福岡から海外まで!地方発のVCが投資したいスタートアップとは?【GxPartners 中原さん / 松田さん vol.01】

◯中原 健 GxPartners 代表パートナー
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公式HP(お問い合わせはこちらから!)▶︎https://gxpartners.vc/
StartupGo!Go! 2023年▶︎https://startup-gogo.com/2023/
2003年国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)入社。
2013年福岡創業支援センターに着任。
公庫在任中からコミットしていた一般社団法人Startup GoGoでの活動が転機となり公庫退社。
2019年よりGxPartnersとしてキャピタリスト活動をスタートさせる。

◯松田優 コミュニティマネージャー
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2009年岡三証券入社。機関投資家向け営業として、国内投信会社、銀行、信託銀行を担当。国内外株式や債券に関する情報提供だけでなく、上場企業IR担当者・アナリストと連携し、中堅証券ならではの独自イベントやセミナーを企画運営。 2021年福岡へUターンし、FFGベンチャービジネスパートナーズへ入社。2022年よりGxPartnersへ兼務出向。

ピッチイベントから始まった10年の歩み

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。

今回からはですね、九州の福岡から来ていただきましたGxPartnersの代表パートナーでいらっしゃる中原さんにご出演いただきますので、よろしくお願いします。

中原:
よろしくお願いします。

石橋:
実は僕自身もGazelle Capitalの他にLocal Localという九州でスタートアップもやっているんですけれども、今回1本目はですね、僕自身はLocal Local社としてはもちろん、Gazelle Capitalとしてもなんとなく知っている部分はいろいろあるんですけれども、GxPartnersさんについてどういうファンドなのか、どういう規模なのかみたいなところからまずお伺いしていきたいと思います。いつぐらい前から地場でしっかりやってらっしゃるんでしょうね?

中原:
我々GxPartnersが1号ファンドを作ったのが2019年からになります。

石橋:
意外に最近なんですね。

中原:
そうですね。今は5年目になります。

石橋:
お取り組みとかで言うと、元々もっと前からやってた印象だったんですけど。

中原:
はい。2014年からですね、福岡でStartupGo!Go!というピッチイベントをやっておりまして、前回石橋さんにもお越しいただいて10回目ということで、イベントもさせていただいてますけれども、こっちは一般社団法人なんですけど、そこが母体になっておりまして、2014年から活動して5年目に、2019年にファンドをふくおかフィナンシャルグループ(FFG)さんと一緒に組成させていただいたことがスタートになっています。

石橋:
今も一般社団法人が無限責任組合員(GP)になる?

中原:
そうですね、GPには入ってます。GPか?有限責任事業組合(LLP)のパートナーですね。

石橋:
実質GPみたいなもんですね。結構珍しいですよね、一般社団法人がそういうことをやっているのは。

中原:
そうなんですよね。なので、最初ピッチイベントから我々スタートしてるんで、そこがあんまり営利目的ではなかったので、株式会社よりも一般社団法人の方が動きやすいのかなという形で、そういった成り立ちになっています。

石橋:
なるほどですね。ピッチイベントから始まったという話を伺うと、だから5年後にファンドを立ち上げたというのもなんとなく想像はできるんですけど、どういうタイミングで2019年前後にファンドにしていこうという意思決定になったんですか?

地域企業のニーズから生まれた16億円ファンド

中原:
はい。ピッチイベントを福岡地場でさせていただく中で、九州の事業会社の方であったり、金融機関の方がスタートアップとの協業に興味を持たれるようになったと。というタイミングがございまして、今うちの有限責任組合員(LP)にも入っていただいてます西日本鉄道さんだったりとか、凸版印刷(現:TOPPANホールディングス株式会社)さんとかがそういった動きをするようになってきました。

そのオープンイノベーションのプロジェクトをお手伝いさせていただく中で、その今のLP候補になられる方との関係性もできていき、西日本鉄道さんだったりに投資相談に行かれるようになったんですけれども、彼らもなかなかシード段階には出すのが難しいというところで、そこを担うファンドとして、我々が機能したら良いんじゃなかろうかというところで、ファンド組成の方に動いたというところです。

石橋:
地域系のベンチャーキャピタルさんですけど、そういう成り立ちというか、ピッチイベントから始まるとか、イベントを通じて地域の事業会社の経営網とかそういうのを進めているって、なかなかいらっしゃらないんですよね。

中原:
そうですね。今だと岡山とかもそういう風な動きをされているのかなと思ってまして、だんだん増えてきたのかなという気持ちですね。

石橋:
まさにその先駆けというか、10年前からやってるわけですからね。

中原:
そうですね、結構古くからやっています。

初回3000万円、最大1億円の投資戦略

石橋:
ちなみに今足元ですと、2019年に1号ファンドを立ち上げていらっしゃると思うんですが、現在でいうとファンドは何本くらいやっていらっしゃるんですか?

