【17LIVE/ ジモティー/ウェルスナビ】一流VCが体験したトップ企業創業の舞台裏!【Headline Asia 田中章雄 vol.01】
◯田中 章雄 Headline Asia-創業パートナー
Headline Asia共同創業者・パートナーでありInfinity Ventures Crypto共同創業者。 90年代に北米で起業、ミドルウェア系スタートアップを設立・売却。 Macromedia日本法人CTO、Adobeアジア新興市場投資責任者を歴任。 2008年にHeadline Asia(旧Infinity Ventures)創業、freeeやWealthNavi等へ初期投資。 2021年よりWeb3・クリプト分野に特化したIVCを設立。
石橋
皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。今回は、この動画がおそらく配信された直後にIVS京都2025が7月2日から開催があるかとは思うんですけれども、そちらの直前配信回というところで、このタイミングだからこそHeadline Asiaパートナーの田中章雄さんにご出演をいただきまして、IVSを主催しているHeadline Asiaさんについて色々突っ込んでお伺いしていきたいと思いますので、改めてよろしくお願いします。
田中
よろしくお願いします。素晴らしいタイミングでお招きいただきありがとうございます。
石橋
ありがとうございます。起業家、この視聴者の方々もですね、この1本さえ見ればHeadline Asiaさんのことが全てわかるみたいなコンテンツにしていきたいと思っておりますので、色々お答えしにくいこともあるかと思いますが。
田中
何でも聞いてください。
石橋
ありがとうございます。直近にHeadline Asiaさんとしては5号目のファンドを200億円強でしたっけ?
田中
そうですね。ドル建てのファンドなんで変わりますけど、200億円強と言っていただければ正しいと思います。
石橋
その規模のファンドのレイズが終わって、今ガンガン投資もされているフェーズだと思うんですけど、今までの累計で言うとHeadline Asiaさんとして、どのぐらい預かっていらっしゃるんですか?
田中
コアのアーリーステージのファンドと、あと最近Web3ファンドも作ってるので、それも多分合わせると500mil超えるぐらいなので、日本円にすると700億ぐらいかなと思います。実際にいくらかはトランプ政権でどれだけ円相場が揺れるかわからないんですけど、まあ、でも大体それくらいの規模感と思っていただければと思います。
石橋
ざっくりと700億円ファンドで、ただ足元で新規運用が始まってるのは200億円規模ってところかと思いますが、このファンドについて色々ブレイクダウンして聞いていきたいんですけれども、投資対象になるのは例えばどういうステージ、どういうテーマでやってらっしゃるスタートアップになるんですか?
田中
最初のファンドから今までずっと基本的に同じような投資戦略を持っていまして、簡単に言うと「ジャパンプラス戦略」なんですね。「ジャパンプラス戦略」って何かっていうと、もちろん日本にも大きい軸足を置くファンドなので日本にも投資するんですけど、プラス、やっぱりそのアジアの成長圏とのリンケージをちゃんと作って、日本だけの経済成長率じゃなくて、うまくアジアの経済圏の成長も取り込もうよ、というところで。
最初の頃は、ちょうど僕らがまだファンドをやった頃は、中国がまだオープンだった時代があったんですね。で、当時は日本のゲーム会社さんほとんど中国で事業やってましたし、皆さんは多分もう知らないと思うんですけど、mixiさんとか中国でSNSやってた頃もあるんですよ。多分今そんなことやったら捕まっちゃうと思うんですけど、当時はそういうことができる時代だったんです。DNAさんとかグリーさんもみんな北京オフィスとか上海オフィスとか持ってまして。日本のネット企業が中国に進出していた時期があったんですね。なので当時は我々の戦略としては「ジャパンプラス」のプラスの先を中国と当時は見てまして、日中で多分クロスボーダーでやるような案件とかも結構やってました。
石橋
なるほど。
田中
その一番有名なのが、日本に「サンシャイン牧場」っていうものを、ゲームを持ってきたゲーム会社で。
石橋
