【IPO】ベテランVCに聞いた伸びる事業の特徴と投資方針【イノベーション・エンジン 雨宮さんvol.1】
◯雨宮 秀仁 イノベーション・エンジン株式会社インベストメント・パートナー
イノベーション・エンジン株式会社 HP▶︎ https://www.innovation-engine.co.jp/ Facebook▶︎https://www.facebook.com/hide.amemiya…
1971年茨城県生。明治大学法学部卒。
1995年日本合同ファイナンス株式会社入社(現 株式会社ジャフコ・グループ)広島支店属
1000を超える経営者と面談。8社に出資し、IPO実績は5社(アスカネット、アドテックプラズマ テクノロジーなど)。
2001年株式会社アスカネット入社。フォトブックサービス提供の立上げに従事。マーケティング全般、PR、生産ラインの構築などゼロイチを経験。事業黒字化によりIPO実現。その他、改善活動、情報セキュリティ委員・情報監査責任者、内部監査を行う。
2012年株式会社メンバーズ入社。全社の品質・生産性向上の責任者として、制作工程の可視化、生産管理手法を見直すなどメソッドの社内展開を図る。革新的なWeb運用サービスを実現。
2017年イノベーション・エンジン株式会社入社。12社に出資し、IPO実績は2社(AI CROSS)。
50名以上のキャピタリストが在籍する「ステルスVC」の実態
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。
今回からはですね、なかなかリアルオフィスのない方といっても過言ではないのかなと思っているんですけれども、イノベーション・エンジンのインベストメントパートナーでいらっしゃる雨宮さんにご出演をいただきますで、雨宮さん今回はよろしくお願いいたします。
雨宮:
よろしくお願いします。
石橋:
冒頭で簡単に触れさせていただきましたが、まさにベールに包まれたと言ったら言い過ぎかもしれませんが、僕自身は雨宮さんを通じてイノベーション・エンジンさんをもちろん存じ上げてはいたものの、どのような実態のあるベンチャーキャピタル(VC)さんなのかって、イメージめちゃめちゃ歴史あるのにあんまりよくわからないというか。
記事に出ていらっしゃる方やメディアに出る方も少ないのかなと思うのですが、ステルスでやられてらっしゃるわけではないんですよね?
雨宮:
そうですね。2001年にできているので長い歴史はあります。キャピタリストが皆さん、50歳以上なんですよ。
石橋:
皆さんですか?
雨宮:
皆さんです。僕も含めて。なので、自分のルートをすでに持っているんですね。
石橋:
わざわざ表に出なくてもちゃんとソーシングができていて、ご紹介も来るし困らない人たちなんですね。
雨宮:
そうですね。
石橋:
ではある意味、玄人なキャピタリストの方々で、皆さん中途の方ですか?
雨宮:
みんな中途です。全員ベンチャーキャピタリストをどこかで経験しています。
大学発ベンチャー投資の先駆者、23年前の挑戦
石橋:
いったんイノベーション・エンジンさんの大枠のところから整理をしながらお伺いしていきたいと思っているのですけれども、創業でいうと2001年でしたっけ?
雨宮:
2001年ですね。
石橋:
20年以上もやられていらっしゃって、今まででいうとどのくらいの規模のファンドで、どういう方針でやってきていらっしゃった感じなんですか?
雨宮:
もともとJAFCOという会社の産学連携の責任者だった佐野という者がいまして、それが1990~2000年代にVCができた時に、大学系の技術でスピンアウトしようというケースがなかったんですよ。
みんなITに行っていて。その時に大学の技術を使って、それをエンジンにしてイノベーションを起こしたい。今でいうディープテック系のVCを立ち上げたのが23年前。
石橋:
大学初ベンチャーみたいなことは、当時もほぼなかった?
雨宮:
なかったです。まだ産学連携という言葉でしたね。
石橋:
今でいうディープテック系ですとか、大学初ベンチャーの投資先って非常に多いんですか?
雨宮:
多かったですね。
石橋:
そこから軸はぶらさずという感じなのでしょうか?どういうところまでターゲットになっているとか、ラウンド感はどういったイメージなんですか?
雨宮:
かれこれ約460億円くらいの運用をしてきてます。歴史が長いので。特徴は、新規公開株式(IPO)していただいているところが、3分の1強がバイオなんですね。
それからロボット系、当時でいう有名なロボット系にもだいたい出資をしていたり、ずっとディープテックでやってきました。
2010年半ばぐらいですかね。スタートアップブームがまた来た時には、ちょっとゼネラルファンドを作って、もう少し広めのジャンル。エンタメ・技術・サービスから今やってきているという感じですね。
リードとフォローを使い分ける、柔軟な投資スタイル
石橋:
基本的には投資方針としてはバイオとかロボット系ですとか、結構お金が開発にも必要なイメージが強いのですが、投資バジェットとしても大きい規模の投資をされるんですか?
雨宮:
それほどファンドサイズは大きくないです。なのでインベスター集めながら、自分たちではなくみんなで支えようというようなファイナンスが多いです。
石橋:
基本的にはその中でもリードで投資されることが多いですか?それともリード・フォロー関係なくフレキシブルにやってらっしゃるんですか?
