【圧倒的な質】日本発から世界を変えろ、驚異のキャリアを持つCEO原氏が語るcorelineの全て Vol1
◯原 健一郎 Coreline Ventures 共同創業者 ジェネラルパートナー
Twitter▶︎https://x.com/kenichiro_hara
公式HP▶︎https://www.coreline.vc/
2006年 東京大学工学部システム創成工学科卒
2008年 東京大学公共政策大学院卒業後、マッキンゼーアンドカンパニー入社 中国のスタートアップ立ち上げや ヘッジファンドを経験
2015年 DCM Venturesにて 日本オフィスのパートナーとして勤務
2025年 Coreline Venturesを創設
石橋
皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。今回はですね、Coreline Ventures共同創業者ジェネラルパートナーの原さんにご出演をいただいておりますので、原さん、よろしくお願いします。
原
お願いします。
石橋
今回の動画は、Coreline Venturesさんから出資を受けたいとか、目指している起業家の方がこの動画を見れば、Coreline Venturesが一通りわかるというところ、ないしは普段ネットではあまり話されていない情報も含めてお伺いしていきたいと思っております。
原
3時間ぐらいかかりますね。
石橋
ぜひギュッとまとめて。
30分ぐらいでまとめていければと思いますので、よろしくお願いします。
原
お願いします。
石橋
早速ですが、Coreline Venturesさん、まだ名前をご存知ない方もいらっしゃると思うので、どういう経緯で創業されたファンドなのか、歴史も含めてご説明いただいていいでしょうか?
原
はい。Coreline Venturesですね、それ自体は歴史はすごく浅くて、2025年の1月にできておりまして。
石橋
収録時点で2025年3月、3ヶ月前ってめちゃめちゃ新しいですね。
原
ちょっと成り立ちが特殊で、僕自身もそうなんですけど、DCM Venturesっていう、シリコンバレーを拠点にして米中日で投資しているVC(ベンチャーキャピタル)にいて、10年ぐらい投資していました。このCoreline VenturesはDCMの日本チーム全員とアメリカの投資チームの何人かでスピンアウトしたファンドなんですよ。
石橋
MBOとはまた違う?
原
それに似た概念と考えていただけたら。
なので、新しいけれども、みんなずっと十何年やっているメンバーなので、新しさと歴史が両方ある感じですね。
石橋
なるほどですね、新しいけれども厚みのある歴史って感じですね。
原
そうですね。DCM自体は1996年に設立され、日本オフィスも20年弱くらい。私が10年、一緒に創業している本田が17〜18年。かつての日本のメンバーは全員移ってきてるので、名刺が変わったくらいで投資スタイルもステージ、哲学も基本的には変わっていません。
日本だけでなくアメリカにも引き続き投資をしていて、アメリカに拠点があるという意味でも、以前と変わっていないです。
石橋
ちなみに原さんご自身は10年前にVCに行かれたとのことですが、もともとはどんなキャリアだったんですか?
原
最初は普通に新卒でコンサルティングをやっていて、それが3年くらい。その後に中国に行きました。あまり知られていませんが、中国でスタートアップをやっていました。
石橋
ご自身で創業を?
原
創業メンバーの一人として、Eコマースの会社で洋服を売ってました。中国で洋服を作って売ってました。
石橋
マジすか?
原
全然違う業界ですけどね。それが大体2011年くらいかな?あまりうまくいかなくて。その後アメリカに留学しました。その時にスタートアップって面白いなって改めて思ったんです。
コンサルティングは大企業向けの仕事が多くて、リーマンショック直後という時期もあって、「めちゃめちゃ成長してる事」を感じられる場面が少なかったんです。一方でスタートアップ、特に中国では毎日が成長の連続で、国全体が豊かになっていくようなスピード感がありました。
石橋
そうですよね。国としての成長率で言うと。
原
そうですね、特にスピード感と苛烈な競争がすごくエキサイティングでした。
あと、うまくいかなかったからこそ、なんとかして「何がダメだったのか」、「うまく行ったらどうなるんだろう」を深掘りしたくなったんですよね。
留学中もスタートアップにチャレンジして、それもちょっとうまくいかず。なので結構ずっとうまく行ってないんですけど。
石橋
起業を2回もチャレンジされたんですね。
原
そうですね。紆余曲折あり実はもう1回、フィンテックの立ち上げにもチャレンジしていて、入学直後に欧米系の会社の日本オフィスをやろうとしていたんです。
石橋
ある意味3カ国で起業してきたようなイメージですね。
原
起業ってほど大層なものじゃないですけどね。
難しさもいっぱい知ったし。あとは同時に、起業家の人への尊敬ってすごく感じて。格好いいなこの人たちみたいな。
僕はずっと自分が起業してるわけじゃなくて、誰かと起業するか、そのボスみたいなのがいて、その人の右腕的なポジションが多かったんですけど、そういう方が自分の性格とかには合っているのかなと思い、2015年に転職することになったんですよ。
石橋
なるほど。
原
で、その時に同じようにスタートアップをバーって受けてて、転職として。それでフィンテックの立ち上げっていうのを突然そのプロジェクトが終わってしまったので、それまではもうなんか周りの人とかに「自分は10年間このプロジェクトやるぞ」とか、特に留学出てすぐなので、本当にいろんな人に相談して。
このフィンテックは資産運用だったんですけど、「資産運用が変わると思う」みたいな、結構言ってたんですね。
原
なんですけど、それが1年経たないぐらいにちょっと日本での立ち上げプロジェクトなしでという事になって、転職だってなった時に、気持ちとして、資産運用をずっとやりたいっていう気持ちはあったんですよね。突然切り替えられないというか。
やっぱこれやれて次のスタートアップって言っても、こんなに10年間コミットするつもりだったのに、もうパッてなくなっちゃうから、どうしようかなって思って、いろんなスタートアップに会ってましたと。
すごいいいスタートアップがあって、どうしようかなと思った時に、ちょっと一応そのスタートアップどうなのかなと思って、そこでですね、VCに話を聞きに行ったんですよ。
石橋
投資元に入ったってことなんですね。
原
そうです。紹介してもらってリファレンスというか、「どうなんですか、実際」みたいな。
石橋
そういうのよくありますね。
原
僕も今よく受けます。で、そのときの紹介先はDCMじゃなかったんですが、そこから「VCに興味あるの?」って聞かれて。「VCって日本でなれるんだ」って、そのとき初めて気づいたんです。
