【社会変革】高額投資で次世代の社会変革を起こす|スタートアップ投資TV

◯朝倉祐介 アニマルスピリッツ合同会社 代表パートナー
アニマルスピリッツ合同会社 HP▶︎ https://animalspirits.jp/
Twitter▶︎   / jockey723  
競馬騎手養成学校を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。その後、大学在学中に設立したスタートアップ・ネイキッドテクノロジーに復帰し、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。SNS事業からの業態転換を行い、同社の事業再生・再成長を牽引する。
スタンフォード大学客員研究員等を経て、IPO後も継続成長するスタートアップの創出をテーマにシニフィアンを創業。同社を通じてグロースキャピタル「THE FUND」を設立し、レイトステージのスタートアップへのリスクマネー提供に従事。
セプテーニ・ホールディングス、ラクスル、ロコパートナーズなど、上場/未上場企業の独立社外取締役を歴任。急成長企業と伝統的大企業との統合などのコーポレートアクションに関与。
Tokyo Founders Fundパートナー、一般社団法人スタートアップエコシステム協会理事。
主な著書に『論語と算盤と私』『ファイナンス思考』『ゼロからわかるファイナンス思考』

競馬騎手からMIXI代表へ、異色の経歴

石橋:
今回はアニマルスピリッツ合同会社代表の朝倉さんにご出演いただいております。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?

朝倉:
朝倉と申します。よろしくお願いします。経歴を最初から振り返ると、中学を卒業した後にオーストラリアで競馬の騎手になろうと学校に行ってたんですけれども、身長が伸びすぎてちょっと体重が重いよということで諦めまして、日本に帰国することにしました。

その後はしばらく北海道の牧場で調教助手をしていたんですが、今度は交通事故に遭いまして、肉体労働ができないということで諦めまして、地元関西に帰って勉強して東京大学に行きました。

そして東京大学在学中に、仲間たちと一緒にスタートアップを立ち上げました。一旦立ち上げつつも、自分は大学卒業と同時にMcKinsey & Companyという会社に就職して3年ほど働いてたんですけれども、元いたスタートアップから「ちょっと帰ってこい」と言われたことで戻りまして、その会社を1年後に売却したという経緯で株式会社MIXIに入社をしました。

その後MIXIの代表に就任して、5,000億円くらいまで行ったので、「もうええやろ」ということで辞めまして、2年ほどスタンフォード大学で客員研究員をしていました。

それから日本に帰ってきて2017年にシニフィアン株式会社を立ち上げ、レイトステージのスタートアップ並びにポストIPO(新規株式公開)、つまり上場後のスタートアップの支援をして、2023年1月にアニマルスピリッツ合同会社という、今度はシード・アーリー向けのベンチャーキャピタル(VC)を立ち上げました。

石橋:
一言で言うと恐ろしい経歴だなっていうのは、何回聞いても思いますね。

ファンド規模は2桁億円の中盤ぐらい、初回投資は1億円前後が中心

石橋:
まず、アニマルスピリッツさんはどのぐらいのサイズのファンドで、どういうセクターや領域に投資していくのかみたいな大枠のお話をいただいてもよろしいでしょうか。

朝倉:
ファンドサイズについてなんですけども、これを収録している現時点で絶賛調達中でして、ファンドって調達のご相談を受けながら投資検討するわけですけど、そんなことしながら片や一生懸命調達してるんですよ。ですので僕も起業家の皆さんと同じで、投資のご相談を受けつつ全力で自分も調達するという、そういった状況ですね。

今現在、2桁億円の中盤ぐらいの規模感で、最終的にはそれぐらいの規模感に留めるのかなというふうには思ってますね。

石橋:
BRIDGE(スタートアップメディア)さんとかでは最大70億円みたいな表現があったので、大体その真ん中ぐらいのイメージなのかなというところですかね。

朝倉:
そうですね。一応、契約上は100億円まで行けるとなっているんですけど、そこまでやるかなというのも含めて、ちょっと今良いサイズ感と、あともちろん良い関係のLPさんと協議をしている状況です。

石橋:
現時点の想定だとシードからアーリーステージみたいなところでお話されてますけど、どのぐらいの規模で1社に投資していこうとかっていうイメージなんでしょうか?

朝倉:
シード・アーリーで、本当にシードもやろうと思えばできるんですよね。ソロファウンダーですっていう方でも、やろうと思ったらできます。どれだけそれがたくさん出てくるかどうかっていうのはさておき、そういう意味で言うと下限はありません。

MAXで言うと、一応これまで契約書上も5億円ってガッチリ決まっているんですね。なんですけど、実際5億円の投資をバンバンやるかっていうと、そのイメージは実はあんまり僕なくて。

投資方針として、初回に出資して以降も次のラウンドでプロラタ(方式)だとか、場合によっては初回のポーションが小さかったらリードを取るっていうこともありえると思っているので、そういった時に一定程度大きな金額を追加で投資するってことができると思います。

逆に言うと、投資先がものすごく大きくなって、プロラタだけでもそれだけちょっと押していくのであれば、それは非常に喜ばしいことなんですけれども。基本的には初回は1億円とか数千万円前後が中心になるんじゃないかなというふうには今のところ想定しています。

未来世代のための社会変革をパーパスに

石橋:
領域とか投資テーマみたいなものはどういう感じになっているんでしょうか?

