【250億円超ファンド】最短2週間で投資!業界最速VCが求める起業家の条件・創業ストーリーを徹底解剖【Angel Bridge 河西 佑太郎 vol.01】

◯河西佑太郎 Angel Bridge株式会社 代表パートナー
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公式HP▶︎https://angelbridge.jp/
2005年 東京大学大学院農学系研究科修士修了(遺伝子工学)。シカゴ大学MBA
2005-2006年 ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門
2006-2009年 ベインキャピタルにて成長企業投資を実施
2011-2015年 ユニゾン・キャピタルにて成長企業投資を実施
2015年 Angel Bridge 設立

3号ファンドは最大250億円規模、1社最大40億円まで投資可能

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回は、Angel Bridge株式会社 代表パートナーの河西さんにご出演をいただきますので、河西さん、今回からよろしくお願いします。

河西:
よろしくお願いします。

石橋:
今回の動画は、過去にもAngel Bridgeさんの河西さんにご出演いただいてるんですが、これからシリーズAとか、Angel Bridgeさんに出資検討してもらいたいよという起業家さんが、これだけ見れば全部わかるぞと。

Angel Bridgeさんのことも河西さんのことも全部わかるぞという動画に仕上げていきたいと思っておりますので、いろいろと忖度なくツッコミをさせていただければと思います。くれぐれもご容赦ください。

河西:
よろしくお願いします。

石橋:
ありがとうございます。

早速なんですけれども、足元、多分今日で、Angel Bridgeさんの3号ファンドのニュースが露出というか、配信されているのかなと思いますので、簡単にどんな規模のファンドで、どんな方針でやっていくんだというところをまずお話しいただけますでしょうか?

河西:
まだこの収録日時点ではファンドレイズの最後のところなので金額は決まってないんですけども、我々1号ファンドは50億円、2号ファンドは100億円とくる中で、今回3号ファンドは、200〜250億円というようなところでやっています。

なるべくその250億円に近づけるべく最後の活動をしているというところでございます。

石橋:
おそらく最大250億円(※総額260億円で着地)の3号ファンド。めちゃめちゃでかいですね。

しかも順調に規模が上がってきていらっしゃるというのは、1号、2号、3号の特徴でもありますもんね?

河西:
おっしゃる通りですね。

基本的な戦略は2号ファンドと変わらずというところで、IT領域に全体の7割ぐらいをアロケーションして、そこで着実にファンド全体の2〜3倍を稼ぎ出すと。

残りの2割、3割を大学発ディープテックに投資をして、そこでアップサイドを狙っていくというような構造は変わらず。

全体としては30〜40社ぐらいというところなので、1案件あたり累積で言うと5億とか8億とか、場合によっては十数億みたいなこともありますし、累計で言うと、実はファンド全体の20%まで1社当たり投資できるということなので。

石橋:
一般的には10%くらい?

河西:
普通は10%くらいですよね。

なので200億円であれば20%の40億円まで1社当たり投資できるということなので、今回は今まで以上にしっかり継続的に投資をしていきたいなと、そんな設計になっております。

石橋:
おそらく1号、2号、3号と大きな戦略変更がないということは、1号、2号で今お話をいただいている戦略というのがはまってきてるからというところなのかなとは思うんですけれども。

2015年創業の背景、iPhoneが示した日本スタートアップ市場の可能性

石橋:
話を戻しまして、今の1号、2号、3号まで超順調にいっているAngel Bridgeをどういう流れで創業していて、どういう思いがあるのかみたいなところも触れていただければと思うんですが、河西さんはむっちゃ経歴ピカピカですよね?

そう言って差し障りがないぐらいピカピカだと思うんですが、改めて順番で教えていただいても大丈夫ですか?

河西:
まず私は東京大学大学院で、実は稲の遺伝子組み換えの研究をしていました。ということで、そういったバイオテックだとかは、実は私自身も研究者になろうというつもりで研究をしていたというところがありまして。

ただ、いろいろ思うところもあって、ビジネスマンになろうというのが、大学院の1年目ぐらいで決まってというところで、そこから急遽、大学の研究者になりたいと思っていた私が、ビジネスマンになるぞということで一気にシフトチェンジしました。

新卒は、ゴールドマン・サックス証券株式会社の投資銀行部門ということで、合併と買収(M&A)であるとか、IPOの支援であるとかをやっていました。

それで、もう少しM&Aのアドバイザリーでアドバイスするというのも良いんだけれども、やっぱり自分自身でリスクを取って、プリンシパル投資という言い方をしますが、そういったところが面白いだろうということでですね、プライベートエクイティ(PE)ファンドのベインキャピタル・ジャパン・LLCに入ったと。

石橋:
有名ですね。

河西:
その後、シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビズネスの経営学修士(MBA)に留学をして、ユニゾン・キャピタル株式会社で、同じようにPEファンド、バイアウトファンドに入って、2015年にベンチャーキャピタル(VC)であるAngel Bridgeを設立したというのが非常にざっくりとしたところです。

石橋:
細かな背景とか、もうちょっと踏み込んだご経歴の自己紹介とかは、以前ご出演いただいている動画でがっつりお話いただいています。概要欄の方にそちらの方はURLを載せておきますので、ぜひ河西さんとの面談前とかにはそちらの方も見ていただけると、もうちょっと踏み込んだストーリーがわかるかなと思います。

もう一段のご質問で、その流れでなぜAngel Bridgeを創業されて、今までの河西さんのイズムというか、そういうご経歴で何かしら思われているからこそのAngel Bridgeの創業だと思うんですけれども、だからこそこのイズムは今もAngel Bridgeに根付いているじゃないですけれども、モットーになってるみたいなところってあったりするんでしょうか?

河西:
非常に大きなところで言うと、まず投資が好きであるというところなんですけども。

石橋:
良いですね。

河西:
この会社は良い会社かどうかというのを、分析なりファクトベースでしっかり見ていく中で、この技術だとか、この会社すごいというのが分かって、そこにしっかり資金を投下して、投資をした後もサポートして、その会社がどんどん大きくなってくるというところを見ていくのはものすごく楽しい仕事だと思います。

投資という仕事は、投資家の方からお金を預かって、いろいろな多くの会社さんに投資をしていくというところで、普通にうまく歯車が噛み合わさると、お金がすごく大きなインパクトを出して、具体的に言うといろいろな会社が立ち上がって、その会社のサービスをもって世の中を幸せにしていけるようなことができると思うので。

そういう意味で言うと、この投資の仕事というのは大きなインパクトを出せる仕事だろうということがあってですね、私はPEファンド、バイアウトファンドにもいましたし、2015年からはVCをやっているということなんですけども。

