【ファンド総額978億円】領域問わず企業を支援するJAFCOの投資先を紹介【JAFCO 坂さん vol.1】

◯坂 祐太郎 ジャフコ グループ株式会社 パートナー
ジャフコ グループ株式会社 HP▶︎ https://www.jafco.co.jp/
X(Twitter)▶︎https://x.com/YSaka1202
2012年入社。主な投資実績はマネーフォワード、Chatwork、WACUL等。
Forbes Japanが選ぶ日本で最も影響力のあるベンチャー投資家 BEST10
2017年 2位 2021年9位。
投資業務以外にも、投資先にCFOとしての出向経験や、投資先支援チームに従事し、現在のセールス・マーケ支援、HR支援、バックオフィス支援それぞれの基盤を構築した経験を持つ。
2022年6月よりパートナー。

石橋
皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。今回から、すでに業界の方なら知っている方が多いと思いますが、JAFCOグループ株式会社パートナーの坂さんにご出演いただきます。3話連続でよろしくお願いします。


よろしくお願いします。

石橋
この第1弾ではJAFCOについて大枠からお伺いしたいのですが、JAFCOの歴史はいつからあり、規模感はどれぐらいですか?


VCのなかではかなり長くなってきましたけど、創業が1973年。昨年に50周年を迎えたところで、今はちょうど51年目になっているところです。今まで累計で1兆円以上、スタートアップ企業にリスクマネーを供給して、上場した企業が1,000社を超えて、1,030社ぐらい(2024年7月時点)。なかなか長くやっている。

石橋
極端に言うと全上場企業のうち、何分の一は元JAFCOの投資先みたいなレベル?


今は日本の場企業が4,000社弱ぐらいだと思いますが、もちろん1,000社の中には上場廃止された企業や海外の企業も含まれているので、何%と言うのは難しいですが、一定の割合はJAFCOが投資をさせていただいて上場した企業と言えるかと思います。

石橋
ちなみに歴史で言うと51年もあると思いますが、足元だとどういう規模のファンドをやっていて、このラウンド・テーマで投資をしているなど、テーマ性などは決まっていますか?


逆にテーマは決めていなくてですね。ファンドのサイズが978億円になっていて、その内の数百億円をベンチャー投資に充てるのですが、このファンドの大きさだと、JAFCOはミドルやレイターステージなど後ろのステージしか投資しないと思われるけど、どちらかというと前のステージで、シード・アーリーステージの投資が大半を占めている。売上がない企業に出資をするケースもありますし、売上が少し立っている、赤字が先行している投資フェーズの会社への出資が大半を占めている。

石橋
それだと1社あたり投資しているだいたいの金額や、ラウンドはまちまちと言えど金額はこういう額が多いなど、そういった目線感はありますか?


平均だと1社あたり4億〜5億円を投資していて、一方でそれより少ない金額や多い金額もあるというところです。

石橋
最初のラウンドや早い時期に出資をされると、継続してフォローオンでリードを保つことが多いですか?


全ての企業というわけではないですが、基本的には初回(新規)でご出資させていただいて、その後の次のラウンドでもご出資させていただく。基本的には最初に参画するラウンドからリード投資をして、継続出資に繋がるようにしています。

石橋
創薬やバイオ領域はやりませんというVCも多いと思いますが、完全ジェネラルで完全オール領域対応なんですか?


そうですね。これはすごく難しいなと思っていて、「〇〇テック」と決まってくるのは、市場が盛り上がって成熟しているから「〇〇テック」という名前が付くじゃないですか。となると、本当に成り立ってきそうな産業は、現時点において「〇〇テック」と表すのは難しいと思っている。そういう意味やファンドのサイズもあって、「ここだけしかやりません」とはしていない。

石橋
シリーズA・Bから一番最初に投資をするというケースもあるんですか?


そうですね、シリーズA・Bに最初から入るケースもありますし、「ここしかやりません」というのは決まっていないです。

石橋
とにかく幅広いんですね。フォロワーになるケースもゼロではないんですか?