朝倉:
領域についてはですね、3つ決めております。その上で大上段の話をすると、我々のアニマルスピリッツというファンドないしはジェネラルパートナー(GP)カンパニーのパーパスでもあるんですけれども、何をやろうとしているかというと「未来世代のための社会変革」ということをものすごく大事にしています。

これは実は何も今始まったことではなくて、シニフィアンの時も同じように思っていたし、もっと言うと、そもそもスタートアップに関わる上で、自分はそのためにスタートアップに関わっているんだという思いで取り組んでいます。

どうしてスタートアップに関わる仕事をしているのかというと、それは僕たちの次の世代、あるいはその次の世代の人たちがより豊かな社会を享受できるようにという思いを持っていて。今の日本社会っていうのをそっくりそのまま引き継ぎたいかというと僕は到底そうは思えないし、やっぱり変えていかなきゃいけない。

それのある種の手段というか、便利なツールがスタートアップであり、またVCという箱だというふうに思っているんですね。

他にいいやり方があるんだったら別にこだわらないんですけど、逆に言うと僕ができて、なおかつこれ以上いいやり方って僕は思いつかないので、スタートアップを通じて社会変革を起こしていこうと。まあこれは大上段、パーパスとして考えています。

1つ目の領域:「国を守る」──超高齢社会への対応

朝倉:
領域の話になるんですけれども、そういったパーパスをもう少し紐解いて具体化すると大きく3つ言っていてですね、1点目が「国を守る」、2点目が「地球を保つ」、3点目が「フロンティアを拓く」。

「国を守る」と言うと、めちゃめちゃ右翼チックな雰囲気なんですけれども、あんまりそんな感じではなくて、何を言ってるかというと、もう日本が完全に直面している超高齢社会、これをどうやって持続可能たらしめるかっていうのって、ものすごく僕ら差し迫った課題だと思っています。

そのために必要なサービスだとか、あるいは提供するような会社さん。なので、これセクターっていう風に考えると、例えばそういうこと、デジタルトランスフォーメーション(DX)とかAI、IoT、ヘルスケア、ロボティクスと、ものすごく手垢のついた「よくあるよね」っていうセクターだと思うんですけれども。

まだまだ日本ってそういったいわゆる手垢のついたセクターが社会において貢献できる余地が非常に大きいと思っているので、ここはぜひやっていきたい。これが一つ。

石橋:
例えばわかりやすいところで言うと、医療・介護みたいな産業にフォーカスするとか、それが偏るってこともありえるんですか?

朝倉:
ヘルスケアなんか当然ありますし、まさに介護っていうのも重要なテーマではありますけれども、ただそれだけに限らず、例えば労働生産性をどうやって上げていくかっていうのもすごく大事な問題ですよね。それこそDXって散々言っている類のものじゃないですか。

そういった意味でいうと、より包括的に、今ある日本のリソースでどれだけ効率化を図れるか、どうやって今の社会システムの持続可能たらしめるかっていう、そういうことだと思ってますね。

2つ目の領域:「地球を保つ」──Climate Techと循環型経済の実現

石橋:
2点目の「地球を保つ」は?

朝倉:
これは何かというと、Climate Tech(気候テック)をはじめとした気候変動だとかに対する対応、ないしは循環型経済をどうやって実現していくか、ここがものすごく大きなテーマですね。

わかりやすくClimate Techっていうのが象徴的なセクターではあるんですけれども、例えばサプライチェーンだとかフードテックだとか、こういった類のものも僕は「地球を保つ」というテーマで捉えています。

石橋:
Climate Techであるとか「地球を保つ」みたいな観点でいうと、1個目は「国を守る」というお話だと思うんですけれども、グローバルにとか、海外の起業家の方に投資をするみたいなことも選択肢として出てくるんでしょうか?

朝倉:
そうですね、海外投資してもいいことになってるんで、そういった可能性はありつつ、一方で僕らは基本的には日本で、なおかつ東京都というものすごくローカルな地で活動しているファンドでございまして、アメリカだとかインドだとかヨーロッパにブランチがあるわけじゃないです。そういった中で、ガンガンそこでソーシングするかというと、これはあんまり意味がないだろうなと思って。

一方で、例えばもともと面識のある起業家の方だとか、特に日本人の方なんかですよね、そういった方が「本当にグローバルでスケールするビジネスを作りたい」ということで、例えばアメリカのデラウェア州に登記して、シンガポールに登記して活動するってことあるじゃないですか。

石橋:
あります、あります。

朝倉:
場合によっては、これをNGってしてしまうと、せっかくそれがインパクトの大きいスタートアップを支援したいと思っているのに、全部それができなくなってしまうっていうことは避けたいなということで、海外に投資をしても良いというタームにはなっていますね。

3つ目の領域:「フロンティアを拓く」──宇宙からAIまで新領域に挑戦

石橋:
2つ目は比較的セクターもわかりやすいところではあると思うんですけど、3つ目の「フロンティア」って文脈も、宇宙だとかそういったところがすごくイメージはしやすいんですけど、まさに宇宙産業みたいなところを見ていらっしゃるってこともあるんですか?

