資金調達の方法には、VC、融資、エンジェル投資、補助金などがあります。資金調達の最適な方法は、プロダクトの完成度や売上の有無、チーム体制、目指す成長スピードによって異なります。自社のフェーズに合った方法を見極めることが、調達の成否を左右します

創業初期においては、エクイティ(出資)よりもまずデット(融資)を活用するケースが圧倒的に多いのが実情です。

実際に、令和6年度の日本政策金融公庫による創業融資実績は28,032先・1,503億円※1にのぼります。また、経済産業省の調査では、シードステージの企業のうち91.4%が融資を活用しているというデータもあります※2。

本記事では、資金調達の手法を大きく3つのカテゴリーに分類し、創業期からシリーズAに至るまでの各フェーズで、どの手段をどの順番で検討すべきかを解説します。最後まで読むことで、シード期の起業家の方も、プレシリーズAを見据える経営者の方も、次に取るべき現実的なアクションが明確になるはずです。

この記事でわかること
  • スタートアップの資金調達方法(エクイティ・デット・アセット)
  • 創業期にまず検討すべき「公庫の創業融資」と「エンジェル投資」
  • 補助金・クラファン・VCなど各手法のメリット・デメリット
  • 知らないと詰む「資本政策の基本」
  • シード→プレシリーズA→シリーズA→シリーズBまでのステージ別ロードマップ

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目次

スタートアップの資金調達とは?3つの分類と全体像

スタートアップの資金調達の種類には、出資・融資・資産活用があり、返済の有無や株式の希薄化、調達スピードがそれぞれ異なります

  • 資金調達方法は大きく3つに分かれる
  • ステージによって使える資金調達手段は変わる

順に確認していきましょう。

資金調達方法は大きく3つに分かれる

スタートアップの資金調達は、大きく3種類に分類されます

  • エクイティファイナンス(出資):株式を発行して投資家から資金を得る方法。返済は不要だが、持株比率が変わる
  • デットファイナンス(融資):銀行や日本政策金融公庫などから借りる方法。返済義務はあるが、経営権は渡さない
  • アセットファイナンス(資産活用):売掛金や保有資産を現金化する方法(ファクタリングなど)

3つの違いを整理すると次のとおりです。

分類返済義務株式希薄化調達スピード主な手法
エクイティなしあり3〜6ヶ月VC・エンジェル投資
デットありなし1〜2ヶ月公庫融資・銀行融資
アセットなしなし最短即日〜数週間ファクタリング

実際、多くのスタートアップが創業初期に選んでいるのは、「公庫の融資」と「エンジェル投資」を組み合わせる方法です。

3つの判断軸で自分に合う手法を絞る

では、自社はどの手段を選ぶべきなのでしょうか。感覚で決めるのではなく、次の3つの判断軸で整理すると方向性が見えてきます

では、自社はどの手段を選ぶべきなのでしょうか。感覚で決めるのではなく、次の3つの判断軸で整理すると方向性が見えてきます。

観点内容ポイント・具体例注意点
① 何に使うか(資金使途)調達した資金の具体的な使い道を明確にする・運転資金の確保 → 融資が適している
・設備投資/研究開発 → 補助金も選択肢
・短期間で事業拡大 → 出資が有効
目的が曖昧なまま進めると、資金の使い道と投資家の期待がずれる可能性がある
② 成長ステージ企業のフェーズによって適した調達方法が異なる・シード期 → 公庫融資、エンジェル投資が現実的
・プレシリーズA以降 → VC出資が選択肢に入る
実績や売上状況によって選択肢が制限されるため、現状を客観的に把握する必要がある
③ 経営権の希薄化の許容度株式発行による持株比率の変動をどこまで受け入れるか・出資は返済義務なし
・その代わり株式を発行し持株比率が下がる
経営判断や将来の意思決定に影響するため、「資金調達」ではなく「資本構成設計」として検討する必要がある

融資で事業基盤を整えた後に出資を検討すると、資本構成をコントロールしやすくなります。

創業時の資金調達の全体像はこちらの動画でも解説しています。

ステージによって使える資金調達手段は変わる

資金調達の選択肢は、事業の成長段階によって大きく変わります。創業直後は売上実績や信用力が十分ではないため、銀行融資やVCからの大型出資を受けることは簡単ではありません。ステージが進み、実績やトラクションが積み上がるにつれて選択肢が増えていきます。

