【シリーズステップアップ率100%!】111億円ファンドを運用するベンチャーキャピタル曽我さんの投資基準とは?|スタートアップ投資TV

〇曽我 悠平 フェムトパートナーズ株式会社 General Partner
フェムトパートナーズ株式会社 HP▶https://femto.vc/
2002年、新生銀行入行。2004年からベンチャー投資業務に従事。2013年よりフェムトグロースキャピタル参画。2017年、当社設立、ゼネラルパートナー就任
2021年、第21回JVAベンチャーキャピタリスト奨励賞
2022 日本のベンチャー投資家ランキング4位
2021 Forbes JAPAN 100選出
中央大学法学部卒、同大学大学院法学研究科博士前期課程修了

〇山田 慎吾 フェムトパートナーズ株式会社 Principal
X(Twitter) HP▶  / shingoyamada_vc  
2015年4月、新生銀行グループで投融資を手がける新生インベストメント&ファイナンスに入社し、主に不動産の評価分析業務に従事。
2017年8月より新生企業投資からフェムトパートナーズに参画し、投資及びファンド運営業務に携わる。
慶應義塾大学法学部卒、中央大学法科大学院修了。

10年の歴史を持つファンド、3号で111億円規模に

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。

今回からはですね、フェムトパートナーズ株式会社 General Partnerの曽我さんにご出演をいただいておりますので、今回からよろしくお願いいたします。

曽我:
よろしくお願いします。

石橋:
既に10月初旬にプレスリリースもございましたが、Marsdyさんという投資先に対してフェムトパートナーズさんが出資をしてご縁ができまして、今回そのタイミングでお願いさせていただいてご出演をいただいたわけですけれども。

4年間ぐらいファンドをやらせていただいてるんですが、初めて今回フェムトさんとご一緒させていただきまして。

1本目は、フェムトさんがどんなファンドなのかっていうのを曽我さんにお伺いしていければと思うんですけれども、そもそもいつぐらいから始まってどういう歴史のあるファンドなんでしょうか?

曽我:
1号ファンドは2013年にできたファンドでして、10年ぐらい経っている。16億円のファンドで、起業のファイナンスを書いている磯崎哲也さんと新生銀行で作ったファンドでして、その時の銀行の担当が私だったんです。そこで3~4年間やって、2号ファンドを作ろうというので2017年に40億円のファンドを作ったんですけども。

そのタイミングで私も銀行を辞めまして、磯崎さんと一緒に会社を作って2号ファンドから独立してという形でファンドを運営しています。直近は2020年に3号ファンドを111億円で作りまして、それを今は運用して投資をさせていただいている。

石橋:
そうなると、3号ファンドが新規投資期間中という感じなんですかね?

曽我:
そうですね。Marsdyさんへはそちらから投資させていただきました。

シード期に1〜2億円、10社超に絞り込む投資戦略

石橋:
多分サイズ感もどんどん大きくなってきているので、ファンドごとに戦略も違うのかなと思うんですけど、足元の3号ファンドの場合はどういう規模感の投資で、どういうラウンドでっていう感じなんでしょうか?

曽我:
一番多いのは外部に投資家が入っていないタイミングで、一番最初に入らせていただくのが一番やりやすかったりするんですけれども、あるいはエンジェルの方とかMarsdyさんみたいに他のベンチャーキャピタル(VC)が入られているのに後から入らせていただくのもあるんですけれども、その辺のシード、シリーズAぐらいを中心にやっておりまして。

割と1件あたりの投資金額が大きめでして、最近ですと1~2億円以上は投資をさせていただいてまして、ファンドサイズそこそこなんですけど投資先はそんなに多くない投資スタイルでやっていまして。

最初から入ってシリーズB、Cと継続して投資をさせていただきたいなということで、1社あたりの投資金額が割とまとまって大きめに、やらせていただきたいと思っております。

石橋:
一番最初のシードラウンドって言うべきなのか分からないですけど、その頃に投資するのが、件数で言うと多いんですか?

曽我:
そうですね。マネジメント・バイアウト(MBO)の案件もいくつかやっていますので、資本政策を新たに練り直すところで、また1からやる時に最初に入らせていただくとかは結構あります。

他もそこそこ起業してから経ってるんだけどもVCはまだ入っていないような会社に入れさせていただくようなケースもありますし、シリーズとかシリーズAとかっていうのを明確に分けて考えてもいないので、自分たちで投資したいなっていうところに投資をするような感じではありますね。

石橋:
なるほど。1つあたりのファンドで何社ぐらいみたいなイメージとかもあられるんですか?

曽我:
今9社ぐらい投資してるんですけど、10社超ぐらいをまとめていこうかなとは思ってるんですけれども。

石橋:
平均化しちゃうと1社当たり累計10億円ぐらいを投下していくみたいなイメージですか?

