リーマンショックで閉ざされたVCへの扉、異業種から舞い戻った物語|スタートアップ投資TV

◯木村 亮介 Lifetime Ventures 代表パートナー
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1987年生まれ。広島県広島市出身。一橋大学商学部経営学科を卒業後、プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現:PwCアドバイザリー合同会社)及びKPMGヘルスケアジャパン株式会社にて公共インフラ/ヘルスケア領域に関するコンサルティング業務に従事した後、独立系シードVCの草分け的存在であるインキュベイトファンドへ参画し、ispace、Gatebox、Misoca、ベルフェイス、iCAREなどの急成長企業を含む40社超の投資先支援に従事。
2017年1月にライフタイムベンチャーズを設立。プレシード/シードステージに特化したインキュベーション投資を行っている。

高校生から抱いた「軍師」への憧れ

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回は、僕たちの業界では知っている人は多いと思いますが、ライフタイムベンチャーズ合同会社 代表パートナーである木村さんにご出演いただいております。

木村さん、今回からよろしくお願いいたします。

木村:
よろしくお願いします。

石橋:
第1弾は、僕自身もシードベンチャーキャピタル(VC)をやっているので、お付き合いも緩く長くさせていただいているかとは思います。

木村:
6年くらい?

石橋:
そのくらいだと思います。

改めて、木村さんがどういう流れを経てライフタイムベンチャーズさんを創業されていらっしゃったのか伺っていければと思うんですけれども、大学時代からVC業界とかを目指していらっしゃったんですか?

木村:
全然そういうわけじゃなくて。私は2010年に新卒になる代で、今34歳なんですけど、興味はちょっとあったんですよ。

結果としてコンサルティング業界に行くんですけど、基本99%コンサルタントになりたいと高校生ぐらいから思っていた人間だったので、それで大学の学部を選んだという感じ。

石橋:
だいぶ早いですね。

木村:
早かったです。コンサルタントになりたかったんですけど。

石橋:
ちなみにそれはなぜですか?

木村:
僕は子どもの頃から歴史オタクでして、軍師とか参謀がかっこいいという価値観を、小学校の高学年ぐらいから、親が意図していないんですけど結果的に勝手にすり込まれて。

家にあった三国志の本とか戦国史の本とかですり込まれていって。普通は将軍とかに憧れたら良いと思うんですけど、軍師とか参謀の方がかっこよく見えたんですね。

そういう中二病な心をそのままに持っていった時に、たまたま高校1年生で文理選択ってあるじゃないですか。

もともと理系に行こうと思っていたんですけど、三角関数が当時よくわからなくて、あれ?と思って初めて文系の職業を進路指導室で見てみたら経営コンサルタントの仕事もあって。

「何これ?かっこいい!」と、軍師オタクとしての反応をしたのが最初で。

そこでおすすめの学部が商学部とか経営学部とかがあったので、行きたい大学を探そうとか勉強しようみたいな感じになって、自分の行っていた大学に行ったみたいな感じです。

リーマン・ショックで消えたVC業界への道

木村:
大学在学中も「コンサルティングファームに行くには?」とか、「コンサルタントになるには?」という本をひたすら読んでいるという高校・大学を過ごし、基本その方向だったんですけど。

そうしたら就活のタイミングで、大学の授業か何かでVCの人がOBで喋りに来ていたんですよ。

面白い仕事だなと思ったんですけど、時代がちょうどリーマンショックの時代で。

石橋:
2010年卒業ですもんね。

木村:
エントリーが開くのかなと思って待っていたら、僕の代は当時ジャフコ グループ株式会社さんと日本アジア投資株式会社(JAIC)さんの2大巨頭で、JAICさんが採用をしなくなり。

ジャフコさんも採用を絞って、JAICさんはその後に民事再生法などがありまして、いつまで経ってもエントリーがオープンにならないので、ご縁がないのかなと思って。

結果的にコンサルティングファームに行けたというので、ちょっと気になったけど完全に通りすがった感じになってしまって、VC自体はそんな感じでした。

コンサル5年目の違和感──「稟議資料作成代行業」

石橋:
その後コンサルティングファームにはどのぐらいいらっしゃるんですか?

木村:
2つの会社でちょうど5年間いまして。それがVCになったきっかけでもあるんですけど。

1つは、大前提としてすごく感謝していて、コンサルティング業界とか自分のいたプライスウォーターハウスクーパース株式会社(現:PwCアドバイザリー合同会社)とか経験した会社にすごく感謝しているんですけど。

一方で思っていたよりも軍師っぽくなかった。

石橋:
職種でいうと何だったんですか?

木村:
稟議資料作成代行業……それをいうとさすがに失礼なんですが、当時の自分は真面目に稟議資料作成代行業者と思ってしまったりとか。

軍師というよりも、僕が憧れていた時代の経営コンサルタントと、僕が入った時代のコンサルティングファームとクライアントの関係もだいぶ変わってきていたので。

こういうことをやりたいという方向性とかがわりとクライアントの中で決まっている中での、検証業務というか調査業務みたいなものが多くなったりとか。

もちろんそれは良いんですけど、自分がやっているものは稟議資料の添付書類になっていくみたいな感じのところで、これで良いのかな?と思ったみたいなところで。

役割が変わったから、これが軍師なんだというふうに思おうとしてみたところもあったんですが、もう1個モヤモヤしたのは、誰が主君とか仕える将軍なのか、人の顔が見えづらい。

大きな企業であったり投資ファンドさんとか、行政機関の方とかもいたんですけど、やっぱりみんな異動だったりとか、1人で決めているわけじゃないと。大学で学んだコーポレートガバナンスとはこういうことかと。

1人で独自に決めて良いわけじゃないというのもあって、頭ではわかっているんですけど、誰の思い切ったチャレンジを軍師として支えているのかというところが自分の中でぼやけてしまって、「この人たち」みたいな感じになっているところがどんどん違和感を感じていて、どうしようと。

消去法で残ったVCとスタートアップ

木村:
天職だと思っていて、高校生の頃の夢を一応叶えたわけであって、本当に贅沢な悩みなんですけど、思っていたのとちょっと違うかもと悩んだ時期が社会人4~5年目ぐらいであったというのが、一番直接的なきっかけでした。

石橋:
そのうえで5年目ぐらいになって、VCにはまた出会うんですか?直後からインキュベイトファンド株式会社さんに行かれるんですか?

