【新生VCの投資基準を解説】新世代自動車メーカーへの投資事例/中四国発スタートアップが秘める可能性【waypoint venture partners 平田さん vol.1】
◯平田 拓己 waypoint venture partners株式会社
waypoint venture partners株式会社 HP▶︎ https://waypoint-vp.com/
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Facebook▶️https://www.facebook.com/shirauo53/甲南大学 経済学部卒業
2017年12月4日〜2023年3月31日 サムライインキュベート在籍
2023年4月waypoint venture partners設立
石橋
皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。今回は、waypoint venture partnersのファウンディングパートナーでいらっしゃる平田さんにご出演いただいております。今回からよろしくお願いいたします。
平田
よろしくお願いします。
石橋
今回は第1弾なので、waypoint venture partnersさんのことをまずお伺いしていければと思うのですが、改めていつぐらいにできて、どういうテーマで、どういう規模でやられているのか、基本的なところを教えていただいてもよろしいでしょうか。
平田
ありがとうございます。そもそも会社自体ができたのは2023年の3月で、ファンド自体ができたのが去年の9月になるので、まだやっと半年が終わったぐらいという、出来たてほやほやのファンドになります。
投資しているテーマは大きく3つあります。 1つ目は「新しい街づくり」です。
今まで作られてきたインフラと呼ばれるものが50年、60年経って老朽化してきました。それらが作られた当時は人口が増加していましたが、現状は人口が減っていくトレンドにあります。そうなった時に、インフラをそのまま改修して使い続けるのか、それとも今の人口動態に合わせて作り直すのか。いわゆる電気・ガス・水道や橋、道路だけでなく、医療や交通、行政サービスなどを含めた最適化を見ていくのが1つ目のテーマです。
石橋
それだけで十分広いですよね(笑)。3つに絞っていますけど、1つでもだいぶ広めですね。
平田
そうですね、それだけで街1個分入っているというか。
2つ目が「産業の持続的成長」です。これはGazelleCapitalさんに近いところかなと思うんですが、いわゆるレガシー産業の生産性改善だったり、カーボンニュートラルといったお題が新しく出てきた中で、今までは「大手の企業が頑張りましょう」という領域だったのが、徐々にバリューチェーン、サプライチェーンを通じたカーボンニュートラルの実現という中で、やはり中小企業も含めて取り組まないといけない中で、中小企業はそこにガッツリ投資する力はない。そこにテックを絡めることでアプローチできないか、というのが2つ目のテーマです。
3つ目のテーマが「個人のエンパワーメント」という一番抽象的なものなんですが、toCであれば何でもやるわけではありません。toCの中でも、人の生活で最低限絶対に必要になってくるようなボトムラインのところに対して、どんな新しい選択肢を用意できるかを考えています。教育やヘルスケア、金融など、人が生活する上で最低限必要になるベースをどう作れるかを見ています。 大きくこの3つのテーマで投資をさせていただいております。
石橋
その3つのテーマに対して、ファンドのサイズ感や投資ラウンドはどういう括りになるんですか?
平田
まさに今、5億円から10億円での着地を目指して今ファンド組成をさせていただいていまして、基本的にはプレシード・シードと呼ばれる創業間もないラウンドを狙っているファンドになります。
石橋
大体1社どのぐらい投資をするイメージになってくるんですか?
平田
基本的には一番最初はマックスでも2000万円ぐらいまでかなというところで、現状で言うと1000万円ぐらいでオファーさせていただくケースが多いかなと思います。
石橋
仮に10億円集まった場合、どういうストラクチャーになってくるイメージですか?
平田
基本的には6対4ぐらいで割るのがいいのかなと思っているので、6割は新規投資に回させていただいて、残りの4割に関しては追加投資に回す形が理想かなと考えています。
石橋 リードやフォローへのこだわりはありますか?
平田
基本的にはリードできたら理想だなとは思っていますが、調達される金額が徐々に大きくなっているのもあるので、リードができる状態ではなくても、そのラウンドや起業家さんのご希望に合わせてフォローに回るケースも考えています。
石橋
僕の中での勝手なイメージとして、平田さんは割と中四国を含めて地域に足を運ばれているケースが多いなと思っていまして、何か地域などの絞り込みをしている要素はあるんですか?