ただ、僕はアメリカに留学していた経験から、やっぱりVC業界って、特に当時はアメリカの方が圧倒的に進んでいると感じていました。もちろん今は日本もだいぶ追いついてきていますが、ラーニングの観点では、アメリカのVCファームで働くことがすごく大事だと思ったんです。
で、当時アメリカにあって日本に投資しているVCファームは、DCMしかなかった。だからDCMに入ったという流れです。
石橋
なるほどですね。めちゃめちゃ、なんというか、ファウンダーマーケットフィットじゃないですけど。改めて今回インタビューさせていただく機会をいただいたので、原さんやCorelineさんのテーマについて、もちろん下調べはさせていただいていたんですけど、今のお話を聞いて、キャリアがすごく綺麗にフィットしているというか。
地域的にも、投資対象的にも、すごくフィットしているなと個人的には感じました。
原
そうですね。
投資っていろんなステージがありますし、いろんなタイプの会社がありますから。それって、やっぱり好き嫌いというか、得意・不得意が出ると思うんですよ。自分はこのステージが好きだとか、こういう会社が好きだとか、会社のこのタイミングが合う、とか。そういうのって、結構いろんな失敗や紆余曲折の中から自然と形成されていく気がしますね。
石橋
なるほど。ではその流れで、Coreline Venturesとして、どういうファンドなのかというところもお話を伺っていきたいんですけれども。今のお話だけを聞いていると、比較的やはり創業期のスタートアップを中心に投資をされているファンドというイメージですか?
原
そうですね。これはDCM時代から変わらないんですけど、基本的に僕らはやっぱり創業期、ほんとに会社ができた直後の1〜2年って、とても大事だと思ってるんですよ、会社にとって。また、最初の株主・投資家っていうのも、非常に重要だと思っていて。影響力が強いと。
原
特に、初めて起業される方にとっては、いきなり入ってきたVCと毎月ミーティングするようになると、そのVCがする質問や視点を通じて、「どうなってるの?」ってことが、やっぱり頭から離れなくなって、気にするようになるんですよ。
だから、会社のカルチャーや意思決定のサイクル、やり方も、最初の投資家によって変わってくると思っています。
僕らはそういうステージがまず好きだし、実際に過去のトラックレコードから言っても得意でもあります。今も、数人の会社に投資をしてと言うのが僕らのスタイルですね。
それに加えて、僕らが得意としているもう1つのポイントは、一回限りではなく、何ラウンドにもわたって投資をしていくことです。たとえば僕らが投資していた会社って、最初はほんとに3,000万円とか4,000万円のシードなんですけど、何回かにわたって投資していって、最終的には累計で30億円を超えるような会社も何社かあります。
なので「小さく始めて、大きく終わる」っていうのが特徴のひとつですね。
あともう一つ重要なのは、「投資する社数」をかなり絞っているということです。
石橋
投資の件数が少ないんですか?
原
はい。Coreline Venturesになってからは、日本への投資も増える予定ではありますが、それでもこれまでは年間1〜2件、多くても2〜3件ぐらいでした。
石橋
しかも、シード投資なんですよね?
原
そうです。これからは多少ペースを上げていこうとは思っていますが、それでも、一般的なシード投資って、1つのファンドで数十社とか、場合によっては100社を超えることもあると思います。それに比べると、僕らの投資件数はかなり少ないと思います。
石橋
なるほど。そうなると、構造上的には小規模なVCファンド、シードファンドになるのかなと想像してしまうんですが、ファンドの規模感でいうと、どのぐらいなんですか?
原
これも成り立ちが特殊でして、今すでに投資を始めているファンドがあります。それが、200億円強の規模です。
石橋
えっ、シードファンドで200億円!?しかも投資を絞っているという戦略で…すごいですね。
原
そうですね。なので、普通に考えたら計算が合わないんです(笑)。たとえば1社に5,000万円とか6,000万円ずつ投資していたら、到底回らない。でも僕らの頭の中では、5,000万円を投資する時点でも、将来的には10億円、20億円必要になるだろうとみこして投資しています。
なので、5,000万投資するには割に合わないくらいデューデリジェンスしています。
石橋
なるほど。つまり、最初の5,000万円は「入り口の入り口」という感覚なんですね。
原
だからこそ、5,000万円の投資でも、その会社が将来的にどのぐらいの資金が必要になるのかを見越して、その目線でデューデリジェンスをしています。
石橋
今のところでかなり思想は伝わってきたと思いますが、実際に投資を受けた起業家の方々との「期待値調整」のような部分についてもお伺いしたいです。投資した後、Corelineさんはどう関わることが多いですか?起業家に対してどういうことを求めているのかなど、もしあれば教えてください。
原
基本的に、僕らは「ハンズオフ」ではないと思っています。かといって、僕らが「オペレーションではこうした方がいいよ」みたいに、何かを指示することもありません。というのも、先ほども少し触れましたが、やっぱり起業家に対しては尊敬の気持ちがあります。彼らは最前線で戦っていて、その業界で一番詳しくて一番理解しているのは当然起業家本人だと思うんです。
もちろん、僕らにもアドバイスできることはある。
たとえばファイナンスなんかは、ずっとやってる分だけ詳しいかもしれません。あるいは、僕らの強みとして、アメリカのVCとしての視点があるので、アメリカで何が起きているか、どういう先行事例があるかを伝えることができます。たとえば「この事業領域でアメリカではこういう会社がこういう挑戦をして、こういう形になっている」みたいな話ですね。
僕らが詳しいことと、起業家が詳しいことを重ね合わせて、毎回確認しながら進めていく感じです。あと、時間軸の話も重要です。起業家は毎日たくさんの課題に追われていて、目の前のことにどうしても集中しがちです。でも僕らと月に一回会うときには、1年後、3年後といった長期的な目線で話す時間になるように意識しています。
あと、僕らはアメリカのVCなので、日本だとどうしてもスケールの小さい問題設定になりがちですが、そこを「これにこういう要素を加えるともっと大きくできるよ」っていう形で、総合的に視座を高めることができる。そういうアドバイスの仕方、視座の高め方が僕らの役割だと思っています。
石橋
まさに今お話しいただいたような内容って、これから初めての資金調達をする起業家の方にとって、「コアラインさんから投資を受ける」ことのメリット・デメリットみたいなものだと思うんですよね。改めて、起業家目線で「コアラインさんの強み」ってどこにあるとお考えですか?