2015年にAngel Bridgeを創業した一番大きなきっかけは、私は2009〜2011年に先ほど申し上げたようにシカゴ大学のMBAに行っていたんですね。

当時iPhoneが出てきて、ビジネススクールの生徒はみんなiPhoneを持っていると。私自身も2009年に渡米して初めてiPhoneを使って、「これめちゃくちゃ便利だな」とすごく思いまして、簡単に言うとパソコンでできることは全部手元でできると。

iPhoneを契機にアメリカでもIT化というのはますます加速していきましたし、VC自体はアメリカでは非常にポジションが大きかったですけれども、より一層加速していくというのを2年間かけて見てきたと。

私はもともと、日本はスタートアップであるとかVCが本当に栄えるのかというのはすごく疑問に思っていて、日本人はリスクを取るのは好きじゃないし、政府が旗を振ったからといって起業家が増えるのかなというのは正直2011年に帰国した時の感想だったんですね。

ところが2013年ぐらいに、安倍元総理が「第三の矢」ということで旗を振り始めてから、どんどん優秀な若手の方含めて起業家が増え、成功案件が増え、日本人はそれを見て良い意味で真似するというところもあるので、どんどんスタートアップの流れというのが増していくというのを間近にして。

アメリカと比較した時に、明らかに日本のベンチャー市場というのはあまり普及していないので、ここは海外対比でもどんどん伸びていくだろうというような思いもあり、2015年にVCであるAngel Bridgeを設立したと。

そこから今に至るまで、政府の支援なんかもありますけども、すごい勢いで伸びていて、前年比で5~10倍みたいなスピードで伸びているというふうに思っていて、そんな成長セグメントは日本にあるのだろうかと思うので、非常にそこの部分の見立ては当たったかなというのは率直な感想ですかね。

石橋:
ありがとうございます。

プレシリーズAから投資、ボリュームゾーンは3〜5億円

石橋:
だからこそ結果として順調に1号、2号の投資先も成長されて成果を出されて、今の3号に結びついていらっしゃるのかなと思うんですけれども。

改めてこの3号で、先ほども軽く触れていただきましたが、フォーカスするラウンドであるとか、1社に対する最初のエントリーのチケットサイズですとか、こういう領域を特に見ていくかなみたいなところとか、もうちょっとブレイクダウンするとどういうファンドになっていくんでしょう?

河西:
ステージで言うと、プレA、シリーズA、シリーズBみたいなのが多分一番多くて。

石橋:
プレAから触れていくんですね?

河西:
そうですね。1回目のファイナンスというのも全然やりますが、一番多いのは多分2回目のラウンドぐらいのところなのかなというふうに思っていると。

投資の金額はニーズに合わせてということなんですが、基本的にはリードで投資をするということが実際は多いかとは思っています。

ただ、起業家の方によっては過去の関係も踏まえて、コリードでとか、この方がリードでとか、だけど次のラウンドも見てAngel Bridgeにも入ってもらいたいみたいなところで、今回はフォローでというようなところも対応していけたらなと思うので、その辺りはすごく柔軟性は高いかなと思います。

投資の金額もラウンドに応じてですけど、ボリュームゾーンで言うと3~5億円みたいなのが多いと思いますが、プレシリーズAであれば1億円とかも全然あるのかなということで、その辺も一緒に相談しながらというところかなと思います。

石橋:
ありがとうございます。

マッキンゼー出身者による短期集中コンサル支援も提供

石橋:
ちなみにAngel Bridgeさんは、河西さんを筆頭にチームの皆さんも優秀な方がとっても多い印象です。

こういった皆さんを含めると、Angel Bridgeさんから投資していただいた後のご支援とかは、どんなところを起業家さんは期待しても良いよねみたいなところで、どんなイメージとかどういう取り組みをやっていらっしゃったりするんでしょうか?

河西:
投資をした後にそこでおしまいではなくて、経営者の方をいろいろな形で支援をすると、投資をした金額が最大化するというのが投資家的に見た言い方です。

やっぱりサポートすることで企業価値というのはすごい勢いで上がるというのを、今までもずっと見てきていますので、VCとはいえ、投資をした後にしっかりハンズオン支援をしていくというのが、我々のカルチャーでありDNAであるというふうに思っています。

支援メニューはいろいろあるんですけれども、ヒト・モノ・カネ、それらを回す経営のPDCAのサイクル作りを作っていくところの4つの軸で考えています。

やっぱり、部長以上の最高責任者クラスをご紹介するだとか、会社の進む方向をしっかり議論するみたいなものもあれば、具体的にお客さんを紹介するみたいなのもめちゃくちゃ力を入れています。

このような顧客紹介だとか、うちはマッキンゼー・アンド・カンパニー出身のメンバーもいるんですけども、ミニコンサルプロジェクトみたいなものは、1ヶ月半みたいな形でプロジェクト型でできるので、そういう支援がタダで受けられるみたいなこともよく言っていただけます。

あとファイナンスも、私含めて強いメンバーも多いので、そういったファイナンス支援だとか、そんな形で会社のニーズに応じて支援メニューを繰り出してと、そのようなスタイルでやっております。

IQ・EQ・やりきり力、最も重要なのは「グリット」

石橋:
良いですね。

実際、そういうお話だけ聞いていくと、ぜひ検討してもらいたいなとか出資してもらいたいなという起業家さんは多くいらっしゃるし、増えていくと思うんですけれども。

Angel Bridge目線で言うと、どういう起業家に投資していきたいよね、していかないといけないよね、ないしはこういう起業家さんはちょっと避けるべきかもみたいなところを、もしお考えとかあればお伺いしたいんですけど、どうなんですか?

河西:
知能指数(IQ)、心の知能指数(EQ)、やり切り力みたいな感じで見ていまして。

IQって言いましたけど、一言で言うと問題解決力みたいな話で、ゼロから物事を作っていくとなった時に、お客さんの声を聞いて、この機能は刺さってるんだなとか、こういう機能入れた方が良いかなとか、市場を見て競合がこういう感じでやってるからこういうとこが空いてるかなとか、いろいろ考えないといけないというところが多分あると思っています。

そんな形で、問題を解決していくみたいな能力が非常に重要だと思っていると。

それから、EQみたいなところも重要だと思っていて。将来100人、200人、300人のリーダーになっていく必要があるということで、良いチームを巻き込めるかとか、リーダーとしてチームを鼓舞することができるだとか、そんなところは見ていると。

一番大切だと思うのは、やりきり力とかグリットみたいな話なんですけども、IQもEQも高くて何かの案件、スタートアップに取り組んだと。

だけど、そういう人はいろいろな仕事ができるので引く手あまたで、「僕こっちの大企業のこういう会社に就職することにしました」、みたいなのは往々にしてあるんですけども、それだとなかなかスタートアップできないよねというふうに思っているので。

