらくそういうのをやっていましたと。

そしたらいつの間にか彼は投資先の株式会社hokanという会社のエンジニアとして働いていて。

それからしばらくしたときに、「起業のアイデアがあるんです」と相談を受けてみたら、彼の元々のバックグラウンドの原価計算のところと、彼の研究で関わっていた製造業の工場の原価管理というところのかなりマニアックな話ですけども、そこを解決するようなIoTで解決するようなサービスを考えている。

しかも、最初のお客さんが見えているという状況だったので、「これは面白いから投資しよう」と。

「サーファーと波」──投資判断で見ている2つの要素

石橋:
その2つの事例が特殊なのかも分からないですけど、人以外の観点で、こういうところがあるとシードのタイミングとはいえすごく魅力的に見える観点は何かあったりするんでしょうか?

澤山:
シードのうちはどうしても人の部分が多くて。人の部分のところで行動力だったりとか、その人とかそのチームがその業界に合ってるな、というのがかなり大きな部分を占めているかもしれないですね。

その上で断っちゃうこと、どうしても見送ることが多いのは、事業がどこまで大きく行けるのか。VCとして本当に数千億円になれるような会社かどうか。

チャレンジして、結果としてダメだったら別に構わないんですよ。全然それは構わないし、それがVCの仕事なので、それでゼロになってもナイスチャレンジでいいと思ってるんですけど。

このサービスをやることによってものすごい世界が変わるのか、本当に日本を代表するような会社になれるのか、みたいなところを見て、その両方があって初めて投資する。

パートナーのジェームズとかは、結構「サーファーと波」みたいな言い方をするんですけど、サーファーも良くなきゃダメだし、波も良くなきゃダメという言い方をしていることが多いですね。

石橋:
ありがとうございます。次回は、創業初期の方々はこういうところに気をつけると良いよですとか、シリーズA、シリーズBと言われるようなところを登っていく過程でどういうところを注意したり、こういうタイミングが、それこそ投資先でいうと、きっかけになったみたいなところをいろいろと教えていただきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。

【PMF達成までの道のり】全起業家が目指すべきPMFの定義とは?|スタートアップ投資TV

シード調達後に最も重要なのは「スピード感の横比較」

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回は第3弾ですね。Coral Capitalさんの澤山さんにご出演をいただきまして、澤山さんが今まで多くのスタートアップを見てきていらっしゃると思うんですけれども、その中でシードの資金調達が終わった後に、どういうところに気を付けながら事業を進めていくと、よりスムーズにシリーズAですとか、シリーズBの資金調達ラウンドを目指していけるのかですとか。

具体的にどういうようなスタートアップがどういうような転換点でそシリーズA・シリーズBに進んでいったのかみたいなところをいろいろと具体例を交えながらお話しいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

澤山:
よろしくお願いいたします。

石橋:
早速になりますが、「シリーズAに向かっていくんだ!」みたいな人たちからすると、特にどういったところに注意して進めていくと、より成功確率が上がるんじゃないかと澤山さんとしてはお考えでしょうか?

澤山:
最初に挙げるとしたら、スピード感みたいなところをちゃんと横比較できるようなネットワークを作るのが大事だなと思っているんですよ。

これは投資家としていろんな投資先を見ていると思うんですけれど、やっぱり結構集中するじゃないですか。しかもシードの調達した後は、まずはプロダクト、まずは事業に集中となるので、自分としては全力で走っているつもりでも、実は横を見るともっととんでもない速度で進んでいる会社とかがあったりして。

あまり気にしすぎるのも良くないんですけど、自分がはたして速いのか遅いのか、結構意識する必要があるかなという気がしています。

シード投資として投資したからには無駄遣いはしてほしくないし、「あっという間に燃やしちゃった」と言われると困っちゃうんですけど。とはいえ、それをちゃんと使ってちゃんとバーン(レート)を上げて、どんどん進んでいってもらわないと困るので、そこは結構横の繋がりを意識的に作るようにしたりはしていますね。

石橋:
Coral Capitalさんとしては具体的にどういうことをやられたりしているんですか?