雨宮:
どちらもあります。あと個人的にリードの定義が僕はよくわからなくて、バジェットじゃないリードもいると思っているので。
うちの出資先は結構オブザベーション・ライトをいただきながらフォローしているというケースが多いですかね。
石橋:
なるほどですね。投資した後のコミュニケーションですと、イノベーション・エンジンとしてはどういう方針でやってることが多かったりするのでしょうか?
雨宮:
我々は毎月1社1社ごとに試算表を見ながらチェックするんですよ。
石橋:
ちなみに今は累計何社?やばいほどいますよね?
雨宮:
やばいですね。50~60社あるのではないですかね。全部試算表を見ながらコンディションを言い合います。ということは各自が情報を持ってきてやっています。
当然それ以外もハンズイフかもしれないですけど、何かあればフォローはしています。僕自身は毎週あるいは隔週で定例がある会社が何社かありますし、当然オブザベーション・ライト以上でほとんどの会社出ているので、っていうルーティンはありますかね。
「奥さんの就職先探し」まで支援する、深い関係性
石橋:
何か今までで特徴的な投資先ですとか、雨宮さんご自身の担当先だと、こういうところが印象的だったとか、こういうところはこういう支援だったりとか、こういうところに可能性を見出して投資した、みたいなエピソードなどはございますか?
雨宮:
支援のエピソードで言うと、代表の奥さんの就職先を探したことがありますね。
石橋:
そこまで入り込んでコミュニケーションしてという感じなんですね。
雨宮:
そうですね。経営者と話していて、「今は何が一番課題?」と言ったら、「妻の就職だ」って言われたので、4~5社を紹介してましたかね。
石橋:
それは一般的なケースではないですもんね。
雨宮:
そうですね。ただ、ケースとしてはそこまで入り込める関係は作りたいと思いますよね。なので、指折り数えた時の相談相手にいたいっていうのはあります。
triplaのIPO成功事例:チャットボットからバーティカルSaaSへの転換
石橋:
例えばイノベーション・エンジン社として雨宮さんが投資されてすごく伸びたとか、それこそ既にイグジットされているような投資先の事例とか、どういう会社がいらっしゃるんですか?
雨宮:
そうですね。その意味では2022年にtriplaという会社が上場いただいています。
石橋:
最近上場されているので知っている方も多いとは思いますし、比較的世代も僕らに近い会社だとは思っています。
雨宮:
今時のビジネスモデルかなと思います。ホテルの予約システムを中心としたバーティカルSaaSの会社です。
石橋:
どういう経緯でどういうところに雨宮さんとしては勝ち筋を見出して投資をされたんですか?
雨宮:
一番最初はホテル向けのチャットボットをやっていたんです。代表に聞いたのが、「チャットボット屋さんで行くのか、ホテル特化型のビジネスモデルにするのか」っていう質問をしたんです。
「ホテルのエージェンシーになりたい」というお話だったので、まずは考えようと。これはきっとチャットボット屋さんと言われた瞬間に、やらなかったと思います。特徴が出ないので。
その意味ではそこからクライアントの数を積み上げてくるというトラックレコードがある程度見えてきたので、そこでまず1回目の出資をして。
石橋:
ちなみにその当時はどのぐらいのラウンドの、プレAやシリーズAなど、いろいろ言い方あると思うんですけど。
雨宮:
外部調達で言うと3回目かな。プロダクトマーケットフィットが見えたのが前回で、その後のスケール段階、シリーズでいうとAなのかな?という感じですかね。
石橋:
ちなみにその時はどのぐらいの金額投資されたんですか?
雨宮:
その時は初回は1億7000万円くらい。ラウンドのリードをやらせていただいたんですけど。
参入障壁の見極め方:ツールではなく「使われるシーン」で勝負
石橋:
VCの方も見ている中で、界隈の人であればなんとなくニュアンスで伝わっているかもしれませんが、もしかしたらこれからご自身でエンジェル投資したいとか、それこそスタートアップの方もよく見ていただいているので、彼らに向けて「こういうパターンだったらアリだったり」「こういうパターンは特徴が出ないから投資できる、できないよね」とか、「だから結果としてIPOをしたのでは?」みたいなところをご説明をいただきたい。
雨宮:
まずはチャットボットはあくまでツールなので、その意味でいうとある程度エンジニアがいれば作れちゃうんですよね。
なので、これがどこで使われるか、その使われたシーンで参入障壁があるかというのがポイントだと思っていて、例えばECだと「これいくらですか?」「スペックはどうですか?」「納期はいつですか?」など質問が決まってきてしまう。
ところがホテルなどは、サービスなので質問が難しいんですよ。例えば今の時期だと「新宿の桜の見えるレストランがあるホテルはどこですか?」とか。
石橋:
根本的に質問が違いますね。
雨宮:
違います。場所もそうだし、人もそうだし、ってなってくるのが揃ってたらこれ勝てますよね。参入障壁が非常に高くなる。それがあるとバーティカルとしてホテルに違う商品が提供できる。
石橋:
深く入り込めてるからというところですね。当時はまだチャットボットをやっていらっしゃって、こういうエージェンシーになっていきたいというところで1憶7000万円というところも投資もされて、そのあたりどういう変遷を経てtriplaさんで上場に至られたのですか?