最も重要なのは、やると決めてそこに粘り強く取り組めていけるかという、そういったグリットみたいなやり切り力というのが最も重要だと思っていて、この辺りを見ながら判断しています。

なので、こうであってほしいというところで言うと、いろいろスタートアップは必ずしも当初の思い通りいかないことが多いわけです。

そこで諦めずに粘り強くやっていただける方というのを、やっぱり応援したいなというふうに我々も思っています。

意思決定は最短2週間、平均1〜1ヶ月半のスピード感

石橋:
それを短期的に見極めるのも、チェックをつけて、10個のチェック項目のうち7つ満たしてるからOKみたいな性質のものでもないような気はしちゃっていまして。

Angel Bridgeさんのさっきのお話で言うと、プレA、シリーズA、シリーズBぐらいのステージで、しかも小さくて1億円前後ぐらい、基本的には3~5億円というサイズになると思うので、やっぱり当然デューデリジェンス(DD)をちゃんと見極めていらっしゃると思うんですけど。

要は着金までどのぐらいのスケジュールの見立てを持っておくと、Angel BridgeさんにちゃんとDDしていただいて、投資オファーに至るまでというと、平均的にこのぐらいはやっぱり余裕欲しいよねというのはどんな感じなんですか?

河西:
我々はめちゃくちゃ早くて、意思決定自体は正直2週間ぐらいでやる時もあるし、普通で言うと1ヶ月~1ヶ月半みたいな感じで見てもらえればなと思っています。多分この辺りのスピード感というのは業界随一ではないかなと思っていますかね。

石橋:
場合によっては2週間強くらいで意思決定されるとなると、初回面談がめっちゃ重要なんですかね?

河西:
初回面談はもちろん重要かなと思っていて、なぜこのプロジェクトをやりたいのかみたいなのはしっかりお伺いさせていただきます。

だいたい我々はDDが始まった後にデータのやり取りもさせてもらっていて、既存のプロダクトがしっかり既存のお客さんに使い続けてもらっているのかとか、そういうのは、そのステージに応じてしっかり見ているというところもあって。

そういったものを実際にベースに議論させていただいて、この方であればいけそうだなとか、「この方に投資をしてダメだったらしょうがない」と思えるのかを社内でも話しまして、「この方がこんだけやってダメだったらしょうがなくない?」というふうに思えるかみたいな感じですかね。

Heartseed上場、時価総額970億円のメガベンチャーを創出

石橋:
ありがとうございます。

2本目の動画の方では、「なんで投資したの?」シリーズみたいな感じで最近やっているんですけれども、河西さんないしはAngel Bridgeさんがなぜこの会社に投資をしたのか、当時の仮説でいうとこうで、こういう人柄だったからみたいなところの突っ込んだお話は第2弾でお送りしていければと思います。

他にも第1弾の方でも、代表的なイグジット事例であるとか、1号、2号でおそらくむちゃめちゃ成功していらっしゃるので、3号ファンドも順調に200~250億円がガツンとレイズできてるのかなと思うんですが、代表的なイグジット事例ベースでお話しするとどんな感じなんですか?

河西:
我々はITも多数やっていますが、大学発ディープテックもやっていると。

特に大学発ディープテックだとバイオテックというのは非常に力を入れてやっていまして、実際のイグジット事例だと、慶應義塾大学医学部発の再生医療ベンチャーであるHeartseed株式会社という会社がございまして。

昨年の夏に上場して、上場時の時価総額が確か330億円くらいだったと思いますが、そこからしっかり成長して、つい2~3ヶ月前は時価総額で970億円ぐらいまで、足元だと多分700~800億円。

まさにメガベンチャーの卵というか、候補を生み出すことができたかなと思っています。

河西氏自らが初代社長に、究極のハンズオン支援事例

石橋:
この件は個人的に好きでして、視聴者の方を置いていくつもりはないんですけど、Heartseedさんがどのように立ち上がってきたのか、どのように河西さんが関わってきて、今の絵姿になっているのかというところをもうちょっと教えていただきたいんですけども。

しかも河西さんがさっきAngel Bridgeさんを立ち上げるに至ったとか、その思いのところと半ば直結してるようなすごい綺麗な事例なのかなと思ってるので、どう立ち上がってきてとかを教えてもらって良いですか?

河西:
このHeartseedは我々の切り口でいうと、究極のハンズオン支援事例というものなんです。

実は私自身がHeartseedの初代の代表取締役社長を2年間やっていました。そこで立ち上がった後で、創業研究者である慶應義塾大学医学部の福田先生にバトンタッチをして、その後は社外取締役ということになったんですけども。

ざっくりした経緯としては、Angel Bridgeを2015年に立ち上げまして、その時に日本の大学の研究が非常に進んでいると、世界的に見てもトップレベルだというところは当然あると。

ただ、世界と比較して日本が傑出している領域が実はそんなになくて、見ている中では再生医療というのは明確に日本がグローバルナンバーワンだろうというようなところがありましたと。

私は小中高サッカー部だったんですけども、同級生で慶應義塾大学医学部に行ったメンバーにその話をして、再生医療というのはしっかり事業化しないと日本としていけないと思うんだよねという話をしたところ、慶應の先生方をご紹介いただいたという、そんなような話だったんですが。

その大学に眠る技術をしっかり事業化して、それが会社となり、その会社が成長してお客さんから売り上げが上がって、その売り上げの一部を利益という形で大学に還元して、また大学がその最先端の研究を続けると。

だから最先端の研究を大学がグローバルに見て維持できるというのはすごく重要なことだと思っていて、そんなことをやりたいと思ってHeartseedを創業して、最初の2年間は代表としてですね、この垂直立ち上げをやりました。

この創業の苦しみとか、特に大学発ベンチャーはこういうところが最初のズッコケポイントだよというところは、肌感を持って感じていて、そんな経験が非常に今の投資家としての仕事にも活きているかなとは思っています。

石橋:
上場されていらっしゃるので、そこをあえてちょっと玄人っぽい、かつ突っ込んだご質問しても良いのかなと思うんですけど、VCファンドとして、今河西さんにお話いただいたケースをやるのは、どちらかというと例外事例だと思うんですけれども。

そういった場合のVCとしての究極のハンズオンをやる時は、どういう資本政策で最初エントリーが始まるというか。

それこそちょっと前の上場企業さんですと、株式会社ジモティーさん、Headline Asia、要は当時のInfinity Venturesの100%持ち分の会社として実質創業されてから、結果上場されていらっしゃいますけれども。

その件のように、Angel Bridgeさん100%持ち分みたいなところから始まるみたいな、ほぼPEファンドスタイルだったのか、VCとしてそういうスタイルでいくとまた違ったあり方があったのか、どういう資本政策だったんですか?

