【朝日新聞社】デジタル人材として走り続けた先のVC事業とは|スタートアップ投資TV
◯野澤 博 朝日メディアラボベンチャーズ パートナー
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企業HP▶︎ https://asahimedialab.vc/
NTTの研究所を経て朝日新聞社に入社。
モバイル向けサービスの企画・開発・運営を担当。
02年スタンフォード大学に留学。帰国後、編集局にて紙面編集業務に携わる。
テレビ朝日、KDDIとの3社共同事業の立ち上げ、 経営企画室にてハフィントンポストジャパンの立ち上げに関わった後、12年にデジタル編集長に就任。
13年に朝日新聞社メディアラボ設立メンバーとして、ベンチャー投資を担当。
NTT研究所からインターネットの可能性に魅了された20代
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。
今回からは、朝日メディアラボベンチャーズ株式会社のパートナーでいらっしゃる野澤さんにご出演をいただいておりますので、改めて野澤さん、今回からよろしくお願いします。
野澤:
よろしくお願いします。
石橋:
僕自身、元々ベンチャーキャピタル(VC)業界に来たのは2016年頃でして、当時から朝日さんのお名前というか、それこそ前身といいますか、アクセラレータープログラム等拝見させていただいていました。ただ多分当時からもう日本にはいらっしゃらなかったですよね?
野澤:
そうですね。私自身は2015年の春頃からアメリカの方にいたので、もうその頃はいなかったですね。
石橋:
対面でお会いさせていただくのは今回初めてなんですけれども、改めてどういうご経歴でいらっしゃるのかというところをお伺いしていければと思います。
今、朝日さんのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の代表をやられているということは、新卒から朝日グループに就職されていらっしゃるんですか。
野澤:
新卒で入ったのは日本電信電話株式会社(NTT)になります。まだ分割する前のNTTで、そこの研究所に配属になって5年くらい山の中の研究所で研究していました。
石橋:
研究ということは理系だったんですか?
野澤:
そうですね。理系の大学院を出た後に研究所に入ってひたすら研究をするという、わりとストイックな仕事をしていました。
石橋:
そこから朝日さんに全然繋がりがないように思えるのですが?
野澤:
私が入った大学院では、私が研究科でいうと1期生でした。
面白いことに大学というと、普通は構内に掲示物がいっぱい貼ってあるイメージがあると思いますが、1人1台ワークステーションが与えられて。
石橋:
ワークステーション?パソコンですか?
野澤:
そうですね。パソコンの少し大きなものみたいな感じで、電子メールやホームページで全て連絡が終わるというので。
僕は化学系だったので、実験をしながらそれを使っていろいろ遊ぶんですね。真面目なこともやるんですけど、当時でいうインターネットリレー(IRC)チャットで海外の人をナンパするわけですよ。
そんなことをして遊んでいるうちに、インターネットって面白いなと思ったんですよね。
今までだったら、海外の人に連絡取るときは、高い国際電話料金を払って連絡する。それが、無料でいろいろ送れてしまう。これはすごいなと思って、この領域はあるかもと思ったんですよね。
それで当時、そういったところに人を大量投入しようとしていたところがNTTで、それをやりたくてNTTに入ろうと思ったんですね。蓋を開けたら「君は研究所だからね」と言われて、全くインターネット事業には関わることはなかったんですけれども、やっぱりやりたいなというのがあって。
その頃はちょうど30歳くらいで、やるならこのタイミングしかないかもなと思ったので、なかなか当時は自分で起業をするという選択肢がなかったので、そういうことをやっている会社に転職しようというので探していたんですけど。
当時Googleもないですし、Yahoo!さんもまだディレクトリサーチの時代で、まだまだ今のYahoo!さんのイメージとは全くない時代で。
石橋:
全然検索エンジン化されていない状態なんですね。
野澤:
それでコンテンツを使っているところで、朝日新聞がわりと早めにインターネットを追ってニュース配信をやっていたので、まずはここで修行しようということで転職を考えた。
モバイルインターネット黎明期と西海岸での原体験
石橋:
そうなんですね。朝日さんに移られてからはインターネット部門というかデジタル部門で仕事されていらっしゃったんですか?
野澤:
最初の方はそうでした。ちょうどその頃にモバイルインターネットが立ち上がってきた時だったので、それをやりたいなと思って転職をして、実際にそれをやることになった。
黎明期なのでやることなすことなんでも初めてなんですよね。これが結構楽しくて性に合っていて、結構夜中遅くまで仕事をやっていたんですけど、おかげさまで事業が伸びてですね。
ご褒美的に「何か好きなことしていいよ」と言われて、「1年間海外に移住させてください」ということで1年間西海岸をプラプラしていました。
石橋:
西海岸にいらっしゃったんですね。
野澤:
そうですね。やっぱりインターネットといえば西海岸だろうという、なんとなくの思いでとりあえず行ってきました。
石橋:
その直後ぐらいに、もう移住をされたんですか?
