【YJキャピタル】設立者が語るVCとしての独立とキャリア|スタートアップ投資TV
◯戸祭陽介 株式会社Adlib Tech Ventures-代表取締役社長-
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公式HP▶︎https://adlib-tech.co.jp/
1992年新卒で大和企業投資入社。
2012年ヤフー子会社のCVC、YJキャピタルを責任者として企画・設立し、 2017年に副社長就任。
独立系VCとしてAdlib Tech Venturesを設立し、代表取締役社長を務める。
新卒でVC業界へ——平成4年、わずか3社の選択肢
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。
今回は、業界の人であれば見た瞬間に誰が出ているのか分かる方も多いと思うのですが、Adlib Tech Ventures代表取締役社長の戸祭さんにお越しいただいておりますので、戸祭さん今回からよろしくお願いします。
戸祭:
よろしくお願いいたします。
石橋:
僕自身は勝手ながら一方的に前職時代・前々職時代からも存じ上げてはいたんですけれども、改めて戸祭さんがネット上で調べてもめちゃくちゃいろんな経験してるなっていうのはすごく分かるので、ファーストキャリアからお伺いしていきたいなと思っておりまして。
もともといつぐらいからベンチャーキャピタル(VC)業界にいらっしゃったんですか?
戸祭:
新卒で、平成4年に大和企業投資、当時は日本インベストメント・ファイナンスという名前だったんですが、そちらに入社して。
石橋:
僕、平成3年生まれなので、丸30年間VCやられてるということですよね?
戸祭:
そうですね。全部VCってわけじゃないんですけど、ベンチャーに関わるような仕事にずっと30年くらい就いていました。
石橋:
なんで新卒から?しかも今では増えてきてるような傾向もありますけど、当時で言うとだいぶユニークな選択肢だったって感じですよね?
戸祭:
そうですね。新卒を募集してるVCが多分当時3社ぐらいしかないような状態で、VC全部でも多分5、6社しかなかったと思いますね。
石橋:
そもそも新卒でVCになろうって思って門戸を叩かれたんですか?
戸祭:
そうです。
石橋:
ちなみになんでだったんですか?
戸祭:
若者にありがちな淡い幻想を抱いていたんですが、自分が経営者と一緒に会社を大きくするみたいな仕事ができたら面白そうだし、自分も成長していけるんじゃないかなみたいなことを考えてVCに志望しました。
石橋:
なかなか当時で言うと一般的な職種ではないのかなと思ってるんですけど、VC業というのがあるっていうのは何で最初認知したんですか?
戸祭:
当時は就職売り手市場だったので、リクルートがやってるような「こんな会社ありますよ」的なパンフの中にあったんです。
石橋:
そういう感じなんですね。新卒からVCに入られて、その中でどういう変遷を辿って、かなり分厚い経験になると思うんですけど、最初はVCの1キャピタリストとしてキャリアが始まっていったってことですよね?
ジョブローテーションで学んだVC業務の全体像
戸祭:
そうですね。今はなんとなくブティック型のVCが多いんですけど、ジョブローテーションみたいな感じで、私の場合は新卒で入って最初は審査部ですね。
石橋:
審査部にはどのくらいいらっしゃったんですか?
戸祭:
実際半年くらいで、その後バブルが崩壊したあおりを受けて、大和証券に出向になって、そこで主幹事営業とかをやっていた。そこは2年くらいですね。
戻ってきて投資部、投資事業組合の事務局っていうところをやりまして、それで一通りVCの業務の流れを抑えられたので、その後のCVCを作るみたいなところに繋がってるって感じです。
石橋:
大和さんの後は別のVCさんに移動されるんですか?
戸祭:
大和企業投資からあおぞら銀行ですね。当時ソフトバンクグループに買収されていまして、ベンチャー投資やるぞみたいな話になって、ベンチャー投資を支援するみたいな感じで出向であおぞら銀行に行きました。
そこのベンチャー投資の業務フローみたいなやつを設計して整えたりみたいなことをやったりとか、ベンチャー投資するときのデューデリのポイントとか、そういったものをいろいろレクチャーしたりとかしながら数年いたんですけど、ぶっちゃけ大和企業投資よりもあおぞら銀行の方が結構面白かったんで、そっちで転籍してっていうような形ですね。
石橋:
あおぞら銀行さんの中では、そこもキャピタリストとしてやられていた?