河西:
これはいわゆるスタートアップにあるような、先生がしっかり株を持つというような形でやっていまして、ファンドが100%オーナーというのは次の資金に繋がらないし。

Heartseedの場合はバイオテックなので、計5回で102億円くらいの資金を集めたんですけども、全部自社で出せるんだったらそのスタイルでも良いんですけど、それはあまり現実的じゃないので。

だとすると、やっぱり基本的に創業研究者である福田先生がしっかり株を持ってというような形で始めているということかなというふうに思いますかね。

やっぱり後ろのラウンドの投資家の方が投資をしやすいようなインセンティブ構造を含めて、そうなっていることが正しい資本政策だと思うので。

石橋:
すごい、もはやイグジットされていらっしゃるので、たらればの議論にしかならないような気はしますけど、PEファンドもやっていらっしゃった河西さんだからこそできる戦い方、本当に特異なあり方だったんだろうなと思いますし。

もちろん全社に対してそれができるわけではないっていうのは十二分に僕も一VCとして想像ができるところではあるとはいえ、その選択肢が取れるキャピタリストは普通いないと思うので。

起業家の方にもぜひそういうことができるキャピタリストの方でもあるし、そういうところをもちろん全社にできるわけではないとは理解しつつも、関わり方として、河西さんたちに出資いただくということはエッセンスは少なからず受けることができると思うので。

一緒にイグジットするというところについては、とっても心強いパートナーなんじゃないかなというのは思いますね。

PEファンド経験が生んだ「株主は応援団」の哲学

河西:
我々は、株主は応援団であって、主人公は経営陣の皆様というのをすごく徹底していまして。

PEファンドって100%オーナーじゃないですか。

PEファンドをやってきたからこそ、そういうふうに株主は応援団になるべきと思うんですけども。なんでかというと100%オーナーなので、変な話、経営の細かいことも含めて全部自分で決められるというのがPEファンドなわけなんですけども。

執行サイドの社長・副社長の経営チームがいて、株主業としてのPEファンドがいると。

そうすると、やっぱり基本的には執行サイドから上がってきた戦略じゃないと、うまくいかないですよね。

上意下達みたいなのは当然うまくいかないし、ということなので、たかだか10%、多くても20%しか持っていないVCだったら、なおさら執行サイドが主導で進まないと物事うまくいかない、こういうのがすごく肌感としてあるんですよね。

なので我々は、主人公は経営陣で株主はサポーターということで、加えてサポーターなんだから徹底的にサポートするよね、というところをすごく徹底しています。

うちもメンバーが入ってきた時に、投資先の経営陣とVCとの距離感と関係がすごく重要だと思っていて、あまりわかんないと「俺、株主だよ」みたいになるパターンというのも稀にあるので、それよくないよということで。

投資家と起業家の関係を表す3つのメタファー

河西:
そういう時は、例え話を3つぐらいのバージョンでするんですけど。

1つ目のパターンは「あなたは少年サッカーの監督だ」と。

出来上がったばっかりの会社を監督として、ある種サポートすると、「こうやってやった方がいいよ」みたいな。というのは「少年サッカーの監督、少しイメージが湧くな」みたいなのは、何度もありますと。

もう1個のバージョンは「あなたはパーソナルトレーナーだ」と。

筋トレで日本一になりたいという方に対してのパーソナルトレーナーなので、場合によっては「こういう筋トレメニューがベストプラクティスだよ」と。「今までいろいろな方々を教えてきてるけど、このメニューが良い」とか「あなたはここの筋肉が良い」みたいなパーソナルトレーナーというのもわかると。主人公は当然筋トレする人ですと。

最後の事例も、またこれも分かるという方もいるのは「親子だ」と。

「投資先は子どもで、あなたは親だ」と。そうすると、小さい時は親がいろいろ「ああした方がいいんじゃない」「これ落とし穴あるんじゃないの」みたいなことは結構言うと。だけど、だんだん成長していった時には、どんどん自立していくべきだし、親はそれを促していくべきだし、子どもの成長が基本嬉しいんだけど、ちょっと一抹の寂しさを感じる時もあったり。

「今まではいろいろ相談してくれたのに、最近相談してくれなくなった」みたいな話をすると、「すごくイメージ湧きました」ということで。

いろいろなバージョンがあるんですけども、仮に親と子だとしたら、言いにくいことも言ってあげる時も必要だと思います。それは子どもが何か間違った方向に行こうとした時に「こっちよりもこっちなんじゃないの?」と苦言を呈すみたいなのも、株主の仕事かもしれないし。

一方ですごく何らかの理由で周りから叩かれてとか、うまくいかないなという時に「絶対うまくいくから大丈夫だよ」というのも株主の仕事だし。

なので、今言ったような3つぐらいの例え話を頭に思い浮かべると、どういう対応をすればいいのかなみたいな時に、すごく良いガイダンスになるかなと思って、こんな話をうちのキャピタリストにはいつもしています。

3号ファンドで狙う3つの投資テーマ

石橋:
話が戻ってというわけではないですが、最近の3号ファンドが情報公開をされたばかりというところですので。

この3号ファンドを戦っていかれる中で、河西さんとしてこういうトレンドとか、こういう地合いとかをどう分析されてらっしゃるとか、どう注目されていらっしゃるんでしょうか?

河西:
まず、スタートアップのIPOマーケットが回復すると思っていまして。

ざっくり言うと、コロナ禍で金利を下げて、アメリカの資本市場が上がってきたと。ちょっと上がりすぎたので金利を上げましたといった時に下がりましたと。下がったのは赤字のSaaSとか赤字のバイオテックだとか。要はキャッシュフローが出ないアセットはすごく下がりました。それに応じて日本のグロースも下がりましたという話なんですよね。

なのでアメリカはキャッシュフローがバンバン出るGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)みたいなところは当然伸びるし、日本もガバナンス改革で利益が出始めた会社とかもめちゃくちゃ伸びて、外国人投資家が買っていますよと、こういう話なんですよ。

なので基本的にアメリカの金利が下がってくれば、アメリカのSaaSも上がるし、それに連動して日本のスタートアップ、赤字領域の会社も上がってくると思っているので、基本的には米国金利に紐づいているので、これは上がってくるというふうにまず思っているので、全く心配はしていないです。

プラットフォーム+SaaSモデルの台頭

河西:
あとは投資のテーマで言うと、これは実際見ていてすごくそういう会社が伸びてるなとか、そういう会社のお話が来るなみたいなところなんですけども、プラットフォーム+SaaSみたいなのはすごく良くて。プラットフォームでB向けの顧客をしっかり取って、Bの方向けにSaaSもクロスセルするよと。

こういうのは、結構食い合わせが良いので、SaaS+プラットフォームみたいな。プラットフォームから入ってSaaSに行くみたいなパターンが実際に見ていると多い気がしますが、そんな形で市場をしっかりとっていくというのはやっぱり伸びているなと。