原
強みはやっぱり、そのビジネスに対して「視座を上げることができる」っていうところだと思っています。それはアメリカの事例からの学びもありますし、実際に過去の投資先(CADDi、フリー)でも、最初はそこまで大きくなかったけど、「こういうエッセンスを足すことで大きくなった」みたいな、「視座の高め方」の経験があります。そういった視座の上げ方が、起業家の方と話していてもよくフィードバックされるんです。
よく言われるのが、「話す前と話した後で、自分のビジネスがもっと大きくなるかもって思えるようになった」っていうこと。そういったところが僕らの強みなんだろうなと思います。僕らと話す前と話した後で話した後の方が、自分のビジネスってもしかしたらめちゃめちゃポテンシャルあるんじゃないかと思うようになったみたいな。よく言われるので。
そう言うところに強みがあるかなと思います。
石橋
逆に、何か「プロコン(prosandcons、強み弱み)」の“コン”の部分(弱み)ってありますか?
原
これは多分、実際に投資を受けた起業家に聞いてもらったほうがいいと思いますが…たまに「うるさい」と思われてるかもしれません(笑)。僕らにとって「ファウンダーフレンドリー」って、決して「何でもイイね!」って意味ではないんです。
たとえば、何かのコーチもそうだと思うんですけど、「うまいね、いいね、最高!」って言ってばかりの人が本当にいいコーチかっていうと、そうじゃないと思うんです。たまには「今日は会いたくないな」「ちょっと緊張するな」って思わせるぐらいの適切な距離感が必要かなと。
僕らはチアリーダータイプではないし、「ワーワー応援してるだけ」でもない。でも、その分「自分を成長させてくれる厳しいコーチ」みたいな存在だと思ってくれたら嬉しいです。
「ファウンダーフレンドリー」と言うのは、僕らにとっては「愛情の深さ」だと思います。
僕はめちゃくちゃ愛情深いので、1社1社に対してすごく強く愛情を持って接しています。でも「愛情が深い=何でもOK」ではない。どんな時でも「すごいね、最高だね」と言い続けるわけではないと思っています。
石橋
了解です。ありがとうございます。ちなみに、今おっしゃったことも含めると、「どういう起業家に投資すべき」じゃないですけど、相性もあると思いつつ、
原さん個人でもいいですし、Corelineさんとしてでも、「こういう起業家には投資したい、逆に難しいかも」みたいなイメージってありますか?
原
そうですね。僕らがよく投資する起業家の方に向けて、タイプとは違うかもしれないですけど以前「起業家に重要な要素」についてnoteに書いたことがあるんですけど、その中でも一番重要だと思っているのは「学習能力」ですね。ラーニングの速さが一番重要だと考えています。
というのも、起業家って、常に毎年毎年「今までやったことないこと」をやっていくじゃないですか。毎年どころか、毎月新しいことに直面する。そのときに必要なのが、複雑な事業をシンプルに整理して、頭の中で高い解像度で理解し、イシューを明確に特定できる力だと思っています。
たとえば今の時点(2025年)で言えば、3年前には想像していなかった「AIで何ができるか」みたいな新しい技術についても当然キャッチアップしなきゃいけない。
もっと重要なのは、組織の成長です。誰も経営したことない人たちが、いきなり経営者にならないといけない。
最初は20人の組織で「大変だな」と思ってたら、すぐに100人、さらに500人という規模に広がっていく。そうなったときに、どうやって全社集会で社員を鼓舞するか?といったように、毎度まったく違う組織を経営しないといけない。それって毎回「学び直し」なんですよ。
僕らはシードファンドですし、事業仮説も変わる、状況も変わる、ピボットすることも多い。でも唯一変わらないのは「起業家本人」なので、その人のラーニング能力が何よりも大事だと思っています。
石橋
ありがとうございます。その流れで、「どのぐらい投資検討に期間がかかるのか?」って気になります。学習能力を見極めるためには、ある程度のコミュニケーション期間が必要なのでは?それとも、割と短期間でも判断できるんでしょうか?
DDが重たいとおっしゃっていたのもあり。どのくらいで初回面談から投資までいくのかお伺いしたいです。
原
そうですね。まず、初回面談で「投資します」ということは、まずありません。
一度もないです。今までも一度もないですし、これからもないと思います。
というのも、学習能力って「点」で判断できないんですよ。「この人よく知ってるなあ」とか「ちゃんと調べてるなあ」というのは、点としての知識量にすぎない。
でも、ラーニング能力っていうのは「角度」なんです。つまり、時間をかけて会うことで、「この人、毎回会うたびに深くなってるな」「理解が進んでるな」と感じられる。
なので、時間をかけて何度も会います。実際に投資した起業家の方々について、「どれぐらい会ってから投資してるんだろう?」と調べたことがあるんですが、大体半年ぐらいはかかっています。
石橋
初回面談から実際に投資に至るまでに半年はかかると。ミニマムで、という感じですか?
原
平均が取りにくいんですけど、たとえばCADDiの加藤さんなんかは、1年半ぐらい前から会ってましたね。
石橋
創業するよりも前から、ですね?