それはもちろんあるんですが、割合としては本当に少ない。なので基本的にはリード投資家として入らせていただくケースが多い。ただ、フォローとして入ることを排除しているわけではないです。

石橋
いい意味でも悪い意味でも賢い会社のイメージがあるので、勝手なイメージなんですが、それにともなって検討プロセス、初回接触からどのぐらいで投資に至るか含め、重たいプロセスを経ないと出資に至らない。当然ある意味そうだと思いますが、その検討プロセスはどうなっているかや、初回ご面談からどのぐらいのスケジュールが必要ですか?


これもまちまちですが、重厚長大なプロセスがあるわけではなく、平均的に接触してから2〜3ヶ月ぐらいで決まるというか。それ以上長くなるケースも稀にありますが、基本的には2〜3ヶ月ぐらいと思います。

石橋
検討プロセスが終わり出資をしたあと、リードの投資家としてはどのようなサポート・支援をしているのか。起業家の方からすると「これは期待して大丈夫そう」ということは、どのようなイメージでしょうか?


一つ特徴的なところで言うと、ご出資をさせていただいた企業様の支援を専門におこなう部署がある。

石橋
だいたいバリューアップチームみたいなところですよね。


そうですね、その部署がだいたい20名ぐらいいるのですが、そのチームが泥臭く一緒に伴走していくイメージで、セールスマーケットのご支援もさせていただいていますが、何の支援をするかというと、JAFCOは今、多くの事業会社や大企業の方との接点があって。なぜあるかというと「新規事業カンファレンス」というイベントを。

石橋
JAFCOさんがやっている?


はい。新しいビジネスの種を探しているであったり、新規事業に悩んでいる方や、CVC運営に悩んでいる方向けのイベントを多数開催していて、ウェビナーからオフラインイベントもしていますが、先週やっていたのは1,000名ぐらい来ていただいて。そこで接点を持たせていただいて、それはハウスリストというか、メールアドレスを保有させていただいて。こういったスタートアップ企業と何かをやりたいと引き合わせをするなど、投資先のウェビナーを企画して一気に集客してリードを獲得するということを、わりと泥臭くいろんな運営をやっています。

石橋
新規事業開発をしたい人だけではなく、そもそも投資先の過去上場している上場企業、約1,000社のパイプラインだけでも、めちゃくちゃなセールス支援が見える化しやすそうと思いつつ。toCの投資先だとどのようなバリューアップをされている?


セールスマーケティング以外にも2つファンクションがありまして、HRC(ヒューマンリソースコンサルティング)と、バックオフィスなどのIPO管理体制の構築支援。これを使っていただいているケースが非常に多くて。HRのほうはCxO候補をいかに面接というか、その企業に興味を持っていただくお手伝いをさせていただいたり、あとは組織周りのところですね。第三者的に社内の方にインタビューをしたり、それを経営陣にフィードバックをしたり、組織開発周りの専門の人がいてお手伝いしているケースが多いです。

石橋
累計だと投資社数ってどれくらいになる?


4,000社超。

石橋
では4分の1程度はIPOでイグジットした。


ざっくり計算すると4,000社中1,000社で4分の1。

石橋
バリューアップチームは最近からですか?それともかなり昔からあるんですか?


かなり昔からやっていまして、2000年台からそういうチームがございまして、ずっとやっている。

石橋
JAFCOだとそういうグロース支援だけでなく、M&Aチームもありますよね?


M&Aチームというか、JAFCOはスタートアップ投資のイメージが強いと思いますが、PE投資もやっているので、そちらのチームの人もいて。彼らは100%マジョリティを取る投資をしているので、投資先でM&Aを仕掛けたり実行するときに、PEというかバイアウトチームの人間にちょっと手伝ってもらったりとか、珍しいケースだと思うんですけど。

石橋
そういうことも全方位で支援できるということですね。


そうですね。

石橋
今までの話の中で、あまり具体的な投資先の例を伺ってこなかったので、例えば最近IPOしたような企業・投資先だと、象徴的・印象的な投資先はいらっしゃいますか?


最近上場したところだと、アストロスケールというスペースデブリ(宇宙ごみ)除去の会社さんとか。これは私が担当したのではなく別の人が担当したのですが、投資したときから約10年ぐらい経っているのですが、どんどん事業が実現していくのを見ていたので、これはすごい案件だなと思いました。

石橋
それは一番最初のラウンドから投資をされていたんですか?