朝倉:
そうですね、宇宙が一番象徴的なテーマですけど、「フロンティアを拓く」というのは、ざっくり言うと新領域です。

例えば「国を守る」だとか「地球を保つ」って、これって今僕たち現代に住んでいる、なおかつ日本という文脈で言うと差し迫っているものすごく重大な2つの課題が、日本においては超高齢社会ですし、環境全体を捉えると気候変動の話だと思っていて。言うなればマイナスをゼロにする類の、課題解決の話だと思うんですよね。

「フロンティアを拓く」っていうのは、もうちょっと前向きというか、全く今までなかったものを作っていくような会社さんや、スタートアップ。なので、宇宙開発もしかりですし、場合によってはGenerative AI(生成AI)みたいな話もあるのかもしれないし、ブロックチェーンだとか、あるいはウェルビーイングなんか、そういう世界もあるかな、というふうには思っていますね。

リード・フォローにこだわらず、持ち分比率より関係性を重視

石橋:
大きいテーマを持ちながらも、見ていらっしゃるマーケットとかセクターというのも一定数はやっぱりわかりやすさはあるのかなとは思ってはいるんですけれども、シード・アーリーから投資される中で、いわゆるリードだとかフォローだとか、そこっていうのは特にこだわりはないんですか?

朝倉:
こだわらないですね。リードをやる機会があるんだったら喜んでリード取りますし。ただ、基本的にVCって他の投資家の方々と協調して投資をするものだというふうには思っていて、そんなにファンドサイズがとても大きいわけではないので、全然フォローでもやっていけるんですよね。

逆に、リード取れないから僕らとして投資しないで見送るという話になってしまうと、僕ら側からしてみたら投資機会遺失です。もっと言うと、別にスタートアップとの関係性って、持ち分比率だとかタームで決まるものではないじゃないですか。

僕、自分でスタートアップやってたりだとか上場企業やってた中で、単純に持ち分比率が多いからその人の言うこと聞くかっていうと、絶対そんなことないですよね。あんまり関係ないなと思っています。これはなかなか説明するの難しいですけど、フィナンシャルな人には特に。

ハンズオン支援よりも、起業家の時間とマインドシェアを尊重

石橋:
特にそんな中でいうと、比率にこだわりなく投資活動は幅広にやる中で、投資された後のコミュニケーションでいうと、起業家の方はどういうところをアニマルスピリッツさんに期待していくと一番いいというか、どういうことを還元していこうみたいな、シニフィアンさんの頃のお話もあると思ってはいるので、どんなことやっていこうみたいな感じなんでしょうか?

朝倉:
これも正直ですね、本当に会社さんに合わせるのが一番いいのかなっていうふうに思うんですよね。

逆に何か僕らでお役立ちできるようなことがあれば、それはぜひ積極的にいろんなインプットをしていきたいというふうに思いますし、僕ら自身がレイトステージの投資をTHE FUNDの方で通してやっていたので、レイトステージの資金調達の勘どころっていうのがシード・アーリーと全然違うなっていうのは肌身をもって感じてるんですよ。そういったところはおそらく役に立てる局面が多いと思う。

一方で、自分がスタートアップやった時に感じたんですけど、ハンズオンっていっても、投資家が起業家よりも事業に詳しいことなんてないわけじゃないですか。むしろ投資家の方が事業に詳しいようであれば、それはその起業家に何か問題があるってことだと思うんですよね。

少なからず、ハンズオンという名のマイクロマネジメントになっていることってよくあるなというふうに思っています。そういうことはしたくないなと。特にシード・アーリー、初期的なスタートアップにおいて一番の競争力の源泉って、創業者の時間でありマインドシェアじゃないですか。

ですので、こういったものを割いてもらって、より事業にとってプラスなんだったら喜んで時間を使いますし、そうじゃないんだったらもう「上手いことやっといてや」という感じですね。

石橋:
アニマルスピリッツさんの投資先がめちゃめちゃ順調に成長されていく中で、例えばシニフィアンさんのやられているTHE FUNDから投資を追加で出すってことも、無しではないんですか?

朝倉:
THE FUNDもデプロイ(資金投入)しちゃったんですよ。もうファンド使い切っちゃったので、次どうするかなって言ったところで、レイトなのかアーリーなのかと。

それで、レイトに関して言うとですね、THE FUNDにご出資いただいていた株式会社みずほ銀行さんが、新たにみずほキャピタル株式会社さんをGPにしてみずほグロースパートナーズっていうレイトステージをターゲットとしたグロースキャピタルを作っていらっしゃいます。今、アニマルスピリッツがそちらのアドバイザーを務めておりまして、投資の意思決定には関係していないんですけども。

ですので、アニマルスピリッツの出資先が成長した暁に、そういったところにおつなげできればそれはそれでいいですし、みずほグロースパートナーズ以外にもいろんなレイトステージの投資家さんとの関係性はありますので、皆さんから出資を募るサポートができればなと思っています。

1号案件は空き家問題に挑む株式会社クラッソーネ

石橋:
アニマルスピリッツさんがプレスリリースを出されたタイミングで、同時に1社目の投資も情報公開されていらっしゃると思うんですけども、どんな会社さんになぜ投資をされたのか、どういった背景があってどういう起業家さんで、みたいなお話を伺えればと思うんですけれども、お願いしてもよろしいでしょうか?

朝倉:
わかりました。株式会社クラッソーネという会社に出資しています。それがアニマルスピリッツの1号案件となります。これは何をやっている会社かというと、解体事業者と、家屋などを解体したい人をマッチングするプラットフォームの会社です。

先ほど3つの領域ってお話ししましたけど、投資する時にどのテーマに即するのかなっていったことはいつも考えていて、クラッソーネさんの場合は完全に「国を守る」ところですね。日本において空き家問題って完全に顕在化した課題で、間違いなくこれからも増えてしまう課題なんですね、不幸にして。

そういった時に、いろんな問題があって空き家が放置されていて活用されていないという状況なので、これはいろいろ総合的に解決しなければいけない課題なんだけれども、実際それを解体するっていうのはものすごく大事なテーマであると。

ここをちゃんとDXをもたらしながら、うまくニーズとサプライをマッチングしているプレイヤーっていうのがあまりいないなという課題意識はあって、そういった意味でいうと非常に我々の問題意識にも合致する会社さんだなというふうに考えています。

石橋:
もともとアニマルスピリッツさんやっていこうってなってから、改めてご縁ができたっていう感じだったんですかね?