ステージ主な資金調達手段調達額目安
シード期公庫融資・エンジェル投資・補助金・シードVC数百万〜数千万円
プレシリーズAシード/アーリーVC・J-KISS5,000万〜2億円
シリーズAVC・銀行融資1〜5億円
シリーズB以降大手VC・PE・CVC5億円以上

シード期は選択肢が少ないからこそ、何を優先するかが問われます。限られた手段をどう組み合わせるかが、その後の成長スピードを左右します

ここからは、創業期に使える資金調達の方法を1つずつ解説します。

ファイナンスの全体像について詳しく知りたい方はこちらの動画もご覧ください。

創業期〜プレシリーズAで使える資金調達方法とメリット・デメリット

創業期からプレシリーズAまでは、使える資金調達手段が限られます。順番を間違えると、時間も株式も無駄にしかねません。

  • 日本政策金融公庫の創業融資
  • エンジェル投資家からの出資
  • 補助金・助成金
  • クラウドファンディング
  • VC(ベンチャーキャピタル)からの出資
  • その他の資金調達方法(アセットファイナンス・ベンチャーデット・RBF)

まず検討すべきは公庫融資とエンジェル投資です。ここで基盤を整えたうえで、補助金やVCへと順に見ていきましょう。

日本政策金融公庫の創業融資

創業期の資金調達は、日本政策金融公庫(以下「公庫」)の創業融資から検討するのが基本です。これは、売上実績がない段階でも申し込みが可能な、数少ない公的融資制度だからです。

以下のデータのように多くの起業家がこの制度を活用しています。

  • 令和6年度の創業融資実績は28,032先・1,503億円(前年度比115.5%)※1
  • 開業時の資金調達額は平均1,197万円、そのうち金融機関からの借入は平均780万円※3
  • シードステージ企業の91.4%が融資を活用※2

制度の概要は次のとおりです。

  • 融資上限:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 返済期間:設備資金は最長20年、運転資金は原則10年以内
  • 担保・保証:創業期(税務申告2期未満)は原則、無担保・無保証人(状況に応じ個別相談の場合あり)
  • 金利:民間金融機関より低い
  • 最大の強み:株式の希薄化が一切ない

返済は必要ですし、審査にも1〜2ヶ月ほどかかります。事業計画書の準備も避けては通れません。

それでも、株式を投資家へ渡さずに資金を確保できる点は大きな魅力です。

審査で見られる3つのポイント

公庫の審査内容は、書類審査と面談です。主に「本当に返済できるビジネスか」「この経営者に任せて大丈夫か」を見られます。特に重視されるのは、次の3点です。

  • 自己資金の額:制度上の自己資金要件は撤廃されていますが、実務上は調達総額の3割程度を自己資金として用意しているかが1つの目安です。
  • 事業計画書の説得力:売上や経費の見込みが「なぜその数字になるのか」まで説明できるかが問われます。希望的観測ではなく、根拠のある収支計画になっているかどうかがポイントです。公庫の公式サイトにはテンプレートも用意されています。
  • 経営者の経験:創業動機に筋が通っているか、業界経験や関連スキルがあるか、面談で論理的に説明できるかが評価されます。

公庫に馴染みがなくても心配はいりません。最寄りの支店に相談予約を入れれば、必要書類や事業計画書の作り方について丁寧に案内してもらえます。

申請前に具体的な流れや落とし穴を把握しておきたい方は、こちらの動画もご覧ください。

融資関連の動画はプレイリストにまとめています。

エンジェル投資家からの出資

公庫融資で事業の土台を整えた後に検討したいのが、エンジェル投資家からの出資です。シード期にエクイティを受ける場合、いきなりVCを目指すよりも、まずはエンジェル投資家へのアプローチが現実的です。

エンジェル投資は、創業間もない段階でも意思決定が比較的速く、柔軟な条件で進められる点が特徴です。調達額の目安は500万円から5,000万円程度で、実務上は500万円から2,000万円のレンジが中心です。

単なる資金提供にとどまらず、経営の壁打ちや人脈紹介といった支援を受けられる可能性がある点も魅力です。シード期においては、資金と同時に「伴走者」を得られるかどうかが、その後の成長スピードを左右します。

J-KISSを使ったシード期の出資スキーム

シード期のエンジェル投資ではJ-KISS(ジェイキス)という契約形態がよく使われます。これは、企業価値の評価額を決めずに出資を受けられる新株予約権型の契約です。次回の資金調達ラウンド時に自動で株式に転換されるため、企業価値を正確に算定しにくいシード期では双方にとってメリットがあります。

