【既に6社のシードVCに出資!】ラクーンホールディングスのCVCの投資基準は?【ラクーンホールディングス 三原さん vol.01】

〇三原正大 株式会社ラクーンホールディングス 財務マネージャー
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祖業事業から広がる、EC×フィンテックのエコシステム

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。

この番組を見ていただいている、だいたい20%くらいの視聴者の方がベンチャーキャピタル(VC)・コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)業界の方なんですけど、おそらくその業界の方々、お顔を見たことある方とかオフラインのイベントで会ったことある方もいらっしゃるのかなと思いますが、株式会社ラクーンホールディングスの財務マネージャーの三原さんにご出演いただきます。三原さん、本日はよろしくお願いします。

三原:
よろしくお願いします。

石橋:
まず1話目は、ラクーンホールディングスさんがそもそもどういう会社で、どういうCVC活動をしていらっしゃるのかというところをいろいろとお話をいただければなと思ってはいるんですけれども、ラクーンホールディングスという社名を聞いたことがある人は、そこまでいらっしゃらないのかなとは思っているんですが、改めてどういう来歴でどういう事業をやられている会社さんなんでしょうか。

三原:
ラクーングループと言っているんですけれども、事業会社としてやっていまして、サービスとしてはtoB、主にはスタートアップ、あとは中小企業(SMB)をターゲットにしているんですけど、そこにEC事業・eコマース事業、あとフィナンシャル事業・フィンテック事業をやっている事業会社でして。ホールディングス自体は持株会社で、東京証券取引所プライム市場に上場している会社なんですが、その下に事業会社が3社ぶら下がっているという企業グループでございます。

eコマース事業としては、こちらは祖業になるんですけど、スーパーデリバリーという卸売のECプラットフォーム、簡単に言うと仕入れサイトですね。イメージしやすいのが、楽天市場のBtoB版みたいな形で。

メーカーさんと小売店さんをつないでいるみたいな、そんなサービスになっていまして、国内でももちろんやっているんですが、結構海外が伸びています。いわゆる越境ECの部分ですね。今、海外134カ国に使っていただいているような、そういったサービスになっています。

石橋:
日本のメーカーさんが海外の小売店さんとか飲食店さんとかに卸売をするっていう、そういう越境なんですか?

三原:
そうですね、あくまで輸出というところで、メーカーさんは国内のみっていう感じですね。

石橋:
へー、なるほどですね。それが祖業でいらっしゃって、2番目の事業で言うとどの事業なんですか?

三原:
そちらがフィナンシャル事業になるんですけど、スーパーデリバリーは卸売で、卸売をやっていると当然後払いというのが日本の商慣習的にあるので、最初はスーパーデリバリー内で対応していたんですけど、どうやら他の業種、スーパーデリバリーは主にはファッション・雑貨というところになるんですが、他のジャンルでもニーズがあるなというところで、それだけを切り出して新たなビジネスができないかなと。

そこで2010年にPaidという後払い決済、簡単に言うと請求データさえ頂ければ請求書の発行・発送・回収とか、回収リスクも含めて代行します、みたいなサービスを始めました。

石橋:
2010年って結構早いんですよね。類似のサービスっていくつかあるのかなと思いますけど、かなり早い方のプレイヤーだったっていらっしゃるわけですか?

三原:
そうですね、一番最初に始めたというところが強みです。

石橋:
最後の3つ目になると、どういう事業になるんですか?

三原:
3つ目で言うと、URIHOという売掛金の保証サービスをやっていて、ちょっとPaidとも関連するんですけど、2010年にPaidを始めたタイミングで合併と買収(M&A)をしまして、どういった会社さんかというと、ノンバンクの審査をやっていた事業部門を買収したという形なんです。

もともとスーパーデリバリーはファッション・雑貨というお話をしましたが、その他の与信ノウハウがなかったので、外部からノンバンクの、それこそ本当にちょっと言葉が悪いですけど、レイヤーの低いというか、ちょっと与信リスクがあるというところの会社さんのデータを買ってきて、Paidを始めて、URIHOも一緒に始めたというか、引き続きやっているという形です。

2018年の持株会社化が転機、中期経営計画と連動したCVC戦略

石橋:
なるほどですね。そもそもどういう背景とか、どういう狙いがあって、CVC活動みたいなものを、もちろんM&Aってところでさっきキーワードが出てきましたけど、どういう背景があってからだったんですか?