中原:
今運用しているファンドが2022年8月に組成しました2号ファンドでして、ファンドサイズとしては16億円のファンドになっています。領域としては決めずに基本的にはオールジャンルで投資をさせていただいておりまして、成り立ちとしてですね、我々のファンド名が九州オープンイノベーションファンドというファンド名で行っております。

石橋:
わかりやすい。

中原:
わかりやすいです。なので、LPの皆さんとシナジーがあるところであればより投資しやすいというようなスタンスでやっておりまして、エリアとしてはこだわらず、海外の投資も一部させていただいているというところになります。

石橋:
てっきり九州とか福岡の起業家さんだけみたいなイメージが勝手にあったんですけど、結構違うんですね。

中原:
そうですね、基本的にどこのエリアでも、全国いろんな地域に投資させていただいております。ソーシングルートとしては福岡、九州が強いので、結果としてポートフォリオの35%ぐらいが今九州かなといったぐらいですかね。

石橋:
どういったラウンド感が多くて、チケットサイズはいくらくらいなんですか?

中原:
そうですね、1桁億円のプレバリュエーションのところに投資させていただくことが多いです。基本的にスコープとしては5億円以下、高くても10億円までぐらいのところでして、チケットサイズとして少し特殊なレギュレーションがありまして、初回の投資は3000万円まででキャップを決めてまして、その後にフォローを投資させていただいて、合計で1億円までは出せるというレギュレーションの中で運用させていただいております。

石橋:
16億円のサイズとおっしゃってましたけど、何社ぐらいに投資するイメージですか?

中原:
フォロー投資の多寡によりますけど、多くても30社ぐらいかなと思います。

石橋:
先ほど3000万円というキャップがあるとお話しされていましたが、いわゆるリード投資、フォロー投資みたいなところだと、どっちの比率が多い少ないですとか、投資にどのように関わってくるんですか?

中原:
リード、フォローでいくと半々ぐらいかなと思ってまして、その3000万円でリードが取れるケースと、5億円越えてくると3000万円では小さくなってくるので、フォローにまわらせていただくということで、ケースバイケースかなと思っております。

関わり方については、例えばシードの段階で出させていただくと、週1でミーティングさせていただいてコミュニケーションを取ってというようなやり方もありますし、ステージが進んでいくとですね、次のリードの方にお任せするというか、コミュニケーションを取りながらサポートさせていただくという感じです。

FFGベンチャービジネスパートナーズとの共同GP体制

石橋:
初回投資が1社3000万円って結構珍しいルールだなと思うんですけど、戦略的に何か決まってらっしゃった?

中原:
そうですね、GxPartnersが共同GPにFFGベンチャービジネスパートナーズさんが。

石橋:
共同GPなんですね、LPではなく?

中原:
LPにも入っていただいてますし、共同GPとしてFFGベンチャービジネスパートナーズ(FVP)さんが入っていただいてる。我々は一応、独立系ベンチャーキャピタル(VC)として活動はさせていただいてるんですけれども、彼らとの役割分担というところもあり、ちょっとチケットサイズのところで分かりやすく一旦分けさせていただいているという形です。

とはいえ我々のファンドサイズもあまり大きくないので、フォロー投資にも当然できることに限りは出てくると。他のシードVCさんと違うのは、このラウンドについてはFFGベンチャービジネスパートナーズさんと一緒にフォロー投資することで追加投資もさせていただけるというサポート体制を取っているところが、一つの特徴ですね。

石橋:
そうなるとリードもやられるケースもあるし、フォローもやられるケースもあるというふうに、地銀系VCさんの大手としては認識しているんですけど、その次ラウンド以降で一緒にやっている投資事例だったりとか、一緒のタイミングで投資している事例とかもあったりはするんですか?

中原:
はい、複数社ありまして、数でいうと非公表分含めて7〜8社くらいは一緒にフォロー投資をしているのかなと思っております。

冷凍パンで地域を繋ぐ、パンフォーユーへの投資

中原:
特徴的なところでいきますと、パンフォーユーさんが冷凍パンのサブスクサービス、パンスクというサービスを展開しています。

石橋:
めちゃくちゃ伸びてますよね。

中原:
そうですね、かなりおかげさまで伸びているのかなと思っています。

石橋:
元々いつぐらいのラウンドで、まずはパンフォーユーさんの場合はGxPartnersさんから投資されているんですか?