エンジェル投資家が先に投資していたと思いますが、VCとしては初めてで、当然まだモノが何もないところから投資をさせていただいた。

石橋
あの領域でモノがあるというだけで結構ラウンドは進んでいますよね。


当然モノがないので、ビジネスモデルも確立しているわけではない中、このチャレンジに取り組もうと意思決定したのは、自社のことながらすごい意思決定だと見ていました。

石橋
先ほどは直近で上場されたアストロスケールのケースでしたが、まだ上場していない担当投資先の企業で、担当投資先で最近すごく伸びている企業や印象的な企業はありますか?


たぶんこれを観ている方で知っている方も多いと思いますが、PIVOTは同じ動画領域ですが、一昨年ご出資をさせていただいた。

石橋
坂さん的には、今は経済メディアは、なぜOne CapitalやJAFCOが投資をしたのか想像ができない人がいっぱいいる気がしますが、改めてどういう出会いでどういう投資仮説から、坂さんやJAFCOは出資に至ったんですか?


出会いはたまたまなんですが、当時PIVOTの社長の佐々木さんがピッチコンテストに出ていたんです。

石橋
佐々木さんご自身が出ていた?


はい。僕はちょうど審査員で参加させていただいていて。僕はPIVOTや佐々木さんにすごく興味があったので、プレゼンが終わったらQ&Aのセッションがあるじゃないですか。一番最初に質問をしたんです。それを覚えてくださっていて、「ああいうときに一番最初に質問をしてくれる人は良い人だ」と。「1回お話をしたいです」というところから始まって、ちょうど資金調達を検討し始めた時期だったというのが、出会いのきっかけと言われればそこです。

石橋
JAFCOが入ったのは2回目の資金調達のタイミング?


そうですね、もともとはOne Capitalが先で、その後に投資しています。

石橋
タイミングでいうと2023年かと思いますが、メディアの会社に投資をするVCファンドは、今のご時世だと少し珍しいと思ったんですが、投資仮説や投資背景はどのようなものでしょうか?


一般の視聴者側の話と、広告主側の話と2つある。広告主側の話をすると、私たちも石橋さんもそうだと思いますが、いろんなスタートアップ企業にご出資をさせていただいていて、往々にしてマーケコストにお金を使う局面が多いと思いますが、ちょうどいい面がない。いい面がないというのは、自分たちのことを10分くらいの尺でしっかりと訴求をしていくことや、Webの面がない。タクシー広告も少し短いし、テレビCMは予算が大きくて少し短いという中で、いろんなクライアントにヒアリングをしていったところ、PIVOTという面に対する評価、20〜30分の尺になりますが、本当に伝えたいことが伝えられて、それを見に来てもらえることの評価がすごく高くて。確かに他の媒体や手法を思い浮かべると、「ちょうどいいものがないな」というところで、広告主はそういうものを非常に求めているということをすごく思っていたというのが投資理由の一つです。

一般消費者側で言うと、率直に面白いというところと、変遷を見ると2017年ぐらいから一気にスマホの動画視聴が広がり、YouTuberというものが定着した。経済やビジネスという領域だとNewsPicksが出てきましたが、動画のプレイヤーはなかなか出てきていない状況で。PIVOTの何が一番根源的な価値かというと、コンテンツ作りが一般消費者もすごく面白いもの、かつ広告主も面として自分たちの商品の広告を出稿したいと思わせるようなコンテンツ作りができるメンバーとして、オールスターみたいなメンバーが集まっていて。もちろんおっしゃる通り純粋なメディアですが、ただそのメディアそのものみたいなものを、次の世代のデファクトスタンダードに近いようなものを作っていける会社ではないか、というのが当時思ったことです。

石橋
もともと坂さんとしてそういう可能性や投資仮説はメディア領域にあって、PIVOTとの出会いで組み合わさったのか、それは毎回是々非々で考えている感じなんですか?


