VC投資のきっかけはなんと学生起業?悩んだ末に辿り着いた、成功への道のり!!|スタートアップ投資TV
◯前田ヒロ ALL STAR SAAS FUND-Managing Partner
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シードからグロースまでSaaSベンチャーに特化して投資と支援をする「ALL STAR SAAS FUND」マネージングパートナー。
2010年、世界進出を目的としたスタートアップの育成プログラム「Open Network Lab」をデジタルガレージ、カカクコムと共同設立。
その後、BEENOSのインキュベーション本部長として、国内外のスタートアップ支援・投資事業を統括。
2015年には日本をはじめ、アメリカやインド、東南アジアを拠点とするスタートアップへの投資活動を行うグローバルファンド「BEENEXT」を設立。
2016年には『Forbes Asia』が選ぶ「30 Under 30」のベンチャーキャピタル部門に選出される。
23歳、リーマンショック直後にVC投資家へ
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回は、僕自身もGazelle Capitalという名前でベンチャーキャピタル(VC)ファンドをやっているわけですが、既存産業×インターネットでやっている手前、SaaS系のシードのスタートアップの方に投資をさせていただくケースも多いんですけれども、その上でずっと頭から離れていなかったALL STAR SAAS FUNDのマネージングパートナーの前田ヒロさんに今回はご出演いただいております。
改めてヒロさん、本日よろしくお願いいたします。
前田:
よろしくお願いします。
石橋:
僕自身、いろいろネット情報を通してといいますか、過去のご経歴等々ですとか、どういうところに投資しているというのは尊敬の意味も込めて勉強させていただいているんですけれども、それこそヒロさんがやっていらっしゃるポッドキャストを今日も電車の中でラクスル株式会社の松本さんの回をずっと聞きながら移動していました。
今回の番組を見ていただいている方々は、初めてヒロさんのことを知っていただく方もいらっしゃるかなとは思いますので、そもそもヒロさんはVC業界でいうと何年目ぐらいになるんですか?
前田:
もう早いもので10年ですね。2009年末に人生初めてのVC投資をしたというのがあります。そのときに投資したのはThredUP Inc.という服の二次流通の会社で、当時はボストンの会社だったんですけど、そこが幸いにも2ヶ月前にアメリカで上場して、今、時価総額が3,000億近くですかね。それが人生最初のVC投資でした。
石橋:
それこそ2009年でいうとリーマンショック直後ぐらいなのかなと思うんですけど、ヒロさんのそもそもファーストキャリアというか、どういうところからキャリアが始まっていらっしゃるんですか?
前田:
すごくラッキーで、いきなり新卒でVCになれたんですよね。実は就活する前は学生起業をしていて、学生起業は2007~2008年なんですよね。
当時FacebookやYouTube、Twitterが流行ったりしていたので、ソーシャルネットワークを作りたいと思って、インディーズミュージシャン向けのソーシャルネットワークを作ったりとか、ファッション好きの人たちのサイトを作ったりしていたんですが、それがうまくいかずに次どうしようと思ったときに、投資側に回ったら、より経営とか起業というものを学べるんじゃないかと思ってVC業界に行ったんですね。
最初に就職した会社がBEENOS株式会社(旧:株式会社ネットプライスドットコム)で、新卒入社して真っ先にやったことが事業投資ですね。投資の方に入っていきました。
石橋:
学生起業されていた当時は、VCさんや投資家さんからのファイナンスをしていらっしゃったんですか?
前田:
していなかったですね。
エンジェルからの資金調達をしそうになったことはあったんですけど、そのときは資金調達について全然わからなかったですし、ちょうどリーマンショックが起きている間だったので、ちょっと怪しげなお金でしたし、そう考えたときにちょっとやめておこうと思って、資金調達はしなかったです。
石橋:
その中で起業していて、なかなかうまくいかなくてVC側に関心を持つようになるというのは、一見流れは綺麗なように聞こえるんですけど、そこで乖離があるような気もしていまして。
どうして起業されていたところから、しかも投資を受けていらっしゃらなかった中で、VCやそっち側に関心を持ち始めて、最終的にBEENOSさんに入られて、結果運良くVC部門に行かれたという形なのかもわからないんですけど、投資に関心が出るようになったのはどういったところだったんでしょうか?