中原:
2020年に我々からは、そのラウンドとしてはプレAラウンドだったのかなと思うんですけど、投資させていただいております。その後、個人向けのサブスクのパンスクが結構伸びまして、シリーズBラウンドぐらいでですね、我々だとどうしても投資余力としては足りないので、FVPさんにも協力をしていただいたというところが一つの事例かなと思います。

石橋:
ちなみにパンフォーユーさんは九州の会社さんでしたっけ?

中原:
群馬本社ですね。

石橋:
そうですよね、九州色のイメージじゃなかったんですけど。先ほどのお話で、LPの皆さんとの相性みたいなところも見ていらっしゃるみたいなお話がありましたけれども、パンフォーユーさんの場合はシードプレAぐらいのラウンドで、とても早い段階で投資されていると思うんですけど、どういった狙いというか、背景があって投資されたんでしょうか?

中原:
そもそも、やっぱりパンフォーユーの創業者の矢野さんがですね、地域を活性化したいという思いで創業されたのがパンフォーユーなんですけれども、その中でパンという地域資源に注目されたと。地域のパン屋さんというのはどうしても商圏が限られると。

石橋:
まあ、そうですよね。

中原:
どんなに美味しくても100キロ先のパン屋さんにはいかないですよね?それを彼らが持つ特殊な冷凍技術で、北海道のパンでも東京で食べられるし、新潟のパンでも福岡で食べられるし、地域の魅力のある商品を全国に届けられるというところに、このマーケットの広がりとポテンシャルを感じて投資をさせていただいたという感じですね。

石橋:
まだまだそのシードプレAぐらいですと、パンスクのサービスはまだまだ規模が小さかったというか、本当にこれからみたいな。

中原:
そうですね。本当にパンスク自体はもう「今からやります」ぐらいのフェーズでしたね。

石橋:
そこの拡張性にも期待してっていうことですね。その後にFVPさんから追加で投資をされている感じですか?

中原:
そうです。

アジア展開を支援、台湾で成功したカプセルジャパン

石橋:
第3弾の動画では、具体的にGxPartnersさんとFVPさんがどういうふうに連携していらっしゃっているとか、そこの価値とか効果ってどんなものが出てきているのかみたいなところは、もうちょっと踏み込んでお伺いしていければと思いますけれども、パンフォーユーさん以外の投資先ですと、例えば他にどういう特徴のある投資先とかっていらっしゃるんですか?

中原:
そうですね、他のVCさんとの違いとしては、単純に福岡にいるからということもあるんですけども、アジア圏が近いというところで、台湾とか韓国、シンガポールに関係したスタートアップがおります。

石橋:
海外籍の企業の方ですか?日本人がやっているところですか?

中原:
海外籍の企業にも投資はしてるんですけれども、日本のスタートアップで台湾の市場で伸ばしているというところもございます。

石橋:
なるほど。例えばどういう会社さんが事例としてあるんでしょうか?

中原:
カプセルジャパンというスタートアップがございまして、創業としてはですね、2013年創業。

石橋:
もう10年以上経っている?

中原:
10年以上経って、先ほど申し上げたStartupGo!Go!というピッチイベントの第1回に出場してもらってまして、そこからお付き合いがあったんですが、そこから8年ぐらいして、我々もファンドができた後にもう一度出会ってですね。

当初はゲーム関連のメディアをされてたという記憶なんですけれども、そこからYouTuberの配信事業になったり、今は日本の知的財産をアジア、また他の国に届けるというビジネスを展開しておりまして、かなり台湾ではシェアを取れているというようなスタートアップもありまして、こちらもFVPさんと一緒に共同投資をさせていただいたというようなこともございます。

毎年10月開催、StartupGo!Go!が起業家の登竜門に

石橋:
ぜひそこらへんの基準であるとか、多分いい意味でFVPさんと一緒に投資できてるケースとできていないケースがあられると思うので、そこらへんの話とかまた第3弾で聞いていければと思うんですけど、最後に1個質問として、StartupGo!Go!について私は前回参加させていただいたのでよく知っているんですけど、改めて動画見ていただいている方だと、「このぐらいの時期になったらこれを検索するとでてくる」からどうこうみたなやつでいうと、どんなものでしたっけ?

中原:
そうですね。大体毎年10月か11月に福岡で開催しておりまして、ご登壇いただく方の募集の開始が毎年7月ぐらいが多いのかなと思っております。コンセプトとしてはですね、できるだけ初めてピッチする場を提供したいなと思っておりまして、累計資金調達額のキャップを他のピッチイベントよりも低く設定させていただいております。

トラクション勝負にならないようにしたり、他のピッチイベントで優勝してもう一回こっちでも勝っちゃうっていうのだと、あまり我々のですね、「広くみんなにチャンスを持って欲しい」っていう元々のビジョンともそぐわないので、その辺のハードル設定を低くさせていただいているという感じですね。

石橋:
実際にそこに登壇された会社さんにも、GxPartnersさんから投資されているケースも多いんですか?