なんか分かります。そのタイトルは結構昔のタイトルですよね。
田中
mixiさんがWeb上でソーシャルゲームを始めた時の、多分一番稼いだタイトルなんですよ。サンシャイン牧場。で、その時に、これもやっぱり我々のLPとの連携のストーリーの一つなんですけど、mixiさんの方から「これから日本でFacebookと同じようにソーシャルゲームをSNS上でやりたい」と。で、国内には当時まだそんなに良いソーシャルゲームのベンダーがいなかったので、「良いのを見つけてほしい」みたいな話がありまして。 色々見に行って、当時はFacebook上ですごい勢いがあって稼いでたのが、ほとんど中華系のソーシャルゲームベンダーだったんですね。で、なんか牧場系が当時中国で流行っていて、「じゃあ我々はこれを日本に持ってこよう」と思いまして、最終的に2社に絞ったんですよ。
1社は「いやもう自分たちはアメリカにかけるから日本なんてやらない」って言って、もう1社は「いや日本面白いね、やってみよう」って言って、そこと組んで一緒に、実は日本にジョイントベンチャーを作りまして。で、mixiさんで登場して、多分ソーシャルゲームをmixiさんがやってた3〜4年間のうち、多分一番稼いだゲームだと思います。
石橋
へえ。
田中
まあ、そういう形で日本のエコシステムと海外をうまく組み合わせて、なんか、もっと大きなものを作ろうっていうのが元々のコンセプトだったんですけど、その後中国でいろんな変革が起きまして、基本的にネット産業、それからゲーム産業が規制領域になってしまったので、今でもゲームって一つ一つのゲーム、審査を受けないとパブリッシュできないんですね、中国で。映画も実はそうなんですけど。そういう制限があって、日本もそうですし、アメリカの企業もほとんど中国からビジネス撤退しちゃったんですね。
本当に僕が最初に中国に投資してた頃は、Adobeの頃は2005年ぐらいだとYouTubeもFacebookとかも全部中国でGoogleも全部使えたんですね。それが終焉に近づくっていうのを現場で感じたので、我々は2015年ぐらいから戦略をシフト、まあ「ジャパンプラス」っていうコンセプトは変えてないんですけど、それを中国の外のアジア圏に移しました。まあ、そこは香港とか台湾とか比較的自由にアクセスできる部分もそうですし、プラス、東南アジアみたいなところで、それが今の5号ファンドのコアの戦略にもなってます。
石橋
そういう背景とか、さっきのジョイントベンチャーを作ってみたいなところをそもそもずっとやってきていらっしゃるから、その流れでグルーポン・ジャパンだとか17LIVEだとか、場合によってはジモティーだとか、ああいう創業投資というか、ほぼ自分たちで一緒に創業して、結果的にめちゃくちゃ大きいイグジットしていらっしゃるっていうところも、もちろんそれだけではないとは思うんですけど、ああいう創業投資とか一緒に作るっていうのをやってらっしゃるのは、やっぱりそういう系譜があるからっていうところなんですかね。
田中
そこにもう一つ考え方があって、日本のエコシステムって、やっぱり我々がIVSとか始めた頃と比べるとはるかに大きくなってるんですけど、それでもまだ現代の日本の経済規模感から考えるとまだ小さいと思うんですよね。もっと大きくなっていいと思うんですけど、結果として何が起きてるかっていうと、結構例えば新しい、まあ、当時のソーシャルゲームもそうですし、Grouponモデルとか、世界で当たり前に出てきてる新しい分野で、日本で、あまりその分野をちゃんと理解してできてるプレイヤーが少なかったりとか、場合によっては誰もやってないみたいなことがあるので、そういう時に、そういうチャンスがある時に我々は自分たちで作るか、外から持ってくるかっていう2パターンはあるんですけど、そこを攻めてるっていうのが今の3つの例ですね。
ジモティーに関しては、当時、我々のテンセントの1番の大株主だった南アフリカのナスパーズの人たちとよく会ってた頃があって。彼らはなんかよくわかんないけど世界中でクラシファイドサービスと言われる、まあ、掲示板サービスですね、物の売買の。それに出資してて、南アフリカの投資会社なんですけど、テンセントの外部の筆頭株主で、なんかヨーロッパとかロシアとか南米とかまあいろんなとこでやってて、なんか聞くとすごいらしいんですよ。で、調べたらやっぱり中国にはもうユニコーンみたいなのがその分野で3、4社あって、アメリカは元々クレイグスリストっていうのがあったので、日本で調べてみたら誰もやってなかったんですよ。こんな世界のメガトレンドなのに、日本はなんでないんだってことになって。