曽我:
そうですね。もっとやりたいところはやりますけれども、そこまでラウンドが重なるところも出てくるでしょうから。

リード投資中心、投資検討は2〜3ヶ月

石橋:
そういう感じなんですね。でもそうなってくると必然的に、いわゆるリード・フォローでいうともうリード以外ないって感じですか?

曽我:
そうですね、最初からやらせていただくのはリードがメインで、コリードもありますし、ミドルレイターの場合は後から入らせていただくというのもありますけれども、基本はリード投資が多いですね。

石橋:
なるほどですね。リード投資された場合って、その後のコミュニケーションみたいなところですとか、リード投資に至るまでの検討期間みたいなところもラウンドによってまちまちだったりするのかなと思うんですけど、資金調達のどのくらい前にドアノックしに行くと適切な期間というか、嬉しい期間だったりするんですか?

曽我:
実際の投資検討期間から実行に至るまでは結局2、3ヶ月かかるケースが多いんですけれども、ぶっちゃけ割と会ってすぐやるかやらないかの方向性みたいなものは立てられるので、そのタイミングで難しい場合は難しいと分かりますし、実際のクローズまでは2、3ヶ月は見た方がいいかなというのもありますし。

一方で、すぐに投資いただかなくても、何年か次のラウンドで呼んでいただいてやらせていただくというケースも過去にはありました。

資本政策支援で次ラウンド到達率ほぼ100%

石橋:
その上で投資されて、その後の支援みたいなところで言うと、先ほど創業時のお話のところで新生銀行さんのお名前も出てきましたけど、どういうふうにサポートしているとか、どういう体制で支援しているみたいな、まさにその投資先も数が絞ってやっていらっしゃるとか、どういうふうにやっていらっしゃるんですか?

曽我:
そこは結構起業家の方に合わせて、手厚く何か教えて欲しいんだっていうんであれば必要に応じてやりますし、大体多いのが月1の定例でリアルないしはZoomでお会いして進捗聞いてご支援するっていうのはありますけど、それ以外はSlack等で日常的につながっていますので、日々毎日何かあったらコミュニケーションしていくような感じではありますね。

特に強みとしてはファイナンスのところをきちっとやらせていただきたいというのが1つありまして、資本政策の作り方から次のラウンドでどういう形でやっていこうかというところは力をいれてご支援させていただいてまして。

うちが投資させていただいてから次のラウンドに行くのはこれまでですとほぼ100%、そこは次に繋げる。当然我々でも追加投資するんですけれども、次に繋げるご支援なんかはしていますね。

プレイド、noteへの投資──15%保有でIPOの実績

石橋:
曽我さんご自身も2022年のForbesの投資家ランキングって言うんですかね。キャピタルゲインの規模とか大きさでランキングしていくと第4位にも選ばれてらっしゃいましたけど、新規株式公開(IPO)到達率みたいなのも相対的に他社さんより高いですか?

曽我:
1号ファンドが7社投資したんですけども、今のところそのうち2社しかいないのですが、投資件数が少なので2社投資いただいて今準備中の先もあるんで、結果的にはもう少し行くかなとは思いますけれども。

石橋:
そうなると、例えばどんなところに過去投資していらっしゃるとか、ここがフェムトパートナーズさんらしい投資先だったなみたいなところとか、曽我さん的に印象的だったところとかあられるんですか?

曽我:
はい。そのForbesに取り上げていただいたのも、2020年12月に上場したプレイドという会社があるんですけども、そちらが我々で一番有名な投資先ですし、その年一番大きかったIPOの先でもあるので、一番上手くいった。その投資スタイルがハマって上手くいったっていうケースですね。

あと有名なのが、昨年12月に上場したnoteも最初から投資をさせていただいて、上場まで一緒にやらせていただいた先ではありますね。

石橋:
noteさんは普通に1ユーザーとして、有料noteとか買ったりしてますね。プレイドさんとかで言うと、上場時の持分比率見ると2つのファンド合算すると大体15%くらいお持ちだったのかなと思うんですけど、なかなか他のVCさんで15%くらい持ってる状態で上場されるケースって、いい意味であんまり見ないなと思ってまして。

なかなか真似できない戦略でやってらっしゃるから、そういうような状態でIPOを迎えてらっしゃるのかなと思ったりはしたんですけど、どのタイミングからプレイドさんに投資されたんですか?