中原:
はい、もう石橋さんに来ていただいたイベントから、既に2社の投資意思決定してます。

石橋:
じゃあ実際にGxPartnersさんに投資受けたいってなった場合は、見ている起業家の方ですとか、これから起業されようとしている人は、StartupGo!Go!が入り口でもいいし、中原さんですとか公式ホームページから問い合わせをしても、全然SNSのケースでも大丈夫なんですか?

中原:
はい、なんでも大丈夫です。

石橋:
ぜひこの動画を見ていただいている方で、夏頃に見ていただいている方は、StartupGo!Go!も概要欄は昨年度のURLになったりすると思うので、検索して見つけていただいたりですとか、あとは中原さんのFacebookのURLも概要欄の方に記載をさせていただきますので、ぜひ直接お問い合わせいただければと思います。

中原:ありがとうございます。

石橋:
それではですね、中原さん、次回第2弾もよろしくお願いします。

中原:
よろしくお願いします。

日本政策金融公庫に就職後VCに転換!独立した理由と想いを語る!【GxPartners 中原さん / 松田さん vol.02】

2012年、福岡スタートアップ都市宣言と同時に始まった挑戦

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。

今回もですね、前回に引き続きまして、GxPartnersの代表パートナーでいらっしゃいます。中原さんにご出演いただいておりますので、よろしくお願いします。

中原:
よろしくお願いします。

石橋:
前回第1弾では、それこそ福岡地場で地域系のシードVCとしていらっしゃるGxPartnersさんのファンドの概要をお伺いしてまいりましたが、第2弾ではそもそも中原さんってどんな人なんだっけみたいなところを、いろいろとお伺いしていければと思うんですけど。

僕自身もまだまだ恥ずかしながら知りきれてない部分とか、もともとのご経歴も含めあまりわかってないところもあるんですけれども、もともとVC業界出身というか、StartupGo!Go!から始めてらっしゃると思うんですけど、どういうご経歴で、どんな流れだったんですか?

中原:
振り返ってみると、長崎の出身で福岡の大学を卒業しまして、その後ですね、日本政策金融公庫というところに就職しました。私が就職した当時はですね、まだ社名が違って国民生活金融公庫という、よりちょっと堅いというか古い名前だったんですけど、いろいろ統廃合があって日本政策金融公庫というところは、多分皆さんも名前聞いたことがあるようなところかなと思っております。

石橋:
皆さん「公庫さん」って呼びますよね。

中原:
そうです。公庫さんに就職いたしまして10数年働いておりました。2012年に福岡に配属になりまして、その福岡にスタートアップ支援の部署があったんですね。そこで働くことになったんですけど、2012年当時ですね、福岡ってどちらかというと若い人が増えて人口も増えているので、開業率が全国の中でもかなり高いレベルにあったんですね。

そこで「企業の支援をしろ」と言われて。ただ日本公庫は全国各地にありますので、他の地域の同じ部署の人たちよりも目立ったことをしないと面白くないなと思って。何をしようとした時にスタートアップっていうのがあるんだ、というのが福岡市の高島市長という方が今も活躍されているんですけども、その当時から活躍されていまして、2012年にスタートアップ都市宣言ということを始められました。

石橋:
その年なんですか?

中原:
はい。私が日本公庫の中でプレゼンスを発揮するためにはスタートアップ支援というところに振り切った方がいいのかなと思いまして活動をしまして、福岡のコミュニティの中に入っていって、今一緒にパートナーをやっている岸原と寺井というメンバーと出会い、StartupGo!Go!というイベントを立ち上げたというのが、ちょっと時間が空いて2014年になるんですけど、立ち上げたというところが経緯ですね。

VCゼロの時代——地方と首都圏の調達格差

石橋:
改めてスタートアップ都市宣言ですかね、約10~11年前?

中原:
12年前ですね。

石橋:
その頃から福岡とか地域のスタートアップの現場にいらっしゃったってなると、今となっては福岡、もちろん地方のスタートアップの育成事例じゃないんですけど、そのインキュベーション事例としてはすごい有名な地域だなと思いますけど、全部黎明期からずっと見てらっしゃるというか、そこにずっとフロントにいらっしゃったって感じなんですか?