野澤:
それが2002〜2003年くらいですね。その後1回戻ってきて、そこからもいろいろな仕事をやったんですよ。
新聞記者として6〜7年、紙とデジタルの狭間で
野澤:
インターネットは大体そのぐらいで終わっていて、その後に新聞社なので「新聞記者の仕事をしてきた方がいいよ」と言われて、6〜7年くらい新聞記者の仕事をしていました。
石橋:
そんなにやっていたんですか?
野澤:
新聞編集といって、見出しをつけたりレイアウトを組んだり、新聞記事の原稿のいらないものを削って収めるというのを6〜7年やりました。
石橋:
逆に、よく耐えられましたね。
野澤:
最初は苦痛でした。当然最初からできるものだと思っていたら、できている訳がないんですよね。
席について白紙の紙があった時に「やばい、今日新聞止まるかも」と思いました。これは僕には無理だなと思ったんですけれども、いろいろな先輩だったり同僚だったり後輩にいろいろ教わりながら、なんとか全うできたという感じです。
石橋:
記者からまたインターネット部門に戻って行かれるということですか?
野澤:
はい、戻りました。一旦戻って、またサービス開発をやっていたんですけれども、報道部門をもう少しデジタル化をしていかないといけないという波があってですね。
それをやるのに新聞の作業もデジタルのことも知っている人が良いということで、「ちょうどいる!」ということになり、戻ったと思ったら数ヶ月でまた紙の編集部門に戻って。
そこのデジタル編集をどうしていくかを、仕事をしながら考えていくという役割をまた数年やっていました。
石橋:
新聞社自体の事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化というか、デジタル化をいかにしていくのかを当時もう進めていらっしゃったということですか?
野澤:
そうですね。
石橋:
その役割を結構長くお仕事されていたんですか?
野澤:
3年ぐらいだったような気がします。
ハフポスト日本版立ち上げから新規事業開発部門へ
石橋:
そこからすぐ、海外移住されたりVCに繋がるのですか?また何か間があるのですか?
野澤:
あります。
石橋:
分厚い!
野澤:
その後にまたデジタル部門に戻って、インターネットで高校野球をどう伝えるかというのを担当する役割になります。
石橋:
急に野球の話が入ってくるんですね。
野澤:
朝日新聞にとっては1つのコンテンツなので、それを地方大会からどういうふうにデジタルを使って伝えていくかを、前の人がやっていたのを引き継ぐ形で、それをもう少しバージョンアップしようみたいなことをやっていて。
それが面白いと思っていたら、今度は「経営企画に行きなさい」ということになり、全社のデジタル戦略を考えるというのをやり始めていたんですけど、その時にハフィントンポスト。
石橋:
聞いたことがあります。
野澤:
今のハフポストを「日本でやらないか?」という話があって。
これは面白いと思ったので「ぜひやりましょう」ということでペーパーをまとめて役員に説明して、やろうとなったんですよ。
当然自分がやるものだと思っていたら、「お前はまだ仕事があるから、別のことをやるんだよ」「ただ、プロジェクトが走り出すまではしっかりやってね」「でも君はそこにはいかないから」と言われて。
その後、今度は本当に報道する部門のDXを部門長としてやるという話があって、デジタル編集部を新たに作って、そこの部長として1年ちょっとぐらいやって、ようやく新規事業開発部門にたどり着く。
石橋:
基本的にはずっと新聞社内でデジタル人材として抜擢され続けている流れですか?
野澤:
そうですね。抜擢か押し付けられているのかは分かりませんが、新聞社の中でのデジタルのところを、わりと先頭の方を走らせてもらえたというのはあるかなと思います。
スタンフォードで見たエコシステムがVC立ち上げの原点に
石橋:
その上でハフィントンポストさんも手掛けられてVCになるのですか?新規事業開発の延長線上だったのですか?
野澤:
そうですね。一番のきっかけは西海岸、スタンフォード大学に1年間行っていたんですけど。
石橋:
移住されるのはどのタイミングになるんですか?