前田:
関心が出たのは就活中のときでしたね。
自分で経営していて、成功している企業をLinkedInとかTwitterとかでいろいろ調べていると、ベンチャーキャピタリストという存在に気づいたんですね。
いろいろ調べていったら、Sequoia Capital Operations, LLCという名前が出てきたりとか、Greylock Partners, LLCという名前が出てきたりとか、「この人たちは誰なんだろう?」みたいな感じで調べていったらベンチャーキャピタリストというのがわかって、それにすごく関心を持ったんですよね。
なので、BEENOSに入社したときに、真っ先に投資をしたいという話はしなかったんですけど、少なくとも事業を立ち上げるとか、経営者を支えるとか、そういった活動をしてみたいという話はしましたね。それが運良く「じゃあ投資部門の方をお願い」と言われて、そこからですね。
石橋:
なるほどですね。一番最初はコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からキャリアが始まったというような認識になるんですかね?
前田:
そうですね。
Y Combinatorに学んだ、日本初のアクセラレーター立ち上げ
石橋:
その次のフェーズというか、初手の頃にOpen Network Labさんの取り組みを前田ヒロさん主導で企画して始められていらっしゃると思うんですけれども、なんで2009~2010年当時にOpen Network Labという取り組みが始まったのか、というところをぜひ教えていただきたいんですけども、どういう背景だったんでしょうか?
前田:
いろいろ運が重なったというのがあるんですけど、僕のミッションとして起業家とか新しいイノベーションがたくさん生まれる仕組みを作るというミッションで当時動いていたんですよね。
いろいろ調べているとY Combinator LLCというものがあって、当時2009年でちょうどAirbnb, Inc.とかDropbox, Inc.とかが現れたタイミングだと思うんですけど、Y Combinatorの仕組みがすごいなと思って。
実は同時期にTechstars, LLCという同じようなアクセラレーターがコロラドにあるんですけど、わざわざコロラドに飛んで行って、仕組みを教えてもらったんですよね。
メンター制度というのを聞いたりとか、どういう形で経営者と起業家が接しているのかだったりとか、いろいろ教えてもらって、この仕組みは日本でもできるんじゃないかと思って、当時BEENOSの役員たちにプレゼンをしまして。
そこでちょうど新しく起業家が生まれるプログラムをやってみたかったんだよねという話が、当時BEENOSの役員と株式会社デジタルガレージという会社の役員たちの間であったんですね。
そこで僕の提案を当てはめてぶつけてみたら「これ一緒にやろうよ」となって、2010年にOpen Network Labというアクセラレーターが出来上がりました。
石橋:
今から振り返ってみても、当時国内でいってもリーマンショックの影響があって、投資家さんも減っているタイミングでシード投資といいますか、今でいうとプレシードと呼ばれる人も多いと思うんですけど、そこにフォーカスしたアクセラレータープログラムが始まるのは、ポジションでいってもだいぶ狂った意思決定といいますか、めちゃくちゃチャレンジングなところだったんじゃないかなと思うんですけども。
当時でいうと、ほぼシードの投資家さんはいらっしゃらなかったんですかね?
前田:
いなかったですね。当時株式会社サムライインキュベートがあったりとか、株式会社サイバーエージェントもCVCをやっていたかな?そんな感じの2社がいたかどうかみたいな時期だったんですね。少なくとも僕が把握している中でですね。
正直、僕はリーマンショック中に、ある意味起業した人間なので、経済の一番下から僕は初めて社会人になったようなものなので、僕から見ると2009~2010年は「めっちゃ経済良いじゃん」と思った感じなんですよ。
経済が一番悪いところから社会人になって、全てが右肩上がりに見えたので、当時23歳の僕から見ると「良い感じじゃん」みたいな、スタートアップ業界はこれから盛り上がりそうだなという雰囲気ではあったんですけど、先輩方に聞くと当時は結構狂ったような行動をしていたとよく言われます。
起業家に戻らず、投資家として生きる決断
石橋:
なるほどですね。ちなみにCVCというキャリアから始まって、Open Network Labさんもやり始めて、なんで起業畑に戻らなかったのか?といいますか、そのまま継続して投資家側でやり続けているというのは、ALL STAR SAAS FUNDさんに至る道のりでもよくわかる話ではあるんですけれども、投資家として生きていこうと決めたというか、この道でやっていこうと決めた出来事とかイベントはあったんですか?
前田:
いろいろあったんですけど、本当に人生をかけてVCになろうと思ったのは、2014年とか2015年だったんですよね。
2009~2014年の間は、自分の中でいつか起業家に戻るんじゃないかというのがずっと頭の裏にあったんですよ。でも、僕は好奇心旺盛だし、たくさんの事業やアイデアに触れておきたいと思って、無謀な挑戦をしてみたんですけど、VC投資をやりながら共同創業みたいな感じでいろんな事業を立ち上げるということをやってみました。振り返ってみると無謀だったなと思いました。
やっぱり片手間で事業は作れないですし、本気で自分の人生をかけて事業を作っていかないと中途半端なことになるなと思って、すごくそこで痛い目に遭って、人生をかけてやるんであればどっちかというのを決めたときに、投資側だなと思ったのが2014年でした。
専門性のなさに悩んだ7年間、SaaSへの特化で見つけたPMF
石橋:
なるほどですね。その上でALL STAR SAAS FUNDさんの1号ファンドは2019年ですよね?