雨宮:
お客さんの意見を聞く会社なんですね。それでプロダクトを作っていく、そのスピード感とホスピタリティがすごく良くて。コロナ真っ最中になってしまった。今度ホテルの予約システムをSaaS型に切り替えるというプロダクトを出したんですけど、コロナの間だったんで商談も進んだ。
石橋:
アポは取りやすそうですね。
雨宮:
取りやすいです。ですからみんな「トラベルなのになんで売り上げ伸びるの?」「施設数が上がるの?」というところをうまく持っていた。
チャットボットで切り開いたホテルの窓口、ここをホリゾンタルの上に乗っけていくっていうのは、まさしくこの3年ぐらいでかみ合ってサービスが重層化してきた。それで伸びてきた。そしてコロナも明けた。
石橋:
上場後とかだと成長ポテンシャルも、これからめちゃめちゃ追い風になってるんじゃないですか?
雨宮:
そうですね。まだ売り上げ11~12億円の会社なので、すぐに20億円を超えてきてくれると期待してます。
次回予告:投資先上場率70%の秘密に迫る
石橋:
第2弾では雨宮さんのどういうお人柄なのか、どういう質をもってキャピタリストをやられているのかというのをお伺いしつつも、第3弾はJAFCOさんだけの時代を切り取ると、雨宮さんが投資した会社の70%が上場してますと。
シンプルに言うと異常値だと思うので、なんでそうなってるんだっけとか、あとはtriplaさんのお話を簡単にお話を垣間見させていただきましたけど、どういうふうに見極めてらっしゃるのかっていうところをお伺いしていこうと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【キャリア】16年のブランクを経ても多数のIPOを成功できた理由とその経歴に迫る【イノベーション・エンジン 雨宮さんvol.2】
新卒でVC業界へ、きっかけは一通のDM
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。
今回も前回に引き続き、イノベーション・エンジン社、インベストメント・パートナーの雨宮さんにご出演をしていただいております。今回も引き続きよろしくお願いいたします。
雨宮:
よろしくお願いいたします。
石橋:
前回は、そもそもイノベーション・エンジンさんは、めちゃめちゃ歴史があるVCさんなのに、ベールに包まれている。ある意味、玄人キャピタリスト集団みたいなところの、部分的なお話をいただいたと思っているのですが、今回はその中でも雨宮さんがどういうご経歴だったりとか、そもそもなぜ今イノベーション・エンジンにいらっしゃる、あるいはVC業界にどのような変遷をたどってきていらっしゃるのか、どのような想いをもってやっていらっしゃるのか、というところをぜひお伺いをしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
雨宮:
よろしくお願いいたします。
石橋:
そもそもVC業界だったり、事業会社からキャリアを初めていらっしゃるんですか?
雨宮:
JAFCOに新卒で入りました。
石橋:
ちなみに何年前ですか?
雨宮:
1995年4月入社です。
石橋:
大体30年前ということですね。当時の新卒でVCを選ぶ人は、たぶん狂気に近いですよね。
雨宮:
実はあの頃もですね、店頭登録(現・JASDAQ等の前身)という上場基準を達していて、上場会社だったんですよ。ちゃんと中身を見ると分かると思うのですが、日本合同ファイナンス(現・ジャフコ グループ株式会社)って社名なので。そういうふうには言われましたね。
石橋:
なんでちなみにその当時、新卒でVC業界を選ばれたんですか?金融の専門とか、そういう系の学部だったんですか?
雨宮:
ではないですね。なんでJAFCOを受けたかというと、DMが来たんですね。きっかけはそれです。なので、それまで全然知りませんでした。
ただ、実家が商売をしていて、大学時代に本田 宗一郎さんが亡くなられて、本田さんの本を読んでたんですね。本田さんの本を読むと、今度はSONYの本を読まなきゃいけなくて、SONYの本を読むと、松下さんの本を読まなきゃいけなくて。
そういう会社が戦中戦後でこんだけ作られてきたっていうのがすごいカッコいいなと。それと、先ほどの実家の商売やっていた、この辺が繋がったんでしょうね。それでパッと見た時に受けてみようと飛び込んでいったって感じですね。
広島支店6年で5社IPO、驚異の実績の裏側
石橋:
当時ってJAFCOさんだと、今みたいなVCの仕事の役割と全然違う時代だったりもするんですか?
雨宮:
ある意味ですね、資本経営っていうのをどうしようかっていう時代だったと思っていて、90年代なのでバブルはじけた後処理があった頃ですね。資本増強していこうと、銀行さんだけの時代じゃないっていう時代ではあったと思います。
なので90年代はどちらかというと上場会社を作るっていうような意味合いが大きかったんですかね。なので、金融系のVC、昔すごい多かったんですよ。
石橋:
第1弾で少しお話もさせていただいたんですけど、JAFCOさん時代でいうと、トータル8社に投資されて、5社がIPOしている。「なんだそれ?」みたいなIPO実績を雨宮さん個人としてはお持ちってところをお伺いをしたんですけど、何年間ぐらいJAFCOさんにいらっしゃったんですか?
雨宮:
6年いました。僕は広島県支店だったので、出資先がいっぱい生まれるわけではないんですよ。
石橋:
広島支店だと広島地域だけなんですかね?
雨宮:
中国・四国ですね。
石橋:
それで5社上場したんですか?