木村:
行くんですが、そこからいろいろな仕事を考えたり探していったりというのをしていって。

コンサルが天職だと思っていたので、あまり考えたことはなかったんですよ、事業会社に行くとか、他の会社に行くとか。

ただ、自分自身が感じていた、組織に対してとか、ある程度型ができている業界に対してやるというのは、若干の窮屈さを感じていたので、いわゆるエスタブリッシュな人たちがみんなここで僕の進路から消えました。

日系大企業、外資系大企業、プライベートエクイティ(PE)ファンドが全部消えました。

メガベンチャーだったら良いのかなと思って何社か実は受けたんですけど、選考の過程で、思っていたのとちょっと違うと思い始めて、ここも消えました。

残っていたのがVCとスタートアップ、組織を作っている最中だから、誰かに対してというよりは個の力しかない中で、組織の文化にしても何を意思決定するかにしても決められるというところが、すごく失礼な言い方をすると消去法で残ったんですよね。

そこ以外に、自分が本当に楽しく生き生き仕事ができるところはないのかも、みたいな感じのことを思いまして。

コンサルだったので人を支える仕事の方がやりがいを感じられるだろうということで、VCを、そこで本気で興味を持ったんですけど、それが2014年の夏か秋ぐらいでして。

その当時にリクルーティングというか、ウォンテッドリー株式会社が伸びているスタートアップだったこともあって、求人を出しているVCが限りなくなかったんですよ。

石橋:
そんな感じのイメージはめっちゃつきます。

木村:
VCのWebサイトがかろうじてあったり、一部の有名なVCの方が書いているブログとかで、一生懸命コンサルのリサーチとかをして、こういう人たちがキープレイヤーだとわかったんですけど。

当時の僕はどうやって連絡取ったら良いかもわからないし、採用とかもしてなさそうだし。

当時のコンサルだった僕は、転職はキャリアエージェントさんから紹介されていくものだという間違った価値観を持っていたので。

石橋:
直接連絡してはいけないと。

木村:
そうそう、そんなことをしても失礼に当たると思っていた。

結果としては2社、今でもご活躍のビッグファームにエントリーシートを出したら、書類で落とされました。

そのうちの1社には『吾人の任務』という、堀さんの本まで読んで感想文まで書いて真面目に送ったんですけど、書類で落とされました。

ハッカソンでの偶然の出会いが人生を変えた

木村:
VCになりたいと。でもそのための自分のキャリアは、スタートアップを始めて成功すること以外で行く道がないんだと、当時の僕は勘違いしまして。生まれて初めて週末にハッカソンイベントに、起業しようと、仲間を見つけようと思って行って。

本当に運が良かったんですけど、そのハッカソンで同じチームだった人が、たまたまインキュベイトファンドに昔出資を受けていたスタートアップの最高技術責任者(CTO)の方だったんですよ。

当時はメガベンチャーの中で開発をやっていた人だったんですけど、仲良くなって。

ハッカソンが終わった後の懇親会で、その方が「楽しかったよ、ありがたかったよ」といろいろ褒めてくださって、「VCとかどう?」と言われて、「なれないんです」「僕なんかでは履歴書で落とされるんです」みたいな感じのことを言ったら、「そんなことないと思う」と。

「自分と関わりの深いインキュベイトファンドが、ちょうど投資ファンドを大きくするタイミングだから、木村さんみたいな人は向いているんじゃないかと思う」というので。

インキュベイトファンドの村田さんを紹介してもらったのが一番最初の経緯で、インキュベイトファンドに知り合いました。

石橋:
当時のインキュベイトファンドとしては、パートナー以外でいうとまだまだ人数が少ないですか?

木村:
少ないですね。今でもいる創業パートナー4人と最高財務責任者(CFO)とコミュニティマネージャー、1人僕の先輩でアソシエイトが同年代でいましたが、8人目みたいな感じですかね。パートナーの方が多いぐらいの組織という感じですね。

「起業した方が良い」から一転、VCへの道が開く

石橋:
結果そのまま紹介を受けて、インキュベイトファンドの村田さんにお会いをして、スムーズに入社されたんですか?

木村:
おっしゃる通り村田さんに最初そうやって紹介されて会ったんですよ。そしたら1時間くらいお話をして、これでVCになれるのかなと思ってワクワクするじゃないですか。

そしたら結論、「木村さんみたいな人は珍しいから起業した方が良い」「いつでも投資家とかになれるから」と言って。

石橋:
そういうパターンなんだ。

木村:
インキュベイトファンドが今でもやっていらっしゃるような創業投資というか、同じプランとチームがあったらあれだから、「木村さん、ヘルスケアでやりたいプランとかないの?」と言われて。

「じゃあ、医療保険の会社作ります」とその場で言って。

そしたら村田さんが「僕はファウンダーだけど後から経営者連れてきて、保険会社でコーポレートベンチャーキャピタルとか作れば投資できるから」という訳のわかんない理由ですよね。

そんなことを言って、「よし、頑張るぞ」と思って変えた。やっぱりVCになれないのかと思ってちょっとがっかりしながら。

でも仕方ないと、ハッカソンに行った時からわかっていたので、起業するかと思っていろいろな準備を始めていたら、赤浦さんからメッセージをいただいて、「今度お茶できませんか?」と言われて。

今でも覚えていますけど、表参道のスターバックスに朝7時くらいに集合して、赤浦さんと1時間半くらい話をしたんですけど、自分の半生やいろいろな思いを話す中で「だからうちでベンチャーキャピタリストを目指さないか」と言われて。

一貫性のないファンドだなと心から思って、僕もちょっとムカついたんでしょうね。なれないと言われてちょっとイラっとしていたんですけど。

「今はどちらかというと、起業の方が良いのかなと思っているんです」ということを負け惜しみで言ったら、赤浦さんから「その気持ちはすごく大事で。でも木村さんはコンサルをずっとやっていたんだから、誰かを助けるとか、そういうことをやりたいんでしょ?」「起業はうちに来たらたくさんできるようなもんだから」と。

創業期投資でやっていって、「あくまで主役は起業家の方で僕たちは黒子だけど、一緒に起業しているから、少なくとも我々はそういう気持ちで関わっているから、たくさん起業できるよ。こっちに来たら」と。

「コンサルとしていろいろなプロジェクトに関わっていた人間からすると、そういう方が楽しいんじゃないの?」ということを言われまして、「確かに楽しいですね。じゃあぜひ」というところに。

石橋:
最後は急に畑を変える感じなんですね。

木村:
そこで言ったことが、僕がインキュベイトファンドの入社が決まった経緯でしたね。2014年秋だと思いますけれども。

2年で独立、兼務期間を経てライフタイムベンチャーズ創業

石橋:
それ以降は徐々に僕の知っている木村さんになっていくんですけど、最終的にライフタイムベンチャーズの代表パートナーをやられているわけですけれども、そこからの独立までのプロセスというと大体何年間くらいあったんですか?