前田:
そうですね。
石橋:
投資家として生きていくんだというところからALL STAR SAAS FUNDさんまでの独立のタイムラインが3~4年は空いていると思うんですけど、その過程の中で独立をしていくみたいな文脈は、もちろんVCというのももちろん起業だとは思ってはいるんですけど、どういう変遷といいますか、変化があったりしたんですか?
前田:
実は、独立したのは2015年なんですよね。
2015年にBEENEXTというファンド名で独立して、コンセプトとしては、グローバルで優秀な経営者と繋がってその人たちを支援するみたいな、東南アジア・インド・アメリカ・日本と各国でいろいろ支援していくというコンセプトでやったんですよね。
それをやっていく中で、それぞれの国ですごく面白い機会があるなと思っていて。例えば、東南アジアはマーケットプレイスの需要がすごく高かったりとか、インドはフィンテックの需要がすごく高かったりとか、それぞれの国で面白いトレンドが現れていました。
そんな中で、2016年ぐらいにSaaSというものにすごく魅力を感じたんですね。
それまで、いろいろ自分のVCキャリアの中でモヤモヤを感じていたんです。1つは、専門性がなかったというのがあって、マーケットプレイスもフィンテックもやって、CtoCもBtoCもDtoCもやって、いろいろやっているけど自分に専門性がないなと思って、モヤモヤを感じていたのがありました。
2つ目が支援の仕方にちゃんとした型がなかったというのもあって、もう少し専門性を持って投資しよう、ちゃんと型を持って支援をしようと思ったのが2016年です。
それをきっかけに思いきりSaaSだけに投資するようになって、2019年にSaaS以外考えられないと思ったときに、思いきりファンド名もALL STAR SAAS FUNDという名前にしてやっちゃおう!と思って。
実は運営会社は2015年から変わってないんですよね。同じBEENEXTなんですけど、ファンド名だけグローバルの投資ファンドと日本専用のSaaSファンドというふうに分けて、ファンド名だけALL STAR SAAS FUNDにしているという感じです。
石橋:
ヒロさんのお話を聞いていて、今でいうとALL STAR SAAS FUNDさんのヒロさんというイメージが強いので、当時専門性がなかったことにコンプレックスというか、ご自身で少しテーマを持っていらっしゃったというのは、僕自身にとってもすごく励みになるというか。
そういう時期があってもそこを乗り越えてここまで特化していくとこういうふうに仕上がっていくというか、変化していけるんだなというのは刺激になりますし、そういうのが悩みだったんだなというのはかなり驚きでした。
前田:
プロダクト・マーケット・フィット(PMF)を探そうとしている経営者みたいな気持ちで、どうしよう?みたいな感じは結構長かったんですよね。
2010~2016年は、迷走まではいかないかもしれないですけど、PMFしている感がなかったんですよね。なのでSaaSに振り切って自分の戦略を決めたときに、やっとPMFした感覚がすごくありますね。
「僕が一番良いパートナーです」と言える自信
石橋:
PMFという言葉でいうと、方針を決めたからというところもそうだと思うんですけど、現象として何か変わったりしたんですか?
スタートアップの方であれば、インバウンドで問い合わせしてくるようになったとか、熱狂的に使われるようになって、すごくユーザーさんが使いこなすようになってきたみたいな、いろんな定義があると思うんですけど、ヒロさんの中で、ALL STAR SAAS FUNDとして、PMFがあるだろうと思った現象とかは何かあったんですか?
前田:
一番は自信を持つようになったんですよね。投資するときに、果たして自分が経営者にとって一番良いパートナーなのかというのが、自分の中でモヤっとしていたというか、自信がなかったところがちょっとあったんですよね。
でも、SaaSに振り切って人を軸にした支援をしていこうと思ったときに、自信がつくようになって、誰よりも組織についてアドバイスできるし、誰よりも人に関するアドバイスもできるし、誰よりもSaaS企業の成長についてノウハウとアドバイスができるという自信がついたので、結構自信を持って「僕が一番良いパートナーです」と言えるようになったのが一番大きいかなと思いますね。
石橋:
なるほど。尊敬とともになんですけど、耳が痛いとしか思えないというか、僕は小さいVCファンドをやらせていただいているという立場でもあるので、ため息とともに勉強になるというか、やっぱそうだよなと。ありがとうございます。
前田:
そんなもんですよ。僕も23歳のときにVCとして始めたんですけど、全く自信はなかったです。ペテン師まではいかないけど、だましだましやっている感があるなという感覚はすごくありましたね。
なので、それがなくなったときに、すごく自分が自然体でPMFしている感があって、さらに勢いを感じるという感じですかね。
石橋:
ありがとうございます。僕ももうちょっと踏み込んで、自分自身がPMFできるようにVCとしてしっかり生き残っていきたいなと改めて思いました。
前田:
大丈夫!見つかります!
