「自社に合った資金調達方法がわからない」「VCと融資のどちらを優先すべきか判断できない」「今が動くべきタイミングなのか迷っている」といった悩みを抱える起業家の方は少なくありません。
事業のステージや特性に合わない手段を選ぶと、想定より低い企業価値での出資を受け入れることになったり、過度な株式の放出や厳しい契約条件を求められたりする可能性があります。
本記事では、ベンチャー企業が活用できる6つの資金調達方法や成長段階に応じた選び方、資金調達を成功させるために実践すべきことなどを解説します。

「自社に合う資金調達方法がわからない」「そもそも誰に相談すればいいのかわからない」とお悩みではありませんか。Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」では、御社のステージに合った調達プランをご提案しています。
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ベンチャー企業の事業成長に資金調達が必要な理由

ベンチャー企業の成長に資金調達が必要な背景には、初期赤字を前提とした急成長モデルの特性と、国内スタートアップ市場で選別投資が進んでいる状況があります。
自社が外部資金を必要とする段階にあるかを見極めたうえで、資金調達方法を検討しましょう。
ベンチャー企業は”初期赤字”を想定して急成長を目指すビジネスモデル
多くの中小企業は、収益の安定性を重視しています。一方、ベンチャー企業はIPOやM&Aといった出口戦略を見据え、短期間で市場シェアの拡大を目指します。
ベンチャー企業の成長で中核的な役割を担うのが「ビジネスモデル」です。顧客に対して独自の価値を提供する仕組みを構築できるかどうかが、持続的に成長できる企業とそうでない企業の分かれ目になります。
こうした成長モデルでは、採用や研究開発、マーケティングへの先行投資が必要です。そのため、売上が伸びる前にコストが先行し、Jカーブ型の赤字が生じる傾向があります。
自己資金や借入だけでこの期間を乗り切ろうとすると、返済負担がキャッシュフローを圧迫し、成長投資の余力を失う可能性があります。そのため、返済義務のないエクイティによる資金調達の活用が合理的とされています。
選別投資が進む、国内スタートアップの調達市場
2025年の国内スタートアップ資金調達総額は7,613億円(デット除く)で、前年とほぼ変わりませんでした。調達社数は確定値で2,700社と前年比約6%減です※1。
市場全体の資金量は維持されつつも、調達できる企業の数は確実に絞られてきています。
経済産業省のスタートアップ政策資料によると、日本のスタートアップへの資金供給は米国等に比べて極めて小規模です。成長段階(ミドル・レイター期)への資金供給力の低さが課題とされています。50億円以上の大型案件は増加する一方で、資金は実績のある起業家や研究開発型の有力企業へ集中しています※2。
【出資・融資他】ベンチャー企業が活用できる6つの資金調達方法
ベンチャー企業が活用できる主な資金調達方法を6つ紹介します。
- VCからの出資|数千万〜数億円規模、返済不要だが株式放出を伴う
- エンジェル投資家からの出資|シード期の初期資金として有力、意思決定が速い
- 政策金融公庫の融資|創業初期でも利用可能、据置期間付きで返済負担を軽減
- 補助金・助成金|返済不要だが後払い制、採択率は50〜70%程度
- クラウドファンディング|資金と顧客反応を同時に獲得、B2C向け製品と相性が良い
- 銀行融資|低金利だが創業初期はハードルが高い、実績を積んでから検討
それぞれの仕組みとメリット・デメリットを確認していきましょう。
1. VC(ベンチャーキャピタル)からの出資
VC(ベンチャーキャピタル)は、成長が見込まれる未上場企業に対して株式と引き換えに出資し、IPOやM&Aによる株式売却益(キャピタルゲイン)を得る投資手法です。
出資を受けた企業の成長によって株式価値が高まった段階でVCが株式を売却することで利益を得ます。特徴は、シード期でも数千万〜数億円規模の資金を調達でき、返済義務がないことです。
また、VCからは資金だけでなく、事業戦略に関する助言や取引先・採用候補者の紹介といった支援を受けられる場合もあります。著名なVCから出資を受けることで、対外的な信用力の向上にもつながります。
一方で、株式を提供するため持ち分は希薄化し、経営への関与も受け入れる必要があります。たとえば、取締役の派遣や重要事項に関する承認権の設定などに投資家が関わります。
また、EXITの時期や方針についても投資家の意向が反映されることがあり、上場や売却のタイミングを単独で決めにくくなる場面も想定されます。