うちの投資先でもそのパターンの会社が4~5社あって、そういう進化発展をしていくというパターンがすごくあります。バーティカルを解くうえで、プラットフォーム+SaaSっていうのはすごくいいと思うという話。

コンパウンドSaaSの可能性

河西:
もう1個は、結構いろいろな方がおっしゃるかもしれないですけど、コンパウンドみたいなのが一定すごく理にかなっていて。

局所局所のSaaSのプロダクトで飛び立っていますけど、局所局所でいろいろなSaaSを使うのは実は不便だったりしますと。

なのでしっかりデータベースを押さえて、いろいろなSaaSがすごく便利に使えますという話はすごく出てきているなというふうに思っていて、コンパウンドのプロダクトとか機能をバンバン出していくというのはすごくうまくいく人、こんなふうに思っていると。

もう既存のマーケットがあるとわかっているので、後からコンパウンドで入っていく人は、そこの市場リスクを取らなくて良いわけじゃないですか。

だから正しく競合がどういう機能があって、それをTTPですよね、徹底的にパクるじゃないですけど、してと。

人工知能(AI)がやっぱり出てきたので開発の速度も3〜5倍ぐらいにできるので、実はもう顕在市場に対して良いプロダクトを誰よりも早く出して、そのデータベースを共有することで非常に使い勝手が良いという攻め方は全然あると思っているので。

いろいろなバーティカルやホリゾンタルもそうかもしれませんが、そこで解いていくというのは全然可能性としてはあるかなというのを思っています。

AIエージェントのベストプラクティス

河西:
3つ目で言うと、AIエージェントみたいなのがすごく増えていて。

石橋:
分かりやすいところですね。

河西:
ただ、そのAIエージェントをやるんだったら、中小企業(SME)というよりはエンタープライズ(大企業)向けに作って、しっかりオンボーディングをやって、データがどんどん溜まっていくような仕組みを作ってとか。

一定のベストプラクティスみたいなところは見えては来ているので、それに従って日本の大きな市場を取っていくというのはすごくチャンスがあるかなと思ってます。

石橋:
ありがとうございます。

もうちょっと具体的なお話を質問しそうになるんですけど、第2弾の「なんで投資したんだっけシリーズ」で個別の話をしていくと、今のお話をしていただいたエッセンスとかが「あーなるほど、だからこれなんだな」というのがよくわかってくるかと思いますので。

日本再興を目指す、Angel Bridgeの挑戦

石橋:
ぜひ1本目の最後にですね、Angel Bridgeさんが改めて何を目指されて、今後3号ファンド以降もチャレンジされていくのか、ないしはこういう起業家、ぜひうちへ連絡してきてくれ、みたいなところをぜひメッセージをいただければと思いますが、お願いしてもよろしいでしょうか?

河西:
そうですね。メッセージとしては、日本市場は世界で3番目なのか4番目なのか、非常に大きな市場だと思っていますと。

一方でITでいうとIT後進国だと思っていて、まだまだ大きなマーケットの非効率性とかがめちゃくちゃあって、これをしっかり優れたITプロダクトで解きにいくというところに非常にビジネスチャンスがあるというふうに思っているので、チャンスに満ち溢れているうちに、ぜひチャレンジをしてほしいというのが思っていることです。

我々として達成したいのは、そういったこの日本市場に対して優れた起業家が、かつグリット、やり切り力のある起業家の方が切り込んでいくぞということであれば、全面的に応援したいと思っているので、ぜひ起業してメガベンチャーを作ってもらいたいなというのが、ファンドとしての投資側の話です。

もう1個、実はやりたいこととしてあるのが、ファンドレイズというかお金を集める側なんですけれども、これも日本の年金さんだとか機関投資家だとか、大きなお金の塊があるんですけれども。

彼らに対して日本のVCアセットというのはめちゃくちゃリターンが出るんだぞと、安心して投資できるものなんだぞということを作ることで、彼らからのお金を引き出すことができますし。

そのリターンを作ることで、年金の、最終的な方々にもそういった意味でのリターンもお返しできますということを作れば、大きなお金を集めて、その大きなお金をさっき言ったような起業家の方にお渡しできるし、そうすることで日本の効率性というのが増えていくし、究極には日本再興を達成したいなと思っているので。

ぜひ、フランクにお声がけいただけたらなと思っています。よろしくお願いします。

石橋:
ありがとうございます。

【投資基準】競合が多くても勝てる理由|リセ・クラフトバンク・カナリーに共通する成功の構造【Angel Bridge 河西 佑太郎 vol.02】

リセ:SME特化で切り開くリーガルテック市場

石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capital株式会社の石橋です。

今回も、Angel Bridge株式会社 代表パートナーの河西さんに引き続きご出演いただいているんですけれども、「なんで投資したんだっけ?シリーズ」というところで、この1本さえ見ればAngel Bridgeさんの投資思想全部わかりますみたいなところを、かつインターネットとかAIに聞いていただいても出てこないと。

河西さんたちしか知らないというか、そういうビューのお話を、お伺いできる範囲の限りでできるだけ深く、まずすぎるお話は後でカットできますので、この時点ではいろいろ聞いていければと思います。

早速ですね、まず1社目、社名で言うとこういう会社で、シンプルにこういう事業をやっていらっしゃって、こんな創業者の方で、というところからお話いただければと思いますが、お願いしてもよろしいでしょうか?

河西:
1社目は、株式会社リセというAIを使って契約書を簡単にチェックできるサービスをやっている会社です。

石橋:
分かりやすいですね。代表の方のお名前とか、どういう?やっぱりリーガル系というか法務畑の方だったんですか?

河西:
そうですね。代表は藤田さんという方で、女性の方なんですけども、西村あさひ法律事務所のパートナー弁護士までやられてからの起業ということなので、もう20年近いんじゃないですかね、やった上で創業したという、そんな方でございます。

石橋:
もともと河西さんとかAngel Bridgeさんとの出会いというのは、どういう彼らの事業ステータスで、どういう経緯で最終的には出資するに至るみたいなところで、流れはどんな感じだったんですか?

河西:
我々はシリーズAで4億円でリードをやっていまして、シリーズBでは追加で2億円の投資をしてということで、結果非常に伸びているということなんですけども。

会話自体は、プレシリーズAが終わったかどうかぐらいのところからお話をして、なので1年近くですかね、継続的にディスカッションする中で良いよねということでフルDDをして、リードでというような形で決まったという、そんな案件になります。

石橋:
ありがとうございます。先ほど1本目でも河西さんが、もうすでに顕在化しているマーケットであれば競合分析だとか、競合はこうだからこうだとかという戦略面がとても大事だってお話をいただいていたこと、僕はちょっと印象的だったんですけど、リセさんの相対しているマーケットは結構プレイヤーがいる認識なんですよね。

株式会社LegalOn Technologies(旧:株式会社LegalForce)さんしかり、GVA TECH株式会社さんしかり。リセさんとはもともとプレAの時にコミュニケーションが始まり、約1年間接点がある中で、当時の彼らは何が一番魅力的で、仮説の部分はどんな感じだったんですか?