三原:
弊社がラクーンホールディングスという形で持株会社化したところからがスタートになるんですけど、2018年に持株会社化、いわゆる持株会社があって子会社がぶら下がるっていう形にしているんです。

石橋:
約5年ぐらい前ですね。

三原:
そうですね。それぐらいで始めたんですけど、各事業会社の裁量をもって機動力高くやっていくというのもあるんですが、もう1つは新規事業を生んでいきやすくなる。

子会社をぶら下げやすくなるとか、そういったところも狙って始めたというところで、そこがきっかけで新規事業をやっていく上で、手段の1つとしてM&Aだったり出資というところがあるので、本格的に動き出したのがきっかけです。

石橋:
上場企業さんですと中期経営計画ってものもあると思うんですけど、そういうところでも紐づいた戦略になってらっしゃるんですか?

三原:
具体的な動き方としては中期経営計画に紐づいていて、ちょっと簡単にお話しさせていただくと、今は中期経営計画中で、今期が2年目で来期が最終年になるんですが、簡単に言うと今は既存事業に注力します。

なので、今やっているEC事業とフィナンシャル事業をしっかり伸ばしていこうというフェーズで、その中期経営計画の中に、じゃあ次の中期経営計画で何をするのかという話も言及しているんですが、そこではその既存事業で得たノウハウとかを生かして新たな事業をやっていこうというところがあるので、投資に関しては、今は既存事業に注力するというところで。

当然そこの周辺領域、EC事業、フィナンシャル領域に関してやっていくんですが、正直そこまで積極的にやれていないという現状があって、次の中期経営計画でしっかりやっていくという中で、今はその情報収集とか、本当に良いところがあれば引き続き検討しているんですけど、有限責任組合員(LP)出資させていただいて情報収集とか、そういったところをメインに今動いているという感じです。

投資目的は2つ──サービス認知とシナジー創出

石橋:
最後の方で触れていただいたLP投資、いわゆるVCファンドに投資をすることをLPと呼ぶと思うのですが、改めてラクーンホールディングスさんのCVCの戦略で言うと、足元で言うとどのような方針で、どのようなVCに投資をしていくのかも含めて、どんなイメージでやっていらっしゃるんですか?

三原:
投資目的というところで、目的は2つあって、1つは我々が提供しているサービスのターゲットがスタートアップさんだったりするので、我々のサービスを売っていきたい、認知を向上させていきたいというところが1つ。

もう1つが、新規事業を生んでいきたいというところでのM&Aだけじゃなく、業務提携も含めてやっていくというところが戦略です。

石橋:
直接投資の場合だと、すでにこういうところの投資をしていらっしゃるとか、こういう狙いとか、場合によってはこういう背景・相性があるからやっていらっしゃるというところ、例えばどういう会社さんがいらっしゃったりするんですか?

三原:
今の中期経営計画でいうと、なかなか直接投資ってやりづらい。

石橋:
本体事業の集中するタイミングですよね。

三原:
そうなんですよね。やりづらい中でも、今期は1社、直接投資させていただいてて、ソーシャルインテリアさんというレイターで出資1%ぐらいという感じなんですけど、出資をした理由としては、本当に事業シナジーというところで、もともと事業的に一緒にやっていまして。

石橋:
ソーシャルインテリアさんって知らない方もいらっしゃるかもしれないので、改めてどういう会社さんなんですか?

三原:
家具のサブスクをやっている会社で、家具って当然金額が大きいので、1回買っちゃうとなかなか処分というか、動かしづらいとかあると思うんですけど、ソーシャルインテリアさんがサブスク化することで月額で支払って初期投資を低くさせられる。

あとは飽きてしまったら途中解約することができる、そんなビジネスモデルの会社さんです。

石橋:
どういうところでシナジーとか相性があって、これは行けるなって思ったんですか?

三原:
ソーシャルインテリアさんは家具を仕入れて、それを貸すというか、サブスクで提供するというビジネスモデルで、初期投資が結構必要なんです。

石橋:
仕入れてますもんね。

三原:
仕入れているのでお金が必要というところで、資金調達が結構肝になってくるんですけど、そこでまさに我々と一緒にやっていて。

流動化という形でファンドスキームでレンダーから調達するというのを組んでいたんですけど、当時ソーシャルインテリアさんはそこまで与信がなかったので、なかなかソーシャルインテリアさん単体だと貸せない事情があったので、我々がソーシャルインテリアさんと借り手というか、そこの保証に入ることでレンダーさんが貸しやすくなるというスキームでご一緒させていただいたというのがスタートです。

石橋:
ソーシャルインテリアさんにとっては資金調達スキームをより強化するためにラクーンさんに入っていただいて、入っていただいたからできるファイナンススキームを実現しているという感じですね。

また中期経営計画が切り替わったタイミングで、より直接投資の裾野を広げていこうかなというのがタイミングなんですね。

三原:
まさにそこのためにLP出資を積極的にやらせていただいて、情報収集とか、キャピタリストさんがどう考えているとか、そういったところを学ばせていただいているタイミングです。

本期6社に投資、「ウマが合うか」を重視したVC選定

石橋:
今まさにリリースでも出していただいてますけど、Gazelle Capital自体にもラクーンさんからLP投資をいただいているかと思いますが、LP投資は今期・昨年でいうと、どういう方針で、どういうVCさんに入れていったという感じなんですか?