石橋:
ありがとうございます。次回は、そんな前田ヒロさんがやっていらっしゃる、それこそPMFをしたALL STAR SAAS FUNDさんについてもうちょっと踏み込んでお伺いをしていきたいと思っていますので、改めて次回の配信でもヒロさん、お付き合いよろしくお願いいたします。
前田:
よろしくお願いします。
【ALL STAR SAAS FUND】社会的インパクトを最大化する一流のSaaS企業をつくる!|スタートアップ投資TV
100年続くSaaS企業を起業家と作る
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回も改めて、ALL STAR SAAS FUNDのマネージングパートナーの前田ヒロさんにご出演いただいておりますので、ヒロさん、今回もよろしくお願いいたします。
前田:
よろしくお願いします。
石橋:
前回は、そもそもどんな経緯でヒロさんが独立に至ったのかといいますか、ALL STAR SAAS FUNDとしてPMFをしてきたのか、みたいなお話をいただきましたので、改めてどういうファンドさんなのかお伺いをしていければと思います。
名前が非常にユニークなので、それがだいぶ体を表しているみたいなところがあるとは思うんですけれども、改めて概観でいうと、どういったファンドになるんでしょうか?
前田:
コンセプトとしては、「100年続くSaaS企業を起業家と一緒に作っていくぞ」というミッションでやっています。やっぱりSaaSの時代になってきていて、短期的なトレンドじゃなくて長期的な流れになってきていると思っているので、長期的な流れの中で、SaaS経営者にとって一番良いパートナーになっていきたいというのが、僕らが目指している方向という感じですね。
石橋:
その方向性を実現していくために2つのファンドをやっていらっしゃるかと思うんですけども、どういう規模感で投資を実行されていらっしゃったりとか、どういうラウンドから関わるようになっていって、一緒に育てていくみたいな方針でやっていらっしゃるんでしょうか?
前田:
一応ステージはあまり関係ないです。シードからシリーズCまで結構リードはしてきているんですけど、自分個人としての好みでいうと、シード・プレシリーズAが好きなんですよね。
最初の5,000万から数億円まで集めるタイミングでうちが関わるのがすごく好きで、組織の基盤だったりとか、会社のカルチャーだったりとか、戦略とかがこれからの状態じゃないですか。
そのプロセスに関わるのがすごく好きなので、一応ステージとしてあまりファンドの制限はないんですけど、大体チケットサイズ、出資金額としては5,000万から3億5,000万の間がほとんどですね。
7~8割ぐらいの案件がそれぐらいで、たまに10億円とか11億円のラウンドでリードをするケースもありますね。
8割5分がリード投資、国内SaaSに特化
石橋:
基本的には先ほどお話にも上がったように、リード投資とフォロー投資みたいな概念でいうと、基本は全てリード投資でやっていらっしゃるという認識が正しいんでしょうか?
前田:
8割5分はリードをしていますね。
石橋:
なるほどですね。ちなみに、ないとは思うんですけど、SaaS以外の起業家の方に投資するケースはあり得るんですか?
前田:
ないですね。唯一例外をいくつか作っているんですけど、1つはシリアルアントレプレナーで、前に応援したことがある経営者がいたので、フィンテックだったし、サブスクリプションの要素が結構強かったビジネスなので、そこに出資させていただいたというのがあります。
もう1社はトラベル領域なんですけど、そこもシリアルアントレプレナーですごく長い付き合いだったというのもあって、応援させていただいたんですけど、基本的にSaaSしか投資しないというファンドなので、あまり例外を作りたくないというのは正直なところですね。
石橋:
了解です。わかりやすくいうと、シードからシリーズCまで基本的にリード投資をしていらっしゃる。しかもtoBのSaaSに特化している。それ以外は投資をしないぞというスタンスでやっていらっしゃるという感じなんですね。
国内外という単位でいうと、ALL STAR SAAS FUNDさんとしてはどういうふうに切り分けていらっしゃるんでしょうか?