野澤:
2015年なので、新規事業開発部門に配属されて数年経ってからです。まだ先があります。
VCというかスタートアップというのが新規事業開発と結びつきそうだと思ったのは、2002年に「1年間西海岸に行って良いよ」と言われた時にスタンフォードでいろいろな授業を聴講していたんですけど、そういう類の授業が多いんですよね。
それを聞いていると、ものすごくこの仕組みっていいなと。ある程度アイデアに賛同してくれた人がお金を出してくれて、それに向かって一生懸命やってみて、成長してくると事業会社が来て「いいね、買うよ」だったり、それが上場したり。
これは皆のやりたいというのがすごくエンパワーされて、結果皆がハッピーになっている。上手くいかなかったとしても、「あれは僕がトライしたけど上手くいかなかった」というのを称えるっていうのも、あまり日本にはないな、と。
石橋:
未だにないかもしれないですね。
野澤:
それがすごく強烈に焼き付いていて、どこかでこの仕組みを事業会社の新規事業開発だったり、会社のカルチャーを変えるといったところに、どうにか組み込みたいとずっと思っていたんですけど、なかなかそういうタイミングはなくて。
ところが新規事業開発を専属でやる部門に配属されたので、自分がやるのもだいぶ年も取ってきたし、ちょっと違うなと思っていたら、ちょうど考えてたこれがあったということで、実は新規事業開発の1つの手段としてベンチャー投資というのがあるんじゃないかというのを当時の役員に話して。
最初はバランスシート(BS)投資から始めるというところから始まったという感じです。
社内公募と巻き込みで形成されたCVCチーム
石橋:
なるほどですね。ちなみにパートナーは3人でやられていらっしゃると思うんですけど、もう2人との出会いはどのタイミングからだったんですか?
野澤:
新規事業開発部門を立ち上げるメンバーとして私が入っていて、メンバーを増やす時に、社内で公募をかけたりとか、社内の部門間の人事異動で人を集めることになった時に、手を挙げてきてくれた人だったりとか、あるいは人事異動でたまたま来た人の中で興味がありそうな人に声をかけて、巻き込んでいって。
元々は投資ということだけではなくて、もう少し広いプロジェクトがある中でいろいろやっていくうちに、興味がありそうということで、話しているうちにだんだん皆のベクトルが揃ってきて。
石橋:
なるほどですね。ちなみにそれはハフィントンポストさんの時と違って、ご提案してやれることになったのですね?
野澤:
そうです。「ベンチャー投資をやりたいです」「投資ファンドを作りたいです」とか。運良く「言ったのだからやりなさい」と。
石橋:
ありがとうございます。改めて野澤さんがどういう流れを経てCVCの立ち上げというか、朝日さんのグループの中でプロセスを見ているのか分かってきたので。
これ以上話を聞いていくと、どうしても「どんなファンドなんですか?」とお話になっていってしまうと思いますので、直近は2号ファンドを組成されていらっしゃると思いますが、1号ファンド前後からのプロセスもぜひ第2弾の配信で、お話を伺ってまいりたいと思っております。改めてよろしくお願いします。
野澤:
よろしくお願いします。
【朝日新聞グループ】ファンドを立ち上げた本当の理由|スタートアップ投資TV
BS投資からファンド組成へ──事業会社が直面した限界
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。
前回に引き続き、今回も野澤さんにご出演いただいております。改めてよろしくお願いします。
野澤:
よろしくお願いします。
前回までは、野澤さんのプロフィールや現状の2号ファンドに至るまでの経緯をお伺いしました。直近では2号ファンドの組成及び開始を発表されていましたが、そこに至るまでのプロセスを改めてお伺いできればと思います。
最初はBS投資から始まっていらっしゃるんですか?
野澤:
そうですね。新規事業開発部門に配属されて、その中でBS投資をやっていくというところが始まりですね。
石橋:
最初からファンドにせずにBS投資から始めて、どういうプロセスを経てファンドにしていくという意思決定をされたんでしょうか?
野澤:
皆さんもそうだと思うんですけど、BS投資だとどうしてもシナジーありきで、「こういうシナジーがここだと作れるね」というのがあって、そこから逆算をして投資を考えるってなるので、本当にこのベンチャーさんが成長するんだろうかというのは、意外と考えるところから欠落するというか、見ないようになっていくんですよね。
石橋:
本当にシナジーありきという感じなんですね。
野澤:
そういうのを続けていたんですけど、「なんかこれ違うな」という違和感は皆持っているというのが1つあります。
投資先が増えてくると当然それを管理している財務部門から「ここの決算、赤字だけどどうするんでしょう?」とか、事業会社だと赤字で即減損みたいな、投資した瞬間に減損という話になって、「なんでこんな赤字ばっかりになるんだ」みたいな。
「黒字のシードのベンチャーがいたらこっちが見たいですよ」という感じなんですけど、当然そんなのは会計のルール上認められないので、だんだん事業会社で管理していくことが難しくなってくるんですよね。
全部事業の進捗もモニタリングしないといけないし、必要があれば株主総会とか株主の決議が必要で、会社のBS投資をしていると社長印が必要になってきて、そのための申し立てが必要になりますとか。
石橋:
投資先が増えると社長印めっちゃ押すことになりますね。
野澤:
これは間尺に合わないということで、これは外出ししないといけないのではないかと思ってきて、ファンドを作る。
ベンチャー投資をする機能というのを戦略子会社を作ってそっちに寄せていくという、そういう流れで朝日メディアラボベンチャーズを作ったという流れです。
アクセラレータープログラムが生まれた背景
石橋:
なるほどですね。逆にメディアラボベンチャーズさんのお名前を聞くと、僕はどうしてもアクセラレーターのイメージがめちゃくちゃ強くあるんですけど、どういう時系列になっているんですか?元々BS投資から始まって、ファンドと同時ぐらいですか?