三原:
1つとしては、まず情報収集というところが肝になるので、そうなると、じゃあ大きいVCさん、情報いっぱい持っているVCさんに入れようって普通はなると思うんですけど、そうじゃなくて、キャピタリスト単位で逐次コミュニケーションが取れて、情報収集できる関係性が築けるかというポイントを大事にしていたので。

今は弊社の投資の担当って僕と担当役員の2人でやっていて、窓口は基本、私しかいないので、すごく横柄な言い方をすると、私とウマが合うか、みたいな。本当にそこの部分でやらせていただいたというところです。

あともう1つとしては、Paidというサービスが今スタートアップによりウケているサービスなんですけど、Paidを売ってもらうというところの中で、シード期の方に使っていただいた方がいい。理由としては、レイターになるとスイッチコストがあったりとかして。

そうなるとシードVCの方々に対してリレーションを作りたいなというところで、そういった基準でLP出資をさせていただいています。

石橋:
シード期の投資をされていらっしゃって、ちゃんと担当者と連絡取りやすい。そもそもあんまり連絡取らないVCさんもいますもんね。

三原:
結構多いですね。

石橋:
そういう方針でやってらっしゃる方もいますしね。それも含めて、多分三原さんと合う合わないっていうのもあるんだと思います。

直近だと何ファンドぐらいに投資されたんですか?

三原:
今期で言うと6社です。結構びっくりされます。

石橋:
弊社以外ではどういうVCさんに投資されたんですか?

三原:
羅列させていただくと、LAUNCHPAD FUNDさん、New Commerce Venturesさん、クオンタムリープベンチャーズさん、ANOBAKAさんの生成AIファンド、エッグフォワードさん。あと御社さんです。

石橋:
今後で言うと、変わらずシード向けのファンドで、担当者がちゃんとコミュニケーションできるところ、というのが変わらず大前提になっていくんですか?

三原:
そこは変わらずやっていこうかなと思っていて、一旦今期、新たな試みってところもあったので一気にガンとやらせていただいて、来期以降は追加出資とか新規も当然考えながら安定的にやっていこうかなってところです。方針は特に変える予定はないですね。

次期中期経営計画で本格化する直接投資、連絡はFacebookから

石橋:
改めてラクーンさんはどういう背景でCVCやっていらっしゃるとか、今後その中期経営計画に伴ってだいぶまたラクーンさんの直接投資の方も色変わってくると思いますし、場合によってはそのM&Aってところもスタートアップと相性がいいところであれば積極的にやられていかれるのかなと思うんですけど、インベスター・リレーションズを見ていくといろいろまたラクーンさんの方針がよくわかるって感じなんですか?

三原:
そうですね、そこは逐一出していこうかなと思っています。

石橋:
もしこの動画を見ていただいて、直接何かお話したいとか、業務提携であれ、資本提携であれ、連絡したいという場合は、どこから連絡するのが一番良さそうですか?

三原:
私、Facebookもやっていますし、そこが一番早いかなと思います。そんな形で直接ご連絡ください。

石橋:
動画の概要欄の方ですね、三原さんのプロフィールの方にFacebookのURLも記載をさせていただきますので、ぜひそちらの方からご関心がある方はお問い合わせいただいても大丈夫ですし、おそらくこの動画が出る頃にはですね、新しい弊社のサービスで資金調達の窓口っていうサービスが始まっているはずなので、そこからお問い合わせいただいても三原さんたちにおつなぎすることもできるかなと思っております。

それでは第2弾では、三原さんご自身はそもそもどういう人なんだっけ?と。これも含めて「僕と合うファンドには投資している」みたいなお話もあったので、サブのサブの基準ではあるとは思うんですけれども、お話しいただければと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

