シリーズAを完遂し、次なる大型調達に向けて「評価基準や求められる役割がどう変わるのか」と、気を引き締めている経営者の方は多いはずです。
シリーズBは、単なるPMF(プロダクトマーケットフィット)の達成を超え、「売上の再現性」や「組織のスケーラビリティ」を定量的に証明し、事業の確実性を提示するフェーズです。当然ながら、VC(ベンチャーキャピタル)の評価基準も、シリーズAまでとは一線を画します。
本記事では、シリーズBの定義や調達相場から、VCが重視する評価ポイント、実務で必要な準備、よくある失敗パターンまでを解説します。全体像の把握から具体的なアクションの策定まで、逆算型の準備にぜひお役立てください。
- シリーズBの定義と投資ラウンド全体における位置づけ
- シリーズAとの違い(VCの評価基準・調達額・バリュエーション)
- 業種別の調達額相場と資金の使い道
- 投資家を説得するための5つの準備(ユニットエコノミクス・事業計画・経営チーム・資本政策・投資家関係)
- 陥りやすい失敗パターンとその対策

「自社に合う資金調達方法がわからない」「そもそも誰に相談すればいいのかわからない」とお悩みではありませんか。 Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」では、御社のステージに合った調達プランをご提案しています。
融資先・投資家の紹介から補助金・助成金の申請サポートまで幅広く対応しており、事業計画書がない段階でも無料でご相談いただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
シリーズBとは「さらなるスケールに向けた成長投資」のフェーズ

シリーズBの調達を検討するうえで、まず確認しておきたいのが「自社が本当にこの段階にあるのか」という判断です。ラウンドごとに投資家の期待値は異なり、準備が整わないまま動けば不利な条件での調達につながりかねません。
シリーズBの定義と、資金調達ラウンド全体における立ち位置を一緒に確認していきましょう。
シリーズBの定義
シリーズBとは、PMF(プロダクト・マーケット・フィット=製品が市場に受け入れられた状態)を達成し、一定の収益を生み出し始めた企業が、事業をさらに拡大・再生産するための資金調達です。
シリーズAとの決定的な違いは、「PMFの達成と事業モデルの仮説検証が完了しているかどうか」にあります。シリーズAは「ビジネスモデルが成立するか」を試す段階でしたが、シリーズBでは、成立した事業を複数の市場やチャネルへ横展開し、成長を加速させるフェーズに入ります。
自社がシリーズBの段階にあるかどうかを見極める目安の例は、主に次の3点です。
- PMF達成済みで、一定の収益が安定的に発生している
- ユニットエコノミクス(LTV/CAC比率)が3倍以上を維持できている
- 組織が創業者依存から脱却し、各機能に責任者が配置されている
これらが揃わないまま調達に動くと、投資家からの評価が伸びず、不利な条件を受け入れざるを得ないリスクが高まります。焦りを感じる局面こそ、自社の現在地を冷静に棚卸ししてみることが大切です。
資金調達ラウンド全体におけるシリーズBの立ち位置
スタートアップの資金調達は、一般的に「プレシード → シード → プレシリーズA → シリーズA → シリーズB → シリーズC以降 → IPO/M&A」の流れで進みます。
各ラウンドには明確な役割があり、たとえばプレシードやシードは「アイデア・プロトタイプの検証」、シリーズAは「PMF達成とビジネスモデルの実証」が主なテーマです。シリーズBはその先、実証済みの事業モデルを本格的にスケールさせるフェーズに位置します。
| ラウンド | 主な目的 | 調達額の目安 | バリュエーション |
|---|---|---|---|
| プレシード〜シード | アイデア・プロトタイプの検証 | 数百万〜数千万円 | 1億円未満 |
| シリーズA | PMF達成とビジネスモデルの実証 | 1〜5億円 | 5〜30億円 |
| シリーズB | 再現性の証明とスケール | 5〜15億円 | 30〜100億円 |
| シリーズC以降 | 市場シェア拡大・グローバル展開 | 10億円以上 | 100億円以上 |
シリーズBは「成長の入口」ではなく「再現性の証明」を求められるラウンドです。シリーズAまでは期待値で資金が集まることもありますが、シリーズBではトラクション(売上成長率やLTV/CACなど)の実績が問われます。
DD(デューデリジェンス)の厳しさも段違いです。財務・法務・事業の各領域で複数の専門家が関与し、調達の流れ全体で半年以上かかるケースも珍しくありません。
シリーズAとの違いを一言で表すなら、「仮説で調達する段階から、実績で調達する段階への転換点」です。