朝倉:
川口さんという方が代表を務めてらっしゃるんですけれども、2、3年ほど前にどこかでお会いして。以降ですね、何度か事業のお話なんかを伺うことがあってですね。当時は別にアニマルスピリッツ始めてたわけではないですから、すごくテーマとして面白い会社さんだなというふうに思っていたんですけれども、なかなか仕事としての接点というところではなかったんです。

今回またそういった事業の進捗に関するご相談を受けていた際に、「我々も実はファンドを作るんですよ」とお話をしたところ、「じゃあ、ちょうどそういうことであれば」ということでお声掛けをいただきまして、やらせていただいたという、そういう経緯ですね。

未来世代のために良い社会を残したい──朝倉氏からのメッセージ

石橋:
最後にですね、今見ていただいている方々に、今回はアニマルスピリッツさんのファンドについての概要をいろいろお伺いしてまいりましたので、ぜひちょっと最後、朝倉さんが一言メッセージを皆さんに向けていただければなと思ってまして。

どんな起業家に会いたいとか、どんな起業家を探しているみたいなメッセージを一言いただければなと思っておりますので、お願いしてもよろしいでしょうか?

朝倉:
僕がなんでこれをやっているのかというと、スタートアップをいろいろ支援することによって、未来世代のために良い社会を残していきたいという、そういった思いで活動をしています。

当然これは経済性との両立で、ものすごくスケールしてちゃんと事業収益の上がる会社さんでなくてはいけないという面ももちろんあるんですけれども、同時に課題意識を持って、一緒に僕たちや次の世代が抱える課題に挑戦していこうというような方と、ぜひ一緒に走っていきたいなと思っています。

石橋:
ありがとうございます。ぜひ次回の配信もですね、見逃さないようにしていただければと思っております。改めて朝倉さん、今回はありがとうございます。

朝倉:
ありがとうございました。

【500億円ファンド運用】未上場でも資金を調達できる市場づくりとは|スタートアップ投資TV

日本のレイトステージ市場に存在した「圧倒的な空白」

石橋:
今回もアニマルスピリッツ合同会社の朝倉祐介さんにご出演をいただいております。前回はアニマルスピリッツさんがどういうパーパスを持ってやられていらっしゃるか、どういう投資活動をしていらっしゃるかをお伺いしました。

朝倉さんはシニフィアンをやっていらっしゃったじゃないですか。日本のスタートアップマーケットがどう変化してきて、結果的になぜ今シード・アーリー向けのVCファンドに投資業としての勝ち筋があるんじゃないかというところで、やはり何か見立てがあったのかなと思うんですけれども、このマーケット的なお話を簡単にご解説いただいてもよろしいでしょうか?

朝倉:
自分が何するべきかなということを考えるときに、自分が将棋の駒になるみたいな考え方で、自分が駒を指すとしたらどこに指すかなみたいな、そういう考え方をしているんですね。

シード・アーリーを、なんで今このタイミングでやるんだってお話をいただきましたけども、もっと遡ると、なんで今までレイトをやっていたのかっていう点もあるかと思うんですけども。

日本の場合って、世界銀行の調査なんかでも出てるんですけれども、レイトステージの資金調達っていうのが圧倒的にしにくいマーケットだったんですね。だったと言ってますけれども、今もまだ似たような状態ではあります。

実際その世銀のデータだとヨーロッパだとかアメリカだとか見てみると、ベンチャー投資全体に占めるお金のうちレイトの占める割合って過半なんですよ。当たり前ですよね、レイトに行けば行くほど、1件当たりの金額が大きいから当然大きくなるっていうのに対して、日本って1桁なんですよね。

何をもってレイトって言ってるんだっていう定義の話もあろうかとは思いますけれども、ただ肌感としては圧倒的に少ないっていうのは間違いないと。

よく、日本でも「スモールIPOが問題だよね」という話をされていて、それって今もあるんですけれども、未上場の段階で大きく調達しようと思っても、できないんだから仕方ないじゃんっていうのが問題だったわけですよね。

旧マザーズって言うなれば、日本においてはレイトステージの投資家の役割を担っていたと。それがそれで悪いっていうわけじゃないんだけれども、IPO全てが悪いっていうつもりは全くないんですけれども、ただ未上場の段階でしっかり2桁億円、場合によっては3桁億円の資金が調達できるようなマーケットを作っていこうよっていうのがもともとの出発点で。

それがないといつまでたっても、上場以降も継続して大きく世の中にインパクトを出すスタートアップって出てこないじゃんっていうのが、もともとレイトステージの投資を始めたきっかけというか、課題意識の原因なんですね。

2019年以降、マーケットに起きた「0→1」の変化

朝倉:
そういった課題意識を持って、2019年にTHE FUNDを作りました。一方2019年以降ですね、コロナ禍を挟んで2022年、2023年と、マーケットの様子が結構変わってきたなぁといったことは感じています。