木村:
僕の場合はちょっと特殊だったんですけど、ライフタイムベンチャーズの1号ファンドが2017年1月末にできていて、これは僕が入ってちょうど2年くらいのタイミングなんですよ。

他の人よりもちょっとだけ早いというのと、これは正式な独立じゃなくて、僕はその後インキュベイトファンドのアソシエイトをプラス2年間くらいやっているんですよ。

石橋:
ジェネラルパートナー(GP)をやり始めて?

木村:
GPを始めて、その後約2年間インキュベイトファンドのアソシエイト兼務で、Incubate Campとか、運営責任者とかもやっているという時期があって。

お試し投資のように、「やってみようか」みたいな感じのところで、最初のファンドのお金を預けてくださって。

その中にたまたま、後に現インキュベイターのパートナーになっている、当時マッキンゼー・アンド・カンパニーにいらっしゃったポール・マクナーニさんも個人で実は出資をいただいていて。

そういった関係性で1号ファンドが、僕にとっては当時ややこしかったんですけど、インキュベイトファンドの木村でもあるしライフタイムベンチャーズの木村でもあるのが2年間くらいあって。

2号ファンドがというタイミングで、正式に独立をしてフルタイムになったのが2019年3月という感じですね。

文系出身でヘルスケア領域に特化した理由

石橋:
このまま聞いていってしまうと、どんどんライフタイムベンチャーズさんのお話になってしまうと思うので、最後に1個だけ。

今更ながらライフタイムベンチャーズさんは、名は体を表すというように、ライフサイエンス領域というか、代表的なところでいうとヘルスケア。

先ほど村田さんからもヘルスケア領域で起業しなよと言われたということは、もともと文系で、なんでヘルスケア領域に?もともとそういう畑だったんですか?

木村:
ではないんですけど、興味関心が大学時代からあったというのがもともとで。

僕の大学3年生の時に、東京医科歯科大学(現:東京科学大学)と一緒にやる授業みたいなやつがあって、そこで元経営コンサルタントで、当時病院の経営企画室にいらっしゃる大学の先輩がゲストスピーカーで来て。

「マネジメントを勉強している人たちですよね」「一橋の皆さん、医療は面白いですよ」と。

「すごい大きな産業で人の役に立てて」「自分たちみたいな人たちが少ないから、大変なこともあるけどやりがいもすごくある」という。

「自分たちみたいな人材はレアです」みたいなことを言われた時からすごく良いなと思って、新卒で一度病院も受けているんですけど。新卒採用とかしていたので、興味はずっとあったんですよ。

仕事として関わったのは2社目のコンサル。新卒3年目に行った会社が医療介護特化のコンサル会社だったので、そこでいろいろな病院さんの経営再建のご支援だったりとか、介護事業所さんの経営コンサルとか。

あとはPEファンドさんとかがそういった会社さんを買収される時のデューデリジェンスだったり、統合後のバリューアップみたいなところを結構密にやらせてもらっていたので。

ライフサイエンスのことは、その後になって学んだことが大きいんですね。製薬とか医療機器とか。

その当時は本当に病院とか介護事業所、医療の現場がどういうふうに経営のロジックで回っているかとか、どんな人が何をやったら業績が良くなったり悪くなったりするかとか。

何を根本的な現場の倫理観として大事に思って仕事されるかというのを密に感じられる時期が、その頃にあって。

そこからインキュベイトファンドに行っているので、デジタルヘルスとかヘルステックみたいなテクノロジーで現場を良くするとか、現場で奮闘されている方が多い業界なので。

少しでもその方を楽にするとか、不安な仕事をなくすとか、より良い医療を患者さんへ届けられるというところにモチベーションがあって、今でも変わらずあると思います。

石橋:
ありがとうございます。だいぶ僕の中で伏線が回収できたというか、ぐるぐると回ってこれたので。

次回の配信ではそんなライフタイムベンチャーズさんについてまたお話しいただければと思っておりますので、次回もぜひよろしくお願いします。

木村:
こちらこそ、よろしくお願いします。

【Lifetime Ventures】総額50億円!世界を目指す企業を応援するファンド!|スタートアップ投資TV

第2創業で挑む50億円ファンドの全貌

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回も、前回に引き続き、ライフタイムベンチャーズ合同会社 代表パートナーの木村さんにご出演をいただいております。

木村さん、今回もよろしくお願いいたします。

木村:
よろしくお願いします。

石橋:
現時点で、番組を見ていただいている方々はわりと強めの発表があった直後ぐらいの時期なんじゃないかなと思っていますので、ぜひこの動画を見ていただいて、新しいライフタイムベンチャーズさんの大枠というかあり方というのを知っていただければと思ってはいるんですけれども。

改めて木村さん、今回発表されたというか、新しくチャレンジされていかれる3号ファンドという呼び方が良いんですかね?大枠からまず教えていただいてもよろしいでしょうか?

木村:
ライフタイムベンチャーズ自体は2017年の1月に1号ファンドができて、2019年3月に2号ファンドができて、2つのファンドで合計で7億6,000万円の資金をお預かりして、24社のプレシードのスタートアップにご一緒してきました。

もともと5年間ぐらいは私1人の体制に近い感じでやってきたというのがこれまでの歴史なんですが、ちょうど2022年が第2創業の時期で、いろいろな方とのご縁があって、気持ちとしては受託開発を5年やっていた会社が初めてプロダクトとチームを作ってドギマギしているという。

今まで散々、出資先の起業家の方々に偉そうに言っていたことを今自分がこう体験している、フレッシュな状態でして。

いろいろなご縁があって、第2創業で新しいチャレンジをする、今年から始まるファンドが、ズバリ名前がOIST-Lifetime Ventures Fund(OLtV)という名前になっていまして。

世界9位の研究力を持つOISTとは何か

木村:
OISTというのは沖縄科学技術大学院大学(OIST)のことで、沖縄県の那覇空港より1時間ぐらいのところにある、できて10年の私立の大学です。

特殊な経緯とビジョンを持って作られた大学でして、博士課程しかない、本当に専門職というか。

石橋:
博士課程だけですか?