曽我:
2014年、まだ外部もいなくて4人ぐらいで共同代表の家で会社やってるようなタイミングでお会いして。最初は個人の家に行きたくないなって思いましたが、当時私もスーツ着てましたから、サラリーマンだったんですけど、行ってみたら「これはすごいな」って瞬間的に響きまして、やっていこうということで入らせていただいて。

その後我々以外にEIGHT ROADSさんとほぼ共同とコリードでやらせていただいたんですけれども、次のラウンドから入っていただいて、比率も大体同じぐらいお互い追加投資して上場まで見ていったということで。

ちょっと2014年ぐらいですとまだ資本政策的にそんなにこなれてないというか、大型の資金調達もそれほど大きくはなくて、noteは2013年に投資したんですけど、その時我々とJAFCOさんで合計3億円投資したんですが、当時は3億円って結構大きいなと。

石橋:
2013年ですか?

曽我:
2013年ですね。億円単位の投資ってあんまりなくて。

石橋:
そうですよね。

曽我:
2012年に我々は1号ファンドのファンドレイズをしてたんですけども、その時はもう年間で億円単位の資金調達でもう10件前後とかそれぐらい少なかったんですけど、2012年ぐらいから非常に増えだして、結果的には10億円単位の資金調達もちらほらあったということで。

「3億円大きいのやったぜ」と思ったら、その年が終わる頃にはそんなに目立たなかったっていうのもあったし、資本政策も今ほどこなれてなかったので、ちょっと多めに取っちゃったのかな。だから最後までそこそこの比率だったのかもしれないですね。追加でその後2回、合計3回投資をさせていただきましたけど。

業界知見を持つ起業家に投資──MBO案件も3社

石橋:
East Venturesさんとかってシード投資もちろんやられていらっしゃって、社数ベースでいうとめちゃくちゃな数、多分何社なのか僕も正しくはよく存じ上げないんですけど、めちゃめちゃな社数投資されていらっしゃる中で、ある意味真逆じゃないですか。

絞り込んで投資をしていらっしゃるけど、本当にまだ何もない時というか、極端にチームと何かプラスアルファぐらいしかないときって、この領域とかこういうビジネスに投資したいよねって前提が曽我さんとか皆さんの中であって探してるみたいな感じなのか、何をもって何億円も何十億円も投下する先を何もない状態のスタートアップで見極めたり、「ここだよな」みたいなところって、共通項とかこのエッセンスみたいなことがあったりするんですか?

曽我:
ターゲット絞ってやられてるファンドさんもあると思うんですけど、私はそこまで自分が賢いと思っていなくて、むしろ我々が想像しているその先のサービスをやっているような会社に投資をしたいと思っていて。

誰も想像していないサービスですとか、こんなことがこれから起こるんだっていうのを予見させてくれるような、そういう起業家とかサービスを見つけたら、これはいいなっていうので前のめりになるケースが多いですね。

自分で一旦就職して、そこの領域で業界ではトップクラスの知見を得て経験を得て、その上で「この業界にはこれが足りない」「ここは俺が変えていきたい」というので起業される会社が、noteの加藤社長も出版出身だったりするんですけど、2件目の投資先のトレタの中村社長なんかも飲食店ずっとやっていらして、それを自分で変えていこうっていうことをやられたり。

やっぱりそこで業界の知見があるからこそ勝てるっていう説得力もある会社、起業家に投資するケースは結構多いかなっていう感じですね。思いつきだけではやっていない。実績と経験があって「俺ならできるんだ」という方に投資をさせていただくケースが多いですね。

石橋:
MBOされる起業家に投資を3社されてるっておっしゃっていましたけど、それもまさにそのメッセージと合ってくるって感じなんですかね。慣れてらっしゃるというかプロでいらっしゃるというところが大前提だってところは見えやすいところではありますね。

曽我:
そうですね。大企業の子会社で第一線でやってこられて、中にいても十分活躍はできるんだけれども、さらに外に出ることによって優秀な人材を呼び寄せることができることで、より会社を大きくしていこうという会社はまだまだあると思いますし、やはり大企業の中にいらっしゃる方って優秀な方多いので、そういう方が外に出られて起業されると、より成長していく可能性は高いんじゃないかなと思ってますね。

紹介経由のコンタクトが可能性高い

石橋:
起業したばかりだけどこれからエクイティファイナンスしていこうというときは、フェムトさんに最初にご相談をしてみるとイメージ的にもいいのかなと思いますので。

曽我:
よろしくお願いします。

石橋:
一番最初コンタクトするのは何経由がいいんですか?