原
そうです。事業の立ち上げ前から、「この業界ってこうなってるよね」とか「こういう視点面白そうですね」みたいな話を一緒にしていた。問題解決を一緒にやってたような感じですね。僕自身もそういうスタイルが好きなんです。自分も学習しながら投資判断をしていく。
投資するかどうかを判断する上で、僕にとってすごくシンプルなリトマス紙、メンタルモデルがあるんです。それは、「この会社に自分が入りたいかどうか」です。
マジで入りたいかどうか。それを自分に問いかけるんです。というのも、僕は何度も転職したからだと思うんですが(笑)。最近はしてないですけど。
たとえば、「起業家が魅力的」「市場が面白い」「プロダクトが良い」…そういう条件が揃ったときに初めて本気で「ここに入りたい」と思えるわけで。普通は一発で決められないですよね。いろんな人に会って、チームを知って、オフィスに行って、競合も調べて、全部確認した上で「この人と一緒に働けるか」を見る。
だから僕も、それくらいのレベルで会っていく。そうすると、やっぱり半年ぐらいはかかるんです。
石橋
なるほどです。
ちなみに今って、コアラインベンチャーズさんが「Atlasプログラム」っていうプログラムもやってらっしゃると思うんですけど、あれは投資前提のプログラムなんでしたっけ?
原
そうですね。アクセラレータでは、厳密にはないです。なぜかというと、全社に投資をするからです。
むしろ、投資してからスタートするプログラムだからです。
石橋
必ず投資する?
原
必ず投資します。投資してからスタートする、という設計です。じゃあ、普通の投資と何が違うのかというと…実はそんなに大きく違わないんですよ。今までも僕らは、たとえばCADDiには1年半かけて投資して、最初は4,000万円を出したとか、フリー株式会社も結構な時間をかけて、最初3,000万円を投資したりしてきました。
で、それなら、「もうちょっと早めに投資して、その1年とか1年半をAtlasという期間で一緒にやる」っていうのでもいいんじゃないかと。だから、方針自体は変わらず、多少前倒しするという感じです。
「バリュープロポジション」を一緒に考えるっていうこと。これは僕らのもう一つの強みでもあると思いますね。
それを企業家と一緒に取り組むのがAtlasプログラムの特徴です。
あとアクセラレータと違うのは、採択企業を絞っているってところもありますね。
Atlasではすごく絞ります。3〜4社くらいですね。今のところは、年に2回開催しようとしていて、それぞれの回で3社ぐらいですね。
石橋
投資前提ということは、「採択0件」っていう可能性もある?
原
はい、全然あります。
石橋
そうですよね。でも、ATLASの場合は、さっきおっしゃってたように、「半年を一緒に過ごす」っていう感じなんですね?
原
そうですね。その半年を一緒にやるイメージです。ただ、それでもですね、これまでAtlasに入ってくれた会社も、その場で「やりましょう!」ってことにはなってないです。チームのメンバー全員に会わせてもらうし、僕らも全員会います。リファレンスコールも取ります。PLも全部見せてもらって、お客様のところにも行きますし、全てしっかり見せてもらう。まさに普通の投資と同じです。「それって割に合うの?」って話もありますが、それくらいのことはやります。僕らにとっては、どの投資先も大事な大事な会社ですから。
石橋
理解です。すいません、僕の事前リサーチの限りでは、Corelineさんって「シード投資だけではない」印象を受けたんですが、一応メインはシードですよね?ただ、これを見てる方の中には、シリーズAやPreAなんかの方もいらっしゃると思うので、改めて投資対象のステージについて教えてもらえますか?
原
だいたいそうですね。件数ベースで見ると、シードからの投資が半分以上だと思います。でも、シリーズAから入ることもありますし、PreシリーズAもあります。シリーズB以降は、正直あまり多くはないですね。
ただ、いきなりドカンと2〜30億を投資することもあります。そういう場合は、いきなりレイターステージでも投資します。でも、件数は少なくなります。
石橋
じゃあ、改めて整理すると、シード、Preシードの人がメインでCorelineさんに話を持っていくべきだとは思うけど、シリーズAやPreAの人でも、「大きい絵」を描いている人ならば、話を聞いてもらえるかもしれないってことですね?
原
はい。僕らにとって一番大事なのは、「何十倍」「何百倍」といったリターンの可能性です。アメリカのVCファームとして、そういうスケールを想定しているんです。
だから、たとえば「バリュエーションが20億で、30億になりそう」みたいな投資は、あまりやらないです。むしろ、「1,000億の会社が10兆になるかもしれない」といった可能性がある会社にこそ、興味があります。
石橋
なるほどですね。「めちゃめちゃ視座が高い」っていうのは、改めて理解できたような気がします。
では、最後にぜひ、Coreline Venturesとして、まだ収録時点では設立から2ヶ月ということだと思いますが、今後目指していきたいこと、そして「こういう起業家の方はぜひご連絡ください」といったメッセージがあれば、お願いします。
原
やっぱり僕らとしては、Coreline VenturesはアメリカのVCファームなので、すごく有名なアメリカのスタートアップ、成功してる企業っていっぱいあるじゃないですか。GoogleとかApple、Facebook、Stripeとか。そういうところに、日本のスタートアップが名前を並べるようになってほしいという想いがあります。
あとは、これは僕個人の想いでもあるんですが、「その会社がカテゴリを作る」っていうことを、投資先で実現したいと考えています。
たとえば、SaaSはSalesforceがカテゴリを作ったし、ソーシャルネットワークはFacebook、検索エンジンはGoogleといったように。
石橋
確かにそうですね。
原
日本のスタートアップって、やっぱり「○○の日本版」という形が多いんですよね。もちろん、そういうのも投資対象にはなりますけど、でも僕らは「この会社がこのカテゴリそのものを世界で作る」というチャレンジを応援したいんです。
そして、おそらくそういう投資を日本でできるVCファームの中で、僕らが一番その知見や経験、強みを持っていると思っています。そこは絶対に他には負けないと思っていますし、負けちゃいけないと思っています。
だからこそ、そういう「時代を変える」「新しいカテゴリを作る」「今までのIPOの常識を無視して超えていくようなとんでもない起業家」に、ぜひ出会いたいと思っています。お待ちしています。
石橋
ありがとうございます!