VCには大きく3つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
| VCの種類 | 特徴 |
|---|---|
| 独立系VC | スタートアップ投資に特化し、シード期から積極的に出資する傾向が強い |
| CVC(事業会社系) | 親会社との事業連携を重視し、特定領域への投資が中心 |
| 政府系VC | 中小機構やJIC経由で安定的な資金供給があり、比較的リスクの低い手段となる |
日本ベンチャーキャピタル協会の調査によると、組成から10〜12年が経過した国内VCファンドのネットマルチプルは平均2.8倍で、2012年組成ファンドでは4倍を超えました※3。
VCからの資金調達は、株式の放出比率とEXIT方針への影響を踏まえて慎重に検討しましょう。
VCファンドの特徴や選び方については、以下の動画で詳しく解説しています。
2. エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家は、個人の資産から数百万〜数千万円規模を出資する個人投資家です。VCと比べて審査の流れがシンプルで意思決定が早いため、シード期の最初の資金調達先に適しています。
起業経験者や第一線で活躍するエンジェルからは、壁打ち相手になってもらえたり、ほかの投資家やキーパーソンを紹介してもらえたりする場合があります。VCに持ち込む前の段階でも、事業の方向性を一緒に磨くパートナーになり得ます。
経済産業省のエンジェル税制では、ベンチャー企業へ投資した個人投資家に対して税制上の優遇措置が設けられています。投資時点では、対象企業への投資額全額を総所得金額から控除できる優遇措置Aと、対象企業への投資額全額を株式譲渡益から控除できる優遇措置Bがあります※4。
一方で、過度な経営干渉と契約書の不備に注意が必要です。
出資比率が高くなりすぎると経営の自由度が下がり、意思決定に影響を受けやすくなります。契約条件が曖昧なまま進めた場合、追加出資や株式の取り扱いをめぐる争いに発展することもあります。
回避策として、投資契約書で議決権や関与範囲を明確に定めること、双方の期待値を事前にすり合わせることが必須です。J-KISSのような投資スキームを活用すれば、株価決定を先送りしつつトラブルのリスクを軽減できます。
3. 政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫の創業融資は、実績や担保が乏しい創業初期の企業が利用しやすい資金調達方法です。国民生活事業では小規模事業者向けの融資が中心となっており、1先あたりの平均融資残高は約800万円と比較的小口の融資が主体です。
利用先の約9割が従業者9名以下の事業者で、個人事業主の利用も多く見られます※5。
一般貸付は、融資限度額が運転資金・設備資金が4,800万円、特定設備資金が7,200万円です。返済期間は、運転資金は最長7年(据置期間1年以内)、設備資金は最長10年(据置期間2年以内)、特定設備資金は最長20年(据置期間2年以内)です※6。
審査では創業計画書の内容が重視されます。審査官が注目するのは、自己資金の状況、起業家としての経験・能力、資金使途の妥当性、返済可能性の4点です。
数字の裏付けがある販売計画や、顧客ターゲット・価格設定まで具体化された事業見通しが説得力を左右します。
政策金融公庫の資本性ローンを活用した調達戦略については以下の動画でも解説しています。
4. 国や自治体の補助金・助成金
補助金・助成金は返済不要という点で、他の調達手段にはない大きな魅力があります。代表的な制度は以下のとおりです。
| 補助金・助成金 | 内容 |
|---|---|
| ものづくり補助金 | 製品の高付加価値化やグローバル展開を支援。枠によって最大750万〜3,000万円※7 |
| 小規模事業者持続化補助金(創業型) | 創業後間もない事業者の販路開拓等を支援※8 |
| 自治体独自の創業助成 | 東京都では創業初期の経費を助成する制度があり、年2回の受付で約200件が採択される※9 |
注意点は、補助金が後払いであることです。採択後はいったん自己資金で経費を支払い、実績報告を行ったあとに補助金が振り込まれます。
また、申請できる期間は年に数回、各回1ヶ月程度に限られており、採択率も制度によって50〜70%前後と異なります。申請を検討する場合は、商工会議所や中小企業診断士などの支援機関に早めに相談しましょう。
ものづくり補助金の採択率を高めるための具体的なポイントについては、以下の動画で紹介しています。
5. クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネット上で不特定多数の人から少額ずつ資金を集める仕組みです。