雨宮:
そうです。
石橋:
すげえ。
雨宮:
あんまりないんですよ、先輩方が全部掘られた後なので。
石橋:
6年間ずっと広島支店でやってたんですか?
雨宮:
そうです。
出資先への転職、20社の担当から1社集中へ
石橋:
JAFCOさんからは6年間働いて、違うVCさんに行かれたんですか?
雨宮:
自分の出資先に移りました。
石橋:
綺麗ですね。
雨宮:
怒られました、当時はめちゃくちゃ怒られました。
石橋:
ちなみにどの会社さんに?
雨宮:
アスカネットっていう会社です。
石橋:
見ていらっしゃる方の中では知らない人の方がまだ多いですかね。
雨宮:
デジタル写真のアウトプットの会社さんで、葬儀の時の遺影写真のトップシェアの会社です。3人に1人はアスカネットの写真で葬儀が上がってると。40数万枚作ってるはずなので。
石橋:
見ているご本人にはまだ縁はないという感じですね。
雨宮:
その後に、そこで学んだデジタル写真とか加工とかを横展開して、今は結構メジャーになったんですけど、フォトブックを日本で初めてやった会社です。
石橋:
投資された時はどういうステータスだったんですか?
雨宮:
まだ設立3期目。売り上げは上がるんですよ、パソコンとかプリンターとか売るので。でも遺影写真って加工してなんぼで、ずっとリカレントで積み上がっていく、その数はね、まだ大きくなかったんです。葬儀社さんを1社捕まえると、ずっとそこで月何枚か出てくるんですよ。
石橋:
そういうことか。葬儀社さん向けに提供するんですね。コンシューマー向けではないんですね。
雨宮:
だって亡くなった時に忙しくてやってられないでしょ。
石橋:
だから葬儀屋さんに言われたやつ使いますもんね。
雨宮:
葬儀社さんをインターネットで繋ぐんですよ。リモートで全部加工するっていう。
石橋:
全然今っぽい話にも聞こえますね。「バーティカルSaaSです」とか言われても、「あ~ありそう」とか、そういう話になりそうですね。
雨宮:
日本型DXの会社ですよね。1993年くらいからビジネスモデルを作ってますね。
石橋:
それで、業界トップシェアも取ってらっしゃるんですね。
転職の理由は「1社集中」と「応援される側を知る」
石橋:
ちなみに転職された理由と、なんでアスカネットさんにされたみたいなところですか?
雨宮:
先輩方が全部出資先を私に置いてってくれるんですよ。最後には担当が20数社になっちゃったんですね。1社に集中したらどうなるんだろうというのを試したかったっていうのが1つですね。
あと、先輩方がみんないなくなっていくんですけど、ずっと下だったんですよ。なので、マネージメントっていつやらせてもらえるかな、なれるかなっていうのが1つ。それと、応援すればそこそこ頑張ったので、応援される側を知ってたら選択肢が持てるかなと。大体この3つですかね。
石橋:
その中でアスカネットさんにされたのは?
雨宮:
出資先ですごく良い関係が作れていたというところが一つと、自分でもやれそうなビジネスモデルだったというところですかね。
石橋:
貢献できそうみたいなイメージですか?
雨宮:
そうですね。
石橋:
アスカネットさんの中では最高財務責任者(CFO)だったりとか経営企画とかではなく?
雨宮:
ではなくですね。事業部側にいましてですね、先ほどのフォトブックっていう事業の立ち上げと黒字化を図ってました。きっとですね、経営企画とかCFOだったらいかなかったと思います。
石橋:
そうなんだ。むしろそういう経験がしたくてっていう感じですか?
雨宮:
どちらかというと商売人の子供なので。
石橋:
そっか、そっちにもまた話が戻ってくるわけですね。
アスカネット11年、メンバーズ5年、事業の最前線で
石橋:
転職された時はアスカネットさんは上場してない?
雨宮:
してないです。
石橋:
転職を経て、アスカネットさんとしての上場も経験し、トータル何年くらいいらっしゃったんですか?
雨宮:
アスカネットは11年。4年目で上場ですかね。
石橋:
早い、早い。その後は事業経験もやり切られて、イノベーション・エンジンになられるんですか?
雨宮:
次はメンバーズに移ってます。40歳のときです。
石橋:
プロマーケットに上場されている?
雨宮:
ではなく、1部にいたんですけど、僕が行った時はセントレックスに行って、5年間で売り上げが倍ぐらいになって、5年間で東証一部上場に上がるっていう、上場の成長の5年を経験しましたね。
石橋:
なんでメンバーズさんには転職されたんですか?
雨宮:
これ、アスカネットの人見てると怒られちゃうんですけど、アスカネットではデジタル写真で言うと有名になれたんですよ。写真だけじゃない世界をもっと見た方がいいかなと思って、広くインターネットの世界を見ようと思ってメンバーズに行きました。
石橋:
メンバーズでもやはり新規事業立ち上げって感じですか?
雨宮:
メンバーズはですね、社内の生産性とか品質とかの向上の責任者をやりながら、お客さんのワークもしたりしてましたね。プレイヤーでいましたよ。
石橋:
変わらずファイナンスとかじゃない?
雨宮:
やってません、やってません。
石橋:
メンバーズさんは何年いらっしゃったんですか?