曽我:
直接ご連絡いただくケースは多いんですが、可能性が高いのは1クッション、どなたか知っているVCかエンジェル投資家か業界関係者の方を捕まえて、その人に紹介してもらうっていうのが可能性は高いですし、どっかイベント行って声かけて名刺交換したらやってもらえるでしょうから、そこは自分でネットワーク作っていく必要はあるかなと思います。

石橋:
了解です。ぜひこれから起業される方であれば挑戦という意味合いでも、概要欄にホームページの方のURLは記載させていただきますので、ぜひそちらの方からお問い合わせもできればと思いますし、もちろん僕らにお問い合わせいただいたりとか、今曽我さんがお話いただいたようにイベントごととか参加してネットワーク作りながら、ぜひご紹介をお願いしていく形でつながっていただければと思いますので、改めて第1弾ありがとうございます。

曽我:
ありがとうございます。

石橋:
皆さんも最後までご視聴ありがとうございます。第2弾ではですね、曽我さんとプリンシパルの山田さんという方にも来ていただいておりますので、お2人がどういうご経歴でなんで今フェムトさんでやっていらっしゃるのかみたいなところをお伺いしてまいりますので、引き続きご覧をいただければなと思います。

法曹の道から一転、新生銀行の投資部門へ!フェムトパートナーズ山田さんがVCを選択した理由|スタートアップ投資TV

飛び込み営業から始まった、ベンチャー投資との出会い

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。

今回も、前回に引き続きまして、フェムトパートナーズ株式会社 General Partnerの曽我さんと、今回からPrincipalの山田さんにもご出演をいただきまして、2人の人物像というか、なぜVCをやっているのか深堀りしていければと思っておりますので、今回からよろしくお願いします。

曽我&山田:
よろしくお願いします。

石橋:曽我さんから改めてどういうご経歴で、例えば新卒の頃こういうところ入って、どういうプロセスで今フェムトさんにいらっしゃるのかみたいなところ、まずは曽我さんからお伺いしてもよろしいですか。

曽我:
はい。私は2002年に新卒で新生銀行に入りまして、最初は本店の営業で通信メディアとかを担当してまして。

大企業なので銀行で融資をするんですけれども、あまり金利が稼げないから儲からないので、もうちょっと飛び道具で合併と買収(M&A)やろうとか、大企業が持っている有形固定資産を売却しようとか、そういうちょっと変わった動きをしようと当時の部長が言っていました。

「大企業はあんまり稼ぎきれないから、もうちょっと新興の上場したての会社に顔出してこいよ」ということで、めちゃくちゃ飛び込みをさせてもらっていまして。

石橋:
融資先とかを新興企業で探し回ってたって感じなんですか?

曽我:
そうですね。でも融資はできないんでM&Aの提案をするとかに繋げるんですけれども。

当時上場したばかりのライブドアとかインデックスとかに何か新しい話をしていくっていう時に、M&Aの提案をするだけじゃなくて、こちらもいくらかお金出すっていうのが必要じゃないかみたいなことは、当時のチームの課題認識としてはありまして。

その流れで2004年に、もともと日本長期信用銀行(長銀)系だったんですけど、長銀は日本エンタープライズデベロップメントという日本で相当古いVCを持ってたんですけど、経営破綻の経緯でなくなってしまっていて。

それを2004年にプログラム化して作ろうと、その後社長になるティエリー・ポルテさんという副会長が主導で作りまして。

その時にその辺をやっているのが私のいた部署だったので、当時の部長と留学から帰ってきた次長と、この人が私の当時の師匠なんですけれども、いろいろ飛び込んで動きが良かったから「こっちでやれ」ということで3人で当時のチームを立ち上げて。

2004年からずっとベンチャー投資、上場しそうな会社に飛び込んで投資をさせていただいてイグジットするということをリーマンショックのタイミングまでずっとやっていまして。

リーマンショック、そして出戻り──2度の転機

曽我:
それで2008年リーマンショックがきてちょっと暇になったんですね。「投資は一旦やめろ」みたいな感じになって。

「クビにはしないで置いておいてやるから」ということで、当時まだ私も20代で働きたい盛りだったので、「じゃあちょっと外に出てもうちょっと仕事しようか」っていうことで、以前の上司がやってる会社に採ってもらって。

外で2年半くらいですかね、また同じようにベンチャー投資とかM&Aの提案とかをやってまして。

それも飛び込みばっかりやって、豚肉売ったりとか、投資先が抱えた在庫の豚肉を売りまくるっていうのをやってですね、一通り片付いてどうしようかなっていうときにまた古巣の新生銀行に呼び戻されまして。

その時は社長が変わってたんですけれども、新しいベンチャー企業との取り組みを新規事業で作ろうというときに、「曽我が外でひと回りしてきたからじゃあもう一回採るか」と言ってまた採ってもらいました。

石橋:
出戻りだったんですね?

曽我:
出戻りですね。

石橋:
それが何年でしょう?

曽我:
2012年の半ばぐらいでしたかね。

専務の佐藤さんという方が作ったチームがあったんですけど、入って1年弱やってみたら、先ほど申し上げた私の当時の師匠がまだずっと銀行にいたんですけど、「磯崎さんとファンドやるからこっちもお前がやれ」ということで、またその仕事も一緒にやることになりまして。

1号ファンドのファンドレイズの途中からジョインして、途中でもうそっちの仕事専任になったんですけども。

石橋:
ほとんど一緒に作ってきたみたいな感じなんですか?