ぜひ第2弾、後半の動画では、もう一歩踏み込んだ具体的なお話も伺っていきたいと思っております。
【なんで投資したの?】シリコンバレー系VCが投資した3社のスタートアップとそのすごすぎる理由
石橋
はい。皆さんこんにちは。スタートアップ投資TVGazelle Capitalの石橋です。今回もですね、前回に引き続きまして、Coreline Ventures共同創業者ジェネラルパートナーでいらっしゃる原さんにご出演いただいております。
原
よろしくお願いします。
石橋
今回の動画ではですね、Coreline Venturesさんの具体な過去の投資先をお伺いしてまいりまして、それらのお話を伺いながら、どういう思想で投資してるのかとか、どういうスタンスなのかってことをちょっとぜひニュアンスとしても、伝わっていければいいなと思っておりますので、シリーズとしては「何で投資したんですかシリーズ」ってのはこれでお伺いしていければと思うんですけれども、早速まずは1社どういったところに過去投資されているかをお伺いしたいんですけれども、どういう社名でとか、こういう創業者の人っていつぐらい投資してるとか、お伺いしてもよろしいでしょうか。
原
ちょっとさっきの動画でも触れたんですけど、まずCADDiっていうのは僕らの投資スタイルをよく表してるかなと思いますね。CADDiに投資をしたのは2018年1月。
2018年の本当に最初に投資をしたんですけど、会社ができたのが実は2017年11月。
石橋
2.3ヶ月後ってことですね。
原
実質投資するから会社を登記してもらったに近いです。なので投資する前には投資委員会とかやっているので、それでいうと「投資委員会しよう。でも会社ないとできないから」というので11月に作って加藤勇志郎さんっていうのがCEOの加藤さんと話をし始めたのはそれの1年半ぐらい前かな。彼がまだ新卒2年目の時。
石橋
そんな頃からコミュニケーションされてたんですね。
原
そうですね。その時に始めて、当時は彼の前職のマッキンゼーにいて。で、ちょっと起業に興味ある。って言ったんでそれで少しディスカッションを続けるようになって、いよいよじゃあ始めようってことで投資をしてます。
石橋
ちなみにCADDiさんって2018年の1月に投資されてから今お話しいただけるのは、事業規模を表すような数字とかってどのぐらいの規模のところまで、今、結果、6年、7年ぐらいですかね。成長されているんでしょうか。
原
7年経ちましたね。彼らですね。これもオープンになってますけど、事業・戦略の転換をしていて、この事業に投資しようといった事業ではない。今はAIのデータプラットフォームのソフトウェアにより寄っている事業に転換して、それのAIのデータプラットホームの事業自体は実質本当に去年の終わりぐらいで、2025年なので、2024年の今日ぐらい前ですね。
まだ去年の今頃はそっちに転換をしなくて、本当に完全にそっちに移ってきてるのが最近なんですけど。プロダクトのローンチは2年ぐらい前ですね。それから、よくSaaSでT2D3って言うと思うんですけど、もう本当に比較にならないぐらいのスピードで成長していて。
原
僕らもアメリカの投資先投資家として、アメリカ、中国、日本で見る中で、アメリカでもあのSaaSの領域であのスピード感で成長してる会社はないと思います。今も本当に相当なARRの規模になってるので。
その規模で何倍、何倍ちょっと多分想像にお任せしますけれども、T2D3をはるかに超える何倍のペースで成長してる会社ってのはCADDiぐらいじゃないかな。
石橋
ぜひ今のそれであれば事業ベースでお伺いしていければと思うんですけれども、改めてCADDiさんの相対しているようなお客様の課題ですとか、市場の課題っていうのはどういうふうな痛みになってるんですか。
原
まさにその痛みっておっしゃったように、ピンポイントの深さっていうのがこの業界におけるCADDiに投資している。他の会社もそうなんですけども、バリュープロポジションの強さっていうのが僕らのシードにおいては見れる唯一のことなんですね。プロダクトもなかったので。
これがバリュープロポジションなんだろうっていうのが、ある段階で対応してますから。今のプロダクトはもちろん当時はなかったんですけど、今のプロダクトのペインポイントって、例えば彼らが対面しているお客様って、製造業なんですね。で日本って製造業の国なので、もう名だたる自動車メーカーとか半導体メーカーとか、半導体装置メーカーですね。すごく有名な会社が並んでいて、実は結構似たペインポイントを抱えていて。何かっていうと、製造業って図面を描いてそれで部品を発注しますと。それが本当に紙で書いて、ここにこうこうこういうふうなメモを書いたりとか、ここはこういう仕上げでっていうのを入れたりして、FAXでやりとりすることもあるし、それを例えばPDFでやりとりすることもあるし、CADが増えてきたのでCADもあるが、いろんなところで紙がすごくまだ残っていて、で、どれぐらい残ってるかっていうと、そういうお客様、お客様って倉庫借りるぐらいの残ってるんですよ。
石橋
紙を管理するためにですか!?
原
そうですそうです。キャビネットにとかいうレベルではなくて。なぜならば、日本の製造業の方って規模も大きくて歴史も長いので、ずっとその紙が当然溜まり続けて、紙に載っている情報ってのは貴重な資産で、今後同じようなものを作る時に、じゃあ過去いくらでどう作ったんだっけ、過去何したんだっけ?
