凸版印刷のCVC責任者が登場!立ち上げ時のリアルを語る|スタートアップ投資TV

◯朝田大 凸版印刷株式会社 事業開発本部戦略投資センター センター長
凸版印刷HP▶︎https://www.toppan.co.jp/
CVCメディア▶ https://toppan-cvc-journal.jp/
Facebook▶︎   / hiroshi.asada.315  
1993年 凸版印刷入社。生産技術、システム開発部門に従事。
1999年 本社ソリューションセンターにて、IT関連のシステム、サービス開発に従事。
2002年 本社技術戦略部門にて、VB投資を通じた新事業開発に従事。
2006年 経営企画部門に異動、新事業開発、M&Aなどを担当。
2012年 メディア事業に関する事業戦略を兼務。
2016年 経営企画本部内に、戦略投資推進室を設立。成長市場における新ビジネス創出に向けたVB投資やM&Aを推進。
その他ブックリスタ㈱取締役を兼務。

◯内田多 凸版印刷株式会社新事業開発本部戦略投資センターCVC部
Facebook   / masaru.uchida0121  
2010年 凸版印刷入社。法務部門にて契約・著作権を担当。
2015年 デジタルコンテンツ企画部門にて広告企画を担当。
2016年 経営企画部門(戦略投資推進室)にてベンチャー投資やM&Aを担当。
2021年 投資先のスタートアップスタジオ“combo”の事業推進も兼務。

カッターナイフからMacintoshへ。デジタル化の最前線

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回で、ちょっと久しぶりにはなるんですけれどもコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)編と言いますか、みなさんよく知っていらっしゃる会社かと思いますが、凸版印刷株式会社(現:TOPPANホールディングス株式会社) CVC部門責任者の朝田さんにご出演をいただいております。

朝田さん、今回からよろしくお願いいたします。

朝田:
よろしくお願いします。

石橋:
僕自身、凸版印刷という名前はむちゃくちゃ聞き馴染みはあるんですけれども、大きすぎて何をやっているのかいまいちよく分かっていないところもあるような気もします。

朝田さんとはこの撮影が初めましてではありますので、改めて朝田さんのご経歴と言いますか、学生時代にどういうところから始まってみたいなところを簡単にお話しいただければと思っているんですけれども、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

朝田:
私自身は1993年に凸版印刷という会社に入りまして、約20年前ですね。当時は印刷の現場に配属になりまして、それは製版フィルムと言うんですけど、印画紙をカッターナイフでレタッチで切って、それを光で投影して撮影していくということが1993年、まさに現場で行われていた作業です。

それをいかにデジタル化していく、今起きているデジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)に近いところをやっていくという最初の仕事で入社をさせていただきました。

Macintoshが出たての頃ですね、Macintosh IIとかそういうものがまだ世の中にこれからというタイミングで、そのMacintoshを使うことによって、どう合理化できるかとか効率化できるかとかということを最初にやったのが私の仕事になっています。

現場の中でいうと秋葉原に会社があったんですけれども、その周辺の会社さんの旅行パンフレットとか、そういうものをいかに効率的に作るかというところが最初の仕事でした。

人がやると当然手作業によるものなので、バラつきがあったり、工数が多くなる。それらを全部デジタルに変えていくというのが最初の仕事で入りましたね。

石橋:
そこからどういうふうな経緯を経てというか、それこそめちゃくちゃレガシーというか旧態依然のところから始まってどういうふうに変化していくんですか?

データベース提案へ。エンジニアから事業提案者への転身

朝田:
そこの部分で培ったデジタルということが非常に重要でして、デジタル化することによって効率化ができる。

デジタルで溜まったデータを使っていかに効率的に違う副産物を作っていけるか、中間生成物が画像のデータだったり文字のテキストだったり。

今までは何度も何度もやり直して全く同じことを編集したりしていたんですが、アナログをデジタルにすることで効率的に印刷ができるということで、いかに効率化をお客さんに提案していくのかという仕事に変わっていった。

初めはエンジニアとして入社したんですが、その効率化をきちんとお客さんに提案していくという仕事に変わっていったというのはその先の流れになっているところで、単純な効率化だけではなくてデータベースをお客さんに持ってもらいましょうとか、そういう提案に変わっていくというのが私の最初の仕掛け作りになります。

石橋:
徐々にデジタル化されるような業務のところに、お仕事としても移っていくという感じなんですね。

朝田:
おっしゃる通りです。

電子ペーパーとの出会い。技術戦略部門への異動

石橋:
今はCVC部門の責任者というところになっていらっしゃると思うんですけれども、そこから責任者だと結構乖離があると思うんですけど、どのような経緯があるんですか?