野澤:
いや、ファンドの手前ですね。
石橋:
具体的にどんなプロジェクトというか、どういうアクセラレータープログラムになっているんですか?
野澤:
基本的にその会社のBSでの投資だと戦略投資委員会という決議機関があって、どんな金額でもそこを通さないといけないんですよ。そこには社長も出てくる、常務も出てくるみたいな、すごい重たい会議で、日程調整が大変で、「すみません、クローズ何日なんですけど」というのが大変ということで。
それとは別枠でもう少し、「金額が低いから時間優先で決めたい」という1つの試みとして、ある程度バジェットを決めて、その中であればやっていいぞという仕組みを作ろうというのがそもそものきっかけで。
あともう1つは、投資する先を作るのにお手伝いできればいいなというのもあって、それで始めたのがアクセラレータープログラムです。
石橋:
今も続けていらっしゃるんですか?
野澤:
そうですね。
石橋:
アクセラレータープログラムのBS投資で予算を決めて、投資していくという延長線上で1号ファンドが始まったというイメージなんですか?
野澤:
そうですね。業界の時間軸に合わせて、あるいはビジネスマナーに合わせてできるように、ファンクションとして切り出すというところからファンドにするのが良いのではないかということで始まりました。
1号ファンド約23億円で44件の投資実績
石橋:
作られた1号ファンドのサマリーといいますか、既にもう大枠の情報をいろいろ公開されていると思うんですけれども、1号の頃はどのぐらいの規模で何社ぐらいに投資してというところでいうと、どんな感じで振り返りはあるんでしょうか?
野澤:
ファンドの総額としてはおよそ23億円ですね。ほぼほぼ組み入れ終わっているんですけれども、44件の投資実績になっています。
リミテッドパートナー(LP)は、我々はカテゴリーで言うとCVCなので、通常は2人組合となるとLPとしては朝日新聞社だけというのが普通なんですけど、弊社はグループ内外で全部で9社からお金を預かりして運用しているところが、若干「CVCなの?」というところになるかなと思っております。
石橋:
1号ファンドから、外部から預かっていたんですね。
野澤:
そうですね。ほとんどがグループ内の企業ではあるんですけれども、一部グループ外の方からもお金をお預かりしています。
2号ファンド30億円、個人GPを迎えた新体制
石橋:
改めてここからは2号ファンドについてお伺いをしていければと思うんですけれども、基本的には1号を踏襲して同じような座組でやっていらっしゃるんですか?
野澤:
そうですね。基本的にはグループ内外の方からお金をお預かりしているといったところは基本的に1号と変わらないんですけれども、大きく違うところは個人ジェネラルパートナー(GP)が入っているということで、「そもそもCVCじゃなくね?」というような領域まで来ているところは大きく違うところかと思います。
石橋:
この個人GP話は、CVCにおける個人GPというのは言葉の説明も後ほどできればと思うんですけど、基本的に第3弾の配信でテーマトークとして、そこだけ切り出してもめちゃくちゃ話せることがあるので。
今回はそういう座組の上で、2号としてはどのぐらいの規模感でどういうところに投資をしていこうみたいなフォーカスはあるんでしょうか?
野澤:
そうですね。ファンドの総額としては30億円というところを狙っています。今、絶賛LP募集中ということで営業活動もしているところです。
グループ内外からいただいているといったところも同じですし、投資の領域としてはインターネット・コンシューマー向け・toB向け。
石橋:
幅広なんですね。
野澤:
そうですね。1号もそうだったんですけれども、コンシューマー向けだとD2Cとか、サブスクとか、メディアとか、そういったところを1号でやってきたので、その知見を活かしながらといったところで、ビジネスモデルは微妙に変わってきているとは思うんですけれども、知見を活かしながらその変化に対応して投資を続けていきたいというところがあります。
それから、toB向けでいくとDXだったり、あるいは顧客体験(CX)に勝機があるんじゃないかなということで1号ではやってきたんですけれども、そこは引き続きやっていこうというところです。
国内7割・海外3割、投資額100万円〜5,000万円の幅広いレンジ
石橋:
野澤さんは海外に今も移住していらっしゃると思うんですけど、日本国内投資だけになるんですか?