【3億投資の重大性がわからず…】今の投資方針の元となった4年前の失敗エピソードと三原さんの意外な経歴とは?【ラクーンホールディングス 三原さん vol.02】

バーテンダーから財務の世界へ、異色のキャリア

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。

今回も前回に引き続きまして、株式会社ラクーンホールディングスの財務マネージャーの三原さんにご出演をいただいておりますので、三原さん今回もよろしくお願いします。

三原:よろしくお願いします。


石橋:第1話ではラクーンホールディングスさんがどういう会社なのか、かつどういうCVC活動をしていらっしゃるのかお話いただきましたが、財務マネージャーという肩書きでいらっしゃる三原さんがどういう人なのかというところを全く触れてきませんでした。

改めてどういう来歴なのかを、いろいろとお伺いをしていければと思うのですが、プロパーでラクーンさんに入られて、ずっと財務・経理にいらっしゃるのか、会計やアカウンティングの会社にいらっしゃって今に至るのか、どういうプロセスを経て今そのCVC担当になられてらっしゃるんですか?

三原:
まずラクーンに関してはプロパーではなくて、中途入社で入ってるんです。

石橋:
何年目でいらっしゃるんですか?

三原:
今は8年目となっています。最初は大学卒業後に結構特殊だと思うんですけど、バーテンダーやっていまして。

石橋:
社員さんとしてバーテンダーしてたんですか?

三原:
はい、社員として入ってまして、比較的大箱の飲食店に入ったのですが、学生時代からずっとやってて、人と話すのも好きだし、お酒も好きだし、あと自分の店を持って、のんびりやりたいなっていう。

当時、就活とかやってると、みんな同じこと言って、スーツ着るみたいな。今考えるとちょっと愚かなんですけど、嫌すぎてバイトの流れでそのまま就職したっていうのが最初ですね。

石橋:
結構しばらくバーテンダーをやってらっしゃったんですか?

三原:
そうですね、3年くらいやってまして。

石橋:
結構しっかりやってますね。

三原:
大学から言うともう7年。

石橋:
そこからどう経営企画とか、そういう財務マネージャーとか、結構現場からそれって離れすぎてるじゃないですか。どう間が埋まっていくんですか?

三原:
バーテンダーで先ほど店持ちたいって話してましたけど、実際に社員として裏方も含めてやっていくと結構大変だし、年齢が上の人を見ていてもなかなか家族がいると大変であったりとか。

お店が六本木とか大手町とか日本橋とかで、外資系の金融マンとか結構イケイケの人が多くて、価格帯も結構高めだったっていうのもあって、そういう人たち見てると「毎晩お姉ちゃん連れていいな」みたいな。

20代前半なんで。っていうのもあって、転職をちょっとずつ考え始めて。

不動産ファイナンスで専門性を磨いた20代

三原:
次に、僕の機会として不動産デベロッパーに行くんですけど、そこで財務をやるんですけど、その不動産デベロッパーの社長がバーのお客さんだったんですよ。

不動産は、全然興味なかったんですけど、本当にこのまま相談したんです。「華やかな金融系で羨ましいんですけど」みたいな。

と言ったら、その社長が「不動産ってめっちゃデカい金が動くから」って。「これはまじで面白い」という感じで不動産デベロッパーに2社目は転職しました。

石橋:
それだけ聞くと営業マンやインセンティブの世界で生きててもおかしくなさそうなイメージの話なんですけど、デベロッパーさんの財務部門に入られたってことですよね?

三原:
最初は営業をちょっとやってたんですけど、もともと金融関係の仕事をやりたいみたいな漠然としたものがあって入ってるので、すぐ配置転換という形で財務に異動した。

具体的には不動産のプロジェクトのファイナンスというところで、マンションとかホテル建てる時の資金を銀行から借りてくるみたいな、そういったのがメインでやってました。

不動産のファイナンスは特殊で、その不動産がどれだけ儲かるかとか、結構ニッチなところというか、ラクーンに入ったのが29歳の時なんですけど、30歳になって専門性を磨くってなった時にこのままでいいのかっていうふうに思って。

でもやっぱり財務とか結構向いてるなっていうのはあったので、あと上場企業の、もっとコーポレートファイナンス寄りの、資本政策とか、そういったことをやっていきたいなと思ってラクーンに入ったっていう感じですね。

29歳でラクーンへ、そしてCVC担当に

石橋:
ラクーンさんに入られてからすぐまた財務部門に移られて、最初は会社自体の資金調達とかそっち系をやってらっしゃったんですか?

三原:
おっしゃる通りで、会社として必要なお金を銀行とかから調達していく。あとはエクイティファイナンスどうするのかとかを考えるというところですね。

石橋:
その中でどういう流れでCVCというか、そっちのこともやっていこうぜというふうに、なかなかそういうのを取り組んでいらっしゃらない事業者の方がまだまだ多いのかなと思う中で、三原さんがアサインされていくのはどういう背景だったりするんですか?