前田:
ALL STAR SAAS FUNDは基本国内ですね。国内市場に向けたSaaS企業というのが基本的ですね。
もちろん海外に拠点があるとか、デラウェア法人なんだけど日本市場を狙っている、とかもあるんですけど、狙っている市場は基本的に日本をメインターゲットにしていますね。
意思決定の早さの秘密は「人のみ」を見る投資判断
石橋:
僕も何度かALL STAR SAAS FUNDさんに既存投資先を出資検討でご縁をいただいていたりはするんですけれども、その中で、すごく僕自身も印象的だし、紹介させていただいた起業家の方も同じように印象的なのは、すごく意思決定が早いというイメージが強くて。
ALL STAR SAAS FUNDさんとしての検討プロセスは、もちろんシードからシリーズCで全然違うとは思うんですけれども、どういった形になっているんでしょうか?
前田:
特にアーリーステージであればあるほど、人のみしか見てないかもしれないですね。経営者の質だったりとか、人柄だったりとか、巻き込んでいる仲間だったりとか、1人以上いらっしゃる場合はその組織の状態を見たりとか、その辺を結構見て投資判断してます。
あとは、他に基準があるとしたら、大きな市場を狙っているかどうか、勝ち筋があるかどうかというのは見ているんですけど、ウェイトとして人の部分を重めに見ていますね。アーリーステージとかシードフェーズは、他に検討材料がないことが多いんですよね。
デューデリジェンス(DD)をやろうとしてもできないことがほとんどで、DDをできることが1つしかないので、だから意思決定が早いのかもしれないですね。
巻き込み力、素直さ、野心の3要素
石橋:
「人」というのは、言葉でいうとイメージはしやすいところではあるんですけれども、ALL STAR SAAS FUNDさんとして、もしくはヒロさんとして、人の部分でもこういう要素を押さえている人に積極的に投資をしているんだみたいな、要素分解するとどういったところになってくるんでしょうか?
前田:
1つ目は、巻き込み力があるかどうかですね。特にSaaSスタートアップは少数精鋭ではできないんですよね。
なので、年間経常収益(ARR)を100億円作ろうとすると300人ぐらい必要なので、300人巻き込める力を持っているかどうかというのが1つ、結構見ている部分ではあります。
2つ目は、素直かどうかですね。3人の状態、10人の状態、50人の状態、300人の状態で経営の仕方を変えていかないといけない。
コミュニケーションの仕方、目標設定の仕方、権限移譲の仕方だったりとか、これら全てがフェーズごとに変わっていくので、ある程度素直で柔軟性を持って自分を変化させて進化できるか、これがあるかどうかというのを結構見ています。
3つ目は、野心をもって長期的に考えられるかどうかですね。やっぱりSaaSは時間がかかるんですよね。
ARRが1億円まで2.5年から長いところで4年とかかかりますし、そこから10億になるためには、早いところはそこから2年かかるかもしれないですけど、大体みんな3年かかったりとかするし、そこから100億にするためにさらに2~3年とかかると思うので、10年近くかかるんですよ。
長期目線で考えて野心的かどうかというのは、もう1つ見ている要素ですね。
石橋:
そういう要件を満たしていらっしゃるような投資先の皆さんは、例えばどういった方々がいらっしゃったりするんでしょうか?
前田:
株式会社SmartHRとか、株式会社カミナシとか、株式会社hacomonoとか、その辺の会社が最近すごく認知を取っているSaaS企業の支援先かなと思っています。3つの要素が揃っている会社だと思います。
人を軸にした支援、毎年の組織診断で経営者を育成
石橋:
そういった皆さんもシード・アーリーから出資されていらっしゃって、一緒に伴走しながら成長してきていらっしゃると思うんですけれども、ALL STAR SAAS FUNDさんとしての支援のあり方、支援の内容でいうと、どういったところになるんでしょう?
前田:
人を軸にした支援を結構していて、先ほど言ったように少数精鋭ではSaaS企業は成り立たないので、僕たちが結構注力してサポートしている部分としては、人の採用と、採用した人を成長させること。
例えば、イネーブルメントだったりとか、育成だったりとか、研修だったりとか、その辺のサポートだったりとか、もちろんSaaSにまつわるノウハウの供給だったりとか。あとはリーダーシップですね。経営者がより次のレベルに行くためのリーダーシップ育成の取り組みを結構やっています。
例えば、SmartHRは2016年から毎年組織診断をやっていて、従業員にインタビューさせてもらっています。そうすると、上手くいっていること、上手くいってないことが出てくるじゃないですか。それを、社長を中心にフィードバックさせていただいて、社長とか経営陣がより良いリーダーになるためのヒントとかアクションを一緒に考えて進めるという取り組みですね。
石橋:
しかも、どんどん従業員規模も増えているのにやり続けていらっしゃるということですよね?