大きな市場×優秀な起業家×独自ポジショニング

河西:
全般私が好きな事業、結構このパターン多いんですけども、まず大きな市場があると。

そこにめちゃくちゃ優秀で命かけてる起業家が切り込んでる。まずこれは多分2つの一番重要な要素なんですけども。

そこに加えて、独自のポジショニングというか、単純に大きな市場だったらA社とB社がどっちかが勝つということじゃなくて、市場をしっかり見る、セグメンテーションした時に、ここはA社だけどここはB社だよねみたいなのはすごくよくあることだと思っていて。

我々は事業をしっかり理解するのが基本的にすごく好きなので、それを見た上で、これは住み分けできるんだなと、ジャイアントとか先行者とか。そういうパターンは結構好きなんですよ。

リセさんで言うと、おっしゃるようにLegalOn Technologiesさんという巨大なスタートアップがいて、非常に大きな金額の資金調達をしていてと。一方でリセという会社がいて、こういうとこからスタートしておりますと。

石橋:
ある意味、後発にも見えなくはない感じですね。

河西:
そうですね。やっぱり大事だったのが、市場を見た時に、基本的にLegalOn Technologiesさんというのはエンタープライズ向けのサービスなんですよ。一方でリセというのはSME向けのサービスであると。

ポイントはAIを使った契約書のレビューのSaaSというものが、エンタープライズのニーズとSMEのニーズが違うかということなんですよね。

それをカスタマーインタビューなんかもしながら徹底的に理解しましたということなんですけども、私からしたら結構違うなというふうに思いまして。

エンタープライズとSMEでは法務ニーズが全く違う

河西:
というのは、そのエンタープライズ、大企業の法務部門は、例えば法学部出身でとか、基本的に法律がわかる方がしっかり前例なんかも含めて見ていますという、こういう市場であると。

一方でSMEの法務部といった時に、会社の規模にもよるんでしょうけど、総務と法務を兼任していますみたいな例がめちゃくちゃ多いのもそうじゃないですか。

これって完全に違うマーケットだと思っていて、あまり専門的なアドバイスを出されると逆に困ったりするわけじゃないですか。

SMEとエンタープライズで、これに関してはそんなにニーズが違わない、ペインが違わないよというパターンもあるし、この契約書のレビューに関しては結構違うというのが、仮説及びインタビューを通して感じたところでした。

これであれば、しっかりコアターゲットにフォーカスをしてプロダクト開発をすればですし、やっぱりSMEを取っていく取り方とエンタープライズを取っていく取り方は、営業・マーケティング1つ取っても違うので。

ここにフォーカスをすれば全然これはいけるだろうと思いましたし、市場としても十二分に大きいのでというところで、かつこの経営チームであれば最後までやりきるんだろうなと、こんなような感覚で投資をしたということです。

その辺りが自分なりに腹落ちしないと、投資として結構怖いですよね?近くですごく大きな方がいてということで、我々はそういうジャッジをしましたかね。

石橋:
結果、当時出資されてから、追加投資も踏まえて時間経たれてると思うんですけど、河西さんたちの仮説は当たっていますか?

河西:
仮説は当たったと思っています。

投資をしてから売り上げで言うと、2.5倍とかになって、バリュエーションもしっかり上がったうえでしっかりした金額の調達ができているということで、もちろんこれはビジネスなので際々のとこではぶつかる時はありますけれども、それはそれとして、ただ着々とそれぞれのマーケットで多分積み上げていかれるということなので、仮説は当たったのかなと思います。

石橋:
ご一緒する中で良いサプライズはあったりしたんですか?

要は、そこは良い意味で見極めきれなかったけど、めちゃめちゃ良いポイントがあったんだとか、その投資した後でめちゃめちゃ良いグッドニュースがサプライズ的に出てきたとかってあったりしたんですか?

河西:
やっぱりSMEのマーケットに行きたいプレイヤーは結構いるので、そういう意味で言うといろいろなプレイヤーさんから「一緒に組みましょう」みたいに言っていただくことがあって。

これはそういったプレイヤーと組んで売っていくというのが大前提にはなるんですけども、それにしても結構強い引き合いがあるなというのは良いサプライズだったのかなと思いますかね。

石橋:
そういうのも後押しがあって、今に至っていらっしゃるという感じなんですね。

河西:
そうですね。

石橋:
ありがとうございます。

ぜひ2社目についてもお伺いしていければと思うんですが、2社目はどんな会社さんになるんですか?

クラフトバンク:専門工事会社向けSaaSで建設業界に切り込む

河西:
2社目は、クラフトバンク株式会社という建設テックの会社でございまして。専門工事会社という、いわゆる鳶職さんとか、職人さんが10人・20人いらっしゃる会社さんは日本全国すごくたくさんあるんですよね。

そういった鳶職さん、職人さんが所属している会社さん向けに、ある種の経営効率を改善するようなSaaSを出しているという、そんな会社なんですよ。

石橋:
ではある意味、またSME向けのSaaSツールから始まっている会社さんですね。

河西:
おっしゃる通りですね。

もともとクラフトバンクは、さっきのプラットフォーム+SaaSの事例にもなると思うんですけども、案件のご紹介、要はマッチングみたいなサービスから市場に入っていまして、発注者と受注する人のマッチングプラットフォームみたいなところから、受注する下請けの方向けに、先ほど申し上げたようなSaaSというものを出すという二段構えなんです。

非常にこのSaaSのところがお客さんのペインに対して答えているという、こういうことですかね。

ポイントとなったのが、これもさっきと似ている話なんですけども、株式会社アンドパッドさんというメガベンチャーがいらっしゃるんですよ。

石橋:
確かに、分かりやすい。

アンドパッドとの差別化:元請けではなく下請けにフォーカス

河西:
そうなんですよ。

ただ、アンドパッドさんは基本的に下請けの会社さんというよりは元請けですよね。エンタープライズの方向けに施工管理のSaaSを出していてということで、ターゲット顧客が違うしプロダクトも違うというところで、これは結構違うマーケットかなというふうにジャッジをして。

一方で、このクラフトバンクがターゲットにしているようなSMEをどう攻略するかというのは、なかなか大変なことなわけですけれども。代表の、株式会社リクルートご出身の韓さんであれば、かなり現場に根付いたようなアプローチでできるかなというふうに思ってシリーズAで我々が5億円でリード投資をしたというのが2~3年くらい前ですかね。

石橋:
その後、ラウンドも重ねていらっしゃるんですか?