平田
基本的に地域でフォーカスをしきっているというよりかは、さっきの3つのテーマの中で地方と首都圏とで濃淡をつけているようなイメージを持っていただけるといいかなと思います。
個人のエンパワーメントみたいな領域に関しては、やっぱり個人の母数が多いエリアの方がやりやすいのかなと思っています。一方で、新しい街づくりに関しては、人が減少しているといっても東京はまあまあ人はいるので、課題が顕在化しにくい。地方の方が顕在化するスピードも早いですし、医療やインフラ、税収の問題なども切実なので、地方ではそっちの色を強めに見ています。
石橋
中四国というイメージも必ずしも正しいわけではないって感じですか?地方って他にもたくさんある中で、どういうふうに分けていらっしゃるんですか?
平田
中国エリア以外のスタートアップには投資をしないわけでは全くないです。ただ、実証のフィールドやアクセスできるアセットの量を考えた時に、中四国はすごくスタートアップが成長する上ではいい環境なんじゃないかなと思って見ています。で、現地に行っている回数は圧倒的に中四国が多いです。
石橋
今は、場合によってはもう少し株価の高いところもやり得るんですか?プレシードシードのみなのか、たまにレイターを組み入れたりする人もいるじゃないですか。
平田
なくはない、というぐらいです。基本的にはプレシード・シードにフォーカスしたいです。
石橋
今って何人でやられているんですか?
平田
今、基本的にフロント業務とかメインで動いているのは僕1人です。一応管理などは外部でお願いさせていただいている方がいらっしゃるので、ひとまずファンドができあがるまではフロントは1人で動こうかなと思ってやっています。
石橋
インターン生とかも入れてない?
平田
入れてないですね。将来的には入れたいと思っています。
石橋
半年経った今って、ステルス含めると何社くらい投資されてるんですか?
平田
ステルス含めても、1社しか投資していないです。
石橋
公開済みのKGモーターズさんにはすでに投資されていると思いますが、どういうテーマで、なぜ可能性を感じているのか、ぜひお話しいただけますか。
平田
テーマ的には1個目の「新しい街づくり」のど真ん中なのかなと思っていまして、移動体・モビリティのテーマで投資をさせていただきました。 元々はKGモーターズ自体が創業する前から、実は2022年の前職時代からお話をしていたので、すごく長い付き合いをさせていただいています。
石橋
一個人の創業者の方と話があったという感じですか?
平田
そうですね、創業チームとお話をさせていただいていたという感じです。一番最初「車を作ります」となった時に「マジか…」と(笑)。めちゃくちゃ難しいところに行くんだなと思っていて、最初は高いハイグレードなところから入っていくのかなと思ったら、真逆のところから入られるということだったので驚きました
ものを作っていくとなると、当然サプライヤーさんを巻き込んだり、資金調達もしないといけないので大変だろうなと思いながらディスカッションさせていただいていたら、あれよあれよという間に有名なサプライヤーさんをすごい勢いで巻き込んでこられて。
それもすごく有名なサプライヤーさんがたくさん入られていたので「巻き込み力」が半端ないなと感じたのと、ユーザーさんへのヒアリングのスピードもすごく早く、かつ解像度もかなり高く出されていて、このチームだったらやれちゃうんだろうなと思わされたのが一番のポイントです。
石橋
ちなみに、創業者の楠さんはYouTuberなんですよね。
平田
そうなんです。「KG Motors / くっすんガレージ」というチャンネルをやられていて、16万人から19万人ぐらい登録者がいたと思うんですが、本当に車を分解したり新しく作ってみたりというのをずっとやられていて。さらにその1個手前はポッドキャストからスタートしていたらしいんですが(笑)。
ファンの方もすごく多かったですし、自動車業界の方がよく見ていただいていたみたいで、チームアップや採用もチャンネルを使ってできているところもあって、そういう意味でもすごい強いチームだなと思いましたね。
石橋
人物像とか、足元でどういう行動、出来事があったか分かったんですが、未来の可能性という意味では、どういうところに期待して投資されたんですか?
平田
まず1つはシンプルに、今ターゲットにしているような地方で暮らされている方たちの2台目の足として使っていただくというところを期待しています。今ある軽自動車の置き換えになるんじゃないかという分かりやすいスイッチングです。
もう1つのアップサイド的な期待で言うと、今車を持っていらっしゃらない方たちが新たに乗るきっかけになるんじゃないかというところも少し期待をしています。あとは、ここは価格の問題かなとは思っていますが、海外に行ける可能性もあるプロダクトなのかなと思っています。狭いところを走れるというのは圧倒的に強いので。
石橋
あれっていつぐらいに売り出せるんですか?