野澤:
国内・国外それぞれやっています。日本の法律上、海外は50%までとなっているので、我々のところでいくと1号が大体30%ぐらいが海外で、残りの70%が国内という感じですので、2号もそのぐらいのアロケーションになるかなと考えています。
石橋:
仮に今想定していらっしゃる最大規模の30億円が集まってきた場合で言うと、大体どのぐらいのステージ、シードなのかシリーズAなのか、金額感で言うとどのぐらいのバジェット単位で投資していこうみたいなイメージでいらっしゃいますか?
野澤:
1号もシード・アーリーを中心にやってきたので、そこは続けて、大体シリーズA手前ぐらいまでを中心にやっていきたいなというふうに考えています。
チェックサイズはステージによりけりなんですけれども、少ないところで100万円ぐらい、多いところだと5,000万円ぐらいまでですかね。
石橋:
結構レンジの広い金額感で対応していらっしゃるんですね。
野澤:
そうですね。
石橋:
いわゆるリードとかフォローとか、投資家としてのスタンスで言うと、こだわりはあられるんですか?
野澤:
1号はファンドサイズの問題もあって、リードを取るということはしてこなかったんですけれども、2号ではリードも取っていきたいなというふうには考えています。
石橋:
取得比率にはレギュレーションはあるんですか?
野澤:
あまりそこは明確には決めてないです。
投資判断は最短1ヶ月、デューデリジェンスの期間次第
石橋:
それぐらいの規模の投資でいらっしゃると、検討プロセスの時間で言うと、元々で言うとBS投資では戦略投資会議に社長さんとかがいらっしゃって、恐らく時間がかかっていたんだろうなと思うんですけど。
今で言うと、一番最初にご面談してから着金ベースとかだと、どのぐらいのスケジュール感や見通しを見ておくと良さそうですか?
野澤:
デューデリジェンス(DD)にどのぐらい時間をかけるかによると思うんですけれども、1ヶ月くらいでは、早いものだとクローズできるかなとは思っています。
石橋:
平均すると1、2ヶ月くらい?
野澤:
そうですね、がんばれば1ヶ月。あまりそこは頑張りたくない。
石橋:
急ぎすぎるとバタバタしたり、時期によって全然違ったりもしますよね。
メディア企業の知見を活かしたPR・マーケティング支援
石橋:
投資後のコミュニケーションで言うと、どうしてもCVCというイメージがあります。もちろん外部のLPさんも入っていらっしゃると思うんですけど、メディアとの連携とかを期待してしまうところでもあります。
実際にどういうハンズオンの支援なのか、もしくはあまりハンズオンとして支援をしていらっしゃらないのか、投資後はどういうコミュニケーションになるんでしょうか?
野澤:
国内は基本ハンズオンでやっています。我々はこれまでメディア企業の経験があるというところで、PRやマーケティング、そういったところのお手伝いを中心にやっている。
石橋:
LPは比較的、放送系であるとかメディア系の方はわりと多いですよね?
野澤:
そうですね。放送・出版といういわゆるメディア系の企業が多いので、そういったところの知見を使いながらPRやマーケティング、そういったところをハンズオンでやっていくというのが国内のスタンスですね。
国内投資事例:IVS優勝のPETOKOTOへの密なハンズオン
石橋:
ちなみに過去の1号ファンドの投資先になってしまうと思うんですけれども、投資事例でこういうところがあるとか、こういう支援できてるよねみたいなところってあったりするんでしょうか?
野澤:
国内だと、株式会社PETOKOTOさん。
石橋:
先日のインフィニティ・ベンチャーズ・サミット(IVS)で優勝したところですね。
野澤:
そうですね。ここは弊社の投資先の1つではあるんですけれども、比較的べったりとハンズオンでやらせていただいています。
担当者ごとにそれぞれ持っている会社が違うんですけれども、担当者が密にコミュニケーションを取りながら、必要な時に必要な手を差し伸べるというか、背中を押すというようなことをやっている感じではあります。
石橋:
PETOKOTOさんは、僕の前職時代もクルーズ株式会社の元でクルーズベンチャーズ株式会社というCVCをやっていたので、EC系とかよく拝見させていただいていて、それこそシードの頃にご面談の機会をいただいていたんですが、ある意味アンチポートフォリオというか、投資はさせていただかなかった。
結果的にこの前IVSで優勝されて、プレゼンが素晴らしすぎて普通に泣くという。本当にめちゃくちゃエモいし、めちゃくちゃ伸びていらっしゃるし、本当にシンプルに素晴らしい起業家だなというか、投資先なんだなと思います。
海外投資事例:Fireworkの日本市場参入を支援
石橋:
国内はそういったPETOKOTOさんとかがいらっしゃると思うんですけど、国外でいうとどういったところがいらっしゃるんですか?