主な種類として「購入型」と「株式投資型」があります。購入型は、プラットフォームで製品やサービスを先行販売し、支援という形で資金を集める方法です。調達額は数十万〜数千万円規模になるケースもあります。
株式投資型は、株式と引き換えに出資を募る仕組みで、より大きな資金調達を目指せます。認定を受けた株式投資型クラウドファンディング事業者(少額電子募集取扱業者)を経由した投資については、税制優遇の対象です※10。
プロジェクト公開中は、支援状況やコメントを通じて顧客ニーズを確認できるほか、SNSやメディアによる認知拡大も期待できます。
一方で、目標に届かない場合は資金を受け取れません。また、動画制作やページ作成に時間と労力がかかるため、本業への影響も考慮が必要です。
B2Cで顧客像が明確な商品やサービスとは相性が良い一方で、B2B領域や開発段階のプロダクトでは成果につながりにくい傾向があります。
6. 銀行融資・信用保証協会
銀行融資は「低金利で安定した調達手段」というイメージがありますが、創業初期のベンチャーにとってはハードルが高い手段です。
| 形態 | 特徴 | 留意点 |
|---|---|---|
| プロパー融資 | 銀行が直接審査・融資。保証料不要で借入コストを抑えられる | 十分な業歴と財務実績が必要 |
| 信用保証協会の付いた融資 | 協会が返済を保証し審査ハードルを下げる。保証料率0.45〜1.90%程度※11 | 事業計画の健全性は必須要件 |
創業間もない段階では、売上実績のない企業の評価は難しく、どちらも審査は厳しいのが現実です。創業初期は政策金融公庫や補助金を優先し、アーリー期以降に事業実績を積み上げた段階で銀行融資を検討するのが現実的です。
政策金融公庫の返済実績があると、銀行側の信用評価でプラスに働きます。
事業成長に合わせた融資制度の活用方法については以下の動画でも解説しています。
成長ステージ(ラウンド)別に見るベンチャー企業の資金調達戦略

成長ステージによって最適な調達手段と頼るべき投資家が異なります。
- プレシード・シード期|調達額数百万〜1億円、エンジェル投資家とシード特化VCが中心
- プレシリーズA〜シリーズA|調達額1〜10億円、VCからの本格的なエクイティ調達がスタート
- シリーズB以降|調達額十数億〜数十億円、大型VCやCVCから成長資金を確保
自社の成長段階を把握したうえで、資金調達の戦略を立てましょう。
プレシード・シード期|エンジェル投資家とシード特化VCが中心
プレシード期はプロダクト構想〜MVP開発の段階、シード期は初期ユーザーを獲得しPMFを検証する段階です。調達額の目安は数百万〜1億円程度で、主な資金の出し手はエンジェル投資家とシード特化VCです。
内閣府の資料では、ベンチャー企業は「極めて高い成長を達成する可能性を有するものの、その実現には不確実な要素が多く、事業に失敗する可能性も高い企業」と位置づけられています※12。
そのため、投資家は売上規模よりも「課題は本当に存在するか」「創業チームにやり切る力があるか」を重視します。
調達スキームとしては、コンバーティブルエクイティ(J-KISSやSAFEなど)が広く使われています。バリュエーション交渉を後回しにして、スピーディーに資金を確保できるため、株価算定が難しい創業初期に相性が良い手法です。
投資家の持つネットワークを活用したり事業への助言を受けたりできる点もメリットです。
創業期は判断に迷っても相談相手が限られ、孤独を感じやすい時期です。事業の方向性を率直に議論できる存在は、経営者にとって大きな支えになります。
起業家コミュニティやアクセラレータープログラムを通じて、エンジェル投資家とつながることができます。シンプルなピッチ資料を用意し、対話を重ねながら関係を築いていきましょう。

資金調達の際、調達手法の選定や条件の検討など、様々な場面で専門的な知識が求められます。十分な知識がないまま進めると、自社に最適な調達条件や進め方を見極めるのが難しいこともあるでしょう。
Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」は、年間1,000社以上の面談実績を持つ、あらゆる調達手法をサポートするサービスです。調達手法の選定などご相談いただけますので、ぜひご活用ください。
プレシリーズA〜シリーズA|VCからの本格的なエクイティ調達がスタート
PMFの手応えが数字で見え始めると、VCからの本格的なエクイティ調達が視野に入ります。プレシリーズAで5,000万〜1億円、シリーズAでは2〜10億円規模が目安です。