資金調達の際、調達手法の選定や条件の検討など、様々な場面で専門的な知識が求められます。十分な知識がないまま進めると、自社に最適な調達条件や進め方を見極めるのが難しいこともあるでしょう。
Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」は、年間1,000社以上の面談実績を持つ、あらゆる調達手法をサポートするサービスです。調達手法の選定などご相談いただけますので、ぜひご活用ください。
シリーズBとシリーズAの違いは?投資家の評価基準に生じる変化

シリーズAを経験した経営者にとって、次のラウンドで「何が変わるのか」を正確に把握することが、調達成功の出発点になります。
シリーズAとシリーズBの違いとして、特に次の3つの違いを押さえておきましょう。
シリーズBとシリーズAの定義の違い
シリーズAが問うのは「このモデルは本当に動くのか」、シリーズBが問うのは「このモデルは大規模に繰り返し実行できるのか」です。
シリーズAはPMF達成を証明する段階であり、プロダクトが市場に受け入れられているかが焦点でした。一方、シリーズBでは、成功パターンを別の顧客層や地域、チャネルへ横展開し再現できるかが問われます。
投資家とのやり取りの中で現れる違いも明確です。シリーズAでは「ターゲット市場の規模」や「初期トラクション」が中心でしたが、シリーズBではコホート別LTV推移やCAC回収期間など、数値の裏付けを求められる場面が増加します。
シリーズA経験者が意識したいのは、「スケールする」を、再現性のある仕組みとして言語化・数値化できるかどうかです。
VCが評価するポイントの違い
シリーズAでは「この事業はどこまで伸びるか」という可能性が評価の中心でした。市場ポテンシャル、創業チームのビジョン、初期トラクションの伸びしろなど、いわば定性的な期待値で投資判断が下されるフェーズです。
一方のシリーズBでは、評価軸が「可能性」から「実績」へ明確にシフトします。VCが求めるのは、数字で裏付けられた再現性です。以下のようなKPIが厳しく精査されます。
- LTV/CAC比率が3倍以上を維持できているか
- MRR成長率が月次で安定しているか
- チャーンレート(解約率)が月次2〜3%以下に収まっているか
- NRR(ネット・レベニュー・リテンション)が110%を超えているか
これにともない、DDの深度も大きく変わります。シリーズAでは簡易的だった財務監査が強化され、バックオフィス体制のチェックや、主要顧客への確認が行われることも珍しくありません。
「前回と同じ準備で大丈夫」と感じやすい局面ほど要注意です。自社のLTV/CACやチャーンレート(解約率)をあらためて算出し、VCの評価基準に照らして現状を客観視してみましょう。
調達額・バリュエーション・株式希薄化の違い
シリーズAとシリーズBでは、調達額・バリュエーション・株式希薄化の3つが大きく変わります。
- 調達額:シリーズAが1〜5億円程度に対し、シリーズBは5〜15億円規模
- バリュエーション:シリーズAが5〜30億円に対し、シリーズBは30〜100億円
- 株式希薄化:シリーズAで15〜25%放出した後、シリーズBでさらに15〜25%放出
バリュエーションの上昇率はシリーズAからBで平均1.5〜2倍程度が相場ですが、成長鈍化や競合激化により大きく下回るケースもあります。
経営者が最も注意すべきは株式希薄化の累積です。シード〜シリーズAで30〜40%を放出済みの場合、シリーズBでさらに15〜25%を手放すと創業者持分が大幅に低下します。シリーズB後でも30〜40%程度を維持できる設計を目指しましょう。
外部出資比率が過半数を超えると経営の主導権を失うリスクが生じるため、資金規模だけでなく支配権の維持ラインを意識した資本政策が欠かせません。
シリーズBの調達額相場と主な資金使途