項目内容
バリュエーション次回ラウンドまで先送り可能
転換条件キャップ額またはディスカウント適用後の株価のうち低い方
契約の簡便性公開ひな型を利用できる
転換期限18か月程度が標準

注意点として、エンジェルから出資を受ける際に株式を渡しすぎると、次のVCラウンドで不利に働く可能性があります。たとえばシードで30%以上を放出すると、VCは「持株比率がすでに崩れている」と判断し、出資をためらうことになりかねません。どこまで株式を出してよいのかという具体的な目安や失敗事例については、次のセクション「資本政策の基本」で詳しく解説します

エンジェル投資家からの出資について、より詳しく知りたい方はこちらの動画をご覧ください。

補助金・助成金

補助金は、返済不要で活用できる公的資金です。条件に合致すれば積極的に検討すべき手段ですが、以下の2点を事前に確認しておきましょう。

  • 採択制:申請すれば必ず受け取れるものではなく、審査を通過する必要がある
  • 後払い方式:事業に必要な資金をいったん自己資金で立て替え、事業完了後に補助金が支給される

創業期のスタートアップが対象になりやすい主な補助金は次の3つです(金額・公募時期は変動するため、最新情報は各公式サイトをご確認ください)。

  • 小規模事業者持続化補助金(創業型):最大200万円
  • ものづくり補助金:最大3,000万円(従業員規模により変動。5人以下は750万円〜)
  • 新事業進出補助金:最大9,000万円

補助金は、返済義務がなく、株式の希薄化も生じない点が大きなメリットです。一方で、申請書類の作成には相応の労力がかかり、採択されても資金がすぐに入るわけではありません。そのため、補助金だけで事業を回すことは現実的ではありません

実務上は、公庫融資やエンジェル投資と組み合わせて活用する方法が適しています。なお、補助金の採択実績は、公庫や投資家に対する信用材料になり得ます。

補助金の基礎知識および融資との組み合わせ方について詳しくはこちらの動画をご覧ください。

クラウドファンディング

クラウドファンディング(クラファン)は、不特定多数から少額ずつ資金を集める方法です。調達額の目安は数十万〜数百万円で、手数料の相場は10〜20%です。

形式は以下の3つに分かれています。

  • 購入型:支援者が資金を出し、その見返りとして製品やサービスを受け取る形式
  • 寄付型:支援者が対価を求めず、理念や社会的意義に共感して資金を提供する形式
  • 投資型(株式型):支援者が出資者となり、株式や新株予約権などを取得する形式

創業初期のスタートアップが活用しやすいのは購入型です。

クラウドファンディングは、資金を集めながら「市場検証」と「マーケティング」を同時に行える手法です。

プロダクトが完成する前の段階で、「実際にお金を払ってでも欲しい」と考える人がどれだけいるのかを数字で確認できます。アンケートやヒアリングと違い、支援という具体的な行動によってニーズを測れるため、より現実に近い需要を把握できます

プロジェクトページを公開してSNSで発信すると、支援者が自発的に情報を広めてくれることがあります。想定外の層にリーチできるほか、メディアに取り上げられる可能性も生まれます。

ただし、調達できる金額は数十万〜数百万円程度にとどまることが多く、事業全体を支える主な資金源にはなりにくいのが実情です。公庫融資やエンジェル投資と組み合わせた活用が現実的です。

株式投資型クラファンについて詳しく知りたい方は、FUNDINNOの特徴を解説した動画をご覧ください。

VC(ベンチャーキャピタル)からの出資

公庫融資やエンジェル投資である程度の資金を確保し、プロダクトが形になり、手応えが見え始めたら、VCからの出資が視野に入ります

シード期の段階で無理にVCへ行く必要はありません。ただし、VCがどんなポイントを見て投資を決めているのかを知っておくだけで、今やるべき準備が明確になります。

VCは大きく3タイプに分かれます。

  • 独立系VC:業種を問わず幅広く投資。シード特化のVCも増えている
  • CVC(事業会社系VC):事業シナジーを重視。顧客紹介や協業の可能性がある
  • 政府系VC:公的資金を原資とし、条件が比較的穏やか