投資家が重視するのは、スケーラビリティを裏付ける定量データです。MRRの月次成長率(目安10%以上)、CAC回収期間、解約率(チャーン)の安定性が問われます。「伸びている」だけでなく「この成長を再現できる構造があるか」が評価の基準です。
複数のVCが同時に関心を示すと、バリュエーションの引き上げや制限条項の緩和交渉で有利なポジションを取りやすくなります。リードVCが決まると他のファンドも追随する流れが生まれ、調達スピードも加速します。
見落としがちなのがタームシートと株主間契約の条件設計です。優先清算権の倍率、希薄化を防ぐ条項、ボードシート(取締役指名権)などは、後のラウンドやEXIT時の経営自由度を左右します。条件の精査は弁護士やファイナンスの専門家と連携し、慎重に進めましょう。
VCが評価する成長できる起業家の特徴については、こちらの動画で解説しています。
シリーズB以降|大型VCやCVCからの成長資金を確保
シリーズB以降は、調達額が数億〜30億円規模に達する成長加速のフェーズです。資金の使途も事業拡大・地域展開・M&Aなど多岐にわたり、単なる資金確保ではなく事業戦略と資本政策を一体で設計する局面に入ります。
経済産業省によると、日本のスタートアップへの資金供給は国内VCによる資金供給に依存しています※13。VC側で機関投資家や海外投資家から資金調達できていないため、成長段階(ミドル・レイター期)のスタートアップへの資金供給力の低さが指摘されています。
この段階で存在感を増しているのが、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)です。CVCは資金と営業チャネルの共有や技術連携といった支援ができます。一方で、出資元企業の方針が経営判断に影響する可能性もあるため、どの投資家と組むかは慎重に見極める必要があります。
さらに、IPO準備や海外展開が進むと、複数の調達ラウンドが重なったり海外投資家との交渉やストックオプションの設計が必要になったりと、判断すべき事項が増えます。早い段階でCFOや弁護士、会計士といった専門家と連携し、体制を整えておくことが重要です。
CVCがどのような基準で投資判断するかについては、以下の動画で解説しています。
資金調達の成功に向け押さえておきたい5つの実践項目
資金調達は、実行段階の準備が結果を左右します。ここでは、実行段階で押さえるべき5つの項目を紹介します。
- ランウェイが12か月を切る前に準備を始める|着金まで3か月〜半年以上かかる
- 事業計画書とピッチデックを投資家目線で作り込む|4つの評価軸を意識
- 資本政策を設計し株式の過剰放出を防ぐ|シリーズA後も50〜60%維持が目安
- 複数の調達先を比較して有利な条件を引き出す|並行交渉で交渉力を確保
- 信頼できる専門家やVCに早期から相談する|時間短縮と失敗回避の投資
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. ランウェイが12か月を切る前に準備を始める
ランウェイとは、手元資金が尽きるまでの残り期間を指します。計算式は手元資金÷月間ネットバーンレート(月間コスト−月間収入)です。たとえば手元資金1,000万円・月間の純支出が200万円の場合、ランウェイは約5か月です。
資金調達は、準備を始めてから実際に資金が入るまでに時間がかかります。シード期でも3か月から半年以上を要するケースが一般的で、投資家側の意思決定のタイミングによっては、さらに長引くこともあります。
ランウェイが短くなってから動き出すと、交渉期間に余裕がなくなり、条件面で不利な選択を迫られる可能性が高まります。資金が急ぎで必要な状況は相手にも伝わりやすく、交渉の主導権を持ちにくくなる点にも注意が必要です。
準備は余裕のある段階で始めることが重要です。たとえば次のような状況に当てはまる場合は、資金調達の準備を検討するタイミングといえます。
- ランウェイが18か月を切り、12か月以内に次の資金が必要になる見込みがある
- 月間バーンレートが増加傾向にあり、ランウェイが縮小し始めている
- 事業計画書やピッチ資料がまだ投資家向けに整っていない
余裕のあるうちに動くことで、複数の投資家と並行して交渉でき、条件面でも主導権を握りやすくなります。
融資による資金調達を成功させるための具体的なノウハウは、こちらの動画でも解説しています。
2. 事業計画書とピッチデックを投資家目線で作り込む
資料づくりでは、「自社の強みを伝える」ことよりも、投資判断に必要な根拠を示すことが重要です。
投資家が重視するポイントは主に4つあります。市場規模、ビジネスモデルの継続性、現在の実績(売上やユーザー数など)、経営チームの実行力です。