戸祭:
企画部門とキャピタリストを行き来しながらみたいな。
石橋:
プロフィールを拝見していくと、事業会社サイドというか、実際現場にも入り込んでいたみたいなお話があったのかなと思うんですけど、そのあおぞら銀行さん時代に、まさに投資先に行かれてたんですか?
戸祭:
あおぞら銀行の時には実は2年ほどバイアウトファンドに出向してまして、1年バイアウトファンドでソーシングとかデューデリとかやって、もう1年は投資先の金属機械部品加工業の経営企画とかやっておりました。
石橋:
そこからまた出向したけど戻ってこられて、結構長くあおぞら銀行さんにはいらっしゃったんですか?
戸祭:
そうですね。多分5、6年いたんだと思います。
5%ルールの壁を超えて——Yahoo! JAPANへの転身
石橋:
多分次もまたVC部門的なところの立ち上げというか、いろんなところでVC経験を積んでるようなキャリアなのかなと思うんですけど、なんでまた次に転職されようみたいな感じになったんですか?
戸祭:
2つありまして。1つは5%ルールっていうのがあって、そうすると会社の中に入っていけない、マイノリティだからっていうのがありまして。そこが自分としては入社当時の目論見というか、やりたいことっていうことで、起業家と一緒に会社を大きくしたいみたいな思いがあって、それが叶わないなっていうのと、景気的に怪しいところもあってですね。
このままあおぞら銀行にいて、仮にVC部門が閉鎖された時に、完全に行き場ないなって思ったんで、違うスキルセットも磨きたいなと思って、転職ということで。
石橋:
それでどちらに行かれたんですか?
戸祭:
それでYahoo! に行きました。
石橋:
Yahoo!さんの中では、それこそCVCの立ち上げみたいなことから始まったんですか?
戸祭:
Yahoo!は最初はコーポレート部門で、企業戦略本部というところなんですけども、合併や買収とかコーポレートサイドでサポートするセクションなんですけれども、そこで主にベンチャー系の案件とかを中心に回してました。
あとは投資先の管理とか、マーケットリサーチとか、経企にあるような雑務みたいなところをやってました。
YJキャピタル立ち上げ——小澤隆生氏との出会い
石橋:
そこから、戸祭さんが中心になって、YJキャピタル(現:Z Venture Capital)さんが作られていくという流れになっていくんですか?
戸祭:
そうですね。私が入社した時は井上さんという素晴らしい社長だったんですけども、井上さんは投資で稼ぐんじゃなくて、事業で稼ごうっていう人なんで、あんまり投資は積極的ではなかったんですけど。
宮坂さんに社長が変わったタイミングで、孫さんの後押しとかもあったと思うんですけども、突然GREEの最高財務責任者(CFO)をやってる大矢さんが、非常にぶっきらぼうな人で、ぼそっと「ファンド作りたいんだけど」とか言われてですね。
「ファンドって言われてもな」みたいな、「何やりたいんだよ」みたいな話でいろいろと聞いていくとVC作りたいっていうことだったんで、YJキャピタルってやつを企画して。僕しか分かる人間がいなかったので、企画からフローまで全部作ったところで、川邊さんがですね、小澤さんを引っ張ってきまして。
作ったのは僕なんですけど、スタート時点では小澤さんと一緒にスタートさせていただいたという感じです。
石橋:
当時でいうとどんなチームの組み合わせだったんですか?全然違うそれぞれの畑で、いいチームアップだったんですか?
戸祭:
めちゃくちゃ良くて、僕がコーポレートとか金融とかにもいたので、土台のところを作って、小澤さんがネットワークとベンチャーへのサポートをやって、というところです。
小澤さんのそばでいろいろと学ぶところがあって、今まで銀行にいたので、銀行の感覚とかと小澤さんのその感覚っていうのの違いっていうのがすごく分かって、めちゃくちゃ勉強になりましたね。
小澤隆生氏から学んだ「徹底力」の真髄
石橋:
ちなみに、その時のYJキャピタルさん時代で一緒に作っていったプロセスの中で、いまだに残っている自分の中の経験やノウハウは振り返るとあられますか?