我々はやるにあたって、どこかから連れてくるっていう選択肢もあったんですけど、まあ、当時日本に来たいってところがなかったので、じゃあ自分たちで作るんだけど、ゼロからやったら絶対失敗するんで、勉強に行こうって言って。で、中国の当時の三大クラシファイドサービスのCEOに会いに行ったんですよ。で、結構当時その人たち、彼らは日本に出てくる戦略もなかったので、オープンに色々何が大事か教えてくれたんですね。で、色々長い話を聞いたんですけど、結論は2つ3つぐらいしかなくて。まず、投稿をもう限りなく簡単にしろと。
石橋
ああ、なるほど。
田中
面倒くさいことはみんなやらないので、まあ、そこを簡単にしろっていうこと。と、もうこれは100%ネットワーク効果のビジネスなので、それが効果が出てくるまで死ぬなって言われたんですよ。で、どれくらい待てばいいんだって言われたら、ほぼ2、3社とも同じようなタイムスパンで言われて、なんか3年ぐらいって言われたんですね。3年ぐらい我慢しなきゃいけないと。
その間に逆に変なマーケティングやって、無理にやろうとしても上手くいかないし、とにかく耐えろみたいなことを中国人に精神論的に教えていただいたんですけど、まあ、実際に本当にそれやってみたら最初の2年ぐらいはすごい苦しかったんですけど、3年後ぐらいから本当にその効果が出てきて、今では月間3000万人が使うサービスになってるという。
石橋
そうですよね、うちの親とかも普通にジモティーっていうなんかすごい良いサービスがあってみたいな話をしてるぐらい。
田中
ありがとうございます。
石橋
でも、あれってじゃあ、IVP100%持分みたいな会社から始まってるんですか?
田中 元々はそうで、で、マネジメントチーム持ってきて、そこに株を渡して、で、我々の分は途中で、今社名変わっちゃいましたけど、オプトさんであったりとか、それからのちほどパートナーとして入ってきていただいたNTTドコモさんに譲渡したりとか、我々の持ち分を下げていって、ちゃんとIPOできる時に、ベンチャーキャピタルの子会社じゃ上場できないんで、それで持ち分を下げていって、今まあ独立した会社になってるというそういうことです。
石橋
ここまでの事例で言うと、その事例を中心にお伺いしすぎちゃうと、そういう投資しかされないのかなみたいなことも思われてしまうと思うので、いい意味で他の分かりやすいポートフォリオでIPOされてるところだと、ウェルスナビさんですとかfreeeさんですとか、もちろん他にも素晴らしいスタートアップの投資先いらっしゃると思うので、ぜひ何社さんかピックアップして、なんでそこの会社に当時投資したんだっけみたいなところもインタビューできればと思うんですけど。
田中
分かりやすいところでウェルスナビを例にとりたいと思います。で、実はウェルスナビさんは、日本では初めてのロボアドバイザーとしての会社としてスタートしたんですけど、元々はローンチパッドの時のオーディション、IVSのローンチパッドのオーディションでチームと出会うことができたっていう背景があるので、ソーシングはローンチパッドから来てるんですけど、もうちょっとその裏側の話がありまして、実はウェルスナビと非常に似た形態の会社に、我々Headlineグループとしてアメリカ、ヨーロッパ、我々アジアそして南米と4大陸でアーリーステージの投資やってるんですけど、実は裏側のディールソーシングとかのインフラが繋がってるんですね。
我々の方でそのウェルスナビさんに投資するよりも前に、同じタイプのビジネスでアメリカに投資してるの知ってて、さらにそのファウンダーに僕、個人的に会ってきたんですよ。何かのきっかけで。なんかこういうものはアメリカにあって、もう何社も出てきて、こういうモデルで伸びてるっていう話があって。で、その時に日本に帰ってきた時はなかったんですね、サービスが。そしたら、その半年後か1年後ぐらいに、ウェルスナビがいきなり出てきて、会社はまだできたばっかりでプロダクトもない。それからその当時はまだ日本ではロボアドバイザリーというやる事自体に対するレギュレーションがなかったので、まあできないと。そういう状態だったんですけど、今後ウェルスナビとしてそのレギュレーションの改正を一緒にやっていくという話もあって。