是々非々のときもありますし、前からこうだと思うときもある。ここ数年いろんな知識をキャッチアップするのに、本より動画を観る機会が圧倒的に増えたということがあって。当時は何が面白いか言語化はできていなかったんですが、佐々木さんだったり、PIVOTのメンバーと話をする中で、「あ、なるほどこういうことか」となったんですよね。

石橋
JAFCOを象徴するような今までの投資先を1社挙げるなら、例えばどういう企業ですか?


ビズリーチを運営するVisionalですね。(出資したのは)たぶん2010年頃だと思うのですが、当時まだ数名のときに社長の南さんがおっしゃられたのは、「JAFCO以外のVCは断られた」。JAFCOのホームページのインタビューにも載っている。事業はまだそこまでだったけど、経営者・市場を信じて一緒に作ってきた案件だと思います。

石橋
そこから先ほどのアストロスケールのように、継続的に出資をされて、あの規模でIPOもされた?


Visionalさんは追加投資の機会は少し特殊な感じで、Visionalの子会社のルクサという会社がある。そこに共同投資をしてという。単純な追加投資ではなく、一緒に事業を作っていく、がっぷり四つでやらせていただいた企業です。

石橋
最近であればタイミーもそうかもわからないですし、時代を象徴するような投資先で、しかもちゃんとかなり大きいIPOをされている方々にコンスタントに入っていらっしゃるんですね。ぜひ第3弾の動画で、なぜそういう見極めができるのか、もちろん坂さんご自身のポートフォリオ、ご担当先だけ見てもマネーフォワードだったりChatwork(現kubell)など、コンシューマー含め皆さんが知っている投資先もいらっしゃると思うので、どう新卒VCとしてキャリアを始めつつ、そういうところを見極めるに至っているのか、お話を伺っていければと思いますので、引き続きよろしくお願いします。


よろしくお願いします。

新卒でベンチャーキャピタルを選んだ理由と今後の展望【JAFCO 坂さん vol.2】

石橋
皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。今回も前回に引き続き、JAFCOパートナーの坂さんにご出演いただいておりますので、今回もよろしくお願いします。


よろしくお願いします。

石橋
第1弾では創業50年を超えていらっしゃるVCで、僕の勝手なイメージでシリーズA・B以降がメインなのかなと思いきや、そうでもないんだよというお話を伺ってまいりましたが、第2弾ではどういうご経歴で、どういう想いを持ってやっていらっしゃるのか、パーソナリティのところをお伺いしていければと思っています。第1弾でも触れていただきましたが、会社の全従業員のうち75%ぐらいの人が新卒で入っていらっしゃるということは、坂さんご自身も新卒でJAFCOさんに入ってきたんですか?


はい、そうですね。私も例に漏れずと言いますか。

石橋
今、何年目ぐらいなんですか?


今は13年目になりました。

石橋
新卒から13年間VCなんですね。あまり当時って新卒でVCに行く人はいないですよね。今となっては増えてきている気がしますが。


当時でいうと全くいないと思います。

石橋
なぜ当時は金融業かつベンチャーキャピタル業という、謎のドメインを選んでいくことになったんですか?


就活をやっているときに、謎の根拠なき自信があるじゃないですか、学生は。「自分は何かできる人間なのかもしれない。何も実績はないけれど」みたいな。何者かになりたいという願望だけはあったんですが、でも何をしていいかはわからない感じでした。 当時たまたま大学の講義で、ディー・エヌ・エーの南場さんの講演を聴きにいったときに、ディー・エヌ・エーの創業秘話を話されていた。そのときに初めてVCの話が出てきて、ディー・エヌ・エーの創成期から投資をして、それに南場さんがすごく感謝をされていたので、「なんかベンチャーキャピタルというものがあるらしくて、それは個人名でスタートアップの成長に携われる職業なんだな」などと思って。 いろいろなVCの方にお話を聞くなかで、「もしかしたら自分自身が出資をすることで、今までなかったスタートアップ企業が本当に成長していったり、もしかしたらできるんじゃないか、何者かになれるんじゃないか」という、何の根拠もない自信があって、そういうことをやりたいなと思って。VCという職業に魅力を感じて、新卒で入ってみようみたいな。

石橋
最近はいわゆる新卒VCの人も増えてくるなかで、坂さんの、「何者かになるために何ができるかわからないけど、JAFCOに入社」されてきて、結果めちゃくちゃ順調にいったパートナーになるまでの10年間は、どんな歩みを辿っていたんですか?