澤山:
例えば、Facebookのコミュニティでファウンダーだけが入ったコミュニティの中で、いろんな雑多の情報交換をしていたりとか、今コロナの影響で出来なくなったんですけど、四半期に1回くらいはリアルで会う場を作ったりとか。あとは投資家として伝えていくというのは大事なところですよね。

投資先だと、例えばうちだと株式会社グラファーというところがあって、今特に行政×ITなので、このコロナの影響ですごい伸びているんですけど、週1の定例ミーティングとかで毎週びっくりするんですよね。「なんでこんなに進んでるんですか」と。

そういうのを見ると、他の会社とかもこの速度でやるべきだみたいなところはあるのかなと思ったりします。

「何を伸ばすか」のフォーカスを間違えると成長が止まる

石橋:
スピード以外の観点だと、別にあったりしますか?

澤山:
あとはどこにフォーカスするべきなのか。これはみんな言っている話だと思うんですけど、何を今伸ばすのかみたいなところをちゃんと絞るのが大事だなと思っていて。

SaaSとかだと分かりやすいんですけど、月次経常収益(MRR)を増やすとか、導入企業数を増やすというタイミングと、まずはきっちり使ってもらって、「このサービスなしじゃ生きられない」というふうにしていくタイミングはやっぱり違うと思うんですよ。

そこを早まって、まだサービスがしっかり出来上がったり、刺さりきったりしていないのに拡大してしまうと、むしろむちゃくちゃ辛くなるみたいなケースはやっぱりあるので、そこに関しては今どっちなんだっけ?みたいな話は結構しています。

そこをドラスティックにちゃんと動けるかとか、フェーズ切り替えできるかによって、その後の成長速度が変わってくるというのはよく見ました。

リーガルテックHolmesが大企業向けにフォーカスした理由

澤山:
投資先だとリーガルテックの株式会社Holmes(現:ContractS株式会社)という会社とかは、我々が投資したタイミング、彼らがサービスをローンチした直後に投資したんですけれど、サービスを出したときは中小企業とか小さな企業向けのイメージで作っていたんですけど、ローンチしてみたら結構大企業からの問い合わせが多くて。

そこで一旦数を伸ばすのはやめて、とにかく大企業向けにきっちり作り込んで、大企業にまずフィットさせるというふうにフォーカスして、そこから増やしていって、シリーズAを終えてから中小企業向けにも始めるようにしたのは、あれはすごい良かったなと思っていますね。

石橋:
深掘りをしていく中で、ここのタイミングですごく大企業に刺さっていったなというか、ここがPMFのポイントだったみたいなものは何かあったりはしたんですか?

澤山:
今の流れでHolmesさんの場合で話をすると、Holmesは最初は契約書のテンプレートから簡単に作れるところを中心にして、契約書がないが故に紛争になってしまうというのを防ぐみたいな発想で始まったんですけれど、その機能のおまけとして付いていたというと言い過ぎかもしれないんですけど、契約書を作ってそれを管理していくみたいなところの機能が、むしろ大企業にすごい刺さっていたんですよね。

そういうのをヒアリングしていったりとか、ユーザーがどこを喜んでくれているのかというのを見ていくと分かったので、そっちをしっかり伸ばそうということで、要はプロダクトの目指す方向というか、もしくは課題というか、テーマとする課題をちょっと変えたんです。

それが良かったなと思いますね。例えば秘密保持契約とか1つにとっても、大企業はものすごいたくさん巻いているわけですよ。

それがちゃんと巻いているのかとか、いつが期限なのかとか、いろんなことが実は分からなくなっていたりとか、Excelで管理していても全然更新されていないとかあるわけですよね。

そこが実は課題だということを見つけて、方向を変えて伸ばしていくというのがうまくハマったというところだったりします。

PMFとは「もう絶対ピボットしないな」と言える瞬間

石橋:
澤山さんとしては、「PMFはどういう状態を言うんですか?」と起業家の方から質問を受けたらどういうふうにご回答しますか?