曽我:
そうですね。1号ファンドを一緒にファンドレイジングして、1号の運用が始まって、割と投資先がうまくいったので、じゃあ2号ファンドを作ろうかっていうのが2017年ぐらいになりまして。

そのタイミングで上司からの勧めもあって、「独立してやるのもいいんじゃないか」ということで2度目の退職をしましてですね。磯崎さんと会社を作って、今のファンドをやっている。

法曹志望から投資の道へ──山田氏のキャリア転換

石橋:
山田さんも新卒は同じく新生銀行でいらっしゃるんでしょうか?

山田:
そうですね。新卒で新生銀行グループに入社していまして、最初は不動産の部隊に入って不動産の評価や分析業みたいなのをずっとやってたんですけれども、2017年のタイミングでグループ内で異動で、曽我の後釜のポジションに入るような形で新生企業投資という会社に入りまして、そこから今のキャリアに続いているという感じですね。

石橋:
もともとはご自身がベンチャー投資するとは、曽我さんも山田さんも思ってなかったんですか?ベンチャー投資したいなとかそういう目線は全然なかったってことですよね?

曽我:
なかったですね。ベンチャー投資っていうのは入るときには知らなかったですし、入った後にはそういう金融業としてあることを知りました。

ただ銀行とか証券とか保険とか大きい金融機関の中では割と端っこの仕事でもあったので、当時は銀行なんかでVCのチームに行かされると飛ばされたみたいな扱いでもあるぐらいではあったんですが、私の上司が留学してて、留学先でVCのことなんかも研究されてたので。

「海外のVCは違うぞ」と。日本では当時全然VCのことを知らせる本とかなかったんですけど、起業のファイナンスもなかったので、「VCを紹介してる本があるからこれ買って読め」と言って、VCってこういうものがあるんだっていうことを知って。

銀行の時はプリンシパル投資だからファンドレイズも自分ですることもなかったですから、ちょっと今の独立系VCとはまた動きが違うんですけど、いわゆるベンチャー投資、投資をして成長してもらって回収するっていうプロセスはその時からやって、すぐにその魅力に取り込まれていったっていうのはありますね。

石橋:
もともとはお2人ともなんで新生銀行入られようと新卒の時って思ってたんですか?

山田:
私はもともと法学部でロースクールにも通っていて、法曹の道を目指していたんですが。

石橋:
普通に弁護士になる流れですもんね。

山田:
そうですね。それがなかなかうまくいかなくて、じゃあ自分のキャリアどうしようかっていうのを考えたときに、投資がすごい好きだったので。

石橋:
そうなんですね。

山田:
投資のキャリアを歩みたいなと思って探して入ったのが、この新生銀行の投資部門だったんですね。

石橋:
もともと個人で上場株とかの投資とか不動産投資とかしてたんですか?

山田:
上場株ですね。大学生の時とかに、まあ趣味程度ですけどやっていて、プロの道として勉強してみたいと思って、この業界に入ったという感じです。

石橋:
山田さんって何年新卒なんですか?

山田:
2015年に新卒で、大学院とそれから司法試験の1年があるので、ちょっと遅れてるんですけど、2015年に入っています。

石橋:
なんでその中で新生銀行を選ばれたんですか?

山田:
たまたまですね、私の大学院に就職の説明会に来ていて、ほとんどが弁護士事務所さんだったんですけれども、1社だけたまたま金融の会社があって、それが入った新生銀行の投資部門だったという。

曽我:
当時ですね、新生銀行の中でいろいろ投資しているチームがあって、エクイティだ、不動産だ、債権だというのがあったんですけど、それを全部切り出して別グループとして投資するチームを構えようと。

2014年から2015年ぐらいに始めて、調子に乗って新卒採用もやったんだよね。

その時に当時の人事の方は結構いろいろ全国回ってやられたのは聞いてましたけども。

石橋:
当時で言うと上司部下みたいな、新生銀行の投資部門でそういう関係性だったんですか?

曽我:
チームが違ったんです。彼らは不動産担当で、私はエクイティだったので、所属のチームは違ったという感じでしたけど。

石橋:
結果的に希望じゃなくて配属みたいな形で、その新生銀行投資の方に異動されたんですね。

山田:
そうですね。当時若い人はみんなベンチャー投資やりたがって入るんですけど、実際に入れないっていうのが多くて、中途採用というのが中心だったんですけども、当時の上司の縁もあって異動という形で引っ張ってもらったという経緯ですね。

石橋:
結果的に今は転籍になるんですか?どういう扱いになっているんですか?