前田:
さすがに全員ヒアリングするのは難しいので、30~40人ランダムで選ばせていただいてやっていますね。
1年で10人採用、COO候補も支援
石橋:
カミナシさんであるとか、hacomonoさんであると、それぞれフェーズも違ったりはすると思うんですけれども、人以外の部分で支援の方向とか、注力しているところは何かあったりするんでしょうか?
前田:
成長する基盤を一緒に作っていくというのがテーマとしてあるので、どうしても人になってきますね。なので、カミナシは4人の採用決定をさせていただいて、その中に最高執行責任者(COO)を採用決定させていただいたりとか。
hacomonoさんもこの1年で10人を採用決定させていただいて、その中にはセールスのトップとか、COO候補だったりとか、カスタマーサクセスのトップだったりとか、というのを採用決定させていただいているという感じなので、シリーズA前後は成長の基盤作りとして、もちろんプロダクト戦略があるんですけど、やっぱり人がすごく重要で、そこはかなり手厚くやらせていただいているという感じです。
Office Hoursで月50件の問い合わせ、面談のコツは?
石橋:
ちなみに、この動画を見ていただいている方、これから起業を志す方も多いかなとは思いますので、どういうふうにALL STAR SAAS FUNDさんにご連絡すると、ご面談の機会をいただけるのかお伺いしておきたいんですけれども、どういった方法だと間違いなくアクセスできそうでしょうか?
前田:
ウェブサイトでallstarsaas.comに行くと、一番下にOffice Hoursがあります。相談会というのがあって、そこに登録していただいている方は全員目を通していて、月に大体50件ぐらい問い合わせが来て、半分近くは実際に話しているという感じですかね。
会う・会わないの差は、1つはどれぐらい詳細に記載してくれているかどうか、というのが見ている部分ではあります。2つ目が、お客様の解像度がどこまで高いかどうか。何を作りたくて、誰に対して何の課題解決をしたいか、というこれがはっきりしているかどうか。
3つ目は、ちゃんとチームがいるかどうか。こういう要素を見て、面談させていただくか、今回見送りかという判断をさせていただいているという感じです。
石橋:
ありがとうございます。概要欄の方にALL STAR SAAS FUNDさんのコーポレートサイトのURLを記載させていただいておりますので、面談のルートを獲得していくために、チームがあって、お客様の解像度が高くて、しっかり情報としても伝わるように盛り込んでいただくというところがコツなのかなと思います。
ぜひ少しでも関心を持っていただいた方は、チャレンジしていただくとすごく良いんじゃないかなと思っておりますので、ぜひ皆さんよろしくお願いします。
改めてヒロさん、今回もご出演いただきましてありがとうございます。
前田:
ありがとうございます。
石橋:
次回もヒロさんにご出演をいただきまして、ALL STAR SAAS FUNDさんは実はファンドにお金を預けていただいているリミテッドパートナー(LP)投資家さんが、海外投資家さんがほぼ占めていらっしゃるというお話もいただいていますので、海外投資家さんの目線みたいなところを踏まえて第3弾でお話しいただければと思っておりますので、改めてよろしくお願いします。
前田:
よろしくお願いします。
【SaaS企業の可能性】海外投資家が日本のSaaS企業へのポテンシャルを聞いてみた!|スタートアップ投資TV
SaaSが生んだ「共通言語」が日本市場への扉を開いた
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。
今回も、前回に引き続きまして、ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロさんにご出演いただいておりますので、ヒロさん、改めて今回もよろしくお願いします。
前田:
よろしくお願いします。
石橋:
今回は、第3回目でテーマトークではあるんですけれども、シンプルに僕自身も勉強していきたい、インプットはしているものの一次情報はヒロさんの方が知っていると思いますので、海外機関投資家さんがなぜ国内のSaaS企業にそこまでのポテンシャルを感じていただいているのか。
それが故に、ALL STAR SAAS FUNDさんにもファンド自体の出資をしていらっしゃるというところが象徴的な現象なのかなとは思っていますので、そこの部分のヒロさん目線での解像度をぜひ視聴者の皆さんにも知っていただければと思います。
改めて、BEENEXTさんから始まり、ALL STAR SAAS FUNDに変遷していく中で、海外投資家さんの目線感といいますか、SaaS事業への評価というのは、ヒロさん目線でどういうふうに変化していると解釈していらっしゃいますか?