シリーズBでは「いくら調達すべきか」「何に使うのか」の設計が、その後の成長スピードを大きく左右します。相場から大きく外れた調達目標は投資家との交渉を難航させ、使途が曖昧なままでは資金効率が下がるリスクもあります。
調達額・バリュエーションの相場感と、資金の主な使途を一緒に見ていきましょう。
調達額とバリュエーションの相場
シリーズBの調達額は、業界や事業モデルによって大きく異なります。
- SaaS企業:5〜10億円(ARR 3〜10億円規模が目安)
- ハードウェア・製造業:10〜15億円(開発・量産への投資が必要)
- バイオ・ヘルステック:10億円以上(臨床試験や薬事承認に多額の資金が必要)
2025年の国内データ(INITIAL調べ)では、シリーズB全体の調達総額は1,924億円に達しました。調達社数は前年の351社から312社に減少しており、少数の有望企業に資金が集中する傾向が鮮明になっています。
バリュエーションを左右する主な要素は、ARR(年間経常収益)、売上成長率、利益率、参入市場の規模、チーム力、競合状況です。プレマネー・バリュエーションは成長企業で30億〜100億円程度が一般的なレンジであり、高成長企業では150億円を超える事例もあります。
高成長企業の場合は相場を大きく超えることもあります。たとえばSakana AIは、シリーズBでpost-money約4,000億円(26.5億ドル)の評価を受けています。この事例については以下の動画でも解説しています。
相場感はあくまで出発点です。自社のKPIと市場環境を照らし合わせ、現実的な調達目標を逆算しましょう。
主な資金使途の例
シリーズBで調達した資金は、主に「事業スケール」と「組織体制構築」の2軸に充てられるのが一般的です。
- 営業・マーケティング強化:新規チャネル開拓、広告投資、営業人員増員
- プロダクト開発:機能拡充、新市場向けカスタマイズ、エンジニア採用
- 組織体制整備:CFO・CTO・COOなど経営陣の採用、バックオフィス強化
- 海外展開:現地法人設立、マーケット調査、ローカライズ
これら4つへの配分比率は、成長フェーズに合わせて柔軟に調整してください。
シリーズBの資金調達方法は?エクイティとデット(融資)の使い分け

シリーズBでは調達規模が大きくなる分、エクイティとデット(融資)をどう組み合わせるかが資本政策上の大きな論点になります。
前提となる基本の資金調達方法と、使い分け・組み合わせの考え方を説明します。
方法1. VC・CVCからのエクイティ調達
シリーズBでは、投資家の顔ぶれが大きく変わります。シリーズAでは独立系VCが中心でしたが、Bラウンドでは大型VC・CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)・事業会社が加わり、既存投資家のフォローオン出資も増加します。
エクイティ調達の最大の強みは、返済義務がない点です。特にCVCは親会社との事業連携を重視しており、販路拡大や技術連携など資金以上のリターンを得られる可能性があります。
一方、株式の希薄化はシリーズAよりさらに顕著です。複数の投資家が参加することで、取締役派遣権や議決権行使を通じた経営関与が強まる場面も出てくるでしょう。
こうした背景から、シリーズBのエクイティ調達では「誰から出資を受けるか」が経営の方向性を左右する判断になります。投資家ごとの関与度合いや条件の違いを事前に把握しておくことが、交渉を有利に進める起点になります。
CVCの活用タイミングについては以下の動画でも解説しています。
グローバルファンドの投資スタイルについては以下の動画もご覧ください。
方法2. 金融機関からの融資(ベンチャーデット含む)
シリーズBに到達した企業は、一定の売上実績と成長トラックレコードを持っています。この信用力の向上により、民間銀行からの融資やベンチャーデットが現実的な選択肢に加わります。
エクイティとの最大の違いは、即時的な株式希薄化が発生しない点です。返済義務と金利負担は生じますが、経営権を維持したまま資金を確保できます。
ベンチャーデットはVCから出資を受けた企業向けに設計された融資形態であり、近年は国内での取り組みも増加傾向です。
【ポイント】重要なのは”エクイティとデット(融資)の組み合わせ”
シリーズBの調達設計で大切なのは、エクイティと融資を「どちらか」ではなく「どう組み合わせるか」という視点です。
- エクイティで8億円、融資で2億円の合計10億円調達することで、株式希薄化を抑える
- 成長投資(不確実性が高い)にはエクイティ、運転資金(予測可能)には融資を充てる
融資が適しているのは、運転資金や設備投資など使途と回収時期が明確な資金ニーズです。返済が滞れば信用毀損に直結するため、「予測可能な資金需要」に融資を、不確実性の高い成長投資にはエクイティを充てる使い分けを意識しましょう。
経営方針によっても答えは変わります。急速なスケールを狙う企業はエクイティ比率を高め、安定成長を志向する企業は融資を厚めに活用し、希薄化を抑える方針が適しています。
シリーズBの資金調達を成功させる5つの準備