戸祭:
YJキャピタルというよりも小澤さんと話している中で「徹底力」と小澤さんがよく言うんですけど、結局同じことをやっていても、徹底してやり切れば勝てるというシンプルな考え方なんですけど。小澤さんの話している徹底力と、僕らが考えている徹底の仕方のレベルが全然違う。
当時、小澤さんが楽天球団を立ち上げていて、それを黒字にするというところで、最初にアメリカの球団を見に行くわけですよね。そこで食事をするとか、いろんなサービスとかを日本に持ち込んだりして、黒字にしてるんですけど、日本の球界とかの人間の常識だったら、全然NGなわけですよ。
そういう常識にとらわれないし、他の現場とかをフットワーク軽く見に行くし、みたいな。そういう動き方ですかね。
あと印象に残っているのは、起業家を育成するプログラムみたいなやつを小澤さんが企画してやってたことなんですけど、そこの講師の方で、国連で紛争の仲裁とかやってる方がいたんですけども、その紛争を仲裁するときにまず最初に自分が交渉権を持っている人間だというのを分からせるために何か見せるらしいんですよ。例えば「あそこを爆破する」とか。
石橋:
すごいですね。「影響力があるんだぞ」というのを…
戸祭:
そうですね。爆破して見せるまで普通やらないじゃないですか。そういうところの徹底力とか、あと最後に交渉したときに机を挟むんじゃなくて、相手サイドに回って後ろから抱きしめるくらいまでやる、みたいな話をしてて。
「分かるけどそこまでやれないよな」なんて思うんですけど、「そこが徹底力の差だよね」みたいなことを小澤さんがおっしゃっていて、自分の認識とか全然違うんだなってすごく勉強になりました。
独立への挑戦——1年のファンドレイズと挫折
石橋:
今まででいうと、様々なVCさんとかで経験積まれてると思うんですけど、Yahoo!グループっていうところに一番長くご在籍をされてらっしゃったんですかね。
戸祭:
そうですね。
石橋:
そこから退職されて次のチャレンジされていかれると思うんですけど、どういう流れでなっていかれたんですか?
戸祭:
ある程度トラックレコードがたまってきて、スケベ心を出して自分でちょっと挑戦してみたいと思って、独立系のVCを作ろうと思ってファンドレイズを1年くらいやりました。
その際にいろんなコンサル業みたいな依頼も来たので、そこでベンチャーのコンサルとか、事業計画作ったりとかいろいろやりながら1年くらい過ごしまして、その時の経験っていうのが、今のVCのベンチャーのサポートとかに結構役立ってますね。
石橋:
コンサルとかをやられながらファンドレイズして、最終的にはファンド化しなかったんですか?
戸祭:
私の方が体調を崩したようなところもあって、うまく実現しなくて、それで伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(ITV)さんにお世話になることになったというような形になります。
石橋:
最終的にはITVさんに約2年間在籍でしたっけ?
戸祭:
そうですね。
Adlib Tech Ventures設立——コロナ禍での再チャレンジ
石橋:
今回Adlib Techさんとして独立をするって感じなんですね。その2年を経て再チャレンジしようと思ったのって、改めてどういう背景だったんですか?
戸祭:
コロナもあって、ITVでなかなか投資を進めることができなかったのと、ITVさんの投資方針と、私がやりたい投資方針と、少し違いが見えてきたので、それを機に改めてスタートしようかなと思って、こういった形になりました。
でも、ITVさんを辞めてから半年弱ぐらいは、またファンドレイズについて考えてみたりとか、コンサルしながらとか、いろいろ考えた上で、今回の形に辿り着いた感じです。
石橋:
戸祭さんのトラックレコードがあっても、ファンドレイズは難しいんですか?
戸祭:
キャピタリストの皆さんにはよくよくお伝えしたいと思いますけど、投資をするスキルとお金を集めてくるスキルは完全に別です。両方やられているキャピタリストは本当にスーパーマンみたいな人たちで、尊敬します。
独立を目指すキャピタリストへ——2年の準備期間が必要
石橋:
お金を集めることと、実際に投資をすることが違うというお話をまさにいただきましたけど、戸祭さんが集める側をやっていた中で、これから独立を考えているキャピタリストの方もいらっしゃると思うので、どういうところが決定的に違うのかというところ、どういうふうに独立するなら準備しておくべきだみたいなところもお話いただけると嬉しいんですが、いかがでしょうか?