前田:
僕たちのユニークな部分としては、僕らの出資者LPが95%海外投資家で、そのうちの8割ぐらいがアメリカで、残りがニュージーランドとシンガポールみたいな、そんな感じの構成になっているんですけど、やっぱり日本への注目度はすごく上がっているんですよね。
大きな要因としては、SaaSがかなりアメリカで先行して普及していって、誰から見ても「SaaSは成功するでしょ」というふうに見えたというのがあって。
ロジカルに考えていくと、アメリカ以外だとSaaS企業はどういうところにあるんだろう、SaaSの市場はどうなっているんだろうというふうに海外の機関投資家が考え始めたときに、わかりやすくエンタープライズ市場が大きい順からみんな狙いに行くんですよね。
日本は2番目か3番目ぐらいのエンタープライズ市場の大きさなので、それが理由で日本のSaaSへの注目度が上がっているというのがあります。
もう1つは、SaaSのおかげで共通言語ができたんですよね。
みんなMRR(月次経常収益)が何なのかわかっているし、ARR(年間経常収益)が何なのかわかっているし、チャーンが何なのかもわかっているので、共通言語ができることによって、日本のSaaS企業がアメリカのSaaS企業と比較して良いんだね、悪いんだねというのがはっきり伝えられるようになるんですよね。
今までは、日本のニュアンスだったりとか、広告資料だったりとか、消費者の行動だったりとか、ビジネスのしきたりだったりとか、日本の文化とか日本人じゃないとわからない要素を海外の機関投資家に説明しないといけなかった。
今は売上継続率(NRR)が140%で、ARR成長率が200%で、ARRが40億円ですというのが共通言語で伝えられるようになっているので、機関投資家の良し悪しが決めやすいというのが大きな変化かもしれないですね。
海外マネーと日本スタートアップを繋ぐ役割
石橋:
そんな中、ファンドにそういった機関投資家さんが入っているということは、ALL STAR SAAS FUNDさんが投資をしていらっしゃるところに、SmartHRさんがまさにそうだとは思うんですけれども、その後のステージ、シリーズC以降で、より海外マネーをALL STAR SAAS FUNDさん自身も呼び込んでいくというような形で、海外マネーと日本のスタートアップを繋ぐという役割を果たしていらっしゃるんですかね?
前田:
まさにそうで、実際うちのLPにも直接SmartHRに出資させていただいているんですけど、向こうの目的も僕の目的もそうなんですけど、海外の機関投資家は、長期保有できる有望なSaaS企業に直接投資していきたいんですよね。それが1つ目的としてあります。
僕としてもどんどん海外マネーを日本のSaaS企業に流し込みたいというか、繋げていきたいというモチベーションもあるので、そこがすごく一致したというのもあり、ご一緒させていただいているというのはありますね。
ARR3億円で英語対応CFOを探し始めよ
石橋:
なるほどですね。その要素でいいますと、海外投資家さんとコミュニケーション、もちろんヒロさんがパイプラインを繋いでくれたとしても、最終的にDDを受けるのはチームであり、ビジネスであると思うんですけれども。
そのときに、スタートアップ側がどういうことを準備といいますか、備えていないとそもそも海外の機関投資家からお金を預かれないよねとか、それを準備し始めるのはどういった規模というかラウンドなのか、タイミングが適切なんでしょうか?
前田:
理想の話でいうと、やっぱり直接会話ができた方がいいです。特に社長が英語を喋らないといけないという話ではないんですけど、少なくとも社長の想い、経営の状態、戦略というのがちゃんと英語で伝えられる人が社内にいた方が良いですね。
SmartHRにはそういった方々が何名かいたというのもあり、それがスムーズにいきましたし、最近だと最高財務責任者(CFO)に英語を喋れる人を条件にCFOを探されているスタートアップが増えているんですけど、いるかいないかで全然違うというのはあります。
もちろん僕みたいな人を通して翻訳だったりとか、情報とかやり取りをまとめていくというのは可能ですし、実現可能だと思うんですけど、やはり信頼関係は投資が全てではないじゃないですか。
投資した後の関係性が結構重要だったりするので、関係構築をするためには言語は必要だし、同じ言語を喋る必要があるので、うちのLPに直接投資させることはできるんですけど、関係構築はどうしてもスタートアップ側に用意してもらわないといけないというのはありますね。
いつ頃そういう準備をした方が良いかというと、ざっくりARRが3億円見えてきたタイミング。早いところはARRが2億円とかで良いかもしれないんですけど、そのタイミングで僕はCFOを入れたほうが良いとは思っています。
石橋:
3億円くらい準備するべきということは、海外投資家さんが直投資のテーブルに上がるARRは規模でいうとどのぐらい?もちろんマーケットによっても異なるかもしれないんですけれども、平均的にいうとどのぐらいの目線感からはターゲットになってきたりするんですかね?