雨宮:
5年です。
45歳、16年ぶりのVC業界復帰
石橋:
事業サイドに合計16年。そこでようやくイノベーション・エンジンが出てくる?
雨宮:
そうです。VCに来たってことです。
石橋:
16年ぶりに?
雨宮:
そうです。45歳で。
石橋:
当時の知り合いとかお付き合いのあられる方って、16年ぶりにVC業界に戻ると、みんないないみたいな感じなんですか?
雨宮:
さすがJAFCOさんですよね。脈々と先輩方はいらっしゃる。
石橋:
当時の同窓の方とかJAFCOさんで活躍された方って、例えば今も活躍されてる方だとどういう方になられるんですか?
雨宮:
今の僕のマンションの隣がですね、JAFCO Asiaの社長やってる渋澤さんが僕のインストラクターで、マンションの隣です。その隣がインキュベイトファンドの赤浦さん。
この3人、マンションの隣です。っていうのが、僕がJAFCO行った最初の1年。
石橋:
16年ぶりに戻ってきても、やっぱそういう方々が変わらず活躍もされてらっしゃって。
雨宮:
そうですね。
事業とVCのギャップを埋める、選択肢を持つタイミング
石橋:
事業会社の中でファイナンスやられたわけでもなく、事業サイドもずっといらっしゃって、なんでまた戻ろうっていうふうに思われたんですか?
雨宮:
JAFCOからアスカネットに行く時に、将来選択肢を持てたらいいっていう、タイミングが来ただけだと思っていて。
石橋:
どういう感覚だったんですか?もう選択肢がある状況に慣れてるなと。
雨宮:
結局VC側と事業側ってすごいギャップがあるんですよ。やれることとやれないことも違うんですよね。その辺りを事業側で見たので、少し埋められるじゃないですか。
石橋:
JAFCOさんに戻るとかではなく、イノベーション・エンジンさんに入られたのはどういう理由だったんですか?
雨宮:
そうですね、イノベーション・エンジンは結構JAFCO、OBが多くてですね、かつフリーにやれそうな雰囲気があったので。
石橋:
ご自身でやられるというのは当時も検討もされたんですか?
雨宮:
そうですね。まず自分でやるには16年いなかったので、やっぱり少しアイドリングしないとやれませんよねと。あと45歳で、VCの中途は求人がそんなにないと思います。
石橋:
若手の方が多いんですかね。
雨宮:
しかも離れてたんで、昔の人は知ってますけど、若い人は知らない人が多い。
石橋:
逆にイノベーション・エンジンさんだと玄人系の人が多いってなると、そういう世代とかの求人も全然出てたって感じですかね。
雨宮:
そうですね。これも先輩の紹介で「会ってみたら?」みたいにいただいて。
石橋:
中に入ってみると、イノベーション・エンジンさんってかなり自由にやれていらっしゃるって感じなんですか?
雨宮:
そうですね。自由ですね。
復帰後も12社出資、2社IPOの実績
石橋:
イノベーション・エンジンさんに入ってからで言うと、何社も投資されていて、どのくらいイグジットはされていらっしゃるんですか?
雨宮:
一応12社出資をしていて、IPOは2社出ています。
石橋:
IPOされているところはどことどこになるんですか?
雨宮:
AI CROSSさんとtriplaさん。
石橋:
triplaさんはまさに第1話でもご解説いただきましたけど、AI CROSSさんはちなみにどういうラウンド感から、どういう背景で投資を雨宮さんとしてはしていらっしゃるんですか?
雨宮:
ファイナルラウンドだったんですね。財務体質をうまく改善したいというファイナンスがあって、そこに運よく入れたっていう感じですかね。
事業経験が生む、経営者との近い距離感
石橋:
事業会社経てるからこそ、今こういうムーブを取れてますみたいなのって、エピソードとしてあられたりしますか?
雨宮:
20代は相当尖ってた男だったんですよ。
石橋:
そうなんですね。
雨宮:
どちらかというと、情報だけ持って行って、懐に入って。上から可愛がられるタイプですね。「なんかあるかもしれない」みたいな。俺に触るな、って感じです。
石橋:
それがだいぶ変わってきたって感じですか?
雨宮:
そうですね。事業会社に行って変わって、逆に皆さんと同じ苦労をしているんですよね。「マネジメントはこうだ」とか、「ここのお客がさ」とか。特に人関係ですかね。そこは同じ目線でお話ができるので。ある会社はありましたね、人事評価の時に「目標設定これでいいか確認してくれ」って言われたことがありましたね。
石橋:
結果として、第1弾でもちょっとおっしゃってましたけど、だいぶ近い距離感で起業家の方とも支援をして、奥さんの転職先を相談されるぐらいのところまで入り込むっていう方がいいかわからないですけど、そのぐらいまで近い距離で伴走しながら、結果、成績も出てくるというか、しっかりイグジット事例も増えてきてるっていう感じでいらっしゃるんですね。
ありがとうございます。改めて、どういう背景でそもそも戻ってこられたんだろうとか、JAFCOを辞められる時とかって戻ってくるイメージで退職されてたのか、イメージついてなかったので、改めてちょっとお話を伺えて非常に良かったです。
雨宮:
戻る前提だったんでしょうね。
スタートアップが好き、それだけで16年を超える
石橋:
それでも16年ぶりに戻ってくるって、やっぱすごいと思いますけどね。最近足元でも、若手のVCの方が良い意味で増えてきていらっしゃる中で、比例して退職する人も当然増えるわけじゃないですか。
VCとしての関わり方と投資先との距離みたいなものを健全に感じられて、そこを課題意識を持って業務経験とか事業経験を踏もうみたいな方、よく見聞きしますけど、1回業界離れちゃうと多分戻ってこないんだろうなって思ってしまってるんですけど、16年越しでもそれをやってて、しかも変わらず戻ってきた上でIPOさせている事例がある人って、多分ほぼいないと思うので。
雨宮:
スタートアップが好きかだけですね。新しいことが好きとか、経営者が好きかっていう思いじゃないですかね。
石橋:
それで実際に行動を移されて結果出されてるので、シンプルにすごいなと、お話を伺って思いました。
雨宮:
ありがとうございます。
石橋:
とんでもないです。ちなみにイノベーション・エンジンさん、現状は求人は出てないですよね?