ピッチデックは、ビジョン→課題→解決策→市場規模→ビジネスモデル→実績→チーム→資金の使い道の流れで構成すると伝わりやすくなります。各スライドでは伝える内容を1つに絞り、数字などの根拠を添えましょう。
事業計画書とピッチデックは役割が異なります。事業計画書は財務モデルや競合分析などを含めた詳細な資料であり、ピッチデックは10〜15枚程度で全体像を直感的に伝えるためのものです。どちらも同じ前提となる数値や考え方をもとに作成し、内容に一貫性を持たせることが重要です。
実際のピッチ事例に触れることで、資料の完成度は高まります。スタートアップ関連の動画などを参考にしながら、投資家がどの点を重視しているのかを確認しておきましょう。
3. 資本政策を設計し株式の過剰放出を防ぐ
株式は一度渡すと基本的に取り戻せません。資本政策を十分に検討しないまま調達を進めると、ラウンドを重ねるごとに創業者の持分が想定以上に薄まり、経営の主導権に影響が出る可能性があります。
目安として、シード後は創業者持分を60〜80%、シリーズA後でも50〜60%程度を維持できる設計が安心です。たとえばシードで20%、シリーズAでさらに20%を出資に充てると、この時点で持分は約64%まで低下します。ここにストックオプション(SO)の確保が加わると、実質的な持分はさらに圧縮されます。
SOプールは採用競争力を左右する重要な原資で、日本では発行済株式の10〜15%程度が一般的です。調達時に織り込まず後から設定すると、創業者側の持分だけが削られる構造になりかねません。
こうしたシミュレーションは、シリーズBやIPOから逆算して初めて精度の高い設計が可能です。早い段階で弁護士や会計士、VCなどの専門家の意見を取り入れておくことが、将来の選択肢を広げることにつながります。
4. 複数の調達先を比較して有利な条件を引き出す
資金調達の交渉で最も避けたいのは、1社としか話していない状態です。他に手段がなければ譲歩するしかなく、持分比率や制限条項で不利な条件を受け入れざるを得ません。
スタートアップの資金調達では、複数のVCに同時にアプローチする進め方が一般的です。1社に絞るほうが誠実に見えると感じるかもしれませんが、投資家側も複数の案件を並行して検討しています。対等な立場で交渉するためには、複数の選択肢を持つことが重要です。
スタートアップ企業が資金調達する方法は、エクイティファイナンス、デットファイナンスの他、両者の中間に位置するベンチャーデット(新株予約権の付いた融資)の3種類に大別されます。
たとえばデットで運転資金を確保できれば、資金繰りの余裕が生まれ、エクイティ交渉でも不利な条件を受け入れずに済みます。
並行交渉を進める際は、各社の提示条件・進捗・返答期限をスプレッドシートなどで一元管理し、タームシートの提示時期をできるだけ揃えることが大切です。条件を比較しやすい状態をつくることで、自社にとって納得できる選択がしやすくなります。
5. 信頼できる専門家やVCに早期から相談する
早い段階で専門家の視点を取り入れることが、的確な判断につながります。自分で調べてから進めたいと考える方も多いですが、調達手法の選定や資本政策の設計は専門性が高く、独力での判断には限界があります。
相談先によって得られる知見も異なります。VCからは市場動向や投資家目線でのフィードバックを得られ、事業提携や顧客紹介につながる場合もあります。大学系VCとしては、大阪大学ベンチャーキャピタル、京都大学イノベーションキャピタル、東北大学ベンチャーパートナーズ、東京大学協創プラットフォーム開発などがあり、経営面の助言や資金供給を行っています。
弁護士は契約条件や法的リスクの確認を担い、会計士は財務計画の妥当性を客観的に検証します。アクセラレーターでは、メンタリングを通じてビジネスモデルの改善につながる支援を受けられます。
専門家への相談はコストではなく、時間短縮や失敗を防ぐための投資と捉えることが重要です。また、事前に基礎知識を習得しておくと、限られた時間でも議論が進みやすくなります。

資金調達は、早い段階でプロに相談するほど選択肢が広がります。自社の状況を客観的に整理でき、タイミングを逃さず最適な手法を選びやすくなります。
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ベンチャー企業の資金調達に関するよくある質問

ベンチャー企業の資金調達について、よくある質問に回答します。
- ベンチャー企業の資金調達が難しいと言われるのはなぜ?
- エクイティとデットはどちらを優先するべき?
- 創業直後でもVCから資金調達できる?
Q.ベンチャー企業の資金調達が難しいと言われるのはなぜ?