平田 2025年の販売開始を予定しておりまして、まさに3月に先行の予約を開始させていただいた形です。
石橋
単価いくらぐらいの想定なんでしょうか。
平田
今は100万円での販売を想定しています。
石橋
絶妙なところですね〜
平田
イニシャルコストも軽自動車に比べると安いですし、どちらかというとランニングコストが安いというのがすごく大きな強みです。 「原付・ミニカー」という別規格になっていまして、車検が不要なんです。セブンイレブンの前に3輪車みたいな「COMS(トヨタ車体)」という車があると思うんですが、それと同じ規格になっています。
基本的には複数台所有されている方のセカンドカーを狙っているので、メインカーの原付特約で保険がカバーできちゃったりします。かつ1km走る時にかかるコストの効率も非常に高いので、ざっくり1/8か1/7ぐらいまでランニングコストが下げられるんじゃないかと試算しています。
イニシャルの方も下げられるんですが、インパクトが出るのはランニングコストですね。
石橋
今、ファンド立ち上げから半年経って1社というのは、順調なペースなのか、ちょっとゆっくりな方なのか、私はゆっくりだなという印象を受けました。結構な量断っていらっしゃったりもするんですか?
平田
はい、そうですね。
石橋
いいんですよ、もちろん。もう知っている方は多いと思いますけど、VCは100社あって1・2社投資することがあるみたいな類の仕事なので、99%くらいはお断りさせていただかないといけないという業種なので、断ることもお仕事というのはすごい大事なことだと思うんですが、にしてもゆっくりだなと思ったので、こういう方はwaypointとしては投資が難しいとか、こういう事業は対象外になるとか、例えばどんな感じですか?
平田
まさにさっきのテーマで言うとなんでも入ってそうだよねっていう印象を受けるかもしれないですが、一番分かりやすいところで言うと、エンタメ領域はやりません。あとはディープテックの中でも創薬みたいなところは当然できないですし、他のVCさんがメインで投資されているところでも、場合によってはやらないケースもあります。
石橋
なるほど。領域に限らず、NGになりがちな条件とかってあるんですか?例えば「モノがない」とか「エンジニアがいない」というのはどうですか?
平田
「モノがない」みたいなところは全然問題ないかなと思っていて、モノがないのであれば、逆に言うとじゃあそのモノを作れるチームはあるよね、というところは必要になるかなと思います。 先に進む上で必要なものは揃っている状態になっていれば、それはそれで問題ないかなという風に思っています。
石橋
とはいえ、その判断ってめっちゃ厳しいじゃないですか。waypointとしてはどう解釈させているんですか?そもそもターゲットの組入社数がかなり少ない?
平田
少なくはないと思います。まず一つあるのは、ファンドの組入の額がどれくらいになるかがそもそもわからないので、そこのスピードコントロールしにくいのが1点あると思います。
後は、必ずしもお会いしたすべての会社に投資できるわけではないし、地域の方に行くと特にそもそもスタートアップとしてはやらないみたいな方もいらっしゃるので、そこの分の数で少し遅れがあるというのは一定数あると思います。
遅いのは事実だと思っています。一方で、めちゃくちゃ遅すぎるかというとそこまででもないと思います。
石橋
最後に、どんな起業家を探しているのか教えてください。
平田
基本的にはテーマに合うところで、かつユーザーさんだったり現状に対する解像度がめちゃくちゃ高い人、ないし解像度を上げるスピードがめちゃくちゃ早い人が個人的にはすごく好きなタイプなので、やっぱりそういう方は特にお待ちしています。
石橋
それでは、第2弾では平田さんの自己紹介や、なぜ独立したのか、といったお話も聞いていければと思っております。引き続き次回もよろしくお願いいたします。
平田
よろしくお願いします。
【新卒でVCに入社】VCとして独立した理由/投資するなかで感じた苦しい場面【waypoint venture partners 平田さん vol.2】
石橋
皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。今回も前回に引き続きまして、waypoint venture partnersのファウンディングパートナーである平田さんにご出演いただいております。今回もよろしくお願いします。
平田
よろしくお願いします。
石橋
ちなみに、1本目で聞けばよかったんですが、そもそも「waypoint」って何ですか?
平田
航空業界にいる人しか分からないんですが、飛行機がいろんなルートを辿っていく時にいくつかポイントが設定されていて、そのポイントを「ウェイポイント」と言います。あくまで通過点という意味合いで、資金調達自体もあくまで通過点だよね、という意味合いでつけています。
石橋 今回は、平田さんがどういう経歴で独立に至っているのか、どういうところを志してらっしゃるのかを聞いていければと思うんですが、ファーストキャリアはどういうところから始まっているんですか?