雨宮:
ですが若い子は接点を持ちたがっているので。
石橋:
ぜひ番組を見ていただいている方の中でですね、イノベーション・エンジンさんにお話を聞いて、場合によっては雨宮さん個人に関心が出る場合ももちろんあるかとは思いますので、概要欄の方にホームページのURLとか雨宮さんのFacebook等のURLも記載をさせていただいておりますので、ぜひコンタクトもいただければと思っております。それでは雨宮さん、第2弾もご出演ありがとうございました。
雨宮:
ありがとうございました。
石橋:
第3弾ではですね、雨宮さんがなぜJAFCOさん時代で例えると8社でIPOしているのが5社ですね、要は約70%の投資先が上場しているのか、みたいなところの見極め方みたいなところをお伺いしてまいりますので、ぜひ次回もご覧ください。
【投資家必見】上場できる企業の共通点をVC目線で詳しく解説!【イノベーション・エンジン 雨宮さんvol.3】
IPO率70%の実績を持つ投資家が見る「勝ちパターン」
石橋:
はい、皆さんこんにちは、スタートアップ投資TV、GazelleCapitalの石橋です。
今回も前回に引き続き、イノベーション・エンジン株式会社からインベストメントパートナーの雨宮さんにご出演いただいております。よろしくお願いいたします。
雨宮:
よろしくお願いいします。
石橋:
すでに第1弾、第2弾とお話をいただいてきましたが、一言で言うと雨宮さんが投資すると上場すると。JAFCOさんの時代を例にすると、8社に投資されて、そのうちの5社がIPOを実現されていたり、担当投資先の70%が上場すると。基本そんなことはありえないですよね。一般的に何割が健全なんですか?
雨宮:
3割いったら勝ちって言いますよね。
石橋:
今回はそんな雨宮さんだからこそお話しいただける、どうやって未上場な状態のスタートアップなのに上場するスタートアップを見極められるのか。今までの雨宮さんの事業会社を経ての知見も合わせて、既に何社もIPOされている中で、個別解でいうとこういう会社はこういう要素があったからポテンシャル高く上場できたよねっていうところがもしあればですが、雨宮さんの予想を超えたIPOや予想していなかったようなところをシェアいただければと思います。
第1弾ではtriplaさんのIPO事例、第2弾の動画ではアスカネットさんのお名前を挙げていただきましたが、3社さんぐらい事例を交えてお話いただくとすると、もう1社さんでどこら辺の会社さんが出てきそうですか?
雨宮:
もう1社、そうですね。昔、JAFCOの時に色々教えていただいた会社ですけど、広島県の福山市にあるアドテックプラズマテクノロジー。半導体製造装置の中の重要パーツを作っている会社さんですね。
経営者に共通する「何かをし続ける執念」
石橋:
その3社の例を交えながら、まずは共通項目でいうと、こういうところが絶対外しちゃいけない、例えばどういうものになるんでしょう?
雨宮:
まずはですね、3人とも経営者が何かし続ける感じの人ですね。アスカネットの福田さんは、企画とか新しいことを探し続けるっていう人なんです。そのために学習もする人ですね。
石橋:
アクションがもう止まることはない?
雨宮:
止まらないし、新しいことに常に関心がある人。
石橋:
アドテックの創業者の方はどんな方なんですか?
雨宮:
あの方はですね、技術とかの方に行くんですね。自分でパテントを書くんですよ。技術の新しいことにすごく目が行く人ですね。
石橋:
triplaさんでいうとどういう方なんですか?
雨宮:
いろんなことを楽しむ人かな。すごく仕事ができる人です。Amazonにいらっしゃったので。常にこちらの答えを上回る返答をし続ける人かなって感じがしますね。続けることはいろいろあっていいと思うんですけど、そこへのモチベーションはみんなある気がしますね。
石橋:
たまに学歴で投資するVCがいるとか揶揄されるケースも見かけたりするんですけど、そういうキャリアとかご経歴とかも関係あるんですか?
雨宮:
関係ないですね。僕が昔に出資して一番投資収益率(ROI)高かった会社は、全員高校出てないです。
石橋:
ROIどのぐらいなんですか?
雨宮:
2年半で550倍。
石橋:
どのくらいのリターンになったんですか?
雨宮:
数百万しかご出資ができなかったんですけど、それが2年半で16億円になりました。
石橋:
それで創業チームの方々が?