いわゆるどういうことかというと、レイトの投資額が単純に増えました。レイトのエリアをカバーしうるプレイヤーが増えました。

じゃあこれ十分な数なのかというとそうとも思ってなくて、全然まだまだ足りないです。けれども、10必要なうち1しかないかもしれないけど、0→1はできたなっていう気はしてるんですよね。それで、ここから先はむしろ、もっともっと「レイト来て、レイト来て」って言う側に回っていきたいと思って、そういった活動をしているんですけれども、前よりはマシになったよねと。

一方で今の課題意識としてはですね、以前って何が起こっていたかというと、上場を境にスモールIPOをして、それまで投資する未上場の段階でコミュニケーションを取る投資家層と、上場以降の投資家層というのは全く違うから、ある種コミュニケーションの分断が起こっていて、そこのギャップというのを超えることができないという課題意識だったんですけど。

この分断というのが、むしろ未上場のタイミングにシフトしてきたなというふうに感じているので、ものすごく乱暴な議論をすると、数年前までの日本ってアーリーステージしかないような状態に近い感じだったわけですね。

アーリーとレイトの「コミュニケーションの分断」を超える

朝倉:
一方でレイトっていうマーケットが徐々にできつつあって、そういった投資家の方々が出てくると、本来コミュニケーションする内容って全然違うんですよ。

ただ、そこのコミュニケーションのやり方だとかが違うことに気づいていないがゆえに、上手いエクイティストーリーとして語れないなとお見受けするスタートアップというのは非常に多くてですね。

それを逆に私はレイトの投資家の立場として見ていて、非常にもどかしかったという思いもあって。だったらレイトの投資家の方々も徐々に増えてきたし、むしろシード・アーリーの段階からご一緒させていただいて、そういったコミュニケーションの分断を一緒に乗り越えていこうよっていう、そういうお手伝いをする側に回るほうが、自分を駒として考えたときにいいんじゃないかなと思ったということですね。

石橋:
レイト比率がまだまだ少ない日本において、アニマルスピリッツさんを筆頭に新しく申請されるVCさんも多い中、どのように投資引き受け元として選ばれていくのか、競合が増え続けている中、どういう戦略や狙いを持ってやっていくと、そこはアニマルスピリッツとして選んでいただけるようになるよね、みたいなところって何かお考えはあったりするんでしょうか?

朝倉:
一つは、あんまり激しく競合してないっていうところがありますね。

500億円規模ファンドとかの、ファンドを運用していてシード・アーリーやっていくってなると、それはやっぱり相当数の金額を投下しなければいけないので、当然枠の取り合いっていうような発想になってしまいますけど、今の段階で僕はそんなにファンドサイズが大きくないので、あんまりこだわる必要ないですよというのはあります。

2015年から4倍に拡大した日本のベンチャー投資市場

朝倉:
これもいつの時点で比べるかっていう話なんですけど、確かに投資する側も増えていますけれども、一方でスタートアップも相応に増えているなという気はしていて、これっていつの時点で物事を見るかだと思うんですよ。

2015年とかの時って、僕はスタートアップがだいぶバブルだなって思ってたんですね。増えすぎたよねとか思ってたんですよ。まだ年間のベンチャー投資額が2,000億円もなかったぐらいの時代だと思うんですけども、その時ですらもう、むちゃくちゃいるよねって思ってたわけですよ。

その結果、今どうなるかっていうと、コロナ禍以降で調達額が減ったって言いつつも、結局8,000億円以上あるわけじゃないですか。マーケットは広がってるんですよね。

これをこのまま続いてくっていう風に感じるのか、減ってくって感じるのか、僕はそこはやっぱり広がってくって方向にベットしたいし、また同時に能動的に広がっていく方向にけしかけていかなければいけないという風に思っています。

アニマルスピリッツっていう社名を決めてるのも、そういったところに背景があるんですけれども、結局一番枯渇してるのって起業家なので。

「アニマルスピリッツ」ってケインズ(John Maynard Keynes)の言葉なんですけれども、「野心」ですよね。自分で新しい事業を作っていこうっていう、そういう野心に火を付けるような側に回りたいなというふうな思いもあって、そうなると必然的にシード・アーリーだなっていう。

なかば私の趣味でもあるんですけれども、マーケット見て合理的にそのレイトにつないでいかなければいけないっていうような算盤勘定的な部分と、単純になんやかんや言うてシード・アーリー好きなんですよね。

実際自分もやってたし、エンジェル投資でも株式会社Loco Partnersだとか、株式会社アンドパッドとか、株式会社令和トラベルとか、あと何社かその後イグジットしている会社も出てきてますけれども、まあ好きっちゃ好きですよね。

レイト投資家が求める「確からしさと定量感」

石橋:
もう1点ぜひお伺いしたいなと思ったのが、先ほどレイター投資家さんとアーリー投資家さんが求めているものというのは違いがあるから、そこの共通話者がいないよねってところをまさにおっしゃっていただいたところかなと思いますけど。

じゃあ、現時点でのアーリーの人たちとレイターの投資家さんが求めるものの乖離っていうのが、具体的には例えばこれみたいなものって、朝倉さんの見てる範囲でどんなところだったりするんでしょうか?

