キャナルベンチャーズがGazelle CapitalにLP出資した背景には、Gazelle Capital独自のYouTube戦略や、若きリーダーである代表パートナー石橋の行動力とビジョンへの共感がありました。起業家からの厚い信頼を集めるGazelle Capitalと、エンタープライズ企業との強固なネットワークを持つキャナルベンチャーズ。両社の出会いは、日本のスタートアップエコシステムにどのような化学反応をもたらすのか。
キャナルベンチャーズのディレクター・浜田大輔氏と、Gazelle Capital代表パートナー・石橋孝太郎の対談を通して、その軌跡と未来への展望を紐解きます。
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ユニークな出会いから生まれたパートナーシップ

ーーまずは、事業内容やお2人の出会いからお伺いしてもよろしいですか?
石橋:キャナルベンチャーズさんは、BIPROGYグループのCVCとして、エンタープライズ企業との強固なネットワークを活かした投資をされていますよね。シード期以降のスタートアップを、事業会社との提携という側面から支援されていると理解しています。
浜田:おっしゃる通りです。スタートアップが事業会社と連携していく段階をサポートするのが私たちの役割です。Gazelle Capitalさんは、創業間もないスタートアップに特化して、DX領域で投資をされていますよね。

石橋:そうですね。創業間もないスタートアップにフォーカスし、既存産業のDX推進に貢献する企業への投資が私たちのミッションです。私たちとキャナルベンチャーズさんの出会いは、弊社のYouTubeがきっかけでしたね。LP出資を受けてファンドを運用されている「ANOBAKA」の長野さんのご紹介でした。
浜田:2020年5月ごろだったと記憶しています。キャナルベンチャーズは2017年の創業当時からANOBAKAさんにもLP出資させて頂いていて、そのご縁で、弊社の前代表である朝田が石橋さんのYouTube番組に出演させていただいたのがはじまりでしたね。実は私は当時、YouTubeで情報発信するという手法を聞いて驚きました。正直、「効率が悪いのでは?」と少し懐疑的でもありました。
石橋:2020年といえば、企業がYouTubeチャンネルを持つことすらも珍しかった時期ですからね。私たちのファンドは、1号ファンドの時点で3億円規模と小規模だったので、大手VCと同じ土俵で戦うのではなく、独自の戦略が必要でした。限られたリソースで長期的に効果を発揮する資産を構築するため、YouTubeでリッチなコンテンツを発信し続けることが有効ではないかと考えてたんです。
若きリーダーの確固たるビジョン
ーー石橋さんに出会ったときの印象を教えてください。
浜田:初めて石橋さんとお会いする前は、「若いキャピタリストの方が現れたな」という印象でした。VC出身でもない石橋さんがどんな人物か非常に興味があったのですが、話してみると業界への理解も深く、人の意見に左右されずに、常に自分の考えで行動していることが伝わってきて驚きました。
石橋:ありがとうございます。当時は独立して1年ほど、VC歴も3、4年と駆け出しだったため、ほとんど知られていない時期でしたね。その後YouTubeを始めたことで、認知度が上がっていきました。
浜田:パートナーは40代が多い中、30代でファンドを立ち上げた石橋さんの行動力は、当時もとても珍しかったのではないでしょうか。これまで多くの30代のキャピタリストと仕事をしてきましたが、石橋さんのような方はいませんでしたね。
石橋:若さゆえに勢いはあったかもしれませんが、他のVCの方々と比べると知識も経験もまだまだ未熟でした。ですが浜田さんには、私たちの投資先を見て「面白い」と言っていただいたのが嬉しかったです。1号ファンドは小規模でしたが、ありがたいことに、投資先企業はしっかりとラウンドアップを重ねて成長しています。