木村:
だけなんですよ。あとは研究職・研究室しかないという研究大学になっていて、いろいろな特徴があるんですけど、例えば今この時点でいうと、大学は理事という、会社でいう取締役に当たる人たちがいるんですけど、理事の中にノーベル賞受賞者が4人いる。

初代学長もノーベル賞受賞者で、お亡くなりになりましたけど、シドニー・ブレナーという生物学教科書にたくさん載っている人が。

石橋:
そもそも日本の方じゃないんですね?

木村:
そうなんですよ。初代学長から海外の人でして、すごいマネジメントチームがいるという大学と、あとはグローバルとか国際色というところで、学生の8割が外国人の方、世界50カ国からいらっしゃっている。

世界のサイエンスの中枢を担っていかれるようなトップクラスのタレントの人たちが集まっていて。

大学の教員だったりとかスタッフも、65%ぐらいが外国籍の方なので、日本人の人はいるんですけど、学内の公用語は完全に英語。

本当に多国籍のチームが大学のスタッフとしても研究室としても、それを支えるいろいろなビジネスネットワークもあるんですけど、その人たちもグローバルでやっていこうという、できて10年の不思議な大学がありまして。

それだけ聞いたらすごいけど、アウトプットとかトラクションはどんなものなの?5年携わってきた者からすると言いたくなるじゃないですか。

研究業績もすごくて、Natureという世界の研究者のワールドカップみたいなところの科学論文雑誌があるんですけど。

そこが出している、質の高い論文を出している大学ランキングで、2~3年前のランキングで世界9位、日本1位。

同じランキングで東京大学さんが世界40位で、京都大学さんが世界60位で、もちろんこの大学も素晴らしいし、量が全然違うので単純比較はしてはいけないんですけど、本当にできて10年の大学がそのぐらいインパクトがある面白い研究業績を作っている大学になったということで。

世界で戦わなければと言いつつ、日本の中で実績出すのもいっぱいいっぱいなのに、世界なんて自分が言って良いのかな?とか、純日本人として生まれて、日本からそういうことをやると無責任に言っても良いのかな?みたいなことを悶々として育ってきた僕からすると。

日本の中にできて10年は、スタートアップ企業としても上場までの期間が長引いている中でいうと、全然同じくらいの時間帯じゃないですか。

ベンチャーな大学として生まれていって、世界でそうやってパフォーマンスを出しているという人たちがいることに感動したのと、その人たちがちょうど建学10年も経て、イノベーションを社会実装しようと。

あとは自分たちのグローバルなネットワークで日本にいるとか、沖縄にいる起業家の人たちを支援したいというので、ファンドプロジェクトが進んでいらっしゃっていて、そのファンドを運営する大役をライフタイムベンチャーズが仰せつかったんですね。

石橋:
そういう感じなんですね。

木村:
OISTの人たちには集中的に一緒に起業していこうということをやるんですけど、OIST以外の起業家の方とか、他の大学の方も含めて、こういう場所とご縁があるファンドだから、沖縄に関係なくてもOISTに関係なくても、日本からグローバルを、ローカルからグローバルを目指そうというのが、基本的に次のファンドの一番のコンセプトですね。

50億円で1社平均1億円以上、プレシードから追加投資まで

石橋:
まだ未確定の部分もあるかもしれないんですけれども、規模感であるとか、どういうラウンドの方にどういう金額感であるとか、ファンドのストラクチャーと言いますか、そこの部分はどんな感じなんですか?

木村:
ファンド自体はざっくりいうと、総額で50億円のファンドをいきなりやります。集めなきゃ!みたいな。

それをやるというのが、ある意味OIST側からのリクエストもあったりしていて、彼らの持っているディープテックとか、そのシーズみたいなものを事業化しようと思ったり、グローバルに届けようと思うと、やっぱり1件あたりの投資金額も広げないといけないだろうと。

本当は50億でも決して大きくはなくて、同じような感じでこの3〜5年ぐらいに世界の著名な大学で作られているマサチューセッツ工科大学のThe Engineとかは、全然規模感がもっと大きいし。

50億円でも決して大きくはないけど、それをまずとっかかりにしながら、このOISTファンドというものをもっと広げていこうという野心的なチャレンジに、私もご一緒させていただくというふうになっていますね。

50億円にはなるんですけど、投資のフォーカスはこれまでのライフタイムベンチャーズと同じで、引き続きプレシード、プロダクトがないくらいがちょうど良いという。

売り上げはあったら逆に投資できないかもしれないぐらい。あっても全然良いんですけど。売り上げがないと投資できないとか、プロダクトがないと投資できないとかじゃなくて、ない方がむしろ得意みたいな。

我々のファンドのバリュエーションとかの制約の関係で、すごく良い会社だから他社さん紹介しますねということ。

石橋:
一周回って、よくわかんないことを言っていますよね?

木村:
そうですよね。良い会社でトラクションついてて伸びると思うし、他社さんから調達できると思うから紹介させてくださいと言って、自分のところでお断りをするという不思議な状態です。

これまでもライフタイムベンチャーズは結構プレシードフォーカスだったので、自分たちが関わることだったり支援することに、自分たちもその起業家の会社の方も意味を持っていただけるという方に投資をさせていただきたいので、入り口は変わらずにプレシードから始めていって、億円単位で追加投資ができるということをしっかりと。

社数はそんなに多くないと思います。それに対して1社あたり平均1億円以上、しかも追加投資もしながらきちんとチームを作るところとか、トラクション作るための支援とか。

OISTがグローバルなビジョンがある大学なので、いかにアーリーステージから海外のプレイヤーに事業開発の面でも資本政策の面でも、ここからやるので。

そういうチャレンジをいろいろなご縁があってやることになりましたというのが、一番大きな変化ですね。

ヘルスケアから海洋経済まで、5つの事業領域×5つの技術領域

石橋:
なるほどですね。ラウンドは大体わかってきましたし、先ほどローカルからグローバルとキーワードもいただいたんですけれども、投資をする領域、市場とかは何かあるんですか?