朝田:
1990年代の後半になってくるとインターネットの普及が始まり、我々の事業のモデルも変えていくというタイミングになっていくわけですが、単純なお客さんの提案というところから、今度はそれに加えてデバイス側も大きな変化を果たしていくということになってくる。

我々もどういうビジネスを作る必要があるのかということになりまして、今度は事業部門の配属だったところから本社に異動になりまして、本社の技術戦略という、どちらかというと新しい技術の種を、いかにリサーチして取ってくるかという部門に配属になりました。

2001年のそのタイミングで、ベンチャーさんとの初めてのお仕事をさせていただいたのがE Ink Japan株式会社という電子ペーパーの会社になります。

実際にそこに投資をして、彼らの持つケイパビリティを日本でどう製造できるか、どう具体化して製品にできるか、というのが最初のお仕事です。

石橋:
朝田さんはCVC歴でいうと20年近いんですか?

朝田:
歴だけでいうと、ベンチャーとのコミュニケーションでいうと、電子ペーパーから有機ELのディスプレイに変わったり、アメリカのベンチャーさんとのコミュニケーションで、我々が足りていないところをどう補完するかという技術獲得のための投資が最初の仕事です。

石橋:
当時から今でいうCVC部門と言いますか、今みたいな組織図みたいになっていらっしゃったんですか?

朝田:
当時はあくまでも研究開発(R&D)の延長線上における、我々にないものをどう探しに行くかというリサーチ部門のミッションで、そこにケイパビリティがあればそれをどういうふうに取り入れるかということですので、そういう投資部門が別にあったわけではなくて、その共同開発とか製造のためにどうするかという手段としての投資をやっていたのが最初の仕事です。

創業121年、売上1.5兆円。多角化を遂げた事業ポートフォリオ

石橋:
今のご遍歴だけ聞いていても、凸版印刷さんが徐々に、それこそ最初は切り抜きをしてみたいなお話から、R&Dで海外であるとか先進的な技術を取り入れていってみたいに、事業ポートフォリオも変遷してきている会社なんですか?

朝田:
凸版印刷という会社そのものは1900年創業の会社で非常に古いんですが、もう121年も経っている会社です。

基本的に受託を続けて多角化をしてきた背景がある会社でして、基本的なお客さんから言われたものを愚直にお届けするということで多角化を遂げてきた会社でございまして、1.5兆円ぐらいの売り上げがありますが、その中の割合はだいぶ変わってきています。

大きくは情報コミュニケーションとメディア、マーケティングに近いパンフレットとかカタログを作る部隊だったりとか、あとICカードとか、パスポートに近いものとか、それらを愚直に作るというところが1つ。

それから生活産業と言われるパッケージを作る、包装フィルムを手掛けるものが1つ。

あとはディスプレイの変遷を辿ってきた中で、エレクトロニクスの営業利益が一番高かった。リーマンショックのタイミングでも営業利益が一番高かったのがエレクトロニクスになります。

そういった大きな3つの事業体の中に成り立っている。その事業体は少なくとも120年の中でお客さんから言われたことを愚直に作るということで多角化を遂げてきた会社です。

象徴的な多角化の例でいうと、パッケージがわかりやすいんですが、パッケージ1つもフィルムを作るだけではなくて、その中に充填して、例えばお客さんに届けるまでも実際に我々の事業としてやっているというのは、なかなか印刷会社の中でバリューチェーン、サプライチェーンを広げているという意味で、面白いかなというふうには思いますね。

石橋:
そういう変化と共に、当時はR&D部門の1つとして出資活動を始められていたという流れだったんですよね?

朝田:
そうですね。

低成長からの脱却。CVC設立に至った危機感

石橋:
そこからはどうステップアップというか、その文脈で経営がより多角化できてきたから、もっとそれを加速させていこうみたいな意思決定になったんですか?

朝田:
当時私が技術の部門に配属した時は、エレクトロニクスが偏重の時で、その多角化をどうするかということがメインなので、ディスプレイ関係の投資が多かった。

それに周辺のR&Dに必要なケイパビリティを取りに行くというものが多かったんですが、時を経ながら当然ディスプレイも変遷がご存知の通り、日本のメーカーを含めてなかなか難しい状況になっていきました。

我々もこのリーマンショック以降なんですけど、残念ながら売上が低成長で1%ぐらい、ずっと平均成長をしていた時期がありまして、このままだと多角化というより次の事業を自分たちでビルドしていかないと、そもそも我々の事業の存続性が危ういんじゃないかという議論がございまして。

単にお客さんに言われていることではなくて、お客さんのその先にどういうマーケットがあるかということを自分たちで手に取って設計していくという、そういうプロセスを持っていくということが重要なのではないかと。

今日の話のポイントなのかもわかりませんが、CVCという仕組みを持ちながらその先のマーケットを見る手段として、その方向性ということを答申させていただいたのが最初の力点になります。

経営企画部門から始まった1年間の調査活動

石橋:
CVCができた当初から朝田さんはCVC部門にいらっしゃったんですか?