当時の日本のVCの皆さんも多分ロボアドバイザーってあんまり聞いたことなかったと思うんですね、業態としてなかったので。でも我々はそういうアメリカの知見があったというか、そういうチートする機会があったので、まあそれをベースに、出資に踏み切ったっていうのが元々のつながりです。なので、まあ1つの我々の武器としては、別に我々がなんかすごい賢いわけではなくて、アメリカとかヨーロッパとか南米とか、他の地域で日本よりも先に起きてるトレンドがあれば、まあそういったものを学習するチャンスであったりとか、そのファウンダーに、まあ直接話を聞くチャンスとかもあるので、そこが結構他のVCさんとは違うんじゃないかなと思います。
石橋
やっぱりそれってもちろんデスクトップリサーチでわかる範囲ももちろんあるとは思うんですけど、じゃあHeadlineグループっていうべきなんですかね、Headlineグループの中の他の、グローバルの拠点の人たちが投資をして、いい意味でインサイダーな情報というか、うまく行ってる、うまく行ってないとかも全部知っていらっしゃるからこそ、なおさらそこの強みってやっぱめちゃくちゃ生きてきますもんね。
田中
Grouponとかも一番分かりやすい例ですね。元々Grouponは我々のヨーロッパとアメリカのファンドが出資した会社なんですね。で、彼らがやったのは実はGrouponのアメリカじゃなくて、Grouponインターナショナルという、ロケットインターネットが元々作ったヨーロッパ側のGrouponだったんですよ。で、そこの面白いのが、当時Grouponって世界で多分40数カ国やってたと思うんですけど、アメリカのGrouponがやってたのはアメリカとカナダのみで、残りの40カ国ぐらいは全部そのドイツを中心としたグループがやってたんですね。我々の姉妹ファンドがそっちに出資していて、ある日「日本でもやらないか」って話が来たんですね。 で、当時僕らが見てみたら、日本にはもうすでに20〜30社ぐらいGrouponチックなものがあったんですよ。
その時に、僕としてはもうすでにあるんだったらそんなつまんないじゃんと思ってて、そんなに正直最初は思わなかったんですけど、ヨーロッパの成長率を聞いてみると、めちゃくちゃすごいんですね。日本はなんかそこまで伸びてない感じがしたので、色々勉強させてもらったんですよ。そこでわかったのが、当時の日本のGrouponチックな会社の皆さんはほとんどウェブサイトを真似てたんですね。
見た感じみんな一緒なんですけど、色々話の本家から聞いてみると、ウェブサイトも大事なんですけど一番大事だったのは営業組織だってことわかったんですよ。Grouponはネットの皮を被った営業会社だってことが分かって。で、それをわかった時に、これなら他の皆がそういう攻め方をしてないので、後発だけど日本で一番になれるかもしれないっていうことが分かって、当時、光通信出身の廣田さんという方がいらっしゃって、彼が僕らの周りでは営業に強いという噂を聞きまして。日本の中小企業向けに、インターネット回線を売りまくったとかですね。そういう営業のノウハウを持っていたので、そこでお願いしたんですよね。「一緒にやろう」って言って。で最終的に可能性を廣田さんにも信じていただいて、彼も一緒に来てくれたんですよ。
Groupon Japanの前身みたいなのをそこで作ったんですけど、やっぱり我々はどの競合と比べても一番すごい営業組織をそこで持ってたので、もう最初の月からビュンビュン飛ばしてまして。で、元々予定では半年で日本ナンバーワンを目指してたんですけど、2〜3ヶ月で日本一になっちゃって。 で、これはもちろん廣田さんたちの営業力のすごさもあったんですけど、大事なこととしては、そういうオペレーションのノウハウみたいなのをきちんときけたっていうのが大きいと思うんですよ。それ知らなかったら僕らもただウェブサイト真似て同じことやってたかもしれないので、やっぱりそのビジネスの本質的なところは、ウェブだけではわからないことが多いので、いいネットワークを持ってるんだとしたら、とことん勉強させてもらうっていうのは大きいんじゃないかと思ってます。
石橋
17LIVEは、どういう流れなんですか?