ーー浜田さんが投資を決めた理由をお伺いできますか?
浜田:私たちが投資を決めたのは、石橋さんが自分自身の言葉を持っていらっしゃるところに感銘を受けたからです。まだどうなるか分からないシード期のスタートアップに投資する際も、石橋さんなりの未来予測に基づいて判断している。その解像度の高さと思考の深さ、さらに言葉の使い方にも魅力を感じたのが決め手でした。
YouTube戦略と独自のエコシステム
ーー浜田さんは最初から、Gazelle CapitalのYouTubeを活用するスタイルなどにも共感されていたのでしょうか?
石橋:最初はスタートアップへの情報提供として、YouTubeを活用することに懐疑的だったとおっしゃっていました(笑)今はどのようなイメージを持っていただいていますか?
浜田:石橋さんのYouTube戦略は独創的ですよね。単に情報発信するだけでなく、VC業界全体を巻き込み、エコシステムを構築しているからです。私たちの前代表もGazelle CapitalのYouTubeに出演したことで、石橋さんのファンになってしまいました。毎週のように様々なVCのパートナーがGazelle CapitalのYouTube番組に登場していますが、登壇した皆さんはきっと石橋さんのファンになってしまうんですよね。このようにして「Gazelleファミリー」とも呼べるようなコミュニティを形成しているのは、企業や起業家との繋がりを作る手法として、素晴らしいなと感じています。

ーー石橋さんがYouTube番組をスタートしたのは、どのようなお考えからなのでしょうか?
石橋:価値のある情報コンテンツを制作して、大企業よりも早く起業家の方と接触したいと考えて、YouTube番組を始めました。ただ自分だけではコンテンツのネタも尽きてしまうので、他のVCの方々にご出演いただくことで、継続的な発信を可能にしています。さらに、先ほど浜田さんがおっしゃってくださったように、インタビューを通じて様々な方と深く関わることができ、それが貴重な人脈形成に繋がることもわかりました。これはやってみて初めて気づいたメリットなんです。
浜田:従来のVCは似たようなソーシングスタイルで、リーチする企業も似通っている傾向があります。しかし、Gazelle CapitalはYouTubeを通じて、他のVCとは異なる層の起業家にリーチしています。つまり、石橋さん独自の視点で将来性のあるスタートアップを発掘しているわけですよね。これは大きな強みだと思います。
浜田:そうですね。キャナルベンチャーズはエンタープライズ企業との繋がりを活かして、スタートアップと事業会社との協業を推進しています。Gazelle Capitalさんが発掘したスタートアップを、私たちのネットワークを通じて大企業に繋げることで、大きなシナジー効果が生まれると考えています。
共創で切り開く日本のDX推進
ーー2社が連携しているからこそ、実現できたと感じられることはありますか?
石橋:最近の出来事で言うと、投資先が困難な状況に陥った際に迅速に対応できたのは、キャナルベンチャーズさんとの連携があったからこそでした。
浜田:あのときの石橋さんは、私が「こういう懸念があるのでは」とお伝えした翌日には、株主を含めた関係者の認識の相違を解消して、次のアクションへと導いてくださいました。起業家からの信頼も厚く、頼れる存在だと実感しました。
石橋:ありがとうございます。私たちの投資テーマは「既存産業×DX」です。キャナルベンチャーズさんもデジタルトランスフォーメーションに資する企業への投資をされているので、領域としても相性は良いと感じています。先日、事業会社とVCを繋ぐイベントを共催させていただいたことで、LP出資に興味がある多くの企業と繋がることができました。
浜田:VCと事業会社をお繋ぎし、VCにピッチしてもらうというユニークな形式のイベントで、大きな反響がありましたね。前回はテストとして30名規模で実施したのですが、次回のイベントは、200名規模で行う予定です。今後も石橋さんと協力しながら、半年に1回くらいの頻度で継続していけたらと考えています。
石橋:キャナルベンチャーズさんのネットワークと私たちの投資先を繋げることで、スタートアップの利益や成長に貢献できるだけでなく、結果的には大企業のDXを推し進めることにもつなげられると思います。
浜田:Gazelle Capitalさんのように、「スタートアップを成長させたい」という強い想いを持つ企業さんには、ぜひ一緒にLP出資していただきたいですね。また、大きな課題意識を持っていたり、産業を変えたいといった意思がある起業家さんにとっては、石橋さんは非常に心強いパートナーになると思います。私たちも引き続き、お互いの強みを活かしながら、日本のスタートアップエコシステムを発展させていきましょう。