「諦めない起業家」を支える。Gazelle Capitalの投資哲学とanyの挑戦

ナレッジプラットフォーム「Qast(キャスト)」を提供するany株式会社。同社は、創業間もないシード期にGazelle Capitalから出資を受け、現在は77,000人以上のユーザーを抱えるまでに成長をしています。Gazelle Capitalは投資後、どのようなサポートを提供しanyを支えてきたのか。any株式会社の代表取締役CEO 吉田 和史氏と、Gazelle Capital 代表 パートナー・石橋 孝太郎の対談を通して、起業家とVCとして歩んできた2人の道のりをお伺いしました。

投資決定を左右した「諦めない」という信頼感

ーーまずは、anyが提供されているQastについてお伺いできますか?

吉田:Qastは、組織に埋もれる個人の知識や経験を引き出して、企業のナレッジマネジメントを成功に導くクラウドサービスです。現在8万人近くまでユーザー数が伸びていますので、初期から直近含め大企業を中心に、着実に導入が進んでいると聞いています。

企業規模を問わず使って頂けるサービスなのですが、大企業がより課題を感じている領域のため、まずは大企業にアプローチしています。

https://qast.jp/

ーーお2人が初めて対面されたとき、お互いにどのような印象を持ちましたか?

石橋:初めて吉田さんにお会いした時の印象は、いい意味でとにかく「真面目」。そのころは日曜日だけを家族との時間と決めて、月曜日から土曜日まで働くという、まさに仕事中心の生活をされていましたよね。「社内wiki」や「社内QAサービス」といったものは昔から存在していましたが、吉田さんからはそのナレッジマネジメント領域へ対する強い想いがひしひしと伝わってきました。

吉田:石橋さんにお会いしたのは、Qastのβ版リリースから3、4ヶ月後の2018年11月頃だったと記憶しています。当時はまさに起業家としての一歩を踏み出したばかりで、共同創業者や伴走していただける投資家さんもおらず、CSやセールス、プロマネまで、ほぼ一人でこなす毎日でした。

さらに、シード期の資金調達中で、投資家の方々にQastの将来性を理解してもらうのに苦労していたんです。「競合が多い」「この分野で勝てる見込みは薄い」など、厳しい言葉をいただくことも多かったのですが、石橋さんは初回面談から私たちの事業をロジカルに評価して投資を決めてくれましたよね。後から分かったことですが、ロジカルな部分だけでなく、私の「諦めないだろう」というパーソナルな部分、人間性にも期待を寄せてくれていたようで、本当に嬉しかったですね。

石橋:そうですね。起業家の「人」の部分は、特にシード期においては非常に重要です。事業のポテンシャルはもちろん、それ以上に大切なのが、「この人ならやり抜くだろう」という信頼感ではないでしょうか。限られた資金の中から投資をするということは、VCにとっても大きなリスクです。私自身、当時はまさに一人でファンドを立ち上げようとしていた、まさに「裸一貫」の状態でした。だからこそ、初対面で「信頼できる」と感じた吉田さんに投資を決めたんです。

VCが肩代わりする「関係資産」作り

ーー石橋さんのサポートについて、詳しく教えていただけますか?

吉田:石橋さんには資金だけでなく、事業を進めていく上での心強いパートナーとして、本当に様々なサポートをしていただきました。特に大きかったのは、資金調達におけるアドバイスと投資家の紹介です。エクイティファイナンスが何かすら分からなかった私にとって、石橋さんはCFOのような存在でしたね。

石橋:私たちの役割は、起業家が事業に集中できる環境を整えること。吉田さんがサービスの開発やマーケティングなどに専念できるよう、資金調達のための投資家とのネットワーク構築、つまり関係資産作りは私たちが肩代わりをする。それがVCとしての役割だと考えています。

吉田:グローバル・ブレインさんやHENNGEさんとの出会いも、石橋さんの紹介でした。ピッチイベントへの参加を勧めてくれたのも石橋さんです。最初は「ピッチの準備に時間をかける余裕がない」と断っていましたが、資金調達の観点から、そうも言っていられない状況となり、参加を決意。結果として、これが大正解でした。