朝田:
そうです。まさに経営企画部門ですね。

私がその後の技術戦略のところから、今は経営企画に移っているんですが、そのタイミングでいろいろなM&Aとか事業売買とかをやっていました。

エレクトロニクスの変遷があった後に危機感を含めて、今の麿という社長が経営企画本部の本部長だった時に私は直下におりまして、こういう危機感の中でどういうふうに先を見据えた投資活動、マーケティングを作っていくかをいろいろと議論をしました。

2015年から1年間ぐらいかけて、今の代表と一緒にいろいろな会社を訪問させていただいて、彼らがどういうR&Dをしているとか、どういう形で投資活動をしながら、事業の中に内包しようということをやられているかを、いろいろな会社を訪問させていただいて、勉強させていただきました。

ならば我々としては、こういう形でCVCの仕組みを作らないとまずいのではないかというお話をさせていただいて立ち上げた。そんな経緯です。

石橋:
なるほど。非常に分かりやすいです。

逆にそこまでのスーパーエンタープライズ企業の中では、そういう変遷でデジタル化の波をまさに乗りこなしていきながら、経営企画部門として代表さんと一緒にCVCを作っていったみたいなプロセスなんですね。

朝田:
おっしゃる通りです。

石橋:
ありがとうございます。

このまま行くと普通にどういうCVCなんですかみたいなことを聞きたくなってしまうんですが、今回は朝田さんの自己紹介と言いますか、どんなご遍歴で今に至るのかを伺ってまいりました。

第2弾の方で、朝田さんが責任者を務めていらっしゃる凸版印刷さんのCVC部門がどういうところなのかをお伺いしていきたいと思っておりますので、改めて朝田さん、次回もよろしくお願いします。

朝田:
よろしくお願いします。

【凸版印刷】大企業CVCの具体的な投資戦略を大公開!|スタートアップ投資TV

バランスシート投資でシード~ミドルまで幅広くカバー

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回も、前回に引き続き、凸版印刷株式会社 CVC部門責任者の朝田さんにご出演をいただいております。朝田さん、今回もよろしくお願いいたします。

朝田:
よろしくお願いします。

石橋:
前回は、朝田さんが1.5兆円の企業である凸版印刷さんの中で、どういうご遍歴で今CVC部門の責任者やCVCを設立されたのかをお伺いしてきました。

今回は、そんな朝田さんが責任者としてやっていらっしゃる凸版印刷のCVCはどういうファンドと言いますか、どういう投資活動をしていらっしゃるのかをお伺いをしていければと思います。

よくCVCだとシナジーであったりとか、ハンズオン・オフみたいなところであったりとか、いつもどういうラウンドの方々が中心になったりとか、どういう金額感で投資されることが多かったりするんですか?

朝田:
基本的には、バランスシートでの投資。年間予算を定めて、その中からの投資をさせていただいているというスタイルをとっています。それから実際に投資のステージということでいうと、シード・アーリーからミドルまで、基本的に投資をさせていただいているということでございます。

約50社に投資をしてきている中においては、追加投資しながらフォローでついていくという案件もやっております。ただ、基本的な初回の投資はシード・アーリーからミドル、この辺を中心にやっているというところですね。

全投資先と資本業務提携、ストラテジックリターンを追求

石橋:
先ほどバランスシートからとお話があったと思うんですけれども、そうなるとシナジーがメインになるんでしょうか?それともその純投資みたいなところの色合いも強いんですか?