日本の国内向けVC投資額は年間約1,500〜2,500億円(2020〜2023年)で推移しており、2024年には約2,360億円に達しています※4。

VCが投資判断で見ている3つのポイント

VCは、どのような基準で投資を決めているのでしょうか。この視点をシード期から理解しておくことで、事業計画書の精度が上がります

①経営チームの質:VCが投資判断で真っ先に見るのは経営チームです。問われるのは、経験の有無に加え、実行力があるか、その市場について十分な理解があるか、困難な局面でもやり切れるかなどです。なぜこの事業に挑戦するのかという原体験があり、実現に向けた役割分担やスキルがチーム内にそろっているかが問われます。

②市場規模・成長性:どれだけ優れたプロダクトでも、市場が小さければ大きなリターンは期待できません。だからこそ、市場規模と成長性が問われます。TAM(最大市場規模)やSAM(実際に狙える市場)を具体的な数字で示せるかが評価の分かれ目です。「市場は1兆円あります」と書くだけでは説得力がありません。トップダウンの統計データに加え、顧客単価や想定顧客数から積み上げたボトムアップの計算を示すことで現実味が生まれます。

③ビジネスモデルの明確さ:「誰から、何によって、いくら稼ぐのか」を簡潔に説明できるかも問われます。特に見られるのは、調達金額と達成目標の整合性です。たとえば「1億円を調達して、何を実行し、どの指標をどこまで伸ばすのか」を具体的に説明できるかが問われます。

シード期で出資を見送られる主な理由は、「熱意はあるが数字がない」「売上予測に根拠がない」「チーム情報が不十分」などです。逆にいえば、早い段階から定量データを蓄積し、仮説検証を積み重ねておけば、次のラウンドでの評価が上がります

自社はどのVCにアプローチすべきかを詳しく知りたい方やよくある質問はこちらの動画をご覧ください。

その他の資金調達方法(アセットファイナンス・ベンチャーデット・RBF)

創業期には使いにくいものの、事業が成長するにつれて選択肢に入る手法を紹介します。

手法概要利用条件
ファクタリング売掛金を売却して即座に現金化売掛金がある企業
ベンチャーデット株式を発行せずに融資を受けるVCから出資を受けた企業
RBF(売上連動型)売上の一定割合を返済する融資安定した売上がある企業

いずれも創業直後には利用しづらい手法です。まずは公庫融資とエンジェル投資で基盤を作り、事業が成長してから検討しましょう

ベンチャーデットの仕組みや実例について詳しくはこちらの動画をご覧ください。

資金調達で失敗しないための資本政策の基本

どの手法を選ぶにしても避けて通れないのが資本政策です。株式をどのくらい発行するのか、どのタイミングで誰に渡すのかという設計次第で、資金調達の難易度は大きく変わります。

  • 持株比率の3つの防衛ライン
  • シード期に持株比率を下げすぎて次の調達が困難になった事例

「株を渡しすぎてVCが入れなくなった」といったケースも珍しくありません。それぞれ確認していきましょう。

持株比率の3つの防衛ライン

創業者の持株比率には防衛ラインがあります。どこまで株式を手放してよいのかを感覚で決めてしまうと、後のラウンドで取り返しがつかなくなります。

まず押さえておきたいのが、主な議決権割合と株主の権利です。

持株比率できること
過半数(50%超)取締役の選任・解任など普通決議事項を単独で決定
2/3以上(66.7%超)定款変更・M&Aの承認など特別決議事項を単独で決定
1/3超(33.4%超)特別決議の拒否権を持つ

資金調達の過程で持株比率を下げすぎてしまうと、会社の創業者であるにもかかわらず、重要な意思決定を単独では行えない状況に陥る可能性があります

希薄化シミュレーション:シード期の放出比率がその後を決める

「シードで渡す株式が多少多くても、後から取り返せるのでは?」と思うかもしれません。実際には、資金調達のラウンドを重ねるたびに、創業者の持株比率は段階的に下がっていきます。以下の要点を押さえておきましょう。

  • IPO時に創業者の持株比率が10%台〜一桁台まで下がるケースは珍しくない
  • 低いバリュエーションでの調達は、1回のラウンドで持株比率が50%近くまで低下しうる
  • ストックオプション(従業員への株式付与)も希薄化要因。適正上限は発行済株式総数の10〜15%
  • 東証グロース上場企業でも、上場時に創業者が過半数を保持していたのはわずか36%