木村:
投資の領域と事業の領域と技術の領域をそれぞれ重ね合わせていまして、5つある事業領域のどれかに当てはまっている事業領域で、かつ技術領域が5つあるんですけど、この5つのどれかが交差するところと言っているんですけど、組み合わせは別に自由です。

特徴でいうと、事業領域はこれまでライフタイムベンチャーズがやっていたようなヘルスケア領域であったり、働き方の未来、Future of Workみたいな領域であったり、あとはクロスボーダージャパン、日本の外に出ていくプロダクトとか、逆にいうと日本が国際化を進めるみたいなサービス。

これはもともとの事業領域の3つなんですけど、加えてそこにサステナブル・リビングといって、いわゆるサステナビリティとかクライメートみたいな気候とかの話に含まれるものと。

最後がオーシャンエコノミーといって、海洋とか海。島国日本という、沖縄も含めて、海洋という宇宙と対を成す、世界・人類にとってのフロンティアというところを良くして変えていこうというようなところが5大事業領域として挙げています。

技術領域の方は、人工知能(AI)・ロボティクス、いわゆるデジタルをやっていこうというところで、それ以外がいわゆるディープテック的なところなんですけど、ニューロサイエンス、神経科学とか認知科学みたいな感じのところで、人の脳とか感情がどういうふうに作用して変わっていくかみたいなところの領域。

あとはクオンタムという量子、量子コンピュータとかわかりやすいと思いますけど、そういう量子物理みたいな領域を活用したもの、だいぶディープなやつですね。

ただバイオテクノロジー、いわゆるバイオの創薬だったりとか、それに近いようなものも含めて、技術としてはデジタルですらないものも含めて対象にしようとか。

最後がマテリアルのナノテクノロジーといって、名前の通り素材のためのというのもあるので、バイオとかマテリアルみたいな、直接的にはITが関係ないもの。

間接的にはインフォマティクスとかがあって、AI創薬とかマテリアルインフォマティクスという素材のところのデジタルトランスフォーメーションみたいなとかAIみたいなのもあるんですけど。

アウトプットがデジタルなものを、これまでに投資をしてきた中でいえば、そうじゃないものとか本当にディープテックなものも含めてやっていくというのは、結構大きな変化になるのかなとは思いますね。

投資してからチームを作る——研究者の起業を支える体制

石橋:
そういう領域は若干の変化はあれど、投資した起業家の方への関わり方のスタンスみたいなところとか、おそらく冒頭でお話いただいたようにチームというか、そこも大きく変わるよみたいなお話もいただいたような気もするんですけど、サポートの内容と体制はどんな感じで今回OIST-Lifetime Ventures Fundさんとしてやっていくんですか?

木村:
サポート内容は根本的には今までと同じことをやるんですけど、我々は結構チームがない段階、お1人の創業者さんが最初のチームを作るところから投資後にサポートをするということを、これまでの1号・2号ファンドでも複数やってきまして。

その経験を活かしながら、今回OISTの例えばもともと研究職の方とかが起業されるケースもあるでしょうし、それ以外の大学とか企業にいらっしゃる研究職の方が起業される時にも、2人目を一緒に探しに行く。

一緒に口説きに行くということを、「お金の心配しなくて良いですよ」「あなたが入ってくれるタイミングで我々は追加投資をしますので」と。だからといって嘘はつかないでほしいんですけど。

そういうことをお金の心配なく、目の前にいる創業者、尖った才能とかテクノロジーを持っている、もしくは事業領域の深い理解を持っている人と「一緒に会社やってみますか?」と、そういうことをやれる人を巻き込んでいくこと。

チームができてから来てくださいじゃなくて、投資してからチームを作るということまで含めてやっていこうというのが、このファンドの肝の部分でもあると思います。

ライフタイムベンチャーズでこれまでやってきたこととか、過去の投資先での成功事例も、チームを作るところに私自身とかライフタイムベンチャーズが関われた会社さんが、自分の中での成功体験だったり、素晴らしい事業を作ってくれる会社さんになっていってるなという学びもあって。

そこのところを体験拡張して、これまではどちらかというと医療とか介護の現場ご出身だったり、特定の産業のご出身、レガシー産業ご出身の方とかに投資をして、その人がエンジニアだったりとかビジネスマンとかマッチングするようなことが多かったんですけど。

それができるんだったら、その体験拡張をして、研究者の方だったりとかも含めて、スタートラインではもしかしたら経営者ではないのかもしれないけど、本当に創業者でチームを作ったりとか、自分と違うダイバーシティがあるような人たちと働くのは初めてかもしれないという人たちのチーム作りから始めていって。

いろいろな事故が起こるんですけど、その事故をある程度前提にしながら、創業者の方を支えて会社を作っていくところからサポートしようというのが、支援の一番大事なコンセプトかなと思います。

石橋:
なるほどですね。それをどういうチーム体制で今回はやられるんですか?

木村:
まさにそれを、OIST自体はグローバルな大学だったこととか、このファンド自体が目指しているのがそういうところもあって、2人加わってくれるメンバーがいて、1人が1回も日本で働いたことがない、今ヨーロッパで投資活動をしている日本人。

石橋:
なるほど。パンチはありますね。

木村:
だいぶパンチはあります。日本で全く無名ですので。これからよろしくお願いしますというところがあるんですけども、そういう人間が1人と。

もう1人が、とあるスタートアップで人事責任者をやっていらっしゃるという、人の専門家ですね。

この2人の共通点でいうと、グローバルな経験とか海外での在住、就学、就職みたいな感じの経験とかが長い方々ですので、創業期からグローバルチームを作るとか、グローバルなビジョンを実行できるようなものを作るというところ。

日本人でも良いんですけど、入り口で英語がダメな人でもそこは木村がいるんで安心していただければと思いまして。

頑張ればできるよということで、事業の可能性とか組織の可能性として無意識のうちに結構遮断しているところは、これまでの5年間で自分自身反省してみてあったと思うんですよ。

インターナショナルな創業者の方とか創業チームを作ることを支援して、その彼らがチームと事業と会社を作っていくというのを支援できる、3人の共同代表制というのにいきなり変わると。

石橋:
良いですね。

作業療法士3人のSaaS起業、累計11億円調達までの軌跡

石橋:
もともとライフタイムベンチャーズさんとして1号・2号ファンドをやられる中で、おそらくプレシードの前の段階は、本当にお1人の段階から投資をしていくんだとお話を伺いましたけど、そこでの成功事例だったりとか、具体的なエピソードをお持ちの投資先とかっていらっしゃったりするんですか?