三原:
財務をずっとやってて、経営企画部っていう、まさにグループの予算、事業会社の予算だったり、そういったことをやっていく部署に異動になったんですけど。

その時にちょうど持株会社化、ラクーングループがラクーンホールディングスをトップに事業会社を分けていくっていうところで、投資をやりながら新規事業を生んでいくっていう戦略が出た時に、投資とかそういったことをやったことがある人が1人もいなくて、本当に誰もいなくて。

「近いことをやっているのが三原だよね」みたいな感じで、消去法的な感じですね。経験があったというよりは、そこからですね、投資をスタートさせたのは。

石橋:
一番最初に三原さんご自身がこの界隈と出会ったのは、どういうところが入り口になっていったんですか?

三原:
最初はM&Aをやっていこうっていう中で、ラクーンレントっていう弊社の家賃保証をやっている事業会社があるんですが、そこはM&Aで買わせていただいて。

スタートアップではなく中小企業という感じなんですけど、M&Aやっていこうっていう中で、既存の事業じゃなくて新しいことをやっているような、まさにスタートアップですね、に対してマジョリティで出資できるような先を探していこうみたいな方針というか、なんとなく出て。

まだ界隈と深く関わってたわけじゃないんですけど、なんとなく調べた中でシードに投資する機会があったんですけど、そこからっていう感じですね。

シード投資3億円の失敗から学んだこと

石橋:
第1話のお話だと、今期で6ファンドに入れてらっしゃると思うんですけど、そういうファンドさんとのお付き合いとかもきっかけになったりはしてたんですか?

三原:
ちょっとシードのその投資の話させていただくと、そこにマジョリティ目線で出資させていただいて、結論から言うと2019年に出資して、2021年に清算になっちゃった。

石橋:
結構強めのエピソードですね。でも全て公開情報ですかね。

三原:
公開情報なんで大丈夫なんですけど、シードにうち3億円入れたんですよ。

石橋:
シードにマジョリティ投資するスタンスで投資したんですかね?だから3億円ですよね?

三原:
シードに3億円って結構パワーワードだと思うんですけど、バリュエーションでマジョリティ取るにはこれが必要だとなって3億円って弾いたからやったっていう感じなんですけど、もっとやれることあったなっていうのがあって。

やっぱりシードに3億円っていうのがでかいことだっていうのが分かってなかったんですよ。「当然でしょ」みたいな。「ビジネスモデルも面白いしいける」と思って、3億円の重大さわかっていなかった。

あと、これがVCのLP出資につながるんですけど、リファレンスチェックではないですが、今例えば私が直接投資をやるとなったら、石橋さんに「この会社さん知ってます?」みたいに絶対に聞く、それで絶対に何かしら言われる。

石橋:
ポジティブもネガティブもみんな忖度しないで言いますからね。

三原:
シードで失敗はしたんですけど、まだ引き続きやっていきたいっていうのはあるので、今は土台固め。

同じミスをしないために、キャピタリストさんの考え方とか投資基準みたいなのを学ぶ上で、積極的にLP出資をさせていただいているという感じです。

石橋:
一番最初がLAUNCHPAD FUNDさんにLP投資されているというのが一番最初ですよね。

直接投資でシードに3億円投資された後にLP投資も始めていこうという順番で、今そこが一通り終わって、来年再来年どういうふうになっていくんだ、っていうところで、まさにって感じなんですね。

三原:
そうですね。

30万社の顧客基盤を活かした協業戦略

石橋:
全然違う畑から始まって、徐々にご縁で「投資っぽいことをやっていたのは三原しかいないからやるでしょ」みたいなところでスタートアップ部門もやられることになって2、3年は経たれるのかなと思うんですけど、界隈のことが見えてくる中で、個人としてはどういう思いでやってるとか、こういうことを今後はラクーンさんの関係も活かしながらやっていきたいなことなど何かありますか?