具体的に、シードで放出する株式比率の違いがシリーズA後にどう影響するかを見てみましょう。

シード放出比率シード後の創業者持分シリーズA放出比率シリーズA後の創業者持分
10%90%20%70%
20%80%20%60%
30%70%20%50%
40%60%20%40%

シードで10%放出なら、シリーズA後も70%を維持できます。しかし40%渡してしまうと、シリーズA後には40%となり過半数を割ります。最低でも66.7%、理想は70%以上を維持した状態でシード期を終えることを、資金調達の計画段階から意識してください

シード期に持株比率を下げすぎて次の調達が困難になった事例

持株比率は一度下がると簡単には戻りません。ここでは、シード期に持株比率を下げすぎて次の調達が困難になった事例を解説します

パターン①:エンジェルの条件をそのまま受け入れ
資金を早く確保したいという焦りから、提示された条件を十分に精査しないまま契約してしまうケースがあります。その結果、シード段階で30%以上の株式を放出してしまい、次のラウンドでVCが「創業者の持株比率がすでに低すぎる」と判断し、出資が見送られます。

パターン②:創業メンバー3人で均等配分(各33.3%)
創業時にメンバー間の公平性を重視し、33.3%ずつ均等に株式を配分する例もあります。しかし、意見が対立した場合に誰も過半数を持たないため、重要な意思決定が停滞します。特別決議を単独で通せる人物がいない状態では、会社の方向性を迅速に決められません。

パターン③:株価据え置きで大量発行
初回と同じ株価で追加の株式を発行し、次のラウンドでVCから「なぜこの条件で発行したのか」と疑問を持たれ、資本政策の一貫性に不安を抱かれることがあります。

シード期に持株比率を下げすぎて次の調達が困難になった事例は政府も認識しています。経済産業省は「スタートアップ投資契約ガイドライン増補版」(2025年9月)で、投資家が持つ広範な拒否権の見直しを提言しました。また、「オーバーバリュエーション(先行投資者による株式の過大評価)が後続投資家の参入障壁になっている」とも指摘しています。

資金調達の前に資本政策を設計することが出発点です。調達額や条件を決める前に、将来のラウンドを含めた持株比率の推移を想定しておきましょう。

ただし、過度に恐れる必要はありません。必要なのは、知識を持ったうえで判断することです。資本政策の基本を理解していれば、投資家との交渉は格段に進めやすくなります。

疑問があれば専門家に相談しましょう。

資本政策の注意点について詳しくは、こちらの動画をご覧ください。

資金調達の際、調達手法の選定や条件の検討など、様々な場面で専門的な知識が求められます。十分な知識がないまま進めると、自社に最適な調達条件や進め方を見極めるのが難しいこともあるでしょう。

Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」は、年間1,000社以上の面談実績を持つ、あらゆる調達手法をサポートするサービスです。調達手法の選定などご相談いただけますので、ぜひご活用ください。

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成長ステージ別の資金調達ロードマップ

資金調達は、成長ステージによって選ぶべき方法が異なります。

  • シード期 :まず公庫+エンジェル、補助金も並行
  • プレシリーズA〜シリーズA:VCからの調達が本格化
  • シリーズB以降:大型調達と多様化

各フェーズの調達方法を確認していきましょう。

シード期 :まず公庫+エンジェル、補助金も並行

シード期はやるべきことが多く、何から手をつけるべきか迷いがちです。資金調達は以下の流れで進めましょう

Step 1:自己資金で初期費用をまかないながら事業計画書を作成する
公庫融資もエンジェル投資も、事業計画書がなければ前に進みません。市場規模、収支計画、資金使途を具体的な数字で示せる状態をつくることが最優先です。

Step 2:日本政策金融公庫の創業融資に申し込む
開業時の平均借入額は約780万円とされており、多くの起業家が最初に活用しています。株式を手放さずに資金を確保できるため、経営権を守りながら基盤を固められます。

Step 3:並行してエンジェル投資家にアプローチ
公庫の手続きと同時に、エンジェルとの面談を進めます。J-KISSを活用すれば企業価値の確定を次回ラウンドに持ち越せます。ただし、エンジェルの条件は鵜呑みにせず、66.7%の防衛ラインを意識して交渉してください。

Step 4:対象の補助金があれば申請する
創業型の補助金は、公庫やエンジェルと並行して検討します。公募時期や後払いの仕組みを踏まえ、資金繰りと照らし合わせながら進めます。