自分にとって若いときに、マネーフォワードやChatwork(現kubell)に、入社して4年も経っていない段階でスタートアップを代表するような企業に携わらせてもらって、やはり運は良かったですよね。成長していく企業や、会社を伸ばせる起業家など、成長していく様を目の前で見ることができたので、それは自分にとって大きかったかなと思います。

石橋
坂さんのキャピタリスト人生で一番最初に投資をされたのは、何年目のときにどの会社に投資をされたんですか?


2年目のときに、マネーフォワードさんです。

石橋
逆に最初の1年間は苦しんでいらっしゃったんですか?


ちょっと僕は普通のキャリアとは違って、JAFCOはファンドレイズもやる。当時は入社してすぐにファンドレイズが始まって、半年ぐらいはファンドレイズをやってみたんです。これはすごく重要でしたね。そもそも1年目で入って、VCはどういうふうに成り立っているのか。出資をしていただける方がいて、この人たちはどういう期待値を持つのかなとか。当然、出資者の方に「JAFCOは何が特徴なのか」「どんな会社に投資をするのか」を聞いていただけるので、質問に答えなきゃいけないというところで。VCとは、JAFCOとは、ベンチャー投資とはっていうところでインプットをガッとしていった1年間でしたね。

石橋
結果、2年目にいきなりマネーフォワードさん。


そうですね。

石橋
新卒VCとしてのキャリアが始まって大変だったことは、投資活動のなかでいうとあまりなかったんですか?


でもすごい悩んでましたね。どういう業態・サービスならIPOできるんだというのを、もちろん数字的な意味では理解はできるんですが、本当の意味で理解するのにはすごい時間がかかった。

石橋
なぜマネーフォワードさんが、新卒で2年目の坂さん的には絶対に「いける」と感じたんですか?


本当に良いビジネスだと思ったのもありますし、単純に数字を見るわけではなくて、サービスの可能性を見てみんな意見をくれたりとか、「伸びるんじゃないか」という土壌があったので、それに後押しされてというのはありましたね。自分自身だけの力とはまったく思わなくて、サポーティブかつ建設的に議論してくれるような会社の土壌やその時の上司のおかげというのはありますね。

石橋
スランプの時期や思い悩んだ時期はあったんですか?


自分のキャピタリストとしての価値はなんなんだろう、何ができる人間なんだろう、どういうキャピタリストとして生きていけばいいのかしら、みたいなのは5、6年目とかに悩みましたね。目の前のことばかりずっとやっていたので、ここからどうすればいいかというのは、中堅として悩んでいましたね。

石橋
当時を振り返ると、どういう方向性でまとまったんですか?


一個大きかったのが、一度投資先に出向しているんです。1年間、取締役としてCFOをやらせていただいて、「スタートアップを経営するのはこんなにも難しいんだ」と感じた。その経験がすごく良かったです。戦略を立てるとか、マーケットを予測するのも大事なんですが、スタートアップ側がどう思うのか考えながら、実際にどう物事を動かしていけばいいのかを考えられるところは自分の強みになっていくのかなと当時は思った記憶があります。

石橋
もともと入社されるきっかけが「何者かになるために」というところから出発されていらっしゃると思うんですが、こういうふうな想いを持ってスタートアップ投資をやり続けようみたいなところ、坂さんとしてやっていきたいことはどうなんでしょうか?


私は子どもが2人いるんですが、20年後に彼らが成人しているときに「お父さんは何をやってたんだ」と言われたくないなと思っていて。日本の経済があまりよろしい状態ではない中で、国を挙げて企業を挙げて、新しい産業を作りにいく中で、その一翼を担いたいなというところは想いとしてあります。 あとは個人の落としどころでいうと、仕事は人間関係を構築するのにすごく良い手段だと思っていて。自分が60歳や70歳になったときに「あの時しんどかったよね」とか、居酒屋で飲める人の数をどれだけ増やせるかが、自分の一つの人生の価値だと思っていて。やはりVCという仕事を通じてそういう人がたくさんできて。