三原:
まずラクーンの経営理念としては、「企業活動を効率化し便利にする」っていうのを言ってるんですけど、中小企業の方が企業活動をするときにインフラになりうる、「まずはラクーンのサービスを使ってみよう」みたいな、そういったことを提供していきたいなと思っていて。

その根本としては、大手企業と中小企業があって、当然リソースも違うなかで大手企業が有利なのは当たり前なんですけど、そこの差をちょっとでも埋めたいっていうところがあって。

中小企業の方が適切な努力をすればちゃんと報われるみたいな世界観を作っていきたいっていうのがベースにあるんですけど、その中で今我々がEC事業・フィナンシャル事業で、中小企業の方、今だいたい30万社ぐらいお客さんがいる。

その方々に対してもっといろんな何かをやっていこうという時に、EC・フィナンシャルだけじゃなく、もっと違う、例えば広告なのか分からないですけど、そういったプラットフォーマー的な動きをしたいなというふうに思っているので、それを我々だけで実現するのはなかなか難しいので、そういう意味ではスタートアップの方と共創。

石橋:
30万社も、やっぱりSME(中小企業)の方中心ってことですもんね。

その領域から特に一番最初の1歩目、2歩目は相性のいい方々と組んでいくって可能性も改めて高そうですよね。

三原:
そうですね、もう十分あり得ると思います。

余生はバーで。長期的なキャリアビジョン

石橋:
三原さんご自身の中長期のキャリアで言うと、やっぱり飲食店とかバーは個人としては「チャレンジしようかなー」っていうのがあるんですか?

もともとバーテンダー出身でいらっしゃると思うんですけど。そこはもうなくなっちゃったんですか?

三原:
長期的には引退した後とかに、自分の物件の1階にバーを設けて、もう営利目的じゃなく、友達だけ招いてやるみたいな、余生を過ごしたいなと思っています。

石橋:
いまだに結構お酒も好きでらっしゃる?飲むのも、作るのも、集めるのも好きなんですか?

三原:
ああ、そうですね、もう全般好きで。今も飲むのが大好きですからね。そういう意味でもこのスタートアップ界隈の方々の飲み会など。

石橋:
コミュニケーションが多いですよね。

三原:
多いので、それも楽しいなっていう。

石橋:
ぜひ動画見ていただいた方、もちろん三原さん個人に対してのご関心のところもそうだと思いますし、第1弾のラクーンホールディングスさんについてのお話見ていただいて関心を持った方もですね、概要欄の三原さんのFacebookのURL等から、もしくは資金調達相談の窓口っていうサービスから、「三原さんと飲みたい」っていう人はコミュニケーションを取っていただいて。

それをきっかけにラクーンさんとのつながりであるとか、三原さん個人とのつながりを作っていただいて、直接投資、場合によっては業務提携、ないしはラクーンさんのやられているサービスについてまたお話を詳しく聞いてみていただいたらいいんじゃないかなと思っております。

第3弾ではですね、もうちょっと掘り下げまして、ラクーンさんが今まさにどういうふうにスタートアップの方々のインフラになり得るようなサービスをやっているのか、どういう課題をスタートアップに対して解決してくれていらっしゃるのかみたいなところをちょっと深掘りしてお伺いしていこうと思っておりますので、また次回もよろしくお願いします。

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SMB向けスタートアップが抱える「未回収リスク」の実態

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。

今回も前回に引き続きまして、株式会社ラクーンホールディングスの財務マネージャーの三原さんにご出演をいただいておりますので、今回もよろしくお願いします。

三原:
よろしくお願いします。

石橋:
第1弾ではラクーンさんのCVC活動についての話、第2弾ではバーテンダーからキャリアが始まってシードで3億円の投資をした三原さんの自己紹介の話をいただきましたが、第3弾ではラクーンホールディングスさんがPaid for Startupsというプログラムでスタートアップ向けに、Paidさんのプラットフォームを解放されていらっしゃるのですが、その話をいろいろと聞ければと思っております。

Gazelle CapitalのファンドにもLP投資をしていただいていると思いますが、僕らのファンドは既存産業×インターネットで創業期のスタートアップに投資をさせていただいているんですね。スモールビジネス系のお客さんの課題を解決するtoBのソリューションを持っているようなスタートアップが結構いっぱいいるんですよ。

あるあるとして耳にするようになってきたのが、うまいこと契約してくれました、役務提供が始まりました、請求書出したらなんか払ってくれないとか、払ってはくれるんだが月末になって着金してない、着金確認をしてリマインドしてようやく支払いをしてくれる、もしくは揉めるとかちょこちょこ出てくるようになりまして。

やっぱりSMBの方々をお客さんにしてると一定数はそういうケースっていうのを耳にするなーっていうのが改めて思ってるんですけど、見ている起業家の方の中にも共感してくれる方もいらっしゃるのかなと思うんですけど、まさにPaidさんだと請求したけど払ってくれないっていうところの課題はまさに一番解決できるようなソリューションなのかなと思うんですけど、改めてどんなイメージになったりするんでしょうか。

三原:
Paidっていうサービス自体が請求書での請求の代行サービスというところで、石橋さんおっしゃっていただいたとおり未回収リスクを保全するというところは一番の強みとして提供しているサービスですと。