戸祭:
ファーストファンドはなかなかトラックレコードとかで評価してもらえないので、信頼関係とかを作って人間として投資してもらうみたいなことが必要なんですね。
例えば3ヶ月前にたまたま会った人とかに1億投資してくださいって言ってもなかなか出してもらえないので、やっぱり時間をかけて「この人は信用できるし、この人と一緒に仕事したいので、ぜひこの人に出資してみよう」って思わせるぐらいのレベルの人間関係を時間をかけて構築しないと難しいと思っていて。
多分2年くらいかけてやらないとなかなか構築できないんじゃないかなとは思うので、そのくらいの準備をしっかりした上で独立に踏み切った方がいいんじゃないかなと思うところです。
「袈裟斬り戸祭」——思ったことをズバッと言う人柄
石橋:
新卒の頃からいかにしてAdlib Techさんに辿り着くのかってところはお伺いしてこれたんですけど、戸祭さんご自身のキャラクターでいうと、なかなか見えてこないというか。コミュニケーションするんだったら、「覚えておいたほうがいいぞ」みたいなことってあるんですか?
戸祭:
にこやかに、朗らかに接するタイプであるんですけれども、思ったことをそのまま口に出す傾向がありまして。
あるキャピタルのパートナーからは「戸祭は全く空気が読めない」とか言われていることもありますし、自分でも自覚してますけども、それは別に悪い意味ではなくて評するとという話ですね。別のキャピタルの役員からは、ベンチャーが何かを言ってもズバッと切っちゃうから「お前は袈裟斬り戸祭だ」とか言われたりとかですね。
タイプとしては裸の王様で言うと「王様は裸だ」って言っちゃう子供みたいな感じで、ちょっとズバッと行っちゃうところがあるので、傷つけてしまったりしていることもあるかもしれないですけど、もし傷ついていた人がいたら申し訳ございません。
石橋:
戸祭さんに今日のお話聞いていただいて、面談とかしてもらいたいなっていう場合って、普通にどういう経由でお連絡するのがいいんですか?
戸祭:
FacebookのMessengerでいただくのが一番いいですね。
石橋:
概要欄の方に戸祭さんのFacebookのURLを記載させていただいておりますので、おそらくご面談していただくと場合によってはズバッとコメントが出てくるかも。
戸祭:
そうですね。ちょっと言い訳しておくと、やっぱり会ったからには役に立ちたいとすごく思ってて、1つでも気づいてもらえたらいいなと思う気持ちがちょっと強くて、それで思わず思ったこととか気になったところを全部指摘してしまうということなので、「本当にごめんなさい」って感じですかね。
石橋:
ありがとうございます。そこを良い意味でご認識いただいた上でご面談していただくと、良い意味で相性が良くなるのかなとは思っておりますので、ぜひ気軽にご連絡していただけるといいのかなと思っております。
次回はですね、Adlib Tech Venturesさんについていろいろまた戸祭さんに伺っていきたいと思っておりますので、改めて次回もよろしくお願いいたします。
戸祭:
お願いいたします。
【投資額10億】元Yahoo ITプロが設立した最新投資会社の全容|スタートアップ投資TV
ITコンサル100%子会社という独自の座組
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。今回も、前回に引き続き、Adlib Tech Ventures代表取締役社長の戸祭さんに来ていただいておりますので、今回もよろしくお願いいたします。
戸祭:
よろしくお願いいたします。
石橋:
前回、戸祭さんがそもそもどういうキャラクターなのかとか、どういうご経歴をもっていらっしゃるのか、みたいなところをお伺いしてまいりましたので、改めて今回、代表を務めていらっしゃるAdlib Tech Venturesさんについてお伺いしていきたいと思っているんですけれども。
先ほど事前トークというか撮影していない場面で、ユニークというか変わった座組で投資業をやられていらっしゃると思うんですけれども、改めてどういう座組でAdlib Techさんをやられていらっしゃるか教えていただいてもよろしいでしょうか?