田中
17LIVEの創業者は、別のサービスをやってたんですよ。日本のPairsさんみたいなマッチングアプリみたいなのをやってて。僕はあまりそこは興味なくて、まあマネタイズはできるんだけどそんなでかくならないんで。その時は投資は見送ってたんですけど、アプリのトレンドの話をするために、そのファウンダーと月に1回、今はもうなくなっちゃいましたけど、台北のカリフォルニア・ピザ・キッチンで毎月1回会って色々話してた時に、「マッチングアプリやめる」と。「新しいことやる」って言って、最初に言ったのが、「俺はこれからFacebookをぶっ潰す」みたいなこと言って。「Facebookどうやってぶっ潰すの?」みたいな。 彼の元々の本業がHiphopのアーティストだったんですね。何で嫌いになったんだって言ったら、元々Facebookがアジアに出てきた時に、いろんなアーティストの人たちに声かけて、「これ使ったらもうファンと繋がるようになるし、ファンコミュニティの運営が楽だよ」って言って、みんな使ったわけですよ。
最初は良かったんですけど、Facebookが上場して、だんだん雲行きが怪しくなってきて、なんか今まではメッセージを送ればみんなコンサートチケット買いに来てくれたのに、どうやらファンに向けて出したメッセージが届いてないってことがあったんです。要は自分のフォロワーでも、お金をある程度払わないとフォロワーにリーチできないってことがわかって、それで彼、ぶちぎれたんですね。「俺のコンテンツ使ってこんなトラフィック稼いどいて、何?広告出せだと」みたいなことになって。 彼はFacebookキラーを作るって決めたんですね。そこそこマッチングアプリでお金があったので、稼いだお金をそこに突っ込むって言って、周りのアーティストとか、台湾の芸能人みたいな人たちに聞いたら、「いや、もう僕たちみんなFacebookなんて使ってないですよ」って言われて。若い人たちは、彼がFacebookを殺そうと思った時にはもう使ってなくて、「じゃあ何やってんだ」って言ったら、「Instagramやってます」って言われて、「同じ会社じゃないか」って言われて。じゃあFacebookキラーやめて、インスタキラーを作ろうと。で、作ったのが17LIVEなんです。
元々のコンセプトは、InstagramもFacebookと同じだと。「俺たちの無料コンテンツを搾取してる」と。 なので彼が作った最初のビジネスモデルがすごいもので、Instagramとほぼ同じようなアプリなんですけど、投稿して、コンテンツを見られれば見られるほどレベニューシェアがもらえると。で、一個大きな問題があって、その会社にレベニューなかったんですよ。レベニューないのにレベニューシェアしてたから、赤字になるしかないですね。
広告もないのに、なんか疑似広告料レベニューシェアみたいなのをやっていて、そういうおかしなサービスをやっていて、それは投資できないよねと思ってたんですけど、ある日なんかすごいことが起きてるって言われて行ったら、しゃれでそのプラットフォームにライブ配信機能をつけたら、一気に広まって、台湾で1番になってアプリのランキングで。香港で1番、東南アジア主要国で1番、一瞬中国でも1番になったんですよ。そのあとすぐ止められちゃいましたけど。で、アメリカで1番になった時もあって、これだと思って、そのタイミングで我々初めて投資したんですね。
成功した体験を元に、これも日本でいけるんじゃないかっていうので作ったのが、17LIVE Japanで、次回出演します、島川がそこの立ち上げをやったと。 そこは、1つは、我々がやっぱり台湾で見てて、台湾以外の国でも流行ってるのがあったので、これは日本でもいけるんじゃないかと思ったんですね。で、当時、市場の知見を持った人たちに聞いたら、「そんなの日本では流行らない」って言われたんですね。「日本人はシャイだから、そんなカメラの前でみんなの前でそんなことする人いないよ」って言われて、まあ結構ダメ出しが多かったんですけど、それは多分言ってる人たちが世代の違いがあって、台湾も僕らの世代の人たちやってないわけで、もっと次のZ世代の人たちがやってるものなので、まあその辺のアドバイスを無視して、試しにやってみようと思ってやったら、やっぱり日本にも同じようなニーズがあったっていうことが分かりまして、で、今の17LIVEに至るというのがストーリーになります。
石橋
なるほどですね。
田中