シリーズBの調達を成功させるには、シリーズA後の成長実績を「再現性のある仕組み」として証明する必要があります。
次の5つの点を押さえて準備を進めましょう。
ユニットエコノミクスを可視化し獲得チャネルを確立する
特に問われるのがLTV/CAC比率です。
健全な水準は3倍以上(SaaS業界のベンチマーク)で、これを下回ると「顧客を獲得するほど赤字が膨らむ構造」と判断されます。LTV(平均購買単価 × 購買頻度 × 継続期間 × 粗利率)とCAC(マーケティング費用+営業人件費 ÷ 新規獲得顧客数)を算出し、比率が6〜12ヶ月の月次推移として安定・改善しているかを示しましょう。
合わせて、MRR成長率・チャーンレート(月次2〜3%以下が目安)・NRR(110%超が理想)をセットで整理できれば「再現可能なメカニズム」として説得力が増します。
さらに、チャネルごとにCACとLTVを分解し、特定チャネルへの依存度やスケーラブルな獲得経路を明確にしておきましょう。
事業計画書とピッチデックをアップデートする
シリーズAで使った事業計画書やピッチデックを、そのままシリーズBに流用するのは危険です。VCの審査基準は格段に厳しくなるため、再現性・拡張性・ユニットエコノミクスの健全性を定量データで証明する必要があります。
【盛り込むべき具体的な項目】
- シリーズA後の進捗実績(KPI達成度・売上成長率)
- 調達資金の配分先ごとの期待成果(数値つき)
- 市場規模の再定義と掘り下げた競合分析
- 3年後の売上・利益・主要KPIを含む成長シナリオ
シリーズBのDDでは、質問数や資料要求の深さがシリーズAから大幅に増加します。売上変動・コスト増大シナリオの感度分析を含む財務モデルや想定FAQ集を事前に揃えておくことで、交渉の主導権を握ることができるでしょう。
実際のVC交渉がどれほど苛烈かは、以下のany社ピッチ動画が参考になります。
経営チームと組織体制を強化する
シリーズBでVCが見ているのは、創業者個人の突破力ではなく経営チームとしての総合力です。創業者1人がすべてを兼務する体制はスケーラビリティの観点でリスクとみなされます。
採用の優先度は、自社のボトルネックから逆算して決めましょう。プロダクト開発が成長の制約であればCTO、資本政策やIPO準備を見据える場合はCFO、営業・CS組織の仕組み化が急務であればCOOなど、「全ポジション一斉採用」ではなく、事業計画上の最重要課題に直結する1〜2名から着手するのが現実的です。
報酬設計ではストックオプションを活用し、キャッシュ報酬だけでは届かない優秀層にリーチする工夫も必要です。各機能に責任者が配置され、創業者がいなくても組織が自走できる状態が、VCが「この会社は次のステージに進める」と判断する根拠になります。
ストックオプションの設計については以下の動画でも解説しています。
資本政策を見直し株式希薄化対策を行う
一度発行した株式は取り戻せないため、資本政策は「やり直しのきかない意思決定」です。シリーズB後でも、創業者が30〜40%程度の持株比率を維持できる設計を目指す必要があります。
たとえばプレマネー30億円で6億円を調達すると、そのラウンド単体で約16.7%の希薄化が生じる計算です。プレマネーが20億円なら、同じ調達額でも約23.1%に跳ね上がります。バリュエーション交渉が、持分維持に直結すると理解しておくことが肝心です。
また、既存投資家との調整も必要です。ダウンラウンドの場合に限り既存投資家の転換価額を自動調整し持株数を増加させる仕組み「反希薄化条項(アンチダイリューション条項)」の条件次第では、創業者側の希薄化が想定以上に進むリスクがあります。タームシートの段階で「フルラチェット型」を回避し、より影響が緩やかな「加重平均型」での交渉を目指しましょう。
合わせて、ストックオプションプールの再設計も重要です。発行済株式総数の10〜15%が一般的な目安ですが、投資家交渉や事例により変動します。優秀な人材を惹きつける余力を残しつつ、創業者のモチベーションを損なわないバランスを、シリーズCやIPOまで見据えて設計してください。
投資家との関係を構築する
投資家との関係構築は、調達直前の「営業活動」ではありません。少なくとも6ヶ月以上前から、信頼を積み上げる取り組みとしてとらえるべきです。
具体的には、候補となるVCやCVCに対して、定期業績報告を月次で共有します。KPI推移・事業上の課題・次月の重点施策を簡潔にまとめた、1〜2ページの資料で十分です。毎月の数字を追い続けてもらうことで成長の軌跡がリアルタイムで伝わり、いざ調達の話を切り出す段階では「初見の案件」ではなくなっています。
また、リード投資家の選定は、出資額の大きさだけで判断するべきではありません。見極めたいのは、経営支援・顧客紹介・採用ネットワークといった、資金以外の付加価値を提供できるかどうかです。過去の投資先リストから、同業界・同ステージの支援実績を確認することで精度を上げられるでしょう。