戸祭:
Adlib Tech Venturesの親会社がDirbatoというITコンサルの会社になります。私がいろいろとプラプラしている時にとあるご縁でDirbatoの金山と知り合うことになりまして、ベンチャー投資がやりたいという話をいただきました。
話をする中で「この人とだったらぜひ一緒にやってみたいな」と思うところがありまして今回の形になっています。
戸祭:
Adlib Tech VenturesはDirbatoの100%子会社という形で、今は本当にシンプルに投資だけできるビークルということで設計してます。なので親会社からお金を借りてAdlib Tech Venturesが投資するというようなスキームでやっております。
石橋:
いわゆるファンド化はせずに今のところはやってるっていう感じなんですか?
戸祭:
そうですね。ファンドにするのは理由がありまして、1つは意思決定を親会社の組織から切り離して軽くするというところと、もう1つは当面の投資資金の確保なんですけれども。
Adlib Tech Venturesの場合、意思決定は私と金山社長の2人で投資委員会を構成してますので、全く自由ですし、お金の方も金山社長と大体3年で10億円ぐらい投資しましょうという形で握っております。
突然社長の気が変わらない限りはなくなることはないということなので、特にファンドにする必要っていうのはなくやっています。
オールステージ対応、チケットサイズは1000万円から1.5億円
石橋:
だいたい10億円ぐらいのサイズ感だとお話がございましたが、そうなると投資対象としてはどういうラウンドだったり、どういう規模感の投資をするみたいなところをお伺いしてもよろしいでしょうか?
戸祭:
ステージ的にはオールステージで対応してまして、金額ベースでは均等で、件数ベースではレイターが少なくてシードが一番多いみたいな形のポートフォリオを組むようにしてます。
石橋:
大体1社でどのくらいのチケットサイズでやることが多いですか?
戸祭:
大きいやつだと1億円くらいを想定してますね。レイターとかだと1億円とか1.5億円ぐらいまでいけるんじゃないかなと思ってます。シードだったら1000万円くらいからかなと思ってますね。
石橋:
親会社があられるというお話がございましたが、投資先のマーケットやビジネスモデルにこだわりはあるのでしょうか?
戸祭:
一応、IT領域でやっていますが、それは親会社がITコンサルであるということと、私がやはりYahoo! に10年強おりましたので、ITに関してはそれなりの知見がある強い領域でやろうかな、ということがありますね。
投資検討は2〜3ヶ月前から、宿題への対応が鍵
石橋:
ちなみに先ほどお二人で基本的には投資委員会というか、投資の意思決定していらっしゃるというお話がございましたが、Adlib Tech Venturesさんに出資してもらいたいなって思った場合、どのくらい前から起業家の方とコミュニケーションをするのが良かったりしますでしょうか?
戸祭:
僕らのデューデのやり方とかを考えると、早ければいくらでもできるんですけど、できれば2、3ヶ月前に一度お声掛けいただいて、「大体こんなビジネスだよ」っていうのを教えていただいた中で、先ほど申しましたけど、絶対僕が何か言うんですよ。
「こういうところって大丈夫なんですか」とか。そこをどういうふうに良くしていくのかっていうところを結構見ていて、それの改善度合いとか、「ここがこういうふうに良くなるっていうのが見えるんだったらいいよね」みたいな判断をすることが多いですね。
石橋:
なるほど。基本的には複数回コミュニケーションを取りつつ、持ち帰っていただく宿題みたいなところをどういうふうに切り返してくるかみたいなところもすごく大事って感じですね。
戸祭:
そうですね。例えば最初に投資した会社はLexiっていう会社なんですけど、初めて相談を受けた時は親会社の一部門だったんですね。
「そもそも親会社の一部門じゃ投資できないじゃん」みたいな話をしていたら、マネジメント・バイアウトしてきたんですね。システムとかもある程度作られていたので、そこまで気合いを入れてやるんだったら、「やっぱサポートしようかな」っていうところはありましたよね。
石橋:
基本的にはLexiさんもそうですけど、いわゆるリード投資をメインにされてるんですか?
戸祭:
特にリードにはこだわってなくて、なんといってもできたばっかりの弱小VCなので、リードできるところはやろうと思ってまして、今だとその最初のLexiさんと3番目に投資しCo-Growthさんはリードということで、社長といろいろと情報交換とか意見交換しながら進めてる感じですね。
2番目のところはマイノリティなので、それでもたまに相談とか来て全然受けてますけど、定期的にガッツリ入ってやるって話にはなってないですね。
石橋:
割と支援の方法の幅も広い感じなんですね?