平田
前職も全く同じで、独立系VCのサムライインキュベートに新卒で入りました。一瞬インターンして、そのまま新卒で入ったという感じです。トータル5年3ヶ月ぐらいいたと思います。 基本的にはシード、プレシードの会社の投資をさせていただいていたのと、当時のファンドレイズにも参加させていただいて、そこでいろんなことを学ばせていただいていました。
石橋
新卒のVCの方とか、VC業界でインターンされる方もこの1、2年で増えましたが、約6年前の新卒VCってまだあまりいなかったですよね。
平田
インターンはちらほらいましたけど、新卒はそもそも採っているVCが限られていたので、本当に大手のJAFCOさんとかしか募集してなかったですし、今では独立系VCでいくつか新卒のドアを開けているけど当時はどこも空いていない状態だったのはありましたね。
石橋
なんで新卒でVCになろうと思ったんですか?
平田
一番最初は全然違うIT系の事業会社さんから内定をいただいていました。元々は大学院に行こうと思っていたので、4年の夏ぐらいまで就活をほとんどしていなくて。ただ途中で就職しようということで夏ぐらいから就活を始めて、4年の11月ぐらいに内定をいただきました。
そこからその会社もスタートアップと連携みたいなことを考えている会社でした。 元々自分自身も起業したかったし、高校時代から個人で上場株の投資をしていたので、ベンチャーキャピタルでインターンもしたかったし、ちょうどいいやということで実家に帰ってきたタイミングでインターンを始めました。
石橋
実家がこっちなんですか?
平田
そうですね、実家が東京で大学が兵庫です。
石橋
なるほど、じゃあこっち戻ってきて、サムライさんがちょうどインターン募集していたんですね。そこからなぜそのまま新卒で入ることになったんですか?関心があったのは分かったんですけど、入れると思っていなかったんですか?
平田
入れると思ってなかったんで、そもそも入りたいともあまり思ってなかったんですが、たまたま2月ぐらいに当時の上司が「うちってどう?」みたいな話で声をかけていただいて。「そんな選択肢あるんすか」みたいなところで考え直して、自分のやりたいことにどっちの方が近いかと考えた時に、考えるまでもないかもな、ということでサムライに入らせていただきました。
石橋
業界に入ったばかりの方が中途、新卒含めいらっしゃいますが、5、6年やってこられた中で、何が一番大変でしたか?今もがき苦しんでいる業界の1、2年目の人や新卒VCの人もいると思うので、圧倒的な経験者として生々しい話をお願いします。
平田
生々しい話をすると、一番しんどいのは投資をして少し経ってから、投資先がしんどくなっていったりとか、そこからどうターンアラウンドさせるかみたいなところが一番しんどいですね。 起業家さんが一番しんどいのはもちろんなんですが、VCの仕事の中で一番しんどい時はいつかと言われたら、多分それが一番しんどいです。
僕自身、起業家さんがお客さんからこういうコメントもらってめっちゃ嬉しかった、というのをメッセージで送ってくれるのがめちゃめちゃ嬉しかったタイプなので、逆にそれで苦しんでいるのを見るのが一番しんどかったという感じはします。
石橋
どう乗り越えたんですか?
平田
乗り越える類のものでもないかなと思いますね。どこまで行っても自分が中の人ではないという中で、自分が出来ることだと思っていることをやってみるしかない。本当に試行錯誤するしかないよね、というところなのかなと思います。
石橋
その部分は最近入ってきた中途や新卒のVCに言えることですが、最近業界に来たVCの人とどう相対して欲しいかみたいな視点で、起業家対してメッセージはありますか?
平田
気にせず使い倒してもらうのが一番いいんじゃないかなと思っています。 入ってきたばっかりだからできることが少ないんじゃないかみたいなところは、歴の長い先輩に比べたらそうだと思います。
本当にやってくれるかどうかはさておき、まずは一旦使い倒してみるというスタンスでお話しいただくのがいいんじゃないかなと思いますし、その中でこの人はこれぐらいの期待値だなみたいなところがあれば、そこを見極めていただければいいのかなと思います。
石橋
最終的に5年6年経って独立をされているわけですが、投資先との一番大きな出来事や、決め手になったものはあったんですか?