野澤:
国外はテクノロジーだったりとか、メディア企業が使うようなテクノロジー企業。僕らはメディアテックと呼んでいるんですけど、そういったところを主に見ている中でピックアップするとすれば、FireworkというサービスをやっているLoop Now Technologies, Inc.という会社があるんですけれども、最近は日本にもブランチを作って、日本での事業も力を入れている会社になります。
石橋:
なるほどですね。ちなみに興味本位になってしまうんですけど、海外の起業家の方からすると、皆さんに期待するところは、引き受け手として選んでいただくのもかなりハードルが高そうだなと思ってしまうんですけど、野澤さんは現地にいるというのが大きいんですか?
皆さんは、どういう期待値を持って、引き受け手として選ばれたりしているんですか?
野澤:
まず現地にいるというのはかなり大きいと思います。時差なくコミュニケーションが取れるところはあるかなと思います。
あとはジャパンエントリーの時の窓口というか、その時のアドバイスが欲しいとか、助けて欲しいとか、そういったところですかね。
事業は北米完結というところだと、なかなか我々がハンズオンでなにかするとかそういうことはないと思うんですけど、ジャパンエントリーをすることが将来的に戦略に乗っかっていると、我々の存在意義が出てくるといったところで、少しお声がけをいただく形です。
石橋:
ちなみに、Fireworkは最近の大きめのニュースで耳にした気もするんですけど、改めてどんなニュースだったのかシェアしていただけますか?
野澤:
ソフトバンクグループ株式会社のビジョン・ファンド。2号ファンドから、USドルで150ミリオン調達できたという、比較的大型調達が最近できているというところです。
石橋:
ほぼもうユニコーン入りしたみたいな感じですよね?
野澤:
まだまだですね。まだまだこれからです。これでしばらく資金調達ということを考えなくていいので、これを使ってどこまで伸ばせるのかといったところですかね。
石橋:
なかなか使い切る計画を作るだけでも、普通の頭で考えてしまうと大変そうですもんね。
野澤:
そうですね。その辺りは起業家の方はすごいなと思うんですけど、ちゃんと使うんですね。
2号ファンドは7月以降に投資ペース加速、アクセラレータープログラムも継続
石橋:
今、2号ファンドで既に新規投資も続々としていらっしゃるんですか?
野澤:
2号ファンドが今年の1月1日で組成ということで、しばらくLP募集活動などもしていたので、上半期はわりと数少なかったんですが、7月以降に少しペースを上げてやっているところです。
石橋:
ありがとうございます。ちなみに、アクセラレータープログラムは今も並行してやっていらっしゃるんですか?
野澤:
プログラムは年1回のペースでやっているので、今年も秋冬ぐらいにやろうかということは検討中です。
石橋:
了解です。恐らくこれを見ていただいている方は、これから起業される方とか、まだ創業して間もない方もいらっしゃると思いますので、今日のお話を聞いていただいて、ご相談乗ってもらいたいとか、アクセラレータープログラムからエントリーしてみたいなという方は、ぜひ概要欄の方にURL等は記載させていただいております。
お問い合わせの時は、会社のホームページからが多いですか?それとも普通にFacebookやTwitterからDMがくるんですか?
野澤:
FacebookやTwitterもありますし、海外だとLinkedInもありますし。
石橋:
パートナーの方がお三方いらっしゃるかと思いますので、皆さんのSNSのURL等も記載をさせていただきますので、ぜひお気軽にシード・アーリー期に投資されていらっしゃる皆さんでございますので、ご相談やご連絡していただければなと思っております。
改めて野澤さん、今回ご出演いただきありがとうございます。
野澤:
ありがとうございます。
石橋:
次回は「CVCなのになんで個人GPいるの?」というお話を掘り下げてお伺いしていきたいと思っておりますので、改めて次回も楽しみにしていただければなと思います。
【類を見ないやり方】大手企業ファンドでキャリアの未来を造った方法【朝日新聞社】|スタートアップ投資TV
CVCが抱える2つの構造的課題
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。
前回に引き続き、朝日メディアラボベンチャーズ株式会社のパートナーの野澤さんにご出演いただいていますので、今回もよろしくお願いします。
野澤:
よろしくお願いします。
石橋:
第2回の配信でも触れましたが、端的に申し上げると、CVCあるある課題といいますか、報酬体系について。
そもそもファンド業といわれるところにはジェネラルパートナー(GP)という概念が存在していて、投資先に大成功を収めていただければ、GPのポジションにいる方々にはファイナンシャルリターンが返ってくるというところで、大きいボーナスが入るような仕組みがあるんですけれども。
CVCあるあるでは、そういうのは絶対に無理だというのが通説だったような気がしますし、それができないからこそ、CVCでなかなか人が定着しないなど、いろいろな課題が起きていたと思います。
野澤さんの中で見ていたCVCあるあるの課題感、どのようにして2号ファンドで乗り越えていらっしゃるか、お伺いしたいのですが、まずあるあるの課題感の整理からお話いただいてもよろしいでしょうか?