朝田:
基本的には事業シナジーの創出、いわゆるストラテジックリターンをいかにちゃんとやっていくのかというのが大前提になりますので、約50社に我々は投資をしていますが、基本的には全ての会社さんと資本業務提携を結ばせていただいて実行に至っているという経緯でございます。

ベースメントは基本的にはストラテジックのリターンを得ること。ただし、6年間ぐらいかけてこの約50社積み上げてきていますけれども、3年ごとのスパンでストラテジックリターン、ファイナンシャルリターンのあり方、位置づけみたいなことも少しずつ重要業績評価指標(KPI)も含めて変化していかなければいけないタイミングかなということも思っています。

最初のタイミングはもちろんストラテジックリターンを得ながらやっていくということと同時に、社内への説明、アカウンタビリティという意味合いで、継続性を担保するためにファイナンシャルリターンがどうあるべきかということも、きちんと説明していくということが本当に重要です。

継続性の担保のための必要性という意味ではファイナンシャルは必須かなと、ここは改めて申し上げるポイントかなと思っています。

Morning Pitchから始まった、ソーシングの苦労

石橋:
第1弾で凸版印刷さんがどんな歴史を辿っていらっしゃるかというところを簡単にお話しいただいたんですけれども、ぶっちゃけで言ってしまうと僕自身もホームページを拝見してもシナジーがあるのかどうか、会社が大きすぎてわからないところがあるのかなと思ってしまって。

もはや起業家の方がご自身で考えるよりかは、凸版印刷さんのCVC部門の方にドアノックして聞いていくほうが早いんですか?どういうふうに普段はソーシングであるとかご縁を作っていらっしゃるんですか?

朝田:
古いところからいうと、本当に立ち上げ2015年とかこの部門を作る時は、3人ぐらいで立ち上げていますので、当時はMorning Pitchも朝7時から毎週行っていましたけど、レポートをさせるみたいなことは1年間ぐらいやっていました。

その後はソーシングのポイントになってくるかもしれませんけど、ファンドにも投資しながら領域を広げていくという活動をしながら、我々のプレゼンスを作っていくということをしながらというのが最初で。

初回、これもあるあるかもしれませんけど、1年目は投資の数が非常に少なくて、逆にいうと我々が本当に何ができる会社なのかということを説明するのが精一杯でして、1年目の投資は非常に数が少なかった。そこは苦労したところでもあるかなというのが最初ですかね。

そこは多分いろいろな形で経緯を経ていく中で、最初のCVCの中では通らないといけない道なのかなと。事業会社が投資ということで何をやってくれる会社なのかということを説明するという意味で、多分通らないといけない最初の壁はあるのかなという気がしますね。

少額投資検討会の新設で、45日以内の意思決定を実現

石橋:
なるほどですね。その事業シナジーを、純投資のキャピタルゲインというのはある意味大前提でありながら、事業シナジーをしっかり作っていくとなると、検討プロセスとかもそれなりに時間かかったりするのかなと。

場合によっては、CVCさんによってはもう業務提携が先に走っていてというケースもあったりするなとは思うんですけれども、凸版印刷さんの場合はどういう検討プロセスになっていらっしゃるんですか?

朝田:
基本的な創業のCVCという部門を作る最初のきっかけになったところも、今お話があったポイントも関連してくるんですが、我々、株式投資は全て、1円の投資でも全て経営会議あるいは取締役会にかけてやっていくということで、最低でも当時2015年のタイミングでいうと3~4ヶ月かけて役員も全部説明して回って段を繋げていて。

その時点で大体タイミングを逃すんですけど、我々からすると指をくわえて待っていないとけない大きな痛みだったわけですけど、それをまず変えないといけないところもありまして。

実際にやったのが少額投資検討会という別の仕組みを用意させていただいて、それを今までの取締役会の権限を委譲してもらうという形で、年間予算も含めてバジェットを整理させていただいたというのが我々の最初の取り組みになります。

それをすることによって、早いものですと1ヶ月半とか、海外の投資になってくると45日以内に、タームシートが来てから提出しないといけないというルールがほぼ内部的に決まっているようなこともございますので。

それに合わせていくためには、それぐらいに我々の中でも意思決定をしていかないといけないというのがありまして、そういう独立の仕組みを作ったというのがポイントなのかなと思いますね。

投資後は事業面とファイナンシャル面の両輪で支援

石橋:
今であれば少額出資検討会みたいなところもあれば、大規模な本来の検討プロセスもあると思うんですけど、それを経た上で投資をした後のコミュニケーションでいうと、いわゆる先ほど資本業務提携が大前提だというお話があったので、やはりハンズオン気味なのかなと思うんですけど、どういうふうなご支援活動みたいなところがあったりするんでしょうか?