平田
元々入社した時からいつか独立したいと思っていました。元々は起業したかった側だったので、プロダクトっぽいものを作り、ピッチデックっぽいものを作り、VCに回る風のことをやってみて、その中で自分もプロダクトを通じてこういう世の中を作りたいよね、みたいなことを考えていたんですが、自分がそこをめちゃめちゃ頑張るよりも、自分より圧倒的に優秀な起業家の人たちが死ぬほどいるんで、むしろその方たちが頑張れたりとかスピードを上げれるようなサポート側に回った方がよっぽど話は早いなと思って、こっち側にいるという感じです。
VCで突き進むということを決めていたんですが、一番最初は3年で独立すると思っていました。でも3年目の時は「独立なんてできるわけない」と1ミリも考えることなくそのまま継続し、6号ファンドの新規投資が終わるタイミングでも、トラックレコードもない中で今出て行っても難しいんじゃないかと考えて一旦やめました。
その後、7号ファンドの組成が始まっていく中で、自分は基本的にはプレシード・シードの投資がしたいというところがありつつ、ファンドのサイズが徐々に大きくなっていくと投資の考え方やステージが変わっていくこともある中で、自分がやりたい領域に投資をするということを考えると、もしかすると残るよりも独立した方がいいんじゃないかということで出てきた、そんな感じです。
石橋
実際どうですか?
平田
大変ですよね。大変ですけど、ちょっと嬉しいなと思うのは、独立をした時に前職で投資をさせていただいた起業家さんとかに「やっと平田さんもこっち側に来ましたね」みたいなことを言われた時は、それはそれで嬉しいなというか、より頑張んないといけないなと思わされました。
石橋
最後に、今後どういうことを実現していきたいか、ミッション・ビジョン的なところをシェアしていただければと思います。
平田
ファンドとして一番大きく目指しているのは、人が選べる選択肢の総量を増やしたいというところが一つと、その中で、総量は増えたけどそもそも人間が選択できない選択肢があっても意味がないので、選択肢がある中でちゃんとそれが選べるような状態を作りたいというところを目指していきたい方向性として掲げています。 自分自身が元々母子家庭出身だっていうのもあって、いろんなことをさせれなかったみたいなことをよく言われたりしていたんですが、僕自身はあまりそんなこと思ってなかったんです。一方で、自分のこれまでの選択だったりとか、上場株の投資を始めた背景を考えると、ゲスい言い方をするとお金が好きなんですよね。その理由を考えた時に、お金で買えないものがあることは百も承知なんですけど、お金があることによって選択肢が広がるのは間違いないなと思っていて。選択肢を増やすための道具としてのお金が好き、という考えに、まさに独立をしてファンドのテーマや目指す方向を考えた時に行き着いたので、そういったところの目指す方向性が近かったりするような起業家さんとは、やっぱりご一緒できたらすごく嬉しいなと思っています。
石橋
第1話でも話しましたが、自分でお金を集めて業務を一人でやるのって難しいですよね。
平田
難しいとは言いつつも、有難いチャンスをいただいているとも思っていて、「業界何年目だよ」みたいなやつが「ファンド作ります」といって、レコードもない中で1号ファンドにお金出してくださいといい、そんなわけのわからないファンドからお金を調達してくれる起業家がいて。いろいろやらないといけないこともあるしすごく大変なんですけど、それをやらせてもらえているのは本当にありがたいことだと思います。
石橋
僕もある意味同じでCVCに2年間くらい勤めて、突然前職が無くなることになったのでいろいろ考えてVCという選択肢で自分でもやっていこうと思って当然小規模ファンドから始まって、シード・プレシードで、というところは共通するところですし。
多分まだ業界には少ないと思いますけど、若い方だけではなくこれから独立を志している方は、小規模ファンドの相談は平田さんでも僕でも乗れるところはあるかと思いますので、ぜひご連絡いただければと思います。 それでは、第3弾はなぜ中四国に張っているのかというところをお話しいただく予定ですので、ぜひ見ていただければと思います。それでは次回もお会いしましょう。さようなら。
【中四国はなぜこれから伸びるのか】中四国エリアの持つ資源の正体/地域発スタートアップ成長の鍵とは【waypoint venture partners 平田さん vol.3】
石橋
皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。今回も前回に引き続きまして、waypoint venture partnersのファウンディングパートナーである平田さんにご出演いただいております。今回もよろしくお願いします。
一本目では、waypointがどんなファンドなのか、二本目では平田さんがどういう想い・背景で創業するに至ったのかをお話しいただきましたが、特に1本目で、地域地方や新しい街づくりの観点で、特に今中四国地方に結構行かれているんですよね?