前田:
ARRが10億円ですね。ARRが10億円を超えてくると、機関投資家の目につく規模になってくるかなと思いますね。
なので、準備とかも考えていったときに、すごいスピードで成長しているときは、ARRが3億円突破すると翌年9億円になるので、3億円突破した瞬間に12ヶ月しかCFOを探す期間がないという状態になってしまいます。そう考えると2~3億円ぐらいのフェーズ、ちょっと見えてきたタイミングで探し始めた方がちょうどいいという感じですね。
石橋:
なるほどですね。ありがとうございます。そのぐらいの規模になると、倍々で成長しているフェーズに入ってくるからこそ、ARRが10億円にすぐにいくというのも変ですけど、順調に入っていくという感じなんですね。
前田:
すぐにいきますね。3億円を超えたら10億円いきます。
日本SaaS投資の盛り上がりは10年・20年では終わらない
石橋:
ありがとうございます。今後のトレンド感もぜひご意見いただきたいと思っているんですけれども、足元ではすごくtoBスタートアップがエンタープライズ企業に多い国内で注目されている、しかもフォーカスを海外からもされているというのはすごく理解ができたんですけれども。
今後のトレンドでいうと、国内外でも投資をしてきたヒロさんからすると、日本におけるSaaSの投資の盛り上がりといいますか、お金の集まり方というのはどのぐらい続くと思っているのか、それはなぜなのかみたいな観点でいうとどうなんでしょうか?
前田:
結構長期的に続くと思いますね。
なぜかというと、結構アメリカはVC業界が加熱していて、バリュエーションもどんどん上がってきていて、ARRが1億円なのにバリュエーションが100億円とか500億円のスタートアップとかがアメリカでは平気であるので、そう考えたときアップサイドがあまり見込めなくなってしまうんですよね。
お金がどこに流れるかというと、アメリカと似たような状況だったりとか、市場規模がそこまで差がない国で、SaaSという共通の言語があるところを探しに行くと思うので、しばらくは続くと思いますね。10年・20年どころじゃないと思います。それより全然長いと思います。
競争環境が激しいなら上場を待て──SaaS特有の成長戦略
石橋:
ありがとうございます。最近僕自身も考えているテーマとして、国内で市場の再編はあるものの、現状マザーズという海外的に見てもわりと特徴的な上場マーケットがあるかとは思うんですけれども。
やはり2桁億円以上で大きいファイナンスを海外投資家さんに入れていくときに、上場までの期間を長くしたりとか、マザーズでエントリーをどの時期でしていくべきなんだっけというのは、海外投資家を入れてもっと掘っていくのか、マザーズに上げにいってしまうのか、ARRが10億円のタイミングは意思決定のタイミングにもなるんじゃないかなとは思ったりするんですけど。
そこの部分でヒロさんとしては、マザーズへの上場のタイミングとか、掘り続けることの意味みたいなところはどういうふうに捉えていらっしゃるんでしょうか?
前田:
SaaSの面白いところは、ある意味、会社が上手くいけば上手くいくほど赤字を掘らないといけないんですよね。
特にセールスモデルのSaaS企業というのが、大体営業ができる先のキャパが決まっていて、それはセールス人員の数だったりとか、マーケティング人員の数だったりとか、カスタマーサクセスの人員の数で決まってくるんですね。
なので単純に考えると、営業のキャパを大きくしたかったら、もっと人を増やして、もっと赤字を掘ってやっていくと、そのキャパを大きくできるという考え方なので、実は上手くいけば上手くいくほど結構お金が必要になってくるというのはあります。
そう考えたときに、競争環境的にどういう状況なのかが、マザーズに上場するべきかの判断基準かなと思っていて。
もし競争環境が激しいという状態なのであれば、上場した後に黒字化しないといけないとか、安定したキャッシュフローを生み出さないといけないという状況になってくるので、なかなか営業キャパを拡大しようという決断がしづらいと思うんですよね。なので競争環境が激しいとなった場合は、未上場の状態にした方が良いです。
一方、僕ら独占できているよねとか、あまり強いプレイヤーいないよねとか、競争環境はそんなに激しくないよねと思ったときは、全然大きく営業キャパを拡大しなくても確実にマーケットシェアを取れる状態なので、それが見えているのであれば全然上場して良いと思います。
石橋:
なるほど。改めてありがとうございます。これを見ていただいている方は、これから起業される方が多いかと思いますので、上場とか海外の機関投資家、シリーズB・Cというのは、まだ先の話のように思うかもしれないんですけれども、でもチャレンジしてシードファイナンスを受けて、その後にやってくるようなところになってくるかなと思います。
概要欄の方にALL STAR SAAS FUNDさんのホームページのURLを記載をさせていただいておりますので、チームがいて、事業のお客さんへの解像度が高くて、そこの部分を情熱を持ってしっかり情報を書き込んでいただいて、ヒロさんたちにエントリーをいただくと良いのかなと思っております。
それではヒロさん、改めて最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございます。
前田:
ありがとうございます。