戸祭:
ご希望に合わせてなんですけども、やっぱりシードの方は私の知見を何かアドバイス的にサポートした方がいい部分が多いので、そこは頻繁にいろいろとコミュニケーションを取るようにはしてますね。
アクセラレーター、スタジオ、外部LP募集も視野に
石橋:
今後、そういう起業家の方々に向けて、前職ではアクセラレータープログラム等もやっていらっしゃったと思うんですけども、Facebookの投稿では、戸祭さんが今の投資をしているビークルの状態で、「素うどん」みたいな表現をしていらっしゃったかなと思うんですが、今後いろいろトッピングを入れていくというか、いろいろ拡張していくようなイメージでデザインされていらっしゃるんですか?
戸祭:
そうですね。6月に作ったばっかりなので、まずは一番基盤になる投資事業をシンプルに立ち上げて、早く回そうということで、デットみたいな形でやりまして、投資してますけども、その後は本当に自分がやりたいことを、親会社の社長と相談しながら載せていこうと思ってます。
やっぱり入社した時の志で、起業家と一緒にその会社を大きくしていきたいという思いがあるので、それを実現するためのいろんな可能性っていうのは考えてますね。
戸祭:
だから実現するかどうかわかんなくて、僕が勝手に考えてるだけですけども、当然アクセラもやってみたいですし、できればスタートアップスタジオみたいな感じで作っていったりとかもしてみたいですし、もう少し規模を大きくするんであれば、例えば外部からのリミテッド・パートナーを募るみたいな形とかもやってみたいなとは思いますね。
石橋:
戸祭さんだからこそ広くいろいろできちゃうみたいな話ですもんね。
戸祭:
そうですね。やろうと思えばできるかなとは思ってますね。
CFO・経営企画視点でのハンズオン支援が強み
石橋:
改めて、今既に3社、6月に作られてから投資されていらっしゃるかと思いますが、いわゆるハンズオンとかハンズイフとかハンズオフなどあると思いますが、どういうふうに支援のスタイルを使い分けていらっしゃったり、もし支援していらっしゃるならばどういうような体制とかどういうような内容でやられていらっしゃるんでしょうか?
戸祭:
個別なんですけども、最初にLexiに関して言うと、まずはシードだったので、やらなきゃいけないタスクをシンプルにまとめて、それを経営会議的に見るために何の数字をモニタリングするのかっていう表を作って、それに対してレポーティングもらいながら、その変化とかに対して「こういう施策をしていった方がいいよねとか」、バーンレートが結構デカいのでバーンレートを小さくするために「ここの部分をこういうふうな形に変えよう」みたいな話とか、やっぱりCFOっぽいですよね。そういうことをメインにやってますね。
あとはYahoo! にいたので広告戦略とか、あとユーザーエクスペリエンス(UX)ですね、これもYahoo! にいたのでUXとかの改善とかですね、そういったところとかまでいろいろと相談しながら進めています。それはかなり深い例で、当然ニーズがあるからやってますけども。
2社目のところは社長からMessengerとかで、「これ相談させてください」とか来たときに話すのと、投資家ミーティングみたいなやつがあるんで、そこでいろいろツッコミを入れてる感じですかね。
石橋:
本当に柔軟にやっていらっしゃるって感じなんですか?
戸祭:
そうですね。3件目も例えば利用規約が「この辺の権利をカバーしてないんじゃない」っていう話をしたりとか、あと「価格体系とか本質的なサービスの価値っていうのがここにあるから、この部分をもっとアピールして次のファイナンスを進めていきましょう」とか。
やっぱりいろいろやりすぎてて何やってるのかよくわかんないですね。
石橋:
今でいうと立ち上げ期だからこそ幅広にというか、チャレンジされてるっていうところなんですかね?