雨宮:
全員中卒です。昔の暴走族の仲間です。携帯電話の販売をやってたんで、時代に乗ったんですけど。
石橋:
強そう。
雨宮:
強そうですよね。商売上手ですよね。
石橋:
確かに、営業強そうですよね。
雨宮:
あとね、チームビルディングめっちゃ上手いです。リーダーシップめっちゃあります。
どっちかというと経営のほとんどの悩み事って人だと思うんですよね。学歴じゃなくて遊びがあるとか、これは結構重要だと思います。外せないかな。
結局ご出資しても真面目にお金使うんじゃなくて、遊びがありながらバランスとってやる人の方がいいじゃないですか。生きている上で全部つながる気がしていて、それの最たるもんかなって思いますね。
ニッチ市場でトップシェアを取る戦略
石橋:
元暴走族的なところも最たる例だなとは思いつつも、人、物、金って呼ばれると、人のところと同じような優先順位が当然、物、プロダクトですとか市場とかって話もあるのかなと思うんですけど、そういうところの観点での、ここは絶対外せないポイントの共通解でいうとどういうところなんですか?
雨宮:
人と違ったことをやるってやっぱり重要だと思っていて。例えば4大○○とか8大○○っていうふうに言われるじゃないですか。あの○大って昔から言われてて、きっとね、あれ以上いらないっていう表現なんですよ。あれっていうことは、今の証券市場も新しい会社を求めてるっていうことに僕は思っていて。
っていうことはその前をやってる我々は面白い会社を探さなきゃいけないですよね。でも面白いことやってても勝てない。商売って基本的に敵が多いと負けやすいので、高知県って高校野球のチームが20数チームしかないんですよ。シード校だと1回勝つとベスト8なんですよ。
勝たなきゃいけない数が少ないっていうことは負ける可能性も少ないので、基本的には僕はニッチ市場でトップを取ることだと思っています。
石橋:
でもそこでトップを取れれば、正確に言うと違うかもしれないですけど、甲子園≒IPOとすると。できちゃうわけですね。
雨宮:
できちゃうわけです。そうしたらお金が余るから施設が良くなるわけですよね。みたいに、1つ口を開けるといろんなことがプラスに働くはずなんですよね。事業面でもそうだし、人でもそうだし、お金でもそうだし。
石橋:
そうなると市場で言うとニッチというのは、triplaさんも旅行業界、宿泊業界ですし、アスカネットさんで言っても写真業界ですかね。
雨宮:
デジタル写真ですかね。アドテックさんいうと、半導体の中のこの分野の世界トップ企業。
石橋:
そうすると確かにそれぞれがニッチトップ取れる、もしくは取っているっていうようなところの会社さんになってくるということですかね。
雨宮:
そうですね。取って広げる。先に何かアドオンするのか、持ってる技術を横に広げるのか。
石橋:
違う業界にってことですね。
雨宮:
例えばアスカネットは写真の加工をやってて、葬儀屋さんに向けてやってたのを冠婚葬祭に広げ、一般のユーザーに広げですよね。triplaさんはチャットボットで気づいたお客さんに予約エンジンを載せていった。そういうふうに広げることができるのだと思うんですけどね。
ビジネスモデルの重層化が成長の鍵
石橋:
ビジネスモデルやキャッシュフローなど、市場性以外のところで絶対外せないのは?
雨宮:
今申し上げたのと非常に近いんですけど、重層化できるかですね。ビジネスモデルとして同じ業界に載せられるのか、他でもいいんですけど。結局最近コンパウンドと言われてますが、もう正直言うと昔からある話なんですよ。
石橋:
スタートアップ業界そういうの多いですね。
雨宮:
トヨタ自動車さんが1990年代に設けた利益の伸びっていうのの半分以上は金融なわけですよ。他で持ってたローンを自分で取り込んだんですよね。結局同じことをやってるわけですよ。
石橋:
1つのセグメントから、圧倒的に強くなって、そこのポジションを使って横展開・深くしていって、もっと規模出して利益を出す。
雨宮:
昔からあることをきちんと経営者が理解してて、こうやったらもっと収益上がるよね、売り上げ上がるよねっていうことを知った方が良くて、今始まったことでは全くないんですよ。ただそれを若いうちからやると、いろんなところ手出しすぎってよくVCさんおっしゃるので、どっか口を開けてしっかり繋いだところに広げるか乗せていくかっていうプロセスだと思います。
投資家を惹きつける「顧客の声」と「未来の絵」
石橋:
VCさんの中でも、物が良くて市場が良くても、もしかしたらお金がないとやりきれないという時に、必ずしも全員の起業家が雨宮さんに会えるわけじゃないと思うので、どういう風に投資家を巻き込んでいくと良いのか、お金集めの観点で起業家の方々へアドバイスとかもしあれば。
雨宮:
市場は大きさというよりもコンディションだと思っていて、欲しいというウォンツって売るの難しいんですよ。どんだけペインとニーズに近づけるか。一番重要なのはカスタマーの声なんですよ。
結局マーケットが大きくても取るためのコストを考えたら、お客の声が濃いプロダクトをまず作ることで、それで30%取れる。ちっちゃくても30%取ったら勝ちですから。
石橋:
理想は超でかいマーケットで痛みが顕在化してプレイヤーがいないとかで、この巨大な掛け算による面積が取りうるとかだと理想的。
雨宮:
おそらくディープテックで誰もやれないことを我々開発しましたと、これ30年続きますっていうモデルはありえるかもしれないけど、SaaSではそれありえないわけです。
石橋:
絶対ないですね。
雨宮:
となると考え方変えなきゃいけない。こういう市場の中で、こういうお客の声を捉えていて、相応に取れますと。その後どこ行くの?っていう議論、ディスカッションに持っていきたいと思うんですよね。
なのでプロダクトの説明で終わるプレゼンじゃ終わっちゃいけなくて、1枚でもいいから5年後、10年後我々はこうなりたいという絵をしっかり入れていただいた方がいいかなと思いますね。
長く付き合える関係性が投資の前提
石橋:
それ以外の観点で人・物・金って今お話いただきましたけど、雨宮さんとして大事にしているところとか、譲っちゃいけないよなって改めて思っていらっしゃるところとかってありますか?