朝倉:
既存事業の確からしさと定量感のある説明が、レイトではやっぱり必要ですよ、それは。シード・アーリーのタイミングでスタートアップにケチつけようと思ったら、いくらでもケチつけられるわけじゃないですか。

その会社がうまくいかない理由なんて、挙げようと思ったらいくらでも挙げられますよね。そんなこと言っても仕方ないから、どんな夢があるんだと、どんなアップサイドがあるんだっていうことを、やっぱり投資家の側も聞きますし、じゃあそこに懸けてみよう、一緒に頑張ろうって言って投資するわけじゃないですか。

ダメになる理由なんて考える必要ないわけですよ、逆に言うといくらでもあるから。そのタイミングでは「自分たちだとこれだけ可能性があります」ということを言うわけですけれども、もう上場も見えてきたようなタイミングになってくるとですね、もちろんそのタイミングでアップサイドって話もオプションとしてあるのはいいんですけども、とはいえもうプロダクトあって事業も固まってるんだよねと。

それってどれだけ今後も確実に成長できるっていう読みができるの?とか、それをちゃんと定量感を持って示すことができるの?じゃあそれはどういったKPIに現れているの?っていう、ある種のつまんない議論なんですけれども、そういったことをやっぱり議論しなければいけないわけですよね。

昔McKinsey & Companyという会社で大企業の買収のデューデリジェンスなんかもさせていただいたことありますけれども、大企業のデューデリと、アップサイドだけ見てくれっていうシード・アーリーの真ん中ぐらいの感じなわけですよ。ここのギャップを結構超えられない人たちが多くて。

成功体験が邪魔になる「頭の切り替え」問題

朝倉:
逆にシード・アーリーでアップサイド見てくれって言って資金調達成功してきた人たちからすると、かえってその成功体験が邪魔になっていて頭を切り替えられない人たちって多いんですよね。

経験あるCFOの数って日本においては結構もう限定されてるわけですよ。そうなるとそういった人もハイアリングできないしっていったところで、結構苦しんでる会社が多い。

例えばこれがSaaSみたいな、こなれた分野になってくると、結構もうメトリクスがバーンって並んでるじゃないですか。だから皆さんさすがにもうこなれた説明されますし、そういった説明しやすいところって良いCFO人材が来るので、カチッとした説明されるんですけど。

よくあるのが本当に、2桁億円の資金調達しますって言ってるのに財務三表しか定量的なデータないとか、事業計画よく見てみたら、もうほとんどハードナンバーを埋め込んでいるだけですよねみたいなものとかがあって。厳しい言い方をすると、とてもじゃないけど見るに耐えないものが多いですよ。

ただ、そういった事業は全部ダメなのかって言うと、そんなこと決してないんですね。すごく面白そうな事業だとか、本当に志高そうな経営者の方もいらして、すごく面白いなと思うし、ぜひ応援したいっていう気持ちはあるんですけど。

レイトの投資でそこまで踏み込んで、一緒にじゃあ事業計画まで叩き直しましょうかってやることはたまにありますけど、やりきれないですよね。そこにあんまり時間使えないし、もったいないなぁと思いながら、あんまりそれをストレートに言うこともできないので、「いやー、ちょっとフェーズ感が違いますね」とか言いながらお茶を濁すってことが多々あって、まあそんな自分が嫌だったっていうのはありますよね。

石橋:
まだまだ僕ら自身も投資支援先がまだレイターとかいってるフェーズではないっていう、まだCVCなので、まだまだ想像の範囲でしかないですけど、まさにそういうフェーズの人が朝倉さんたちをパートナーとして選ばれると一番フィットするというか、貢献価値も一番大きいのかなという感じなんですかね。

朝倉:
そうですね、本当に極端な話をするとね、ご相談いただくスタートアップの人は全員応援したい気持ちはあるんですけれども、とはいえ自分たちのリソースとしても限界はあるので、なるべくお役立てそうなところでっていうふうに考えております。

「溢れ出る思い」を持った起業家を増やしたい

石橋:
ありがとうございます。今回も最後は朝倉さんからメッセージを頂いて閉めていきたいなと思うんですけれども、どのような起業家の人を探しているというか募集しているみたいなところを改めてメッセージを頂きたいというか、こんな人が起業するべきっていう方がいいですかね?

朝倉:
「みんな一回やってみたらいいんじゃない」っていう気持ちがあって、どういう人がっていうよりも、そういう人を増やしたいって気持ちはありますよね。起業ってやってたら、ものすごく嫌なことをたくさん経験するわけですよ。っていうかむしろ嫌なことのほうが圧倒的に多いわけですよね、つらいことのほうが。

なんだけれども、じゃあなんでわざわざそんな起業なんかするかというと、それでもなおもう実現したくてしたくてたまらない、自分がやりたいんだっていう溢れ出る思いがあるからやらざるを得ないっていうことなのかなと思っていてですね、ぜひそういう熱い気持ちを持った方に起業していただければいいなと思います。

石橋:
ありがとうございます。垣根なく創業期からも投資されていらっしゃるようなアニマルスピリッツさんですので、見ていただいて興味関心ある方は、お問い合わせいただければなと思っております。それでは朝倉さん、今回ご出演いただきましてありがとうございます。

【投資家】リスクを回避したければ自己資金の起業家から学べ|スタートアップ投資TV

バズワードに踊らされるな──ChatGPTとWeb3の本質的な捉え方

石橋:
第3弾では起業家の方々が相対しているトレンド変化っていうのをどう捉えるべきかというところでご意見をぜひいただければなと思っておりまして、幅広なお話になるかもわかりませんが、お伺いしてもよろしいでしょうか。

朝倉:
今おっしゃっていただいた通り、トレンドに乗るのかそうじゃないのかみたいな話、どちらもあるのかなというふうに思いますよね。今話している現在だと、やっぱり「ChatGPTすごいよね」っていうところで話題持ちきりですし。