シード期の資金調達のポイントは以下の3つです。

  • 公庫はできるだけ早く動くこと
  • エンジェルは同時並行で進めること
  • 補助金はタイミングを見て活用すること

融資を優先し、そのうえで出資を検討するという原則は守るべきです。経営権に影響しない方法で資金を確保し、出資は資本政策に沿って慎重に進めましょう。

フェーズ別の調達方法はこちらの動画でも詳しく解説しています。

プレシリーズA〜シリーズA:VCからの調達が本格化

プレシリーズA以降は、PMF(プロダクトが市場に受け入れられた状態)の達成が前提条件になります。VCに事業計画を持ち込み、バリュエーション(企業価値評価)をベースにした出資交渉が始まるフェーズです。

このステージで押さえるべきポイントは3つです。

① 投資基準の変化を意識する:シード期はチームとビジョンで評価されますが、プレA以降は数字で語るフェーズです。月次MRR(月間経常収益)やユニットエコノミクス(顧客1人あたりの経済性)を説明できることが前提になります。

② デットとの併用で希薄化を抑える:出資だけで調達すると、ラウンドごとに持株比率が下がり続けます。公庫の追加融資やベンチャーデットを活用してランウェイ(資金が尽きるまでの期間)を延ばし、持株比率の希薄化をできるだけ抑える設計を心がけましょう。

調達方法希薄化活用場面
VC出資のみ大きい成長スピード重視
出資+融資抑えられる経営権維持重視

③ 調達は余裕があるうちに始める:資金が潤沢なうちにラウンドの準備を始めてください。ランウェイが十分にある段階で準備を始めることで、投資家との交渉を主導しやすくなります。目安として、資金が尽きる半年前には次のラウンドの準備を始めましょう。

VC面談で最低限準備すべきこと

初めてのVC面談は緊張するものですが、事前準備で差がつきます。最低限、以下の2点を押さえておきましょう。

  • 初回面談で「なぜこの市場か」「チームの強み」「収益モデル」を30秒で説明できること
  • ボトムアップのTAM計算と「資金調達して何を達成するか」の整合性を事前に詰めておくこと

以下の動画では、シリーズAまでの実践的なプロセス、投資基準の具体像、融資との組み合わせ方まで体系的に解説しています。

シリーズB以降:大型調達と多様化

シリーズB以降は数億〜数十億円規模の調達が中心です。出資者は大手VC、PE(プライベートエクイティ)、CVC、銀行融資と多様化し、エクイティとデットを組み合わせた資金調達が一般的になります。

2024年は50億円超の大型案件が複数発生しました。Sakana AI(383億円※6)、五常・アンド・カンパニー(334億円※7)など、1社あたりの平均調達額は3.1億円に拡大しています※8。一方で、東証グロース市場の上場維持基準は2030年から時価総額100億円以上に引き上げられる予定で、IPO後の成長力も問われる時代に入っています※9。

シードやプレシリーズAの段階にいる場合、今すぐ大型調達を心配する必要はありません。ただし、将来的にどのような世界が待っているのかを知っておくことには意味があります。今のステージに集中しながらも、数年先の調達環境を意識しておくとよいでしょう。

よくある質問(FAQ)

スタートアップの資金調達について、多くの起業家が同じ疑問を抱えています。ここでは、よくある質問に回答します。

  • スタートアップの資金調達にはどのような方法がありますか?
  • 起業の資金調達はどこからすればいいですか?
  • スタートアップの資金調達額は平均いくらですか?
  • ベンチャー企業はなぜ資金調達が難しいのですか?
  • 日本政策金融公庫の創業融資で審査に通るコツは?
  • 資金調達に失敗するスタートアップの共通点は?

Q1. スタートアップの資金調達にはどのような方法がありますか?

エクイティ(出資)、デット(融資)、アセット(資産活用)の3種類です。創業期は公庫融資+エンジェル投資の組み合わせが一般的です。詳しくは本記事の「資金調達方法は大きく3つに分かれる」をご覧ください。

Q2. 起業の資金調達はどこからすればいいですか?

まず日本政策金融公庫の創業融資、並行してエンジェル投資家にアプローチ、補助金も申請することが創業期の鉄板パターンです。具体的な進め方は「シード期 :まず公庫+エンジェル、補助金も並行」で解説しています。

Q3. スタートアップの資金調達額は平均いくらですか?