雨宮:
長く付き合える人かなぁ。これはきっと出資するしない関係なく、連絡取り合える間だと思うんですよね。出資ってその上に乗るんだと思うんですよね。
石橋:
一番おそらく長く付き合ってらっしゃるのってアスカネットさんで合っていますか?14年ですもんね。
雨宮:
そうですね。2~3年前かな、25年ぶりに松江市に行ったんですよ。25年会ってなかったんですけど、出資先の社長2社来ていただきましたね。みたいなのがやれる仕事なので、そういうふうにいたいですね、いつまでも。
石橋:
改めて広島に行って8社のうち5社ってやっぱおかしいですよね。大体、地域VCさんの悩みって投資先がいない、IPO事例も少ない、ファンドとしてのリターンが出るようで出ないみたいなところってすごいジレンマなのかなと思いつつ、そんな異常なケースがしかも広島からでいるんだっていうのって、やっぱ恐ろしいですね。今でも同じことはできますか?
雨宮:
今はできないと思います。ちょうど第三次ベンチャーブームが1990年代にあったので、そこからITブームっていうのがあったからいけたんじゃないですかね。きっとあの時代以降はね、言葉悪いですけど焼け野原状態だと思いますね。
これからVCを始める人へ:ファンドサイズと投資戦略
石橋:
ちなみに見ていらっしゃる方々の中で、VC、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の方々もいらっしゃって、自分で今後ファンドをやっていこうですとか、今後キャピタリストとしてのポジションを取っていこうという方々もいらっしゃるのかなと思う中で、もし雨宮さんが独立してVCファンドをやられるならば、こういうファンドにするよねって思い描かれてる?
雨宮:
あんまり大きいファンドサイズいらないかなと思ってて。何百億とかいらないと思ってます。VCって3順目のファンドを作れるかどうかは勝負なわけですよ。1順目がある程度できたら2順目は作れちゃうんですよ、3年後ぐらいでも。
でも5〜6年後に3本目ができるかどうかって1本目の結果を見られちゃうんで、3本目ができるかどうか、その時手金でやれる状態かどうかが結構3本目の葛藤があるはずなんですよね。と考えると1本目ってそんな大きくなくていいと僕は思う。それでしっかり利益を出すということは、あまりばら撒かない。プレからシリーズBくらいの、ある程度見えてきているところをしっかり支えてというのが、まずは良いと思います。
石橋:
それ以外のマーケットですとかビジネスモデルとかを選ぶならば、これからの10年だとどういう市場かなとか、そういうモデルかなとかはあります?
雨宮:
まず人はシリアルアントレプレナーを狙った方がいいと思います。あるいは事業会社のトラックレコードもしっかりチェックした方がいい。先ほどの社名とかで選ばない方がいい。
石橋:
中で何をしているかですね。
雨宮:
それをやって、領域ですね。これ難しいんですよね。半歩先、一歩先ぐらいじゃなきゃいけないので。その意味で言うと、僕は世の中、社会実装って言ってますけど、結局売れるものなのかどうかしっかり見るだけでいいと思っていて、そのマーケティングの観点が重要かなと思ってます。
社会実装っていうのは売れるかどうかの話なので、ペインだニーズだウォンツだっていうのをしっかり捉えてるとか、お客がどんな表現してるのっていうのはすごく重要。
石橋:
何か産業にフォーカスするとかってことはされるイメージではない?
雨宮:
しないですね。もうこんな便利なので、そんなにボコボコ良いプロダクトが出てくるとはあんま思えてなくて、どちらかというと、人の心理をどう変えられるかが、日本のマーケットは重要だと思います。日本は変化が嫌いな国なので。
石橋:
改めて今日、VC目線のお話もいただきましたけれども、見ていらっしゃる起業家の方々ですと、おそらく投資家さんに話す内容の仕方も変わってくるかもわからないですし、これから起業されようとしている方で言うと、マーケットの選び方だったりとか、どういうふうに山を登っていくのかっていうところ、非常に重要なエッセンスの話をいただいたのかなと思っております。
第3弾から見ている方はぜひ第2弾、第1弾もご視聴いただければなと思っておりますので、概要欄の方からまたチェックいただければと思います。それでは雨宮さん、第3回にわたりご出演ありがとうございました。
雨宮:
ありがとうございました。