木村:
象徴的なOIST-Lifetime Ventures Fundに繋がるところだと2社あって、1社が介護業界向けのSaaSをやっている株式会社Rehab for JAPANという会社なんですけど。

創業者の大久保さんが作業療法士という、介護の現場でリハビリをメインでやられている専門職、国家資格者、現場の方というご出身で。

創業メンバーが3人いて、3人とも作業療法士なんですよ。だいぶ尖っていて、初期のピッチブックに、みんなが上げられるベンチプレスの重さが載っているという意味不明なページがあって、未だにネタにするんですけど。

SaaSを作ろうとなったんですけど、エンジニアもいないし、ソフトウェアのビジネスをやったことがあるビジネスサイドの経験者もいないというスタートラインだった会社でして。

自分にとっては1号ファンドの1号投資先だったこともあって、自分も一緒にたくさん失敗しましたし、成功も失敗も経験させてもらったんですけど。

結果的にはRehab for JAPANの一番最初のフルタイムエンジニアは、私がご紹介をできる形になって、その方のおかげでプロダクトが出てローンチもできて、最初のマーケットを掴めたというところがあったりとか。

今、取締役副社長に池上晋介さんという、もともと株式会社リクルートでご活躍だったすごい人がいるんですけど、その人も私のご紹介で入っていただいて。

その2人がいなかったら、今は多分会社はなかったと思う。私自身も自己満足ですけど。

そういう関わり方をさせてもらった会社がちゃんと前進をしていって、今、累計11億円になるところまで、いろいろな苦難を乗り越えながら、まだまだたくさんあると思うんですけど、前に進んでいるというのは自分としてはすごく大きな原体験になっています。

広島発、水産業DXのウーオ——チーム崩壊から再生へ

木村:
もう1社が、広島で唯一のJ-Startup企業だったと思うんですけど、株式会社ウーオという水産業のBtoBのマーケットプレイスをやっている会社が私の地元の広島にありまして。

創業者の板倉一智さんがお1人の時に、たまたま東京でピッチイベントがあって、中国地方代表みたいな人がいらっしゃっていたんですよ。

お1人だったので、エンジニアでもないし、すごいビジョンを持ってやっていらっしゃるのを見て、素晴らしいですねと、「投資させてください」と言ったところから始まり。

その後資金調達もして、1回チームを作るんですけど、1回チームが崩壊しました。5〜6人採用して1人しか残らなかったという大変な時期に、今、最高執行責任者(COO)として活躍いただいている万力悠人さんという、当時東京のITメガベンチャーでご活躍の方がいらっしゃって、その方がWantedlyで応募してくれたんですね。

でも、ウーオは広島じゃないですか。この人を逃したらまずいという、いろいろなものがビビッときまして、万力さんにお願いして、「僕が会いに行くんで渋谷でお茶しましょう」ということを言って。

ウーオの今とか、ポテンシャルもあるし課題もあるしというのを、ありのままにお話をさせていただいて。

その後、結果的に万力さんが入ってくれたところに、僕のお茶とか間に入った動きがどれだけ役に立ったかはわかんないところもあるんですけど、彼がUターン転職で広島に、広島出身なんですよね、帰ってきてくれてウーオのCOOになって。

それまでは、チームの面でも事業の面でも、全然板倉さんがやりたかったことができていなかったんですよね、やっぱりワントップでやってると。それが本当にできるようになっていくというのを目指してもらって。

広島の会社が、最近だといろいろな地域の方からご相談いただくんですけど、悩むのは採用とか幹部人材の採用とかチーム作りだということを皆さんおっしゃってる中でいうと、良い経験というか、もっといろいろなところで増やしていきたいなというのは、そういった事例かなと思っていますね。

石橋:
なるほどですね。ある意味ウーオさんの事例でいうと、新しい3号ファンドのコンセプトがローカルからグローバルへというところはあると思うんですけど、まさにローカルから出てきたスタートアップというのがウーオさんでもあるってことですね。

木村:
そうですね。やればできますよ、みたいな感じのことを、自分自身はできると思ってもちろんご一緒していたんですけど、いろいろ大変なこともあった中で、やればできるんだなと。本当にこう感じさせてくれたりとか。

最近でも、東京のスタートアップから普通にエンジニアの方が転職して広島に移住された方とかもいて。

ちょうど最近、全社員と一人ひとりお話する機会があったのでお話してたんですけど、「なんで来てくれたんですか?」と聞いたら、「東京にいてもあまり外出てなかったので、どこでも良いかなと思っていたら、面白い会社があったので」と縁もゆかりもない広島に来て、「今、週末に釣りができて楽しいです」と言っていました。

万力さんが入ってくれて作ってくれたその企業組織が、いろいろな優秀な方を広島に呼び込んでくれて。事業自体は日本全国の水産業の方のためにとか、ないしはこれから世界のためにということをやろうと思っている会社なので。

こういうところが自分のふるさとで1社、まだまだ途中ですけど生まれ始めていて、僕の実家の両親とかもよく知っている会社になっているのは、地方出身者としては非常にありがたい経験だなと思っているし、しっかりこれからもご支援したいなと思っているところですね。

石橋:
ありがとうございます。今いただいたキーワードは、ローカルからグローバルに、ローカルのスタートアップがどういうふうに世界で戦っていくのか、どういうふうに成功体験を作っていくのかというところについては、第3弾の動画でお送りさせていただこうと思っておりますので、ぜひ引き続きご覧いただければなと思っております。

木村さん、今回も改めてご出演いただきましてありがとうございます。

木村:
ありがとうございます。

企業の限界を超える!グローバル企業を生み出す秘訣とは?|スタートアップ投資TV

OISTとの出会いが生んだ「グローバル」への決意

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回も、前回に引き続き、ライフタイムベンチャーズ合同会社 代表パートナーの木村さんにご出演をいただいておりますので、改めて木村さん、今回もよろしくお願いいたします。

第2弾でもOIST-Lifetime Ventures Fundさん、そのうち略称できるんじゃないかなとは思うんですけど。

1つのテーマとして「ローカルからグローバルに」というところのキーワードもいただきましたが、今回はテーマトークとして、いかにしてローカルなスタートアップをグローバル企業にしていくのか。

そもそもどういう背景からそういったことをファンドとしてやっていこうと思ったのか、みたいなところをお伺いしていければと思うんですけれども、背景的なところでいうと、どうしてそういう打ち出しを始めていらっしゃったりとか、そういうところを事例としても作っていこうと思われたんですか?