石橋
本当にいっぱいできますよね。


その果てに日本経済とか世の中が良くなっていくのが、理想的な感じです。まあミッションというか、そういうことをやりたいので今もやっているという感じです。

石橋
これを観ていただいている方の中には、最近途中でVC業界に来ましたという方や、新卒VCになりたての方、ないしはそれを志している方も観ていらっしゃるケースも多いんですが、こういう心持ちでやっていくと途中で離れないでというか、こういうスタンスでチャレンジしていくと、これからVC業界でパフォーマンスを出していくのにいいところを一言アドバイス的にいただいて締めていければと思います。お願いします。


本当に成果が出るのに時間がかかるといいますか、かなり長期戦の仕事なんですが、一個最大の価値は「長く続ける」というのが一番難しいですし、なかなか他の人ができることではないので、苦しい場面もたくさんあると思うんですが、とりあえず10年やってみたら必ず「本当にやっていてよかったな」と思うタイミングが来るんじゃないかなというところで、ぜひ一緒に頑張りましょうというところでございます。

石橋
僕自身も今VCキャリア7、8年という感じなので、もう2、3年頑張っていかなきゃなと思います。改めて坂さん、2本目もご出演ありがとうございます。

坂 ありがとうございます。

投資経験から学んだ成長できる起業家に共通する特徴とは【JAFCO 坂さん vol.3】

石橋
皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。今回も前回に引き続き、JAFCOパートナーの坂さんにご出演いただいておりますので、今回もよろしくお願いします。


よろしくお願いします。

石橋
坂さんご自身は現パートナーで言うと最年少で、JAFCOさんの中ではパートナーになるのは基本的に過去、新卒からの方しかいらっしゃらない認識なんですけど合ってますかね?


そうですね、今のところ新卒だけですね。

石橋
いかにして坂さんがパートナーになり得たのかとか、JAFCOさんじゃなくて坂さんとしての投資イズムとか投資基準みたいなところをぜひお伺いしていければと思ってます。マネーフォワードさんからいくと、坂さんとしてはどういうところにポテンシャルをマネーフォワードさんの場合は感じられて、ご出資に至ったみたいな感じだったんですか?


当時のマネーフォワードさんは2つ事業があって、1つはその自動家計簿、マネーフォワード MEと言われる金融機関の口座をアグリゲートして一元管理できるっていうサービスと、クラウド会計のMFクラウドが2つあるんですけど、当時はまだこの家計簿のコンシューマー向けのサービスだけやってて、会計の方は構想段階だったっていうところがあるんですけど、家計簿のサービスを見た時に、これはすごいなと思ったんですよね。

例えばあのサービスって、私自身の購買情報だったりとか給与情報だったりとかっていうのを登録して便利になるっていうので、どんどんユーザーが自分の情報を便利だから預けるっていうサービスだと思うんですけど、起業家側からしたら私が何にお金使ってるかって、お金払ってでも欲しい情報じゃないですか。ユーザーがすごく便利なサービスなので預けに来るっていう、情報の銀行だなみたいなっていうのを思って、すごいなっていうのを最初に見た時に思ったっていうところですかね。

石橋
そのタイミングでご出資されて、想定通りの伸び方をしていかれたんですか?


そうですね、ユーザーの、やっぱり本当に使いやすいサービスだみたいなところはあんまりズレてなかったんですけれども、情報をどう収益、経済的価値に変えていくか、マネタイズしていくかっていうところはやっぱ色んな試行錯誤があって。有料課金とかがそこまで進むと思ってなかったんですけど、思いのほか進んだなだったりとか、一方で他のビジネス、キャッシュポイントはもうちょっと作れるかなと思ったんですけど、そっちはなんかあんまりうまくいかなかったなとか、想定内だったことと想定外だったことはたくさんありますね。

石橋
もう1社、代表的なところだとChatwork(現kubell)さんがあげられるのかなと思うんですけど、それはなんかどういうインサイトからというか。それこそマネーフォワードさんも割とSMB向けのSaaSをやられてて、Chatworkさんもなんで、そこでの学びとかが活きてご出資の決断とかされてらっしゃるのか、どんな見立てでChatworkさんには投資されてらっしゃったんですか?