全ての情報がその図面というものに載ってるんですよ。僕らは例えばソフトウェアの世界だと、CRMのとか財務のこのソフトウェアに載っているとか思いますけど、図面に載っている情報って本当に価値がある、それが例えば全部デジタルになって検索できるようになったらどうなるか。
結構似たようなものを作りますから、製造業の場面においては、じゃ、周りに作ったこういうものがどこで作ってて、いくらで、その時のボトルネックが何だったかとか、それがわかるだけで、会社の経営ってすごく変わる。が、それがないと毎回毎回作らなきゃいけない。
っていうのがあるので、それをデータプラットフォームとして今提供してるのがCADDi Drawerというプロダクトです。これがまた今のタイミングとやっぱり相性良くて。
本当にAIってデータが全てなんで、CADDiのデータに乗っけることで、これからいろんなことができるようになって、CADDiしかないデータが持ててるような状態になってるからこそとてつもないARRですし。もう一つの特徴として、1社当たりの契約金額が僕は聞いたことがないですね。それぐらい大きい。
石橋
つまり、ちゃんとスーパーエンタープライズ向けなのか分かんないですけども、要はそれだけお金を払ってまでもの大きい痛みが存在するっていうことですね。
原
そういうことですね。効率化では取れないレベルの金額。効率化だと、だいたい何人使って、それが大体どれぐらい時間が減るからってことはみたいな計算になるんですけど。
石橋
よくありますね。
原
それじゃ取れない金額ですね。
それぐらいの価値がある。それぐらいの価値がある情報だってことだと思う。
石橋
理解です。ちなみにこれか使うかどうか分かんないけど、元々CADDiさんに投資した金額から累計すると何倍ぐらい。結局、要は最初の入り口はさっき4,000万とおっしゃってましたよね。
原
はい、4,000万です。
石橋
累計するともうどのぐらいの金額を追加投資で入れてらっしゃるんですね。
原
僕らの特徴の一つでもあるんですが、4,000万のところはとんでもない倍率なんですけど、一番大きく金額というのは直近なんで。
CADDiーは最初4,000万で、累計で35億ぐらいかな投資してます。
原
直近が一番大きいので、僕らはやっぱりてもまだまだ大きくなると思ってますので。
石橋
そうですよね。すげえな。
原
というのが僕らのスタイルなので、その時その時ってなんか倍率を見ると一番直近が大きい投資金額が大きいですね。
石橋
面白いですね。今まさにお話しいただいたのは直近のプロダクトベースの話だと思うんですけど、改めて投資をした時点の投資仮説である、ないしはその人物評価みたいなところで、当初決められた決め手というのは、改めて振り返ると何だったんですか?
原
やはりシードっていうのは、先ほど申し上げたようにプロダクトもないフェーズで、ファウンダーとアイデアでアイデアがちょっと進んでバリュープロポジションになってる。そういうフェーズの中で、CADDiの加藤さんはそのラーニングのスピードがとにかく速いんですよ。
で、もうその時その時で何が一番大事な経営の課題なのかっていうのを本当にシンプルに、これとこれとこれとのフォーカスして、そこをどんどん深掘りしていくっていう、やはりそれは当時からですね、際立ってたなと思いますし、逆に言うと、当時の加藤さんって新卒2年目から4年目にかけてのフェーズだったんです。僕がずっとディスカッションしてたのは。若いじゃないですか。関係ないんだと思うんですよ。そのラーニングのスピードって。
むしろ、若い人の方がラーニングが早いから、経験がないかもしれないけど、もちろん製造業みたいなとこで経験なくて大丈夫っていうのはあるかもしれないですけど、そのラーニングさえあれば、いつかその傾きが急にこう成長していくんで、経験者をいつか超えることになるんだろうなっていうのが当時の加藤さんに対する、僕らの考えで、それは多分本当に合ってたなと思います。
事業に関してはですね、同じように製造業なんですけれども、調達分野において。toBの調達、toBの調達なんで、僕らが例えばコンピューターとか携帯とかではなく、もうちょっと多品種、多品種少量生産って言われる、そんなにたくさん生産しないけど、たくさん部品が付いているようなやつ。
で、もう部品が多いんで、とにかくなのでいっぱい発注をしなきゃいけない中で、ちゃんと見積もりを取るのが難しいっていうのが一つの事業としてのスタートだったんです。実はそれを社内で発注をまとめたり、そういうのを管理するために作ってたのが今のCADDi Drawerで。
石橋
元々やっていたプロダクトを強化していくとか、その延長線上に今のそのCADDi Drawerっていうのがあったんですね。
原
そうなんですよ。
それがメインに今はなってるって理解です。
石橋
理解です。ぜひCADDiさんのお話を、色々なところにももちろんお話いただいているところかなと思うので、ぜひ2社目もお伺いしていければと思うんですが、次はどういう会社なんでしょうか。
原
2社目は確かにそんなに知る人ぞ知るという感じで、スタートアップ業界で知られていないのかもしれないですけれど。enecahinという会社です。
石橋
どういう事業をやられているんですか。
原
enecahinはですね、これもtoBの電力の卸取引なんですよ。ちょっとマニアックなんですけど、僕らって電力を契約する時は、今だったら東京TEPCOだけじゃなくて、自由化されていろんな会社があると思うんですよね。でも基本的にそういう僕らが契約できる、例えば携帯会社もそうだし、コンビニもそうだし、インターネットの会社もそうだし、ガス会社もそうですけど、大体みんな発電所持ってないんですよね。
彼らは、僕ら一般消費者に売る時だとかっていうのは、電力を発電してる人たちから買ってるんですよ。
石橋
仕入れてるってことですかね。
原
そう、仕入れてるんです。仕入れているっていうか契約を買ってる。なので、ここって自由化って最近できたことなんですよ。ここ10年ぐらいで。この発電はずっとあって、かつて日本は発電する人と売る人がセットだったんですよね。旧一電という、もう全国になんちゃら電力会社っていうみんなが知ってるやつです。
で、それが切り離されて、どことでも契約できるようになったけど、発電は引き続きここでみんな買ってるんですよ。電力を。ここの卸のマーケットがポカって出てきたんですよね。
石橋
取引をするマーケットってことですかね。
原
そうです。なぜかというと、電力の価格って僕らが契約している電力価格って値上げしましたってあると思うんですよ。でもこれ毎月大体そんなに変わらない。当たり前なんですけど。でもこっちの彼らが電力会社から買ってる電力って年に100倍ぐらいのボラティリティーがあるんですよ。
石橋
そんなにあるんだ。
原
例えば極端な話、冬じゃない季節で雪が降ったりすると、みんな暖房つける。需給が合わなくなる。ダイナミックプライシングなんです。じゃないともう潰れちゃいますから。そういう時に小売価格が固定されてると、小売業者の粗利がものすごくマイナスになったりする。
なのでこれをリスクヘッジしなきゃいけないんですよ。それで、このマーケットが必要なんですけれども、日本ってまだ整備されてない。取引市場を作ってるのがenecahinです。
石橋
めちゃめちゃわかりやすかつめちゃめちゃ大きそうというか。
原
なぜ大きいかというと、ここのボラティリティーによって、電力小売りの自由化によって始めた事業者ってかなり潰れてるんですよ。売れば売るほど逆ざやになった時にリスクが増えちゃうということ。
石橋
どういう方がそういうマーケットで起業してるんですか?