資金調達は、早い段階でプロに相談するほど選択肢が広がります。自社の状況を客観的に整理でき、タイミングを逃さず最適な手法を選びやすくなります。
資金調達の窓口では、融資・補助金・エクイティの中から御社のステージに合った手法の相談などを無料で対応。事業計画書がない段階からでもご利用いただけますので、まずはお気軽にご相談ください。
シリーズBでよくある失敗パターンとその対策

シリーズBの調達プロセスでは、たとえ準備が万全でも、判断を誤ると経営危機に直結するリスクがあります。
特に押さえておきたい”よくある失敗パターン”と、その具体的な対策をまとめます。
バリュエーションを過度に引き上げてダウンラウンドになる
ダウンラウンドとは、前回ラウンドより低いバリュエーションで株式を発行することです。発生すると、既存株主の持分が大きく希釈化し、投資家との信頼関係や採用面などにも深刻な影響を及ぼします。
発生の主因は、シリーズAで設定したバリュエーションに、実績の成長が追いつかないことにあります。競争入札の熱気やモメンタム重視の姿勢から高い評価額を受け入れた結果、次ラウンドまでに必要な成長倍率が、非現実的な水準に跳ね上がってしまうのです。
リスクを避けるには、現在の売上成長率・LTV/CAC・TAMから逆算し、「シリーズBまでに何倍の成長が必要か」を数値で検証しておきましょう。その倍率が現実的に達成可能かどうかが、適正バリュエーションを見極める判断基準になります。
ダウンラウンドの実態については以下の動画が参考になります。
投資家有利な条項が足かせになる
シリーズBの投資契約書には、後の経営判断を大きく縛る条項が含まれています。代表的なのが、残余財産分配優先権・反希薄化条項・取締役選任権の3つです。
- 残余財産分配優先権:M&Aや解散時に、優先株主が出資額を先に回収できる権利。1倍超の優先倍率(2倍など)が設定されると、創業者への分配が大幅に減少
- 反希薄化条項:ダウンラウンド時に既存投資家の持分を保護する条項。フルラチェット型は創業者側の希薄化が極端に進むため、加重平均型への変更を交渉すべき
- 取締役選任権:投資家が取締役を指名できる権利。複数の投資家に付与すると、取締役会の過半数を外部株主が占めるリスクがある
これらの条項は、タームシートの段階で交渉の余地があります。署名前に、スタートアップ投資に精通した弁護士へ相談する時間を確保しましょう。焦って合意した条項が、数年後の出口戦略や経営の自由度を狭める事例は少なくありません。
大型調達後にバーンレートが急増しランウェイが短くなる
調達直後こそ、最も危険な時期です。「資金が潤沢だから大丈夫」という心理的な油断が、キャッシュフロー危機の引き金になります。
典型的なパターンは、人件費・マーケティング・インフラ投資を同時に拡大し、月間ネットバーンレート(総支出 − 売上)が大幅に膨らむケースです。たとえば10億円を調達しても月間バーンレートが8,000万円に達すれば、ランウェイはわずか12ヶ月程度まで短縮します。次ラウンドの調達活動には3〜6ヶ月を要するため、12ヶ月を切ると準備・交渉・DDの時間的余裕が失われてしまうリスクがあるのです。
この失敗を避けるため、調達直後には、特に次の3点を実行するようにしましょう。
- 支出の優先順位を明確化し、売上貢献度の高い施策から段階的に投資する
- 月次キャッシュフロー管理でバーンレート推移を可視化し、ランウェイ18ヶ月以上を目標に設定する
- KPIにもとづく支出承認プロセスを導入し、達成度に応じて追加投資の可否を判断する
手元資金を「時間」としてとらえる視点が、次のラウンドへの確かな橋渡しになります。
シリーズBの資金調達に関するよくある質問