私の中でいつもやり方として、まず自分の身の回りの面倒くさいことというか、解決したいことみたいなのをずっとリストにしていくんですけど、例えばマーケターの方とか営業の方とか何がなんか一番大変ですかみたいのを聞いてたんですよね。

その時に自分自身もメールがすごく大変だし、営業の方とかメールばっかりやってますみたいなこと言ってて、その中で出会いしたのがChatworkだったんですね。プロジェクトを一緒にやるっていうことにあたって、メールって全然最適なフォーマットじゃないなみたいだなっていうのをちょうど思ってるところにお会いさせていただく機会があって、「あ、これはすごいな、便利だ」みたいだなっていうのを覚えてますね。

石橋
toBの投資先としては坂さん個人の思考としては多いんですか?


前は多かったですけど、最近は結構toCも徐々に徐々に増えてきてるかなっていう感じです。

石橋
そういう中で坂さんとして、こういうところの観点は面談時でも検討時でも絶対に譲ってはいけない投資観点だったりですとか、基準みたいなところっていうのはあえて言語化するとどういうものに収斂されていくんでしょうか。


常になんか何かのギャップを探してるような感じで。今お話ししたのって現実と理想のギャップじゃないですか。例えば今まで言うと、10代と30代のギャップで、30代とかこういうSNS使うけど10代とかこっち使ってんだよな、とか。何かを調べようっていうとっかかりに、自分しか気づいてないだろう仮説を作っていくっていうのは、結局なんか一番大事なんだろうなと思っていて。みんながいいって案件ばかり多分検討してても、大きな成果は出ない可能性もあって。「絶対この会社をもう信じてるんだ」みたいな、「この事業の市場を信じてるんだ」っていうことを言うことがすごい大事だと思うんですけども、そこに対してやっぱ自分なりの「これがあるから絶対いけるんだ」みたいになって、別にその自信はどこで持ってもいいんですけど。そういうのを僕はギャップを見つけて、謎に「これはいける」みたいだなっていうのを自分で作るみたいなのはあるかもしれない。

石橋
創業期に近いところから出資されるとなると、よくチームとか人っていうところも議論に上がるポイントなのかなと思うんですけど、坂さんとしては、こういう起業家とかこういう特徴を持ってる人の方が、結果大きくまあなりやすいのかってどういう風に思われたりするんですか。


やっぱ3時間ぐらいよどみなく話し続ける解像度の人っていらっしゃるじゃないですか。これはすごいなって思います。やっぱこう顧客の解像度だったり、その事業展開の戦略の解像度、組織作りの解像度みたいだなっていうのは、やっぱ3時間ぐらい話してると矛盾が生じてくるんですけど、だいたい本当に考えきられてる方って、ノンストップでバーっていくんですよね。僕より明らかにこう解像度が高い状態で見えているっていうのはすごく大事にしてるかもしれないです。

石橋
これから起業されようとしてる方とかだと、こういうアクションを取っていただけると、結果論として坂さんとか他のキャピタリストの方からエクイティ調達の確度ってのが上がっていくんじゃないかろうかというところを、最後ぜひアドバイスいただければと思うんですが、お願いしてもよろしいでしょうか。


VCに限らずいろんな人に会って話してみるのが一番いいと思います。自分自身の考えもどんどんブラッシュアップされていきますし、どんどん良くなっていくと思います。僕が例えば昨日、ある事業の話を聞いてそのタイミングだったから、すげえいいと思ったみたいなこととかもすごくあると思う。タイミングと相性とみたいな、偶然の要素がすごいあると思うんで、何回も何回もこういろんな人と話してみるのが一番ファイナンスの確度は上がるんじゃないかなという風に思っております。

石橋
改めて坂さん、全3回に渡りましてご出演いただきました。ありがとうございます。


ありがとうございます。

石橋
またぜひですね、これ第3回の動画でございますが、第1弾にはJAFCOさんについて、第2弾ではどういうご経歴を重ねてきてらっしゃるのかみたいな話も伺っておりますので、ぜひ3番目から見た方もですね、遡って見ていただければと思っております。皆さんもご視聴ありがとうございます。