河西:
そうですね。その後もしっかりしたアップラウンドで調達ができそうというか、ほぼ見えているというところなんですけれども、我々としてはそこに追加で12億円ぐらいですかね。それこそ3号ファンドの方からも投資をして。(※2025年10月にシリーズBラウンドで38億円の資金調達を発表)

石橋:
Angel Bridgeさんのファンドは別に、1号、2号ファンドの投資先に対して3号からも追加投資ができるようになっているということですか?

河西:
できますね。もちろん諮問委員会という外部の委員会を挟んで、いわゆるファンド跨ぎというやつになるんですけども、救済投資ではないということであれば全然できるし、3号のリミテッド・パートナー投資家の方にも、2号で我々がしっかり投資をして、しっかりお付き合いがあって、経過観察をしている会社さんの中には、非常に大型の資金が必要でアクセルを踏んでいくという場合もあるので。

そこはむしろ積極的に投資をしていった方がファンドのリターンも安定するし、ということで当然諮問委員会を通してというところは一手間かかるんですけれども、それをした上でしっかり投資をしていくというのは、誰にとっても良いことではないかと思っているという感じですね。

石橋:
それで12億追加と。すごいな、でかいな。

ちなみに韓さんとの出会いはどんな感じなんですか?クラフトバンクさん、ちょっと特殊、記憶違いかもしれないですけど、マネジメントバイアウト(MBO)なのか、スピンアウト的な起業家さんでしたっけ?

河西:
そうですね。スピンアウトをしてクラフトバンクという会社を韓さんが設立をしてということで、設立をしてすぐのファンドレイズというよりは2回目ぐらいのタイミングで僕たちがご一緒しているということでしたかね。

これも、もう1年ぐらいかけて、前回ラウンドが発表された後だったかはちょっと覚えてないですけども、1年間ぐらい継続的なディスカッションを経て、ぜひということで両者でやりましょうという、そんな感じでしたかね。

1年間のディスカッションを経て5億円のリード投資へ

石橋:
3社目を聞く前なんですけど、1本目の時は2週間でコミットメントを決めるケースもあるとお話されていたじゃないですか。

とはいえ、今の出てきた2社は1年間ぐらいコミュニケーションとっていらっしゃった中で、単純に先方にファイナンスニーズがコミュニケーションを始めた時にはなかったというのがシンプルな要因なんですかね?

河西:
おっしゃる通りですね。我々も長々コミュニケーションしないといけないとは全く思っていなくて、長くコミュニケーションした結果として、次ファイナンスやるのでぜひ検討してくださいという中で、じゃあうちリード取りますよというような会話をしてという感じですかね。

石橋:
冷静に考えると、皆さん5億ですよ、5億。はじめましての人とか2週間後の人に、さすがに「はい、こんにちは。じゃあ5億円投資しましょう」みたいなふうに僕はなかなか想像ができないので。

やっぱりそういうコミュニケーションとかディスカッションの末に、スムーズに大きな金額を出資されるというのは当然あるんだろうなとは思いますね。

ぜひ3社目についてもお伺いしていければと思うんですけど、どちらの会社ですか?

カナリー:アプリ×SaaSで不動産業界全体のDXを狙う

河西:
3社目は、株式会社カナリーという不動産テックの会社でございまして、簡単に言うと、SUUMOさんの家探しアプリってあるじゃないですか、アプリとかウェブでサーチすると。

これと基本的に同じようなことをやっているんですよね、家探しという意味では。ただ、不動産業界の不動産管理会社だとか、仲介の会社さん向けへのSaaSも提供していて。

石橋:
河西さんパターンですね。

河西:
そうですね。家探しのプラットフォーム、家を探したい個人の方と賃貸の家を持っている仲介会社さん向けのプラットフォームですよね。

このプラットフォームから始めて、仲介会社さんのお客さんがいっぱいいるので、その仲介会社さんのペインに応えるよというSaaSも出し、さらにその上流の管理会社ですね。この管理会社というのはどの物件が空いてるとか空いてないとか、そういったところも含めて把握をしているわけなんですけども。

こういった管理会社さんもまだまだデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいないところで、こちら側にもSaaSを提供してということで、大きく言うと不動産業界全体のDXをやろうという流れの中で、家探しのプラットフォームから入っていてという、そんなことをやっている会社ですかね。

石橋:
好きですね。河西パターンと呼んでも過言じゃないぐらい。

本当に1本目の時にもお話いただいてましたけど、それがやっぱりフレームワークとして綺麗というふうに、Angel Bridgeさんとしては1つあるんですね。

河西:
そうですね。これは、たまたまそうだったというだけではあるんですけど、とはいえ、意外とメガベンチャーになりうる大きなスタートアップというのを見た時に、そのパターンが多いみたいな感じなんですよ。

カナリーさんに関しても、競合がどこかというとリクルートさんなんですね。

石橋:
そうですよね。SUUMOとかLIFULL HOME’Sとか名前が挙がってきますもんね。

アプリ最適化とSaaSでリクルートのイノベーションのジレンマを突く

河西:
やっぱりSUUMOが一番大きなプレイヤーで、という。

ただ、そのSUUMOさんは、売り上げで年間1,500億円とかなんですかね、おそらく。リクルートさんの投資家向け広報の資料を見ると。

でも、その10%取れたら150億円とかなんですよ。だからそれは大きなマーケットで。かつ、SUUMOさんは非常にアプリも含めて使い勝手が良いということだと理解しているんですけども、もともとこの家探しの話はウェブベースで発展していたわけなんですね。

石橋:
スマホが出てくる前からあるぐらいですもんね。

河西:
ウェブベースに特化したというのがそれ以外の会社含めてだったんですけども、カナリーはアプリにフォーカスして、やっぱり最近の若い方はアプリのほうがすごい使い勝手が良いみたいなところで。

ウェブベースのエンジニアとアプリベースのエンジニアは結構違うということで、必ずしもこの不動産テックは不動産業界なので、あまりテッキーじゃなかったりするんですよ。

そうすると必ずしもアプリ最適化できていないようなプレイヤーさんもいて、そこが1つのチャンスなんですよね。

そこにカナリー社が優れたテックでアプリに最適化した家探しを出しますというのはすごく理にかなっていて、そういう形で取っていっているし、リクルートさんは逆に言うと不動産業界のSaaSはやっていなくて、それはイノベーションのジレンマ的な感じじゃないかと個人的には思っていて。

なのでカナリーはSaaSもやることで業界の解像度を徹底的に上げ、結果として家探しの方にめちゃくちゃ鮮度の高い情報をお渡ししますというプレイヤーで、イノベーションのジレンマというか、業界最大手の方とは取り組みにくいというか、目指してる方向が違うみたいな話だと思うんですよね。

石橋:
最初はプラットフォーマーとしてはアプリかウェブベースかというところの差分だったもの、それが広がっていくと、SaaSが重層的に積み上がってくるとそこで取れるデータが存在するので、結果コンシューマーの方に返せる便益も全然変わってくる。

不動産のことを話し出すとキリがないような気もしますけど、不動産流通標準情報システム(REINS)ベースなのかそうじゃないのかみたいな世界線とかが待っているんでしょうね。

河西:
そうですね。これだけ大きな市場なので、どこか1社が取っていくということでもないし、だとするとスタートアップがしっかり一定領域を取っていくというのは、そうあるべきだろうなとは思いますし。

石橋:
ちなみにカナリーさんはどういう出会いで、いつぐらいに出資されたんですか?