朝田:
投資後の活動という意味でいうと、大きく2つかなと思っています。

1つはシンプルに、その時にかけた事業提携をどういうふうに追いかけてやっていくのかという仕組みで、いわゆる両者の中で決めたステアリングコミッティみたいなものを毎月やるのか、四半期なのか、いろいろルールがありますけど、その中できちんとその事業提携の進捗がどうなっているかということを擦り合わせさせていただくというのが1つ。これは事業面ということですね。

もう1つは単純にその対象会社さんとのファイナンシャルな部分でのお付き合いも見ないといけない。定期的に四半期にレポートをもらうとか、あるいは、半期か1年でもきちんと計画と予実をいただいて、それを管理するという意味でのお付き合いをさせていただくのがポイントになると思っています。

とはいえ、それだけだとなかなか、最近だとワークしないこともだいぶわかってきたので。

さらに踏み込んで、単純な我々目線だけではなくて対象会社にとってどういうバリューアップ支援できるかという意味合いで、直近に申し上げますと、数社に対して我々のメンバーから出向メンバーを送り込んで、バリューアップの支援をさせていただくということを昨年から実際にさせていただいています。

規定類整備から販路支援まで、具体的な支援内容

石橋:
先ほどの資本業務提携からの、本体からの事業連携でいうと、この会社さんだとこういう販売支援であるとか販路支援とか、何か分かりやすいイメージはお持ちですか?

朝田:
実際のところで話がある例でいうと、会社を作って間もないタイミングで規定類だったりとか、いわゆるインフラ面が整っていないような会社に、約50社に投資をした背景もありますので、どういう規定類を作らないといけないか、どういう契約を対外と結んでいかないといけないというレギュレーションがあります。

そのあたりのパッケージづくりをご支援することは、ある程度ケイパビリティを持っている人間がいますので、そこに実際にアサインさせていただいて、彼らの部分の工数をヘッジするというところは、少しお役立ちできるところがあるのではないかというところでご支援させていただく。

コンボへの出向事例:クリエイティブ能力の獲得を目指して

石橋:
例えばどういう投資先の方々が、そういう事例だったりするんでしょうか?

朝田:
実際に今動いている例でいうと、株式会社コンボ、我々の中でいうと非常に苦手としているクリエイティブの部分ですね。

デザインを実際にクリエイティブしていくというところに関しては、どうしても受託で長年培ったものがありますので、言われたものを正確に作ることはできるんですが、クリエイトして世の中に出していくという活動は非常に苦手としている会社で。

そのユーザーインターフェース、ユーザーエクスペリエンスを含めてどうデザインしていくか、このノウハウの獲得を目的としてコンボという会社に出資をさせていただきまして、その中の1つで先ほどあった立ち上げ、それをご支援させていただくために実際に出向させていただいているというのが1つございます。

石橋:
なるほどですね。ここで実際に凸版印刷さんの投資担当者、コンボさんへの投資担当者でいらっしゃる内田さんに今日は来ていただきまして、出向の実際の様子というのも変ですけど、どんな感じなのかみたいなところをお伺いできればと思っておりますので、ここで朝田さんから内田さんにスイッチしたいと思っておりますのでお待ちください。

投資担当者・内田氏が語る、出向の実態

石橋:
それでは、ここから凸版印刷 CVC部門の投資担当者の内田さんに来ていただいております。改めて内田さん、よろしくお願いします。

内田:
よろしくお願いします。

石橋:
先ほど朝田さんから、実際に凸版印刷さんが特定の投資先の方々に対して現場の方々が出向してまでご支援している。ある意味、ものすごいハンズオンのご支援なのかなと思うんですけど、実際どういう経緯で出向することになられたとか、具体的にどういうことを現場でやられてたりとかするんですか?

内田:
まず経緯で申しますと、コンボさんがスタートアップを作る、伸ばすというミッションの会社です。普通のベンチャーさんとは違うというか、コンボ自体も新しい事業を、領域を絞らずに作っていくという事業体です。スタートアップスタジオみたいな会社なんですね。

石橋:
聞き覚えがあります。

内田:
そうなってくると今までと違ってくるのが、技術を狙ったりとかビジネスモデル、市場を狙ったりというパターンではないので、私たち自身も課題でもあった事業をどう作っていくかみたいなグランドデザインの部分の能力、ケイパビリティみたいなところを身につけていく必要があるよねと。

そこは人が入ってこないとどうしても学べない部分が出てくるよねというところで、投資決定をする際に人材も一緒になってやっていったほうが良いのではないかというところで、出向も手を挙げて行かせていただいていると、そんな感じですね。

2年間の壁打ちを経て、自ら手を挙げた出向

石橋:
ご自身で手を挙げて、希望で出向したんですね。

内田:
経緯で申しますと、コンボの母体はクリエイティブファームの株式会社パーティーさんというところなんですが、パーティーさんと事業開発面でご一緒したいねというところは、コンボに投資する2年くらい前から実は議論していたんですよ。

コンボの構想自体も、パーティーのエグゼクティブの方と一緒に壁打ちを月次でやりながら作ってきたというのもあったので、じゃあ行くしかないねという感じで行かせてもらっている感じです。

石橋:
実際にどのくらい働いていらっしゃるんですか?