山田:
最初は出向という形で、新生企業投資の方に異動になったと同時にフェムトの方に出向していたんですけども、しばらく6年弱ぐらいですかね、やっていく中でフェムトの方に一本でやっていきたいなということで、完全に転籍をして、一本でやっているという形ですね。

20年飽きない理由──起業家との出会いが生む刺激

石橋:
ある意味曽我さんと山田さんにとってというか、それこそ新生銀行グループに大きいところに入られて、VC業界のそのグループの中で携わりながら、ある意味独立というか前職辞められて今フェムトさんにいらっしゃると思うんですけど、決め手となったというか、この業界でずっとやっていこうと思った要因とか、これだよなって思ったものって曽我さんと山田さんそれぞれあられたんですか?

曽我:
20年弱ぐらい投資をしてるんですけれども、結局はファンドレイズして投資して成長してもらって回収してっていうプロセスは一緒なんですが、お付き合いしている起業家の方、投資させていただく起業家の方とかサービスが一つ一つオリジナリティが違いますし。

いまだに新しい起業家の方にお会いするたびに、こんなことやってるんだ、こんな新しいこと、世の中の一歩先のサービスをやられている方々なので、その話をお伺いするだけで非常に刺激的な毎日ですし、これをずっと続けていけたらこんなに楽しいことないなとはずっと思っていますので、それでこれを続けたいなというのもありましたかね。

石橋:
山田さんは何年目の時って仰ってましたっけ?完全に異動したというか転職になるんですかね?

山田:
6年ぐらいになるんですけれども、投資として一番ベンチャー投資が難しいなというのがあって。

投資が好きでこの業界に入ってきたので、投資をもっと極めたいっていう意味で、面白いっていうのが大前提にあるかなと思います。

新しいサービスとかテクノロジーとかそういうのに毎日触れられるっていうのも刺激的で、熱量の高い人たちが本当に集まっているので、起業家の方もそうですし、投資家も業界関係者の方もそうなので、なかなか他の業界にはこういう環境ってないなっていうふうに思っていて、この業界でしっかり骨を埋めるぐらいの気持ちでやっていきたいなという感じですね。

曽我:
サラリーマンで投資をしていると、上場するまでは密に付き合いをして、VCは基本的にはお見送りする仕事なので、上場されたら関係性が薄くなってしまうことが結構多かったですし、それはそれでいいんですけど。

逆に投資が失敗してもクビになるわけでもなく、上場してもそんなにボーナスもらえないですけども、クビになってもそんなに変わらず、そこそこいただいて働いていけるっていうのもまたちょっとフェアじゃないのかなっていうところもあって。

ここはできるだけ起業家に近い立場で、我々は失敗が込むと続けられない仕事だと思いますので、そういうところでギリギリやっていくっていうのもある意味フェアなのかななんていうところもあって独立したというのもありますかね。

求める人材は「好奇心」と「コミュニケーション能力」

石橋:
なるほどですね。もしかしたらこの動画を公開している頃には既に求人票が締まっているかもわからないですけど、最近フェムトさん採用活動されていらっしゃるじゃないですか。

2人は新生銀行グループ出身で元々バンカーというか銀行畑だったと思うんですけど、今って次どういう人を採用しようと思っているのか、どういうところに魅力を感じる人をチームアップしようと思っているっていうのは曽我さん目線であられたりするんですか?

曽我:
まず、VCはめちゃくちゃ成長産業なのでぜひお越しいただきたいのと、こういう人がいいっていうのは、置かないのもいいかなと思っていまして。

いろんなバックグラウンドの方が入ってくることによって、起業家との向き合い方も変わってくると思うので、まずは関心を持っている方はお話をさせていただけたらなと思いますし、最低限の金融の知識だとか好奇心だとかコミュニケーション能力というか、人と話すのは嫌いじゃないとか、そういうところは必要かと思いますけれども、まずは関心を持っていただけたらお話をさせていただければなと思います。

石橋:
業界経験とかっていうのは問わず、好奇心とかコミュニケーション能力って方がやっぱ大事ですかね?