野澤:
課題感としては2つです。
1つは、石橋さんがおっしゃったような報酬ですね。責任を負うわりには報酬がないなと。
例えば、会社によっては会社の制度の中での評価で返しているという考え方もあるかと思うんですけれども、なかなかバランスが取れていないんじゃないかなというのは1つ課題としてありました。
40億円の利益でも「お疲れ様」程度の報酬
石橋:
恐らく他のCVCの方々の報酬体系も一部を知っていらっしゃると思うんですけど、例えば「20億円を運用していて60億円のリターンになりました」「差し引きして40億円ぐらいがプラスです」となると、めちゃくちゃ会社には利がありますよね?
普通のCVCさんだとそれはどのぐらい報酬として反映されるのですか?
野澤:
いろいろあるので何とも言えないんですけど、弊社は反映されないと思います。
仮に反映されたとしても、会社のルールがあるので、会社の中でいろいろな事業をされている社員と同じ土俵の上で評価されるので、40億円儲かっても「頑張ったね」という感じで、ちょっとボーナスが少し増えるくらいだと思います。「いやー、乗る車変わったね」とかそういう感じには絶対にならない。
石橋:
もちろん僕たちも含め、業界の皆さんはお金のためにやっているという方はほぼいない。
本当にそういう人はあまり聞いたことがないんですが、とはいえ報酬バランスが独立系のVCさんとCVCさん、あまりにも乖離しているというのは現実なのかなと思いますよね。
人事ローテーションがもたらすコミュニケーションロス
石橋:
ちなみに、その報酬体系以外の課題感はどういったところになっていますか?
野澤:
基本的には、本社の人事ローテーションで人が入れ替わるというのがあって、例えば3年なり5年なりで人が変わっていく。
そうすると投資担当者が変わりましたとか、異動してきた側からすると投資期間終わって、もう投資先とのコミュニケーションしかやることがありませんとか、タイミングによってはそういう可能性もあります。
BSであればそれはないと思うんですけど、そういう人事ローテーションで担当者が変わることによるコミュニケーションのロスみたいなのもある。
CVCはそもそも上手くいかないようにできているというのは、自分たちでやってみて、うまくいかない可能性は高いというのは分かりました。
石橋:
そこを乗り越えていくとなると、冒頭でもタイトル的につけさせていただいたように、第2回の配信でもお話いただいたと思うんですけど、CVCファンドに個人GPが入るというのは僕の知り得る限り聞いたことがなかったんですが、国内でありましたか?ほぼないですよね?
野澤:
ほぼないとは思います。調べたことはないけど聞いたことがないので、恐らくないんではないかなと思います。
「君たち、自分の金は入れないの?」という問いかけ
石橋:
それがインターネット系の新興系の上場企業さんがやっているのではなくて、朝日新聞グループという、僕からするとレガシーといいますか、大きくて事業歴史のある会社の中に実現するのは、意味がよく分からないというか、そもそもスムーズに決まったんですか?どういう流れでそうなるんですか?
野澤:
遡ると、1号ファンドを立ち上げるタイミングで、当時の社長補佐役の社外の方が、この方に「こういうファンドを立ち上げます」という話をさせていただいた時に、「君たちは自分のお金を入れるの?」と言われて。「入れません」と言ったら、「おかしいね」「人のお金をただ使うだけなの?」と言われて。
確かに、それは何か考えなければいけないことだというのがそもそものきっかけで。1号ファンドの頃からこれはどうにかしなければいけないという課題としては持っていたんですけれども、1号は時間がなくて、そこを調整しきれなくてCVCのスタイルで出発して。
2号は必ず個人GPを入れようというのはずっと考えていて、いろいろなタイミングで社内のステークホルダーの役員の皆さんに「2号をこういう形でやりたいですね」「個人でもお金を入れることになるんです」みたいな話をずっとしていたんですけれども。
その時には「分かった」という反応だったので理解はされていると思っていたんですが、そんなことはなかったというのが話の顛末になります。
1号ファンドで顕在化しなかった理由
石橋:
ちなみに、1号ファンドの頃は個人GPが入られない格好で始めていらっしゃった中で、元々のCVCあるあるの課題感が顕在化していったんですか?