内田:
半分凸版印刷、半分コンボという感じですね。

石橋:
どういうタイミングで戻ってくるとかって決まっているんですか?

内田:
今は、毎週この曜日とこの曜日はコンボのオフィスで働くよと。凸版印刷のPCは置いておいて、コンボのMacBookだけを持ってみたいな感じでやっています。

立ち上げフェーズから深くコミット

石橋:
コンボの皆さんからしても、内田さんがハブになって凸版印刷さんとの連携であるとかシナジーというのはかなり効きやすくなっているんですか?

内田:
そうですね。本来そこを狙ってはいるんですが、現実でいうとコンボもまだできたばかりなので、今でいうと割合としてはコンボの立ち上げとか、凸版印刷に置いておいた事業の方が多いですかね。

石橋:
ある意味そこのフェーズからしっかりコミットしてくれるという感じなんですね。

内田:
そうですね。

石橋:
ありがとうございます。ここまでで凸版印刷さんがどういうふうに出向を含めて、投資先のサポートをしているか伺っていけましたので、改めて内田さん、ご出演ありがとうございました。

内田:
ありがとうございました。

ユニファへの取締役派遣、フレーベル館との販路連携

石橋:
朝田さん、改めましてお帰りなさいませ。

先ほど、内田さんからハンズオンというか出向も含めたご支援の方法を伺ってきたのですが、他にコンボ以外で出向とまではいかないまでも、こういう協業であるとか、投資事例みたいなことを何か教えていただければと思うのですがいかがでしょうか?

朝田:
約50社に投資をしてきて代表的な例でお話をさせていただければと思いますけれども、ユニファ株式会社という会社がございます。

この会社には、取締役を1名派遣しているということと、出向者も送るところまでステージが上がってきている会社です。

協業の接点が生まれたのは、ユニファさんは保育の部分でのIoTを生業としている会社さんで、保育園の中のDXをいかにして保育におけるペインを解消していくのかをメインにやられているのですが、彼らの持っているツール群だったりとかを、彼らだけでは販売網を1から作るのは非常に難しいというところでした。

我々のグループ傘下には株式会社フレーベル館という保育商社の会社がございまして、我々がフレーベル館さんとのコミュニケーションをサポートさせていただくことによって、円滑に販売というネットワークは彼らに提供することができたということで、実際に事業のシナジーで非常に具体化したということでは大きな事例かなというふうに考えております。

短期と中長期、ステージに応じた関わり方

石橋:
基本的には全ての会社は資本業務提携を大前提にされていらっしゃる中で、CVCとしてしっかり事業シナジーを活かしながら投資をされているという感じなんですね。

朝田:
ユニファさんの例でいうと、ステージがあるかなと思ってるんですよね。

我々が持っているケイパビリティをはめると短期的にシナジーが見えるというケースもありますし、中長期的に時間をかけていくことで、彼らもデータアセットが溜まった後に、次にどんな事業ができるかというステップがあるので、そのステップによっても当然我々の関わり方も変わってくると思います。

ユニファさんに関しては先ほどお話した取締役を送っているということでいうと、実は追加投資もさせていただいていまして、単純なマイノリティの投資を含めて、ギアを上げて投資も深く入れさせていただきながら、ご支援させていただいている代表的な会社になります。

石橋:
ありがとうございます。

凸版印刷さんの全体像を正しく把握するというのはなかなか難しいかもしれませんので、概要欄の方に凸版印刷さんのCVCの問い合わせ先ですとか、内田さんも途中で出ていただいているので、お2人のFacebook等のURLも掲載をさせていただいております。

ぜひ何か可能性あるのではないかと思われる方がいれば、直接ご連絡等お問い合わせいただければと思っております。

改めて朝田さん、今回ご出演ありがとうございます。

朝田:
ありがとうございました。

事業会社との対等なパートナーシップのためにやるべきこと|スタートアップ投資TV

時間軸のギャップを理解する――2〜3年先を見据えた提案を

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回も、前回に引き続き、凸版印刷株式会社 CVC部門責任者の朝田さんにご出演をいただいております。朝田さん、今回もよろしくお願いいたします。

朝田:
よろしくお願いします。

石橋:
前回は、朝田さんが率いていらっしゃるCVC自体のお話をいただいてきたわけなんですけれども、そもそもすでに約50社への投資をしていらっしゃって、投資業を始めてからいろいろな変遷があったかと思いますので、CVCで起こる問題あるあるみたいなところは全て経験してきていらっしゃるんじゃないかなと思います。

だからこそCVCでこういうことが起きやすいよね、じゃあ資本業務提携を事業会社と目指していきたい起業家の人はどういうところに気をつけるといいよね、みたいな逆説的な目線感で起業家の方に情報提供いただければと思っております。

改めて、起業家は事業会社と資本業務提携であるとか、出資を受けていく時に気をつけるべきポイントみたいなところはどういったところになるんでしょうか?