開業時の資金調達額の平均は1,197万円(うち借入780万円)で、エンジェル投資は500万〜5,000万円、シリーズA以降のVCは数千万〜数億円規模です。2024年全体では平均3.1億円・中央値6,240万円ですが、大型案件が平均を押し上げている点に注意してください。

Q4. ベンチャー企業はなぜ資金調達が難しいのですか?

創業直後は売上実績・信用力がなく銀行融資が通りにくいためです。VCも経営チーム・市場規模・ビジネスモデルを厳しく見ます。対策は「VCが投資判断で見ている3つのポイント」を参考にしてください。

Q5. 日本政策金融公庫の創業融資で審査に通るコツは?

特に重視されるのは事業計画書の具体性と収支計画の数値根拠です。自己資金要件は制度上撤廃されていますが、実際の審査では調達総額の3割程度を自分で用意しているかが見られます

面談では①創業動機の一貫性、②業界経験や関連スキル、③論理的な説得力が注視されます。

Q6. 資金調達に失敗するスタートアップの共通点は?

失敗の原因の上位は資金不足と市場ニーズの欠如です。根本の原因は調達の前に顧客検証をしていないことです。「市場テストを後回し」と「資金が尽きてから次のラウンドを探す」の2パターンが典型例です。逆に、シード段階から顧客の声をデータ化し、ランウェイに余裕があるうちに動く企業は調達成功率が高い傾向にあります。

まとめ:成長フェーズに適した資金調達方法を選ぼう

ここまで読み進めた方は、スタートアップの資金調達について、何から着手すべきかが整理できているはずです。重要なポイントをあらためて確認します。

  • 資金調達はエクイティ・デット・アセットの3分類。自分のフェーズに合った手段を選ぶ
  • 創業期はまず日本政策金融公庫の融資+エンジェル投資から着手。補助金も並行して狙う
  • エクイティで株を渡す前に、資本政策を設計する。66.7%の防衛ラインを意識する
  • プレシリーズA以降はVCとの調達が本格化。デットとの組み合わせで希薄化を抑える
  • 迷ったら、専門家に相談する。一人で抱え込むより、経験者の知見を借りた方が早い

資金調達は単なる資金確保ではありません。誰を株主として迎え入れ、どの条件でパートナーシップを結ぶかまで含めた経営判断そのものです。

最初に取るべきアクションは以下の3つです。

  1. 事業計画書のドラフトを書く:公庫融資にもエンジェルとの面談にも、事業計画書は必須
  2. 公庫の最寄り支店に相談予約を入れる:経営権を守れる融資から着手するのが鉄則
  3. エンジェル投資家のリストアップを始める:自分の事業領域に知見のある投資家を探す

まずはどれか1つ、近日中に動いてみてください。

事業計画書が整っていない段階でも、資金調達の方向性を整理することは可能です。

「次に何から着手すべきか、自社に合ったプランに落とし込みたい」そんな方は、プロと一緒に整理するのも一つの方法です。

資金調達は、早い段階でプロに相談するほど選択肢が広がります。自社の状況を客観的に整理でき、タイミングを逃さず最適な手法を選びやすくなります。

資金調達の窓口では、融資・補助金・エクイティの中から御社のステージに合った手法の相談などを無料で対応。事業計画書がない段階からでもご利用いただけますので、まずはお気軽にご相談ください。

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参考文献

※1 日本政策金融公庫「令和6年度 創業融資実績28,032先1,503億円 ~全年代、業種で前年度を上回る~
※2 経済産業省「令和4年度中小企業実態調査事業 スタートアップの資金調達に関する企業の実態調査および検討会実施等調査報告書(概要版)
※3 経済産業省「「2024年度新規開業実態調査」~アンケート結果の概要~
※4 一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンター「直近第4四半期(10月~12月)
※5 中小企業庁「中小エクイティ・ファイナンス活用に向けたガバナンス・ガイダンス
※6 sakana.ai「シリーズA【続報】:日本のリーディングカンパニーから資金を調達、日本市場での事業展開を加速
※7 PRTIMES「今週は「グローバルに展開するマイクロファイナンス」「ギフトサービス」のスタートアップが上位ランクイン!週刊資金調達ランキング (10/21 〜 10/27)
※8 一般社団法人日本経済団体連合会「スタートアップ振興に向けた経団連の取り組み- Keidanren for Startups
※9 日本取引所グループ「グロース市場の上場維持基準の⾒直し等の概要


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