戸祭:
そうですね。支援のスタイルとしてはCFOとか経営企画みたいな切り口で経営をサポートするみたいなところがメインになってくるかなとは思います。
忖度なしのコミュニケーションを歓迎
石橋:
ありがとうございます。改めてどういう方針でやっていらっしゃるのかが分かってきたので、投資検討をしてもらいたいなみたいな方はぜひ概要欄の方に戸祭さんのFacebookのURLを記載させていただいておりますので、そちらからぜひご連絡いただければと思います。
第1弾見ていただいている方は知っていただいているかもしれませんが、割とオープンにご意見もディスカッションもしているスタンスだというふうなお話も伺っておりますので、ぜひカジュアルにご連絡していただきながら忖度なく意見を言い合うと一番いいのかなとは思っています。
戸祭:
そうですね。自分は忖度しないでバンバン言うんで、逆に忖度しないでバンバン言われてもなんとも思わないんですよ。そこは全然OKですね。
石橋:
ありがとうございます。改めて戸祭さん第2弾もご出演いただきましてありがとうございます。
戸祭:
ありがとうございました。
【VCが必ず見る】残念な企業が見落としてる経営のキホン|スタートアップ投資TV
30年で約20社のIPO実績を支える「分岐点」の見極め
石橋:
はい、皆さんこんにちは。スタートアップ投資TV、Gazelle Capitalの石橋です。今回も、前回に引き続き、Adlib Tech Venturesの戸祭さんに来ていただいておりますので、今回もよろしくお願いいたします。
戸祭:
よろしくお願いします。
石橋:
1本目で戸祭さんの今までの新卒VCからの経歴や、2本目でAdlib Tech Venturesさんの投資方針をお伺いしてまいりました。
30年のVC人生の中の約20社近くが既に新規公開株式(IPO)されているというお話も伺いましたので、改めてどういうところを戸祭さんの投資イズムとして大事にしていらっしゃるのか、いろいろお伺いしていきたいと思っています。
戸祭さんはどういうところを大事にして投資をしてきているから、それだけIPO実績をお持ちなのか、そういうところの見極めができていると、ご自身ではどう整理されていらっしゃるんですか?
戸祭:
どう言っていいのかというと、なかなかモヤっとしているんですけれども、損益分岐点を越えていけるかっていうところを非常に重視してますね。違う言い方で言うとキャッシュフローがちゃんと出せるかとか、そういうところですね。
それが今はできてなくても将来出せるっていうふうに思えれば全然成長はしていくので、それがIPO率が高い方なんで、そういったところにはつながってるのかなとは思ってますね。
石橋:
逆にいうと赤字先行とか、それ自体は別に問題ないっていうふうなイメージなんですか?
戸祭:
そうですね。
銀行員時代とバイアウト経験が生んだ独自の投資視点
石橋:
そこは銀行員時代の経験とかっていうのも、やっぱりそういうのが生きてきてるって感じですか?
戸祭:
そうですね。銀行員時代にキャッシュフローの概念を死ぬほど叩き込まれまして、めちゃくちゃ苦労したんですけど、それが役に立ってます。
あと、バイアウトですかね。バイアウトは本当にキャッシュフロー重視なんで、そこの経験で、ベンチャーとバイアウトって延長線上にあると思うんですよ。要はベンチャーはマイノリティだけど、だんだんシェアを増やしていくとマジョリティになってバイアウトになっていくし、ベンチャーの支援もだんだん濃くしていくと最終的にバイアウトファンドになる。だからJAFCOとか両方やったりしてると思うんですよね。
ただ、同じ延長線上にあるのにバイアウトのデューデリとベンチャーのデューデリとかが違いすぎてて、少し寄せたところで自分は見てるって感じですね。
石橋:
それがまさにキャッシュフローというか、ビジネスとして成り立っているのかどうかっていうところが一番重要って感じですね。
戸祭:
逆に今のスタートアップのシード期とかのビジネスモデルを見ると、どう考えてもビジネスとして成立させるのは無理じゃね、みたいなやつが結構あってですね。
そういったところはディスカッションしていろいろピボットしてみたり、マネタイズの仕方を変えてみたりみたいなところはよくお話ししているところですし、せっかくやるんだったら成功率が高い形でやってもらって、みんなに成功してほしいと思っているので、そういうところはよく見てお話ししているようにしていますね。
サムシングホールディングス、ユーザベース、THECOO――キャッシュフロー重視の投資事例
石橋:
なるほどですね。今までIPO事例が多数あられると思うんですけど、その中で戸祭さんの、まさにイズムを象徴しているような投資先の事例とかってどういったところが挙げられるんでしょうか?