新しい取引先に対してサービスを提供するのはちょっと怖いじゃないですか。よくわからない先というか、SMBであればなおさら。「そういうところを気にせず取引開始できますよね」って言っていただいたり、意外にあるのが支払期限までに支払ってくれないと経理の方とかが電話で督促しなければいけないみたいな、「あれがなくなってよかった」って話が意外に多くて。

未回収に困ったらPaidがあればっていう感じで使っていただければなというふうに思ってます。

審査通過率95%を実現する「企業与信」の仕組み

石橋:
請求書による請求代行とかだと他にもPaidさん以外にもいくつかのサービス、スタートアップがそういうサービスやってるケースもあると思うんですけど、決定的に違うのってのはそれを保証してるっていうところになるんですか?

三原:
おっしゃる通りで、保証までしてるサービスっていくつか競合はいらっしゃるんですが、うちの大きな強みとしては2つあって、企業に対しての保証なんですね。

他の会社さんってトランザクションに対する保証っていうところで、1取引ごとに審査が入るんですけど、うちは企業に対しての与信になるので、その企業さんが例えば100万円与信つけますとなったら、100万円以内であれば審査なしで使えるっていうパターンなんで、そこはシームレスにいけるっていうところ。

もう1つ強みとしては、中小企業に対してスーパーデリバリーという祖業事業から言うともう20年以上やっているので、そこのトランザクションデータがすごくあるので、簡単に言うと他の会社よりも与信額が出せる。

そこは多分相当強みだと思っています。よく言われるのが、大手のクレジットカード会社というかそういった金融業界の会社さんに審査を通すと全体で20%ぐらいしか審査を通らなかったりするんですけど、でも弊社で審査すると95%通りましたみたいな。

逆にザルなんじゃないかと思いましたけど、実際デフォルトがゼロだったりとかもするので、そこにすごく強みを持っているサービスかなというふうに思います。

キャッシュサイクル1ヶ月改善で成長を加速

石橋:
僕がSMB向けのtoBのスタートアップをやっているとして、Paidさん使っていて、未払いが起きたら保証してくれるってことになるんですよね。

三原:
そうです。

石橋:
保証とか請求代行のところのメリット以外のところのソリューションとしての特徴ってあられるんですか?

三原:
請求業務の効率化っていうところで、請求データさえいただければあとは請求書の発行とか発送とか未回収のところ全部やるので、そこが楽になるというところで営業とかシステム開発に注力いただけるっていうところ。

資金繰りの支援もさせていただいていて、1月末に請求を締めて2月末まで払ってくださいという請求書があるとすると、当然2月末で資金回収できると思うんですけど、Paidであれば1月末に締めて3営業日後に支払うということができるので、約1ヶ月のところの資金繰り改善にも使えるかなっていうところです。

石橋:
確かに。キャッシュサイクルがめちゃめちゃ良くなる。toBもそうかもしれないですけど、サブスクやeコマース系の事業者さんにとってもかなり資金繰り改善で、もっと早めに広告宣伝費が使える感じにもなってくるってところなんですかね。

三原:
おっしゃる通りで、Paidが受けている業種で一番強いというか、大きなEC事業者さんですね。やっぱりそういったところで資金繰りどんどん回していって、マーケティング費に使うみたいな。

IPO準備企業にも選ばれる理由

石橋:
最近お客さんやユーザーの人たちからの声で、こんな面白いインサイトがあったとか、プラスαのメリットなどあるんですか?

三原:
最近スタートアップの方によく使っていただいている中で、皆さん新規公開株式(IPO)を目指されていると思うのですが、この前IPOを専門にやっている監査法人のパートナーの方と話す機会があって、Paidを入れている方が結構いると。

レイターといえどちょっと不正疑惑があったり架空請求だったりとか、そういうところをPaidを使ってればないよねっていうところで、未回収がないこと、資金繰りがいいことっていうのもプラスに見えるので、そこの視点は最近スタートアップさんに使われ始めてあるインサイトだったな思います。

石橋:
確かに、不正とかヒューマンエラー自体が防げるっていうのが、上場を目指しているからこそなおさら付加価値としても出てくるところなんですね。例えば代表的なところというか、どんな会社さんが使ってらっしゃったりするんですか?