原
これがですね、もう電力畑で15年やってる人。
石橋
ごりごりに詳しいプロ中のプロですね。
原
ゴリゴリに詳しいです。でもこれ実は僕の留学時代のすごい仲良い同級生で。
石橋
そうなんですね。
原
そうなんです。本当に親友なんですけど、彼も同じように「ちょっと起業興味あるんだよね。」って言う時から話していて、だからどれぐらいだろうな。1年ぐらいは壁打ちして、電力の中でいろんな事業アイデアあって、でもスタートアップっていうのをやるのが初めてだし、テックというのも初めてなんで、色々そういう意味で相談に乗ってました。
石橋
電力業界の方ですもんね。
原
そうですね。完全に電力会社の人です。それをやる中でこのアイデアに行き着いたんですよ。でも実はこのぽっかり空いた電力小売りの業者と、発電をしている発電事業者の間の取引マーケットって日本以外にあるんですよ。
石橋
海外のものがってことですね。
原
そうです。それは海外の方が自由化が進んでたのが早かった。アメリカも一部の州でそれが進んでいて、ヨーロッパでもあって、アメリカでそれを作った。電力小売り電力を卸取引マーケットを作った会社があるんですけど、それって今ニューヨークストックエクスチェンジあるじゃないですか。
あれを買収しているんですよ。ICEと言う会社が。ます大きいのは、海外の人はみんな知ってるんですよ。確実にこのマーケットが出てくるってのはみんな知ってるんです。みんなというか、知ってる人は知っている。でも僕らももしかしたら日本で必要になるだろうし、大きくなるだろうってことで。
投資をしまして。ただ、初期は本当にCEOの野沢亮さんが同僚と一緒に電話で取引をつなぐという。
石橋
昔の株の取引みたい。
原
本当にそういうことをやってました。
石橋
本当にMVPのMVPは。
原
本当に電話とエクセル。
石橋
でめっちゃ属人的にやってるっていう。
原
それでテック化していこうってことで、僕らのお金を受けてテック化し始めたんですけど、それまでは完全に電話とエクセル。いまだに彼のMVPは何度も見たことがありますけど、本当のエクセルファイルですからね。
石橋
今となってはポテンシャルのお話はすごく理解できたんですけど、規模で言うと、投資をされてからどのぐらいの期間に、今どういう事業規模になってらっしゃるんです?
原
えーっとですね。なので、我々が投資して5年ぐらいですかね、2度にわたって投資をしていて、どちらもリード投資してますんで、今、累計で30億ぐらいかな。過去の投資先とはなりますが、投資をして2023年の電力の卸取引市場なので、そこでのトランザクションっていうのがあって、それぞれの年間の取扱高が1兆円。もう大きいので電力って。
石橋
大きいのレベルが違うんですね。
原
そうなんですよね。やっぱり電力市場って小売で25兆円ありますから。
これから25兆円が全部この取引のプラットフォームに乗ってくるんですよね。
石橋
確かに。すげえ。そんな規模になるんですね。
原
正直僕も知らなくて、そんなのあるんだみたいな。それを彼と話をする中で、やっぱり業界の人にとってのは当たり前と。僕らスタートアップ界隈にとっての当たり前のズレがあるなと。「今君とてつもないことを言っているよ。」みたいな、彼にとって当たり前だけどこれすごく大きいよとか、あとは野澤さんが業界に本当に詳しいんですよ。
だから、誰をどの順番で話していけばいいのか、どういう風にやれば、どのタイミングで、どの時点で2020何年にどうなるかっていうのは、すごく解像度がすごい。で、あとは彼、アメリカで電力取引をするディーラーでもあったんで、そのディーラー時代の経験から、こういう機能がないとダメだみたいな。
彼がアメリカで使ったものを日本で再現しようとしているって感じです。
石橋
なるほどね。何かめちゃめちゃ第1弾ではこう、Coreline Venturesさんと実際入るとお伺いしました。だからこういう風な感じでとか、何かすごく整合性が取れたお話だなと思うんですけど、1本目でAtlasプログラムについても触れていただいたと思うんですけど、ぜひ3社目はAtlas出身の採択されている起業家さんの例とかお話しいただいけるとと思うんですが、いらっしゃいますでしょうか。
原
あります。で、Atlas。もう一回プログラムの説明をさせていただくと、例えばCADDiで僕らが投資したやり方、1年半話しながら、最初4,000万投資して。enechainも、もうこういう電力業界で起業しようと思うんだよねと言う所から一緒にバリュープロポジション1年間やってて、それで投資をしてみたいなフェーズをちょっと前倒しして、もうそのバリュープロポジションを一緒に考える期間の前に投資してしまおうというのは、Atlasプログラムです。
大体本当に1桁億円の半ばぐらいのバリエーションで投資をして、そこからどんどんまたうちの本当に何十億と投資をしていくような投資先に育ってほしいと言うプラットフォームなんですけど、今ちょうど2バッチやったところで、これから年に2回やる予定なんですけど、いると1開催あたり3社ずつぐらいなんですね。
なのでかなり少ないというか、かなり絞ってやるんですけど、そのうちの1社も1期目の会社なんですけど、M2Xと言う会社で、設備保全のSaaSの会社を、これもマニアックなんですけど。
別にマニアックなこと以外もやるんですが、僕ら基本としてBtoCずっとやり続けてるんですけど、一旦ちょっと会社の説明をすると、、
ちょっとYoutubeで話が面白いのかいう話がさっきから続いている。
石橋
全然大丈夫ですから。ニッチな番組なんでね。
原