中原:
いや、まあそこまでは言えないかもしれないですけど、10年前の2014年に最初にイベントやった時はですね、やっぱりこう地方にVCがいなくて。

石橋:
当時福岡ってドーガン(現:ベータ・ベンチャーキャピタル)さんとかありましたっけ?

中原:
ドーガンさんはギリあったかな。確か1個目のファンドが2014年ぐらいからやってたんじゃないかな。

石橋:
F Venturesさんはないですよね?

中原:
ないです。ドーガンさんがギリあったかな。

石橋:
その頃FVPさんも投資されてた時期でしたっけ?

中原:
まだしてないですね。FVPさんは2016~2017年なので、ジャフコさんとかはいらっしゃったんですけど。

石橋:
ちょっと色合い違いますよね。

中原:
そうですね、いわゆるシードに出すVCっていうのがいなくて、今よりも調達環境の格差が激しかった時期なんだろうなと。

石橋:
その格差っていうのは首都圏と地方でってことですか?

中原:
はい、福岡においても、そういった状況があったので、最初に福岡に行って、その前にSamurai Venture Summitを見に行って、「これはすごく参考になるなぁ」と思いまして、こういったことを地方でもやると、場所を提供すると意外と隠れたスタートアップの芽が出てくるんじゃないかと思って始めた感じですね。

そこに東京からVCの方に来ていただいて、まだ地方にいるスタートアップ、特にシード前ぐらいの人たちだと、VCに会ったこともないというような状況だったので、「まず接点作ろう」というような感じで始めた。

ヤマップ、QPS研究所——初回から集まった起業家たち

石橋:
もう1回目からかなり中原さんとしても手触り感はあったんですか?「めっちゃ上手くいくやん」みたいな。

中原:
そうですね、最初始めた時に「ここでピッチする人なんか本当にいるのかな」と思ったんですけど、思ったより10~20くらいピッチする人がいて、初回に出てもらったとこだと、福岡で有名なとこでヤマップさんも出ていただいていたり、この間上場したQPS研究所さんもStartupGo!Go!のコミュニティの中でやってた月1のピッチの中でプレゼンしてもらっていただいたりとかですね。

石橋:
やっぱりその世代というか、10年前ぐらいからやってらっしゃるプレイヤーはほぼみなさんStartupGo!Go!を経てると言っても?

中原:
そこまでは言えないですけど、いろいろお話しさせていただいた方が多いなと思います。

4年間の副業、そして15年勤めた公庫からの独立

石橋:
先ほどの第1弾の方でファンドが出来上がった経緯としても、StartupGo!Go!で徐々に事業会社さんであるとか起業家の人たちが、啓蒙じゃないかもしれないですけど認識理解を広めていただいて、ただなかなかシードが出来ないからGxPartnersが立ち上がったんだみたいなお話はいただいたんですけども、中原さんはいつ辞めたんですか?

中原:
私はですね、2018年です。

石橋:
じゃあ直前?

中原:
1年前ですね。StartupGo!Go!を立ち上げてから4年間ぐらいは、一応日本公庫に副業申請を出してですね、一般社団法人の方は無給で4年間やって、公庫からお給料をもらいながら何とか土台を作っていたということですね。

石橋:
最終的に何年勤められたんですか?10~15年間ぐらい銀行にはいらっしゃった?

中原:
ですね、15年くらい。ちょっと長すぎたなってちょっと反省してますけど。

石橋:
そこから、やっぱりStartupGo!Go!をやっていたとはいえ、VCに自分で独立してなっていくっていうのって、結構大きいキャリアチェンジでもあり大きい意思決定なのかなと思うんですけど、そのタイミングでなんで最終的には決断されたというか、決められたんですか?

デッドからエクイティへ——本当の意味でリスクを取るために

中原:
そうですね、ポジティブな理由とネガティブな理由もあるかなと思うんですけど、やっぱり日本公庫で働いている時に、ちょうど福岡にもちろんシードVCがなかったので、お金の出し手があんまりなかった中で、私が日本公庫の中にいることでデッドをしながらもシード調達の代わりのお手伝いができる立ち位置でもあった。

石橋:
結構重要ですよね、そういう方が中にいるというのは。

中原:
っていうところが一定期間あったかなと思ってまして。やっていく中で両角さんのF Venturesさんだったり、ドーガンさんが長く活動されてたりということで、いろんなそこの役割を担ってくれる人も増えてきたので、その中で自分の中でも役割チェンジをしたいなということもあり。

日本公庫は大きい組織なので、しかもデッドなので本当の意味でリスクを取れるかという点で難しいところもあって、そこにちょっともどかしさも感じつつ。そうすると、自分できちんとリスクテイクできる状態になりたいなと思ってファンドを作ろうと動いたところもあります。

石橋:
ファンドを作るために退職されて、具体的な準備を始めたみたいな。

中原:
そうですね。

石橋:
結構順調に最初は立ち上がったんですか?