石橋:
日々日々、その話題な気がしますね。

朝倉:
ものすごいことだと思うんですよ、僕も。これって一過性のものではなくて、ずっと続く類の話だなというふうに思うんですけども、じゃあ2024年、2025年になったら、きっとその時々の新しい話題ってできているはずで。

本質的には、そういった事業を通じて誰に何を届けるのかが一番大事だと思いますから、うまくそういったバズワードを活用するっていうことはありつつ、本質的な部分っていうのを見ておかなきゃいけないよねっていうのが大前提という、教科書めいた話になってしまうんですけれども。

特にWeb3なんかそうですけども、正直、海のものとも山のものともよくわかんないけど、ものすごい可能性がありそうな領域ってあるじゃないですか。そういったところって、おそらく失うものの少ない、特に若い人のほうが動きやすいだろうなっていうふうに思いますよね。

それは逆に40代、50代ぐらいの経験積まれたビジネスパーソンの方々からすると、かえって今までの自分が持っていた前提知識なんかがネガティブに働くことがあるのかなあっていうふうに思っていて、あんまりその経験差っていうのがダイレクトに活きない可能性あるよねっていうところで言うと。

本当に若い方が、「よくわからんけどWeb3ってすごそうだ、そこに張ってみよう」っていうのは、僕はすごく正しいと思いますし、やってみて違うなって思ったらまた方向転換するっていう余裕がありますよね。なので、どっちもあるのかなという気はします。

「調達しやすいから起業」は本末転倒──マーケット環境は簡単に変わる

石橋:
ある意味、トレンドはいろいろ常に変わっていくし、本質を捉えるっていうのはすごく大事なことなのかなと朝倉さんのお話からも感じたんですけど、足元の投資を受けやすいトレンドってだいぶ差が出てきてるなって感じてまして。

そこの部分で、トレンドがいろいろ吹きすさびながらも、起業家はどのようにして永続可能なビジネスの本質を見極めていくべき、みたいなところって、こういうふうにやると良いよとか、こういうものだよね、みたいなところって何かお考えってございますか。

朝倉:
特定セクターが資金調達しやすい、しにくいなんて、先々のこと読めないじゃないですか。

石橋:
おっしゃる通りですね。

朝倉:
そもそもセクターに限らず、スタートアップとしてこの先も資金調達しやすい環境であり続けるかなんて、誰もわかんないと思うんですよね。

もしもバズワードに乗っていると資金調達しやすいから、そのセクターでスタートアップを始めようと思っている人がいるんだったら、それはやめといた方がいいと思いますよね。そんなもんじゃないと思うし、マーケット環境なんて簡単に変わるし、調達しやすいからって始めた事業を信念持って続けられるほど強い人って、そんなにいないんじゃないかなと。いくらでもつらいことあるので、心配しなくても。

一方で、自分がやってるセクターっていうのがたまたまそのトレンドの追い風に乗ってるなっていうことを判断するのであれば、その時その時にそういった追い風を活用するっていうのは大いにあるかもしれませんよね。

ただ、これはSaaSバブルの崩壊みたいなものがものすごく如実に語っていることだと思うんですけれども、「そういうゲームをしている」ってことは自覚しておくべきだと思うんですよ。

SaaSバブル崩壊が教える教訓──追い風は永遠に続かない

朝倉:
「今この瞬間追い風だから、それを活用してやろう」というのは全然いいけれども、その先、じゃあその追い風っていうのがずっと未来永劫続くものではないっていうことを踏まえた上で、それでもあえて攻めに行くのか。

何言ってるかというと、見てみたら今このセクターすごい人気集まってるから、マルチプル引き上げてバリュエーション引き上げて大きい資金調達をする、それは全然いいんですよ。いいんだけど、それって結構勝負に出てますよっていうことは理解しておいた方がいいねって気はしますよね。

多分2018年以降ぐらいでスタートアップ始めた人と、僕もこの世界だとおじいさんになっちゃうんですけど、2000年代からスタートアップやってる人からすれば、今この瞬間の風景って見え方全然違うと思っていてですね。

今、「スタートアップ冬の時代」とかっていう言葉あるじゃないですか。そこまで冬じゃないよって正直思うし、もちろん2020年とかに比べたら、冷え込んでるね、肌寒いねっていう気はしますけど、秋ぐらいじゃないですかっていう。こんなもんよって感じしますよね。

夏が当たり前だと思ってるから、そこから落差があると、いきなり真冬だ、就職氷河期だって言ってるけど、いやいやいやいやと。「リーマンショックとかこんなもんじゃなかったんだよ」って言うと、本当にもう老人の説教みたいになっちゃうんですけど。

だけど、直近始めた人って、自分の今置かれた環境を相対化して見ることができないじゃないですか。それは自覚すべきだなっていうのが一つ。

もう一つ言わせていただくと、最近って、本来どこの世界でも活躍できたような、要は、大企業とかでも活躍できたような、あるいはアカデミアの世界でも活躍できたような、すごい優秀な人たちがスタートアップの世界に流れてきていると思っていて、素晴らしいことだと思いますよ。

僕らの時とか、あるいはもっと言うと本当大昔ですけど、ドットコム前、ビットバレー前の人たちとかって見てると、「この人たち大企業だと絶対やっていけないよね」って思うような、スタートアップせざるを得ないよね、みたいな人たちって結構多いわけですよ。

投資を受けるのは「悪魔に魂を売る」こと──その怖さを知っているか

朝倉:
昔ってそんな資金調達って簡単にできるもんじゃなかったわけですよね。なので、それを前提に事業計画を組み立てるなんてできなかったわけですけれども、今ってスタートアップのエコシステムが豊かになって、事業始めたら資金調達できるよねと。