工場の設備とかの、例えばペットボトル工場、飲料工場とかですよね。で、想像するに、よくテレビとかでもあって、こう流れるのを見るじゃないですか。あれ、どこかにちょっと故障じゃなくても、怪しいところがあったら止まるわけですよね。止めてチェックすると、その工場が止まってしまうと工場の売上もその期間は落ちますから、結局稼働率っていうすごく大事で、その中で設備をいかにうまく修繕して、ずっとそれをメンテナンス、みんなで共有し合うかって大事なんですけど、やはりその、そこがうまく共有されづらい。
なぜなら、紙だったりとかしますし、紙が1日分まとまって工場長に翌日来て「止まってたのかい」みたいなのがリアルタイムで分からないとかあるので、それをデジタルツールとしてやる。これも今のAIとも相性が良くて、工場の方で例えば手袋とかつけてたので携帯とか触りづらいから、音声入力にしよう。異音っていう、例えば工場の設備から音がする時とかって、ベテランの方は音で判断したりするわけですね。
「この音おかしいな。」みたいな。でもそれって若い方はできない。それはそうじゃないかな。でも今音声ってAIと相性いいですから、そこで音声を解析して、これ異音だというのが判断できるようになるのか。やっぱりベテランの方が今まで暗黙知としてやっていたことをツールに落とすというのが今やってることですね。
石橋
それをAtlas採択では、どの粒度の段階で採択を投資してるんですか。
原
最初はですね、もちろんファウンダーの方はそういうアイデアがあって、ただ、じゃあ入り口としてどういう機能がいいんだろうかとか、あとはどういうターゲットにするべきなのかとか、例えば設備保全って今言ってもいろんなセグメントがあるわけですよね。もう製造業って、それこそもう化学品から車からIT、
石橋
あらゆるもの作ってますもんね。
原
まさに。なのでそこでどの順番でやるかとかすごく重要で、その、それがまだない段階で、バリュープロポジションと言ってもこういうことやりたいんだよねっていう粗いペインポイントの理解と、製造業っていうターゲットしかない。でも僕らが一緒にその半年ぐらいかけて製造業っていうセグメントをより細かく分けていって、ここにしようとか、この順番にしようとか。
それはそのペインポイントを深く理解しなきゃいけないし、あと売り方こうしていきましょうみたいなのを一緒に作り上げる。ただ、プロダクトはない。プロダクトはAtlasが終わったタイミングでもなかった気がしますね。
石橋
なるほど。でも、だからその粒度感のタイミングぐらいでエントリーをして、場合によっては2.3社採択がされて、投資もして、ってことなんですね。
原
でM2Xに関しては、2回目の出資もシリーズAで、リード投資もしまして。
僕らのスタイルはそういう感じで、最初にバリュープロポジションが粗めであって、でもプロダクトなくてこういう感じでやろうと思ってるファウンダー。でラーニング速くて解像度が高いような、ファウンダーと一緒に事業の壁打ちさせてもらって、で、出来たらシリーズAもリードすると。
石橋
1点、何かすごく気になってしまったので、場合によっては起業家の方からも、僕らなら既存産業だでシードだっていう。ファンドがGazelleCapitalなので、よく聞かれる内容でもあるんですけど、今の原さんのお話だと、結構業界経験者とか詳しい方が投資先に多いのかなっていう印象を持ってしまってるんですけど、実際どうなんですかね。
原
そうとも限らなくて、さっきのCADDiもそうですし、元社会人経験が2年〜4年目ですし。
あと、例えばアトラスで他に運送業とかでチャレンジしてる起業家もいて、彼も全然業界知見はなくて。重要なのって、その時知ってるかじゃなくて、5年後に誰よりもその業界をデジタルソフトウェアの観点から見て詳しいかなんですよ。その業界にいればいいというわけでもない。
石橋
問題感だからこそ、どうってのがあるわけですね。
原
CADDiのさっきのdrawerとかも、データってこういう風に管理しないといけないし、こういう粒度でデータを取ればこういうことができるっていうデータベースのソフトウェアの知見があるからこそ、製造業をこういうアングルで見られるけど、多分それで中の人は気付かないかもしれない。
そういう意味で業界経験はあればいいけど、あればいいってものではないなって気はしなるほど。
石橋
難しいバランスだな。
原
成長のスピードだと思いますね。学習能力と言いますか。
石橋
なるほど。ちなみにtoCも?
原
やってます。それは多分、ファンドのポリシーとして、僕らのポリシーとしてやり続けます。
石橋
ああ、そうなんだ。
原
やり続ける。それは例えば僕が一緒にやっている本多央輔って、それこそ韓国のKakaoに投資していた人だし、前職ではグリーに投資をしていましたし。で、DCM時代もゲーム会社とかかなり大きいゲーム会社に投資をしていたので、僕らはコンシューマーのDNAがあるんですよね。
やっぱりコンシューマーに投資をし続けないといけないと思っていて。なので、今後も続けます。
石橋
面白い。これを見ていただける、これから起業しようという方は、toB向けであれ、toC向けであれ、業界経験があろうがなかろうが、Atlas又は普通にお問い合わせをして。了解しました。
改めて今回3社のお話を伺いましたが、本当に一貫性があるなというか、前半のお話をいただいた所との整合性もすごくとれてる気もしましたし、ぜひ起業家の方もコンタクトを取ってみていただくのがいいのかなとは思っております。それでは2回に渡りまして、原さん、ありがとうございました。