中原:
辞める前からそこは下準備はしていたので、最初は2年ぐらいはかかってるかなと思っております。そこはやっぱり共同GPになっていただいたFVPの福田さんにご尽力もいただいてご協力いただけて、ファンドを作れたといったところもあるかなと思います。

石橋:
ちなみに福田さんにも過去ご出演をいただいているので、ぜひ概要欄の方からチェックいただくとどんな方なのかっていうのは、まあだいぶ銀行の元副頭取とは思えないぐらい、いい意味で。カジュアルな方というか。考え方が柔らかいですよね。スタートアップフレンドリーというか。

中原:
はい、すごいフレンドリーです。

Make Next Centers——端っこで頑張る人に平等なチャンスを

石橋:
でも本当そういうところがあったからこそ共同GPで作られていらっしゃって。改めてGxPartnersさんの代表パートナーとして今丸5年間ぐらいやられている中で、元々のご前職の時と今となってはこういう思いの変化があったりだとか、今後こういうことをやっていかないと中原さんご自身としてもいけないよねって思っていることがあるんですか?

中原:
変化というか、逆に変わらない部分なのかもしれないんですけれども、我々のビジョンとして掲げているのがMake Next Centersっていうようなワードで言ってるんですけど、簡単に言うと、あんまり目立った今までの中心にいるような人たちじゃなくて、コミュニティの端っこにいてでも頑張っているマイノリティで頑張っている人たちに平等にチャンスをもってもらってチャレンジしていただきたいなというふうに思ってまして、そういった人たちを応援していきたいなと思っています。

石橋:
だからこそMake Next Centersのところなんすね。へー、面白い。ありがとうございます。ちなみに今GPとしては3名体制でやってらっしゃるんですよね?

中原:
はい、3人でやってます。

石橋:
ぜひ、ちょっとまた動画見ている方々もぜひGxPartnersさんのホームページとか拝見していただくと、他のパートナーの方々のご経歴ですとかお人柄も分かる部分あるかとは思いますし、ぜひ動画見ていただいてコンタクトしてみたい、それこそどの領域でも基本的にはシード・アーリーを中心に投資されている、しかも九州だけじゃなくて他の地域のスタートアップの方でも投資をされているということですので、ぜひお問い合わせいただければと思っております。それでは中原さん、第2弾もご出演ありがとうございます。

中原:
ありがとうございます。

石橋:
第3弾ではですね、何度かキーワードとして出てきておりますGxPartnersさんと一緒にGPをやっていらっしゃるFVPさんですね、についてのどういうような連携をしていらっしゃるのかとか、そもそもそこによってどういう効果が出ているのかみたいなところをいろいろとお伺いしていければと思いますので、ぜひ継続してご覧ください。

【投資家必見】福岡発ベンチャーキャピタルと大手地銀系VCの協業の秘訣とは!?【GxPartners 中原さん / 松田さん vol.03】

FVPからGXパートナーズへの出向体制

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。

今回もですね、前回に引き続きGxPartnersからは代表パートナーの中原さんにご出演いただいておりまして、新しく今回の第3話目からはFVPさんから出向して今はGxPartnersさんでご活躍されている松田さんにもご出演いただきますので、よろしくお願いいたします。

松田:
よろしくお願いします。

石橋:
今回の本題は、FVPさんとGxPartnersさんがどのようなシナジーがあるのか、どういうふうに一緒にやってきていらっしゃるのかというところをお伺いして行ければと思うのですが、そもそも松田さんがどのようなご経歴なのかを皆さんにお話しいただければと思うのですけれども、もともと新卒からずっとFVPにいらっしゃるんですか?

松田:
実は私は転職で来まして、福岡出身ではあるんですけども、就職で証券会社で働いていました。コロナをきっかけに生活拠点として福岡に戻ってきたいという思いが募ったところで、ご縁をいただいてFFGベンチャービジネスパートナーズに2019年に入社をさせていただきました。

石橋:
ビジネスパートナーズにプロッパ―で入っている?

松田:
プロパーです。

石橋:
そういう人はFVPさんに多いんですか?

松田:
最近はだいぶ増えてきましたね。当時は私含めて4〜5人、今だと10人弱くらいまで増えてきました。

石橋:
出向され始めたのはいつからですか?

