LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)というマーケティング用語をご存じですか?
従来のマーケティング手法では新規顧客獲得が容易ではなくなってきている昨今において、既存顧客と継続的に良好な関係を築くことができているかを気にする必要性は増してきており、そこを測る指標としてLTVは是非とも押さえておきたい概念です。
今回はLTVがマーケティングにおいてどれほど重要か解説していきます!
この記事の結論
- LTVは1人の顧客が自社にどれほどの利益をもたらしてくれたかという指標
- 既存顧客との関係性維持やサブスクリプションサービスの普及により重要視されている
- LTVが高いということは顧客ロイヤリティが高いことを意味している
監修者
石橋 孝太郎 / Gazelle Capital 代表パートナー
2016.11にクルーズベンチャーズ株式会社を創業。 取締役として、コーポレートベンチャーキャピタルの設立と運用に従事。 同社にて創業初期の起業家を中心に投資活動を展開した。 その後同社を親会社に合併させたのち、退職。2019年にGazelle Capitalを新たに創業し、代表パートナーに就任。 また、個人として、学生向け中古教科書売買収益を活かした途上国の教育支援会社や、宮崎県にて事業承継を実施し、焼酎を中心とした酒販小売り会社であるLocalLocal株式会社を経営。 自身のもつ様々なバックグラウンドを活かし、多方面的に投資先と伴走をする。
Table of Contents
LTV(Life Time Value)とは
LTVとはライフタイムバリューの略語であり、日本語訳すると「顧客生涯価値」になります。
とある顧客が企業と取引を開始してから終了するまで、どれほどの利益やメリットをもたらしてくれたかを数値化したものです。
取引というと大々的なことに聞こえるかと思いますが、要はサービスの利用や商品の購入をどれほど継続してくれたかを表しています。
製品を1度だけ購入した顧客とずっと継続して購入し続けた顧客では、後者の方がLTVが高いと言えます。
LTVが重要な理由
LTVが重要視されるのには、主に3つの理由があります。
・既存顧客との関係性を維持する ・インターネットの普及 ・サブスクリプションサービスの発展 |
1つずつ詳しく解説します。
既存顧客との関係性を維持する
新規顧客を獲得するためには、需要と供給のバランスを考えることが重要です。
かつて人口が増加していた時代では需要が商品やサービスの供給量を上回っていて、新規顧客を獲得することで企業が成長・発展していくという流れが主流になっていました。
しかし、日本は近年人口が減少傾向にあります。
つまり、どんなに魅力的な商品やサービスを生み出しても、顧客数が減少していて新規顧客の獲得が難しくなっているのです。
そこで、すでに契約している・商品やサービスを利用している顧客との関係性を維持することで、企業の利益を生み出しているのです。
さらに、顧客が口コミとして商品の評判を広めてくれれば、顧客の拡大が期待できます。
既存顧客との関係性を良好に保つマーケティングが重要視されていることから、LTVの注目度も向上して重要な指標として扱われています。
インターネットの普及
インターネットを使った広告費はテレビの広告費を上回っており、さらにSNSを使った広告も増えてきています。
このように、現在は直接店舗へ足を運んで購入する人の他に、インターネット通販サイトなどを利用して購入する人が増加しているなど、購買行動も変化してきているのです。
企業が行うマーケティングは不特定多数に向けて行うものから、特定の顧客の趣味・嗜好を尊重するOne to Oneマーケティングへ移行しています。
自社が提供するサービスや自社そのものに魅力を感じ愛着を持ってもらえるよう、努力を重ねなくてはいけません。
時代にあわせたマーケティングを行っていくことが必要なのです。
サブスクリプションサービスの発展
サブスクリプションサービス(以下、サブスク)は、月額料金を支払ってさまざまな商品やサービスを使えるビジネスの1つです。
定額制で音楽や動画を楽しんだりさまざまなコンテンツを利用できたりと、数多くのメリットがあります。
サブスクを成功させるためには、お試し期間などを設けてそれを利用した顧客に「引き続きこのサブスクを利用したい」と思わせることが重要です。
そのため、LTVで成果が出ているかということを数値化し、サービスの改善に繋げていくのです。
LTVの計算方法
LTVを計算する方法はたくさんありますが、代表的なものを紹介していきます。
最も一般的な場合は以下の通りです。
LTV = 顧客平均購入単価 × 平均購入回数 |
この場合、1人の顧客により長く購入してもらうか、より多くの商品を購入してもらえればLTVは高くなります。
こちらはリピート購入を前提としている商品・サービスのLTVを計算する時に使います。
LTV = 顧客年間取引額 × 収益率 × 継続年数 |
単価当たりの計算が難しい場合、年間の取引額を用いて計算する方法もあります。
また、顧客がもたらす利益だけでなく会社のコストも重視しなくてはいけません。
そのような場合、
LTV = 顧客平均購入単価 × 平均購入頻度 × 平均継続年数 ‐(顧客獲得コスト + 顧客維持コスト) |
この計算式に当てはめることで、得られた利益と顧客にかけるコストのバランスを計ることができます。
こちらの数値がマイナスになってしまった場合、早急に対策をとって利益をプラスに転じることが求められます。
LTVが高くなるとどうなる?