曽我:
そうですね。業界経験もありすぎると、逆にちょっとやり方がそっちに染まりすぎてても動きづらいと思うので。

石橋:
ありがとうございます。もちろんフェムトさんでも採用活動していらっしゃると思いますが、最近はファンドさんが大きくなられているのは、どこのVCさんも本当にHR活動・採用活動していらっしゃるかなと思いますので、ぜひフェムトさんもチェックしていただきながら、他のVC業界のところも見ていただいて、いろんな業界の人がまさに来ていただけると僕らの業界は盛り上がっていくかなと思っておりますので、いろいろと見ていただければなと思っております。

それでは改めてお2人とも今回ご出演ありがとうございます。

曽我&山田:
ありがとうございました。

時価総額337億から44億に激減!note上場時に実施されたダウンラウンドIPOを当時の筆頭株主が語る|スタートアップ投資TV

本来は前年上場予定だった―市場環境の変化

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。

今回も、前回に引き続きまして、フェムトパートナーズ株式会社 General Partnerの曽我さんにご出演いただいておりますので、曽我さん今回もよろしくお願いします。

曽我:
よろしくお願いします。

石橋:
今回は第3本目というところで、1本目はフェムトさんのお話で、2本目は曽我さんと山田さんの自己紹介というか、どのような経緯があってVCをやっていらっしゃるのかお話を伺ってきました。

3本目は僕自身もめちゃめちゃ関心があり、企画案を書きながら、「こんなこと聞いちゃダメなんだろうな」と思いながら企画案を出させていただいたのですが、昨年2022年に1号ファンドで投資された7社のうち2社がIPOされていて、それがプレイドさんとnoteさんというお話が出てまいりました。

いわゆる未上場時点の株価と上場時点の株価が逆転してしまっている、ダウンラウンドIPOと呼ばれる現象で2022年にIPOをされていらっしゃる。

これに関して、起業家である加藤さんや最高財務責任者の方々のインタビュー記事は出ているものの、投資家目線でダウンラウンドIPOという現象にどのように相対したらいいのか?そもそもどのように相対していたのか?という話は限りなく表に出ていないというか、実際にどんな交渉をするものなのか?

僕自身も過去の投資先でIPOをしてはいるのですが、最近ダウンラウンドIPOはよく聞くキーワードになってきたと思いまして。note社を担当されていらっしゃった曽我さんに、実際どんな感じだったのか、今後増えるかもしれないダウンラウンドIPOをこのように投資家は向き合っていかないといけない、というところをいろいろとTipsを教えていただければと思うのですが。

そもそもなんであのタイミングでダウンラウンドIPOをしてまでもIPOをしようというふうに、フェムトさんは資本政策などもハンズオンで支援されるというお話が出てきましたが、コミュニケーションがあった上で、あのタイミングで上場されたんですか?

曽我:
もともとは前の年にIPOする予定だったんですね。上場の準備は何年か続けていて、その前の年のタイミングで上がろうと進めていました。

その時にはまだ市場がクラッシュしてなかったので、時価総額も相応に直近の資金調達よりは高い調達で当然上がっていこうと。私は「500億円ぐらいでいけ」と言ってましたけど、それで行こうという話だったんですね。

ただそれが上場のプロセスで1年伸びることになって、最初聞いてた株価からあれよあれよと下がっていったのがあったんです。

石橋:
「もう1年伸ばそう」みたいな話にはならなかったんですか?

曽我:
そこは基本的には発行体の起業家のご意向を一番尊重したっていうのが率直なところでして。

我々としても将来的にはもっと大きくなるような1000億円以上のポテンシャルがある会社だと思って投資をさせていただいているので、そうなってから出るっていうのも当然あるし、それが伸びたとしても我々はご支援しますよとも申し上げたのではあるんですけど。

会社としてこのタイミングで行くのが一番いいだろうという決定をされたので、であればそれを尊重して「そのまま上場しましょう」という話をしたんですけれども、会社の方では株価が違う投資家が並んでいますから、大変だったと思いますが1社1社交渉と説得をして、ご納得いただいた上であのタイミングで上がったんだろうと思います。

筆頭外部株主としての立ち位置と判断

石橋:
note社に関してだけで言うと、上場時の外部筆頭外部株主はフェムトさんだったと思うんですけれども。

外部筆頭でリード投資家みたいなところだと、当然証券会社さんとの交渉とかも割と一緒にやられるものなんですか?

曽我:
noteはそこまでは入らなかったかもしれないですけれども、知り合いの方は中にいるのでお話しさせていただくんですけれども、直接は会社の方でされていました。

石橋:
なるほどですね。フェムトさんとしては、もちろん発行体の意思決定が最優先だとはいえ、全然OKみたいな感じだったのか、ぶっちゃけもうちょっと待った方がいいよね、みたいなコミュニケーションの交渉とかするものなんですか?

曽我:
うちが投資したのは相当早かった、2013年のタイミングなんで、そこから見ればダウンはしてないっていうところも一つはあったので。これ言ったら他の投資家に怒られるんだけど。

石橋:
イニシャルを見れば大体わかることなので、半ば公開情報だと思います。

ある意味、一旦荒れていたからこそ、ダウンラウンドIPOでも比較的受け入れやすかったんですかね?