松田:
私は2021年です。

石橋:
2021年から出向されて、もう2年くらい経たれているということですね。

松田:
丸2年まもなく経つところですね。

中原:
松田さんの前にも2人いらっしゃっていて、松田さんが3人目の出向者です。

石橋:
GxPartnersさんに、出向されている方々はどういう業務をやられることが多いんですか?

松田:
自由です。一応銀行から出向しているということで、ファンドの管理業務をまずは担うというところで、加えて何をするかというところは自由です。

石橋:
ピュアにキャピタリスト業務も全然できるんですね。

松田:
できます。

中原:
タイトルとしてはコミュニティマネージャーなので、前回の動画でもお話しさせていただいたStartupGo!Go!というイベント、いわゆるコミュニティイベントだったりネットワーキングをやっておりまして、そこの仕切りはもう松田さんに全部お任せしているという形ですね。

共同GP体制で実現するファンドストラクチャー

石橋:
FVPさんとGxPartnersさんの関係性について、お伺いをしていければと思うのですが、第1弾のファンドのお話でも伺いましたが、改めてGxPartnersのやられているファンドはどういうGP構成といいますか、組合員構成になっていてどういう体制でやっているのでしょうか?

中原:
我々が運営させていただいているファンドが九州オープンイノベーションファンドの1号と2号がありまして、ストラクチャーとしては両方とも同じです。共同GPとして我々がGxPartners LLPとして入っておりまして、基本的に我々は独立VCとして活動させていただいております。

そこでFFGベンチャービジネスパートナーズの共同GPとして加わっていただいておりまして、ハンズオンだったり、いろいろなサポートだったり、LPとのコミュニケーションなども一緒に協力して運営させていただいています。

石橋:
FVPさんはGPとしてのコミットとLPさんとしてのコミットもしてらっしゃるということですか?

中原:
はい、そういことになります。

石橋:
なんでそういう座組になられたんですか?

中原:
成り立ちとしてはコミュニティだったりイベントからの出でして、私のキャリアとしてもデット・ファイナンスがメインだったので、キャピタリストとしてのキャリアやトラックレコードや1号ファンドをつくった実績は、ファンドの管理・運営の面も含めて、LPの方たちにまず安心していただくというところも重要かなと思いまして。そこでFFGさんがコミットしていただくというところで、1号ファンドのLPの方たちにもご安心してご協力いただけたのかなと思っています。

石橋:
逆にFFGさん側としては、なんでGxPartnersさんと一緒にファンドをやっていこうとなったんですか?

中原:
九州オープンイノベーションファンドと言っているように、LPさんの多くは九州の大手の事業会社の方にご参画いただいております。その事業会社の方たちはスタートアップの皆さんと一緒に協業してビジネスを作りたいという展望を持っておりまして、FFGさんとしてもこのファンドを通じて協力体制を作りたいといったところもあったのかなと聞いております。

シード期から成長期へのシームレスな投資実行

石橋:
第1弾のお話の中でも、実際にパンフォーユーであったり、いくつかの投資先でGxPartnersさんが投資した上で、同じタイミングでFVPさんからも出資が入っているスタートアップ、既存投資先があるというお話をいただいたんですけども、当時からそういう一緒にどんどんと投資をしていくんだみたいなところは描かれていたんですか?

中原:
はい、そこはもう当初から役割分担をした上で、ファイナンスの面でサポートできる体制を作りたいというところを話して、この体制になりました。

石橋:
実際にそれは約5年前くらいから一緒の座組が始まっていらっしゃるなかで、FVPさん目線で見るとかなり機能はされているんですかね?

松田:
FFGベンチャーが得意な投資領域と、そうでない投資領域とやっぱりありまして、その中で九州オープンイノベーションファンドは、シード期でFVPがあまり得意でない領域で投資をしていて、そこでシード期と長くお付き合いをしているので、その後、FVPではなかなかやらないような投資領域の投資というのが実績として出てきているかなというのは実感としてあります。

石橋:
実際にGxPartnersさんが投資をしているからこそ、FVPさんでも投資をしやすくなったりするんですか?

松田:
共同GPとして投資委員会にも参画させていただいてますし、シード期の投資委員会で経営者として接しているところから長くお付き合いをしてよく見ているので知っているところもあってですね。もともとの理解が進んだ上での投資検討に新規として進むので、非常にシームレスに投資するという機能はしっかり機能していると思っています。

石橋:
同じラウンドでやるケースもあるんですか?

松田:
はい、あります。

石橋:
そうなると、先ほどのGxPartnersさんの初回投資は3,000万円までというルールもいい意味で機能してくるというか、場合によってはFVPさんがもうちょっと大きい金額を出して、3,000万円をGxPartnersさんが出すというケースもあるんですか?