情報も流通して、スタートアップ始めたら資金調達するのが当たり前だと思って始めてる、特に若い方多いわけじゃないですか。「いや、それ普通じゃないよ」っていうのは考えておいた方がいいのかなと思っていて。

投資家である自分がこんなこと言うのもなんですけれども、投資を受けるって本来怖いことなんですよ。

自分の会社の一部を切り売りして、その引き換えにお金を得てるってことですからね。ある種、悪魔に魂半分を売るっていう。Gazelle Capitalさんは悪魔じゃないですけど、そういうもんじゃないですか。

本当に初期のシードのタイミングにあるスタートアップの方の相談を受けたら、大抵7〜8割、「今資金調達する必要がある?」っていう話をしていて。僕からすると、「もうちょっと自分で粘った方がいいんじゃないの」って思うことが多々あるんですよね。

怖さだとか、それによって引き換えに負う責任感っていうものを、今って調達しやすいから軽々しく考えてしまうけど、そうじゃないんだってことも知ってほしい。

起業の世界って2つあるじゃないですか。あえて言うとキラキラスタートアップ、「調達してやっていくぞ」っていう世界と、ストリート的に根性で「チェーン店を開きながら開拓してきました、完全自己資金です」みたいな世界と、2つあると思っていて。

僕は起業家の人をどっちも尊敬するんですけれども、ある種、このYouTubeチャンネルを見てらっしゃる方って、VCから資金調達して大きくスケールさせる、「スタートアップやるんだぜ」っていう人たちが多いからこそ、むしろ自己資金でゴリゴリ資金繰りしながらやっている、ド根性系の起業家の人たちがやってることっていうのは、むしろ学んで欲しいなと思っていて。

商売としてはそっちの方がもともと本質だと思うんです。その上で、だけど外部から資金調達することで時間を買ったりだとか、先行投資をする余裕を得るから、オプションとしてVCを選択するわけなんで。

VCから資金調達して、外部から資金調達して事業するっていうのが前提ではないですからね、という。とても古いタイプの人間なんですけど。

財務三表よりも資金繰り──愛読書は「銀行通帳」だった

石橋:
そういう状態じゃないと、ある意味レバレッジってざっくりと掛け算みたいなところで言うと、そもそも1になってないものをどんだけ10だろうが20だろうが突っ込んでも減ってく一方というか、成り立ってないといけないのかなって思います。

それがもしかしたら、ちょっと前の世代の方で、さっきの表現で言うと起業家の人だとより正しい掛け算になるのかもしれないですし、そういうパターンだけが全てではないと思いますけど。

朝倉:
僕は『ファイナンス思考』って本書いてるんですけど、『ファイナンス思考』って本書いておきながらこんなこと言うのは何なんですが、本当に駆け出しのスタートアップにとってですね、バリュエーションとかファイナンスとかあんまりどうでもいいと思ってますし、もっと言うと財務三表もどうでもいいんですよね。1ヶ月前、2ヶ月前の情報を出されても、っていう。なので資金繰りですよね、とにかく。

だけど、やっぱりシード期のスタートアップの方で、「資金繰り表って何ですか?」って結構あるんですよね。「それ、商売の基本のキだよ」みたいな。

もっと言うと、愛読書、銀行通帳でしたからね。志高くとかじゃなくて、銀行通帳でしたから、僕の愛読書は。ネットバンキングずっと更新しまくって、「間違ってお金増えてないかな」ってずっとやってましたね。とにかくお金、お金、お金ですよね。

これって別に、普通にスタートアップも同じなんですよね。もっと言うと、別に日本だからとかじゃなくて、シリコンバレーの起業家だって同じこと言ってますよ。それぐらいお金に対する嗅覚とか執着心を持った方がいいと思います。

給料日が一番つらい──資金繰りの悪夢で前歯が折れた

石橋:
それってきっと、トレンドを追いかけ続けるだけでは本質には到達しないんでしょうし、ある意味、そんな人いないっていうふうに朝倉さんはおっしゃってましたけど、トレンドありきで起業すると、結果、ハードなことに耐えられなかったり、本当の意味で起業家じゃない人が結果的になかなかうまくいかなかったりっていうケースがやっぱ増えるのかなと思うので、非常に参考になりましたし、とても建設的な検証だったんじゃないかなと、勝手ながら感じております。

最後に一言だけというか、せっかく資金繰りみたいなお話いただいたので、朝倉さんの起業家時代、一番金回りでハードだったことを一言で教えていただきながら、番組閉めていければと思っているんですけれども、その点よろしいでしょうか。

朝倉:
ファイナンスよりも気にしよう、資金繰り。

石橋:
ありがとうございます。資金繰りで一番しんどかったのはどういう瞬間だったんですか?

朝倉:
ずっとじゃないですかね。一番しんどいのは給料日です。だって給料日って、社員の方に給料払って、自分の役員報酬を払うわけじゃないですか。会社のお金なくなるじゃないですか。つらいじゃないですか。嫌ですよね。資金繰りがうまくいかない夢見て、悪夢で歯ぎしりして前歯折れてますからね。

石橋:
良い意味で、そのぐらいしんどい体験は確実にできるってことかなと思うので。

朝倉:
はい、楽しいです。

石橋:
前向きに起業にチャレンジしていただければなと思っております。それでは皆さん、次回の動画でもお会いしましょう。さよなら。