木村:
直接的なきっかけは、今回のファンドの戦略的なパートナー、一心同体のOISTさんが、もともと前回申し上げたようにグローバルな大学さんで、そこから生まれてくるスタートアップもやっぱりグローバルであるべきだろうという彼らのすごい強いビジョンが入り口にあったので、そこに我々自体が引っ張られるようにして、「じゃあやるか」となったというのがあります。

ただ、それが今回ライフタイムベンチャーズにとっては第2創業期で、GPも増えて一緒に活動していくわけなんですけど、私からしたら、今回のファンドから参画をしてくれた2人にご一緒いただけたのも、そういうローカルからグローバルというビジョンがあったから、そういうチームが作れたと心から思っていて。

私自身は、日本在住経験しかない純ジャパなんですけど、自分自身が昔コンサルタントだったところとか、VCとして7年間、インキュベイトファンド時代からこの国でシードVCをやっている中でのもどかしさだったり悔しさだったりがある中で、機会があったらチャレンジしたいと私自身も思っていたんだと思うんですよ。

それをやれる機会をOISTさんがくださって、そこに賛同してくれるパートナーも加わって、ならできるかと思って全力でやり切ろうというふうに今思っているのが、率直な経緯ですね。

石橋:
なるほどですね。そういったきっかけから、結果的にチームとしても海外に強い方というか、そういうところで職能を持たれる方をお誘いしてきたのも、そもそもは戦略的にそういう人たちがやっぱり必要だよねという背景からなんですか?

木村:
そうですね。もともとライフタイムベンチャーズの2号ファンドを2019年3月に作っていて、新規投資をだいぶ前に終えていたので、いずれにせよ次のファンドを作ろうとか、考えようということはもともと私の中で創業者としては思っていたんです。

OISTさんの話がある前というのは、自分が見ている景色からしか想像ができなかったので、こういうファンドの投資戦略で、こういうところをしっかりとやりきるということなのかなとドメスティックに考えていたんですけど。

今回の参画してくれる人たちも、私の憧れと自分でやりたいみたいな気持ちもあって、国際的な経験とかビジョンを持っている人とお付き合いするのが普通に好きで。

この人たちは海外とかグローバルで活動したいと。無意識に自分はドメスティックでやろうとしているから、お互いの道で頑張っていくのかなみたいなふうにちょっと思っていたんですよね。

でもそうじゃなくて、これは自分がチャレンジすると言えば、この人たちと一緒に働けるということなんだと。自分の中で勝手に現実的に考えて、難しさの方は挙げればいくらでもあるので、ローカルからグローバルへというのは。

そういうことを考えていった時に、チャレンジしきれるかみたいな不安が全部解けて。やれる機会をいただけて、こんなに優秀で魅力的な人達と一緒にファンドやれるんだったら、自分がちょっとぐらい英語に恐怖感があるぐらいは頑張るかということで、やってみようと思ったというのが大きいところかなと思います。

海外での仕事は出張ベースでの経験はありましたので、その時に日本に対する強烈な危機感が、VCとしての自分の原体験でもあったりもするので、この年でチャレンジしなかったら一生やらないだろうと思って、やるかというふうに、もう必死という感じですね。

グローバル企業を作る3つの条件とは

石橋:
きっかけと、それが故のチームみたいなところはだいぶ分かってきたんですけれども、そのうえで、「ローカルからグローバルに成功事例を作る」と事前のお打ち合わせでもワードが出てきましたけど。

国内の大きいスタートアップとか上場企業さんは、海外売上比率がどのぐらいあるんだみたいな話もある中で、何をすることがローカルからグローバルな企業を作っていくためには必要だと思っていらっしゃるとか、大事だと思っていらっしゃるというポイントを教えていただきたいです。

木村:
3つぐらい、根本的には1つなんですけど、あると思っていて。

1つは、我々が関わるプレシードとかシード期からグローバルにいくことを否定しないチームを作る、事業を作るということが一番大事なことかなとは思っていて。

そのうちの1つは、そもそも創業者の方がインターナショナルであること、場合によっては日本人ではないことまで含めて、そういったものを歓迎するというのが第一歩。

やっている人がグローバルに全く興味がない人だったりすると、我々は黒子で主役は起業家の方なので、その方々の「グローバルに行きたい」という意思を削がないことだったりとか。

2つ目は、事業を作っていくうえではお客さんが必要で、マーケットの描き方も必要になってくるので、グローバルにニーズがあるものだったりとか、事業開発ができるものを、自分たちがちゃんとお客さんを連れてこられるということが大事で。

3つ目は、スタートアップなのでお金を集めなきゃいけないという時に、グローバルなビジョンを真っ直ぐ応援してくださるような投資家を集めていくと。

このすべてで、チームとしての日本人の方とかを否定するものでもないし、顧客というかマーケットとしての日本企業とか日本の市場を否定するわけでもなくて、投資家も同じくなんですけど。

Paidyが破った「ガラスの天井」

木村:
今って、全部ドメスティックになっちゃってるじゃないですか。

私自身の過去の反省で、例えば外国人の創業者の方がピッチをしてくださるとか、お会いする機会があった時に、アンコンシャス・バイアスだったと思うんですけど、どこか冷めている自分というか、勝手に自分の中で諦めている自分みたいな感じのものとかがある気がしていたり。

負け惜しみのような感じで、そういう方がいらっしゃった時に、例えばインド人の方が日本で起業したいと言っているとかだったら、「インドの方が盛り上がっているんだから、そっちで起業したら良くないですか」みたいな感じのことを言うのは、そんなのは投資家の言うことじゃないですよ。

起業家の人が日本で起業すると、事業的なのか、単に好きだからなのかという理由でいてくれて、チャレンジしようとしてくれているわけじゃないですか。

その人のチャレンジを、特に初期の投資家がまっすぐ応援できないということで、機会を削いでしまっていたみたいなことが自分自身もあったんじゃないかという反省と。

そういうことをやってしまうと、昨年、大型の日本のベンチャー企業のイグジットになった株式会社Paidy(現:Paidy合同会社)さんも、創業者の方が外国籍の方で、日本で会社を作って、いろいろなご苦労があったと思うんですよ。