平田
めっちゃ行ってます。少なくとも各週に一回はどこかの県にいますし、多い時は週一どころではないかもって感じです。
石橋
そうなるとやっぱり特にwaypointさんとしても、優先順位を挙げている地域の一つが中四国ということで、今回は第3弾ということで、waypoint venture partnersさんから見た、中四国エリアのスタートアップの概況や動向についてご説明いただきたいと思います。
まずは皆さん向けに、中四国の状況を教えていただけますか。
平田
まず、中四国エリアのスタートアップ・エコシステムがどうなっているかという点ですが、地方でいうと、福岡を筆頭に近畿、愛知の「ステーション AI」のように盛り上がっている地域と比べると、中国・四国はまだ「聞いたことあるか?」というレベルかもしれません。ホットかホットじゃないかで言うと、まだまだこれからのエリアだと理解しています。なので、ホットにしないといけないエリアですね。
ただ、めちゃめちゃポテンシャルはあると思っています。
中四国のエコシステムの特徴としては、どこか一箇所に目立った拠点がドカンとあるというよりは、かなり幅広に、ほとんど全ての県にコミュニティや支援体制が散らばって存在しています。
これには地理的な背景があるという仮説を持っています。中国地方は横に長いんですが、県境の真ん中あたり、例えば鳥取・島根と岡山・広島の間はほとんど山なんです。そうなると縦移動がめちゃくちゃ難しくて。
例えば島根と広島はくっついているので近いと思われるかもしれませんが、電車では直接行けません。広島から岡山に出て、鳥取に上がり、そこから島根に入るという「コ」の字を描くような移動になります。車で行こうとしても高速バスで山越えになるので、鉄道だとかなり面倒くさいエリアになっています。
神奈川の起業家が渋谷のエコシステムに行くのは簡単ですが、島根の起業家が広島のエコシステムに行くのはほぼ無理なんです。だからこそ、各地域の地銀さんや自治体さんが、その地域内で起業家がしっかり使えるようなエコシステムを作りましょうという形で、各県にあるのが現状なんじゃないかなと思っています。
石橋
とは言え、強い県などはあるんですか?
平田
やっぱり岡山は強いと思います。地理的に近畿の隣なので、すごくアクセスがいいんですよね。新大阪から新幹線ですぐですし、島根・鳥取から山陽側に来ようとすると岡山を経由します。四国の方たちも、愛媛の場合は広島まで船で行けちゃいますが、それ以外だと基本的に香川経由で岡山に入るので、
石橋
交通のハブになっているんですね。
平田
はい。なので交通の便という意味で岡山はアクセスが良いです。
加えて広島は、そもそも県自体も大きいですし、ある程度人口も多いのでやっぱり強いよねという感じで、岡山・広島が一つ頭抜けている印象は持っています。
まさにその話にもつながるところで、県別の資金調達総額や企業数の推移についてですが、やはり岡山・広島が頭一つ抜けています。企業数を見ても伸びてきてはいますが、金額の伸びの割に企業数の伸びはそこまで大きくないというのが現状です。調達した会社は順調に成長しているけれど、新しい会社がガツガツ出てきているかと言うと、まだそこまでではないのかなという印象です。
石橋
一番成長しているところで言うと徳島なんですかね?
平田
メインになるようなスタートアップが出てくると、やっぱり資金調達総額をグッと牽引してくれるので、そこの部分はあります。
あと昨年ぐらいからJST(科学技術振興機構)の「START」という事業で、大学発のスタートアップを生み出そうという支援のお金がつくようになり、いろんな大学がギャップファンドをやり始めました。その関係もあって、中四国エリア内の大学の動きが少しずつ活発になってきていて、加盟数も増えてきたので大学発のスタートアップはこれから出てくるかなと思っています。
石橋
中国地方でトップは岡山なのかなと勝手に思っていたんですが、広島なんですね。
平田
広島大学発のスタートアップがいくつかあって、その中でもディープテック系の会社が一定数あったりするので、金額ベースで牽引していきやすいというところはあると思います。
石橋
逆に言うと、社数と金額で言うと徳島の方が1社あたりのパイは大きいですよね。
平田
徳島に関しては、おそらく電脳交通さんの影響じゃないかなと思っています。ほぼ1社で牽引している可能性もありますが、7社ほどは調達されていますね。結構大学発のスタートアップだったり、大学の技術を使ったスタートアップが多いですし、広島大学としてもそこを推していこうという意向もあったりしますね。
石橋
鳥取も宇宙系なんですかね?5社で12億って結構でかいですよね。
平田
島根に関しては、前職で私が投資させていただいた会社もありますし、産業廃棄物系や処理関係、認知症関連の医療系のスタートアップがあったりするので、数は少ないんですが1個1個が割と調達する金額が大きい傾向があります。
割と伸びてきているエリアではあるが、これからの伸び代もあるし、その背景には大学発のスタートアップというのがこれからより出てくるかなと思います。
石橋
エコシステムなどが分かってきたんですが、投資家の状況はどうなっているんですか?