途中でもっといろんな悲惨なドラマとかあったんですけど、そこは今回はしょりました。
石橋
ちなみに、なんかその投資スタイルというか思想でやってらっしゃるとなかなか失敗したりとか、見逃し案件とかないのかなと思ったりするんですけど。
田中
いや、ありますよ、あります。例えば失敗した案件で言うと、アメリカで「TheRealReal」っていう中古品のブランドを売っている、ちゃんとそれを本物かどうかチェックして売るというサービスが非常に伸びていて、実際に最終的にアメリカに上場した会社で、それは我々のHeadline USの投資先なんですけど、それ実は我々日本に1回持ってきてまして、2年ぐらいやって撤退したんですけど。
その時にわかったこととしては、ネットの競合はほとんどいなかったんですけど、日本はオフラインの競合が激しくて。アメリカにはそういう日本と同じようなブランド買い取りのオフラインビジネスはもちろんあるんですけど、日本のスケールでもう駅前どこにでもあるみたいな、そういうレベルではなかったので、そこでやっぱり勝てなかったっていうのがあるので。そのやっぱり日本に根付いているローカルの、ネットの世界じゃない競合ですよね。
石橋
めっちゃわかります。
田中
そういうところをもうちょっとやっぱり精査しないと勝てないんだなっていうのが、その時のレッスンですね。
石橋
なんか僕も恥ずかしながら、もちろんファンドやらせていただいてるので、例えばいわゆるクイックコマース系のスタートアップって、海外で当然むちゃくちゃ伸びてるところもたくさんいらっしゃいますけど。
田中
我々も出資してます。
石橋
ですよね。でもやっぱ日本だとコンビニエンスストアとかドラッグストアのオフラインの方々の販路とか、スーパーマーケットが強すぎて。
田中
別にコンビニ、アメリカにもありますけど、夜とか怖くて行けないですからね。サンフランシスコに住んでた時とか、なんか夜のコンビニはなんか怖い人たちが集まってるイメージがあって、店員さんはこういうバーの後ろで守られてるからいいんですけど、お客さんは守られてないんで怖くて行けなかったですね。
石橋
そうですよね、商習慣とか文化圏、背景が違う国だからこそ、やっぱ日本にちゃんとフィットするものがあれば伸びるけど、そこがやっぱり場合によっては間違えることがあるって感じなんですね。 逆に、そんな中、最近Headline Asiaさんが注目してるトレンドとか、もしかしたら視聴者の方が知らない情報をHeadline Asiaさんはやっぱ誰よりもいち早く知っていて、これから日本で流行りうるトレンドとかに注目してるところとかあるのかなと思うんですけど、どんなところを見てらっしゃるんですか?
田中
僕ら、コンシューマー回りじゃないところも見てるんですけど、やっぱり実はHeadlineグループ全体も我々も含めて、フィンテックで一番実は成功してまして。地味なフィンテックが結構すごいんですね。最近ですと、我々のブラジルで投資したPismoという会社が、アメリカのクレジットカードのVisaに1500億円ぐらいで買収されたりとかしてるんですけど。 そのフィンテックのトレンドって、日本は表層的なフィンテックはあると思うんですね。
例えばQRコードの決済とか、やっとPayPayの普及も含めて今では当たり前にやってるんですけど、でもまだ根本的なところの本質的なところが変わってなくて。まあ、こういうこと言うと多分刺されちゃうかもしれないですけど。 例えば、我々中国でアメリカでいうSquareみたいな会社に10年ちょっと前に出資してるんですけど、そこは中国でQRコードみたいな新世代の決済を一番その店舗の決済のシーンに広めた会社でもあるんですけど、その時のイノベーション見てみると、日本とすごい違うことやってるんですね。
日本も例えばPayPayの最初の普及の時には、大きなばらまきがあったじゃないですか。あれはコンシューマーさん目線だとすごい良かったですよね。安く買えるので、なんかどっかの量販店で買うと20%返ってくるとんでもないのがあるんですけど。そういう消費者サイドのメリット作ったんですけど、日本では残念ながら店舗サイドのメリット、そっちが欠けてたんですね。
中国のQRコードの決済も、本当に最初にAlipayとかWeChat Payが出てきた時に遡ると、アプリでタクシー呼んだりとか、普通にタクシー乗ったりした時に使えるようになった時代があったんですけど、その時に彼らがやってたキャンペーンは、1回タクシー乗ると当時の金額で日本円で言うと100円ぐらいかな、乗る方はそれで払うと100円安くなって、運転手さんはそれでお金を受け取ると100円多くもらえる。