でもそれで作ったグローバルなチームとビジネスだったから、杉江さんもいらっしゃって、PayPal Holdings, Inc.も含めてやろうというビジョンの、実行できるチームとプロダクトと全体としての経営チームとか、投資家も含めて集まったんだと思うんですよね。

そういった成功事例が直近に出てくれて、個人的にはガラスの天井みたいなものをPaidyさんが突き破って示してくれたということが、すごく自分の中で不安もあるけど、やりたいし、やるべきチャレンジだなというふうに思った。

大事なことは、チームとお客さんと投資家を、どれだけ早い段階から国際化できるかということにつきると思うので。

僕自身もそこは自分のコンフォートゾーンを出てしっかり頑張りたいと思いますし、一緒にやっていくチームメンバーが、海外でVC活動やっていたとか、国際的な採用とか組織作りをやっていたという人間が加わるので、チームでしっかりガラスの天井を全力で破りに行こうと、怖がらずにチャレンジをしようというのが、ファンドとしてのチャレンジになるかなと思いますね。

石橋:
そういう意味でもOISTさんの存在も非常に大きいですね。

「iPodの父」が理事会副議長を務める大学の実力

木村:
ありがたいですね。あの方々が持っている大学としてとか、その中にいらっしゃる方も大体同じなんですけど、ビジョンがすごくまっすぐなんですよね。

あとはアカデミアとして成功体験がある。前回も話した通り、できて10年で世界9位の大学ランクに載れるものを出せている。それはやればできるんだということで、彼らが背中を見せてくれていることだと思います。

OISTは不思議な大学で、アカデミアとしてもちろん一級品なんですけど、ビジネスサイドの理事とかマネジメントメンバーがたくさんいるんですよ。

本当にすごい人が集まっていて、その最たる例とかはジェームス・比嘉さんという、日系アメリカ人っぽい名前なんですけど、沖縄県生まれかな。

石橋:
比嘉さんですよね。

木村:
比嘉さんですね。元Apple Inc.のタイトル的には社長室長だと思いますが、Wikipedia見ていただいたらわかるんですが、「iPodの父」と書いてあって、iTunesとかをスティーブ・ジョブズ時代のAppleで作れと言われて、ディレクターとして作ったという方。

海外のトップティアのVCの顧問とかもやっているという、レジェンドみたいな感じの人。タイトルは怪しいですけど、理事会副議長だと思うんですけど。

僕が昔いたコンサルティング業とかではエクスパットと表現していましたけど、日本駐在のコンサルティングファームや外資系投資銀行など、そういったネットワークにいる人たちがOISTの応援者にたくさんいて、そんな大学見たことないってくらいに。

日本法人の外資系投資銀行の元幹部とか、そういう人たちからバックアップがあって、「どんどんやんなよ」みたいな感じのことを言ってくださっていることが、すごく目線を上げられている。

そのコミュニティで困っているのが、プレシードというすごくリスクの高いフェーズで、起業家の方と一緒に会社を作るとか事業を作るということに対して、やってくれる人が良いからということで選んでいただいている。

その期待にしっかり応えたいですし、それをやれている頃には日本のスタートアップのガラスの天井を1つでも2つでも破っていきたいと。

Spotifyが北欧に与えた勇気を日本から

木村:
スウェーデンの会社なんですけど、昔Spotify Technology S.A.が生まれた時も同じだったらしくて、最近読んだ『ベンチャー・キャピタリスト』という本に書いてあったんですけど。

Spotifyが出るまでは、ヨーロッパからグローバルな会社が、しかも北欧のスウェーデン、国の人口は1,000万人ぐらいで東京よりも小さい。そういう国からそういうものが出てくるなんて、誰も思っていなかった。

けど、それが生まれたことで、「スウェーデンから生まれるんだったら、ドイツやイギリスやその他の国も当然できないとおかしいじゃないか」と言って、周りの国に勇気を与えていったみたいな話だったりとか。

そのためには最初からグローバルのマーケットを見てとか。SpotifyはシリーズAでFounders Fundが投資をしているんですけど、そこは前例がなかったらしいですね。

英語は我々よりちょっと得意かもしれないですけど、とはいえ完全に別のコミュニティなので。

石橋:
そうですよね。

木村:
やりきってみたら、トラックレコードとか我々の仕事でもそうですし、トラクションがないとビジョンを信じてもらえないじゃないですか。

そういうことを日本からやるべきってことですね。やりたいというメンバーが集まっていて、それをやろうというふうに応援してくださるOISTさんのコミュニティとかあって。

この放送が5年後とかに、「全然ダメでしたね、木村さん」みたいな感じのことにならないように、我々も頑張ろうという、そういうひりつく思いがあります。

ローカルとグローバル、両輪で支援する未来

石橋:
ありがとうございます。

木村さんが2号ファンドを作るのが2019年とすると、僕たちも2022年に2号ファンドを作っているタイミングなので、2~3年後くらいには新しいもっと大きいチャレンジであるとかしていかないといけないなというのは思いつつも、漫然とやってしまうところもなくはないのかなと思ったりもするんですけど。

シンプルに、その木村さんの新しいチャレンジをこのタイミングでお話し聞いたのもすごく良かったなと思いますし、僕たちにとっても良いきっかけにできればなと思っているので、改めて引き続きよろしくお願いします。

木村:
ローカルに投資して活動するので、日本を否定するわけじゃないので、ぜひGazelle Capitalさん達ともご一緒することとか、一緒に起業家の方をローカルからグローバルへの支援をご一緒できればなと改めて思っております。

石橋:
今日のお話聞いて、見ていただいている方、東京の方だけではなくて、実際ローカルな地域にお住まいの方もいらっしゃるかと思います。

その地域から実際に起業してグローバル、グローバルじゃなかったとしても、地域から、ローカルから何か変えていこうと思われている方は、おそらくこの動画を公開する頃には概要欄にOIST-Lifetime Ventures Fundさん、ないしはライフタイムベンチャーズさんのお問い合わせページ等を記載させていただいておりますので、ぜひそこからご連絡をしてみていただけると良いのかなと思っております。