曽我:
受けやすかったという部分はありましたね。我々も当然大きく損をするのであればリミテッドパートナー(LP)投資家さんに対する説明責任もありますので。そこを「どうぞ気持ちよくやってください」っていう感じにはなかなかならないと思うんですけど、そこは投資採算も合っていたから、割と起業家寄りの判断ができたことがあったと思いますけど。

株式売却のタイミングをどう決めるか

石橋:
2話目のタイミングで曽我さんから「VCは送り出す仕事だよね」みたいな話、まさにそれこそIPOを迎えると送り出していくっていう立場になるのかなと思うんですけど。

noteさんとかそういうダウンラウンドIPOをされるときって、他の投資家さんでもちらほらそういう株式売却のタイミングを悩まれてる、特にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の方とか悩まれてる人多いなと思ったりするんですけど。

そのファンドの中であるとか、もしくはLPの皆さんとのご相談の中で、もうちょっと持っていようとか、もうすぐに売り出しをしちゃおうとかってどういうふうに決めていらっしゃったんですか?

曽我:
VCごとの売却のポリシーがあると思うので、上場してからも相場をある程度読んで売却タイミングを見定めるとか、ちゃんとイベントドリブンで「このタイミング売っていこう」とやってる方々もいらっしゃいますし、あんま考えずに「初値で全部売っちゃえ」という人もいると思うんですけども。

そこは我々も状況に応じてですかね。あんまり相場を読むのはもともとの仕事じゃないのでやらないですけれども、かといって早急に売るっていうことでもなくて、状況を見ながら一番適切な方法で証券会社さんと売却のご相談、ご提案いただきながら売却をしていくっていう感じではあります。

起業家と投資家、それぞれへのアドバイス

石橋:
なるほどですね。足元もそうですし、場合によってはもうしばらくこのダウンラウンドIPOみたいなトレンドとは言わないですけど、少しやっぱり2016年以降とか2017年以降でぐーっと株価が上がってきたところと今のIPOマーケットってこの乖離があるがゆえ、おそらく一定数ダウンラウンドIPOって出てくるとは思うんですけど。

曽我さん目線で言うと、起業家がこういうふうに気をつけておかないと資本政策上こういう罠に陥っちゃうよねとか、投資家であればこういうところを配慮しておくべきだよねとか、こういうところを交渉するべきだよねってところ、それぞれの目線で曽我さんだったらどうアドバイスするとかって何かありますか?

曽我:
ダウンラウンドのIPOっていうのは自分たちの責任というよりは市場のマーケットに左右されているところが大きいと思うので、そこは未上場の段階で「あまり高く上げすぎるとその後負けちゃうと思うんだよね」っていうので株価を考えるよりは、よりこう自分たちはその後も成長していくんだっていう強気な気持ちで資本政策を作った方がいいんじゃないかなとは思いますし。

私は投資する側としても、起業家にはそのような感じで「いやー、もう出てからしんどいからちょっとここ小さくやりますわ」って言ったら、「ちょっと違うのかな」っていうので、もうちょっと強気な発行体が好きではあります。

石橋:
アンコントローラブルだから結果論としてはしょうがないというか。

曽我:
ただ、今は明らかに出口がこうだっていうのがある程度わかりますから、よりこうミドルレイターに近づくに従ってはそっちをより意識しながら株価をつけていく必要があるかなと思いますし。

シードとかシリーズAぐらいにはそこまできつい制約はないので、より適切な資本政策は作りやすいのかなとは思います。

M&A(合併・買収)という選択肢も視野に

石橋:
ちなみに曽我さんの20年という投資家としてのキャリアの中でも、やっぱりダウンラウンドIPOって結構タフなシチュエーションですか?

曽我:
タフですよね。IPOしたらみんなハッピーになるはずなのに、それがIPOしても出口がないというのはなかなか悩ましいはずなので。

だからもしかすると今後はそういうふうなことを見越して、もう少しM&Aが増えるだとか。

10億円とか20億円でのIPOであれば30億円で買うよって言ってくれるような会社を探すとか、そういうことが増えていくんじゃないかなと思ったりもしますけどね。

石橋:
直近だとCasterさんとか12億円だっけ?

曽我:
12億円ですね。出たら40億円ぐらいついたので、そういうマーケットを見越してあげるっていうのもあるのかもしれないですけれども。

石橋:
なかなか本当に答えはないかもしれないですし、僕ら自身もそうですけど、CVCの方とか他のVCの方もダウンラウンドIPOに相対した経験をお持ちの方ってまだまだ少ないと思っているので。

曽我さんであるとか、ないしはそういう経験あるような方々のご意見であればすごく貴重かなと思いますし、ダウンラウンドIPOというところについてちょっと投資家目線でいろいろとご意見をいただければと思っていたところでございましたので。

改めて全3話にわたりましてご出演ありがとうございます。皆さん、最後までご視聴もありがとうございます。