三原:
Saleshubさんだったり、Chatworkさんだったり、クラウドワークスさんとか。

石橋:
クラウドワークスさんは請求が多そう。

三原:
多いですね。請求が多い会社にはすごく響くところです。

石橋:
Saleshubさんは顧問のスーパー拡張版みたいなビジネスモデルですよね。リード獲得したいスタートアップや企業の人がいて、いろんなtoBを紹介できる個人事業主の軍みたいなものを束ねていらっしゃって、マイクロ顧問みたいな人たちがいろんなリードを作っていって、そうすると無尽蔵に請求業務出ますもんね。

三原:
Saleshubさんに関しては創業当初から使っていただいて、すごく支援できたなという感覚はあります。

アーリーステージこそ導入すべき理由

石橋:
ちょっと怪しいかなっていう事業者さんの相手でもPaidさんの与信が通ってしまえば、安定的にお金の保証が受けられて安心して取引できて、懸念も心配もなくなってくる。

断られる時はどんな理由が多いですか?そんなデメリットがあるようなお話には聞こえなかったんですけど、合わないなっていう人ってどんな人になるんですか?

三原:
スタートアップさんでいうと、レイターで請求業務を既にいっぱいやっている時に、いきなりPaidですってなると、支払い側にPaidの請求書が行くので振込先も変わっちゃうので、既存の取引先に使いづらいサービスではあるので。

これから請求が伸びてくるアーリーステージの方に入れていただいて、まさにSaleshubさんそうですけど、最初から入れていただいたので今あれだけあっても全然対応できる。レイター寄りの方にはちょっとなかなか響きづらい、リプレイスが難しい。

石橋:
Saleshubさんみたいに創業初期から使ってもらって大きくなっていくと取引量も増えるし、Paidさんとしても彼らとしてもすごくいい。だからこそ創業期に関わっていかないといけないから、ファンドでLP投資する場合はシード系のVCファンドさんと、ご縁取っていくといいよねってところからって感じなんですね。

三原:
そうですね。シードVCさんと関わりを持たせてもらっているのも、そういう理由っていうのも結構大きくありますね。

長期契約の前払いとベンチャーデット展開へ

石橋:
Paidさんの現在価値は十分理解できたんですけど、今後もっとスタートアップのためにこういうサービスの拡張もしていこうみたいなところって何かあられたりするんですか?

三原:
Paidって単なる請求代行サービスで終わるつもりはなくて、スタートアップさんの資金支援っていうところをトータル的にご支援できたらなって思っています。

今もう始めるサービスなんですけど、長期契約があるとして、例えば1年契約で毎月1万円で12万円の契約がもうありますってなると、当然お金自体は毎月1万円ずつしか入ってこないと思うんですけど、弊社に契約自体を投げてもらえば12万円を先にお支払いして、請求業務自体も全部弊社でやるので、もうその時点で売り上げが立つというか。

これはかなりの資金支援になるなということで、第1号案件も決まってますので、積極的に展開していきたいなというふうに思っています。

あとこれはまだ計画段階ではあるんですけど、スタートアップさんのトランザクションが増えていけば、もっとそれをうまく活用できる方法ってあるなと思っていて、それがまさに我々がやりたいベンチャーデットのところ。

石橋:
いいですね。

三原:
めちゃくちゃやりたくて。まだまだミドルレイターに億単位でエクイティと一緒に融資するみたいな、ほぼリスク取ってないじゃんみたいなのが多いと思うんですけど、一番ニーズがあるのってアーリーステージのスタートアップだと思ってて、そこに対して数百~数千万円くらいっていうところをブリッジだけではなくプロパーも含めて提供していきたいという思いがあって。

そこはニーズも当然多いですし、プレイヤーもまだまだ少ないっていうところもありますし、我々の与信ノウハウっていうところも存分に使えるところだと思うので。

イメージとしては資金の出し手としてやっていくっていうのがあるんですけど、そういうことを考えているレンダーさんがいれば裏保証に入るみたいなのもちょっと考えてますんで、興味ある方はぜひ。

石橋:
三原さん達をきっかけに、もっとスタートアップのフィンテックにもより拡張していくっていう感じなんですね。

三原:
そうですね。

石橋:
まず足元で課題を抱えていらっしゃるのは、それこそ中堅・中小企業向けのtoBのソリューション、もしくは小売事業としてダイレクト・トゥ・コンシューマーやサブスクリプション等のサービスをやっていらっしゃる方々は、ぜひ概要欄の方にURLは記載をさせていただいておりますので、ぜひそちらの方から見ていただいてご関心のある方はお問い合わせいただければと思っております。

今後でいうとベンチャーデットでこれまで裾野が広がっていけば、よりご一緒できるところも増えていくんじゃなかろうかなと思っておりますので、ぜひ株式会社ラクーンホールディングスさんを注目してみていただければなと思っております。

それでは三原さん、全3回にわたりますご出演いただきましてありがとうございます。

三原:
ありがとうございました。