朝田:
我々も約50社を6年間やってきて、いろいろな壁がありましたので、私の話が一助になればと思いますが、実際に最初の3年間ぐらいで起こったことは、我々も投資活動の中で当然、その投資した後の会社さんと事業部門を紹介しながらやっていくことになるんですが。

事業部門からすると1.5兆円の中の9,000億円、例えば情報コミュニケーション事業部門からすると小さい損益計算書(PL)に見えてしまうことがあって。

彼らは、「明日のPL」で最も大きなバジェットを作ることが義務化されている中で、ベンチャーさんとのコミュニケーションがどういう形で彼らにとって響くかというと、なかなか響かない。

そこに時間軸という問題が潜んでいるかなと思っていまして、そこをきちんとタイムテーブルを引きながらお話をしていく。もう少し落として話をすると、そこにビジネスモデルも必要だと思います。

昨今ではBtoB SaaSがありますが、1つのアカウントを取りに行くのに、1人の人間が通って受注できるという金額もあれば、1回受注することによって継続的に受注に繋がっていくという、1回の受注ができることによって生まれる価値もあります。

このようなことをきちんとやっていくということが、事業会社にとってもメリットがあるんだよということを、本当にコミュニケーションの中では扱っていかなければいけない。

その辺は事業会社の方でも時間軸ということ、それからビジネスモデルみたいなこと、この2つは気をつけて話をしていくことが重要なのではないかなというふうに思いますね。

特にBtoBの大企業になると、明日のPLは決まった中で動かなければいけないという大前提がありますので、そういった目線でお話をいただくというのが重要だと思いますね。

石橋:
これから資本業務提携を目指そうとしているスタートアップの方は、もっとロングタームで考えていくべきという話になるんですかね?

朝田:
おっしゃる通りですね。短い時間軸の中で明日彼らに「こう動いてくれ」と言ってもなかなか難しいので、2〜3年先にこうなっているというゴール感を、いかにハンドシェイクできるか。

そこに向けてどういう活動が互いにできるかという話をしていくことがとても重要だと思います。

資本を入れるタイミング――ミッシングピースとムーンショット型の2つの投資スタンス

石橋:
なるほどですね。そうなると最初から資本って入れるべきなんですかね?

2~3年後の構想の実現に向けて、もちろん資本を入れてパートナーシップを組んでやっていくというのはすごく価値あることだと思うんですけど、長期スパンの中で先にお金が入ってしまうと、検証できないプロセスで始まってしまうような気もするんですけど、そこはどういうふうにご意見をお持ちですか?

朝田:
そこは2つあると思っています。出資をすることによって我々が分かるということもありますし、我々のストロングポイントがあって、それを提供することで彼らのストロングポイントがそこでわかるということもありますので、両方ともあるのかなと思います。

我々の場合は投資のスタンスで基本的にミッシングピース的な投資ということと、どっちかというとムーンショットという言い方をしますけど、業界を知るために少し遠いところに碁石を投げる投資をして、それをバックキャストする投資と、大きく2つに分けて投資の活動をセグメンテーションしているんですが。

その中でムーンショット型投資みたいなのは、投資しないとわからないわけですよね。

我々でいうと宇宙のような会社とか自動運転みたいなところは、我々がそのまま歩いていっても絶対に辿り着かない市場だったりするので、そこはあえて投資をすることによって分かる。

そこにおいてどういう事業のモデルが作れるのかということを、まさに時間軸を整理しながらやっていくことが重要なのではないかなと思いますね。

外注先ではなく対等なパートナーとして――エビデンスで信頼を勝ち取る

石橋:
なるほどですね。1つ目が時間軸に気をつけるみたいなところだと思いますが、2つ目として挙げるのはどういったところに気をつけるべきでしょうか?