戸祭:
いくつかあって、古いところだとあまりご存知ないと思うんですけど、サムシングホールディングスっていうところがありまして、それ以外だとユーザベースとかTHECOOとか、あの辺の会社さんは非常にキャッシュフローベースでデューデリをさせていただいてましたね。
石橋:
簡単にそれぞれどういう特徴があったりしたのでしょうか?
戸祭:
サムシングホールディングスは面白くて、地盤検査の会社なんですけども、トラックと地盤検査機のワンセットと、それを担当する何人かに投資すると、こういう形で収益が上がるっていうものを積み上げた事業計画になってたんですね。
それを実際にやってみると、ほぼその通りに行くっていうのがあって、先行して投資が出て、それが利益で回収されていくみたいなモデルを実際の状況として目の当たりにしたっていうのはなかなか面白かったですね。
ユーザベースとかは、当時NewsPicksがあって、NewsPicksとユーザベースのデータベースがあって。
石橋:
SPEEDAですね。
戸祭:
SPEEDAの方が、当時あんまりユニットエコノミクス概念はなかったですけど、自分の中には結構そういう考え方を持っていて、ユーザベースを見ながら、大体こういう感じだからどんどん利益出てくるねっていうのが分かってる中で、利益が出るからNewsPicksに先行投資してても、「多分これは利益が出るような形になるだろう」っていうような分析。
THECOOも一緒で、ファンコミュニティのサービスのFaniconというのと、インフルエンサーマーケティングみたいな部門があって、「インフルエンサーマーケティングの方がしっかり積み上がっているから、ファンコミュニティの方に投資していっても、多分キャッシュフロー的には大丈夫だろう」みたいなところを見たりとかですね。
シードから全ステージで「ビジネスモデルの成立性」を問う
石橋:
ちなみにそういうのって、今のAdlibさんはオールステージでやってらっしゃると思うんですけど、シードの頃からも「これだと成り立たないだろうから」みたいな、どの程度の規模のスタートアップになるとそういう議論ってよりしやすいとかってありますか?それとも全然関係なく、どのステージでもできる?
戸祭:
関係なくですね。ここがちょっとうまく伝わるかどうかは分かんないですけど、VCの難しいところで、数字が完璧に出てれば簡単にわかりますよね。でも絶対出てないんですよ。
だから、ビジネスモデルを体現してるのが損益計算書(PL)なんですね。なので、ビジネスモデルを分析すると、大体これを運用するのに人が何人くらいかかったりとか、大体このくらいのPCとかシステムが必要だったりっていう感覚っていうのがあるから。
このくらいの感覚で今出てるPLの単価とか売り上げとかと組み合わせると、「これ無理じゃね」っていうやつが結構ある。そういうとこで見てますね。
石橋:
割とシードとかの頃からも、ご面談ベースで、さっき忖度なくお話するっておっしゃってましたけど、そういうところを突っ込んで議論されていくって感じなんですか?
戸祭:
そうですね。
石橋:
やっぱりそういう意味で言うと、忖度なく言ってくれてブラッシュアップできる方が、心強いですよね?
戸祭:
そう信じてます。それしかできないという説もありますけど。
成功率を高めるために、忖度なくフィードバックする
石橋:
ありがとうございます。僕自身もすごく改めて戸祭さんご自身のことがよく分かってきたなと思いますし、投資事業の方でもご一緒できるように。
戸祭:
ぜひ、ありがとうございます。
石橋:
ありがとうございます。概要欄の方にですね、変わらず戸祭さんのFacebookのURLを記載させていただいておりますので、ぜひそちらの方からご連絡をいただいてですね。
シードの頃からも、そもそもこれビジネスモデルとしてどうなんだっけ、成り立つんだっけ、キャッシュフローどうなんだっけというところを、突っ込んでフィードバックいただきながら、一緒に磨き込みをお付き合いいただけるような方なのかなと思っております。
ぜひご連絡いただければなと思っております。それでは全3回にわたりまして戸祭さん、最後までありがとうございました。
戸祭:
どうもありがとうございました。