石橋
へえ。
田中
まあ200円ぐらい多分出してるすごい太っ腹なサービスだったんですけど、そうやって両サイドにまず広めたっていうのが一つと。
で、その時にもう一個起きたのが、その決済手数料ですよね。日本ではQRコード決済しても、実は裏側の決済手数料が下がってるわけではなくて、下手すりゃ上がっちゃう場合もあるし、いろんな設備の導入費とか考えると、小売店のキャッシュフローが良くなってるとか、粗利が良くなってるとかってなってないですよね。結果として今やめちゃってるところもあるっていうニュースを時々見るんですけど、中国で何が起きたかというと、その時に店舗側のキャッシュフローが良くなるようなイノベーションが色々起きてたんですね。 まず決済手数料です。10年ぐらい前の段階で既に、中国でそういうアプリでQRコード決済した時に、店舗側の決済手数料1%切ってたんですよ。
石橋
へえ、すごい。
田中
それがピュアなQRコードだけの決済だと、本当にもう0. 数%の世界で。かつ、クレジットカードの決済が入金されるサイクルが結構長くて、遅いとこだとその月に締めてさらに何日後とかあるんで、60日とかになっちゃうような。早くても2週間とかそういう感じなんですけど、中国では我々の投資先見てたら、デフォルトが今日お店で買ったら明日お金が入る、T+1て言うんですけど、さらにイノベーションが来て、T+0っていうサービスが、ちょっとだけ利息を払えば、でも日割りしたら大したことないですよ、当日入金。
まあ、そういう形で店舗にもメリットがある。そういうところまで行くと、やっぱり日本の今のQRコードの決済の仕組みっていうのは、表側だけQRだけど裏側は実はレガシーのままです、みたいなのが多いので、僕は結構この辺、今後面白いこと起きるんじゃないかなと。
海外ではすごい起きてますし、例えばステーブルコインを使った決済インフラだったりとか。これはたまたまWeb3ファンドが投資してるんですけど、南米のWeb3系の会社で、実は大学の教授が始めた会社なんですけど、ビットコインとかそっち系の研究してる暗号系の大学の教授が始めた会社で、今フィンテックの世界でめちゃくちゃ伸びてるんですけど。
彼は何をやったかと言うと、本当にユーザーが必要としている金融の機能って何なのかってところに絞って、それをステーブルコインベースでめちゃくちゃトランザクションコストを下げて、利便性を高めて再構築したところが大ヒットして。我々が投資した時は、本当にまだこれからローンチみたいな時だったんですけど、なんかその1年半後ぐらいに行ったら50万社ぐらい南米で使っていて、それが最近聞いたら200万社に伸びて。
石橋
ええ、すごい。
田中
シードのラウンドでしかやってないんですけど、もう黒字化していて。まあ、そういうフィンテックの触りじゃなくて本質的なイノベーションっていうのが、まだ日本にはまだ全然起きてないので、逆に僕はチャンスだと思うんですよ。他の国ではもう起きてたりするので、そういうの、そこに関するインフラとか、一個一個は地味なんですけど、僕は面白いかなと思ってます。
石橋
ありがとうございます。是非、これ見ていただいている起業家の方で、もちろんこれから起業するんだとか、起業の材料を探してる方もいらっしゃるかと思いますので、是非Headline Asiaさんとか田中さん、もちろんメンバーの方々も多くいらっしゃるので、お問い合わせをいただければいいんじゃないかなと思います。 この次回の配信では、途中途中でキーワード出てきたIVS、Infinity Ventures Summitですね、その代表の島川さんにご出演いただきまして、この配信の直後ぐらいに行われるコンテンツの内容とか色々ご説明いただこうと思っておりますので、またよろしくお願いします。それでは田中さん、改めてご出演ありがとうございます。
田中
ありがとうございました。
石橋
また皆さん、田中さんともまたIVSでお会いできるかとは思いますし、視聴者の皆さんもそちらで田中さんが「ローンチパッド、スタート」って言ってるような様子も見ていただけるんじゃないかなと思いますので、是非オフラインの会場にもいらしていただけるといいんじゃないかなと思っております。それでは次回の配信でもお会いしましょう。さようなら。
田中
ありがとうございました。