松田:
ありますね。同時に投資する場合もあれば別々に投資する場合もあるんですけども、同時に投資する場合は初回投資3,000万円で、我々の方で3,000万円以上の投資を合計すると、もう少し初回でご支援できると。

小規模ファンドでもフォロー投資を実現する戦略

石橋:
僕自身もプレシード・シードにフォーカスをさせていただいているので、感じるジレンマでもあるんですけど、諸先輩方や小規模で始めた方々は、追加投資がしたいというモチベーションが出てきて、皆さんファンドを大きくされるケースが多いじゃないですか。

GxPartnersさんとしては、FVPさんと一緒にやってるからこそ、ちゃんとシードにフォーカスし続けられるようなサイズでい続けようという感じなんですか?中原さんとして実感している効果やいいところはあるんですか?

中原:
今後についてファンドサイズを3号・4号をこのままにしていくかどうかは、またいろいろ考えないといけないとは思うんですけれども、現在においてはこのファンドサイズでもシリーズA・B以降、同じファンドじゃなくてもフォロー投資につなげられているという意味では、ちっちゃいファンドながら少し特殊なポジション、やり方で機能もできているのかなとは思いますね。

石橋:
この動画を見ている方々は創業期とかシードの方々のほうがボリュームとしては圧倒的に多いんですけど、FVPさんに行きたい人は一旦GxPartnersさんに行っておいた方がいいぐらいのスタンスで間違いないんですかね?

中原:
よくFVPさんに投資相談に直接行かれることもあって、それもすごくいいことなんですけど、ステージ的にはちょっと早いと我々の方に逆にトスアップしてもらってっていうケースも多いです。直接来た方が話が早いっていう時もありますね。

石橋:
そのレンジ感をあえて株価で表現すると、5億円以下っていうところが1つ分かりやすいベンチマークになるんですかね?

中原:
そうですね、5億円以下はそうですね。

石橋:
5~10億円だったら、どっちも声かけた方がいいかなぐらいですか?

中原:
それは1回相談してもらって、我々の方でどっちが合うねっていう話でご案内させていただいております。

地銀ネットワークを活用したハンズオン支援

石橋:
フォロー投資ができてるよねっていうところ以外の観点で、組んでるからこその効果って何かそれぞれの目線であったりするんでしょうか?

松田:
FFGベンチャービジネスパートナーズだけではなかなかシード期の投資というのはもちろん知見もないですし、出会いもそこまでないので、GxPartnersさんと一緒に運営させていただいていることで、より幅広くいろんなスタートアップの方との出会いをいただいているのかなと思っています。

あと、私自身になると、FFGベンチャービジネスパートナーズに入社したものの、FVPにいながらGxPartnersに兼務出向で、どちらの顔としても皆様とお付き合いができて、私自身もより役割というところで、パートナー3人と私の組織ですので、パートナー3人が得意なこと以外のところで私がやってみたいこと、かつ得意なことでビジョンに合っているようなことっていうのを、私自身も楽しく過ごせているかなと思っております。

石橋:
中原さん目線ではいかがですか?

中原:
FFGは地銀最大グループで、福岡県や九州地方ではありとあらゆる会社との繋がりがあります。当然FVPから投資を受けられると取引先のネットワークを使ったハンズオンが受けられますが、シード期でもファンドから投資させていただくと同じようなハンズオンが受けられるというところは結構違うかなと思っていまして。

プレAぐらいでプロダクトがあるぐらいの段階だと、どんどんお客さんを紹介してくれるので、これ結構強みかなっていうふうに。特に九州とかに進出したい、地方にも進出したいっていうスタートアップであれば相性良いのかなというふうに思ってます。

石橋:
普段スタートアップ投資TVを見ていただいている方々はおそらくアンケートを取ると20%くらいの方がVC・CVCの方々に見ていただいておりますので、地方系金融機関のVC・CVCの方で見ていらっしゃったら、個人的にはそういう地域VC、特にシードVCですね、もっと増えた方がいいかなとは思っておりますし、今回のGxPartnersさんとFVPさんの話っていうのは本当にわかりやすいベンチマークというか、そういう事例が増えていけばいいんじゃないかなと勝手ながら思っております。

ぜひGxPartnersさんもしくは、FVPさんにお問い合わせをいただいてもいいのかなと思っております。もちろん起業家の方も、シード期からFVPさんのご支援につなげていきたいみたいな方は、まずはGxPartnersさんにお問い合わせをいただければと思っております。それでは改めてお二人とも、今回もご出演ありがとうございます。

中原:
ありがとうございます。

松田:
ありがとうございました。