河西:
カナリーさんは、プレシリーズAみたいな感じで。

石橋:
さっきの2社さんと比べると早いんですね。

河西:
そうですね。1~2年早いようなイメージじゃないですかね。出会いは、誰かのご紹介だったような気がしますけども、そこでお会いして。

不動産業界の先ほどの話ではないですけど、リクルートさんもいてなかなか厳しいというところも1つのジャッジだとは当然思うんですけども、ただそこに切り込んでやるんだぞということであれば、それは損を覚悟の上で支援しようかなという、そんな感じですかね。

リクルートが手掛ける領域は全てチャンスがある

石橋:
良いですね。今お話聞いていくと、先ほども自分の中で勝手に盛り上がって河西パターンみたいなことを言っていますけども。

改めてそこまで、1号・2号の投資先で成功事例ですとか成功パターンが見極められてくると、この領域のこれ空いてるよねとか、次この領域でもしこういうチャレンジする人いるんだったら絶対やった方が良いよねみたいなマーケット仮説なのか、すでに一部お持ちなんじゃないかなと想像してしまうんですけど、注目してるマーケットとかあったりするんですか?

河西:
例えば、リクルートさんがやっているところは全部チャンスがあると思っていまして。

ただ、既存プレイヤーだとアプローチしにくい、独自のアプローチで取り組んでるだとか、イノベーションのジレンマみたいなパターンが構造的にあるとかがすごく重要だと思うんですけれども、そのところは見ていますし。

いわゆるSaaSで大きな売り上げを上げているんだけれども、ここに対してもう少しコンパウンドみたいなところをうまく駆使してやれば、お客さんにとって非常に利便性の高いものが届けられるよとか、そういう目で見てはいますね。

そう考えると、結構いろいろなところにチャンスはあって。

普通に見ると、「ここは大手がやっているから難しいだろうな」と思いがちですけども、よく見るとそうでもなかったりとか、独特のポジショニングで、ターゲットしっかり決めて横に広がっていくとか、まさに戦略的な話ですけども、そういうのを考えていくと意外と作れる場所、市場は大きいなというのが思っていることで、よくこんなディスカッションを起業家の方とやったりしますかね。

シード期こそ中長期の戦略議論が価値を生む

石橋:
面白いな。最近、僕たち自身はシードファンドとしてやらせていただく中で、やっぱり河西さんにも適宜ご紹介をさせていただいているものの、シリーズA・Bを見ている投資家さんと起業家さんがそういうディスカッションをするだけでもすごく良いなと思っていて。

起業家さん自身が、どうしても起業家さんでシードフェーズは超売り上げ志向だったりとか、超顧客志向すぎて超近視眼的になっているケースがどうしてもあるので、その中で中長期の戦略論の議論だったりとか、どういうポテンシャルがあるよねというふうに今みたいにご整理いただくだけでも、起業家の方はとても価値があるのかなと思いますし。

場合によっては前段の2社の方とかであれば、先立ってコミュニケーションが走り始めて、半年・1年経ってエクイティニーズが顕在化した時に大きく出資をされているというケースかと思いますので。

ぜひこれ見ていただいている起業家の方は、3ヶ月・4ヶ月後にファイナンスだからそろそろAngel Bridgeさんに連絡しようではなくて、早い段階で。

河西:
そうですね。1年前ぐらいから。

石橋:
戦略の議論とかも含めてしていただくと、先ほどプチコンサルプロジェクトみたいなご支援もできるということをお話いただいていましたけど、そういうことができるようなキャピタリストの方もやはり少ないと思いますし。

でも、だからこそディスカッションをして視点とか視野を広げていただいた中で、徐々にまた事業進捗があってシリーズAなのかシリーズBなのか、本当にエクイティニーズが顕在化したところでご一緒するというのがめちゃ綺麗なんだろうなと思ったりもしますね。

投資はアートではなくサイエンス

河西:
そうですね。我々、投資はアートではなくサイエンスだと実は思っていまして。

石橋:
良いですね。

河西:
アート的に「良い感じがする」という感性も大事なんですけども、基本的にはファクトベースで、例えばプロダクトがしっかりプロダクトマーケットフィット(PMF)しているかみたいなのは、ファクトベースで確認しようと思えば確認できるし、起業家の方はどういう方だろうとレファレンスをとって、3人の方がだいたい同じことを言っていたら、これはファクトに近くなってくると思うんですよね。

だから、アート的な要素も残しつつ、なるべくファクトベースでしっかり市場の解像度を上げてとか、そのようなスタイルなので、いつでもどういうターゲットを攻めるべきか議論をさせてくださいというのも喜んで行うし、実際にやっていると、エンタープライズからも話が来た、SMEからも話が来たみたいな。

そうなると、じゃあ両方やろうかなと思うじゃないですか。最初にとりあえず両方やってみるのは良いし、センターピンを取るという意味でロゴが欲しいのであれば、エンタープライズから入っていくのはありだと思うんですけど。

結局、一番フォーカスする市場はエンタープライズなのかSMEなのかは結構大事だと思っていて、これをまんべんなく両方やるというのはスタートアップとして荷が重すぎるので、まずはここをやって、そこから染み出して、みたいなところは議論すると盛り上がるんですよね。

石橋:
ありがとうございます。

改めて、前回のインタビューでもそうですけど、成功事例も顕在化してきていることで、より河西さんたち、Angel Bridgeさんたちの戦略というのも非常に洗練されてきているように思いますし、それが裏打ちされて、ファンドレイズも一般的にVCファンドがレイズする期間よりも短い期間で、250億円前後ぐらい集まっていらっしゃるというお話を聞くと、スマートだなと素直に思います。

ぜひ起業家の方は、これからめちゃめちゃ積極的に投資されていくフェーズだと思いますので、ある意味今はチャンスだと思いますので、ぜひコンタクトを取っていただければなと思っています。

全2回にわたりまして、河西さんご出演ありがとうございます。

河西:
ありがとうございました。