朝田:
2つ目の問題も、先ほどの3年目の中で起きたもう1つの事象なんですけども、どうしても大企業の中においては、外とのお付き合いでいうと外注先・アウトソーシング先に見られてしまうというところがあって。

その会社さんに対して何ができるのか、何をしてくれるのかですね。このようなコミュニケーションがどうしても始まってしまう。

これに相当苦労しまして、同じ目線感で対等にその話に乗ってくれというのがまず最初に事業部にお願いしたところで、相当な時間工数をかけて、今の私のメンバーにもお願いをしながら、勉強会を開催したりですね。

ベンチャーとのコミュニケーションの中のあるあるかもしれませんが、そこをしっかりお願いをしながらコミュニケーションのあり方ということはしてまわりました。

そこは我々大企業からの目線からすると留意しないといけないことですし、そこは変わっていかないといけないポイントの1つなのかなと思いますね。

石橋:
逆に大企業側の視点でそういう問題が起きやすいとなると、「多分これ外注先と思われているな」みたいな場合に、ベンチャー企業の人たちとかスタートアップ企業の人たちはどういうふうに切り返したりとかコミュニケーションすると、うまくそれを打破できたりとかするようなアドバイスなんかありますか?

朝田:
一番は、エビデンスは重要だと思うんですよね。

こういう会社でこういう実績がありますとか、こういうことができていますということが、何よりも企業からすると、「この会社でこういうことができているんだ」「こういう実績があるんだ」ということは、我々が第三者で聞いてもそれはメッセージになると思いますので。そういうことに気をつけて話をされるというのはポイントなんじゃないかなと思いますね。

我々からすると、「A企業、B企業でこんなことがあります」「あ、そうなの」と目線感がだいぶそこで変わってくると思いますので、そんなことには留意されるというのが、シードを作る中のポイントなんじゃないかなと思っていますね。

弱みではなく強みを押し出す――法務・財務の粗探しを乗り越える方法

石橋:
ありがとうございます。3つ目みたいなところを最後にお伺いできればと思うんですけれども、いかがでしょうか?

朝田:
あともう1つ、これもあるあるで3年目の中に起こった1つでもありますけども、我々も大企業の中の法務部門・財務部門がありまして、当然ベンチャーということのコミュニケーションでいうと、今までの投資と同じように扱ってしまうというところがあって、どうしても弱みを見てしまったり、粗探しに入ってしまう。

そうして潰していくと、その会社のストロングポイントが消えてしまうということになってしまって、コミュニケーションが進まないということがあります。

大企業で我々意識しなきゃいけないことを、逆にベンチャー企業さん側からの部分では、ストロングポイントをきちんと説明するということが本当に重要で、そこに対してどういう価値があるか。

周辺で起きている弱みということは、我々がサポートすることによって弱みを消せるかもしれませんから、ストロングポイントをどう立たせることができるかみたいなことを、きちんと説明いただくというのが本当に重要じゃないかなと思いますね。

石橋:
場合によっては凸版印刷さんであればすでに6年のCVC歴の中で、メンバーの皆さんであるとか事業部門の方々も、そういうベンチャーの方、スタートアップの方とのコミュニケーションの取り方もだいぶよくわかっていらっしゃると思うんですけど。

最近CVCは新しく増えている中で、弱みばかり見られそうだなという時には、どういったところを押し出していくと強みをしっかり伝えられるみたいなところになってくるんでしょうか?

朝田:
当然技術的なポイントも強みがあるでしょうし、ビジネスモデルとしての強みということもあるでしょうし、経営陣という強みもあるでしょうし、いろんな視点での強みを押し出す部分があると思うんですよね。

そこをしっかり押し出すということで、弱みというのは得てすると会社の生業、例えば最高情報責任者がいないとか、情報セキュリティの問題があるとか、そういうあるあるな議論がいっぱいあると思うんですけども、ということに目が行きがちなんですが。

それよりもストロングポイントをきちんと説明することで、事業提携の柱になっていくと思いますので、そこをしっかりご説明いただくというのが繰り返しの説明になってしまいますが、ポイントかなというふうに思っていますね。

石橋:
ありがとうございます。今回、全3回を通じて、朝田さんにご出演をいただいているわけですけれども、今後CVCの方々を巻き込みながら事業成長していく、資本業務提携を活かしてやっていこうと思われる方も多く見ていらっしゃるかなとも思いますので。

ドアノックしてみて事業会社に話聞いてみたらめちゃくちゃマウンティングされるなとか、様子が違うという時は、ぜひ朝田さんの今日のお話をもう一度見ていただいて、事業会社さんとのコミュニケーションに活かしていただければ良いかと思います。

改めて、最後に全3回にわたりご出演いただきありがとうございます。

朝田:
ありがとうございます。