ピッチの経験を通して、プレゼン資料も洗練され、事業計画も明確になり、投資家の方々への説明にも自信が持てるようになりました。シリーズBの資金調達では非常に苦労しましたが、石橋さんが親身になって相談に乗ってくれたおかげで、目標金額を達成することができましたね。

石橋:シリーズB以降は、私たちのファンドの構造的に追加投資が難しくなるケースが多いんですよね。でもだからこそ、利害関係から解放されたフラットな立場で、吉田さんやanyの成長をサポートできると考えています。

2024年12月に、共同でファンドを設立したDE-SIGNグループからの投資も、anyの成長を後押しする大きな力となりました。DE-SIGNはオフィス空間デザインのプロフェッショナルです。anyの「チーム作り」「人づくり」「場づくり」への想いに共感したからこそ、投資を決めてくれたのだと思います。

創業期から続くパートナーシップの価値

ーー今後お2人はどのような関係を目指していかれますか?

吉田:会社の規模はお互いに変わっていくと思いますが、石橋さんとは今の関係性が続いていくといいなと思っています。二人とも一人の時から始めて、「何者でもない」時代に共にスタートした仲間なので、今のように丁寧なコミュニケーションを取りながらアドバイスをいただける関係でありたいです。

石橋:同じ意見です。吉田さんとは違う観点からお話すると、僕たちの仕事は日々創業期の起業家と向き合うことが中心です。投資先の企業は成長していく過程で、組織を拡大し、事業も多角化し、多くのステークホルダーを巻き込んでいきます。

一方で、私たちは創業期の起業家とのコミュニケーションを継続しているため、成長した投資先の起業家との間にある種のギャップを感じることもあります。

そのギャップを埋めるためには、私たち自身もプロフェッショナルとして成長し続ける必要があります。吉田さんがおっしゃった通り、最初の関係性を変えずに続けられることが、今後も新しいご縁や面白い取り組みにつながると信じています。

SaaS業界のリーダーを目指して

ーー最後に、anyさんの今後の事業展開について教えてください。

吉田:今年は事業規模を2倍に拡大することを全社ミッションとしています。それに伴い、従業員数を現在の2.5倍に増やし、展示会のコマ数も3倍に増やしています。また、年間売上を2倍成長させるペースを維持するための施策を積極的に進めています。

さらに、数年後のIPOを視野に入れ、2030年までにARR100億円を目指しています。国内のSaaS企業の中でも代表的な存在となるのが目標で、その後は海外展開も視野に入れています。今年中には新たなプロダクトを発表する予定で、Qastのお客様にとって複数プロダクトを導入することでより価値が高まるプロダクト群を提供していきます。働く人たちが生き生きと仕事を楽しめるような、最高のチームを作るためのプロダクトを生み出していきたいと考えています。

石橋:anyさんの今後のお話にはワクワクしています。これから起業する方、あるいは既に起業している方に伝えたいのは、私たちは事業のポテンシャルはもちろんですが、それ以上に、起業家自身の「想い」や「覚悟」を重視しているということです。吉田さんのように、強い信念を持って事業に打ち込める方、どんな困難にも諦めずにやり抜く力のある方と、ぜひ一緒に未来を創造していきたいですね。

any株式会社のサービスサイトはこちら
https://qast.jp/

採用情報はこちら
https://anyinc.jp/recruit

3号ファンド組成・積極投資中!

日本国内の製造業・建築建設業・医療介護・不動産などのレガシー産業をアップデートするスタートアップ企業に出資を行っています。
ぜひ起業家の皆さんとご面談の機会をいただけますと幸いです!

・投資フェーズ:プレシード・シード中心(一部プレシリーズAにも出資)
・投資分野:既存産業領域のDXを行う企業を中心にtoB、toC問わず出資を行う
・投資金額:最大5,000万円の出資を行う
・イグジット:IPO、M&A、またはセカンダリーによる売却を想定
・運用期間:2034年3月(最大2年間の延長可能性あり)出資検討期間:2週間〜2ヶ月程度

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執筆者

Gazelle Capital編集部 /

Gazelle Capitalは、日本を築いてきた国内産業にインターネットの力で変革、変化を及ぼし、新しい時代の中で産業を彼らと共に形を変えて紡いでいくためのベンチャーキャピタルです。創業初期から起業家に伴走し、様々な壁をともに乗り越え、ともに挑戦に伴走し続けていきます。

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