澤山:
すごい難しい質問で、結構モヤっとしますよね。しかも1個PMFしてもどんどん広げてPMFしていかなきゃいけないのですごく難しくて。

SaaSだったら月額課金で払ってくれている人たちが500万円ぐらいを超えたらとか言うんですけど、もっと定性的に分かりやすいところを投資先から聞いたのがあって、確か株式会社Shippioの佐藤さんが言っていた言葉なんですけど、「もう絶対ピボットしないなと思ったタイミング」と言っていたんですよ。

もうこの形でガシッと噛み合ったというか、ユーザーの課題にもしっかり噛み合って、まだ数字とかは出ていないけれども、明らかに刺さり具合が違うと。

そのタイミングこそやっぱりPMFだと思うし、そこから一気に伸ばしていくというふうになったと思います。

カミナシが見つけた「現場で働く人たち」という市場

澤山:
いわゆるPMFよりちょっと手前かもしれないですけども、やっぱりそういうタイミングがあるかどうかが大事だと思っていて。

最近だとサービスをリニューアルローンチした株式会社カミナシという投資先とかもまさにそれで、彼らはすごい熱いnoteを書いていました。

石橋:
拝見しました。

澤山:
彼も最初は食品工場向けということでやっていて、それでもある程度引き合いはあったんですけど、やっぱりなかなか伸ばせずに苦しんでいたところで、それをもう少し広げて、現場で働く人たち、パソコンの前に常にはいない人たち向けの現場の管理ツールというふうに変えた途端に、いろんな大手企業からガンガン問い合わせが来るみたいになって、そのタイミングだって言っていましたね。

回答としては数字とかバシッと言った方が分かりやすいと思うんですけど、こういうところですかね。ユーザーとか顧客にガツッとハマる。

これもモヤっとした例えなんですけど、PMFするまでは重たくて丸い石を持ってなんとか山を登っていくというか、押し上げていく感じなんだけど、PMFした後はむしろ勝手に転がっていっちゃうのをいかに全力で追いかけるかみたいになるので。

顧客の声をきっちり聞いて、この人に一番刺さっているのはどこなんだろうとか、刺さっているとしても本当にこういう人はどれだけいるのかなというマーケットの話。

どうしても僕らスタートアップに投資するVCというのは、急成長とか本当に大きくなってくれることを期待していますし、そうじゃないと出せないというそういうビジネスなので、今向かい合っているものがどこまでいくのかというのが大事なポイントだと思いますね。

SmartHRに学ぶ、PMFを段階的に広げていく戦略

澤山:
もう1つおまけで話しちゃうと、株式会社SmartHRとかもPMFを少しずつ広げていったからこそ今の位置があると思っていて。

最初の彼らは、スタートアップとかIT界隈の人たちがお客さんだったんですね。すごく電子化をしたい人とか、ITにすごい慣れている人とかだったのが、そこから少しずつ広げて、シリーズAからBの間ぐらいのタイミングで、そもそも彼らがやっているのは社会保険とかの手続きですけど、ああいうのは社員が多かったり出入りが多いほうがもっと悩みが深いので。

それはどこかなと考えると、飲食とか小売だということで、そっちによりフォーカスして、その人たちに合うように広げたのがシリーズAからBぐらいだし、シリーズCのタイミングぐらいにはもっと何万人とか社員がいる企業にも対応できるようにプロダクトが膨らんでいたので、そっちにもフィットし始めて、という感じで、だんだん広げていくのもPMFとしては大事なところだったりします。

戻って言うと、シードからシリーズAのときに大事なのは、広げていけそうな場所なのか、将来的に何かあるのかみたいなところを探っていくというところで、とにかく数だったりとか顧客の声を聞くしかないのかなというふうには見ていますね。

Coral Capitalへの問い合わせは公式フォームから

石橋:
ありがとうございます。具体例をすごく豊富にお話ししてくださって大変勉強になりました。

今回、全3回にわたって澤山さんにご出演いただいたんですけれども、澤山さんにそういう起業家の方がご相談したいときはTwitterとかSNSのDMでも全然大丈夫なんですか?

澤山:
そうですね。SNSのDMでも全然大丈夫です。

一番いいのはWebサイトの問い合わせフォームから来てもらうことで、実は結構問い合わせフォームから来た人たちにもちゃんと会っていて、問い合わせフォームから送ると、投資チーム、今うちだと5名いますけど、その5名が全員入っているSlackに自動で投稿されるので、全部ちゃんと目を通しています。

石橋:
めちゃくちゃいいですね。概要欄にCoral Capitalさんのお問い合わせも掲載させていただきますので、今回澤山さんの動画を見ていただいて、お話を聞いていただきたいなと感じた方はぜひご連絡してみてください。

改めて澤山さん、全3回にわたりましてご出演ありがとうございました。

澤山:
こちらこそ、ありがとうございます。