人が定着しないとか、それこそ報酬体系というところから、他のCVCさんで代表クラスの方が独立されていかれるって本当によくあるなと思っていたんですけど、朝日さんも同じことが起きていたんですか?
野澤:
我々は幸いなことに、異動のローテーションにも乗ることがなく、継続するという話で動いていた。
石橋:
理解がすごくあるんですね。
野澤:
そうですね。そこについてはすごく理解してもらったと思います。担当者変わると難しいというのが理解されたみたいで、僕らは変わることはなかったんですね。
報酬の方は、貰えるなら貰える方が良いと思いますが、結果も出ていない段階でしたので、それを言うのはちょっと早い、結果が出始めたらそれを考えればいいかなと思っていたんですけど。
そういう意味で言うと、1号で顕在化したわけではないんですけれども、いずれそういう課題が出てくるなというのは分かってはいたので、どうにか対応しなければというふうには考えていました。
3人のパートナー体制という異例の布陣
石橋:
なるほどですね。ある意味ではそれで個人GPが入ることで、ほぼ対策が打てているような状態なのかなとは思うんですけれども。
もう1つ僕が気になるのは、3人いるんだという。CVCでパートナーの人がちゃんと3人とか複数いるというのも、かなり珍しい方なんじゃないかなと思うんですけど。
これも珍しいんですよね?
野澤:
珍しいんじゃないかなとは思います。
石橋:
野澤さんはもちろん代表でいらっしゃるのは分かるんですけど、一応皆さんがパートナーだったんですか?
野澤:
そういう意味でいうと、投資の現場の担当者ではあるんですけれども、いわゆる投資委員会のメンバーではなかったので、投資先のことは一番よく分かっていますし、2号で1号よりもパフォーマンスを上げようと思った時に、それを活かさない手はないよねといったところで、投資委員会にも入ってもらう必要がある。
であれば「パートナーなんじゃない?」という考えですね。
約2年間の調整プロセスと半年以上の稟議期間
石橋:
個人GPになることで、ざっくりファンドでいうと約10年間ぐらいコミットメントのスタンスを出すというのと、しかもそれが複数人いらっしゃるというのは、CVCというべきなのかよく分からなくはなってきますけど、起業家の方も安心感があると思います。
ちなみに、調整は何年来ぐらいのプロジェクトだったんですか?
野澤:
「こういうスキームを入れたい」というのに2年間ぐらい、帰国して話をするタイミングで「2号ファンドはこういうことを」みたいなのを話していました。
実際に経営会議なりに諮って紛糾して、そこから着陸させるために半年以上かかっていますね。
石橋:
逆にいうと、足掛け2年あればできるという話なのではないかと、なかなか一般化できるか分からないんですけど、本当にこれが増えると、VCはキャリアパスが全然ないのは個人的にすごく課題だと思っていまして、もっとキャピタリストが増えればいいけど、自分で独立してという人もなかなか少ないですし、ハードルも高い。
その中で、もはや野澤さん達はほぼ独立系VCなのではないかと思うんですけど、でもやっぱりCVCの中でもっとパートナーとか個人GPの選択肢が増えてくると、業界がもっと良くなるなと思っているので。
めちゃくちゃ良い事例を朝日さんたちが作ってくださったなと、本当に忖度なく思っているので、ぜひ大成功していただき、「やっぱりこれがベストプラクティスだよね」みたいなところはぜひ証明していただけると、元CVC出身者としても非常に勝手ながら嬉しく思っておりますので。
ぜひ僕らとしても投資業としても、今回メディアでご一緒させていただきましたが、また連携させていただければと思っております。
起業家が安心してコンタクトできるCVCへ
石橋:
ぜひ皆さん、既に業界関係者の中では個人GPになったと知っていただいている方が多いと思うんですが、そういうスキームとかもっと詳しいところにご関心がある方は、野澤さんないしは他のパートナーのお二人にもご連絡ご相談いただければと思いますし。
こういうスタンスでやっているCVCさんだからこそ、起業家の方は安心感を持ってコミュニケーションをとれるかなというのは本当に間違いないことかなと思っておりますので。
概要欄の方にもURLを記載させていただきますので、お問い合わせとかコンタクトをぜひ送っていただければなと思っております。
それでは野澤さん、全3回にわたり最後までご出演いただきありがとうございます。
野澤:
ありがとうございました。