平田
各県に必ず1個以上はある状態で、銀行系、事業会社系、大学系などがあります。いわゆる独立系VCと呼ばれるところは数がかなり限られていますが、実はお金の出し手自体はすごくたくさんいるというのがこのエリアの面白いところです。
石橋
宇部興産さんとか、山陰酸素工業さんとか、初めて聞きました。
平田
宇部興産に関しては地場のセメント系のめちゃくちゃでかい一大企業です。
石橋
地場のエンジェルみたいな感じなんですか?
平田
どちらかというと事業シナジー系ですね。時々リリースにちょろちょろと名前が出てきている感じです。
山陰酸素さんに関してはCVCを作られていて、自社のシナジーがある領域だったり、地域にお客さんをたくさん抱えていらっしゃるので、そういったお客さんに対して提供できるものの幅を広げていくという目的でやられています。
石橋
あ、あと山口の柏原コーポレーションとか、アホみたいにでかい会社なんで、50億円規模のCVC持ってますしね。ただ山口で投資してるイメージはあんまりないですね。
平田
そうですね。地域にVC・CVCは持っているけれど、地域に対して全てのお金を投資しているかというとそうではなくて、自分たちの地盤の中で使えるアセットがあるのであれば開放していく、というスタンスのCVCさんもいらっしゃいます。
面白いのが、2018年頃に日本全体でCVC設立が増えたのと同じような傾向が中四国でもありましたが、2023年がすごく面白くて、CVCがドカドカっとでき始めたんです。ある意味6年ぐらい遅れてCVC設立ラッシュがやってきたなという感じです。
石橋
Daikiさんはどんな方なんですか?
平田
水系のタンクなどを扱っている愛媛県の会社で、東京にもオフィスがありますね。
という感じでかなりCVCができているので、これからより盛り上がってくるかもしれないし、CVCは持っていないけれども、スタートアップとの連携を考えている、地場がすごく有力な会社が増えてきた印象があるので、そういう意味でも地域のアセットを活かせるところが今まで以上に加速してきたと思います。
中四国圏のスタートアップのトレンドというと、やっぱり日本全体のトレンドと合ってしっかりと伸びてきているところはあるかなと思っています。加えて、中四国エリアをフォーカスする理由の1つでもあるんですが、やっぱり地域の事業会社さんが持っているアセットにアクセスしやすくなるような動きが少しずつ出てきたな、というところがあります。そういったところをどう絡められるかみたいなところも、1つスタートアップの成長という意味合いでは大事なポイントになるんじゃないかと思っています。
加えて、これから中四国エリアのスタートアップの増え方という点においては、大学発のスタートアップみたいなところの数も、多分3年目ぐらいのタイミングから少しずつ増え始めるんじゃないかなと個人的には想像しています。
そういう意味で言うと、スタートアップの成長や地域のスタートアップをサポートする文脈では、首都圏の投資家から資金調達をするということも当然できると思いますし、加えて地域で成長させるからこそ、なおさらその地域のアセットをうまく活用していくような動きにはなっていくのかな、というのが中国エリアの概観かと思います。
石橋
適宜ちょっとご質問させていただきましたが、とは言えファンドって10年間じゃないですか。ポートフォリオの比率は実際どれぐらいにしようと思っているとか、あるんですか? それこそ瀬戸内スタートアップさんとかは「瀬戸内生まれの人にも投資する」と言っているので、結論「広い」という話になると思うんですけど、waypointさんだと場所にはこだわっているという話だと思います。
ちゅうぎんキャピタルパートナーズさんやいよぎんキャピタルさんや地場の地方銀行さんも、もちろん東京のスタートアップに投資していますけど、地域経済にという文脈で言うと、物理的な地域にこだわってらっしゃるのかなと思っています。 中四国系で何割ぐらいやろうとか、決めているんですか?