資金調達が難しいと感じる背景には、3つの制約があります。
1つ目は売上・利益の実績不足です。創業初期は赤字を想定するため、金融機関の融資審査で返済能力の証明が困難です。政策金融公庫の創業融資や補助金など、将来性を評価基準に含む制度を活用しましょう。
2つ目はVC出資のハードルの高さです。VCは高い成長性と明確なビジネスモデルを求めるため、すべてのベンチャーが対象になるわけではありません。ただし、プレシード・シード期に特化したVCやアクセラレーターも増えており、初期段階でも出資を受けられる機会は広がっています。
3つ目は企業価値の算定の難しさです。実績データが乏しい段階ではバリュエーションの合意に時間がかかります。こうした局面では、コンバーティブルエクイティなど企業価値の確定を後回しにできる手法が適しています。
いずれも、資金調達が不可能であることを意味するものではありません。課題を理解し、専門家と対策を組み立てることで突破口は見つかります。
Q.エクイティとデットはどちらを優先するべき?
どちらが優れているかではなく、事業の特性とステージで使い分けるのが正解です。
エクイティは返済義務がなく赤字先行型の急成長モデルと相性が良い一方、株式放出による経営権の希薄化を伴います。デットは経営権を守れますが、月次返済に耐えられるキャッシュフローが必要です。
内閣府によると、米国では大学・財団エンダウメントや年金がLP出資者の65%以上を占める一方、日本では事業会社・金融機関が9割以上を占めており、機関投資家の割合はごくわずかです※14。この構造の違いが、日本のVCファンド規模や成長資金の供給力に影響を与えています。
実務では両者を組み合わせるケースも増えています。シード期に補助金とエンジェル出資で立ち上げ、アーリー期以降は政策融資とVC出資を併用する方法があります。成長が進むにつれてデットの比率を高めることで、株式の過度な希薄化を抑えることも可能です。
Q.創業直後でもVCから資金調達できる?
創業直後でもVCからの資金調達は可能です。プレシード・シード段階に特化したVCやアクセラレーターが国内にもあり、アイデアの独自性や市場規模、チームの実行力をもとに投資判断が行われています。
創業初期は実績が少ないため企業価値の評価が難しくなりますが、J-KISSなどのコンバーティブルエクイティを活用すれば、評価額の決定を次回の調達まで先送りできます。
標準的な契約を使うことで、手続きの負担やコストを抑えやすい点もメリットです。
資金調達には数か月かかるのが一般的です。早い段階から事業計画やピッチ資料を整え、投資家との接点を持ちましょう。
まとめ
この記事では、ベンチャー企業が活用できる6つの資金調達方法と、成長ステージ別の戦略、成功に向けた実践項目を解説しました。自社のフェーズに合った手法を確認し、早めに動き出すことが重要です。「どの方法が最適か判断しきれない」と感じる経営者の方は、専門家への相談から始めてみましょう。
「何から着手すべきか、自社に合ったプランを組み立てたい」そんな方は、プロと一緒に整理するのも1つの方法です。

「自社に合う資金調達方法がわからない」「そもそも誰に相談すればいいのかわからない」とお悩みではありませんか。Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」では、御社のステージに合った調達プランをご提案しています。
融資先・投資家の紹介から補助金・助成金の申請サポートまで幅広く対応しており、事業計画書がない段階でも無料でご相談いただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考文献
※1 Speeda|選別と延長戦が進む──2025年スタートアップ資金調達動向
※2 経済産業省|スタートアップ政策について〜現状認識・課題、今後の方向性〜
※3 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会|国内VCパフォーマンスベンチマーク第6回調査を行いました(2023年版)
※4 経済産業省|エンジェル投資に対する措置
※5 日本政策金融公庫|小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】
※6 日本政策金融公庫|一般貸付
※7 中小企業庁|ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の第23次公募要領を公開しました
※8 中小企業庁|「小規模事業者持続化補助金<創業型>(第3回)」の公募要領を公開しました
※9 J-Net21|【東京都】補助金・助成金:「令和8年度「創業助成事業」募集のお知らせ」
※10 経済産業省|エンジェル投資に対する措置
※11 中小企業庁|物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度の取扱いを開始します
※12 内閣府|第4節 ベンチャー企業をめぐる環境
※13 経済産業省|第1回スタートアップ政策推進分科会経済産業省資料
※14 内閣府|スタートアップ・エコシステムの現状と課題