LTVが高いということは、顧客がその企業(ブランド)に対して信頼や愛着を持っていることを表しています。
商品やサービスを継続して利用しているロイヤリティが高い顧客がいて、さらに良好な関係を築いていることを意味しています。
ロイヤリティが高い顧客は企業が提供する商品・サービスに魅力を感じているため、1人当たりの購入単価が高くなり継続年数も長くなるのです。
つまり、よりLTVが向上するのに繋がっていきます。
また、LTVは長期的・継続的な消費が重視される業界で目安にされる指標です。
大きな買い物を1度して終わり、という業界ではそこまで重要ではありません。
サブスクを提供している業界では注目されている一方で、不動産業界では基本的に1度家や土地を購入すると継続は見込めないため、あまり使われていません。
LTVを向上させる方法
LTVを向上させる方法として、代表的なものを5つ紹介します。
まとめると以下の通りです。
・購入単価を高くする ・購入頻度を高くする ・契約期間を延ばす ・コストを下げる ・長期継続のメリットを提供する |
順番に解説していきます。
購入単価を高くする
1顧客あたりの購入単価を高くすれば、継続するかどうかはさておき1度に得られる利益が向上します。
最も簡単な方法は商品を値上げすることですが、それでは費用と商品のバランスに不満を抱いた顧客が離れてしまう可能性があるので、注意してください。
値上げするからには、その分商品の質を上げることが大切です。
また、おすすめなのは商品をいくつか抱き合わせにしてセット売りすることです。
特定の商品と関連する商品を勧めることで魅力を感じてもらえるでしょう。
そのほかにも、上位モデルが登場したタイミングでそれを顧客にアピールして、納得したうえで購入してもらうという方法もあります。
購入頻度を高くする
購入頻度が高くなれば、結果的に顧客が企業にもたらす利益が増えるのでLTVが向上します。
顧客は、1度購入しただけではその商品やサービスを利用し続けるとは限りません。
綿密なコミュニケーションをとり、満足している点の他に不満点や改善してほしい箇所についてヒアリングを行います。
そして、それを反映させることで「自分の意見を聞き入れてくれた」という満足感を得られます。
SNSやメールマガジンを使って製品の魅力を効果的にアピールしたりお得なセールの告知をしたりすることで、接点を持ち続けてください。
契約期間を延ばす
サブスクや定期購入サービスを提供している場合、契約期間を延ばし続けることが重要です。
消耗品を商品としている企業も同様です。
長く使い続けてもらえるよう、現状に満足せず常に商品・サービスの長所を伸ばし短所を改善しましょう。
他の企業にはない魅力をアピールするとより効果的です。
また、契約期間を延ばすためには解約率を下げることも視野に入れてください。
顧客の利用動向データから解約するかどうかをいち早く察知し、先回りしたサービスや改善点を提供することで解約を防いでいくのです。
コストを下げる
LTVの計算方法でも紹介した通り、どんなに1人の顧客が長くたくさんの商品を使い続けてくれても、コストがかかってしまっては意味がなくなってしまいます。
利益がアップしてもコストが高くなると、企業に残るお金は少なくなるので注意が必要です。
コストを下げるためには原価を下げることが重要なので、複数のメーカーを比較してより安く商品を開発する方法を考えましょう。
ただ、コストを下げることを重視するあまり提供する商品・サービスの質が下がってしまっては元も子もありません。
顧客にとって品質は非常に重要です。
顧客の数や購買意欲・購買頻度・継続期間が下がらないよう、バランスを見極めながらコストを下げる方法を検討してください。
長期継続のメリットを提供する
長く続ければ続けるほどお得になるというメリットがあれば、顧客が商品・サービスを利用し続けることに繋がっていきます。
例えば、ポイント制度を導入して商品を購入するごとにポイントが貯まるようにして、一定のポイントが貯まれば別の商品を引き換えられるようにする、購入後のアフターサービスを充実させるといった方法があります。
購入金額ごとに会員ステージを設定し、上位ステージの会員は商品を安く購入できたり特典がもらえたりするようにすれば、商品を気に入っている人にとっては一石二鳥です。
長く使ってくれている顧客を大切にすることで、さらに企業の信頼度がアップしてLTVが向上していくのです。
LTVを意識してマーケティングを成功させよう!
いかがでしたか?
今回はLTVの意味や重要視される理由を説明し、LTVを向上させる方法について解説しました。
本記事で重要なことをまとめると以下の通りです。
- LTVは1人の顧客が自社にどれほどの利益をもたらしてくれたかという指標
- 既存顧客との関係性維持やサブスクリプションサービスの普及により重要視されている
- LTVが高いということは顧客ロイヤリティが高いことを意味している
ぜひLTVを意識して、顧客満足度を向上させてください!
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