平田
方向性として、理想的な着地点は「7:3」ぐらいなのかなと思っています。7割が首都圏で、3割が中四国ですね。 それがまさに「中四国を見ているくせに、お前は本社を東京に置いているのか」という話にも関連するところかなと思っています。僕が個人的にすごく期待しているところという意味合いで言うと、やっぱり地域の地場産業がまだ元気で強いというところが中四国エリアの強みだと思っていて、そこを活かしてスタートアップが成長してくるという絵を描けたりとかするといいかなと思って見てはいます。
一方でお示しした通り、全部に投資したところで数が知れているよね、みたいなところもあったりするので、となってくるとやっぱりどうしても10年のファンドということを考えると、中四国だけに投資をするというのは難しいという形になります。
なので、どちらかというとKGモーターズみたいな広島に本社を置いていますという会社にも投資をしたいし、逆に言うと東京のスタートアップなんだけれども、サービスが成長していく過程においては地域の会社さんが持っている現場のアセットを活用していった方がより加速するよね、というところに対してうまくそこをマッチさせていきながら成長サポートできるようにしたりとか。
逆に、地域の中小企業ですごく強いところをより強くしていくみたいなことができるといいのかなと思っていたりします。
必ずしも中四国の会社じゃなければいけないわけではないし、逆に東京って本社ばっかりじゃないですか。なので現場が少ないので、その現場をうまく使って成長していきたいんだ、みたいな会社にとってはいいのかなと思って見ているという、そんな感じです。
石橋
waypointさんとしては、例えば2号ファンドとかになってくると、また別の地域にフォーカスしていくということも戦略的にはあり得るんですか?
平田
なくはないと思うんですけど、実は中四国を見るにあたって結構いろんな地域を想定はしていました。
中四国にフォーカスする一番最初のきっかけって、前職で投資をさせていただいた一番最初の会社が広島の会社だったというところなんです。その関係もあって、地域のスタートアップで起業家さんが何を考えて事業を考えられているのかとか、どういうテーマに事業を起こそうとされているのかを見ていった時に、やっぱり地域ならではの課題って多いなっていうところに気づかされました。
でも地域って別に日本全国あるよね、ってなった時に「じゃあ日本全国見ていきます」かつ「地域の課題を解決する」となっていくと、やっぱり地域の会社さんの協力が必要になってきます、みたいなケースがすごく多いんです。 そうなってくると、協力できる会社もセットであることを考えた時に、中四国エリアってやっぱりすごく元気かつ、実は業界リーダーですみたいな会社がボコボコあるんです。あとは上場してないけど3桁億円ぐらい売り上げあります、みたいな会社が結構あったりするので。
そうなった時に、やっぱりそこのスタートアップに協力をしてもらうとかアセットを共有させていただく、かつそのスタートアップと連携をするぐらいの余裕はまだある、みたいなことを考えると、中四国ってめっちゃいいエリアだなと思って中四国にフォーカスした、みたいなところがあります。なので前職を辞める前から中四国を見ていますけど、前職を辞めてもなお中四国と言い続けているのは、そういった背景があるという感じです。
石橋
GazelleCapitalもで言うと、地域でイーストベンチャーズを作ろうみたいなコンセプトに乗っかってくれる人とかを探していかないとな、というか。そもそも起業家の数は物理的に少ないと思うので、リターンじゃなくて投資社数での分散投資で組み入れだ、みたいな。
仮に中四国がこの10年で盛り上がっていくトレンドなら、インデックス投資みたいな感じで中四国のやつに分散投資すれば、インデックス投資としては正しいみたいな話になるじゃないですか。スタートアップマーケット全体に投資しているというのが僕はイーストベンチャーズだと思っているので、そういう動きっていうのも場合によってはあるんだろうなと思ってるぐらい、今の期間ぐらいなので。 見ていただいている方の中には中四国の方ももちろんですが、地域の起業家の方も多いのかなとは思うんですけど、こういう動画を通じて僕らにも問い合わせいただくケースももちろんありますし、地域のスタートアップに注目している投資家さんって首都圏だけじゃなくて増えてきているのかなと思います。
ぜひwaypointさんもそうですし、弊社もそうですし、そういう地域に注目しているVCさんにはお問い合わせもぜひいただければなと思っております。
改めて今回は第3弾ではございますが、ちょっと勉強会っぽいコンテンツでございましたがお話しいただきましてありがとうございます。
平田
ありがとうございます。
石橋
定期的に中四国にも行っていらっしゃるということですので、中四国エリアの起業家の方等は積極的にお問い合わせいただければと思いますし、ご縁を作っていただければなと思っております。 それでは今回も全3回に渡りましてご出演ありがとうございます。
平田
ありがとうございます。
石橋
皆さんも最後までご視聴ありがとうございます。次回もお会いしましょう。さようなら。