最後に、シリーズBの調達を検討する中で事前に知っておきたいポイントを、3つの問いに絞ってご紹介します。
- シリーズBで失敗する企業に共通するパターンは?
- シリーズBの準備はいつから始めるべき?
- シリーズBでデット(融資)を活用するメリットは?
Q.シリーズBで失敗する企業に共通するパターンは?
最も多いのは、バリュエーションの過大設定です。シリーズAで高い評価額を受け入れた結果、必要な成長倍率が非現実的になり、ダウンラウンドに陥るケースが目立ちます。
もう一つの典型は、調達後のバーンレート急増です。大型調達の高揚感から人件費・マーケティング・インフラ投資を同時に拡大し、12ヶ月以内にランウェイが危険水域に達する企業が目立ちます。
これらに共通するのは、「調達した後」の資金管理が甘い点です。月次のキャッシュフロー管理を徹底し、ランウェイ18ヶ月以上を常に確保する運用を心がけましょう。
Q.シリーズBの準備はいつから始めるべき?
最低でも6ヶ月前からの着手がおすすめです。投資家リストの作成、月次レポートの定期共有、ユニットエコノミクスの可視化、事業計画書の更新を並行して進める必要があるためです。DD対応準備にも2〜3ヶ月を見込んでおきましょう。
監査法人の選定やIPO準備を視野に入れている場合は、18ヶ月以上前から動き始めるのが理想です。
Q.シリーズBでデット(融資)を活用するメリットは?
最大のメリットは、株式の希薄化を抑えられる点です。エクイティ調達では15〜25%の株式を放出しますが、デットであれば経営権を維持したまま資金を確保できるため、調達総額を拡大しながら希薄化を最小限に抑える設計もできます。
押さえておきたいのは、自社の資金ニーズの性質に応じて、最適な組み合わせを検討することです。
デット(融資)の活用法については以下の動画でも解説しています。
まとめ

シリーズBは、PMF(プロダクトマーケットフィット)を終えたスタートアップが、単なる「生存」から「市場制圧」へとフェーズを変える重要な転換点です。投資家が求めているのは、もはや「アイデアの面白さ」ではなく、「投下した資本が、どれだけ確実かつ効率的に膨らむか」という数式としての説得力です。
シリーズBは求められる水準が高いと感じるかもしれません。ですがシリーズAを成功させた時点で、基盤は既にできあがっています。ここからはその基盤を数字で証明する工程と考え、一つずつ進めていきましょう。
スタートアップの資金調達方法の全体像について、詳しくはこちらの記事も合わせてご覧ください。
調達設計の進め方や資本政策のシミュレーションに迷いがあれば、早めに専門家へ相談するのも一つの手段です。

「自社に合う資金調達方法がわからない」「そもそも誰に相談すればいいのかわからない」とお悩みではありませんか。 Gazelle Capitalが運営する「資金調達の窓口」では、御社のステージに合った調達プランをご提案しています。
融資先・投資家の紹介から補助金・助成金の申請サポートまで幅広く対応しており、事業計画書がない段階でも無料でご相談いただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
